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明細書 :ピコクロラム属微細藻類

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-153416 (P2017-153416A)
公開日 平成29年9月7日(2017.9.7)
発明の名称または考案の名称 ピコクロラム属微細藻類
国際特許分類 C12N   1/12        (2006.01)
A23L  33/10        (2016.01)
A23K  10/18        (2016.01)
A61K   8/99        (2017.01)
A61K   8/00        (2006.01)
B01D  53/84        (2006.01)
B01D  53/62        (2006.01)
FI C12N 1/12 ZNAC
A23L 1/30 ZABZ
A23K 10/18
A61K 8/99
A61K 8/00
B01D 53/84
B01D 53/62
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2016-039659 (P2016-039659)
出願日 平成28年3月2日(2016.3.2)
発明者または考案者 【氏名】藤井 克彦
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
審査請求 未請求
テーマコード 2B150
4B018
4B065
4C083
4D002
Fターム 2B150AA01
2B150AA07
2B150AC40
2B150CJ07
2B150DH04
2B150DH14
4B018LB10
4B018MD89
4B018ME14
4B018MF06
4B065AA83X
4B065AC14
4B065BA22
4B065BB02
4B065CA17
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA50
4B065CA54
4C083AA031
4D002AA09
4D002BA17
4D002DA59
4D002GA01
4D002GB02
要約 【課題】40%の二酸化炭素を含有するガスの雰囲気下で生育可能な微細藻類や、かかる微細藻類を用いた二酸化炭素の固定化方法の提供。
【解決手段】40%の二酸化炭素を含有するガスの雰囲気下で増殖可能なピコクロラム(Picochlorum)属微細藻類。当該微細藻類は、特定の配列からなる塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する18SrDNAを有する微細藻類や、(a)特定の配列に記載の塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌;(b)特定の配列に記載の塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌;と共生している微細藻類であることが好ましい。かかる微細藻類は40%COガスを封入した容器内で増殖能力が高く、COを効率よく固定化することが可能となる。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
40%の二酸化炭素を含有するガスの雰囲気下で増殖可能なピコクロラム(Picochlorum)属微細藻類。
【請求項2】
配列番号1又は2記載の塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する18SrDNAを有することを特徴とする請求項1記載のピコクロラム属微細藻類。
【請求項3】
乾燥菌体あたりのγ-アミノ酪酸含量が3.5mol%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のピコクロラム属微細藻類。
【請求項4】
以下の(a)又は(b)記載の細菌と共生していることを特徴としている請求項1~3のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類。
(a)配列番号3~13のいずれか記載の塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌;
(b)配列番号3~13のいずれか記載の塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌;
【請求項5】
Azisu-1株又はAzisu-2株であることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類を含有する飼料。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類を含有する食品。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類を含有する化粧品。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類を培養する工程を有する二酸化炭素の固定化方法。
【請求項10】
0.02~60%の二酸化炭素を含有するガスを供給しつつ培養することを特徴とする請求項9記載の二酸化炭素の固定化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、40%濃度の二酸化炭素の雰囲気下で生育可能なピコクロラム(Picochlorum)属微細藻類や、かかる微細藻類を用いた二酸化炭素の固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は光合成を行うことにより微細藻類自身の生命活動に必要な各種有機物を生合成できるという特徴を有している。この微細藻類の特徴を生かして、二酸化炭素(CO)を固定化することや、微細藻類で有機物を生合成する研究が行われている。
【0003】
工業由来の排気ガス(以下、産業ガス)はCOを含んでおり、中でも火力発電所や製鉄所のガスは15~40%のCOを含んでいる。定期的に開催される気候変動枠組条約締結国会議COPでは、締結国がCO排出量の削減を目指すこと、削減目標を到達できなかった国は排出権取引により実質的なペナルティを課せられることが検討されている。従って、産業ガスに含まれるCOの削減は官民挙げての努力目標であり、COの低減あるいは資源化技術の開発が求められている。
【0004】
他方、温暖化が進む今日であってもCOは大気中の0.03%程度であるが、原始地球では大気の主成分であり、30%程度を占めていたと考えられている。COは有機物の乏しい環境で微細藻類が光合成により増殖するための炭素源となる。この低濃度のCOに順応した現在の微細藻類種はCO濃度を2~3%にするだけで増殖が促進されるが、それ以上の高濃度になると培養液のpH低下等により生育が抑制されはじめる。従って、微細藻類の培養で産業ガスを利用する場合、COが2~3%程度になるように空気等で希釈したものを通気する必要があり、COの利用という点からは非効率である。
【0005】
