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明細書 :蒸発冷却装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-173244 (P2018-173244A)
公開日 平成30年11月8日(2018.11.8)
発明の名称または考案の名称 蒸発冷却装置
国際特許分類 F24F   1/00        (2011.01)
F24F   6/04        (2006.01)
F24F  13/02        (2006.01)
F24F  13/15        (2006.01)
FI F24F 1/00 331
F24F 6/04
F24F 13/02 A
F24F 13/15 B
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2017-072287 (P2017-072287)
出願日 平成29年3月31日(2017.3.31)
発明者または考案者 【氏名】西岡 真稔
【氏名】鍋島 美奈子
【氏名】中尾 正喜
出願人 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100124039、【弁理士】、【氏名又は名称】立花 顕治
【識別番号】100156845、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 威一郎
【識別番号】100179213、【弁理士】、【氏名又は名称】山下 未知子
【識別番号】100170542、【弁理士】、【氏名又は名称】桝田 剛
審査請求 未請求
テーマコード 3L050
3L055
3L080
3L081
Fターム 3L050BB20
3L055AA10
3L055BA02
3L080AA03
3L080AD04
3L081AA02
3L081AA10
3L081AB03
3L081FA03
要約 【課題】簡易な構成で、冷却範囲を制御可能であり、かつ効率よく冷却可能な蒸発冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明の一側面に係る蒸発冷却装置は、水及び水蒸気に対して不透過性を有するシート状の防水防湿部材、並びに水に対して不透過性を有し、かつ水蒸気に対して透過性を有するシート状の防水透湿部材により、水を保持する密封された内部空間を有するように形成される水保持部材と、前記水保持部材の前記内部空間に水を供給する供給経路と、を備える。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
水及び水蒸気に対して不透過性を有するシート状の防水防湿部材、並びに水に対して不透過性を有し、かつ水蒸気に対して透過性を有するシート状の防水透湿部材により、水を保持する密封された内部空間を有するように形成される水保持部材と、
前記水保持部材の前記内部空間に水を供給する供給経路と、
を備える、
蒸発冷却装置。
【請求項2】
前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材は対向するように配置され、
前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材の間には、前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材を連結し、それぞれ同一方向に延びる複数のリブが設けられる、
請求項1に記載の蒸発冷却装置。
【請求項3】
前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材は対向するように配置され、
前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材は格子状に連結される、
請求項1に記載の蒸発冷却装置。
【請求項4】
前記水保持部材は筒状に形成され、
前記防水防湿部材は、前記水保持部材の内壁を構成し、
前記防水透湿部材は、前記水保持部材の外壁を構成する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の蒸発冷却装置。
【請求項5】
前記水保持部材は筒状に形成され、
前記防水防湿部材は、前記水保持部材の外壁を構成し、
前記防水透湿部材は、前記水保持部材の内壁を構成する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の蒸発冷却装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発冷却装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートアイランド現象に対する対応策として、様々な方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、給水部と、給水部から上部方向に延びるように設けられ、給水部に貯水された水を水面から1m以上の高さに揚水可能な高揚水性多孔質体と、を備える蒸発冷却壁体が提案されている。この冷却壁体によれば、高揚水性多孔質体が吸い上げた水を表面より蒸発させることで周囲の雰囲気を冷却することができる。
【0004】
また、例えば、非特許文献1では、最上段に配置されたルーバーに潅水チューブが入っており、この最上段のルーバーから下位のルーバーに水を滴下する冷却ルーバー装置が提案されている。この冷却ルーバー装置によれば、各ルーバーに滴下した水を蒸発させることで周囲の雰囲気を冷却することができる。
【0005】
更に、例えば、特許文献2では、ミスト状の水を噴霧するミスト噴霧システムが提案されている。このミスト噴霧システムによれば、噴霧したミスト状の水を蒸発させることで周囲の雰囲気を冷却することができる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2011-144499号公報
【特許文献2】特開2010-078264号公報
【0007】

