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Specification :(In Japanese)免疫原性を有するMDP1の製造方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2019-208430A
Date of publication of application Dec 12, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)免疫原性を有するMDP1の製造方法
IPC (International Patent Classification) C12P  21/02        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N  15/31        (2006.01)
C07K  14/35        (2006.01)
FI (File Index) C12P 21/02 ZNAC
C12N 1/21
C12N 15/31
C07K 14/35
Number of claims or invention 10
Filing form OL
Total pages 24
Application Number P2018-107292
Date of filing Jun 4, 2018
Article of public order and morality (In Japanese)1.TWEEN
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】尾関 百合子
【氏名】西山 晃史
【氏名】松本 壮吉
【氏名】大原 直也
【氏名】山本 三郎
Applicant (In Japanese)【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4B064
4B065
4H045
F-term 4B064AG31
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD12
4B064DA15
4B065AA36X
4B065AA36Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA03
4B065BA14
4B065BB12
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA20
4H045BA10
4H045CA11
4H045DA86
4H045EA52
4H045FA74
Abstract (In Japanese)【課題】良好な免疫原性を有するMDP1の製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、Mycobacterial DNA-binding Protein 1(MDP1)を製造する方法であって、前記MDP1は、(a)~(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、前記MDP1をコードする遺伝子と、前記遺伝子の上流に作動可能に連結された誘導性プロモーターと、を含むベクターを非病原性の迅速発育型抗酸菌に形質転換し、培養する培養工程と、誘導物質を添加して、前記迅速発育型抗酸菌のMDP1の発現を誘導する誘導工程と、を含む方法である。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個以上数個以下のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列;(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と同一性が80%以上であるアミノ酸配列
【選択図】なし
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
Mycobacterial DNA-binding Protein 1(MDP1)を製造する方法であって、
前記MDP1は、以下の(a)~(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、
前記MDP1をコードする遺伝子と、前記遺伝子の上流に作動可能に連結された誘導性プロモーターと、を含むベクターを非病原性の迅速発育型抗酸菌に形質転換し、培養する培養工程と、
誘導物質を添加して、前記迅速発育型抗酸菌のMDP1の発現を誘導する誘導工程と、
を含む製造方法。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個以上数個以下のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と同一性が80%以上であるアミノ酸配列
【請求項2】
前記迅速発育型抗酸菌が有するMDP1遺伝子が欠失又は失活している請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記迅速発育型抗酸菌を破砕し、酸を用いて抽出した前記MDP1に変性剤を添加する変性工程と、
前記変性剤を実質的に含まない緩衝液を用いた液体クロマトグラフィーにより、前記MDP1を精製する精製工程と、を更に含む請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記迅速発育型抗酸菌を破砕し、酸を用いて抽出した前記MDP1に変性剤を添加する変性工程と、
前記変性剤を含む緩衝液を用いた液体クロマトグラフィーにより、前記MDP1を精製する第1の精製工程と、
前記変性剤を実質的に含まない緩衝液を用いた液体クロマトグラフィーにより、前記MDP1を精製する第2の精製工程と、を更に含む請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記MDP1はC末端側にタグペプチドを備える請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記液体クロマトグラフィーは、前記タグペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーである請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記迅速発育型抗酸菌は、Mycobacterium smegmatisである請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
配列番号2に示される塩基配列からなる核酸を含むベクターを含む非病原性の迅速発育型抗酸菌。
【請求項9】
前記迅速発育型抗酸菌が有するMDP1遺伝子が欠失又は失活している請求項8に記載の非病原性の迅速発育型抗酸菌。
【請求項10】
前記迅速発育型抗酸菌がMycobacterium smegmatisである請求項8又は9に記載の非病原性の迅速発育型抗酸菌。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性を有するMDP1の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中で年間に1040万人が新規に結核を発病し、170万人が結核で死亡している(2016年、世界保健機関による統計)。日本では、乳児期に接種したBCGに対する免疫が低下する10代半ばから老年に至る世代の結核発症が問題となっている。世界で唯一の結核ワクチンであるBCGは、小児の結核性髄膜炎や粟粒結核には十分に有効であるが、成人の肺結核に対する効果は限定的である。しかも、成人結核に対するBCGの再接種の有効性は明確でない。
【0003】
このため、BCGによる免疫効果を増強するために、ヒト結核菌Mycobacterial DNA-binding Protein 1(MDP1)を使用することが提案されている。MDP1は、結核菌感染者診断のための抗原として有望であり、また、アジュバントとしてDNAとの共存でマウスに投与することで抗体価の上昇、感染防御効果を増強することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、MDP1は、菌体内でDNAと結合するタンパク質であり、抽出が困難である。そのため、比較的効率の良い抽出方法として、例えば、塩酸を用いる方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、発明者らは、MDP1が細菌では珍しく、長大な天然変性領域を有し、翻訳後修飾の生じるタンパク質であることを明らかにしている(例えば、非特許文献2~5参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-219699号公報
【0006】

