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明細書 :色素が起電力と出力を増幅する光燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-209259 (P2019-209259A)
公開日 令和元年12月12日(2019.12.12)
発明の名称または考案の名称 色素が起電力と出力を増幅する光燃料電池
国際特許分類 B01J  31/02        (2006.01)
H01G   9/20        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  27/135       (2006.01)
C25B   1/02        (2006.01)
FI B01J 31/02 102M
H01G 9/20 101
B01J 35/02 J
B01J 27/135 M
C25B 1/02
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2018-107691 (P2018-107691)
出願日 平成30年6月5日(2018.6.5)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 1.ウェブサイトによる予稿集公開 (1)ウェブサイトの掲載日 平成30年3月6日 (2)ウェブサイトのアドレス https://nenkai.csj.jp/Proceeding/detail/year/2018/lecture_no/2C1-01 (3)学会名 日本化学会第98春季年会2018 2.学会発表 (1)学会名 日本化学会第98春季年会2018 (2)開催日 平成30年3月21日
発明者または考案者 【氏名】泉 康雄
【氏名】漆舘 和樹
【氏名】松澤 繁光
出願人 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
4K021
Fターム 4G169AA03
4G169BA04B
4G169BA14B
4G169BA29B
4G169BA48A
4G169BB06B
4G169BC18B
4G169BC22B
4G169BC25B
4G169BD12B
4G169CC32
4G169CC40
4G169DA06
4G169EA08
4G169EA14
4G169HA02
4G169HA14
4G169HB01
4G169HB10
4G169HC04
4G169HC14
4G169HC24
4G169HD02
4G169HD10
4G169HE20
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC08
4K021DB05
4K021DB18
4K021DC01
4K021DC15
要約 【課題】起電力及び出力をより高めた、光燃料電池の提供。
【解決手段】(1)負極層1、(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層2であって、紫外光を受けて励起し水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層、(3)前記第1光触媒層の一部又は全部及び前記負極層の一部に接して配置された有機色素層3であって、可視光を受けて励起する有機色素層、(4)正極層4、(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層5であって、紫外光及び/又は可視光を受けて励起し下記酸性水溶液に含まれるプロトン及び酸素の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層、並びに、(6)前記第1光触媒層、前記有機色素及び前記第2光触媒層の3点全部に接している酸性水溶液6であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液、からなる光燃料電池。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)負極層、
(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層であって、紫外光を受けて励起し水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層、
(3)前記第1光触媒層の一部又は全部及び前記負極層の一部に接して配置された有機色素層であって、可視光を受けて励起する有機色素層、
(4)正極層、
(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層であって、紫外光及び/又は可視光を受けて励起し下記酸性水溶液に含まれるプロトン及び酸素の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層、並びに
(6)前記第1光触媒層、前記有機色素及び前記第2光触媒層の3点全部に接している酸性水溶液であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液、
からなる光燃料電池。
【請求項2】
(1)負極層、
(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層であって、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し下記(式1)に従ってホール(h)によって水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層、
2HO + 4h → 4H+O (式1)
(3)前記第1光触媒層の一部又は全部及び前記負極層の一部に接して配置された有機色素層であって、当該色素層に最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)とのエネルギー差以上のエネルギーを含む可視光を受けて励起しHOMOに非占有軌道、LUMOに励起電子が生じる有機色素層、
(4)正極層、
(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層であって、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光及び/又は可視光を受けて励起し下記(式2)に従って下記酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層、並びに
4H + 4e + O → 2HO (式2)
(6)前記第1光触媒層、前記有機色素及び前記第2光触媒層の3点全部に接している酸性水溶液であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液、
からなる光燃料電池であって、
前記第1光触媒層が紫外光を受けて励起し価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第1励起電子となり、当該価電子帯は電子を1個失った状態即ち1価のホール(h)を持った状態となり、このホール(h)が(式1)に従い水(HO)分子から電子を奪うことで水から酸素への酸化反応が進み、前記ホール(h)は奪った電子と結合して消滅し、
他方、前記第1励起電子の一部は負極層に進み、
また、前記有機色素層が可視光を受けて励起してHOMOに非占有軌道、LUMOに第2励起電子が生じ、
当該第2励起電子は負極層に進み、他方、当該非占有軌道には前記第1光触媒層からの前記第1励起電子の残部が流れ込み、当該残部は可視光を受けて励起されて再びHOMOに非占有軌道、LUMOに第2励起電子を生じ、当該第2励起電子は負極層に進み、以下、同様に色素層において「励起、流れ込み、進み」が繰り返されることで、第2励起電子の数は増大し、
前記負極層で発生した前記第1励起電子の一部及び前記第2励起電子は、間に負荷を含み得る外部回路を通じて前記正極層に供給され、
前記第2光触媒層は、(a)当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し即ち価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第3励起電子となり、そのとき、当該価電子帯には第3ホール(h)が残り、及び/又は(b)可視光を受けて励起し即ち価電子帯の電子がバンドギャップ間準位に励起されて第4励起電子となり、そのとき、当該価電子帯には第4ホール(h)が残り、
当該第3励起電子及び/又は当該第4励起電子は、下記(式2):
4H + 4e + O → 2HO (式2)
に従って前記酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で前記酸素を光還元し、
他方、前記第3ホール(h)及び/又は第4ホール(h)は、前記外部回路を通じて供給される前記第1励起電子の一部及び前記第2励起電子と再結合して消滅する、
ことを特徴とする光燃料電池。
【請求項3】
前記バンドギャップ間準位が欠陥準位又は不純物準位であることを特徴とする請求項2に記載の光燃料電池。
【請求項4】
前記酸性水溶液を前記負極層側と前記正極層側に大きく二分する電子絶縁性のプロトン(H)透過膜を設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の光燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、色素が起電力と出力を増幅する光「燃料」電池に関する。「燃料」は強いて言えば、水であり、この水も電池内で再生産されるので、理論的には供給不要である。エネルギー源は、光、代表的には太陽光である。水を「燃料」とする光燃料電池は、本発明者の一人:泉康雄らが初めて発明した(特許文献2)もので、太陽電池に似ているが、原理は全く異なり、起電力が理論的に太陽電池の凡そ2倍と言う特徴がある。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、燃料の酸化還元反応を用いることにより電気を取り出すことのできる電池であり、一般に、酸素と水素の反応を用いて電気を取り出すものであって、重金属等を使う他の化学電池に比べ地球環境に優しく、現在も活発に研究開発が行われている。この種の燃料電池において、光エネルギーを用いてより効率的に電気を取り出そうとする試みがなされており、特許文献1に、光触媒を用いた「光燃料電池」が開示されている。しかしながら、特許文献1の「光燃料電池」は、メタノール等の燃料を使用しており、原理的には従来の燃料電池の範疇であり、化石燃料由来の燃料を使い、CO等も排出する。
【0003】
それに対して、メタノールや水素等のいわゆる燃料を使わず、強いて言うと、水を「燃料」とする燃料電池を、以前に、本発明者の一人:泉康雄らが世界で初めて発明した(特許文献2)。これは、前記の通り、「燃料」は強いて言えば、水であり、この水も電池内で再生産されるので、理論的には供給不要である。エネルギー源は、光、代表的には太陽光であり、特許文献2の燃料電池は、化石燃料を使わず、CO等も排出しない。特許文献2では、単に「燃料電池」と表現したが、今は「光燃料電池」と称している。
【0004】
次に、この世界で初めての特許文献2の(光)燃料電池の原理を説明する。
この光燃料電池の構成は、以下の通りである。
(1)負極層;
(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層であって、紫外光を受けて励起し水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層;
[(3)は欠番]
(4)正極層;
(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層であって、紫外光を受けて励起し下記酸性水溶液に含まれるプロトン及び酸素の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層;並びに
(6)前記第1光触媒層及び前記第2光触媒層の2点全部に接している酸性水溶液であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液(特許文献2では「酸水溶液」と表現);
【0005】
次にこの光燃料電池の動作原理を説明する。
第1光触媒層は、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し下記(式1)に従ってホール(h)によって水が光酸化されるのを触媒する。
2HO + 4h → 4H+O (式1)