【非特許文献1】「平成27年度ヒートアイランド現象に対する適応策検討調査業務報告書」、一般社団法人環境情報科学センター、平成28年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の方法について、本件発明者らは、次のような問題点を見出した。すなわち、上記特許文献1で提案される方法では、高揚水性多孔質体の毛管力によって、水の輸送を行っているため、水の輸送範囲が限られてしまい、大型化が困難である。また、上記非特許文献1で提案される方法では、各ルーバーに均一に水を行き渡らせることは難しく、かつ各ルーバーには蒸発する分よりも過剰に水を供給することになるため、周囲の雰囲気を効率的に冷却することが困難である。更に、上記特許文献2で提案される方法では、ミストの到達範囲を制御するのが難しいため、冷却範囲を制御することができず、かつ屋内で使用することができない。したがって、従来の方法では、簡易な構成で、冷却範囲を制御しながら、その範囲の雰囲気を効率よく冷却することが困難である、という問題点があることを本件発明者らは見出した。
【0009】
本発明は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で、冷却範囲を制御可能であり、かつ効率よく冷却可能な蒸発冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0011】
すなわち、本発明の一側面に係る蒸発冷却装置は、水及び水蒸気に対して不透過性を有するシート状の防水防湿部材、並びに水に対して不透過性を有し、かつ水蒸気に対して透過性を有するシート状の防水透湿部材により、水を保持する密封された内部空間を有するように形成される水保持部材と、前記水保持部材の前記内部空間に水を供給する供給経路と、を備える。
【0012】
上記蒸発冷却装置によれば、防水防湿部材及び防水透湿部材で形成した内部空間に水を供給し、供給した水を防水透湿部材から外部に蒸発させることで、周囲の雰囲気を冷却することができる。ここで、上記蒸発冷却装置は、防水防湿部材及び防水透湿部材を用いた簡易な構成で実現される。また、防水透湿部材の配置に基づいて、冷却範囲を制御可能である。更に、内部空間に収容した水を利用するため、水を常時滴下しなくてよく、周囲の雰囲気を効率的に冷却することができる。したがって、上記構成によれば、簡易な構成で、冷却範囲を制御可能であり、かつ効率よく冷却可能な蒸発冷却装置を提供することができる。
【0013】
また、上記一側面に係る蒸発冷却装置の別の形態として、前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材は対向するように配置されてよく、前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材の間には、前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材を連結し、それぞれ同一方向に延びる複数のリブが設けられてよい。当該構成によれば、複数のリブにより、水保持部材の形状を維持し、かつ防水透湿部材の広い範囲に水を行き渡らせ易くすることができる。これにより、周囲の雰囲気を効率的に冷却可能にすることができる。
【0014】
また、上記一側面に係る蒸発冷却装置の別の形態として、前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材は対向するように配置されてよく、前記防水防湿部材及び前記防水透湿部材は格子状に連結されてよい。当該構成によれば、格子状に連結することにより、水保持部材の形状を維持し、かつ防水透湿部材の広い範囲に水を行き渡らせ易くすることができる。これにより、周囲の雰囲気を効率的に冷却可能にすることができる。
【0015】
また、上記一側面に係る蒸発冷却装置の別の形態として、前記水保持部材は筒状に形成されてよく、前記防水防湿部材は、前記水保持部材の内壁を構成してよく、前記防水透湿部材は、前記水保持部材の外壁を構成してよい。当該構成によれば、円筒形状の外壁で気化熱による冷却を実施可能な蒸発冷却装置を提供することができる。
【0016】
また、上記一側面に係る蒸発冷却装置の別の形態として、前記水保持部材は筒状に形成されてよく、前記防水防湿部材は、前記水保持部材の外壁を構成してよく、前記防水透湿部材は、前記水保持部材の内壁を構成してよい。当該構成によれば、円筒形状の内壁で気化熱による冷却を実施可能な蒸発冷却装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構成で、冷却範囲を制御可能であり、かつ効率よく冷却可能な蒸発冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施の形態に係るルーバー装置を例示する。
【図2】図2は、実施の形態に係る羽根部材を例示する正面図である。
【図3】図3は、実施の形態に係る羽根部材を例示する断面図である。
【図4】図4は、変形例に係る羽根部材を例示する断面図である。
【図5】図5は、変形例に係る羽根部材を例示する。
【図6】図6は、変形例に係る羽根部材を例示する断面図である。
【図7】図7は、変形例に係る羽根部材を例示する断面図である。
【図8】図8は、変形例に係る羽根部材を例示する断面図である。
【図9】図9は、変形例に係る羽根部材を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形が行われてもよい。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、以下では、本発明に係る蒸発冷却装置の一形態として、ルーバー装置に本発明を適用した例を示す。しかしながら、本発明に係る蒸発冷却装置の利用形態は、ルーバー装置に限られなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。