【非特許文献1】Matsumoto S et al., “DNA Augments Antigenicity of Mycobacterial DNA-Binding Protein 1 and Confers Protection against Mycobacterium tuberculosis Infection in Mice”, J Immunol., Vol. 175, Issue 1, p441-449, 2005.
【非特許文献2】Anand C et al., “A Sir2 family protein Rv1151c deacetylates HU to alter its DNA binding mode in Mycobacterium tuberculosis.”, Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol. 493, p1204-1209, 2017.
【非特許文献3】Green K D et al., “Acetylation by Eis and Deacetylation by Rv1151c of Mycobacterium tuberculosis HupB: Biochemical and Structural Insight.”, Biochemistry, Vol. 57, p781-790, 2018.
【非特許文献4】Pethe K et al., “Mycobacterial heparin-binding hemagglutinin and laminin-binding protein share antigenic methyllysines that confer resistance to proteolysis.”, PNAS, Vol. 99, No. 16, p10759-10764, 2002.
【非特許文献5】Ghosh S et al., “Lysine acetylation of the Mycobacterium tuberculosis HU protein modulates its DNA binding and genome organization.”, Molecular Microbiology, Vol. 100, No. 4, p577-588, 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1及び特許文献1に記載の方法では、MDP1の発現系として、大腸菌を宿主とした過剰発現系を用いていた。しかしながら、大腸菌から得られたMDP1は、翻訳後修飾が生じず、免疫原性が低いことが課題であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、良好な免疫原性を有するMDP1の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、MDP1遺伝子と前記遺伝子の上流に作動可能に連結された誘導性プロモーターとを含むベクターを非病原性の迅速発育型抗酸菌に形質転換してMDP1を発現させる誘導型過剰発現系を用いることで、免疫原性(細胞性応答及び抗体応答)が良好なMDP1を効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る製造方法は、Mycobacterial DNA-binding Protein 1(MDP1)を製造する方法であって、前記MDP1は、以下の(a)~(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、前記MDP1をコードする遺伝子と、前記遺伝子の上流に作動可能に連結された誘導性プロモーターと、を含むベクターを非病原性の迅速発育型抗酸菌に形質転換し、培養する培養工程と、誘導物質を添加して、前記迅速発育型抗酸菌のMDP1の発現を誘導する誘導工程と、を含む方法である。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個以上数個以下のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と同一性が80%以上であるアミノ酸配列
【0011】
前記迅速発育型抗酸菌が有するMDP1遺伝子が欠失又は失活していてもよい。
上記第1態様に係る製造方法は、前記迅速発育型抗酸菌を破砕し、酸を用いて抽出した前記MDP1に変性剤を添加する変性工程と、前記変性剤を実質的に含まない緩衝液を用いた液体クロマトグラフィーにより、前記MDP1を精製する精製工程と、を更に含んでもよい。
上記第1態様に係る製造方法は、前記迅速発育型抗酸菌を破砕し、酸を用いて抽出した前記MDP1に変性剤を添加する変性工程と、前記変性剤を含む緩衝液を用いた液体クロマトグラフィーにより、前記MDP1を精製する第1の精製工程と、前記変性剤を実質的に含まない緩衝液を用いた液体クロマトグラフィーにより、前記MDP1を精製する第2の精製工程と、を更に含んでもよい。
前記MDP1はC末端側にタグペプチドを備えてもよい。
前記液体クロマトグラフィーは、前記タグペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーであってもよい。
前記迅速発育型抗酸菌は、Mycobacterium smegmatisであってもよい。
【0012】
本発明の第2態様に係る非病原性の迅速発育型抗酸菌は、配列番号2に示される塩基配列からなる核酸を含むベクターを含む。
前記迅速発育型抗酸菌が有するMDP1遺伝子が欠失又は失活していてもよい。
前記迅速発育型抗酸菌がMycobacterium smegmatisであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記態様の製造方法によれば、免疫原性が良好なMDP1を効率よく製造できる。上記態様の迅速発育型抗酸菌によれば、免疫原性が良好なMDP1を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における大腸菌-抗酸菌シャトルベクターpSO246を示す模式図である。
【図2】実施例1におけるプラスミドpSO264-hupB(Rv2986c)-His6を示す模式図である。
【図3】実施例1におけるプラスミドpCRII-TOPOを示す模式図である。
【図4】実施例1におけるプラスミドpSO264-ACE-hupB(Rv2986c)-His6を示す模式図である。
【図5A】実施例1におけるhupB-His6誘導発現型M.semgmatis株でのMDP1の発現をCBB染色により確認した画像である。
【図5B】実施例1におけるhupB-His6誘導発現型M.semgmatis株でのMDP1の発現を抗MDP1抗体を用いたウェスタンブロット解析により確認した画像である。
【図5C】実施例1におけるhupB-His6誘導発現型M.semgmatis株でのMDP1の発現を抗ヒスチジン抗体を用いたウェスタンブロット解析により確認した画像である。
【図6】実施例1におけるヒスチジンタグを用いたアフィニティークロマトグラフィー(1回目)で流出されたフラクションのCBB染色の結果を示す画像である。
【図7】実施例1におけるヒスチジンタグを用いたアフィニティークロマトグラフィー(2回目)で流出されたフラクションのCBB染色の結果を示す画像である。
【図8A】実施例1におけるhupB-His6誘導発現型M.semgmatis株から得られたMDP1(アセトアミド誘導から24時間後、48時間後及び72時間後)、並びに、大腸菌発現系を用いて得られたMDP1について、抗ヒスチジン抗体を用いたウェスタンブロット解析の結果を示す画像である。
【図8B】実施例1におけるhupB-His6誘導発現型M.semgmatis株から得られたMDP1(アセトアミド誘導から24時間後、48時間後及び72時間後)、並びに、大腸菌発現系を用いて得られたMDP1について、抗MDP1-メチル化抗体を用いたウェスタンブロット解析の結果を示す画像である。
【図9A】試験例1におけるMDP1-M及びMDP1-E存在下で培養したBCG接種歴のあるヒト由来の末梢血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cells;PBMC)のインターフェロンガンマ(IFN-gamma;IFN-γ)産生量を示すグラフである。
【図9B】試験例1におけるMDP1-M及びMDP1-E存在下で培養したBCG接種歴のあるヒト由来のPBMCのCCL2(C-C motif chemokine 2)産生量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪免疫原性を有するMDP1の製造方法≫
本実施形態の製造方法は、免疫原性を有するMDP1を製造する方法である。
前記MDP1は、以下の(a)~(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個以上数個以下のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と同一性が80%以上であるアミノ酸配列

【0016】
また、本実施形態の製造方法は、培養工程と、誘導工程と、をこの順に含む方法である。
培養工程では、前記MDP1をコードする遺伝子と、前記遺伝子の上流に作動可能に連結された誘導性プロモーターと、を含むベクターを非病原性の迅速発育型抗酸菌に形質転換し、培養する。
誘導工程では、誘導物質を添加して、前記迅速発育型抗酸菌のMDP1の発現を誘導する。

【0017】
本実施形態の製造方法では、後述する実施例に示すように、非病原性の迅速発育型抗酸菌を宿主として用いてMDP1を発現させるため、得られるMDP1は翻訳後修飾が有し、免疫原性が良好なものとなる。非病原性の迅速発育型抗酸菌を宿主として用いることで、翻訳後修飾が生じたMDP1が得られることは、発明者らが今回初めて見出した。
また、MDP1は抗酸菌の増殖を抑制することが知られている。これに対し、本実施形態の製造方法では、MDP1の発現を誘導性プロモーター制御下で調節しているため、宿主菌体を十分に増殖させた後にMDP1の発現を誘導することができ、大量のMDP1を製造することができる。

【0018】
本実施形態の製造方法により得られるMDP1は、以下の(a)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列

【0019】
配列番号1に示されるアミノ酸配列は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis H37Rv株)のMDP1のアミノ酸配列である。
また、配列番号17に示されるアミノ酸配列は、Mycobacterium smegmatis(M.smegmatis)のMDP1のアミノ酸配列である。配列番号1に示されるアミノ酸配列(以下、「MtbMDP1」と称する場合がある)及び配列番号17に示されるアミノ酸配列(以下、「M.smegMDP1」と称する場合がある)を、ClustalWを用いて、アライメント解析した結果を以下の表1に示す。なお、表1において、「*」はアミノ酸配列の完全一致を示し、「:」は強い類似性のあるアミノ酸配列であることを示し、「.」は弱い類似性のあるアミノ酸配列であることを示し、空欄は類似性のないアミノ酸配列であることを示している。また、類似性の強い、弱いの基準は、PAM250 MATRIXにおいて、アミノ酸間のスコアが0.5より大きいか、0.5以下であるかで判断される。

【0020】
【表1】
JP2019208430A_000002t.gif

【0021】
表1から、MtbMDP1において、M.smegMDP1と類似性がない部分は、N末端から12番目のグルタミン残基(Q)、N末端から107番目のグリシン残基(G)、N末端から158番目のバリン残基(V)、N末端から159番目のリシン残基(K)、N末端から167番目のリシン残基(K)、N末端から168番目のバリン残基(V)、N末端から169番目のトレオニン残基(T)、N末端から170番目のリシン残基(K)、N末端から171番目のアラニン残基(A)、N末端から172番目のバリン残基(V)、N末端から173番目のリシン残基(K)及びN末端から197番目のアルギニン残基(R)である。上記類似性がない部分は、MtbMDP1等の病原性を有する抗酸菌のMDP1独自のアミノ配列である可能性がある。