また、屋外で商業スケールの培養を行う場合、厳密な雑菌防除は困難であり、ある程度の野生藻類の混入を覚悟しなければならない。2~3%のCOは目的藻類のみならず野生藻類にとっても好適な濃度であることから、野生増殖の増殖をも刺激するリスクを備えている。従って、目的藻類が高濃度COでも生育が抑制されずに増殖できるのであれば、混入した野生藻類が繁殖するリスクも低減でき、屋外培養が成功する可能性が高くなる。
【0006】
高濃度COでも生育が可能な微細藻類として、例えば5~60%の濃度のCOに耐性を有する微細藻類クロロコックム ドルシベントラレ クラノ エト チハラ エスピー ノブ(Chlorococcum dorsiventrale Kurano et Chihara sp. nov.)株(特許文献1参照)や、Synechocystis属に属する新規微細藻類(特許文献2参照)や、生育至適CO濃度が20~40%である微細藻クロレラ ソロキニアナHAK-2株(特許文献3参照)が開示されている。特許文献1記載の株は5%、20%の二酸化炭素分圧下では増殖能力が高いが、40%の二酸化炭素分圧下では、20%の二酸化炭素分圧下と比較して1/3程度まで増殖能力が低下するという問題があった。また、特許文献2記載の株はCOの至適濃度が約10%であり、COを10~20%程度含有している排ガスを用いる場合には空気と混合させてCOの濃度が1~5%程度になるように調整することが必要とされており、二酸化炭素の固定としては非効率的であるという問題があった。さらに、特許文献3記載の株は40℃という高温環境下で選択された株であり、培養温度が40℃より低いと増殖そのものが低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平7-51051号公報
【特許文献2】特開平8-56648号公報
【特許文献3】特開平10-248553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、40%の二酸化炭素を含有するガスの雰囲気下で生育可能な微細藻類や、かかる微細藻類を用いた二酸化炭素の固定化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者ら当初、地球成立の早期の時期から現在まで生存し続けてきた微細藻類種を探索することを研究の目的としてきた。前述のとおり、原始地球の大気ではCOが主成分であったことから、高濃度のCOに耐える性質を備えた藻類種は原始大気下で生存していた先祖藻類の痕跡を残しているのではないか、という仮説に基づいて藻類探索を行ってきた。その結果、40%COガスを封入した容器内で増殖能力が高い微細藻類を得ることができ、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の[1]~[10]に示すとおりのものである。
[1]40%の二酸化炭素を含有するガスの雰囲気下で増殖可能なピコクロラム(Picochlorum)属微細藻類。
[2]配列番号1又は2記載の塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する18SrDNAを有することを特徴とする上記[1]記載のピコクロラム属微細藻類。
[3]乾燥菌体あたりのγ-アミノ酪酸含量が3.5mol%以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載のピコクロラム属微細藻類。
[4]以下の(a)又は(b)記載の細菌と共生していることを特徴としている上記[1]~[3]のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類。
(a)配列番号3~13のいずれか記載の塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌;
(b)配列番号3~13のいずれか記載の塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌;
[5]Azisu-1株又はAzisu-2株であることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類。
[6]上記[1]~[5]のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類を含有する飼料。
[7]上記[1]~[5]のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類を含有する食品。
[8]上記[1]~[5]のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類を含有する化粧品。
[9]上記[1]~[5]のいずれか記載のピコクロラム属微細藻類を培養する工程を有する二酸化炭素の固定化方法。
[10]0.02~60%の二酸化炭素を含有するガスを供給しつつ培養することを特徴とする上記[9]記載の二酸化炭素の固定化方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のピコクロラム属微細藻類は40%の二酸化炭素を含有するガスの雰囲気下で増殖可能であり、産業ガス等に含まれるCO2の資源化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】18SrDNA解析によるAzisu-1株及びAzisu-2株の系統樹を示す図である。
【図2】Azisu-1株(a)及びAzisu-2株(b)の顕微鏡写真を示す図である。
【図3】Azisu-1株及びAzisu-2株の共生細菌の16SrDNAのDGGE解析の結果を示す図である。
【図4】Azisu-1株(a)及びAzisu-2株(b)を3週間培養した場合の細胞密度を調べた結果を示す図である。
【図5】Azisu-1株、Azisu-2株、及び他の微細藻類の菌体に含まれるアミノ酸含量(mol%)を調べた結果を示す図である。
【図6】Azisu-1株、Azisu-2株、及び他の微細藻類の菌体に含まれるビタミンやカロチノイド含量(mg/kg-dry cells)を調べた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の微細藻類は、40%の二酸化炭素を含有するガスの雰囲気下で生育可能なピコクロラム(Picochlorum)属微細藻類であれば特に制限されず、ここで、「40%の二酸化炭素を含有するガスの雰囲気下で増殖可能」とは、微細藻類を培養する培地上に40%の二酸化炭素を含有するガスを供給して微細藻類を2週間培養した場合に、培養前と比較して培地中の微細藻類の細胞密度(cells/mL)が向上していることを意味する。培養する培地としては特に制限されないが、土壌の熱水抽出物を最終濃度で1%含む無機培地であることが好ましく、ナトリウムをさらに含有する上記無機培地であることがより好ましく、以下の表1に示す、人工海水(マリンアートSF-1:富田製薬社製)に窒素、リン、ビタミンを補充したAS無機培地がさらに好ましい。また、培養する際のpH、温度、照度としては、pH8、温度25℃、培地表面の照度8,000luxを挙げることができる。