詳しく説明すると、第1光触媒層は、紫外光を受けて励起し価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第1励起電子となり、価電子帯は電子を1個失った状態即ち1価のホール(h)を持った状態となり、このホール(h)が(式1)に従い水(HO)分子から電子を奪うことで水から酸素への酸化反応が進み、ホール(h)は奪った電子と結合して消滅し、他方、第1励起電子は負極層に進み、第1励起電子は、間に負荷を含み得る外部回路を通じて正極層に供給される。
【0006】
第2光触媒層は、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し下記(式2)に従って下記酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する。
4H + 4e + O → 2HO (式2)
詳しく説明すると、第2光触媒層は、(a)当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し即ち価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第3励起電子となり、そのとき、当該価電子帯には第3ホール(h)が残り、当該第3励起電子は、(式2)に従って酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で前記酸素を光還元し、他方、第3ホール(h)は、外部回路を通じて供給される第1励起電子と再結合して消滅する。
4H + 4e + O → 2HO (式2)
【0007】
外部回路(8)は、負極層から負荷(例えば、電球)を介して正極層へつながっており、負極層で発生した第1励起電子を正極層に送り込むことで、電池が動作する。
この光燃料電池の起電力は、太陽電池の代表例であるシリコンのp-n接合(0.3V)又は第2光触媒層の具体例であるチタンの伝導帯とヨウ素の還元準位差(0.5Vから1V)でなく、チタンのバンドギャップで決まる。従って、この光燃料電池の起電力は、理論的に約2.75V(太陽電池の凡そ2倍)と見積もられる。
【0008】
なお、負極で発生する酸素(O)は、正極に供給されることが好ましいが、負極付近にあると、(式1)の反応が進みづらくなるので、できるだけ速やかに正極に供給されることが望ましい。
そこで、特許文献3では、負極側の酸性水溶液(特許文献3では「酸水溶液」と表現)の上に積極的に酸素を取り込む有機化合物例えばヘキサンを設け、ヘキサンに取り込まれた酸素は、今度はヘキサンの上の気層に放出され、放出された酸素は、イオン交換膜(本発明で言う「プロトン(H)透過膜」に相当)が上方に延長された形の言わば隔壁(酸水溶液の上の空間を大きく二分するので隔壁)の上方空間に設けられた窓(特許文献3では、「気孔(符号:10)」と表現)を通じて、正極側空間に移動し、そこから正極側空間に接している正極側酸性水溶液に溶け込む。溶け込んだ酸素は、(式2)に従って酸素(O)が光還元される。
【0009】
イオン交換膜(本発明で言う「プロトン(H)透過膜」に相当)は、酸性水溶液を負極層側と正極層側に大きく二分するが、プロトン(H)を透過させるので、負極で生産される4H(式1)を正極で消費する(式2) 4Hへと供給するのである。
即ち、特許文献2及び3の電池は、本発明も同じだが、理論的に、発生するもの(4H、O、2HO)と消費するもの(4H、O、2HO)が1:1で過不足ないので、閉鎖系を形成することが可能である。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2009-218080号公報(大阪府大)
【特許文献2】特開2014-123554号公報(千葉大学)
【特許文献3】特開2016-103454号公報(千葉大学)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の光燃料電池(特許文献2及び3)の実用上の起電力は、なかなか理論的に見積もられる起電力(約2.75V)に達していない。本発明の目的は、起電力をより高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
鋭意研究の結果、本発明者らは、偶然にも、負極側に接して設けられた第1光触媒層に接して有機色素層を設けたところ、新たな現象(ここではブースト効果と称する。)が生じ起電力が高まることを見出し、本発明を成すに至った。
本発明は第一に、
(1)負極層、
(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層であって、紫外光を受けて励起し水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層、
(3)前記第1光触媒層の一部又は全部及び前記負極層の一部に接して配置された有機色素層であって、可視光を受けて励起する有機色素層、
(4)正極層、
(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層であって、紫外光及び/又は可視光を受けて励起し下記酸性水溶液に含まれるプロトン及び酸素の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層、並びに
(6)前記第1光触媒層、前記有機色素及び前記第2光触媒層の3点全部に接している酸性水溶液であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液、
からなる光燃料電池(請求項1)
を提供する。
【0013】
また、本発明は、
(1)負極層、
(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層であって、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し下記(式1)に従ってホール(h)によって水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層、
2HO + 4h → 4H+O (式1)
(3)第1光触媒層の一部又は全部及び負極層の一部に接して配置された有機色素層であって、当該色素層に最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)とのエネルギー差以上のエネルギーを含む可視光を受けて励起しHOMOに非占有軌道、LUMOに励起電子が生じる有機色素層、
(4)正極層、
(5)正極層に接して配置された第2光触媒層であって、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光及び/又は可視光を受けて励起し下記(式2)に従って下記酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層、並びに
4H + 4e + O → 2HO (式2)
(6)第1光触媒層、有機色素及び第2光触媒層の3点全部に接している酸性水溶液であって、少なくとも第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液、
からなる光燃料電池であって、
【0014】
第1光触媒層が紫外光を受けて励起し価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第1励起電子となり、当該価電子帯は電子を1個失った状態即ち1価のホール(h)を持った状態となり、このホール(h)が(式1)に従い水(HO)分子から電子を奪うことで水から酸素への酸化反応が進み、前記ホール(h)は奪った電子と結合して消滅し、
他方、第1励起電子の一部は負極層に進み、
また、有機色素層が可視光を受けて励起してHOMOに非占有軌道、LUMOに第2励起電子が生じ、
当該第2励起電子は負極層に進み、他方、当該非占有軌道には第1光触媒層からの第1励起電子の残部が流れ込み、当該残部は可視光を受けて励起されて再びHOMOに非占有軌道、LUMOに第2励起電子を生じ、当該第2励起電子は負極層に進み、以下、同様に色素層において「励起、流れ込み、進み」が繰り返されることで、第2励起電子の数は増大し、
負極層で発生した第1励起電子の一部及び第2励起電子は、間に負荷を含み得る外部回路を通じて正極層に供給され、
第2光触媒層は、(a)当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し即ち価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第3励起電子となり、そのとき、当該価電子帯には第3ホール(h)が残り、及び/又は(b)可視光を受けて励起し即ち価電子帯の電子がバンドギャップ間準位に励起されて第4励起電子となり、そのとき、当該価電子帯には第4ホール(h)が残り、
当該第3励起電子及び/又は当該第4励起電子は、下記(式2):
4H + 4e + O → 2HO (式2)
に従って酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で前記酸素を光還元し、
他方、第3ホール(h)及び/又は第4ホール(h)は、外部回路を通じて供給される第1励起電子の一部及び第2励起電子と再結合して消滅する、
ことを特徴とする光燃料電池(請求項2)
を提供する。
【0015】
更に、本発明は、光燃料電池(請求項2)において、バンドギャップ間準位(請求項2)が欠陥準位又は不純物準位であることを特徴とする光燃料電池(請求項3)を提供する。
更にまた、本発明は、光燃料電池(請求項1~3)において、酸性水溶液を負極層側と正極層側に大きく二分する電子絶縁性のプロトン(H)透過膜を設けたことを特徴とする光燃料電池(請求項4)を提供する。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によれば、言わば水を燃料とする光燃料電池において、新たな現象(ブースト効果と称する)の効果により、起電力及び出力が高まる。
また、第1及び第2光触媒層が紫外光を利用するのに対し、有機色素層(及び場合により第2光触媒層)は可視光を利用するので、光として無償で大量に手に入る太陽光を利用するとき、紫外光又は可視光だけを使う従来の方法に比べ、本発明は太陽光を全て利用し無駄にしないので起電力及び出力がより高まると言う効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る光燃料電池(概略、横置き円筒型)の側面方向から、その円筒を円の中心を通る垂直な面で切断した断面端面を見た概念図である。寸法は正確ではなく、構成を理解し易いようにデフォルメしてある。
【図2】実施例1の電池と外部回路を示す回路図である。
【図3】実施例1で使用した有機色素「ローズヒップ&ハイビスカスフラワーハーブ」の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例2で使用した有機色素「ペクセル・テクノロジーズ社製の商品名PEC-TOM-P04」の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図5】電池の性能評価に使用したアーク灯から出る光の紫外可視発光スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施例1及び比較例の電池を性能評価したときに得られた電流-電圧(i—V)特性を示すグラフである。
【図7】実施例2及び比較例の電池を性能評価したときに得られた電流-電圧(i—V)特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図1を引用して詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示に限定されるものではない。
まず、電池の構成を説明する。基本的な構成は、以下の通りである。
(1)負極層;
(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層であって、紫外光を受けて励起し水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層;
(3)前記第1光触媒層の一部又は全部及び前記負極層の一部に接して配置された有機色素層であって、可視光を受けて励起する有機色素層;
(4)正極層;
(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層であって、紫外光及び/又は可視光を受けて励起し下記酸性水溶液に含まれるプロトン及び酸素の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層;並びに
(6)前記第1光触媒層、前記有機色素及び前記第2光触媒層の3点全部に接している酸性水溶液であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液(液体なので、当然に適当な容器に保持されている);