【0022】
また、本実施形態の製造方法により得られるMDP1は、上記(a)のアミノ酸配列からなるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドとして、下記(b)又は(c)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含んでもよい。
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個以上数個以下のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と同一性が80%以上であるアミノ酸配列

【0023】
中でも、本実施形態の製造方法により得られるMDP1は、上記(a)のアミノ酸配列からなるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドとして、下記(b1)又は(c1)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むことが好ましい。
(b1)配列番号1に示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号12位のグルタミン残基(Q)、アミノ酸番号107位のグリシン残基(G)、アミノ酸番号158位のバリン残基(V)、アミノ酸番号159位のリシン残基(K)、アミノ酸番号167位のリシン残基(K)、アミノ酸番号168位のバリン残基(V)、アミノ酸番号169位のトレオニン残基(T)、アミノ酸番号170位のリシン残基(K)、アミノ酸番号171位のアラニン残基(A)、アミノ酸番号172位のバリン残基(V)、アミノ酸番号173位のリシン残基(K)及びアミノ酸番号197位のアルギニン残基(R)以外の部位において、1個以上数個以下のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列;
(c1)配列番号1に示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号12位のグルタミン残基(Q)、アミノ酸番号107位のグリシン残基(G)、アミノ酸番号158位のバリン残基(V)、アミノ酸番号159位のリシン残基(K)、アミノ酸番号167位のリシン残基(K)、アミノ酸番号168位のバリン残基(V)、アミノ酸番号169位のトレオニン残基(T)、アミノ酸番号170位のリシン残基(K)、アミノ酸番号171位のアラニン残基(A)、アミノ酸番号172位のバリン残基(V)、アミノ酸番号173位のリシン残基(K)及びアミノ酸番号197位のアルギニン残基(R)以外の部位と同一性が80%以上であるアミノ酸配列

【0024】
上記(b)のアミノ酸配列からなるポリペプチド及び上記(b1)のアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、上記(a)のアミノ酸配列からなるポリペプチドと機能的に同等であるために、欠失、置換又は付加されてもよいアミノ酸の数としては、1個以上10個以下が好ましく、1個以上8個以下がより好ましく、1個以上5個以下がさらに好ましく、1個以上3個以下が特に好ましい。

【0025】
なお、本明細書中において、「置換」とは、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本実施形態の製造方法で得られるポリペプチドの属する技術分野でよく知られている。例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン及びヒスチジン)、中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びプロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン及びスレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン及びメチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン及びグルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン)等で分類することができる。

【0026】
また、上記(c)のアミノ酸配列からなるポリペプチド及び上記(c1)のアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、上記(a)のアミノ酸配列からなるポリペプチドと機能的に同等であるためには80%以上の同一性を有する。係る同一性としては、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、97%以上が特に好ましく、99%以上が最も好ましい。

【0027】
ここで、基準アミノ酸配列に対する、対象アミノ酸配列の配列同一性は、例えば次のようにして求めることができる。まず、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列をアラインメントする。ここで、各アミノ酸配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。続いて、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列において、一致したアミノ酸の数を算出し、下記式(I)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
「配列同一性(%)」 = [一致したアミノ酸の数]/[対象アミノ酸配列のアミノ酸の総数]×100 (I)

【0028】
さらに、上記(b)、上記(b1)、上記(c)又は上記(c1)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むMDP1は、免疫原性を有する。
一般に、「免疫原性」とは、抗原が抗体産生や細胞性応答を誘導する性質を意味する。

【0029】
また、本実施形態の製造方法により得られるMDP1は、タグペプチドを備えてもよい。また、タグペプチドは、MDP1の立体構造から、MDP1のC末端側に備えることが好ましい。本実施形態の製造方法により得られるMDP1は、タグペプチドを備えることで、後述する精製工程において、該タグペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、MDP1を精製することができる。
また、タグペプチドとしては、MDP1が立体構造を維持できる程度の大きさであるものであればよい。このようなタグペプチドとしては、例えば、ヒスチジンタグ(Hisタグ)(6個程度連続したヒスチジン残基からなるタグペプチド)、HQタグ(ヒスチジン残基とグルタミン残基とが交互に連続した6個程度のアミノ酸残基からなるタグペプチド)、HNタグ(ヒスチジン残基とアスパラギン酸残基とが交互に連続した12個程度のアミノ酸残基からなるタグペプチド)、HATタグ(ニワトリの乳酸脱水素酵素由来のタグペプチド)、FLAG(登録商標)タグ(参考文献1:米国特許第4703004号明細書)、HAタグ(インフルエンザウイルスのヘマグルチニン由来のタグペプチド)、c-mycタグ(ヒトc-mycタンパク質由来のタグペプチド)等が挙げられる。

【0030】
次いで、本実施形態の製造方法の各工程について、以下に詳細を説明する。

【0031】
<培養工程>
培養工程では、前記MDP1をコードする遺伝子と、前記遺伝子の上流に作動可能に連結された誘導性プロモーターと、を含むベクターを非病原性の迅速発育型抗酸菌に形質転換し、培養する。
ベクターの非病原性の迅速発育型抗酸菌への導入方法としては、公知の方法を用いることができ、具体的には、例えば、エレクトロポレーション法、ヒートショック法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、パーティクル・ガン法、ウイルスを用いた方法や、FuGENE(登録商標) 6 Transfection Reagent(ロシュ社製)、Lipofectamine 2000 Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine LTX Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine 3000 Reagent(インビトロジェン社製)等の市販のトランスフェクション試薬を用いた方法等が挙げられる。
ベクター導入後の培養条件としては、抗酸菌を培養する際に一般的に用いられる条件であればよく、培養温度は、例えば25℃以上40℃以下とすることができる。また、培養時間は特に限定はなく、植菌数から所望の菌体数となるまでに必要な期間とすることができる。

【0032】
[ベクター]
培養工程で用いられるベクターは、上記MDP1をコードする遺伝子と、前記遺伝子の上流に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む。
なお、本明細書において、「作動可能に連結されている」とは、上記誘導性プロモーターが上記MDP1をコードする遺伝子の発現を調節可能であることを意味する。

【0033】
培養工程で用いられるベクターは、発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターとしては、核酸菌に導入しMDP1を発現させることができるベクターであればよく、例えば、pSO246(参考文献2:Matsumoto S et al., “A stable Escherichia cd-mycobacteria shuttle vector ‘pS0246’in Mycobacterium bovis BCG.”, FEMS Microbiology Letters, Vol. 135, p237-243, 1996.)、pYT937(参考文献3:Goto Y et al., “Development of a new host vector system in mycobacteria.”, FEMS Microbiology Letters, Vol. 83, No. 3, p277-282, 1991.)、pNN(参考文献4:Ohara N et al., “Characterization of the transcriptional initiation regions of genes for the major secreted protein antigens 85C and MPB51 of Mycobacterium bovis BCG.”, Microbial Pathogenesis, Vol. 23, p303-310, 1997.)等が挙げられる。

【0034】
(MDP1をコードする遺伝子)
上記MDP1をコードする遺伝子としては、例えば、以下の(d)~(g)のいずれかの塩基酸配列からなる遺伝子を含む遺伝子等が挙げられる。
(d)配列番号3に示される塩基配列;
(e)配列番号3に示される塩基配列において、1~数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列;
(f)配列番号3に示される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列;
(g)配列番号3に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストトリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列