【0020】
§1 構成例
まず、図1を用いて、本実施形態に係るルーバー装置1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るルーバー装置1を模式的に例示する。本実施形態に係るルーバー装置1は、いわゆる縦ブラインドであり、水平方向に延びる断面略矩形状のヘッドボックス11と、ヘッドボックス11からぶら下げられる複数の羽根部材12と、を備えている。

【0021】
ヘッドボックス11は、内部に中空部110を有しており、この中空部110には、水供給源(不図示)から供給される水が流れるようになっている。このヘッドボックス11の材料は、実施の形態に応じて適宜選択されてよく、例えば、樹脂製又は金属製のフレーム材が用いられてよい。各羽根部材12は、鉛直方向に延びており、その上端部において、回転可能又は回転不能にヘッドボックス11に固定されている。

【0022】
なお、図1の例では、ヘッドボックス11には3つの羽根部材12が取り付けられている。しかしながら、羽根部材12の数は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。羽根部材12の数は、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。

【0023】
次に、図2及び図3を更に用いて、羽根部材12の構成について説明する。図2及び図3は、本実施形態に係る羽根部材12を模式的に例示する正面図及び断面図である。図2及び図3に示されるとおり、本実施形態に係る各羽根部材12は、シート状の防水防湿部材13とシート状の防水透湿部材14とを備えている。各羽根部材12は、本発明の「水保持部材」に相当する。

【0024】
防水防湿部材13は、水及び水蒸気に対して不透過性を有している。この防水防湿部材13には、水密性を有する材料を用いることができる。具体例として、防水防湿部材13には、樹脂、紙、布、木製等を用いることができる。一方、防水透湿部材14は、水に対して不透過性を有し、かつ水蒸気に対して透過性を有している。この防水透湿部材14には、例えば、WLゴア&アソシエイツ社製のゴアテックス(登録商標)、東レ株式会社製のエントラント(登録商標)、小松精練株式会社製のSAITOS(登録商標)等を用いることができる。

【0025】
防水防湿部材13及び防水透湿部材14はそれぞれ略矩形状でかつ平らに形成されており、水平方向に互いに対向するように配置されている。そして、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の上下左右方向の各端部は、各フレーム材121~124によって閉じられている。これにより、羽根部材12は、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の間に密封された内部空間16を有するように形成されている。

【0026】
また、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の間には、上下方向に延び、左右方向に配列された複数のリブ15が設けられている。各リブ15は、防水防湿部材13及び防水透湿部材14を溶着、接着等により連結しており、これによって、内部空間16を左右方向に分割している。

【0027】
なお、図2及び図3の例では、5つのリブ15が設けられている。しかしながら、リブ15の数は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。このような複数のリブ15を備える防水防湿部材13として、例えば、片段タイプのプラスチックダンボールを利用することができる。このとき、プラスチックダンボールの中芯が各リブ15に相当する。

【0028】
更に、上端部を構成するフレーム材121には、ヘッドボックス11の中空部110と羽根部材12の内部空間16とを連結する給水経路125が設けられている。この給水経路125は、本発明の「供給経路」に相当する。この給水経路125を介して、羽根部材12の内部空間16には、ヘッドボックス11の中空部110から水が供給される。

【0029】
一方、下端部を構成するフレーム材124から左側端部を構成するフレーム材123を通ってフレーム材121にかけて、排水経路126が設けられている。内部空間16内の不要な水は、この排水経路126を通って、ヘッドボックス11の中空部110に排出される。なお、この排水経路126は、内部空間16内の空気抜きにも利用可能である。

【0030】
§2 使用方法
次に、本実施形態に係るルーバー装置1の使用方法について説明する。このルーバー装置1は、例えば、屋外、半屋外空間(例えば、カフェのテラス席)、室内の窓付近、ダブルスキンの外壁とガラス材との間の領域(以下、「ダブルスキン構造内」と記載する)等に配置して、日光を遮蔽するのに利用することができる。このとき、ルーバー装置1を、防水防湿部材13が日光に当たるように配置してもよいし、防水透湿部材14が日光に当たるように配置してもよい。

【0031】
ルーバー装置1を利用場所に配置した後、ヘッドボックス11の中空部110及び給水経路125を介して水供給源から各羽根部材12の内部空間16に水を供給する。これにより、各羽根部材12は、内部空間16に水を保持した状態になる。防水防湿部材13は水及び水蒸気に対して不透過性を有しているため、内部空間16に貯留される水は、内部空間16に隣接する防水防湿部材13から外部に放出されない。一方、防水透湿部材14は、水に対して不透過性を有しているものの、水蒸気に対して透過性を有しているため、内部空間16に貯留される水は、内部空間16に隣接する防水透湿部材14から水蒸気の状態で外部に放出される。このとき、防水透湿部材14では、水の蒸発に伴い、周囲の雰囲気の熱を蒸発潜熱に転換することができる。これにより、周囲の雰囲気を冷却することができる。