【0014】
【表1】
JP2017153416A_000003t.gif

【0015】
本発明の微細藻類としては、配列番号1又は2記載の塩基配列と98以上、好ましくは98.5%以上、より好ましくは99%、さらに好ましくは99.5%、最も好ましくは99.8%以上の同一性を有する塩基配列を含有する18SrDNAを有する微細藻類を挙げることができ、Azisu-1株又はAzisu-2株であることが好ましい。なお、Azisu-1株又はAzisu-2株は生物確認試験の結果、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)において技術的理由等によって寄託ができない微生物(通知番号2015-0905、2015-0906:通知年月日 2015年12月21日)に該当したため、国立大学法人山口大学農学部生物機能科学科(山口県山口市吉田1677番地1)に保管されており、一定条件下で分譲可能である。

【0016】
18SrDNA(18SrRNA遺伝子をコードするDNA)の塩基配列は公知の遺伝子工学的手法によって求めることができ、例えば、18SrDNAを増幅するプライマーセットを用いて、検査対象の株から得られたDNAを鋳型としてPCR反応で増幅し、DNAシーケンサーで塩基配列を決定することによって求めることができる。

【0017】
本発明の微細藻類としては、γ-アミノ酪酸(GABA)や、プロリン等の非必須アミノ酸や、バリン(Val)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、又はリシン(Lys)等の必須アミノ酸を含有することが好ましい。

【0018】
本発明の微細藻類がγ-アミノ酪酸(GABA)を含有する場合、乾燥菌体あたりのγ-アミノ酪酸含量が3.5mol%以上、好ましくは3.8mol%以上、より好ましくは4.0mol%以上の微細藻類を挙げることができる。

【0019】
本発明の微細藻類がプロリン(Pro)を含有する場合、乾燥菌体あたりのプロリン(Pro)含量が20mol%以上、好ましくは23mol%以上の微細藻類を挙げることができる。

【0020】
上記γ-アミノ酪酸(GABA)は抗不安作用等が、プロリン(Pro)はコラーゲンの合成や修復作用等があるといわれていることから栄養価として極めて重要であり、これらを含有する微細藻類は飼料、食品、化粧品等での利用価値が高まる。

【0021】
本発明の微細藻類がバリン(Val)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、又はリシン(Lys)等のヒトの必須アミノ酸を含有する場合、乾燥菌体あたりのバリン(Val)含量が2.0mol%以上、好ましくは2.4mol%以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのメチオニン(Met)含量が0.5mol%以上、好ましくは0.7mol%以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのイソロイシン(Ile)含量が1.2mol%以上、好ましくは1.5mol%以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのロイシン(Leu)含量が2.2mol%以上、好ましくは2.5mol%以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのフェニルアラニン(Phe)含量が0.8mol%以上、好ましくは1.0mol%以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのヒスチジン(His)含量が0.3mol%以上、好ましくは0.4mol%以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのリシン(Lys)含量が2.0mol%以上、好ましくは2.1mol%以上の微細藻類を挙げることができる。さらに好ましくは、乾燥菌体あたりのバリン(VAL)含量が2.0mol%以上、メチオニン(Met)含量が0.5mol%以上、イソロイシン(Ile)含量が1.2mol%以上、ロイシン(Leu)含量が2.2mol%以上、フェニルアラニン(Phe)含量が0.8mol%以上、ヒスチジン(His)含量が0.3mol%以上、かつ、リシン(Lys)含量が2.0mol%以上の微細藻類を挙げることができる。

【0022】
本発明において、乾燥菌体とは、本件微細藻類を、土壌の熱抽出物を1%含有する無機塩培地で培養後、6,000rpm、10分で遠心分離し、上澄みを除去したものを-50℃で凍結乾燥して得られた菌体をいう。