【0035】
なお、配列番号3に示される塩基配列は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis H37Rv株)のMDP1の塩基配列である。

【0036】
また、上記(e)の塩基配列からなる遺伝子を含む遺伝子がコードするポリペプチドにおいて、上記(d)の塩基配列からなる遺伝子を含む遺伝子がコードするポリペプチドと機能的に同等であるために、欠失、置換又は付加されてもよい塩基の数としては、1個以上30個以下が好ましく、1個以上24個以下がより好ましく、1個以上15個以下がさらに好ましく、1個以上9個以下が特に好ましい。

【0037】
また、上記(f)の塩基配列からなる遺伝子を含む遺伝子がコードするポリペプチドにおいて、上記(d)の塩基配列からなる遺伝子を含む遺伝子がコードするポリペプチドと機能的に同等であるために、80%以上の同一性を有する。係る同一性としては、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、97%以上が特に好ましく、99%以上が最も好ましい。

【0038】
ここで、基準塩基配列に対する、対照塩基配列の配列同一性は、例えば次のようにして求めることができる。まず、基準塩基配列及び対象塩基配列をアラインメントする。ここで、各塩基配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。続いて、基準塩基配列及び対象塩基配列において、一致した塩基の塩基数を算出し、下記式(II)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
「配列同一性(%)」 = [一致した塩基数]/[対象塩基配列の総塩基数]×100 (II)

【0039】
なお、本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、Molecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の方法が挙げられる。例えば、ハイブリダイゼーションバッファー中で、55℃以上70℃以下で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件が挙げられる。前記ハイブリダイゼーションバッファーとしては、例えば、5×SSC(20×SSCの組成:3M 塩化ナトリウム、0.3M クエン酸溶液、pH7.0)、0.1重量% N-ラウロイルサルコシン、0.02重量%のSDS、2重量%の核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬、及び、50%フォルムアミドからなる。なお、インキュベーション後の洗浄の際に用いる洗浄バッファーとしては、0.1重量%SDS含有1×SSC溶液が好ましく、0.1重量%SDS含有0.1×SSC溶液がより好ましい。

【0040】
また、上記MDP1をコードする遺伝子としては、例えば、以下の(d)~(g)のいずれかの塩基酸配列からなる遺伝子のみからなってもよく、以下の(d)~(g)のいずれかの塩基酸配列からなる遺伝子に加えて、例えば、タグペプチドをコードする遺伝子等を含んでもよい。

【0041】
(誘導性プロモーター)
誘導性プロモーターとしては、誘導物質存在時に、該プロモーターの下流に存在する遺伝子(本実施形態の製造方法では、MDP1をコードする遺伝子)の発現を誘導することができるプロモーターを用いることができる。上述のように、MDP1は抗酸菌の増殖を抑制することが知られている。これに対し、培養工程で用いられるベクターは、MDP1の発現を誘導性プロモーター制御下で調節しているため、宿主菌体を十分に増殖させた後にMDP1の発現を誘導することができ、大量のMDP1を製造することができる。
このような誘導性プロモーターとして具体的には、例えば、サリチル酸誘導性プロモーター(参考文献5:国際公開第95/19433号)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(参考文献6:Gatz c et al., “Stringent repression and homogeneous de-repression by tetracycline of modified CaMV 35S promoter in intact transgenic tobacco plants.”, Plant J., Vol. 2, Issue 3, p397-404, 1992.)、アセトアミド誘導性プロモーター、エタノール誘導性プロモーター、亜鉛誘導性メタロチオネインプロモーター、ガラクトース誘導性プロモーター等が挙げられる。中でも、誘導性プロモーターとしては、アセトアミド誘導性プロモーターが好ましい。

【0042】
(その他の構成)
ベクターは、上記MDP1をコードする遺伝子及び上記誘導性プロモーターに加えて、さらに、例えば、エンハンサー、応答配列、ポリアデニル化シグナル配列、薬剤耐性配列、マーカー配列等を含んでもよい。

【0043】
中でも、培養工程に用いられるベクターとしては、配列番号2に示される塩基配列からなる核酸を含むベクターが好ましい。配列番号2に示される塩基配列は、アセトアミダーゼレギュレーター遺伝子(accession No.U63095)及びアセトアミダーゼ遺伝子のプロモーター領域(accession No.X57175)を含む塩基配列(全長2890bp)と、結核菌(Mycobacterium tuberculosis H37Rv株)のMDP1の塩基配列と、ヒスチジンタグの塩基配列とがこの順に連結された塩基配列である。

【0044】
[迅速発育型抗酸菌]
培養工程で用いられる抗酸菌(ミコバクテリウム(Mycobacterium)属菌)は、安全性及び製造効率の観点から、非病原性であって、且つ、迅速発育型の抗酸菌である。一般に、「迅速発育型抗酸菌」とは、孤立コロニーができるように十分に希釈した新鮮菌液を卵培地に接種した場合に、接種から1週間未満に肉眼的にコロニーを認め得るものを意味する。一方、「遅発育型抗酸菌」とは、上記条件で培養した場合に、肉眼的にコロニーを認め得るまで、接種から1週間以上要するものを意味する(参考文献7:吉田眞一ら編、『戸田新細菌学』、第33版、南山堂、2007年5月7日、第630頁)。
結核菌は、上記2分類のうち、遅発育型抗酸菌に分類される。一方、本実施形態の製造方法で宿主として用いられる抗酸菌は、迅速発育型抗酸菌である。いずれの抗酸菌も、MDP1遺伝子を有し、MDP1を発現するが、その機能は菌種によって異なることが知られている。その中で、結核菌MDP1を迅速発育型抗酸菌で発現させることで、翻訳後修飾が生じ、良好な免疫原性を有するMDP1が得られることは、今回発明者らが初めて見出したことである。

【0045】
培養工程で用いられる非病原性の迅速発育型抗酸菌として具体的には、例えば、M. chitae(AF057461)、M. fallax(AF057462)、M. phlei(AF057480)、M. aurum(AF057456)、M. vaccae(AF057492)、M. smegmatis(AF057485)等が挙げられる。中でも、非病原性の迅速発育型抗酸菌としては、M. smegmatisが好ましい。

【0046】
また、遅発育型抗酸菌では、MDP1遺伝子が生存に必須であり、MDP1遺伝子を欠失又は失活すると死滅するのに対し、迅速発育型抗酸菌ではMDP1遺伝子を欠失又は失活しても生存可能である。このことから、培養工程で用いられる迅速発育型抗酸菌は、MDP1遺伝子を欠失又は失活していてもよい。これにより、迅速発育型抗酸菌内で発現されるMDP1が導入したベクターに由来するもの(すなわち、結核菌MDP1及びそれと同等の機能を有するタンパク質)のみとなるため、続く工程において、MDP1の精製をより簡便に行うことができる。

【0047】
<誘導工程>
誘導工程では、誘導物質を添加して、上記迅速発育型抗酸菌のMDP1の発現を誘導する。
誘導物質としては、ベクターに含まれる誘導性プロモーターの種類に応じて適宜選択すればよく、具体的には、以下に示すものが挙げられる。
サリチル酸誘導性プロモーターの場合、例えば、サリチル酸及びその誘導体等;
テトラサイクリン誘導性プロモーターの場合、例えば、テトラサイクリン、ドキシサイクリン等のテトラサイクリン系抗生物質;
アセトアミド誘導性プロモーターの場合、例えば、アセトアミド及びその誘導体等;
エタノール誘導性プロモーターの場合、例えば、エタノール等;
亜鉛誘導性メタロチオネインプロモーターの場合、例えば、亜鉛及びその塩等;
ガラクトース誘導性プロモーターの場合、例えば、ガラクトース及びその誘導体等