【0032】
ここで、本実施形態では、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の間に上下方向に延びる複数のリブ15が水平方向に配列されており、これらの複数のリブ15によって、内部空間16は複数の部分空間に分割されている。そのため、本実施形態では、給水経路125から供給される水を各部分空間に分割して流れるようにすることができる。これにより、防水透湿部材14の広い範囲に水を行き渡らせ易くすることができる。したがって、本実施形態によれば、防水透湿部材14の広い範囲で気化熱による冷却効果が生じるようにすることができるため、周囲の雰囲気を効率的に冷却することができる。

【0033】
なお、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の少なくとも一方に比較的に柔らかい素材を利用した場合、内部空間16に貯留する水の水圧によって、各羽根部材12の形状が変形する可能性がある。これに対して、本実施形態では、防水防湿部材13及び防水透湿部材14を各リブ15で連結しているため、このような羽根部材12の変形を抑制することができる。すなわち、各リブ15は、羽根部材12の形状保持手段として機能することができる。

【0034】
また、防水防湿部材13は、防水透湿部材14側で生じる水の蒸発により間接的に冷却される。このとき、防水防湿部材13側を効率的に冷却する、すなわち、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の両側で温度差が大きくならないようにするためには、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の間の幅を1mm~10mmに抑えるのが好ましい。

【0035】
ここで、以下の条件の下で、ルーバー装置1を配置した場合に、防水透湿部材14側の温度及び防水透湿部材14と防水防湿部材13との間で生じる温度差を試算した。その結果、防水透湿部材14側の温度は気温に対して7℃低下すること、及び防水防湿部材13及び防水透湿部材14の間の幅を5mmに設定することで、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の間の温度差を0.5℃に抑えることができることが分かった。
<試算条件>
・防水防湿部材13側の気温および平均放射温度:30℃
・防水防湿部材13側の相対湿度:50%
・防水透湿部材14側の気温および平均放射温度:30℃
・防水透湿部材14側の相対湿度:50%
・防水防湿部材13側および防水透湿部材14側の表面総合熱伝達率:14W/(m2・K)
・防水透湿部材14側の湿気伝達率:5.67×10-8kg/(m2・s・Pa)
・防水防湿部材13および防水透湿部材14の熱抵抗:10.0×10-3(m2・K)/W
・防水透湿部材14の透湿抵抗:1.19×10-3((m2・s・Pa)/kg
・水の熱伝導率:0.582W/(m・K)
・水の蒸発潜熱:2500kJ/kg

【0036】
また、防水透湿部材14側に日射が当たり480W/m2の熱が吸収される場合には、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の間の幅が小さいと、防水透湿部材14側の日射熱が防水防湿部材13に伝わることが懸念される。しかしながら、防水透湿部材14側は水の蒸発により効果的に冷却されるので、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の間の幅が5mmの場合でも、防水防湿部材13は気温に対して2.7℃の上昇しか生じず、幅を小さくすることによる温度上昇への影響は小さいことも分かった。なお、防水透湿部材14側で蒸発が無い場合には、防水防湿部材13は気温に対して18.6℃も上昇してしまう。

【0037】
[特徴]
以上のとおり、本実施形態に係るルーバー装置1によれば、防水透湿部材14付近で生じる水の蒸発によって、周囲の雰囲気を冷却することができる。ここで、ルーバー装置1の各羽根部材12は、防水防湿部材13及び防水透湿部材14を用いた簡易な構成で実現される。また、防水透湿部材14の配置に基づいて、冷却範囲を制御することができる。更に、内部空間16に貯留した水を利用するため、水を常時滴下しなくてもよく、周囲の雰囲気を効率的に冷却することができる。したがって、本実施形態に係るルーバー装置1によれば、簡易な構成で、冷却範囲を制御し、かつその範囲の雰囲気を効率よく冷却することができる。

【0038】
また、本実施形態に係るルーバー装置1は、従来のミスト噴霧等とは相違し、水滴を周囲に飛散するものではない。そのため、比較的に場所を制限されることなく、ルーバー装置1を配置することができる。例えば、窓付近、ダブルスキン構造内、ペリメータゾーン等の室内の窓辺空間にルーバー装置1を配置することができる。

