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明細書 :超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-182778 (P2019-182778A)
公開日 令和元年10月24日(2019.10.24)
発明の名称または考案の名称 超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤
国際特許分類 A61K  49/00        (2006.01)
A61K  49/18        (2006.01)
FI A61K 49/00
A61K 49/18
請求項の数または発明の数 1
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2018-075105 (P2018-075105)
出願日 平成30年4月10日(2018.4.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 1.バイオマテリアル-生体材料 VOL.35,NO.4 October 2017 通巻177号,14項,日本バイオマテリアル学会(刊行物) (1)発行日 平成29年10月20日 2.第39回日本バイオマテリアル学会大会(予稿集、学会発表) (1)学会名 第39回日本バイオマテリアル学会大会 (2)予稿集発行日 平成29年11月13日 (3)学会発表日 平成29年11月20日 3.第15回千葉大学医工学シンポジウム(学会発表) (1)学会名 第15回千葉大学医工学シンポジウム (2)学会発表日 平成29年11月14日 4.第2回マルチモーダル計測医工学国際シンポジウム(予稿集、学会発表) (1)学会名 第2回マルチモーダル計測医工学国際シンポジウム (2)予稿集発行日 平成30年1月18日 (3)学会発表日 平成30年1月18日 5.日本音響学会2018年春季研究発表会(講演要旨公開、講演論文集、学会発表) (1)学会名 日本音響学会2018年春季研究発表会 (2)講演要旨ウェブサイト公開日 平成30年2月28日 (3)論文集発行日 平成30年2月27日 (4)学会発表日 平成30年3月15日
発明者または考案者 【氏名】吉田 憲司
【氏名】林 秀樹
【氏名】豊田 太郎
【氏名】江畠 将彦
出願人 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
審査請求 未請求
テーマコード 4C085
Fターム 4C085HH01
4C085HH09
4C085HH11
4C085JJ05
4C085KA27
4C085LL03
4C085LL20
要約 【課題】比較的広い範囲の浅部領域を近赤外蛍光造影で観察して、見たい局所を発見し(いわばナビゲート)、同じ位置で、今度は超音波造影で深部領域を局所的かつ高分解能で観察する。
【解決手段】分散質としてのリポソーム粒子(1)及び分散媒としての生理食塩水(4)からなり、当該リポソーム粒子の直径がナノサイズ又はマイクロサイズであり、当該リポソーム粒子の内部に気体(2)を含む超音波造影剤(A)及び近赤外蛍光色素(3)からなる近赤外蛍光造影剤(B)からなり、前記リポソーム粒子(1)と前記近赤外蛍光色素(3)とは結合していることを特徴とする、超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
分散質としてのリポソーム粒子及び分散媒としての生理食塩水からなり、当該リポソーム粒子の直径がナノサイズ又はマイクロサイズであり、当該リポソーム粒子の内部に気体を含む超音波造影剤(A)及び近赤外蛍光色素からなる近赤外蛍光造影剤(B)からなり、
前記リポソーム粒子と前記近赤外蛍光色素とは結合していることを特徴とする、超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波造影法は、生体内を進んだ超音波パルスが生体組織の変わるところ(正確には音響インピーダンスの変わるところ)で反射され、その反射波を情報処理して画像化(イメージング化)する際、反射を強調させるため、造影剤を用いる方法である。生体組織(例えば、血管やリンパ管)に造影剤を投与して反射を強調し、これまでに得られなかった新たな生体組織の画像(例えば、血管やリンパ管の分布画像)を得るのである。超音波はX線と違って生体組織への損傷がないか極めて少ない利点がある。
【0003】
最近、超音波造影剤の主役である気泡(気泡は超音波を反射する)の大きさがマイクロやナノのサイズであると、超音波造影剤がサイズによって生体組織(例えば、肝臓、腎臓、膵臓、胆のう、胃、胃、十二指腸、皮膚など)の深部(具体的には皮膚表面から造影の場合は、最大深さ:数十mm、肝臓や心臓等の臓器の表面から造影する場合は、扇状の断層面となるが、最大深さ:100mm程度)の微小血管系やリンパ管系にも届くので、注目されている(非特許文献1、2参照)。
【0004】
他方、近赤外光造影法は、同様に生体組織に近赤外蛍光造影剤を投与し、外部から近赤外励起光を照射する。励起光を受光した造影剤は励起された後、元の基底状態に戻るとき、励起光と異なる波長の近赤外光を発光する。近赤外光は比較的厚く(具体的には最大厚さ10mm程度)とも生体組織を透過することから、外部から照射及び反射光又は透過光の受光を行うことができる。
【0005】
そこで、外部から近赤外光カメラを使って発光した光を外部から撮影することで生体組織の状況が低侵襲で判明することから、生体組織(患部)の病理診断法として多用されている。
【0006】
最近、同様に生体組織(例えば、肝臓、腎臓、膵臓、胆のう、胃、胃、十二指腸、皮膚など)の血管やリンパ管に造影剤を投与して、その深部(具体的には最大深さ10mm程度)の微小血管系やリンパ管系を撮影する近赤外光造影法が注目されている(非特許文献3、4参照)。
【0007】
なお、非特許文献4のリポソームは、近赤外蛍光造影剤の主役である近赤外蛍光造影色素であるインドシアニングリーン(ICG)又はアルキル鎖で標識されたICG誘導体に結合しているリポソームであり、リポソーム内部に気体を含まないので超音波造影剤ではなく、近赤外蛍光造影剤である。リポソームは色素分子を大きくして色素をリンパ節に滞留・集積させる目的で結合している。結局、非特許文献4のリポソームは、超音波造影とは全く関係なく、本発明と全く異なる。
【0008】
特許文献1の「蛍光色素を含有するリポソーム」も非特許文献4のリポソームと同じである。基本的には、特許文献1のリポソームも近赤外蛍光造影剤であり、超音波造影とは関係なく、本発明と全く異なる。
【0009】
特許文献2のリポソーム複合体も、構造的にはインドシアニングリーン(ICG)等が結合したリポソーム粒子であるが、リポソーム粒子内に薬剤を含む。この複合体に強力な近赤外線を照射してICGにそれを吸収させて発熱させることで、リポソームを破壊し、それで薬剤を放出させるのである。ドラッグデリバリーシステム(DDS)に使う薬剤とも言える。結局、特許文献2のリポソーム複合体も、近赤外蛍光造影剤の一種であり、超音波造影とは全く関係なく、本発明と全く異なる。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2017-75937号公報
【特許文献2】再公表2013/051732
【0011】

