TOP > 国内特許検索 > HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択するためのキットおよび方法 > 明細書

明細書 :HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択するためのキットおよび方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年11月22日(2018.11.22)
発明の名称または考案の名称 HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択するためのキットおよび方法
国際特許分類 G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI G01N 33/543 521
G01N 33/543 541Z
G01N 33/543 501D
G01N 33/574 A
A61K 39/395 E
A61K 39/395 T
A61P 35/00
国際予備審査の請求
全頁数 27
出願番号 特願2017-563804 (P2017-563804)
国際出願番号 PCT/JP2017/002645
国際公開番号 WO2017/131066
国際出願日 平成29年1月26日(2017.1.26)
国際公開日 平成29年8月3日(2017.8.3)
優先権出願番号 2016014465
優先日 平成28年1月28日(2016.1.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】武藤 学
【氏名】吉岡 正博
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100077012、【弁理士】、【氏名又は名称】岩谷 龍
審査請求 未請求
テーマコード 4C085
Fターム 4C085AA13
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE01
要約 本発明は、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択するためのキットおよび方法を提供する。本発明のキットは、試料が流れる方向の上流から順に、試料を添加するサンプルパッド、第一の抗HER2タンパク質抗体が保持されたコンジュゲートパッド、第二の抗HER2タンパク質抗体および第一の抗HER2タンパク質抗体に結合する抗体が固相化された領域を有するメンブレン、吸収パッドが連結された構成を有し、第一の抗HER2タンパク質抗体および第二の抗HER2タンパク質抗体のいずれか一方に、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬を用いたラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを含み、本発明の方法は、当該テストストリップを用いたラテラルフローイムノアッセイにより患者のがん組織中のHER2タンパク質を検出する工程を含む。
特許請求の範囲 【請求項1】
HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択するためのキットであって、がん組織中のHER2タンパク質を検出するためのラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを含み、該テストストリップは、試料が流れる方向の上流から順に、試料を添加するサンプルパッド、第一の抗HER2タンパク質抗体が保持されたコンジュゲートパッド、第二の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域および第一の抗HER2タンパク質抗体に結合する抗体が固相化された領域を有するメンブレン、ならびに吸収パッドが連結された構成を有し、前記第一の抗HER2タンパク質抗体および第二の抗HER2タンパク質抗体のいずれか一方に、前記抗体医薬を用いることを特徴とするキット。
【請求項2】
前記抗体医薬が、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびトラスツズマブ-エムタンシンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第一の抗HER2タンパク質抗体がコロイド微粒子で標識されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記第一の抗HER2タンパク質抗体に前記抗体医薬を用いることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のキット。
【請求項5】
前記第二の抗HER2タンパク質抗体に前記抗体医薬を用いることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のキット。
【請求項6】
前記メンブレンが、第三の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域、または、第三の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域と第四の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域をさらに含み、前記第二の抗HER2タンパク質抗体、前記第三の抗HER2タンパク質抗体および前記第四の抗HER2タンパク質抗体はそれぞれ異なる前記抗体医薬であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のキット。
【請求項7】
被験者から採取されたがん組織から調製したタンパク質抽出液を試料とすることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のキット。
【請求項8】
前記がん組織が生検組織であることを特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記がん組織が上部消化管のがん組織であることを特徴とする請求項7または8に記載のキット。
【請求項10】
HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択する方法であって、以下の工程(1)~(3)を含むことを特徴とする方法:
(1)被験者から採取されたがん組織から試料を調製する工程、
(2)前記HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬を用いたラテラルフローイムノアッセイにより前記試料中のHER2タンパク質を検出する工程、および
(3)前記ラテラルフローイムノアッセイで陽性を示した被験者を選択する工程。
【請求項11】
前記抗体医薬が、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびトラスツズマブ-エムタンシンからなる群より選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(2)において、試料が流れる方向の上流から順に、試料を添加するサンプルパッド、第一の抗HER2タンパク質抗体が保持されたコンジュゲートパッド、第二の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域および第一の抗HER2タンパク質抗体に結合する抗体が固相化された領域を有するメンブレン、ならびに吸収パッドが連結された構成を有するラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを用い、前記第一の抗HER2タンパク質抗体および第二の抗HER2タンパク質抗体のいずれか一方に、前記抗体医薬を用いることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の抗HER2タンパク質抗体がコロイド微粒子で標識されていることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の抗HER2タンパク質抗体に前記抗体医薬を用いることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記第二の抗HER2タンパク質抗体に前記抗体医薬を用いることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記メンブレンが、第三の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域、または、第三の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域と第四の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域をさらに含み、前記第二の抗HER2タンパク質抗体、前記第三の抗HER2タンパク質抗体および前記第四の抗HER2タンパク質抗体はそれぞれ異なる抗体医薬であることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項17】
前記がん組織が生検組織であることを特徴とする請求項10~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記がん組織が上部消化管のがん組織であることを特徴とする請求項10~17のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択するためのキットおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
HER2タンパク質はヒトがん遺伝子HER2/neu(c-erbB-2)の遺伝子産物で、HERファミリーとして知られる一連の上皮系増殖因子受容体タンパク質(HER1~4)の一つであり、細胞質側にチロシンキナーゼ活性領域を有する分子量約185000の膜貫通型タンパク質である。HER2タンパク質は、細胞表面に発現したHERファミリータンパク質とホモダイマーまたはヘテロダイマーを形成して、上皮系増殖因子の増殖シグナルを核に伝達する役割を担っている。これまでに、乳がん、胃がん、食道がん、大腸がん、胆管がん、胆嚢がん、非小細胞肺がん、頭頸部がん、膀胱がん、卵巣がん、子宮がん、唾液腺がんなどの一定の患者にHER2の過剰発現が確認されており、予後とHER2過剰発現の関連が研究されている。
【0003】
HER2タンパク質を標的とする分子標的薬として、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(商品名「ハーセプチン(登録商標)」)が薬価収載されており、HER2過剰発現が確認された乳がん、および、HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がんについての適用が承認されている。近年、分子標的薬の開発による治癒率の向上がもたらされる一方で、医療経済性も重視され、より適正な対象への使用が求められることから、トラスツズマブについても投与に先立って、その標的分子であるHER2タンパク質の過剰発現を確認する検査およびHER2遺伝子増幅を確認する検査が不可欠となっている。胃がんの場合、HER2タンパク過剰発現には免疫組織化学(IHC)、HER2遺伝子増幅にはin situ hybridization(ISH)法が使用されている(非特許文献1)。
【0004】
非特許文献2には、胃がん61症例で、手術前の内視鏡下生検により得られた試料と手術により得られた試料とのHER2過剰発現検査結果の一致率が報告されている。これによれば、生検試料で陰性結果が得られた後に、手術により得られた試料で陽性結果が得られた症例が3例(4.9%)あった。この結果は、生検試料で偽陰性が発生することを示しており、これらの患者は本来トラスツズマブによる治療が有効であるにも関わらず、その後に手術試料で陽性の結果が得られない限りトラスツズマブによる標準治療が受けられないことを意味する。すなわち、現行の検査法は生検試料で正確な判断を行うには不十分であると言わざるを得ない。