【0023】
上記乾燥菌体あたりのγ-アミノ酪酸含量、非必須アミノ酸含量、及び必須アミノ酸含量は、例えば、まず、凍結乾燥菌体をMilliQ水等で懸濁し、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等を加えて細胞破砕処理し、微量遠心機にかけて上清液を回収し、凍結乾燥する。次に、凍結乾燥した乾個物を塩酸に溶解し、乾固物中のタンパク質をアミノ酸まで加水分解し、市販のアミノ酸分析器で解析することで算出することができる。

【0024】
このほか、本発明の微細藻類としては、ビタミン類を含有することが好ましく、乾燥菌体あたりのビタミンB1含量が80mg/kg以上、好ましくは100mg/kg以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのビタミンB3含量が60mg/kg以上、好ましくは75mg/kg以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのビタミンB6含量が30mg/kg以上、好ましくは35mg/kg以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのビタミンB12含量が1.5mg/kg以上、好ましくは2mg/kg以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのビタミンC含量が1,000mg/kg以上、好ましくは1,050mg/kg以上の微細藻類や、乾燥菌体あたりのビタミンB1含量が80mg/kg以上、ビタミンB3含量が60mg/kg以上、ビタミンB6含量が30mg/kg以上、ビタミンB12含量が1.5mg/kg以上、かつ、ビタミンC含量が1,000mg/kg以上の微細藻類を挙げることができる。

【0025】
なお、乾燥菌体あたりのビタミン類含量は、例えば、まず、凍結乾燥菌体をMilliQ水等で懸濁し、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等を加えて細胞破砕処理し、微量遠心機にかけて上清液を回収し、凍結乾燥する。次に、凍結乾燥した乾個物をリン酸二水素カリウムに溶解し、市販の高速液体クロマトグラフィーで解析することで算出することができる。

【0026】
加えて、本発明の微細藻類としては、アスタキサンチンを含有することが好ましく、乾燥菌体あたりのアスタキサンチン含量が80mg/kg以上、好ましくは100mg/kg以上の微細藻類を挙げることができる。

【0027】
なお、乾燥菌体あたりのアスタキサンチン含量は、例えば、まず、凍結乾燥菌体をアセトン/ヘキサン=35/65)等の有機溶剤で懸濁し、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等を加えて細胞破砕処理し、微量遠心機にかけて上清液を回収し、凍結乾燥する。次に、凍結乾燥した乾個物をリン酸二水素カリウムに溶解し、市販の高速液体クロマトグラフィーで解析することで算出することができる。

【0028】
本発明の微細藻類としては、細菌と共生している微細藻類でもよく、かかる細菌としては、(a)配列番号3~13のいずれかに示す塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌や、(b)配列番号3~13のいずれかに示す塩基配列と98以上、好ましくは98.5%以上、より好ましくは99%、さらに好ましくは99.5%、最も好ましくは99.8%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌を挙げることができ、α-プロテオバクテリア(alpha-proteobacteria)、γ-プロテオバクテリア(gamma-proteobacteria)等のプロテオバクテリア、ラブレンジア属(Labrenzia sp.)、又はディエラ属(Dyella sp.)細菌を好適に挙げることができる。

【0029】
本発明の微細藻類に共生している細菌の種類としては、1種以上でも、2種以上でも、3種以上でも、4種以上でも、9種以上でもよい。具体的には、配列番号3に示す塩基配列、又は配列番号3に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、配列番号4に示す塩基配列、又は配列番号4に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、配列番号5に示す塩基配列、又は配列番号5に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、配列番号6に示す塩基配列、又は配列番号6に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、配列番号7に示す塩基配列、又は配列番号7に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、配列番号8に示す塩基配列、又は配列番号8に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、配列番号9に示す塩基配列、又は配列番号9に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、配列番号10に示す塩基配列、又は配列番号10に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、及び、配列番号13に示す塩基配列、又は配列番号13に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌の9種や、配列番号10に示す塩基配列、又は配列番号10に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、配列番号11に示す塩基配列、又は配列番号11に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、配列番号12に示す塩基配列、又は配列番号12に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌、及び、配列番号13に示す塩基配列、又は配列番号13に示す塩基配列と98%以上の同一性を有する塩基配列を含有する16SrDNAを有する細菌の4種を挙げることができる。

【0030】
これら細菌と共生することで、より高い二酸化炭素濃度を含有するガスの雰囲気下で高い増殖能力を備えることが可能となる。なお、本発明において、「共生」とは微細藻類と細菌が相互関係を持ちながら同所的に生育する状態をいう。