【非特許文献1】Y,Matsumura et al., Cancer research, 1986; 46: 6378-6392
【非特許文献2】平田圭一 他,Drug Delivery System 2010; 25-5: 466-473
【非特許文献3】JT. Alander et al., International Journal of Biomedical Imaging, 2012; Article ID 940585: 26
【非特許文献4】Toyota et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry 2014; 22: 721-727
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
超音波造影法は、深部領域を局所的つまり比較的狭い範囲(体表面からの場合、幅:数十mm)を比較的高い分解能(超音波の周波数にもよるが、分解能:凡そ数百μm~1mm)で見る方法であり広い範囲を見ることは困難である(短所)。逆に近赤外蛍光造影法は、浅部領域を比較的広い範囲(幅:数百mm)を高分解能(分解能:凡そ数十~数百μm)でみることができるが、深部領域の観察には適用範囲が狭い(短所)。
【0013】
そこで、本発明者らは、両者の短所を補完し、比較的広い範囲の浅部領域を近赤外蛍光造影で観察して、見たい局所を発見し(いわばナビゲート)、同じ位置で、今度は超音波造影で深部領域を局所的かつ高分解能で観察できれば、新しい診断法が可能になることを着想した。
【0014】
この着想を実現可能にするには、両者の造影剤に工夫が必要である。何故ならば、近赤外蛍光造影剤は、拡散が比較的早く、同一領域へ超音波造影剤を注射しても見たい局所の発見が難しくなること、更に同一領域へ2種の注射が必要で、施術的な手間がかかり誤差を生じやすいこと、造影剤を2種用意することの管理および安全上のリスクが高くなることなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、かかる問題を解決するため、超音波造影剤と近赤外蛍光造影剤とを結合させ1つの造影剤にすることを世界で初めて着想し、鋭意研究の結果、本発明を成すに至った。
【0016】
超音波造影剤の中には、リポソーム(粒子)を主体とするものがある。そのような造影剤は、分散質としてのリポソーム粒子及び分散媒としての生理食塩水からなる分散体(懸濁液)であり、当該リポソーム粒子の内部に気体を含む。
【0017】
リポソーム(粒子)は、細胞膜の脂質2層膜を模して人工的に作られたもので、リン脂質(phospholipid)の皮膜と内包物質(後述する)からなる。
【0018】
リン脂質は、リン原子を含む親水性の部位(フォスフォコリンなど、図1では〇で示す)と疎水性の部位(アシル基、図1では=で示す)を持つ両親媒性の分子である。リン脂質分子が水(分散媒)中で一定濃度以上であると、親水性の部位どうしで近接し、疎水性の部位どうしも近接するように自発的に会合して(寄り集まって)膜を形成し、膜は球形となることで表面積を最小化して安定化する。超音波造影用の気体が共存すると、気体は疎水性であるためにこの球の内部に取り込まれる。これが「マイクロエマルション」または「マクロエマルション」と呼ばれるものである。このときリン脂質は単層膜を形成している。
【0019】
気体が存在しない場合には、リン脂質の膜は表と裏で2枚が近接するように安定化し、膜は二重構造となり、リポソーム粒子を形成する。リポソーム粒子の内部も親水性であることから、ここに水又は水溶液が入る。
【0020】
超音波造影用の気体を取り込ませたリポソーム粒子の作製方法によっては、球の一部が単層膜で他部が2層膜というリポソーム粒子もできる。この場合には、単層膜で囲まれた空間に気体が閉じ込められ、残りの空間に水又は水溶液が入る。
【0021】
このリポソームに近赤外蛍光造影剤の主体である近赤外蛍光色素をリポソーム作製時又は作製後に混合して単層膜又は2層膜(リポソーム粒子)に結合させることに成功し、本発明を成すに至った。
【0022】
即ち、本発明は、
「分散質としてのリポソーム粒子及び分散媒としての生理食塩水からなり、当該リポソーム粒子の直径がナノサイズ又はマイクロサイズであり、当該リポソーム粒子の内部に気体を含む超音波造影剤(A)及び近赤外蛍光色素からなる近赤外蛍光造影剤(B)からなり、
前記リポソーム粒子と前記近赤外蛍光色素とは結合していることを特徴とする、超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤」
を提供する。
【0023】
以下、本発明の超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤を「両用造影剤」ということがある。
【0024】
本発明の造影剤は、概して言えば、分散質としてのリポソーム粒子及び分散媒としての生理食塩水からなる懸濁液である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、世界で初めて超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤を提供する。
【0026】
本発明の造影剤は超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤で、1度の注射で浅部領域にも深部領域にも届き、剤は分子レベルで見て比較的大きなリポソーム粒子を有するので近赤外蛍光造影時にも、拡散が遅く、時間が経っても鮮明な画像が見られる。そこで、時間をかけて見たい局所を発見し、同じ位置で、今度は超音波造影で深部領域を局所的かつ高分解能で観察できる。そのため、新しい診断法を提供することができる。
【0027】
そのため、剤も2種用意する必要がなく、1種で良いので、1回注射することで上記の診断法を行うことができるので、施術的手間が減り、その上、剤の管理、安全性のリスクも低減できる。
【0028】
本発明の造影剤は、リポソームの粒径でナノメートル(nm)サイズ又はマイクロメートル(μm)サイズの2つに大別させることができる。
【0029】
ナノメートル(nm)サイズの場合は、組織間隙を通過しリンパ管へ吸収される。このような特徴から、皮下注射による投与からリンパ管、リンパ節へのリンパ流の可視化が可能となり、体表、臓器表面近傍におけるリンパ系の機能診断に大きく寄与することが期待される。
【0030】
マイクロメートル(μm)サイズの場合は、組織間隙や血管壁を通過することができないという特性を逆に利用することで、血管特異的なイメージングが可能となる。静脈注射により投与し、各種臓器内の血管の造影に使用できる。主な用途としては、外科手術において血管位置を三次元的に把握するための手術ナビゲーション手法としての使用が期待される。また、超音波造影法では、細胞によるマクロファージの効果を利用し腫瘍をイメージングするクッパーイメージングと呼ばれる手法が使用されているが、本発明で開発する造影剤を用いることで近赤外蛍光造影でも同様のイメージングを行うことが期待される。
【0031】
また、本発明の両用造影剤のリポソームの内部に薬剤を内包させれば、近赤外蛍光でドラッグデリバリーシステム(DDS)の体内動態モニタリングを行うことができ、それにより両用造影剤が患部(例えば、癌)に届いたことを確認したあと、強力な超音波を照射してリポソームを破壊(超音波により励起される内部の気体の共鳴振動によりリポソームが崩壊)することにより当該薬剤を放出させ、患部(例えば、癌)だけに直接薬剤を投与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1(ナノメートルサイズ)の造影剤(リポソーム粒子)のイメージ図である。
【図2】実施例1の造影剤の粒子径分布を表すグラフである。
【図3】実施例1の造影剤の評価で使った評価装置を側面から見た概念図である。
【図4】実施例1及び比較例1を循環させたときに、近赤外蛍光観察装置を用いて上から観察撮影した流路の蛍光画像[図4(1)、(2)、(5)、(6)]と超音波画像診断装置で撮影した流路の断層画像[図4(3)、(4)、(7)、(8)]である。
【図5】(1)はブタの足の外観写真、(2)近赤外蛍光造影の画像、(3)は(1)のブタの足のリンパ節部位の外観写真、(4)は、近赤外蛍光造影の蛍光画像である。
【図6】超音波造影画像である。なお、(1)は造影剤注射前の画像である。
【図7】実施例2(マイクロメートルサイズ)の造影剤(リポソーム粒子)のイメージ図である。
【図8】(1)は図3(側面図)の簡易流路システムを上から撮影した写真であり、(2)、(3)は同システムに実施例2、比較例2及びPBS(生理食塩水)を循環させ、同システム(図3=側面図)を上から観察撮影したときの流路の蛍光画像であり、(4)は図3(側面図)の簡易流路システムを上下方向で切断した切断面のイメージ図である。(5)、(6)は超音波画像診断装置で撮影したときの流路の断層画像で、(4)と同じ面である。
【図9】トリ胸肉に造影剤を注射する様子を示すイラストである。
【図10】(1)はトリ胸肉の外観写真、(2)は同トリ胸肉の蛍光画像である。(3)は超音波造影による同トリ胸肉の断層画像(造影剤投与前)、(4)は超音波造影による同トリ胸肉の断層画像(造影剤投与前)である。
【図11】光学顕微鏡を用いて観察した明視野像(写真)である。
【図12】蛍光観察モードで取得した蛍光画像(写真)である。
【図13】平均粒径、粒子濃度(数密度)及び粒径分布を示すグラフである。
【図14】近赤外蛍光造影の分子式である。ICG-C18は、RがC1837である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤(両用造影剤)を構成するリポソーム系超音波造影剤は、それ自体は既に知られており、リポソーム(粒子)の原料(リン脂質、ポリエチレングリコールで修飾した脂質(PEG-脂質)など)は、容易に手に入り、また、リポソーム作製用装置も市販されている。本発明の造影剤は、分散質のリポソーム(粒子)が分散媒としての生理食塩水に分散しており、全体像は分散体(懸濁液)である。そして、当該リポソームはリン脂質(phospholipid)の皮膜と内包物質からなる。