【0005】
このように、現行の生検試料を用いるHER2過剰発現検査(IHCおよびISH)では、数%程度の偽陰性が発生するため、トラスツズマブによる治療の恩恵に与るべき症例が見逃される可能性がある。また、IHCおよびISHのどちらも工程数が多く、手技が煩雑で、検査結果に影響を与える因子が複数存在し、施設や病理医師により結果が異なる場合がある。さらに、生検試料採取から検査結果が得られるまで数日から数週間を要し、迅速性に欠けるという問題もある。それゆえ、迅速、簡便かつ確実にHER2過剰発現患者を選択できる検査方法の確立が望まれている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Bang YJ, Van Cutsem E, Feyereislova A, et al: Trastuzumab in combination with chemotherapy versus chemotherapy alone for treatment of HER2-positive advanced gastric or gastro-oesophageal junction cancer(ToGA): a phase 3, open-label, randomised controlled trial. Lancet 2010 Aug 28;376(9742):687-97.
【非特許文献2】Pirrelli M, Caruso ML, Di Maggio M, Armentano R, Valentini AM. Are biopsy specimens predictive of HER2 status in gastric cancer patients? Digestive diseases and sciences. 2013;58(2):397-404.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生検試料を用いても偽陰性が発生せず、迅速、簡便かつ確実にHER2タンパク質過剰発現患者を選択できるキットおよび方法を提供することを課題とする。また本発明は、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択するためのキットおよび方法を提供することを課題とする。さらに本発明は、患者に適した抗体医薬を選択できるキットおよび方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために以下の各発明を包含する。
[1]HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択するためのキットであって、がん組織中のHER2タンパク質を検出するためのラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを含み、該テストストリップは、試料が流れる方向の上流から順に、試料を添加するサンプルパッド、第一の抗HER2タンパク質抗体が保持されたコンジュゲートパッド、第二の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域および第一の抗HER2タンパク質抗体に結合する抗体が固相化された領域を有するメンブレン、ならびに吸収パッドが連結された構成を有し、前記第一の抗HER2タンパク質抗体および第二の抗HER2タンパク質抗体のいずれか一方に、前記抗体医薬を用いることを特徴とするキット。
[2]前記抗体医薬が、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびトラスツズマブ-エムタンシンからなる群より選択されることを特徴とする前記[1]に記載のキット。
[3]前記第一の抗HER2タンパク質抗体がコロイド微粒子で標識されていることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のキット。
[4]前記第一の抗HER2タンパク質抗体に前記抗体医薬を用いることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のキット。
[5]前記第二の抗HER2タンパク質抗体に前記抗体医薬を用いることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載のキット。
[6]前記メンブレンが第三の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域、または、第三の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域と第四の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域をさらに含み、前記第二の抗HER2タンパク質抗体、前記第三の抗HER2タンパク質抗体および前記第四の抗HER2タンパク質抗体はそれぞれ異なる前記抗体医薬であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載のキット。
[7]被験者から採取されたがん組織から調製したタンパク質抽出液を試料とすることを特徴とする前記[1]~[6]のいずれかに記載のキット。
[8]前記がん組織が生検組織であることを特徴とする前記[7]に記載のキット。
[9]前記がん組織が上部消化管のがん組織であることを特徴とする前記[7]または[8]に記載のキット。
[10]HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択する方法であって、以下の工程(1)~(3)を含むことを特徴とする方法:
(1)被験者から採取されたがん組織から試料を調製する工程、
(2)前記HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬を用いたラテラルフローイムノアッセイにより前記試料中のHER2タンパク質を検出する工程、および
(3)前記ラテラルフローイムノアッセイで陽性を示した被験者を選択する工程。
[11]前記抗体医薬が、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびトラスツズマブ-エムタンシンからなる群より選択されることを特徴とする前記[10]に記載の方法。
[12]前記工程(2)において、試料が流れる方向の上流から順に、試料を添加するサンプルパッド、第一の抗HER2タンパク質抗体が保持されたコンジュゲートパッド、第二の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域および第一の抗HER2タンパク質抗体に結合する抗体が固相化された領域を有するメンブレン、ならびに吸収パッドが連結された構成を有するラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを用い、前記第一の抗HER2タンパク質抗体および第二の抗HER2タンパク質抗体のいずれか一方に、前記抗体医薬を用いることを特徴とする前記[10]または[11]に記載の方法。
[13]前記第一の抗HER2タンパク質抗体がコロイド微粒子で標識されていることを特徴とする前記[12]に記載の方法。
[14]前記第一の抗HER2タンパク質抗体に前記抗体医薬を用いることを特徴とする前記[12]または[13]に記載の方法。
[15]前記第二の抗HER2タンパク質抗体に前記抗体医薬を用いることを特徴とする前記[12]または[13]に記載の方法。
[16]前記メンブレンが、第三の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域、または、第三の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域と第四の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域をさらに含み、前記第二の抗HER2タンパク質抗体、前記第三の抗HER2タンパク質抗体および前記第四の抗HER2タンパク質抗体はそれぞれ異なる抗体医薬であることを特徴とする前記[12]または[13]に記載の方法。
[17]前記がん組織が生検組織であることを特徴とする前記[10]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18]前記がん組織が上部消化管のがん組織であることを特徴とする前記[10]~[17]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生検試料を用いても偽陰性が発生せず、迅速、簡便かつ確実にHER2タンパク質過剰発現患者を選択できるキットおよび方法を提供することができる。また、本発明は、HER2タンパク質を検出するための抗体にHER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬を用いるので、当該抗体医薬の患者に対する有効性を評価することができる。さらに、現行の生検試料を用いるHER2過剰発現検査(IHCおよびISH)と比較して操作が簡単で熟練を要しないので、精度管理が向上し、施設間や判定医師間での結果のばらつきを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明で用いるラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップの一例の構造を示す模式図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図2】各種胃がん細胞株から調製したタンパク質抽出液中のHER2タンパク質をウエスタンブロッティング法で確認した結果と、試料中のHER2タンパク質濃度をウエスタンブロッティング画像に基づくデンシトメトリーで定量した結果を示す図である。
【図3】各種胃がん細胞株から調製したタンパク質抽出液中のHER2タンパク質を、実施例1のハーフストリップを用いて検出した結果を示す図である。
【図4】MKN7細胞から調製したタンパク質抽出液中のHER2タンパク質を、トラスツズマブの固相化量が異なる5種類のハーフストリップを用いて検出した結果を示す図である。
【図5】MKN7細胞およびHER2の発現レベルが低い乳がん細胞株MCF7から調製したタンパク質抽出液中のHER2タンパク質を、実施例1のラテラルフローストリップを用いて検出した結果を示す図である。
【図6】各種胃がん細胞株から調製したタンパク質抽出液中のHER2タンパク質をウエスタンブロッティング法で確認し、試料中の単位タンパク質当たりのHER2タンパク質量をELISAで定量した結果を示す図である。
【図7】各種胃がん細胞株から調製したタンパク質抽出液に含まれるHER2タンパク質を、実施例5のラテラルフローストリップを用いて検出した結果を示す図である。
【図8】GLM1細胞から調製したタンパク質抽出液を希釈した試料中のHER2タンパク質を、実施例5のラテラルフローストリップを用いて検出した結果を示す図である。
【図9】ヌードマウスの皮下に形成させたGLM1細胞由来の腫瘍およびMKN45細胞由来の腫瘍、ならびにHER2陽性胃がん患者から採取した生検検体から調製したタンパク質抽出液中のHER2タンパク質を、実施例5のラテラルフローストリップを用いて検出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択するためのキットを提供する。また本発明は、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を選択する方法を提供する。本発明のキットおよび方法は、どちらもHER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬を用いたラテラルフローイムノアッセイにより、がん組織中のHER2タンパク質を検出することを特徴としている。本発明は、試料中のHER2タンパク質を検出するために構成されたラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを用いて実施することが好ましい。

