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明細書 :化学蓄熱材及び化学蓄熱材の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-142988 (P2019-142988A)
公開日 令和元年8月29日(2019.8.29)
発明の名称または考案の名称 化学蓄熱材及び化学蓄熱材の製造方法
国際特許分類 C09K   5/16        (2006.01)
FI C09K 5/16
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 5
出願番号 特願2018-025539 (P2018-025539)
出願日 平成30年2月16日(2018.2.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 1.ウェブサイトによる講演要旨公開 (1)ウェブサイトの掲載日 平成29年9月6日 (2)ウェブサイトのアドレス http://www3.scej.org/meeting/49f/index.html 2.学会発表 (1)学会名 化学工学会第49回秋季大会 (2)開催日 平成29年9月20日
発明者または考案者 【氏名】劉 醇一
【氏名】花岡 友希
出願人 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
審査請求 未請求
要約 【課題】化学蓄熱材において、熱出力操作の迅速化や低温化が求められている。
【解決手段】上記課題を解決するために、化学蓄熱材を、アルカリ金属とアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物及び/又は水酸化物をリチウムシリケートに添加したものとした。
さらに、前記アルカリ金属とアルカリ土類からなる群より選択される少なくとも1種の金属の量は、前記リチウムシリケートに対して0.1モル%以上50モル%以下であるものとすると望ましい。
さらに、前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はストロンチウムであると望ましい。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
アルカリ金属とアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物及び/又は水酸化物をリチウムシリケートに添加した化学蓄熱材。
【請求項2】
前記アルカリ金属とアルカリ土類からなる群より選択される少なくとも1種の金属の量は、前記リチウムシリケートに対して0.1モル%以上50モル%以下であることを特徴とする請求項1記載の化学蓄熱材。
【請求項3】
前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はストロンチウムであることを特徴とする請求項1記載の化学蓄熱材。
【請求項4】
LiCl又は/及びNaClを添加したリチウムシリケートを含有する化学蓄熱材。
【請求項5】
Li4SiO4に、物理混合によってLiCl又は/及びNaClを添加する工程を有する化学蓄熱材の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、化学蓄熱材及び化学蓄熱材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出規制によって化石燃料の使用削減が求められており、各プロセスの省エネルギー化に加え、排熱の利用を進める必要がある、排熱の利用の手段としては、水を利用した100℃以下の温水蓄熱が知られている。しかし、温水蓄熱には、(1)放熱損失があるため長時間の蓄熱が不可能である、(2)顕熱量が小さいため大量の水が必要であり、蓄熱設備のコンパクト化が困難である、(3)出力温度が利用料に応じて非定常で、次第に降下する、等の課題がある。
効率の高い蓄熱技術として化学蓄熱材が挙げられる。化学蓄熱法は、物質の吸着、水和等の化学変化を伴うため、材料自体(水、溶融塩等)の潜熱や顕熱による蓄熱法に比べて単位質量当たりの蓄熱量が高くなる。化学蓄熱法としては、固体材料(化学蓄熱材)と水蒸気や二酸化炭素との気固反応法、金属塩へのアンモニア吸収(アンミン錯体生成反応)、アルコール等の有機物の吸脱着による反応等が提案されている。環境への負荷や装置の簡便性を考慮すると、気固反応法が最も有利である。気固反応法に用いられる化学蓄熱材として、水蒸気との気固反応系ではアルカリ土類金属酸化物である酸化カルシウムや酸化マグネシウム、二酸化炭素との気固反応系では酸化カルシウムやリチウムシリケート等が知られている。特許文献1には、リチウムシリケート系化合物を含む化学蓄熱材が記載されている。
【0003】
製鉄業等から発生する高温排熱(600℃以上)を有効利用する手段として、合金系潜熱蓄熱技術や、二酸化炭素を反応媒体として用いる化学蓄熱技術について検討が進められている。化学蓄熱技術は潜熱蓄熱技術に比べて蓄熱密度が大きいという利点がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】WO2016/043224A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
600℃以上の温度領域で蓄熱操作が可能な材料としてリチウムシリケート(オルトケイ酸リチウム。Li4SiO4。)があるが、熱出力操作に用いる二酸化炭素吸収反応が600℃以上で進行するものの、反応速度の制約があるため迅速な熱出力操作が困難であり、実用化への課題となっている。したがって、この材料を化学蓄熱材として用いるためには、熱出力操作の迅速化や低温化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一つの手段によれば、化学蓄熱材を、アルカリ金属とアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物及び/又は水酸化物をリチウムシリケートに添加したものとした。
【0007】
さらに、前記アルカリ金属とアルカリ土類からなる群より選択される少なくとも1種の金属の量は、前記リチウムシリケートに対して0.1モル%以上50モル%以下であるものとすると望ましい。