【0034】
皮膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(DSPC) 、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン(DAPE)又はジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)等のホスファチジルエタノールアミン;ジラウロイル-ホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイル-ホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン(DPPC)、ジアラキドイル-ホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレイル-ホスファチジルコリン(DOPC)等のホスファチジルコリン;ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジアラキドイルホスファチジルセリン(DAPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレイルホスファチジルセリン(DOPS)等のホスファチジルセリン;ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジアラキドイルホスファチジン酸(DAPA)及びそのアルカリ金属塩等のホファチジン酸誘導体;ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)及びそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)及びそのアルカリ金属塩、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)及びそのアルカリ金属塩、ジオレイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG)等のホスファチジルグリセロール;ジラウロイルホスファチジルイノシトール(DLPI)、ジアラキドイルホスファチジルイノシトール(DAPI)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジオレイルホスファチジルイノシトール(DOPI)等のホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、スフィンゴミエリン脂質などが挙げられ、親水性を増すためのPEG-脂質として、“DSPE”をポリエチレングリコールで修飾した1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[シアヌル(ポロエチレングリコール)-2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[cyanur(polyethylene glycol)-2000、略称“DSPE-PEG2000”)、ステアリルPEG、パルミトイルPEG、オレイン酸PEG、ミリスチルPEG、ラウロイルPEG等(PEGの後に続く数字はPEG部位の分子量を示す)が挙げられる。PEGの分子量は500~12000が好ましい。DSPE—PEG例えばDSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000、DSPE-PEG5000が好ましい。なかでもDSPE-PEG2000が特に好ましい。