【0012】
本発明に使用することのできるラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップの基本構成は特に限定されず、通常のラテラルフローイムノアッセイに使用される公知のテストストリップの構成を採用することができる。例えば、図1に示すようにメンブレン1、吸収パッド2、コンジュゲートパッド3、サンプルパッド4およびバックシート5から構成され、試料が流れる方向の上流から順に(図1の展開方向の矢印の方向に)、サンプルパッド4、コンジュゲートパッド3、メンブレン1および吸収パッド2が連結されたテストストリップを好適に用いることができる。

【0013】
〔メンブレン〕
メンブレンは、クロマトグラフ媒体として短時間での判定で十分な感度が得られる展開速度を有するものであれば、その素材は限定されない。例えばニトロセルロース膜、セルロース膜、アセチルセルロース膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ナイロン膜、ガラス繊維、不織布、濾紙などを好ましく用いることができる。メンブレンには、後述するように、抗体が固相化された領域が形成される。

【0014】
〔サンプルパッド〕
サンプルパッドの素材としては、例えばセルロース膜、ガラス繊維、ポリウレタン、ポリアセテート、セルロースアセテート、ナイロン、綿布等の均一な特性を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。サンプルパッドは試料を添加する部分であるが、試料中の不溶物粒子等を濾過する機能も有する。

【0015】
〔コンジュゲートパッド〕
コンジュゲートパッドの素材としては、例えばセルロース膜、ガラス繊維、不織布などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。コンジュゲートパッドは、標識された抗HER2タンパク質抗体を上記パッドの素材に均一に染み込ませて乾燥させることにより作製される。コンジュゲートパッドの作製方法については後述する。

【0016】
〔吸収パッド〕
吸収パッドは、添加された試料が毛細管現象により物理的に吸収されると共に、メンブレンの固相化抗体に結合しなかった試料中のHER2タンパク質と抗HER2タンパク質抗体との複合体を吸収除去する部位である。素材としては、セルロ-ス膜、不織布、布、セルロースアセテート膜などの吸水性材料を好ましく用いることができる。吸収パッドの材質、大きさにより、添加した試料の展開速度を所望の速度に設定することができる。

【0017】
〔抗HER2タンパク質抗体〕
本発明は、少なくとも第一の抗HER2タンパク質抗体と第二の抗HER2タンパク質抗体を使用するラテラルフローイムノアッセイにおいて、第一の抗HER2タンパク質抗体および第二の抗HER2タンパク質抗体のいずれか一方にHER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬を用いることを特徴とする。HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬としては、トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン、中外製薬)、ペルツズマブ(商品名:パージェタ、中外製薬)、トラスツズマブ-エムタンシン(商品名:カドサイラ、中外製薬)などが挙げられる。これらの抗体医薬は薬価収載されており、購入して使用することができる。

【0018】
HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬以外の抗HER2タンパク質抗体は、ヒトHER2タンパク質と特異的に結合できる抗体であれば特に限定されない。市販の抗ヒトHER2タンパク質抗体や、ヒトHER2タンパク質と交差性を有する抗HER2タンパク質抗体などを好適に用いることができる。また、抗ヒトHER2タンパク質抗体を自作して使用することができる。抗HER2タンパク質抗体はポリクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体でもよく、抗体フラグメントでもよい。好ましくは、抗ヒトHER2タンパク質モノクローナル抗体、またはHER2タンパク質との結合能を有するそのフラグメントである。第一の抗HER2タンパク質抗体と第二の抗HER2タンパク質抗体は異なる抗体であることが好ましい。第一の抗HER2タンパク質抗体が抗体医薬である場合は、第二の抗HER2タンパク質抗体は抗体医薬以外の抗ヒトHER2タンパク質抗体であることが好ましく、第一の抗HER2タンパク質抗体が抗体医薬以外の抗ヒトHER2タンパク質抗体である場合は、第二の抗HER2タンパク質抗体は抗体医薬であることが好ましい。

【0019】
〔抗HER2タンパク質抗体の標識〕
コンジュゲートパッドに保持される第一の抗HER2タンパク質抗体は標識されていることが好ましい。標識物質は、抗体の標識に用いられる公知の標識物質であれば特に限定されないが、免疫凝集反応に使用可能な公知のコロイド微粒子を用いることが好ましい。具体的には、例えば金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、鉄コロイド、水酸化アルミニウムコロイド、ラテックス粒子、これらの複合コロイドなどが挙げられる。好ましくは、金コロイド、銀コロイド、白金コロイドなどの着色金属コロイド、またはこれらの複合コロイドである。より好ましくは、赤色を示す金コロイド、黄色を示す銀コロイドであり、さらに好ましくは金コロイドである。コロイド微粒子の平均粒径は、約1nm~約500nmが好ましく、約10nm~約150nmがより好ましく、約20nm~約100nmがさらに好ましい。コロイド微粒子として金コロイドを用いる場合、市販の金コロイド粒子や金コロイド標識キットを好適に用いることができる。または公知の方法により金コロイド粒子を調製してもよい。公知の金コロイド粒子の調製方法としては、例えば塩化金酸をクエン酸ナトリウムで還元する方法などが挙げられる。

【0020】
〔コントロール抗体〕
本明細書では、第一の抗HER2タンパク質抗体に結合する抗体をコントロール抗体と称する。したがって、コントロール抗体には、第一の抗HER2タンパク質抗体、すなわち標識された抗HER2タンパク質抗体と結合できる抗体が使用される。コントロール抗体は、使用する標識抗HER2タンパク質抗体と結合できる抗体であれば特に限定されず、標識抗HER2タンパク質抗体の動物種および抗体のクラスに応じて、市販の抗体から適宜選択して使用することができる。また、コントロール抗体を自作して使用することができる。コントロール抗体はポリクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体でもよく、第一の抗HER2タンパク質抗体に結合能を有する抗体フラグメントでもよい。