【0039】
更に、本実施形態に係るルーバー装置1は、周囲の雰囲気の熱を蒸発潜熱に転換する。そのため、ルーバー装置1をダブルスキン構造内に配置することで、建物外に排気されるダブルスキン構造内の空気を冷却することができる。これにより、ヒートアイランド現象の一因となっている建物から都市大気への顕熱放散を低減することができる。

【0040】
§3 変形例
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。

【0041】
<3.1>
例えば、上記実施形態に係るルーバー装置1は、縦ブラインドとして構成されている。しかしながら、ルーバー装置1のタイプは、縦ブラインドに限られなくてもよい。例えば、各羽根部材12を水平方向に向けた状態で上下方向に並べることで、ルーバー装置1は、横ブラインドとして構成されてよい。

【0042】
また、上記実施形態では、ルーバー装置1の使用方法として、日光の当たる場所に配置して、周囲の雰囲気を冷却するのに利用する形態を説明した。しかしながら、上記実施形態に係るルーバー装置1の利用形態は、このような例に限定されなくてもよい。上記実施形態に係るルーバー装置1は、防水透湿部材14から水蒸気を外部に放出する。そのため、例えば、湿度の低い場所に配置することで、ルーバー装置1を加湿器として利用してもよい。

【0043】
また、上記実施形態では、ヘッドボックス11の中空部110を介して、各羽根部材12の内部空間16に水を供給している。しかしながら、水の供給方法は、このような例に限られなくてもよい。例えば、給水経路125に通じる開口をフレーム材121に設けてもよい。この場合、この開口を通じて内部空間16に水を供給することができる。

【0044】
<3.2>
また、上記実施形態では、各羽根部材12の各リブ15は、上下方向に延びている。しかしながら、各リブ15の延びる方向は、同一方向であれば、上下方向に限られなくてもよく、上下方向に対してやや傾いていてもよい。ここで、「同一方向」とは、各リブ15の延びる方向が完全に一致している状態の他、各リブ15が重ならない程度に各リブ15の延びる方向がややずれている状態を含んでもよい。

【0045】
<3.3>
また、上記実施形態では、それぞれ略矩形状の平らな防水防湿部材13及び防水透湿部材14が1つずつ前後方向に配置されている。しかしながら、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の数は、1つに限られなくてもよく、複数であってもよい。

【0046】
図4は、防水防湿部材13及び防水透湿部材14を2つずつ備える羽根部材12Aを模式的に例示する。図4に例示される羽根部材12Aは、上記実施形態に係る羽根部材12の防水防湿部材13及び防水透湿部材14の組を2つ形成し、作成した各組を防水防湿部材13側で貼り合わせることにより、作成することができる。この羽根部材12Aによれば、両防水透湿部材14の配置される前後方向(図4の左右方向)の両側で、水蒸気を放出し、周囲の雰囲気を冷却することができる。

【0047】
<3.4>
また、上記実施形態では、各リブ15によって、羽根部材12の形状が保持される。しかしながら、各リブ15は省略されてもよい。また、各羽根部材12は、リブ以外の形状保持手段を備えてもよい。

【0048】
図5は、リブ以外の形状保持手段を備える羽根部材の一例を模式的に例示する。具体的には、図5に示される羽根部材12Bでは、防水防湿部材13及び防水透湿部材14が、キルティング模様のように互いに格子状に連結されている。この格子状の連結(図5の点線で示す部分)が、形状保持手段に相当する。防水防湿部材13及び防水透湿部材14の連結方法には、例えば、溶着、接着等を用いることができる。

【0049】
このように、防水防湿部材13及び防水透湿部材14を格子状に連結することで、羽根部材12Bの変形を抑制することができる。また、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の間の幅が大きくなり過ぎるのを防ぐことができ、これにより、内部空間16に貯留する水が防水透湿部材14の広い範囲に接するようにすることができる。したがって、当該変形例によれば、防水透湿部材14の広い範囲に水を行き渡らせて、その範囲で水の蒸発が生じるようにすることができるため、周囲の雰囲気を効率的に冷却することができる。

【0050】
<3.5>
また、上記実施形態では、防水防湿部材13及び防水透湿部材14は平らに形成されている。しかしながら、防水防湿部材13及び防水透湿部材14の形状は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。