【0019】
次に各構成要件について説明する。
≪負極層(1)及び正極層(4)≫
負極層(1)及び正極層(4)は、電気(電子)を通すものなら何でも良いが、太陽光などの光を受光する触媒層や色素層を考えると、面積の大きい薄膜状又は板状が好ましく、そのため、素材としては、金属例えば銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン、コバルト、白金、各種カーボン材料(活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン)、などが挙げられる。しかし、背面からも受光する方が光を有効利用できるので、そのことを考えると透明なことが好ましく、透明電極層例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(fluorine-doped Tin Oxide)、TO(Tin Oxide)、グラフェンなどが好ましい。
負極層(1)及び正極層(4)は、できるだけ電気抵抗の小さい素材が好ましいし、光を透過させる材料の場合、薄いことが好ましい。しかし、薄いと電気抵抗が大きくなるというトレードオフ(二律背反)の関係にある。一般には透明電極層は薄いことが好ましいので、真空蒸着、スパッタリング法などの薄膜法で作成される。そのため、基板(9)好ましくは透明な基板(9)の上に負極層(1)、正極層(4)が形成される。なお、電極層が機械強度的に自己形状保持性を有すれば、基板(9)は不要である。

【0020】
このような透明な基板(9)の素材としては、ガラス又はプラスチック板(屈曲性があっても可)が好ましい。プラスチックの材料は、無着色で透明性が高く、耐熱性が高く、耐薬品性ならびにガス遮断性に優れ、かつ低コストが求められる。そのようなプラスチック材料の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)を含む。ポリエチレンテレフタレート(PET)などである。
なお、基板(9)を通して光触媒層に紫外光をも受光させる電池構成の場合には、基板(9)は紫外光をも通すものでなければならず、石英、「パイレックス(登録商標)」、「PYREX(登録商標)」という耐熱性低膨張ホウケイ酸ガラスなどが好ましい。