【0021】
〔コンジュゲートパッドの作製〕
標識された抗HER2タンパク質抗体をパッド素材(セルロース膜、ガラス繊維、不織布など)に保持させる方法は特に限定されない。例えば、標識された抗HER2タンパク質抗体を適当な溶媒に懸濁してコロイド溶液とし、当該コロイド溶液を塗布、スプレー、浸漬等によりパッド素材に均一に染み込ませて、その後乾燥させる方法を用いることができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば自然乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、熱乾燥等の乾燥手段を用いることができる。コンジュゲートパッドに保持された抗HER2タンパク質抗体は、試料により容易に溶出され、試料と共に移動しながら試料中のHER2タンパク質に結合する必要がある。そのため、抗HER2タンパク質抗体を懸濁する溶媒に、スクロース、マルトース、ラクトース等の糖類、マンニトール等の糖アルコールを添加することが好ましい。あるいは、これらの物質を予めパッド素材にコーティングしておいてもよい。

【0022】
〔メンブレンへの抗体の固相化〕
メンブレンには、第二の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域およびコントロール抗体が固相化された領域が形成される。メンブレンは、さらに第三の抗HER2タンパク質抗体が固相化された領域を有していてもよい。抗体をメンブレンに固相化する方法は特に限定されず、公知の物理的手段または化学的手段により固相化することができる。例えば、抗体溶液をメンブレン表面に滴下して乾燥させることにより、抗体をメンブレンに物理的に吸着させる方法などが挙げられる。抗体固相化領域の形状は、局所的に抗体が固相化されて、着色が目視で確認できる形状であれば特に限定されない。例えば円状、帯状、線状などが挙げられる。固相化する抗体量は、検出感度を考慮して適宜設定することができる。例えば、1領域の抗体量が約0.01μg~約5μgの範囲で固相化することが好ましい。

【0023】
〔サンプルパッドの非特異的吸着防止処理〕
試料中の分析対象物がサンプルパッドの材質に非特異的に吸着することを防止するために、サンプルパッドに対して非特異的吸着防止処理を行うことが好ましい。非特異的吸着防止処理としては、例えばBSA(ウシ血清アルブミン)、スキムミルク、カゼイン等の公知のブロッキング剤をサンプルパッドに均一に染み込ませて乾燥させる方法などが挙げられる。具体的には、例えば濃度が約1質量%~約5質量%になるように適当な溶媒を用いてブロッキング剤溶液を調製し、この溶液をテストストリップ1枚当たり約60μL染み込ませて、その後乾燥することにより、非特異的吸着防止処理を行うことができる。非特異的吸着防止処理はメンブレンに行ってもよく、サンプルパッドとメンブレンの両方に行ってもよい。メンブレンの非特異的吸着防止処理は、上記サンプルパッドの非特異的吸着防止処理と同様に行うことができる。

【0024】
〔ラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップの作製〕
ラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップは、試料が流れる方向(図1の矢印の方向)の上流から下流に向かって、サンプルパッド4、コンジュゲートパッド3、メンブレン1および吸収パッド2を連結することにより作製することができる。各部材間で毛細管現象を生じさせ易くするために、隣接する部材を1mm~7mm程度重ね合わせることが好ましい。また、これらの部材を粘着剤付きのバッキングシート上に貼付することが好ましい。バッキングシートとしては、市販のイムノクロマト用バッキングシートを好適に用いることができる。

【0025】
〔試料の調製〕
試料はがん患者から採取されたがん組織から調製される。対象のがん患者は、HER2が過剰発現しているがんを患っていることが疑われるがん患者である。HER2の過剰発現が確認されているがんとしては、乳がん、胃がん、食道がん、大腸がん、胆管がん、胆嚢がん、非小細胞肺がん、頭頸部がん、膀胱がん、卵巣がん、子宮がん、唾液腺がんなどが挙げられる。したがって、対象のがん患者は、これらのがんを患っているがん患者であることが好ましい。より好ましくは、乳がん患者、胃がん患者、食道がん患者、大腸がん患者、胆管がん患者、頭頸部がん患者であり、さらに好ましくは乳がん患者、胃がん患者であり、特に好ましくは胃がん患者である。

【0026】
がん組織は、検査対象のがん患者から採取されたものであればよい。生検組織でもよく、手術により摘出されたがん組織でもよい。好ましくは内視鏡検査により採取された生検組織であり、より好ましくは、上部消化管内視鏡検査により採取された生検組織である。
上記のがん組織からタンパク質抽出液を調製し、これをラテラルフローイムノアッセイの試料に用いることが好ましい。タンパク質抽出液は、公知の方法を用いて調製することができる。具体的には、例えば、がん組織に市販の組織溶解液(例えば、RIPA(Radio-Immunoprecipitation Assay)バッファーなど)を添加してホモジネートし、得られた組織溶解液を遠心分離し、その上清をタンパク質抽出液として使用することができる。得られたタンパク質抽出液は、-80℃で凍結保存することができる。タンパク質抽出液は、ラテラルフローイムノアッセイに供する際に、試料中の総タンパク質量が一定の範囲に収まるように、適宜希釈して使用することが好ましい。試料中の総タンパク質量は、検出感度を考慮して適宜設定することができる。タンパク質濃度は、公知の方法(例えば、市販のタンパク質定量キット)を用いて測定することができる。サンプルパッドへの試料の添加量は、テストストリップの大きさや形状に応じて適宜設定することができる。

【0027】
〔判定方法〕
判定は、通常、メンブレンに形成された抗HER2タンパク質抗体固相化領域の着色を目視で観察することにより行われる。また、市販のイムノクロマトリーダーを使用することもできる。なお、コントロール抗体固相化領域の着色が観察されない場合は、検査は無効と判定する。

【0028】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態は、第一の抗HER2タンパク質抗体として、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬を用いたラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを使用して実施される。ここでは抗体医薬としてトラスツズマブを用いる場合について説明するが、トラスツズマブ以外の抗体医薬を用いる場合も同様に実施することができる。

【0029】
トラスツズマブは金コロイド標識され、コンジュゲートパッドに保持される。第二の抗HER2タンパク質抗体には、ヒトHER2タンパク質と特異的に結合できる市販の抗HER2タンパク質抗体を用いる。コントロール抗体には金コロイド標識されたトラスツズマブと結合できる抗体(例えば、抗ヒトIgG抗体など)を用いる。第二の抗HER2タンパク質抗体とコントロール抗体は、メンブレン上の異なる領域にそれぞれ固相化されている。

【0030】
試料(タンパク質抽出液)をサンプルパッドに添加すると、コンジュゲートパッドの方向に展開する。コンジュゲートパッドに到達した試料は保持されている金コロイド標識トラスツズマブを溶出しながらさらに下流に展開する。試料中にHER2タンパク質が存在する場合は、金コロイド標識トラスツズマブがHER2タンパク質と結合し、複合体を形成する。この複合体は、メンブレンに固相化された第二の抗HER2タンパク質抗体およびコントロール抗体に捕捉され、各固相化領域は赤色に着色される。コントロール抗体には複合体を形成していない金コロイド標識トラスツズマブも捕捉される。試料中にHER2が存在しない場合は、金コロイド標識トラスツズマブはHER2タンパク質と複合体を形成しないので、コントロール抗体固相化領域は金コロイド標識トラスツズマブを捕捉して赤色に着色するが、第二の抗HER2タンパク質抗体固相化領域は着色しない。したがって、コントロール抗体固相化領域が着色することを前提として、第二の抗HER2タンパク質抗体固相化領域が着色した場合に陽性と判定し、第二の抗HER2タンパク質抗体固相化領域が着色しなかった場合に陰性と判定する。陽性と判定された患者は、トラスツズマブによる治療が有効な患者と判断することができる。