【0048】
誘導物質の添加量は、ベクターに含まれる誘導性プロモーターの種類に応じて適宜調節することができる。
また、誘導物質添加後の迅速発育型抗酸菌の培養時間としては、MDP1が発現し、十分な量蓄積するまでの期間とすることができ、例えば3日間以上7日間以下とすることができる。

【0049】
MDP1の発現は、例えば、後述する実施例に示すように、培養後の一部の菌体を回収し、SDS-PAGEを行い、CBB染色法により、又は、さらに抗MDP1抗体を用いたウェスタンブロット解析により、確認することができる。

【0050】
また、誘導工程においてMDP1の発現が確認された菌体から、例えば、以下に示す変性工程及び精製工程等を経て、MDP1を取り出すことができる。

【0051】
<変性工程>
変性工程では、まず、誘導工程後の迅速発育型抗酸菌を公知の方法により破砕して破砕液を調製する。菌体の破砕方法としては、例えば、界面活性剤を使用する方法、超音波処理法、ホモジナイザーを使用する方法、ビーズを使用する破砕方法等が挙げられ、これらに限定されない。これらの方法を1種単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。

【0052】
次いで、破砕液から酸を用いてMDP1を抽出する。ここで用いられる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、酢酸等が挙げられ、中でも、塩酸が好ましい。
MDP1の抽出方法として具体的には、例えば、塩酸を用いる場合には、破砕液から遠心分離等により菌体をペレットとして回収し、該ペレットを例えば0.01N以上0.5N以下程度の塩酸を懸濁した後、例えば8時間以上24時間以下程度攪拌することで、MDP1を可溶化し、溶液中に抽出することができる。

【0053】
次いで、得られたMDP1を含む抽出液に変性剤を添加し、MDP1を変性させる。これにより、続く精製工程において、MDP1の固定相への吸着性を向上させ、さらに、MDP1以外のタンパク質等の夾雑物の除去が容易になる。
使用する変性剤としては、例えば、尿素、グアニジン塩酸塩、N-ラウリルサルコシル等が挙げられる。
変性剤の添加量としては、変性剤の種類に応じて適宜調節することができる。
例えば、変性剤として尿素を用いる場合には、MDP1を含む抽出液中の尿素の含有量が例えば1mol/L以上10mol/L以下程度となるように、該抽出液に尿素を添加する。

【0054】
<精製工程>
精製工程では、変性剤を実質的に含まない緩衝液を用いた液体クロマトグラフィーにより、MDP1を精製する。
ここでいう「変性剤を実質的に含まない」とは、変性剤を含まない、又は、MDP1のリフォルディングを妨げない程度の極少量しか変性剤を含まない状態を意味する。精製工程において、変性剤を実質的に含まない緩衝液を用いることで、MDP1が固定相に吸着されたままの状態で、その立体構造を再構築(リフォルディング)することができる。
また、液体クロマトグラフィーとしては、例えば、MDP1に対する特異的結合物質を備える固定相を用いたアフィニティークロマトグラフィーが好ましい。MDP1に対する特異的結合物質としては、例えば、抗MDP1抗体、タグペプチドに対する特異的結合物質等が挙げられる。なお、タグペプチドに対する特異的結合物質は、タグペプチドの種類に応じて適宜選択することができる。
例えば、タグペプチドが、ヒスチジンタグ、HQタグ、HNタグ、HATタグである場合には、タグペプチドに対する特異的結合物質を備える固定相として、金属イオンが固定化された担体を用いることができる。金属イオンとしては、2価の金属イオンが好ましく、例えば、ニッケルイオン、亜鉛イオン、銅イオン、カルシウムイオン、コバルトイオン、鉄イオン(II)等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、金属イオンとしては、上記タグペプチドとの親和性及び溶出のしやすさから、ニッケルイオンが好ましい。
また、例えば、タグペプチドが、FLAG(登録商標)タグ、HAタグ又はc-mycタグである場合には、タグペプチドに対する特異的結合物質を備える固定相として、抗FLAG抗体、抗HA抗体又は抗c-myc抗体がそれぞれ固定化された担体を用いることができる。

【0055】
液体クロマトグラフィーにおいて、移動相として用いられる緩衝液としては、pH6以上8以下程度の中性のものが好ましく、例えば、以下に示す酸類、塩基類、塩類等が用いて調製することができる。これらを1種類単独で、又は、2種以上組み合わせて用いてもよい。
酸類としては、例えば、リン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、ホウ酸、塩酸等が挙げられる。
塩基類としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane;Tris)等が挙げられる。
塩類としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。

【0056】
具体的な精製方法としては、例えば、まず、MDP1を含む移動相を、MDP1に対する特異的結合物質を備える固定相にアプライし、固定相にMDP1を、前記特異的結合物質を介して吸着させる。なお、MDP1を含む移動相を固定相にアプライする前に、変性工程後の変性MDP1を含む溶液を、変性剤を含む緩衝液を外液として透析してもよい。
次いで、変性剤を実質的に含まない緩衝液を送液することで、変性剤を除去し、MDP1を固定相に吸着させた状態でリフォルディングする。次いで、キレート剤を含み、且つ、変性剤を実質的に含まない緩衝液を用いて、立体構造が再構築されたMDP1を溶出させる。MDP1の溶出に用いられるキレート剤としては、例えば、イミダゾール、エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid;EDTA)等が挙げられる。また、緩衝液中のキレート剤の濃度は、例えば200mM以上とすることができる。また、液体クロマトグラフィーにおいて、上記以外は、公知の方法を用いることができる。
また、MDP1が得られたことは、例えば、SDS-PAGEを行い、CBB染色法により、又は、さらに抗MDP1抗体を用いたウェスタンブロット解析により、確認することができる。
さらに、MDP1が翻訳後修飾されていることは、例えば、抗メチル化MDP1抗体を用いたウェスタンブロット解析等により、確認することができる。

【0057】
また、本実施形態の製造方法において、精製工程を第1の精製工程及び第2の精製工程に分けて行ってもよい。
第1の精製工程では、変性剤を含む緩衝液を用いた液体クロマトグラフィーにより、MDP1を精製する。第1の精製工程を行うことで、夾雑物をより効果的に除去することができ、精製度のより高いMDP1が得られる。なお、第1の精製工程で用いられる変性剤及び緩衝液中の変性剤の濃度としては、上記変性工程において例示されたものと同様のものが挙げられる。また、第1の精製工程で用いられる変性剤の種類及び緩衝液中の変性剤の濃度は、上記変性工程において用いられる変性剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。
第2の精製工程では、変性剤を実質的に含まない緩衝液を用いた液体クロマトグラフィーにより、MDP1を精製する。第2の精製工程を行うことで、立体構造が再構築されたMDP1を得ることができる。
中でも、ワクチンに使用可能な程度の高精製度のMDP1を得られることから、精製工程を第1の精製工程及び第2の精製工程に分けて行うことが好ましい。