【0035】
次に内包物質について説明する。リポソーム粒子に内包させる気体としては、空気、酸素、二酸化炭素、フッ化硫黄ガス、パーフルオロ炭化水素ガスなどが挙げられる。パーフルオロ炭化水素ガスとして例えば、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、などを挙げることができる。

【0036】
気体を内包させる方法としては、当該気体が充満した容器内にリポソーム粒子を入れて超音波処理などを行うことによって、当該気体が内包されたバブルリポソームを調製することができる。

【0037】
他方、近赤外蛍光造影剤の主体である近赤外蛍光色素としては、インドシアニングリーン(ICG)、フタロシアニン、スクアリリウム、クロコニウムやそれらの誘導体(ICG-C18)が挙げられる。

【0038】
近赤外蛍光色素の励起光の波長としては、通常、600nm以上であり、好ましくは650nm以上であり、より好ましくは665nm以上であり、さらに好ましくは680nm以上であり、特に好ましくは700nm以上であり、最も好ましくは720nm以上である。そして、蛍光波長としては、励起光の波長より50 nm以上、特に100~200nm長いものが好ましい。

【0039】
本発明の両用造影剤の組成は、必須成分としては、上述のリポソーム粒子、気体及び近赤外蛍光色素並びに分散媒としての生理食塩水であるが、それら成分のほかに例えば、pH調整剤、エチルアルコール等の有機溶媒、粘度調整剤、界面活性剤、安定化剤、抗酸化剤、キレート剤、着色料などを微量又は適量含んでいてもよい。

【0040】
また、組成割合であるが、リポソームを構成するリン脂質の重量を1とすると、近赤外蛍光色素は、例えば、0.001~0.1 特に0.002~0.005であることがより好ましい。なお、リポソーム粒子がマイクロメートルサイズの場合は、リン脂質が飽和脂肪酸型リン脂質と不飽和脂肪酸型リン脂質との混合物であることが好ましく、その場合、飽和脂肪酸型リン脂質:不飽和脂肪酸型リン脂質の比は、重量比で1:5~5:1が好ましく、1:1が最も好ましい。

【0041】
また、リポソーム粒子に内包させる気体の量は、リポソームを構成するリン脂質の重量を1とすると、気体は、例えば、0.1~10 特に0.5~1であることがより好ましい。

【0042】
リポソーム粒子の粒径(直径)は、ナノメートル又はマイクロメートルサイズであることが本発明では必須であり、前者の場合、数十~数百nm特に50~200nmが好ましく、後者の場合、0.8~20μm特に1~5μmが好ましい。

【0043】
粒子径により、本発明の造影剤の用途が異なり、ナノサイズの場合はリンパ系(リンパ管、リンパ節)のイメージング(造影、撮影、観察)に、マイクロサイズの場合は、各種臓器の微細血管のイメージング(造影、撮影、観察)などに使われる。