【0031】
本発明のCO2の固定化方法としては、上記本発明の微細藻類を培養する工程を有するCO2の固定化方法であれば特に制限されず、CO2を含有するガスを供給しつつ上記本発明の微細藻類を培養する方法や、CO2が溶存した培地で上記本発明の微細藻類を培養する方法を挙げることができるが、CO2を含有するガスを供給しつつ上記本発明の微細藻類を培養する方法を好適に挙げることができる。供給するCO2の濃度としては、好ましくは0.01~60%、より好ましくは0.03~55%、さらに好ましくは1~50%、最も好ましくは10~45%を挙げることができる。また、上記ガスにおけるCO2以外の成分としては特に制限されず、窒素、酸素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、メタン、クリプトン等の空気中に含まれる成分や、一酸化炭素、窒化酸化物、硫黄酸化物、塩化水素、アンモニア等の産業排気ガスに含まれる成分を挙げることができる。なお、上記CO2を含有するガスとしては、火力発電所、焼却場、鉄工所、自動車等において炭素含有物質を燃焼させて生じたCO2含有ガスや、汚泥処理場等において発酵により生じたCO2含有ガスをそのまま用いてもよく、空気等の他のガスと混合して用いてもよい。

【0032】
CO2を含有するガスを供給しつつ培養する方法としては、培地の表面にCO2を含有するガスを供給しつつ培養する方法や、培地中にCO2を含有するガスをバブリングにより通気しつつ培養する方法を挙げることができる。

【0033】
本発明のCO2の固定化方法において用いる培地としては特に制限されないが、本発明の微細藻類以外の藻類又は細菌の増殖を塩濃度で抑える観点から、海水、好ましくは窒素源とリン源を補充した海水を挙げることができ、さらに、本発明の微細藻類以外の藻類又は細菌の増殖を酸性pHでも抑える観点から、上記海水にCO2を供給して培養液pHを酸性(pH5-6)にしたものを挙げることができる。

【0034】
また、本発明のCO2の固定化方法において培養する際の培地のpH条件としては、4.5~9.0、好ましくは5.0~8.5、温度条件としては、22~28℃、好ましくは24~26℃、光照射条件としては、培地表面の照度として1,500~12,000lux、好ましくは4,000~9,000lux、培養時間としては7日~60日、好ましくは10日~20日を好適に例示することができ、CO2を含有するガスを供給している限り、振とう培養、静置培養、撹拌培養、通気培養、又はこれらの組み合わせでもよい。

【0035】
また、本発明の微細藻類はγ-アミノ酪酸(GABA)、プロリン、必須アミノ酸、ビタミン類及び/又はアスタキサンチンを含有することから、本発明の微細藻類を培養してγ-アミノ酪酸(GABA)、プロリン、必須アミノ酸、ビタミン類及び/又はアスタキサンチンを生産することが可能となり、必要に応じて遠心分離法や濾過分離法等により本発明の微細藻類を培地から回収した後、ビーズ法等により細胞を破砕して公知の方法によってγ-アミノ酪酸(GABA)、プロリン、必須アミノ酸、ビタミン類及び/又はアスタキサンチンを抽出、精製してもよい。

【0036】
培養した本発明の微細藻類は飼料に含有させることができ、例えば本発明の微細藻類と共に、一般的な飼料に使用されている粗蛋白質、粗灰分、カルシウム、リン等を、給餌する家畜や養殖魚介類の生育状態等に応じて配合して用いることができる。かかる飼料に含有させる本発明の微細藻類は、必要に応じて細胞壁を物理的又は化学的に破壊することができる。

【0037】
培養した本発明の微細藻類は食品に含有させることができ、該食品としては、栄養補助食品、サプリメント等を挙げることができる。かかる食品に含有させる本発明の微細藻類は、必要に応じて細胞壁を物理的又は化学的に破壊することができる。