【0021】
≪第1光触媒層(2)≫
負極層(1)に接して配置される第1光触媒層(2)は、紫外光を受けて励起し水が光酸化されるのを触媒するものである。より詳しくは、第1光触媒層(2)は、紫外光を受けて励起し価電子帯(valence band)の電子が伝導帯(conduction band)に励起されて第1励起電子となり、価電子帯は電子を1個失った状態即ち1価のホール(h)を持った状態となるものである。
このような光触媒の素材としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ(Nb)、酸化鉄、酸化ビスマスなどの金属酸化物やBiVOなどの複合金属酸化物、GaNなどの金属窒化物、GaPなどの金属リン化物、CdSなどの金属硫化物などが挙げられる。金属酸化物は結晶化していることが好ましい。

【0022】
素材の形状は、特に問わないが、表面積を増やして受光面積を増やす目的から球状又はほぼ球状が好ましい。球状又はほぼ球状の場合、素材は粒子形状となるが、粒子径としては、例えば、1 μm~0.2mmくらいが適当である。
素材から光触媒層を形成する方法も特に問わないが、基板(9)上に素材を塗布法で形成することが安価で好ましい。塗布する場合、強度を問わなければ、素材粒子を適用な溶媒例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、エーテルに分散させて懸濁液としてから基板(9)に塗布し、その後、乾燥させて溶媒を揮発させれば、後に光触媒層が形成される。強度を高めるには、無機又は有機バインダーを併用しても良い。

【0023】
無機バインダーとしては、例えば、各種炭素材料やSiO、Alが挙げられる。
有機バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド類、デンプン及びデンプン誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースに代表されるセルロース誘導体;カゼイン;ゼラチン;ポリビニルアセテート系、酢酸ビニル-アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、シリコーン系、フッ素系、ポリブタジエン系、スチレンブタジエン系、NBR系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、塩化ビニリデン系、ポリスチレン-(メタ)アクリレート系、スチレン-無水マレイン酸系等の共重合体;シリコーン変性アクリル系、フッ素-アクリル系、アクリルシリコン系、エポキシ-アクリル系等の変性共重合体などが挙げられる。

【0024】
素材から第1光触媒層を形成する方法は、価格(コスト)を問題にしなければ、真空蒸着、スパッタリング法などの真空薄膜形成法、いわゆる厚膜法(例えばメッキ法、ペーストを塗布し焼成する方法)などが挙げられる。また、直接に第1光触媒層を形成するのではなく、その前駆体の層を形成した後、酸化や焼成することにより、第1光触媒層を形成する方法もある。
第1光触媒層(2)の厚さは、一般には0.1~25μmが適当であり、好ましくは1~5μmである。