【0031】
本実施形態において、トラスツズマブに代えてペルツズマブを用いた場合、陽性と判定された患者は、ペルツズマブによる治療が有効な患者と判断することができる。また、本実施形態において、トラスツズマブに代えてトラスツズマブ-エムタンシンを用いた場合、陽性と判定された患者は、トラスツズマブ-エムタンシンによる治療が有効な患者と判断することができる。

【0032】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態は、第二の抗HER2タンパク質抗体として、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬を用いたラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを使用して実施される。ここでは抗体医薬としてトラスツズマブを用いる場合について説明するが、トラスツズマブ以外の抗体医薬を用いる場合も同様に実施することができる。

【0033】
第一の抗HER2タンパク質抗体には、ヒトHER2タンパク質と特異的に結合できる市販の抗HER2タンパク質抗体を用いる。第一の抗HER2タンパク質抗体は金コロイド標識され、コンジュゲートパッドに保持される。コントロール抗体には、金コロイド標識された第一の抗HER2タンパク質抗体と結合できる抗体を用いる。トラスツズマブとコントロール抗体は、メンブレン上の異なる領域にそれぞれ固相化されている。

【0034】
試料添加後は上記第1の実施形態と同様に試料が展開する。試料中にHER2タンパク質が存在する場合は、トラスツズマブ固相化領域とコントロール抗体固相化領域の両方が赤色に着色し、試料中にHER2タンパク質が存在しない場合は、コントロール抗体固相化領域のみが赤色に着色する。したがって、コントロール抗体固相化領域が着色することを前提として、トラスツズマブ固相化領域が着色した場合に陽性と判定し、トラスツズマブ固相化領域が着色しなかった場合に陰性と判定する。陽性と判定された患者は、トラスツズマブによる治療が有効な患者と判断することができる。

【0035】
本実施形態において、トラスツズマブに代えてペルツズマブを用いた場合、陽性と判定された患者は、ペルツズマブによる治療が有効な患者と判断することができる。また、本実施形態において、トラスツズマブに代えてトラスツズマブ-エムタンシンを用いた場合、陽性と判定された患者は、トラスツズマブ-エムタンシンによる治療が有効な患者と判断することができる。

【0036】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態は、上記第2の実施形態において、第二の抗HER2タンパク質抗体とは異なる、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬を、さらにメンブレンに固相化したラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを使用して実施される。第二の抗HER2タンパク質抗体とは異なる、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬は1種類でもよく、2種類以上でもよい。2種類の抗体医薬をそれぞれ第二および第三の抗HER2タンパク質抗体として用いる場合、例えば、トラスツズマブとペルツズマブの組み合わせ、ペルツズマブとトラスツズマブ-エムタンシンの組み合わせ、トラスツズマブとトラスツズマブ-エムタンシンの組み合わせなどを選択することができる。3種類の抗体医薬をそれぞれ第二、第三および第四の抗HER2タンパク質抗体として用いる場合、例えば、トラスツズマブとペルツズマブとトラスツズマブ-エムタンシンの組み合わせなどを選択することができる。

【0037】
第3の実施形態では、コントロール抗体固相化領域が着色することを前提として、複数設けた抗体医薬固相化領域の少なくとも1つが着色した場合に陽性と判定し、複数設けた抗体医薬固相化領域の全てが着色しなかった場合に陰性と判定する。例えば3種類の抗体医薬固相化領域を有するラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを使用した場合、三か所の抗体医薬固相化領域の全てが着色した患者のがん組織は、固相化されたいずれの抗体医薬とも結合性の高いHER2タンパク質を過剰発現していると考えられるため、固相化された抗体医薬の全てが有効な患者と判断することができる。着色した抗体医薬固相化領域と着色しなかった抗体医薬固相化領域が混在した患者のがん組織は、着色した領域に固相化された抗体医薬との結合性が高く、着色しなかった領域に固相化された抗体医薬との結合性が低いHER2タンパク質を過剰発現していると考えられるため、着色した領域に固相化された抗体医薬による治療は有効であるが、着色しなかった領域に固相化された抗体医薬による治療は有効でないと判断することができる。2種類の抗体医薬を用いた場合、および4種類以上の抗体医薬を用いた場合も同様に判断することができる。

【0038】
このように、第3の実施形態は、個々のがん患者の治療に使用する抗体医薬の選択に利用することができる点で非常に有用性が高いと考えられる。さらに新たな抗体医薬が開発された場合には、抗HER2タンパク質抗体固相化領域の数を増やすことにより、使用可能な複数の抗体医薬の中から患者に適した抗体医薬を選択することができると考えられる。