【0044】
分散媒としての生理食塩水としては、体液とほぼ等張の塩化ナトリウムの水溶液(食塩水)であるが、生理食塩水には、適宜、pH調整剤、エチルアルコール等の有機溶媒、粘度調整剤、界面活性剤、安定化剤、抗酸化剤、キレート剤、着色料、ブドウ糖水溶液などが微量又は適量含まれていても良い。

【0045】
リポソーム粒子に内包させる気体のほか、薬剤例えば制癌剤、抗炎症薬、副腎皮質ホルモン剤、抗ウィルス薬、抗生物質、抗結核薬、各種分子標的治療薬(抗VEGF抗体、抗EGFR2抗体)、抗血栓薬などを内包させても良い。

【0046】
薬剤を内包させることで、本発明の造影剤をDDSにも使用することができる。正確な位置に近赤外蛍光造影法で導き、それからその深部にある病変部分(局所)に到達したことを超音波造影法で認識した後、外部からの刺激例えば強力な超音波を照射してリポソーム粒子を破壊することにより当該薬剤を放出させことが可能となる。

【0047】
本発明の両用造影剤を作製する方法は、リポソーム系超音波造影剤を作製する前(原料準備段階)か、作製後に、近赤外蛍光色素を添加すれば良い。リポソーム作製用装置も市販されており、作製は難しいことではない。