【0025】
≪有機色素層(3)≫
第1光触媒層(2)の一部又は全部及び負極層(1)の一部に接して配置された有機色素層(3)は、可視光を受けて励起する。より詳しくは、有機色素層(3)は、最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)とを有し、それらのエネルギー差以上のエネルギーを含む可視光を受けて励起しHOMOに非占有軌道(空き軌道)、LUMOに第2励起電子を生じ、この第2励起電子は負極層(1a)に進む。非占有軌道(空き軌道)には第1光触媒層からの第1励起電子の残部が流れ込み、当該残部は可視光を受けて励起されて再びHOMOに非占有軌道(空き軌道)、LUMOに第2励起電子を生じ、この第2励起電子は負極層(1)に進む。以下、同様に色素層において「励起、流れ込み、進み」が繰り返されることで、第2励起電子の数は増大する。

【0026】
この「励起、流れ込み、進み」が繰り返される現象をここでは「ブースト効果」と称する。これが本発明で起電力及び出力を高める要因と解釈している。何故ならば、第1光触媒層(2)を無くして有機色素層(3)だけを設けた負極部材を作成し光燃料電池を構成しても、水が酸化されないにもかかわらず、第1光触媒層(2)に有機色素層(3)を付加すると、電池の出力が電圧及び電流の両面で増加するので、ブースト効果と解釈している。
なお、有機色素は、水を酸化することはない、即ち、前記非占有軌道(空き軌道)ができたとき、そこがホール(h)を持った状態となり、このホール(h)が(式1)に従い水を酸化するということはないと考えている。

【0027】
このような有機色素(3)の素材としては、例えば、有機色素(例えば、エオシン、ローダミン、メロシアニン、クマリン、シアニン、メロシアニン、アントシアニン、オキソノール、キサンテン、スクワリリウム、ポリメチン、リボフラビン、ペリレン)及び金属錯体色素(例えば、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体)など挙げられる。また、色素増感型太陽電池に使用される有機色素(例えば、ペクセル・テクノロジーズ社製の商品名PEC-TOM-P04)も使用可能である。更には、天然の花の色素も使用可能である。
有機色素層(3)は、有機色素を適当な溶媒に溶かし又は懸濁し、溶液又は懸濁液となし、これを第1光触媒層(2)の上に塗布し、乾燥させて溶媒を揮発させることで形成される。このとき、場合により、有機色素層(3)は、第1光触媒層(2)に浸み込み第1光触媒層(2)内に均一に分布する。この場合、図1では有機色素層(3)と第1光触媒層(2)とは区別して描かれているが、図1は概念図と理解されたい。
形成された後、有機色素層(3)は酸性水溶液(5)に晒されるので、有機色素は水に溶けないものが好ましい。
ブースト効果を得るためには、第1光触媒層(2)の光触媒と有機色素層(3)の色素との量比は、前者1モル当たり後者0.1ミリモル~50ミリモル、好ましくは1ミリモル~10ミリモルが適当である。

【0028】
≪第2光触媒層(5)≫
正極層(4)に接して配置される第2光触媒層(5)は、紫外光を受けて励起し酸性水溶液(6)に含まれるプロトンの存在下で外部回路(8)を通じて供給される電子によって酸素が光還元されるのを触媒するものである。より詳しくは、第2光触媒層(5)がそのバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し(式2)に従って酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で外部回路(8)を通じて供給される電子(e)によって酸素(O)が光還元されるのを触媒するものである。
4H + 4e + O → 2HO (式2)
ここをもう少し詳しく説明すると、第2光触媒層(5)は、紫外光を受けて励起即ち価電子帯(valence band)の電子が励起されて伝導帯(conduction band)へ移って第3励起電子となる。電子を失った価電子帯は、1価のホール(h)を持った状態となり、このホール(h)が外部回路(8)を通じて負極から供給される電子(e)と再結合して消滅する。そして、第3励起電子は強い還元力を持ち(式2)の左辺の(4e)となり酸素を還元する。

【0029】
このような第2光触媒の素材としては、例えば、オキシ塩化ビスマス(BiOCl)、酸化チタン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ(Nb)、酸化鉄、酸化ビスマスなどの金属酸化物やBiVOなどの複合金属酸化物、GaNなどの金属窒化物、GaPなどの金属リン化物、CdSなどの金属硫化物、及びナノ粒子担持n型半導体、例えばPt-TiO、Ag-TiO、及び各種p型半導体、例えばBiOCl、CaFe、ZnMn、InP 、AgGaSの少なくともいずれかを含むものなどが挙げられる。金属酸化物は結晶化していることが好ましい。

【0030】
第2光触媒[例えば、オキシ塩化ビスマス(BiOCl)]には、バンドギャップ間準位が欠陥準位又は不純物準位があっても良い。第2光触媒がバンドギャップ間準位を有する場合には、もう一つの反応ルートが生じる。バンドギャップ間準位は、価電子帯と伝導帯の間にあり、価電子帯からバンドギャップ間準位へ電子が励起されるルートが生まれる。この価電子帯⇒バンドギャップ間準位のバンドギャップは可視光のエネルギーに相当し、もし、第2光触媒層が受光する光が太陽光のように紫外光に加えて可視光をも含む場合には、可視光を受けて励起即ち価電子帯の電子がバンドギャップ間準位へ励起される。そして、励起された電子(第4励起電子)は(式2)の左辺の(4e)の一部となるのである。一方、電子を失った価電子帯は、1価のホール(h)を持った状態となり、このホール(h)は外部回路(8)を通じて負極から供給される電子(e)と再結合して消滅する。そして、第4励起電子は強い還元力を持ち(式2)の左辺の(4e)となるのである。
欠陥準位の「欠陥」としては、例えば、第2光触媒が無機酸化物(例えば、酸化チタン、酸化タングステン、オキシハロゲン化金属など)の場合は酸素欠陥である。不純物準位とはここでは主に欠陥準位を指している。