【0039】
本発明のキットは、がん組織中のHER2タンパク質を検出するためのラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップを含むものであればよい。当該ラテラルフローイムノアッセイ用テストストリップについては、既に説明した通りである。これら以外の具体的なキットの構成については特に限定されるものではなく、他に必要な試薬、器具、使用説明書等を適宜選択してキットの構成とすればよい。本発明のキットを用いることにより、HER2タンパク質を治療標的分子とする抗体医薬の投与が有効ながん患者を迅速、簡便かつ確実に選択することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない場合、%は質量%を示す。
【実施例】
【0041】
〔参考例1:ウエスタンブロッティング法による胃がん細胞株のHER2発現の検討〕
1.実験材料および方法
(1)使用細胞
ヒト胃がん細胞株として、MKN1(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB1003)、MKN7(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB0999)、MKN45(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB1001)、MKN74(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB1002)、GLM1(Nakanishi, H., K. Yasui, Y. Ikehara, H. Yokoyama, S. Munesue, Y. Kodera and M. Tatematsu. "Establishment and Characterization of Three Novel Human Gastric Cancer Cell Lines with Differentiated Intestinal Phenotype Derived from Liver Metastasis." Clin Exp Metastasis 22, no. 2 (2005): 137-47.)、GLM2(同上)、GLM4(Yokoyama, H., Y. Ikehara, Y. Kodera, S. Ikehara, Y. Yatabe, Y. Mochizuki, M. Koike, M. Fujiwara, A. Nakao, M. Tatematsu and H. Nakanishi. "Molecular Basis for Sensitivity and Acquired Resistance to Gefitinib in Her2-Overexpressing Human Gastric Cancer Cell Lines Derived from Liver Metastasis." Br J Cancer 95, no. 11 (2006): 1504-13.)、AGS(ATCC番号:CRL-1739)、KATOIII(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB2088)、HGC27(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB0500)を用いた。GLM1、GLM2およびGLM4は、愛知県がんセンター研究所から供与を受けた。
対照として、乳がん細胞株MCF7(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB1904)を用いた。MCF7はHER2の発現レベルが低いことが知られている。
細胞は100mm細胞培養用ディッシュで培養した。培地には、各細胞に適した公知の培地を選択して使用した。
【実施例】
【0042】
(2)タンパク質抽出液の調製
細胞を培養しているディッシュの培地を廃棄し、PBSで2回洗浄した。プロテアーゼインヒビター(Roche社、Complete Mini)を加えたRIPAバッファー(10mM Tris-HCl、pH7.4 150mM NaCl、1% NP40、0.1% SDS、0.1% sodium deoxycholate (DOC)、1mM EDTA、1mM Na3VO4、2mM PMSF)をディッシュに加え細胞を溶解し、スクレイパーで細胞溶解液を掻き取り、回収した。得られた細胞溶解液を遠心分離し(14,000rpm, 4℃, 30min)、上清をタンパク質抽出液として-80℃で保存した。使用時に融解して試験に供した。
【実施例】
【0043】
(3)ウエスタンブロッティング
上記(2)で調製した各細胞のタンパク質抽出液のタンパク質濃度をPIERCE BCA Protein Assay Kit(ThermoFischer Scientific社)を用いて定量した。タンパク質濃度が15μg/レーンになるようにサンプルバッファー(ナカライテスク社、Sample Buffer Solution with Reducing Reagent(6x) for SDS-PAGE)で希釈し、SDS-PAGEに供した。トランスブロットTurbo転写システム(BIO-RAD社)を用いて、PVDF膜に転写した。抗HER2抗体(CST社 HER2/ErbB2 Antibody)、2次抗体(GE healthcare社 ECL Rabbit IgG, HRP-linked whole Ab from donkey)、抗β-Actin抗体(CST社 β-Actin (13E5) Rabbit mAb HRP Conjugate)の各抗体を用いて免疫ブロットを行った。発色剤にはImmobilon Western(Merck Millipore社)を使用した。撮影は、Chemidoc XRS+(BIO-RAD社)で行った。
【実施例】
【0044】
(4)デンシトメトリーによる定量
撮影した画像をImage Labソフトウェア(BIO-RAD社)で解析し、各バンドのシグナル強度を得た。リコンビナントHER2タンパク(SignalChem社, HER2, Active, E27-11G, 分子量131)を用いて検量線を作成し、この検量線に基づいて各タンパク質抽出液のHER2濃度を求めた。
【実施例】
【0045】
2.結果
結果を図2に示した。上段がウエスタンブロッティングでHER2タンパク質を検出した結果、中段がウエスタンブロッティングでβ-アクチンを検出した結果、下段がHER2タンパク質のウエスタンブロッティング画像に基づいて、デンシトメトリーによりHER2タンパク質を定量した結果である。これらの結果から、MKN7、GLM1、GLM2およびGLM4のHER2発現レベルが高いことが明らかになった。
【実施例】
【0046】
〔実施例1:テストストリップの作製(1)〕
1-1 ストリップ材料
メンブレンには、ニトロセルロースメンブレンカード(Merck Millipore社、HF120MC100、60mm×301mm)を使用した。コンジュゲートパッドには、グラスファイバーパッド(Merck Millipore社、GFCP103000)を使用した。サンプルパッドおよび吸収パッドには、セルロースパッド(Merck Millipore社、CFSP173000)を使用した。
【実施例】
【0047】
1-2 使用抗体
第一の抗HER2タンパク質抗体(以下、「第一抗体」と記す)には、抗HER2マウスモノクローナル抗体(HER-2/ErbB2 Monoclonal Antibody (N24)、Thermo Scientific社、MA1-12691)を使用した。第二の抗HER2タンパク質抗体(以下、「第二抗体」と記す)には、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)注射用60、中外製薬製)を使用した。コントロール抗体には、抗マウスIgG抗体(Goat anti-Mouse IgG Secondary Antibody、Thermo Scientific社、PA1-28555)を使用した。抗体の希釈には、Antibody Stabilizer Based on PBS(CANDOR Bioscience社、131050、以下「抗体希釈液」と記す)を使用した。
【実施例】
【0048】
1-3 第二抗体の固相化
ハーセプチン(登録商標)注射用60を添付文書のとおりに溶解し、21mg/mLのトラスツズマブ溶液を調製した。これを抗体希釈液で希釈し、所望の濃度のトラスツズマブ溶液を調製した。抗マウスIgG抗体を抗体希釈液で希釈して0.5mg/mLのコントロール抗体溶液を調製した。各抗体溶液1μLをマイクロピペットを用いてメンブレンに添着させ、37℃で120分間乾燥させた。
【実施例】
【0049】
1-4 コンジュゲートパッドの作製
1-4-1 第一抗体の金コロイド標識