【0048】
本発明の両用造影剤は、全体像としては、図1や図7に示すように、リポソームが分散媒としての生理食塩水に分散しており、分散体(懸濁液)である。そのリポソームに色素が結合していることが本発明の特徴である。この結合は化学結合でなくとも、イオン結合、水素結合、疎水結合、タンパク質—基質結合、タンパク質-糖鎖結合などでも良い。
【実施例】
【0049】
実施例1
(1)両用造影剤(略称“蛍光ナノバブル”)の作製
まず、ホスファチジルコリン(DSPC) を22.85 mg、DSPE-PEG2000を3.48mg、ICG—C18を 0.70mgを計量し、これらをスクリュー管に入れた。いずれも粉末形状である。なお、DSPE-PEG2000とは、「1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[cyanur(polyethylene glycol)-2000]」のことである。
【実施例】
【0050】
次に、溶解のために、クロロホルム及びメタノールを体積比4 : 1となるように混合して混合溶媒を作製し、この混合溶媒5mlを上記スクリュー管に加え、中の粉末を溶解させ、溶液とした。
【実施例】
【0051】
この溶液の入った上記スクリュー管をボルテックスミキサーGENIE-2品番G560(米国サイエンティフィックインダストリーズ社の商品)にセットし、撹拌(強度10)を行い、完全に溶解させた時点で、スクリュー管のネジ式のフタを外した後、アルミホイルによりスクリュー管の開口部を覆った。そして、アルミホイルに針で揮発口を開け、スクリュー管をポリデシケーター(300型、アズワン株式会社の商品)に入れ、真空ポンプ(N810FT.18、株式会社ケー・エヌ・エフ・ジャパンの商品)を用いて、300分間、有機溶媒の揮発を行った。
【実施例】
【0052】
有機溶媒が完全に揮発し、スクリュー管の底部に薄膜が生じたことを確認した後、スクリュー管をポリデシケーターから取り出し、次いで、PBS溶液(リン酸緩衝生理食塩水)が薄膜を剥がさないように注意しながらPBS溶液を5ml加え、そして、90℃に設定した恒温槽内に5時間静置した。
静置が完了後、スクリュー管に優しく振動を加え内部を撹拌することで薄膜の膨潤を行った。
【実施例】
【0053】
こうして得られた懸濁液を粒径調整用ガスタイトシリンジホルダーセット(リポソーム作製用装置Mini-Extruder Set、米国アバンティポーラリピッド社Avanti Polar Lipids, Inc. の商品)を用いて400nmのメンブレンフィルターに通し、粒径整形を行った。
【実施例】
【0054】
粒径整形を行った溶液を「10mlバイアル瓶」に4ml充填し、ゴムキャップで栓をした後、アルミキャップをかけ、完全に締め切った。
【実施例】
【0055】
その後、ルアーロックシリンジ(注射器)を使ってバイアル瓶内に気体としての空気を15mlだけ加圧して入れた。
【実施例】
【0056】
加圧が終わり次第、脱気水を満たした超音波槽にバイアル瓶を入れ、5分間超音波を照射した。
【実施例】
【0057】
こうして、リポソーム平均粒径(直径)49.4nmの両用造影剤(略称“蛍光ナノバブル”)を得た。
【実施例】
【0058】
この“蛍光ナノバブル”のイメージを図1に示す。図1において、符号1はリポソーム粒子を、符号2はリポソーム粒子に内包された気体を、符号3は色素を、符号4はPBS溶液(リン酸緩衝生理食塩水)を示す。
【実施例】
【0059】
また、この“蛍光ナノバブル”について、粒度測定装置(品番 Nanotrac UPA-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社の商品)で測定したリポソーム粒子の体積分布を図2に示す。
【実施例】
【0060】
(2)比較例1
比較例1は、ICG—C18が結合していないナノバブル(懸濁液)である。ICG-C18が結合されていない点を除けば、実施例1の両用造影剤(略称“蛍光ナノバブル”)と作製方法は同じである。リポソーム粒子の平均粒径(直径)は205.2nmでリポソーム粒子に内包された気体は空気である。
【実施例】
【0061】
(3)評価
(イ)ファントム実験
図3(側面図)に示すような小型水槽に流路を組み合わせた簡易流路システムを構築した。流路は図3では1本しか見えないが奥行き方向にもう1本ある。流路は中空のシリコンチューブ(直径φ=2 mm)である。それぞれの流路内に実施例1の蛍光ナノバブルと比較例1のナノバブル(懸濁液)を循環させ、図3では「近赤外蛍光プローブ」と記す近赤外蛍光観察装置(品番HyperEye Medical Systems II、瑞穂医科工業株式会社の商品)と同じく「超音波プローブ」と記す超音波画像診断装置(品番Aplio500、東芝メディカルシステムズ社の商品)を使用してそれぞれ撮影した。この結果を図4に示す。
【実施例】
【0062】
図4は、実施例1及び比較例1を循環させたときに、上記近赤外蛍光観察装置を用いて上から観察撮影した流路の蛍光画像[図4(1)、(2)、(5)、(6)]と上記超音波画像診断装置で撮影した流路の断層画像[図4(3)、(4)、(7)、(8)]である。
【実施例】
【0063】
図4(1)、(3)、(5)、(7)は循環開始直後に、(2)、(4)、(6)、(8)は循環開始から15又は19時間経過後に撮影した画像である。(1)と(5)の比較からICG—C18が結合していない比較例1では流路が蛍光しておらず、実施例1では流路が蛍光し、実施例1が近赤外蛍光観察用造影剤として機能していることが分かる。また、(3)と(7)の比較から、比較例1と実施例1の両者において超音波造影剤が存在する流路内が高輝度部位として観察(造影)されていることが確認できる。ICG—C18が結合した実施例1の超音波造影剤としての機能は、ICG—C18が結合していない比較例1と比べても遜色ないことが分かる。(5)と(6)及び(7)と(8)の比較から、実施例1は循環後10時間以上経過しても両用造影剤としての機能を保持していることがわかる。
【実施例】
【0064】
(ロ)動物実験