【0031】
≪酸性水溶液(6)≫
酸性水溶液(5)は、第1光触媒層、有機色素及び第2光触媒層の3点全部に接している。酸性水溶液(6)は、プロトン(H)即ち水素イオンの受け皿であり、供給源である。
酸性水溶液(6)は、第一には、例えば塩酸、硫酸、硝酸、 リン酸、炭酸、フッ酸、ホウ酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸などの水溶液が用いられる。これらに限られることはなく、例えば、酸性塩を水に溶かして得られ得る水溶液を用いることもできる。酸性塩としては、例えば、NaHCO、KHSO、 NaHPO、NaHPOなどが挙げられる。酸性水溶液(6)のpHは、5以下が適当であり、好ましくは1~4である。

【0032】
酸性水溶液(6)は、(式1)により負極側で生まれたプロトン(H、水素イオン)を正極側で(式2)により消費されるプロトン(H、水素イオン)へと移動させる媒体でもある。従って、酸性水溶液(6)は液状であることが好ましいが、外観上は液体でなくとも、プロトン(H、水素イオン)の移動が可能であり、負極側で発生した酸素の排除又は放出が可能で、かつ、酸素を含み得、正極側の第2光触媒付近に酸素を供給できれば、多孔質の固体又は半固体媒体中に存在する形の酸性水溶液(6)でも良い。このような外観でも本発明及び請求項に記載された発明の範疇である。多孔質を使えば、何かの事故で酸性水溶液(6)が外部に漏洩する危険性が小さくなる。

【0033】
酸性水溶液(6)は、万一の短絡即ち電子が外部回路(7)を経由せず、負極層(1)から直接に正極層(4)に移動することを防ぐために間に隔壁(8)を設けることが好ましい。もっとも、水溶液中を電子が移動することは通常は起きない。隔壁(8)により、酸性水溶液(6)は、負極層側と正極層側に大きく二分される。しかし、上述の通り、(式1)により負極側で生まれたプロトン(H、水素イオン)を正極側で(式2)により消費されるプロトン(H、水素イオン)へと移動させる必要があるので、隔壁(9)を設ける場合には、隔壁(9)は電子絶縁性のプロトン(H)透過膜(9)であることが好ましい。

【0034】
酸性水溶液(6)は、液体なので当然に適当な容器(10)に入れて保持する。容器(10)はガラス製でもプラスチック製その他でも良い。光触媒に光を当てるため、容器(10)は透明であることが好ましい。不透明な容器の場合、適当な個所に透明材料で作られた窓(11)を設けることが好ましい。窓(11)の材料は、特に負極層(1)側では紫外光も可視光も透過するものが好ましい。正極層(4)側では、紫外光及び好ましくは可視光を透過する材料が好ましい。そのような材料は、例えば、石英、そのほか商標名「パイレックスPYREX」という耐熱性低膨張ホウケイ酸ガラスが挙げられる。