抗HER2マウスモノクローナル抗体の金コロイド標識には、金コロイド標識キット(BBI GoldLink Kits、BBInternational社、GLK 10.40)を用いた。キットのプロトコールに従って金コロイド標識を行い、溶液50μL中に抗体1μgを含む金コロイド標識第一抗体の溶液を得た。
1-4-2 コンジュゲートパッドの作製
得られた金コロイド標識第一抗体の溶液1容に対して、塗布バッファー(5%スクロース, 2mMホウ酸溶液)25容を添加して希釈し、これをコンジュゲートパッド(Glass Fiber Conjugate Pad)に均一に染み込ませた。テストストリップ1枚あたりのコンジュゲートパッド(5mm×10mm)に含まれる、上記手法により得られた金コロイド標識第一抗体の溶液量が1μLになるように、コンジュゲートパッドの面積と染み込ませる抗体溶液量を適宜調整した。その後、コンジュゲートパッドを水平に保った状態で、室温で一夜乾燥させた。
【実施例】
【0050】
1-5 サンプルパッドの作製
BSA(和光純薬、015-21274)をPBS(PBSタブレット(タカラバイオ)を超純水で溶解したもの)で溶解し、5%BSA/PBSを調製した。これをサンプルパッド(Cellulose Fiber Sample Pad)に均一に染み込ませた。テストストリップ1枚あたりのサンプルパッド(5mm×17mm)に、60μLの5%BSA/PBSが含まれるように、サンプルパッドの面積と染み込ませる液量を適宜調整した。その後、サンプルパッドを水平に保った状態で、室温で一夜以上かけて完全に乾燥させた。
【実施例】
【0051】
1-6 ハーフストリップの作製
ハーフストリップは、トラスツズマブとコントロール抗体(抗マウスIgG抗体)が固相化されたメンブレンおよび吸収パッドの2つで構成された予備検討用のストリップである。試料と金コロイド標識第一抗体を含む溶液にメンブレンの一端(吸収パッドが連結されていない方)を浸漬し、溶液を吸収パッドの方向に展開させて使用する。
ハーフストリップは以下の手順で作製した。
(1)メンブレンカードのサンプルパッドおよびコンジュゲートパッド貼付部を切り離す
(2)吸収パッドをメンブレンカードに貼付
(3)5mm幅に切断
(4)メンブレンにトラスツズマブを固相化(上記1-3参照)
(5)メンブレンに抗マウスIgG抗体を固相化(上記1-3参照)
【実施例】
【0052】
1-7 ラテラルフローストリップの作製
ラテラルフローストリップは以下方法の手順で作製した。
(1)吸収パッドをメンブレンカードに貼付
(2)金コロイド標識第一抗体を保持させたコンジュゲートパッドを、メンブレンカードに貼付
(3)BSAを保持させたサンプルパッドをコンジュゲートパッドに貼付
(4)5mm幅に切断
(5)メンブレンにトラスツズマブを固相化(上記1-3参照)
(6)メンブレンに抗マウスIgG抗体を固相化(上記1-3参照)
以下の実施例において、第二抗体を固相化した領域を「テストライン」と称し、コントロール抗体を固相化した領域を「コントロールライン」と称する。
【実施例】
【0053】
〔実施例2:ハーフストリップによるHER2タンパク質の検出〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例1で調製したタンパク質抽出液を使用した。使用した細胞は、MKN1、MKN7、MKN45、MKN74、AGS、KATOIII、HGC27、MCF7(ネガティブコントロール)である。
(2)ストリップ
実施例1で作製したハーフストリップを使用した。テストラインの抗体(トラスツズマブ)量は5μgとした。
(3)検出方法
96ウェルプレートを使用した。タンパク質抽出液からのタンパク質量が60μg/ウェル、BSA濃度が3%/ウェル、実施例1の1-4-1で調製した金コロイド標識第一抗体の溶液量が1μL/ウェル、ウェルあたりの液量が100μLになるように試料を調製した。ハーフストリップのメンブレンの一端を試料溶液中に浸漬して展開させ、テストラインおよびコントロールラインの着色を観察した。テストラインの着色が目視で確認できるものを陽性と判断した。
【実施例】
【0054】
2.結果
結果を図3に示した。図3の上段の数値は、上記参考例1においてデンシトメトリーで定量した各細胞株のタンパク質抽出液におけるHER2タンパク質濃度を示している。図3から明らかなように、HER2発現レベルが高いMKN7で明瞭なシグナルを検出した。また、MKN74、KATOIIIおよびHGC27でも弱いシグナルを検出した。この結果から、ラテラルフローアッセイにより、HER2陽性胃がんの検出が可能であることが示された。
【実施例】
【0055】
〔実施例3:テストライン抗体量の検討〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例1で調製したMKN7のタンパク質抽出液を使用した。
(2)ストリップ
実施例1で作製したハーフストリップを使用した。テストラインの抗体(トラスツズマブ)量が1、3、5、10または20μgである5種類を使用した。
(3)検出方法
実施例2と同じ方法で行った。
【実施例】
【0056】
2.結果
結果を図4に示した。図4から明らかなように、シグナル強度はテストラインの抗体量に依存して増強された。この結果は、テストラインの抗体量を増減させることにより検出感度を調節できることを示すものである。
【実施例】
【0057】
〔実施例4:ラテラルフローストリップによるHER2タンパク質の検出〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例1で調製したMKN7およびMCF7(コントロール)のタンパク質抽出液を使用した。
(2)ストリップ
実施例1で作製したラテラルフローストリップを使用した。テストラインの抗体(トラスツズマブ)量は5μgとした。
(3)検出方法
タンパク質抽出液からのタンパク質量が200μg、液量が100μLとなるように試料を調製し、試料の全量をサンプルパッド部分に添加して展開させた。コントロールラインおよびテストラインの着色を目視で観察した。
【実施例】
【0058】
2.結果
結果を図5に示した。図5から明らかなように、MKN7ではコントロールラインおよびテストラインのシグナルが認められたが、MCF7ではテストラインのシグナルが認められなかった。
【実施例】
【0059】
〔参考例2:ウエスタンブロッティング法による胃がん細胞株のHER2発現の検討〕
1.実験材料および方法
(1)使用細胞(参考例1参照)
ヒト胃がん細胞株として、MKN1、MKN7、MKN45、MKN74、GLM1、GLM2、GLM4、AGS、HGC27を用いた。対照として、乳がん細胞株MCF7を用いた。
(2)タンパク質抽出液の調製
参考例1と同じ方法で、各細胞からそれぞれタンパク質抽出液を調製した。
(3)ウエスタンブロッティング
参考例1と同じ方法で、ウエスタンブロッティングを行った。
(4)ELISAによる定量
ErbB2/Her2 ELISA Kit(Novus Biologicals社、NBP1-84823)を用いて、各細胞から調製したタンパク質抽出液中のHER2タンパク質濃度を定量した。定量値は、溶液中のHER2タンパク質濃度ではなく、溶液中の単位タンパク質量あたりのHER2タンパク質量で表した。
【実施例】
【0060】
2.結果
結果を図6に示した。上段がウエスタンブロッティングでHER2タンパク質を検出した結果、中段がウエスタンブロッティングでβ-アクチンを検出した結果、下段がELISAによりHER2タンパク質を定量した結果である。これらの結果から、GLM1およびGLM4のHER2発現レベルが非常に高く、次いでMKN7およびGLM2のHER2発現レベルが高いことが明らかになった。
【実施例】
【0061】
〔実施例5:テストストリップの作製(2)〕
5-1 ストリップ材料
メンブレンには、ニトロセルロース膜(Merck Millipore社、HF13504)を使用した。サンプルパッドおよびコンジュゲートパッドには、グラスファイバーパッド(Merck Millipore社、GFDX203000)を使用した。吸収パッドには、セルロースパッド(Merck Millipore社、CFSP223000)を使用した。
【実施例】
【0062】
5-2 使用抗体
実施例1で作製したテストストリップの第一抗体と第二抗体を逆にして、テストストリップを作製した。すなわち、第一抗体には、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)注射用60、中外製薬製)を使用した。第二抗体には、抗HER2マウスモノクローナル抗体(HER-2/ErbB2 Monoclonal Antibody (N24)、Thermo Scientific社、MA1-12691)を使用した。コントロール抗体には、抗マウスIgG抗体(Goat anti-Mouse IgG’s、日本製粉)を使用した。抗体の希釈には、実施例1と同じ抗体希釈液を使用した。
【実施例】
【0063】
5-3 第二抗体の固相化