【0038】
培養した本発明の微細藻類は化粧品に含有させることができ、該化粧品としては、クリーム状でも、乳液状でもよく、また入浴剤でもよい。かかる化粧品に含有させる本発明の微細藻類は、必要に応じて細胞壁を物理的又は化学的に破壊することができる。
【実施例1】
【0039】
(微細藻類の探索)
山口県内の瀬戸内海及び日本海沿岸(合計6箇所)より波打ち際の海水を採集した。採水した海水1Lを0.2μmミリポアフィルターでろ過し、フィルター膜上に溜まった藻体細胞をスパーテルでかきとり、1mLの上記AS培養液に懸濁した。ポリスチレン製ボトル(200mL容)にこの懸濁液1mLと上記AS培養液50mLを加え、ボトル内の気相を100%COで充填して密封した。これを蛍光灯照射下8,000lux、25℃で振とう培養し、藻類の増殖有無を観察した。培養期間は4週間であった。なお、ポリスチレンはガス透過性を持つ素材により、無菌条件下でも徐々にCO2が透過し、培養開始時に100%であったCO2濃度は1週間後に60%、2週間後に40%、3週間後に30%、4週間後に20%まで低減していた。今回の藻類は4週間目で増殖が視認できたことからボトル内のCO2濃度が20-30%程度になった時に生育を開始したと推定される。
【実施例1】
【0040】
1ヶ月後に藻類の増殖が確認された培養ボトルの細胞懸濁液の一部を採集し、段階希釈をして96孔マイクロプレートに分注し、蛍光灯照射下8,000lux、25℃で静置培養した。なお、マイクロプレートは100%COを充填したポリスチレン製透明コンテナに入れ、水で湿らせたティッシュをプレート脇に置くことでサンプルの蒸発を防ぎつつ1ヶ月培養した。藻類の生育が見られたマイクロウェルから細胞懸濁液を回収した。このようにして得られた懸濁液を顕微鏡で観察したところ、形態学的には1種類に分離されているように見えた。また、懸濁液からDNAを抽出し、18SrDNAを分析したところ、1種類の藻類に由来する遺伝子配列シグナルが確認できた。他方、後述するPCR-DGGE法より数種類の細菌に由来する16SrDNA部分配列が確認された。このことから、分離された2サンプル(Azisu-1株及びAzisu-2株)は、単藻化はできているが、複数種の細菌種と共生していることがわかった。
【実施例2】
【0041】
(18SrDNA解析)
微細藻類の同定に際して常用される18SrDNAの解析を以下の方法で行った。上述のAzisu-1藻液及びAzisu-2藻液を新鮮な上記AS培養液(pH8.0)に接種し、蛍光灯照射下8,000lux、25℃で静置培養した。増殖液から各1mLを分取、遠心分離(15,000rpm、10min、4℃)して藻体沈殿を得た。これを1% Triton X-100を含むTE緩衝液(pH8.0)0.2mLで再懸濁し、沸騰水で10分間煮沸した。煮沸後の試料を氷水で急冷した後、クロロホルム/イソアミルアルコール混合液(24/1)0.2mLを加えて懸濁し、遠心分離(15,000rpm、10min、4℃)を行った。遠心分離で生じた水相を分取し、これをDNA抽出液とした。
【実施例2】
【0042】
PCR反応によりAzisu-1藻液及びAzisu-2藻液の18SrDNAの増幅を行った。鋳型として上述のDNA抽出液、DNAポリメラーゼにはKOD Fx Neo(東洋紡社製)を用いた。プライマーは以下のものを用いた。
18SrDNA前半:NS-1(配列番号14)/NS-4(配列番号15)
18SrDNA後半:NS-3(配列番号16)/Pico1750RV(配列番号17)
【実施例2】
【0043】
PCRの温度サイクルは98℃で10秒、61℃で30秒、68℃で60秒を45サイクルで行った。増幅したPCR産物はBigDye Direct Cycle Sequencing Kit(Thermofisher社製)を用いてシーケンスサイクル反応を行い、DNAシーケンサーで配列決定を行った。Azisu-1の18SrDNAの塩基配列を配列番号1に、Azisu-2の18SrDNAの塩基配列を配列番号2に示す。また、得られたDNA配列はBLAST解析を行うことで既知藻類種の遺伝子と相同性比較を行うことで、属名を決定した。ClustalWプログラム(DDBJ:バージョン2.1)で既知種との系統遺伝学的位置関係を解析し、系統樹を構築した。得られた系統樹を図1に示す。
【実施例2】
【0044】
また、Azisu-1株及びAzisu-2株の顕微鏡観察(×400)の結果、以下の性質を持つことがわかった。それぞれの顕微鏡写真を図2に示す。
細胞形態:球形、又は、球形に近い楕円形(完全な球形ではない)
細胞サイズ:直径2~5μm程度
運動性:認められない
【実施例2】
【0045】
これらの結果から、Azisu-1株及びAzisu-2株はピコクロラム(Picochlorum)属微細藻類であることが明らかとなった。
【実施例3】
【0046】
(16SrDNAのDGGE解析)
微細藻類の多くは細菌が共生していることが知られている。そこで、本発明の微細藻類に細菌が共生しているか否かを確認するために、上述のAzisu-1藻液又はAzisu-2藻液から得られたDNA抽出液を鋳型として用いて以下の方法によりDGGE解析を行った。