【0035】
外部回路(7)は、本発明の必須条件ではなく、説明の都合で引用したが、本発明の電池を利用する場合には有用であり、一般的な導体例えば銅線、アルミニウム線、銀線、金線などが使用される。
外部回路(7)の途中には負荷(12)例えば、電球、モーター、抵抗器、LED、ブザーを設け、本発明の電池としての機能を働かせる。
以上、本光燃料電池は、従来の光燃料電池(特許文献2、3)の特徴である、
(a)二酸化炭素を発生させることがない。
(b)水素や化石燃料由来の燃料(例えば、メタノール、天然ガス等)を使用しない。
(c)原理的にクリーンで、安全である。
などの特徴に加えて、ブースト効果により起電力及び出力がより高いという特徴を有する。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
≪第1光触媒層(2)の作成≫
まず、二酸化チタンナノ粒子(商品名:AEROXIDE TiO2 P25(以下、P25と略称することがある)、一次粒子径は約21nm、アナターゼ型が8割ほどでルチル型を含む、日本アエロジル株式会社製) 100mgにt-ブチルアルコール1mLを加えた。更に増粘剤としてエチレングリコール0.05mLを加えた。得られた溶液に二酸化チタン粒子分散のため超音波処理(430W、38kHz)を10分間行なうことで粒子を粉砕させ、二酸化チタンペーストを作製した。一次粒子径は変わらないが、二次、三次的に凝集した二酸化チタンが有意にほぐれて分散されたことを電子顕微鏡で確認した。
【実施例】
【0037】
別途、負極Anode層(1)としてのITO被膜(インジウム-スズ酸化物、厚さ0.12~0.16μm、シート抵抗8~12Ω□)が形成されたガラス基板(2.5cm×2.5cm×厚さ1.1mm、アルドリッチAldrich社製品、製品番号No.703192)を用意した。このITO被膜付きガラス基板は、詳しく説明すると、ITO被膜(1)/基板(9)の2部材からなり、基板(9)は、商標名「パイレックスPYREX」という耐熱性低膨張ホウケイ酸ガラスで出来ている。このガラスは波長300nm以上の紫外光及び可視光を透過する。
二酸化チタンペーストを負極層上に塗布し均一に広げて室温下で乾燥させた。得られた乾燥二酸化チタン層(第1光触媒層)の周囲をナイフで削って、矩形(1.0cm×1.3cm)とし受光面積を1.3cm とした。次に100℃で18時間乾燥させ、その後300℃で30分間焼成することで第1光触媒層(2)を作成した。第1光触媒層(2)の厚さは約2μm、重量は0.4mgである。
【実施例】
【0038】
≪有機色素層(3)の作成≫
ローズヒップ&ハイビスカスフラワーハーブ(ドイツ国ポンパドール社製、品番No.1519-88)1.0gにエタノール10mLを加えた。室温で24時間静置し、その後、吸引ろ過を行なうことで色素-エタノール抽出液が得られた。
この色素-エタノール抽出液を更にエタノールで10分の1に希釈し、紫外可視吸収スペクトルを測定した。282nm、452nm及び553nmに主な吸収を示すことが確認された。この結果を図3に示す。
この色素-エタノール抽出液0.12mLを上記第1光触媒層(2)の上に滴下した後、自然乾燥させることで、有機色素層(3)を形成させた。このとき、有機色素層(3)は、第1光触媒層(2)に浸み込み第1光触媒層(2)内に均一に分布している。形成された有機色素層(3)の全体量は16ナノモルである。
こうして、図1に示す、基板(9)上に順に負極層(1)、第1光触媒層(2)、有機色素層(3)が形成された負極部材が得られた。なお、図1では有機色素層(3)と第1光触媒層(2)とは区別して描かれているが、図1は概念図と理解されたい。
【実施例】
【0039】
≪第2光触媒層(5)の作成≫
まず硝酸ビスマス五水和物粉末[Bi(NO・5HO]2.0gに、水63.5mLを加えた。得られた液に粉末破砕のために10分間の超音波処理(430W、38kHz)を行い、その後、マグネチックスターラーを用いて2時間撹拌を行ない、続いて吸引ろ過を行なった。得られた固形物をエタノールで洗浄し、100 ℃で18時間乾燥させ、オキシ塩化ビスマス粉末(以下、「BiOCl」と略称する、粒径115nm)が得られた。
得られた粉末100mgをバイアル管に移し、水1.0mLを加えた。粉末の破砕のために栓をしたバイアル管の下半分を水に浸した状態で超音波処理(430W、38kHz) を10分間行ない、BiOCl分散液を得た。
別途、正極Cathode層(4)として負極層と同じITO被膜(4)付きガラス基板を用意した。
【実施例】
【0040】
BiOCl分散液を正極層(4)上に塗布し均一に広げて室温で乾燥させた。得られた乾燥BiOCl層(第2光触媒層)の周囲をナイフで削って、矩形(1.0cm×1.3cm)とし受光面積を1.3cmとした。その後100℃で18時間乾燥後、300℃で30分間焼成することで第2光触媒層(5)を作成した。第2光触媒層(5)の厚さは約1μm、重量は0.6mgである。
こうして、図1に示す基板(9)上に順に正極層(4)、第2光触媒層(5)が形成された正極部材が得られた。
【実施例】
【0041】
≪光燃料電池の作製≫
両側に石英窓(11)が付いた円筒型耐熱ガラス容器(10)を用意し、図1に示すような構成の電池を作成した。容器(10)は、内径47mm、長さ90mmの円筒形をしており、横置きである。容器(10)のガラスの厚さは2mmである。このガラスは紫外光を透過しない。それに対し、石英窓(11)は紫外光も可視光も透過する。
図1は、横置き円筒の側面方向から、その円筒を円の中心を通る垂直な面で切断した断面端面を見た概念図である。寸法は正確ではなく、構成を理解し易いようにデフォルメしてある。
容器(10)内は円筒の長さ方向の中心で電子絶縁性のプロトン(H)透過膜(8)で仕切られており、透過膜(8)は容器(10)内を負極側セルと正極側セルに大きく二分している。透過膜(8)は、ここではナフィオン被膜(米国デュポン社商標、品番NR212、厚さ50μm、> 9.2 × 10-4当量g-1)を使用した。ナフィオンは、スルホ化されたテトラフルオロエチレンを基にしたフッ素系共重合体でイオン伝導性を持つ高分子である。
【実施例】
【0042】
容器(10)は、横置き円筒の左右2つの底面に当たる部分に開口部があり、その開口部をゴムパッキン(不図示)を介して厚さ3mmの石英窓(11)で密閉してある。石英窓(11)は紫外光も可視光も透過する。
負極側セル及び正極側セルには、各40mLの塩酸(6)が入っている。塩酸(6)は、濃度がpH2であり、請求項の発明でいう酸性水溶液に当たる。