【0058】
具体的な精製方法としては、例えば、まず、MDP1を含む移動相を、MDP1に対する特異的結合物質を備える固定相にアプライし、固定相にMDP1を、前記特異的結合物質を介して吸着させる。次いで、変性剤を含む緩衝液を送液することで、MDP1以外のタンパク質等の夾雑物を固定相から除去する。次いで、変性剤及びキレート剤を含む緩衝液を用いて、変性状態のMDP1を溶出させる(第1の精製工程)。このとき、MDP1が得られたことは、上記と同様に、CBB染色法又は抗MDP1抗体を用いたウェスタンブロット解析で確認することができる。

【0059】
次いで、再度、MDP1を含む移動相を、MDP1に対する特異的結合物質を備える固定相にアプライし、固定相にMDP1を、前記特異的結合物質を介して吸着させる。次いで、変性剤を実質的に含まない緩衝液を送液することで、変性剤を除去し、MDP1を固定相に吸着させた状態でリフォルディングする。次いで、キレート剤を含み、且つ、変性剤を実質的に含まない緩衝液を用いて、立体構造が再構築されたMDP1を溶出させる(第2の精製工程)。
MDP1が得られたことは、上記と同様に、CBB染色法又は抗MDP1抗体を用いたウェスタンブロット解析で確認することができる。
さらに、MDP1が翻訳後修飾されていることは、例えば、抗メチル化MDP1抗体を用いたウェスタンブロット解析等により、確認することができる。