【実施例3】
【0047】
まず、2種類のプライマー(F984GC:配列番号18、R1378:配列番号19)を用いて細菌16SrDNAのV6-8領域を増幅した。The KOD Fx Neo polymerase (Toyobo社製)を酵素に用い、94℃で2分を1サイクル、その後94℃で15秒、55℃で30秒、及び68℃で30秒を34サイクルでPCR反応を行った。得られたPCR産物をa Bio-Rad Dcode mutation detection system(Hercules社製)で電気泳動し、菌種ごとに16SrDNA増幅断片を分離した。ゲルは6% polyacrylamide gelsを用い、変性剤の濃度勾配は50-70% 50V定電圧及び58℃定温で18時間泳動した。ゲルはSYBR Green(Life Technologies社製)で16SrDNA増幅断片を染色し、断片を含むゲル片を個別に切り取って回収した。回収したゲル片を4日間TEバッファに浸して断片を浸出させ、これを鋳型に再度PCRを行った。この時は次の2種類のプライマー(F984:配列番号20、R1378:配列番号19)を用いた。得られた増幅断片はGeneJET PCR Purification Kit (Thermo Fisher Scientific社製)で精製した後、DNAシーケンサーで分析した。DNAシークエンスはGenBank、EMBL、及びDDBJ databases とthe BLAST algorithmで系統解析した。PCR産物の電気泳動後の写真を図3に示す。
【実施例3】
【0048】
図3の結果より、Azisu-1株には9種類、Azisu-2株には4種の細菌が共生していることが明らかとなった。また、その後のDNAシークエンス解析により、Azisu-1株に共生する9種の細菌は、16SrDNAにそれぞれ配列番号3~10、13に示す塩基配列(図3中、バンド1~8、11)を含み、Azisu-2株に共生する4種の細菌は、16SrDNAにそれぞれ配列番号10~13に示す塩基配列(図3中、バンド8~11)を含むことが明らかとなった。さらに、BLAST解析により、配列番号3、8、9に示す塩基配列はproteobacteria(図3中、バンド1、6、7)、配列番号4に示す塩基配列はLabrenzia sp.(図3中、バンド2)、配列番号5に示す塩基配列はalpha-proteobacteria(図3中、バンド3)、配列番号10、12に示す塩基配列はgamma-proteobacteria(図3中、バンド8、10)、配列番号13に示す塩基配列はDyella sp. (図3中、バンド11)の16SrDNAの部分配列であることが明らかとなった。
【実施例4】
【0049】
(細胞増殖解析)
上記AS培養液(pH8)をガラス製ボトル(CO2非透過)に加えて、Azisu-1株又はAzisu-2株を細胞密度(cells/mL)が1×10となるように加えて、0.03%(空気)、2%、20%、40%、又は70%のCO2を含有するガスの雰囲気下で蛍光灯照射下8,000lux、25℃で3週間ほど静置培養した。培養開始から1、2、3週間後の細胞密度(cells/mL)を調べた結果を図4に示す。
【実施例4】
【0050】
図4に示すように、Azisu-1株又はAzisu-2株は2%、20%、又は40%のCO2を含有するガスの雰囲気下では、0.03%のCO2を含有するガスの雰囲気下で培養した場合と比較して細胞密度が飛躍的に増加していた。具体的には、Azisu-1株においては、1週間後では、0.03%の場合に1.7倍であるのに対し、2%の場合に26倍、20%の場合に115倍、40%の場合に45倍、2週間後では、0.03%の場合に1.8倍であるのに対し、2%の場合に60倍、20%の場合に175倍、40%の場合に878倍、3週間後では、0.03%の場合に1.3倍であるのに対し、2%の場合に20倍、20%の場合に68倍、40%の場合に483倍であった。Azisu-2株においては、1週間後では、0.03%の場合に7倍であるのに対し、2%の場合に60倍、20%の場合に178倍、40%の場合に29倍、2週間後では、0.03%の場合に7倍であるのに対し、2%の場合に89倍、20%の場合に220倍、40%の場合に615倍、3週間後では、0.03%の場合に1.9倍であるのに対し、2%の場合に9.5倍、20%の場合に49倍、40%の場合に478倍であった。
【実施例4】
【0051】
上記結果から、本発明の微細藻類は高濃度のCO2を含有するガスの雰囲気下で極めて増殖能力が高いことが明らかとなった。換言すれば、本発明の微細藻類は、培養する培地上に40%の二酸化炭素を含有するガスを供給して1週間、2週間、又は3週間培養した場合に、培養前と比較して培地中の細胞密度が顕著に向上することが明らかとなった。微細藻類は5%程度以上のCO2を含有するガスの雰囲気下では、pHの低下等により増殖が抑制されることが知られており、そのため高濃度のCO2を供給する際には空気等で5%以下に希釈するなどの非効率な作業が必要とされていたが、本発明の微細藻類は上記のように高濃度のCO2を含有するガスの雰囲気下で極めて増殖能力が高いことから、高濃度のCO2を含有するガスをそのまま供給することが可能となる。