負極側には、石英窓(11)に平行に負極部材が吊り下げられている。負極部材は上記の通り有機色素層(3)/第1光触媒層(2)/負極層(1)/基板(9)から構成されている。負極部材の向きは、有機色素層(3)が石英窓(11)に面する向きである。
【実施例】
【0043】
正極側には、同じく石英窓(11)に平行に正極部材が吊り下げられている。正極部材は上記の通り、第2光触媒層(5)/正極層(4)/基板(9)から構成されている。このとき、ここでは正極部材の向きを好ましい向きにしてある。即ち、正極部材の向きは、負極部材とは逆で基板(9)が石英窓(11)に面する向きである。以前に色素層のない電池で実験したが、逆向き(即ち、第2光触媒層(5)が石英窓(11)に面する向き)にすると、起電力が低下した。正極層(4)と第2光触媒層(5)との接触面で正極層(4)にある電子(負極から流れてきたもの)と第2光触媒層(5)にあるホール(光励起の際に後に残されたもの)とが結合すると思われる。逆向きでは、第2光触媒層(5)を通して光が接触面に当たることになり、そのため光は第2光触媒層(5)で一部反射され、一部吸収され、一部が透過して接触面に当たることになり、接触面に当たる光が弱くなる。
【実施例】
【0044】
<実施例2>
実施例2は、実施例1と有機色素が異なるだけで、その他は実施例1と同じであるので、説明はそれだけにする。
≪有機色素層の作成≫
有機色素として、ペクセル・テクノロジーズ社製の商品名PEC-TOM-P04(溶液状態)を用意し、これをエタノールで33倍に希釈し、紫外可視吸収スペクトルを測定した。この色素は、274nm、420nmに吸収を示すことがわかった。この結果を図4に示す。
こうして、基板(9)上に順に負極層(1)、第1光触媒層(2)、有機色素層(3)が形成された第2負極部材が完成した。第1光触媒層(2)の厚さは約2.1μm、重量は0.4 mgである。このとき、有機色素層(3)は、第1光触媒層(2)に浸み込み第1光触媒層(2)内に均一に分布している。形成された有機色素層(3)の全体量は36ナノモルである。
≪光燃料電池の作製≫
実施例1と同様に光燃料電池を作製した。但し、負極部材は上記第2負極部材を使用した。
【実施例】
【0045】
<比較例>
有機色素層を形成しない他は、実施例1と同様にして、光燃料電池を作製した。
【実施例】
【0046】
<発電性能の評価1>
まず、太陽光の代わりに、500Wクセノンショートアーク灯(ウシオ電機社製、電球:UXL-500SX、ランプハウス:SX-UID502XAM)を用意した。このアーク灯から出る光のスペクトル分布を図5に示す。なお、この図は、同社のカタログから引用した。
https://www.ushio.co.jp/jp/products/product_file/file/1022_opm_laboratory.pdf
このスペクトル分布からこのアーク灯から出る光には、紫外線と可視光が含まれていることが分かる。
アーク灯から出る光は、石英ガラスファイバー(不図示)で2つに分けて、光燃料電池の両側の石英窓(11)近くに誘導し、そこから、石英窓(11)経由で負極部材、正極部材に向けて照射される。照射された光の強度は、各部材の位置でそれぞれ8mWcm-2だった。
【実施例】
【0047】
次に実施例1の光燃料電池に外部回路(7)として銅線(7)で負極層(1)と正極層(4)とをつなぎ、途中に負荷(12)として、図2に示す通り、電圧計(A)及び電流計(A)を並列に取り付けた。更に電流計(A)の横に直列に可変抵抗器(0.3~500kΩ)を取り付けた。図2において、電池を示すマークは、光燃料電池を意味する。
ここで、断りがある。第1光触媒層は水が光酸化されるのを触媒し酸素を発生させる。従って、光酸化反応を速めるには、発生する酸素を積極的に排除することが好ましく、ここでは、図1には図示していないが、第1光触媒層の近くで窒素ガスを100mL/分の速度で1時間バブリングした。同じく、第2光触媒層は酸素が光還元されるのを触媒する。従って、光還元反応を進めるため、自然に入る溶存酸素に頼らずに、酸素を積極的に供給することが好ましく、ここでは、図1には図示していないが、第2光触媒層の近くで酸素ガスを100mL/分の速度で1時間バブリングした。
これらのバブリングは、この後の光照射による電流-電圧(i—V)特性を測定するときも同じ流速で継続した。
【実施例】
【0048】
その上で、上記アーク灯を発光させ、光燃料電池に両側から光照射を行なった。このとき、図2に示す可変抵抗器の抵抗を大から小へ、小から大へと変化させて行き、電圧及び電流値をモニターすることで、電流-電圧(i—V)特性を測定した。得られた発電成績を下記表1及び図6に示す。
【実施例】
【0049】
<発電性能の評価2>
実施例1(有機色素がフラワー)の代わりに実施例2(有機色素がPEC-TOM-P04)の光燃料電池を用い、同様に電流-電圧(i—V)特性を測定した。得られた発電成績を下記表1及び図7に示す。
<発電性能の評価3>
実施例1(有機色素がフラワー)の代わりに比較例(有機色素層なし)の光燃料電池を用い、同様に電流-電圧(i—V)特性を測定した。得られた発電成績を下記表1及び図6、図7に示す。
【表1】
JP2019209259A_000003t.gif
表1の結果から、実施例1、2の光燃料電池では、比較例のそれ(有機色素層なし)に比べ、電流値の増加及び起電力である開放電圧の増加が見られ、それらに伴い最大出力が向上するなど電池としての発電性能が格段に向上していることが分かる。
【実施例】
【0050】
また、別の実験で、有機色素層だけでは、水を酸化することが無かったことから、表1の結果は、上記のブースト効果によるものと解釈している。
なお、本発明の技術的範囲とりわけ特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲は、上記実施例に限定されるものではなく、上記実施例は本発明の理解を助けるためのもの及び特許法第36条第4項第1号の要件を満たすために記載されたものの一部であると理解するべきである。
【符号の説明】
【0051】
1・・・・・・負極層
2・・・・・・第1光触媒層
3・・・・・・有機色素層
4・・・・・・正極層
5・・・・・・第2光触媒層
6・・・・・・酸性水溶液
7・・・・・・外部回路(銅線)
8・・・・・・電子絶縁性のプロトン(H)透過膜(隔壁)
9・・・・・・基板(PYREX)
10・・・・・容器
11・・・・・石英窓
12・・・・・負荷
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6