【0051】
図6及び図7は、平らではない形状を有する防水防湿部材及び防水透湿部材を備える羽根部材の一例を模式的に例示する断面図である。図6及び図7に示される羽根部材12Cは、四角筒状に形成されている。具体的には、防水防湿部材13C及び防水透湿部材14Cが四角筒状に形成されている。防水防湿部材13Cは、防水透湿部材14Cよりも断面形状が小さくなっており、羽根部材12Cの内壁を構成している。一方、外側に配置される防水透湿部材14Cは、羽根部材12Cの外壁を構成している。防水防湿部材13C及び防水透湿部材14Cの上下方向の両端は適宜閉じられており、これによって、防水防湿部材13C及び防水透湿部材14Cの間には四角筒状の内部空間16Cが形成されている。また、防水防湿部材13Cの内側には四角柱状の中空部17Cが形成されている。

【0052】
なお、羽根部材12C(防水防湿部材13C及び防水透湿部材14C)の形状は、四角筒状に限られなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。羽根部材12Cの形状は筒状であれば、本変形例と同様の構成を実現することができる。このとき、防水防湿部材13C及び防水透湿部材14Cの形状は、一致していなくてもよい。例えば、防水防湿部材13Cを円筒状とし、防水透湿部材14Cを四角筒状としてもよい。

【0053】
この羽根部材12Cによれば、外壁の全周方向に冷却を実施することができる。したがって、この羽根部材12Cを備えるルーバー装置は、比較的に高い冷却性能が求められ、かつ冷却に利用した水蒸気を建物外に放出可能なダブルスキン構造内に配置するのに適している。

【0054】
ここで、この変形例では、羽根部材12Cの外部に放出される水蒸気の量が多くなる傾向にある。多くの水蒸気が室内に拡散すると、空調の潜熱負荷が大きくなってしまう可能性がある。そこで、これを防ぐべく、図7に示すとおり、ガラス材、ビニール材等の外周材18で、水蒸気が周囲に拡散するのを防止するために各羽根部材12Cの周囲を覆ってもよい。なお、図7の例では、複数の羽根部材12Cを一度に外周材18で覆っている。しかしながら、外周材18で羽根部材12Cを覆う方法は、このような例に限定されなくてもよく、個々の羽根部材12Cを外周材18で覆ってもよい。

【0055】
また、図8に示すとおり、上記防水防湿部材13C及び防水透湿部材14Cの配置は反対であってもよい。図8は、当該変形例に係る羽根部材12Dを模式的に例示する断面図である。図8に示される羽根部材12Dでは、防水透湿部材14Dが、防水防湿部材13Dよりも断面形状が小さくなっている。これにより、防水透湿部材14Dが羽根部材12Dの内壁を構成しており、防水防湿部材13Dが羽根部材12Dの外壁を構成している。防水防湿部材13D及び防水透湿部材14Dの間には四角筒状の内部空間16Dが形成されており、防水透湿部材14Dの内側には四角柱状の中空部17Dが形成されている。

【0056】
なお、羽根部材12D(防水防湿部材13D及び防水透湿部材14D)の形状も、上記羽根部材12Cと同様に、四角筒状に限られなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。羽根部材12Dの形状は筒状であれば、本変形例と同様の構成を実現することができる。このとき、防水防湿部材13D及び防水透湿部材14Dの形状は、一致していなくてもよい。例えば、防水防湿部材13Dを四角筒状とし、防水透湿部材14Cを円筒状としてもよい。

【0057】
この羽根部材12Dによれば、外壁を構成する防水防湿部材13Dで日射を吸収し、冷却に利用した水蒸気を中空部17D側に排出するようにすることができる。これにより、放出される水蒸気が室内に拡散するのを防止することができる。なお、この変形例では、防水防湿部材13を日に当たるように配置する上記形態と同様に、防水防湿部材13D及び防水透湿部材14Dの間の幅は、1mm~10mmに抑えるのが好ましい。

【0058】
また、図9は、本変形例に係る羽根部材12Dの下端側にファン19を配置した形態を例示する。このファン19により、中空部17D内を下方向から上方向に通風することができる。そこで、この羽根部材12Dの上端部を、排気ダクトを有するヘッドボックスに取り付けることで、中空部17D側に放出された水蒸気が、排気ダクトを介して排出されるようにしてもよい。なお、ファン19は、排気ダクト内に配置してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ルーバー装置(蒸発冷却装置)、
11…ヘッドボックス、110…中空部、
12…羽根部材(水保持部材)、
121~124…フレーム材、
125…給水経路(供給経路)、126…排水経路、
13…防水防湿部材、14…防水透湿部材、
15…リブ、16…内部空間
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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