【0060】
<使用用途>
本実施形態の製造方法で得られたMDP1は、例えば、結核感染者に対する血清診断抗原、インターフェロン-γ遊離試験(Interferon γ Releasing Assay;IGRA)等に用いるT細胞応答を利用した診断抗原、成人期以降の低下した結核免疫を増強するワクチン抗原として有用である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
1.プラスミドの構築
(1)MDP1遺伝子の増幅及び精製
まず、結核菌H37Rv株(Mycobacterium tuberculosis H37Rv)のゲノムDNAを鋳型として、MDP1遺伝子(「hupB」又は「Rv2986c」とも呼ばれる)(塩基配列:配列番号3)のN末端に制限酵素サイトHindIII及びNdeIを、C 末端にヒスチジンタグ(His-6)及び制限酵素サイトKpnIを付加して、PCR法により増幅した。(なお、得られた増幅産物を、以下、「HindIII-NdeI-hupB-His6-KpnI」と称する場合がある)。使用したプライマーの塩基配列を以下の表2に示す。また、増幅試薬は、Takara PrimeSTAR(登録商標) GXL DNA Polymerase kitを使用した。
【表2】
JP2019208430A_000003t.gif
【実施例】
【0063】
次いで、PCR生成物について、アガロースゲル電気泳動を行い、FastGene(登録商標) ゲル/PCR抽出キット(日本ジェネティクス社製)を用いて、増幅産物のバンドを含むゲルから増幅産物を抽出及び精製した。次いで、増幅産物を制限酵素KpnI及びHindIIIで切断して、切断産物を得た(なお、得られた切断産物を、以下、「HindIII-NdeI-hupB-His6-KpnI(687bp)/HindIII,KpnI」と称する場合がある)。
【実施例】
【0064】
(2)大腸菌-抗酸菌シャトルベクターpSO246へのMDP1遺伝子の挿入
次いで、大腸菌-抗酸菌シャトルベクターpSO246(図1参照)を制限酵素KpnI及びHindIIIで切断し、切断産物を得た(なお、得られた切断産物を、以下、「pSO246/HindIII,KpnI」と称する場合がある)。次いで、この切断産物「pSO246/HindIII,KpnI」と、(1)で得られた切断産物「HindIII-NdeI-hupB-His6-KpnI(687bp)/HindIII,KpnI」とについて、アガロースゲル電気泳動を行い、FastGene(登録商標) ゲル/PCR抽出キット(日本ジェネティクス社製)を用いて、切断産物のバンドを含むゲルから切断産物をそれぞれ抽出及び精製した。次いで、精製後の「HindIII-NdeI-hupB-His6-KpnI(687bp)/HindIII,KpnI」を、精製後の「pSO246/HindIII,KpnI」にライゲーションして、ライゲーション産物「pSO264-hupB(Rv2986c)-His6」を得た(図2参照)。なお、ライゲーションは、TaKaRa DNA ligation kit Mighty Mix(タカラバイオ社製)を用いて、メーカーのプロトコールに従って実施した。
【実施例】
【0065】
(3)大腸菌の形質転換及びライゲーション産物の増幅
次いで、上記「1.」の(2)で得られたライゲーション産物「pSO264-hupB(Rv2986c)-His6」をコンピテントセル(E. coli DH5α)に形質転換し、10μg/mLのカナマイシン含有LB agarに接種して、37℃で一晩培養した。次いで、出現したコロニーを10μg/mLのカナマイシン含有LB broth 2mL以上5mL以下程度に接種して、37℃で培養して増菌し、菌体からプラスミドを公知の方法を用いて抽出した。次いで、抽出されたプラスミドに挿入された「HindIII-NdeI-hupB-His6-KpnI」を、以下の表3に示すプライマーを用いて増幅し、その塩基配列をDNAシーケンス解析で確認した。なお、抽出されたプラスミドに挿入された「HindIII-NdeI-hupB-His6-KpnI」の増幅は、ユーロフィンジェノミクス社に外部委託した。
【実施例】
【0066】
【表3】
JP2019208430A_000004t.gif
【実施例】
【0067】
次いで、上記「1.」の(3)で増幅されたライゲーション産物「pSO264-hupB(Rv2986c)-His6」をBamHI及びNdeIで切断して、切断産物を得た(なお、得られた切断産物を、以下、「pSO264-hupB(Rv2986c)-His6/BamHI,NdeI」と称する場合がある)。
【実施例】
【0068】
(4)pSO264-hupB(Rv2986c)-His6プラスミドへのアセトアミダーゼレギュレーター遺伝子及びアセトアミダーゼ遺伝子のプロモーター領域の挿入
次いで、pCRII-TOPO(図3参照)を制限酵素BamHI及びNdeIで切断して、アセトアミダーゼレギュレーター遺伝子(accession No.U63095)及びアセトアミダーゼ遺伝子のプロモーター領域(accession No.X57175)を含む塩基配列(全長2890bp)(以下、この塩基配列からなる核酸部位を「Ace unit」と称する場合がある)を切り出した。なお、図3に示す「pCRII-TOPO」は、発明者らが作製したプラスミドであり、Mycobacterium semgmatis(M.semgmatis)のゲノムDNAからPCR法により増幅した上記Ace unitが挿入されたものである。
次いで、この切断産物「Ace unit」と、(3)で得られた切断産物「pSO264-hupB(Rv2986c)-His6/BamHI,NdeI」とについて、アガロースゲル電気泳動を行い、FastGene(登録商標) ゲル/PCR抽出キット(日本ジェネティクス社製)を用いて、切断産物のバンドを含むゲルから切断産物をそれぞれ抽出及び精製した。次いで、精製後の「Ace unit」を、精製後の「pSO264-hupB(Rv2986c)-His6/BamHI,NdeI」にライゲーションして、「Ace unit」と「hupB(Rv2986c)-His6」とを連結したhupB-His6誘導発現プラスミド「pSO264-ACE-hupB(Rv2986c)-His6」を構築した(図4参照)。なお、ライゲーションは、Ligation high ver.2(東洋紡社製)を用いて、メーカーのプロトコールに従って実施した。
【実施例】
【0069】
なお、hupB-His6誘導発現プラスミド「pSO264-ACE-hupB(Rv2986c)-His6」は以下の表4に示す5セットのプライマーを用いて、PCR法により増幅した。次いで、増幅産物について、それぞれアガロースゲル電気泳動を行い、その塩基数から想定通りのプラスミドが構築されていることを確認した。また、得られたhupB-His6誘導発現プラスミド「pSO264-ACE-hupB(Rv2986c)-His6」を配列番号16に示す。
【実施例】
【0070】
【表4】
JP2019208430A_000005t.gif
【実施例】
【0071】
2.迅速発育型抗酸菌M.semgmatisの形質転換及びMDP1の発現誘導
(1)迅速発育型抗酸菌M.semgmatisの形質転換
mdp1遺伝子(MSMEG_2389)を欠失させたM.semgmatis mc2_155株(以下、「M.semgmatis Δmdp1」と称する場合がある)に、上記「1.」で得られたhupB-His6誘導発現プラスミド「pSO264-ACE-hupB(Rv2986c)-His6」をエレクトロポレーション法により導入し、形質転換した。次いで、形質転換後の菌液を10μg/mLのカナマイシン及び50μg/mLのハイグロマイシン含有7H11培地に接種した。次いで、2日後から3日後までに出現したコロニーをhupB-His6誘導発現型M.semgmatis株(以下、「M.semgmatis mc2155Δmdp1::ACE-hupB(Rv2986c)-His6」と称する場合がある)として用いた。
【実施例】
【0072】
(2)菌の培養及びMDP1の発現誘導
次いで、0.05%Tween80を添加したMuller Hinton II broth(Becton Dickinson社製)500mLを1Lの坂口フラスコに入れ、カナマイシン(最終濃度:10μg/mL)及びハイグロマイシン(最終濃度:50μg/mL)を添加して、菌株培養用の培地を調製した。次いで、(1)で得られたhupB-His6誘導発現型M.semgmatis株を、上記調製した培地に接種し、大型恒温振とう培養機バイオシェーカー(登録商標) G・BR-300(TAITEC社製)を用いて、37℃、115rpm/分の条件下で振盪培養した。培養液の600nm吸光度が1.0付近に達した時点で、アセトアミド(シグマアルドリッチ社製)を最終濃度2%となるよう添加し、さらに24時間、48時間又は72時間培養した。次いで、菌体を遠心分離(15,000×g、5分間、4℃)により回収した。次いで、少量の菌体を水とともにビーズビーターで破砕し、SDS(最終濃度:1%)を加えて、95℃で20分間加熱した。次いで、加熱後の菌体溶液の上清を用いて、SDS-PAGEを行い、CBB染色、並びに、抗MDP1抗体及び抗ヒスチジン抗体を用いたウェスタンブロット解析により、MDP1の発現を確認した。代表的な結果として、アセトアミド誘導後48時間培養した菌体のCBB染色の結果を図5A(1レーンあたりのタンパク質量:10μg)に、抗MDP1抗体を用いたウェスタンブロット解析の結果を図5B(1レーンあたりのタンパク質量:2μg)に、抗ヒスチジン抗体を用いたウェスタンブロット解析の結果を図5C(1レーンあたりのタンパク質量:500ng)に示す。図5A~図5Cにおいて、(-)はアセトアミドを添加せずに培養した菌体、(+)はアセトアミド添加して培養した菌体である。また、矢印はMDP1のバンドを示す。
【実施例】
【0073】
図5A~図5Cから、アセトアミドを添加して培養した菌体において、hupB-His6が発現していることが確かめられた。
【実施例】
【0074】
3.MDP1の抽出
次いで、「2.」で培養した菌体を粒径0.3mm以上0.5mm以下程度の石英砂(キシダ化学製)とともに乳鉢で破砕した。次いで、0.25Nの塩酸に懸濁し、4℃で一晩攪拌した。次いで、懸濁液を遠心分離(15,000×g、20分間)し、上清を得た。次いで、得られた上清に同容量の8Mの尿素を加えた後、さらに10Mの水酸化ナトリウム溶液を加えて、pHを8.0に調整した。次いで、pH調整後の溶液を透析チューブ(SnakeSkin Dialysis Tubing 3,500MWCO、Thermo SCIENTIFIC社製)に入れ、6Mの尿素含有His Binding Buffer(50mM NaH2PO4、500mM NaCl、10mM Imidazole、0.01% Tween 20、6M 尿素)(以下、「His Binding Buffer(A1)」と称する場合がある)を外液として一晩透析した。次いで、透析後の溶液を0.2μmのフィルター(ADVANTEC社製)で濾過後、AKTA explolor 10sを用いて精製して、MDP1含有溶液を得た。