さらに、前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はストロンチウムであると望ましい。
【0008】
また、本発明の他の観点によれば、化学蓄熱材を、LiCl又は/及びNaClを添加したリチウムシリケートを含有するものとした。
【0009】
また、本発明の他の観点によれば、化学蓄熱材の製造方法を、Li4SiO4に、物理混合によってLiCl又は/及びNaClを添加する工程を有するものとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より低温での熱出力操作を実現できる化学蓄熱材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】化学蓄熱材の二酸化炭素雰囲気下における温度による質量変化を示す図である。
【図2】化学蓄熱材の二酸化炭素雰囲気下における温度による質量変化を示す図(その2)である。
【図3】化学蓄熱材の二酸化炭素雰囲気下における温度による質量変化を示す図(その3)である。
【図4】化学蓄熱材の蓄熱操作温度域、熱出力密度を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例、実施例を説明するが、本発明の実施形態は以下に説明する実施形態例、実施例に限定されるものではない。

【0013】
上記の課題を解決するために、本発明者らが種々検討を重ねたところ、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物及び/又はアルカリ金属水酸化物をリチウムシリケートに添加することによって、二酸化炭素吸収反応活性の向上が確認され、従来の材料よりも低温である500℃での熱出力操作を実現できる化学蓄熱材を製造できることを見出した。
【実施例1】
【0014】
本実施例では、従来CO2吸収材として研究されてきたLi系複合酸化物のCO2吸収能力やCO2選択性に着目した。特に600℃以上で下式のようにCO2と可逆的に反応するLi4SiO4[1]に対してLiCl、NaClを添加することによるCO2との反応性への影響を評価した。また、異なる2種類の添加方法を用い、添加方法の影響を評価した。
【実施例1】
【0015】
【化1】
JP2019142988A_000003t.gif
【実施例1】
【0016】
Li4SiO4の合成は固相法を用いた。原料としてLi2CO3とSiO2をモル比2:1で混合し、1000℃で20時間加熱し、粉砕した試料をLi4SiO4とした。Li4SiO4に対して、含浸法と物理混合の2種類でLiClとNaClを、モル比Li4SiO4:NaCl=5:1、Li4SiO4:LiCl=5:1となるように添加した。含浸法で添加した試料は、LiClを添加した場合はLiCl/Li4SiO4、物理混合で添加した試料はLi4SiO4+LiClのように示す。CO2との反応性評価は熱天秤(TG-DTA2000SEネッチ・ジャパン(株)社製)を用いた。反応は昇温速度10℃/minで室温から900℃まで昇温した。反応ガスとして200℃までN2ガスを100mL/min流通し試料を乾燥させた後CO2ガスを100mL/minを流通させた。200℃における試料重量を初期重量とした。反応転化率X[%]、熱出力密度Q[kJ/kg]は下記数式1、数式2で定義した。
【実施例1】
【0017】
【数1】
JP2019142988A_000004t.gif
【数2】
JP2019142988A_000005t.gif
【実施例1】
【0018】
ここで、Msample:試料分子量[g/mol]、Wini:試料初期重量[mg]、MLi4SiO4:Li4SiO4の分子量[g/mol]、ΔH:反応エンタルピー[kJ/mol]、A:試料1kgあたりに含まれるLi4SiO4の重量割合である。
【実施例1】
【0019】
図1に、Li4SiO4にLiCl、NaClをそれぞれ添加した合成法別試料の熱重量変化を示す。含浸法によってLiCl、NaClを添加した試料は200℃でのCO2流通直後からCO2を吸収するが、700℃以上で初期重量より大きく減少することから、含浸法によるLiCl、NaClの添加ではLi系酸化物の他に、別の化合物を生成していると考えられる。Li4SO4に対して何も添加せずに含浸法と同様の処理を施した結果、元のLi4SiO4とは異なる熱重量変化を示したことから、含浸法によってLi4SiO4とは異なる物質が生成したことからも裏付けられる。一方、物理混合によってLiCl、NaClを添加した試料は700℃以上におけるCO2放出の挙動はLi4SiO4と類似したが、CO2吸収開始温度が低温化したことがわかる。Li4Si4O4+LiClの質量がピーク時の温度は、645℃となった(図2)。また、Li4SiO4+NaClの質量ピーク時の温度は、662℃になった。今回の実験条件では、物理混合によるLiCl、NaClの添加によって、CO2吸収温度を低温化する効果があることがわかった。
【実施例1】
【0020】
今回合成したLi4SiO4、Li4SiO4+LiCl、Li4SiO4+NaClの最大反応転化率はそれぞれ70%、78%、81%であった。これを考慮して熱出力密度を計算すると、Li4SiO4は837[kJ/kg]、Li4SiO4+LiClは852[kJ/kg]、Li4SiO4+NaClは903[kJ/kg]となり、この温度域で蓄熱操作が可能な合金系潜熱蓄熱材よりも大きい熱出力密度であった。熱出力密度及び蓄熱操作温度域の比較結果を図4に示す。
【実施例1】
【0021】
本実施例では、Li4SiO4に対して異なる添加方法を用いてLiCl、NaClを添加することによるCO2との反応性への影響を評価した。その結果、含浸法を用いたLiClやNaClは従来のLi4SiO4のような可逆性が見られず、含浸法の処理自体がLi4SiO4と異なる物質を生成する可能性があると考えられる。一方、物理混合によってLiCl、NaClを添加することでCO2吸収開始温度が最大約50℃低温化する効果が見られた。さらに、これらは高温域での蓄熱操作が可能な合金系潜熱蓄熱材よりも大きい熱出力密度をもつことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、化学蓄熱材及び科学蓄熱材の製造方法として産業上利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3