図5の(1)に示す動物実験用のブタの足に、in vivoで実施例1の蛍光ナノバブルを皮下注射した。これにより、蛍光ナノバブルは自然とリンパ管を介してリンパ節に流入する。
【実施例】
【0065】
そこで、上記近赤外蛍光観察装置を使って撮影したので、得られた蛍光画像を図5の(2)に示す。この蛍光画像(2)で強く白く三角形状に見えるところが注射部位であり、該当部位から線状に述べる高輝度部位がリンパ管である。
【実施例】
【0066】
また、リンパ節が存在する部位を撮影したので、この外観写真を図5の(3)、近赤外蛍光画像を(4)に示す。複数の線状のリンパ管がリンパ節に流入していることが確認できる。このように実施例1の蛍光ナノバブルの空間分布(つまりは、リンパ管の分布)を蛍光部位として明瞭に観察でき、生体組織中においても近赤外蛍光観察用造影剤としての機能に問題がないことを確認した。
【実施例】
【0067】
リンパ節が存在する部位の体表から、リンパ管を介して実施例1の蛍光ナノバブルがリンパ節に流入する瞬間を上記超音波画像診断装置で観察し、図6(2)に示す超音波画像を得た。なお、予め、実施例1の蛍光ナノバブルを皮下注射する前にも同様の撮影を行ったので、その撮影画像を図6(1)に示す。リンパ節など低エコー強度部位においては、実施例1の体内動態をリアルタイムで確認できることを確かめた。
【実施例】
【0068】
以上、近赤外蛍光造影の蛍光画像(図5)と超音波造影の画像(図6)から、次のことが分かる。近赤外蛍光造影では、リンパ管の広範囲での走行(マクロな走行)を、超音波造影では、リンパ節の局所的な(ミクロな)内部構造を知ることができる。つまり、本発明の蛍光ナノバブルは、同じ部位について一度の造影剤注射でマルチスケールの観察を可能にする。
【実施例】
【0069】
実施例2
(1)両用造影剤(略称“蛍光マイクロバブル”)の作製
ホスファチジルコリン(DSPC) を15mg、卵黄レシチンを7.6mg、ICG-C18を0.70mg計量し、ミル容器に移した。
【実施例】
【0070】
このミル容器を液体窒素に浸し凍結を行った。このミル容器を今度はミキサーミルにセットし容器内の凍結物の粉砕を行った。粉砕条件は「20 frequency/sec」で2分間である。
【実施例】
【0071】
そして、再度上記の凍結と粉砕を1回繰り返した。
【実施例】
【0072】
こうして粉砕したものをビーカーに移し、そのビーカーに5mlのPBS溶液を注ぎ入れ、マグネチックスターラー(400rpm)を用いて撹拌混合し、溶液(リン脂質溶液)を作製した。
【実施例】
【0073】
このリン脂質溶液にPBS溶液を更に5ml、DSPE-PEG2000を10mg加え、マグネチックスターラー(400rpm)で6時間攪拌し,リン脂質混合分散液(リポソーム粒子を含む分散液)を作製した。
【実施例】
【0074】
次いで、この分散液をシリンジ(注射器)で吸い取り、更に空気を「分散液:空気の容量比が2:1」にシリンジ内に入れ、そのシリンジを手で激しく振ることにより、分散液と空気を攪拌し、これにより、バブル分散液を作製した。
【実施例】
【0075】
最後に、このバブル分散液を超音波ホモジナイザーで攪拌することにより、粒径整形を行い、こうして、リポソーム平均粒径(直径):2.4μm(=半径1.2μm×2)、リポソーム粒子濃度:5.53 × 10 個/mmの両用造影剤(略称“蛍光マイクロバブル”)を得た。
【実施例】
【0076】
この“蛍光マイクロバブル”のイメージを図7に示す。
【実施例】
【0077】
(2)比較例2
比較例2は、ICG—C18が結合していないリポソーム粒子(懸濁液)である。ICG-C18が結合していない点を除けば、実施例2の両用造影剤(略称“蛍光マイクロバブル”)と作製方法は同じである。この造影剤の主体はリポソーム懸濁液であり、分散質はリポソーム粒子、分散媒はPBS溶液である。このリポソーム粒子の平均粒径(直径)は2.2μm(半径1.1μm×2)であり、リポソーム濃度は6.65×10個/mmである。リポソーム粒子に内包された気体は空気である。
【実施例】
【0078】
図11は、(1)実施例2の造影剤及び(2)比較例2のリポソーム粒子(懸濁液)を、それぞれ100倍対物レンズ(品番UPlansApo、オリンパス株式会社の商品)を接続した光学顕微鏡(品番BX51、Olympus社の商品)を用いて観察した明視野像(写真)である。実施例2及び比較例2のリポソーム粒子が球形であることが分かる。
【実施例】
【0079】
上記光学顕微鏡には、通常の明視野観察に加えて、近赤外蛍光観察も可能とするべく、落射蛍光システム、キセノン光源(品番 U-LH75XEAPO、オリンパス株式会社の商品)及び超高感度EMCCDカメラ(品番 iXons3、ANDOR TECHNOLOGY社の製品)が付加されており、ソフトウェア上で明視野観察(可視光観察モード)と蛍光観察(蛍光観察モード)を切り替えることができる。つまり、同一対象物の明視野と近赤外蛍光の顕微鏡画像を取得できる。
【実施例】
【0080】
図12は、蛍光観察モードで取得した蛍光画像(写真)である。(1)実施例2の写真は球形のものが明るく映っており、それに対し(2)比較例2の写真は何も写っておらず真っ黒である。図12(2)の写真では、同一観測(蛍光撮影)条件(励起光強度やゲインなどの設定)で撮影しているが、蛍光画像は確認されない。
【実施例】
【0081】
図12の(1)、(2)の比較から、リポソーム粒子のリン脂質膜にICG-C18が結合していることが確認できる。なお、図12の(1)<2次元写真>を良く見ると、輪帯状に明るく光っているが、輪帯内部では光っていない。これは顕微鏡システムの被写界深度、つまり2次元写真に対し奥行き方向の観察範囲に限界があり、輪帯内部におけるリン脂質膜表面部分のICG-C18の蛍光が観察されていないためである。
明視野観察画像(図11)と近赤外蛍光画像(図12)で僅かにリポソーム粒子の位置が異なるが、これは観察時にリポソーム粒子が動いたためである。
【実施例】
【0082】
(3)上記平均粒径、粒子濃度及び粒径分布の測定