【実施例】
【0075】
4.MDP1の精製
MDP1の精製は2段階で実施した。1段階目は6Mの尿素含有BufferでMDP1含有フラクションを流出し、2段階目は尿素不含Bufferを用いてカラム上でMDP1をリフォルディングした後、MDP1含有フラクションを得た。具体的には、以下に示す手順で行った。なお、カラム操作はコールドルーム(4℃以上9℃以下程度)で実施した。また、精製に用いた装置及び緩衝液の組成は以下に示すとおりである。
【実施例】
【0076】
(測定装置)
装置名:AKTAexplorer/10S(GE HealthCare Life Science社製)
フラクションコレクター:Frac-900(GE HealthCare Life Science社製)
カラム:HisTrap(登録商標) FF 5mL(GE HealthCare Life Science社製)
【実施例】
【0077】
(緩衝液の組成)
6Mの尿素含有His Binding Buffer(A1):50mM NaH2PO4、500mM NaCl、10mM Imidazole、0.01% Tween 20、6M 尿素
6Mの尿素含有Elution buffer(B1):50mM NaH2PO4、500mM NaCl、300mM Imidazole、0.01% Tween 20、6M 尿素
尿素不含His binding buffer(B1 w/o)及び(A2 w/o):50mM NaH2PO4、500mM NaCl、10mM Imidazole、0.01% Tween 20
尿素不含Elution buffer(B2 w/o):50mM NaH2PO4、500mM NaCl、300mM Imidazole、0.01% Tween 20
なお、上記(B1 w/o)及び上記(A2 w/o)は、同じ組成の緩衝液であるが、液体クロマトグラフィーにおいてグラジエントは緩衝液A及び緩衝液B間で設定する必要があるため、上記のとおり、異なる名称を付した。
【実施例】
【0078】
(1)1段階目の精製
まず、カラムをセットした液体クロマトグラフに、上記「3.」で抽出及び精製したMDP1含有溶液をアプライし、6Mの尿素含有His Binding Buffer(A1)を流速2mL/分の条件下で流して、MDP1をカラム内に吸着させた。次いで、緩衝液の混合比が6Mの尿素含有Elution buffer(B1)を10%、及び、6Mの尿素含有His Binding Buffer(A1)を90%となるように設定し、流速2mL/分の条件下で30カラム容量分(150mL)の緩衝液を流して、カラム内を洗浄した。次いで、6Mの尿素含有Elution buffer(B1)が100%となるまでグラジエントをかけて、流速2mL/分の条件下で8カラム容量分(40mL)緩衝液を流して、MDP1を流出させた。次いで、流出フラクションを用いて、SDS-PAGEを行い、CBB染色によりMDP1が含まれるフラクションを確認した。CBB染色の結果を図6に示す。図6から、MDP1が含まれるフラクションを透析チューブ(SnakeSkin Dialysis Tubing 3,500MWCO、Thermo SCIENTIFIC社製)に入れ、6Mのウレア含有His Binding Buffer(A1)を外液として一晩透析した。
【実施例】
【0079】
(2)2段階目の精製
次いで、カラムをセットした液体クロマトグラフに、透析後のMDP1含有溶液をアプライし、6Mの尿素含有His Binding Buffer(A1)を流速1mL/分の条件下で流して、MDP1をカラム内に吸着させた。次いで、尿素不含His Binding Buffer(B1 w/o)を100%となるまでグラジエントをかけて、流速1mL/分の条件下で30カラム容量分(150mL)流して、カラム内の緩衝液の組成を置き換えて、カラム上でMDP1のリフォルディングを行った。次いで、緩衝液の混合比が尿素不含Elution buffer(B2 w/o)を10%、及び、尿素不含His binding buffer(A2 w/o)を90%となるように設定し、流速1mL/分の条件下で30カラム容量分(150mL)の緩衝液を流して、カラム内を洗浄した。次いで、尿素不含Elution buffer(B2 w/o)が100%となるまでグラジエントをかけて、流速1mL/分の条件下で8カラム容量分(40mL)緩衝液を流して、MDP1を流出させた。次いで、緩衝液の混合比が尿素不含Elution buffer(B2 w/o)が100%となるように設定し、流速1mL/分の条件下で5カラム容量分(25mL)の緩衝液を流して、カラムに残存するMDP1を流出させた。次いで、流出フラクションを用いて、SDS-PAGEを行い、CBB染色によりMDP1が含まれるフラクションを確認した。CBB染色の結果を図7に示す。図7から、MDP1が含まれるフラクションを透析チューブ(SnakeSkin Dialysis Tubing 3,500MWCO、Thermo SCIENTIFIC社製)に入れ、生理食塩水を外液として一晩透析して、精製後のMDP1含有溶液とした。
【実施例】
【0080】
5.抗MDP1-メチル化抗体を用いたウェスタンブロット解析によるMDP1の翻訳後修飾の確認
上記「4.」で得られたMDP1含有溶液(アセトアミド誘導後24時間、48時間又は72時間培養)を用いて、SDS-PAGEを行い、抗ヒスチジン抗体及び抗MDP1-メチル化抗体を用いたウェスタンブロット解析を行った。なお、以下、hupB-His6誘導発現型M.semgmatis株をアセトアミド誘導後24時間、48時間又は72時間培養して得られたMDP1を総じて「MDP1-M」と称する場合がある。
また、対照として、大腸菌にプラスミドpET21b-mdp1を導入して発現させたMDP1(以下、「MDP-E」と称する場合がある)も準備し、同様にウェスタンブロット解析を行った。抗ヒスチジン抗体を用いたウェスタンブロット解析の結果を図8Aに、抗MDP1-メチル化抗体を用いたウェスタンブロット解析の結果を図8Bに示す。
【実施例】
【0081】
図8A及び図8Bから、抗酸菌発現系で製造されたMDP1(MDP1-M)はメチル化されていることが確かめられた。一方、大腸菌発現系で製造されたMDP1(MDP1-E)は、メチル化が見られなかった。
【実施例】
【0082】
[試験例1]MDP1のサイトカイン産生誘導能の確認試験
1.ヒトインターフェロンガンマ(IFN-gamma;IFN-γ)産生量の測定
次いで、実施例1で得られたMDP1-Mのヒトインターフェロンガンマ(IFN-gamma;IFN-γ)産生誘導能を調べた。具体的には、以下に示す手順で試験を行った。
まず、実施例1で得られたMDP1-M(hupB-His6誘導発現型M.semgmatis株をアセトアミド誘導後48時間培養して得られたMDP1)及び実施例1において対照として用いたMDP1-Eをそれぞれ最終濃度0.1μM又は0.5μMとなるように添加した培地を調製した。また、対照として、MDP1不含培地、及び、ツベルクリン反応検査に用いられる精製ツベルクリン(Purified Protein Derivative;PPD)を最終濃度10μg/mLとなるように添加した培地を準備した。
次いで、BCG接種歴のあるヒト由来の末梢血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cells;PBMC)を4×105cells/ウェルとなるように96ウェルプレートに播種し、上記調製した各培地を用いて培養した。培養3日目及び5日目に各培養上清を回収して、ヒトIFN-gamma測定ELISAキット(BioLegend社製)を用いて、ヒトIFN-γの産生量を測定した。結果を図9Aに示す。なお、図9Aにおいて、「none」は、MDP1不含培地で培養したPBMCを示す。
【実施例】
【0083】
2.ヒトCCL2(C-C motif chemokine 2)産生量の測定
次いで、実施例1で得られたMDP1-MのヒトCCL2(C-C motif chemokine 2)(MCP1(Monocyte chemotactic protein 1)とも呼ばれる)産生誘導能を調べた。具体的には、以下に示す手順で試験を行った。
まず、実施例1で得られたMDP1-M(hupB-His6誘導発現型M.semgmatis株をアセトアミド誘導後48時間培養して得られたMDP1)及び実施例1において対照として用いたMDP1-Eをそれぞれ最終濃度0.005μM、0.05μM又は0.5μMとなるように添加した培地を調製した。また、対照として、MDP1不含培地、及び、PPDを最終濃度10μg/mLとなるように添加した培地を準備した。
次いで、BCG接種歴のあるヒト由来のPBMCを2×105cells/ウェルとなるように96ウェルプレートに播種し、上記調製した各培地を用いて培養した。培養3日目に各培養上清を回収して、ヒトMCP1/CCL2測定ELISAキット(BioLegend社製)を用いて、ヒトCCL2産生量を測定した。結果を図9Bに示す。なお、図9Bにおいて、「none」は、MDP1不含培地で培養したPBMCを示す。
【実施例】
【0084】
図9A及び図9Bから、BCG接種歴のあるヒト由来のPBMCに対して、抗酸菌発現系で製造されたMDP1(MDP1-M)は大腸菌発現系で製造されたMDP1(MDP1-E)よりも高いサイトカイン産生誘導能を示した。
【実施例】
【0085】
以上のことから、抗酸菌発現系で製造されたMDP1(MDP1-M)は、翻訳後修飾が生じており、細胞性応答が良好であることが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本実施形態の製造方法によれば、免疫原性が良好なMDP1を効率よく製造できる。本実施形態の製造方法により得られたMDP1は、例えば、結核感染者に対する血清診断抗原、成人期以降の低下した結核免疫を増強するワクチン抗原として有用である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5A】
4
(In Japanese)【図5B】
5
(In Japanese)【図5C】
6
(In Japanese)【図6】
7
(In Japanese)【図7】
8
(In Japanese)【図8A】
9
(In Japanese)【図8B】
10
(In Japanese)【図9A】
11
(In Japanese)【図9B】
12