抗HER2マウスモノクローナル抗体および抗マウスIgGをそれぞれ抗体希釈液で希釈して、0.1μg/μLの抗体溶液を調製し、スポット当たり1μLの抗体溶液をマイクロピペットを用いてメンブレンに添着させた(抗体0.1μg/スポット)。抗HER2マウスモノクローナル抗体は1箇所、抗マウスIgGは2箇所にスポットした。メンブレンを50℃で30分乾燥させた。続いて、メンブレンを、ブロッキングバッファー(0.5%カゼイン、50mMホウ酸、pH 8.5)に浸漬し、室温で30分間静置した。メンブレンを洗浄・安定化バッファー(0.5% スクロース、0.05% コール酸ナトリウム、50mM Tris-HCl、pH 7.5)に移して浸漬し、室温で30分以上静置した。メンブレンを引き上げ、ペーパータオル上に置き、室温で一晩乾燥させた。このようにして得られたメンブレンは、乾燥剤と共にアルミパウチに入れて保存することができる。
【実施例】
【0064】
5-4 コンジュゲートパッドの作製
5-4-1 第一抗体の金コロイド標識
トラスツズマブの金コロイド標識は、以下の手順で行った。
(1)ハーセプチン(登録商標)注射用60を添付文書のとおりに溶解し、蒸留水で希釈して70μg/mLのトラスツズマブ溶液を調製した。
(2)2mLの50mM KHPO(pH8.0)に金コロイド液(Gold Colloid 40nm、BBI solution社)18mLを加え、攪拌しながら2mLの上記トラスツズマブ溶液を添加した。
(3)さらに、1% PEG20000を1.1mL加え、攪拌した。
(4)8,000×gで15分間遠心分離し、上清が1mL程度残るように余分な上清を除去した。
(5)超音波洗浄機を用いて、残した上清に沈殿を分散させた。
(6)金コロイド保存バッファー(20mM Tris-HCl (pH8.2), 0.05% PEG 20,000, 150mM NaCl, 1%BSA, 0.1% NaN3)20mLを加え、攪拌した。
(7)(4)および(5)を再度行った。
(8)2回目の(5)で得られた分散液50μLを分取し、金コロイド保存バッファー950μLを加えてOD520を測定した。
(9)金コロイド保存バッファーでOD520=6.0になるように調製し、金コロイド標識第一抗体の溶液を得た。
【実施例】
【0065】
5-4-2 コンジュゲートパッドの作製
上記調製した金コロイド標識第一抗体の溶液500μLに、蒸留水500μLと金コロイド塗布バッファー(20mM Tris-HCl (pH8.0), 0.05% PEG 20,000, 5% スクロース)1mLとを混合し、軽く攪拌した。グラスファイバーパッド(300mm)1枚あたり、上記混合液1.6mLを均等に塗布した。パッドをデシケーターに入れ室温で一夜以上かけて減圧乾燥を行った。乾燥後のコンジュゲートパッドは、シリカゲルを同封したビニール袋内で遮光保存することができる。
【実施例】
【0066】
5-5 ラテラルフローストリップの作製
縦60mm×横300mmのイムノクロマト用バッキングシートの上端から15mmのところに、縦25mm×横300mmのメンブレンの上端が来るように貼り付けた。メンブレンの下端はバッキングシートの下端から20mmとなる。次に、縦20mm×横300mmの吸収パッドの上端をバッキングシートの上端に合わせて貼り付けた。この際、吸収パッドはメンブレンと5mmほど重なる。次いで、縦8mm×横300mmのコンジュゲートパッドを、その下端がバックシートの下端から14mmの位置となるように貼り付けた。この際、コンジュゲートパッドの上端側2mmほどが、メンブレンシートの上に重なる。さらに、縦18mm×横300mmのサンプルパッドの下端をバックシートの下端に合わせて貼り付けた。この際、サンプルパッドの上端側は4mmが、コンジュゲートパッドの上に重なる。貼り合わせたシートを5mm幅に切断してラテラルフローストリップを作製した。作製したラテラルフローストリップは、シリカゲルと共にアルミパウチに入れ、室温で保存することができる。
【実施例】
【0067】
〔実施例6:胃がん細胞株由来タンパク質抽出液中のHER2タンパク質の検出〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例2で調製した9種類のヒト胃がん細胞株由来のタンパク質抽出液を使用した。コントロールとして、参考例2で調製した乳がん細胞株MCF7由来のタンパク質抽出液を使用した。
(2)ストリップ
実施例5で作製したラテラルフローストリップを使用した。
(3)検出方法
タンパク質抽出液からのタンパク質量が2μg、液量が100μL(タンパク質濃度0.02mg/mL)となるように試料を調製し、試料の全量をサンプルパッド部分に添加して展開させた。コントロールラインおよびテストラインの着色を目視で観察した。
【実施例】
【0068】
2.結果
結果を図7に示した。図7の上段の数値は、上記参考例2においてELISAで定量した単位タンパク質量あたりのHER2タンパク質量を示し、図7の中段の数値は、上段の数値に基づいて算出したストリップ当たりのHER2タンパク質量を示している。ストリップ当たりのHER2タンパク質量が10ngを超えると実施例5で作製したラテラルフローストリップで検出できる可能性が図7より考えられた。
【実施例】
【0069】
〔実施例7:試料中のHER2タンパク質濃度の検討〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例1で調製したGLM1のタンパク質抽出液を使用した。試料中の総タンパク質濃度(μg/mL)が0.2、0.02、0.002、0.0002および0.00002の5種類の試料を調製した。
(2)ストリップ
実施例5で作製したラテラルフローストリップを使用した。
(3)検出方法
各試料を100μLずつサンプルパッド部分に添加して展開させ、コントロールラインおよびテストラインの着色を目視で観察した。
【実施例】
【0070】
2.結果
結果を図8に示した。図8の上段の数値は試料中の総タンパク質濃度を示し、図8の中段の数値はストリップ当たりのHER2タンパク質量を示している。ストリップ当たりのHER2タンパク質量が10ngを超えると実施例5で作製したラテラルフローストリップで検出できる可能性が図8からも考えられた。
【実施例】
【0071】
〔実施例8:異種移植片(Xenograft)由来試料およびヒト生検試料中のHER2タンパク質濃度の検討〕
1.実験材料および方法
(1)異種移植片(Xenograft)由来試料の調製
GLM1およびMKN45をそれぞれヌードマウスの皮下に接種し、腫瘍を形成させた。上部消化管内視鏡検査時に使用する生検鉗子を用いて腫瘍組織からサンプルを採取し、重量を測定した後、液体窒素中で保存した。採取した組織にT-PER Tissue Protein Extraction Reagent(Thermo Scientific社)を加え、ホモジナイザー(ニッピ社, BioMasher II)でホモジナイズした。得られた組織溶解液を遠心分離し(10,000×g、4℃、5分間)、その上清をタンパク質抽出液として-80℃で保存した。使用時に融解して試験に供した。
(2)ヒト検体由来試料の調製
胃がん患者から採取した生検検体を使用した。HER2の免疫染色でHER2陽性であることを確認した症例の検体を使用した。対照として、同一患者の健常部の胃生検検体を使用した。上記(1)と同じ方法で、T-PER Tissue Protein Extraction Reagentを加えてホモジナイズ、遠心分離してタンパク質抽出液を調製し、-80℃で保存した。使用時に融解して試験に供した。
(3)ストリップ
実施例5で作製したラテラルフローストリップを使用した。
(4)検出方法
上記(1)、(2)で調製した各タンパク質抽出液のHER2濃度をErbB2/Her2 ELISA Kit(Novus Biologicals社、NBP1-84823)を用いて算出した。上記4サンプルを、超純水を用いてすべて200倍に希釈し、その100μLをサンプルパッド部分に添加して展開させた。コントロールラインおよびテストラインの着色を目視で観察した。
【実施例】
【0072】
結果を図9に示した。図9の上段の数値はストリップ当たりのHER2タンパク質量を示している。図9から明らかなように、GLM1由来の異種移植片(Xenograft)およびヒト腫瘍部の生検検体において、HER2を検出することができた。この結果から、作製したストリップを用いて、腫瘍組織からのタンパク抽出液でもHER2タンパク質を検出できることが示された。
【実施例】
【0073】
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【符号の説明】
【0074】
1 メンブレン
2 吸収パッド
3 コンジュゲートパッド
4 サンプルパッド
5 バックシート
6 抗HER2タンパク質抗体固相化領域
7 コントロール抗体固相化領域
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8