実施例2の“蛍光マイクロバブル”と比較例2(リポソーム懸濁液)について、粒子の平均粒径、粒子濃度(数密度)及び粒径分布を測定した。各20μl用意し、血球計算盤(トーマ盤、品番2-5552-31、アズワン株式会社の商品)に注入し、光学顕微鏡により観察した。所定体積内の粒子の数と半径を計測し、その後、計算することで、平均粒径、粒子濃度(数密度)及び粒径分布を求めた。この結果を図13に示す。
実施例2の“蛍光マイクロバブル”の粒子濃度(数密度)、平均粒径(半径)±標準偏差は、5.53×104/mm、1.2±0.49μmであり、比較例2のそれは、6.65×104/mm、1.1±0.53μmであり、ほぼ等しい。
【実施例】
【0083】
(4)評価
(イ)ファントム実験
実施例1で用いた簡易流路システム(図3参照)を使用した。2本の流路(直径φ=2mm)にそれぞれ実施例2の“マイクロバブル”と比較例2を循環させ、近赤外蛍光観察装置(品番HyperEye Medical Systems II、瑞穂医科工業株式会社の商品)と超音波画像診断装置(Aplio500、東芝メディカルシステムズ社の商品)を使用してそれぞれ撮影した。この結果を図8に示す。
【実施例】
【0084】
図8は、実施例2、比較例2及びPBS(生理食塩水)を、前者2つは第1実験で同時に後者PBSは第2実験で、流路内を循環させ、上記近赤外蛍光観察装置を用いて簡易流路システム(図3=側面図)の上から観察撮影したときの流路の蛍光画像[(2)、(3)]と超音波画像診断装置で撮影したときの流路の断層画像[(5)、(6)]である。なお、図8(2)~(3)から、ICG-C18を結合又は含有していない比較例2及びPBS(生理食塩水)は、流路が全く映って(蛍光して)おらず、それに対し実施例2は流路が映って(蛍光して)おり、実施例2が近赤外蛍光観察用造影剤として機能していることがわかる。
【実施例】
【0085】
また、図8(6)から、実施例2と比較例2は、造影剤が存在する流路が超音波造影の高輝度部位として観察造影されていることが分かる。それに対し(5)に示されるようにPBS(生理食塩水)では流路(正確には流路の内部)が超音波造影の低輝度部位として観察造影されていることが分かる。但し、流路の壁は高輝度部位として観察されている。
【実施例】
【0086】
この結果、ICG-C18が結合した実施例2は、超音波造影剤としての機能はICG-C18が結合していない比較例2と比べて同等であることがわかる。
【実施例】
【0087】
(ロ)動物実験
(a)食肉用のトリ胸肉を用意し、図9に示すように、これの深さ1mm、5mm、15mmの位置に注射器で実施例2の造影剤を注入し、表面から超音波造影撮影及び近赤外蛍光造影撮影を行った。前者は、近赤外蛍光観察装置(品番HyperEye Medical Systems II、瑞穂医科工業株式会社の商品)を用い、後者は超音波画像診断装置(品番Aplio500、東芝メディカルシステムズ社の商品)を用いた。
【実施例】
【0088】
この結果を図10に示す。図10(1)は造影剤投与後にデジタルカメラでトリ胸肉の外から観察撮影したトリ胸肉の外観写真であり、図10(2)は上記近赤外蛍光観察装置でトリ胸肉の外から撮影取得した蛍光画像である。表面から1mm、5mmの深さに実施例2を投与した部位では投与部位が明るく蛍光していることが分かるが、15mmの深さに投与した部位では明確な蛍光は観察されなかった。生体組織の表面から10mmより浅い部位では、実施例2が近赤外蛍光観察用造影剤として機能することを確認した。これは通常のICGと同程度の性能である。
【実施例】
【0089】
図10(3)は、造影剤投与前に超音波診断装置(品番Aplio500、東芝メディカルシステムズ社の商品)で観察したトリ胸肉の断層画像である。注射器先端を表面から15~17mm深部の位置に明るい線状の構造体として視認できる。表面から17~20mmの深度に存在する明るい部位はトリ胸肉と土台の境界である。図10(4)は、造影剤投与後に同一部位を同一機器を用いて観察した断層画像である。造影剤投与前に確認された注射器先端を中心として明るさが増していることが分かり、本実施例の造影剤“蛍光マイクロバブル”が超音波造影剤として機能することを確認した。
【実施例】
【0090】
なお、開腹下のブタ肝臓を対象に動脈又は門脈に直接に実施例2の造影剤を注入し、肝臓表面から内部脈管構造を観察することも可能である。
【実施例】
【0091】
以上、説明した通り、本発明の両用造影剤は、生体組織に注入した場合、それ自体は深く注入されるので、近赤外蛍光造影では生体組織の深さ10mm程度まで、超音波造影では生体組織の深さ30mm程度まで撮影(観察)可能である。
【実施例】
【0092】
従って、深さ10mm程度までは近赤外蛍光造影と超音波造影の両方で重複して観察可能であり、深さ10mm程度~30mm程度の間は超音波造影のみで観察可能となる。重複して観察可能な領域(深さ10mm程度まで)では、広範囲観察の得意な近赤外蛍光造影で見たい個所(患部)を特定し、その個所(患部)について、今度は高分解能の超音波造影で見ると言う便利なことが可能となる。この場合、従来の近赤外蛍光造影剤は分子が小さいことから組織内で拡散し易く滞留時間が短いので困るが、本発明の両用造影剤は、近赤外蛍光造影剤部分がリポソーム粒子に結合しているので大きく、そのため、滞留時間が長い利点を持つ。なお、滞留時間はナノバブルに比べマイクロバブルが長い。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の超音波造影及び近赤外蛍光造影の両方が可能な造影剤は、生体組織(例えば、肝臓、腎臓、膵臓、胆のう、胃、胃、十二指腸、皮膚など)の深部(具体的には深さ0~数十mm)の微小血管系やリンパ管系にも届くので、それらの分布状況をマクロ、ミクロなマルチスケールで撮影し、画像を得ることができる。そのため、生体組織(患部)の病理診断、研究などに利用可能である。よって、試薬業、製薬業、病院、大学、研究所などにおいて利用可能性がある。
【符号の説明】
【0094】
1・・・・リポソーム粒子
2・・・・気体
3・・・・色素
4・・・・生理食塩水(PBS)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13