【実施例4】
【0052】
なお、従来の高濃度CO2での生育できる微細藻類というのは、単に2~5%のCO2環境下でも生育できる微細藻類を意味することが多かったが、本発明の微細藻類は、20%や40%、特に2~3週間培養した場合の40%のCO2を含有するガスの雰囲気下では、2%のCO2を含有するガスの雰囲気下で培養した場合と比較して増殖能力が同等どころか、むしろ飛躍的に高まっており、単に高濃度CO2に耐性のある微細藻類というより、高濃度CO2、特に20~40%のCO2を含有するガスの雰囲気下をより好む藻類ということができる。
【実施例4】
【0053】
また、通常、特定の微細藻類を培養する際に、野生微細藻類等の他の微細藻類や菌類等の雑菌の増殖抑制が必要となる。しかしながら、本発明の微細藻類は、他の上記雑菌の増殖が極めて困難な5%以上のCO2を含有するガスの雰囲気下でも生育可能であることから、5%以上のCO2を含有するガスの雰囲気下では、厳密な雑菌防除が不要となり、雑菌防除に必要な設備や薬剤が不要となるだけでなく、屋外での培養も可能となる。
【実施例5】
【0054】
(乾燥菌体の成分解析)
本発明の微細藻類は単にCO2だけでなく、培養した微細藻類又はその微細藻類から抽出した成分を飼料、食品、化粧品等への応用が期待される。そこで、本発明の微細藻類のアミノ酸、ビタミン、アスタキサンチン含有量を以下の方法で調べた。
【実施例5】
【0055】
<アミノ酸解析>
上記AS培養液(pH8)中、10%のCO2を含有するガスの雰囲気下でAzisu-1株又はAzisu-2株を蛍光灯照射下8,000lux、25℃で2週間静置培養した後、6,000rpm、10分で遠心分離し、上澄みを除去したものを-50℃で凍結乾燥してそれぞれの凍結乾燥菌体を得た。得られた凍結乾燥藻体30mgを500μlのMilliQ水に懸濁し、これに0.5mmガラスビースと0.1mmジルコニアビースを50mgずつ加え、Mini Bead Beater-8細胞破砕装置(Biospec社製)で30秒間細胞破砕処理をした。生じた細胞破砕液を微量遠心機(14,500 rpm, 4℃, for 5 min)にかけて上清液を回収し、これを凍結乾燥した。乾固物20mgを2mLの6N HClに溶解して145℃で4時間、窒素雰囲気下で加熱し、乾固物中のタンパク質をアミノ酸まで加水分解した。加水分解物はJLC-500V アミノ酸分析器 (日本電子社製)で解析し、アミノ酸含量を算出した。結果を図5に示す。図5中、Azisu-1株又はAzisu-2株については上記方法で解析したアミノ酸含量を示す。また、図5中、他の微細藻類のアミノ酸含量の参考として、Chlorella vulgaris株は次の文献(I. Maruyama et al., Hydrobiologia 358 (1997) 133—138)、Scenedesmus obliquus株は次の文献(E.W. Becker, Biotechnol Adv 25 (2007) 207—210)、Spirulina platensis株は上記E.W. Beckerの文献及び次の文献(N.S. Parmi et al., Front Energy Res 3 (2015) 1-9)、Tetraselmis suecica、Isochrysis galbana、Dunaliella tertiolecta、Nannochloropsis oculata、及びPavlova luteri s株は次の文献(M.R. Brown, J Exp Marine Biol Ecol 145 (1991) 79—99)に記載された、菌体に含まれるアミノ酸含量を記載した。
【実施例5】
【0056】
<ビタミン解析>
上記アミノ酸解析と同様にAzisu-1株又はAzisu-2株を培養し、凍結乾燥体を得て、ガラスビースとジルコニアビースを用いて細胞破砕処理をし、細胞破砕液を微量遠心機にかけて上清液を回収し、これを凍結乾燥した。乾固物を1mLの50mM KHPOに溶解し、Luna 5 μm C18 column (Phenomenex社製)を備えたHPLC system(Shimadzu社製)で濃度測定をし、ビタミン含量を算出した。
【実施例5】
【0057】
<カロチノイド解析>
上記アミノ酸解析と同様にAzisu-1株又はAzisu-2株を培養し、凍結乾燥体を得た。次に、凍結乾燥藻体30mgを500μL溶剤(acetone/hexane, 35/65 vol%)に懸濁し、これに0.5mmガラスビースと0.1mmジルコニアビースを50mgずつ加え、Mini Bead Beater-8細胞破砕装置(Biospec社製)で30秒間細胞破砕処理をした。生じた細胞破砕液を微量遠心機(14,500 rpm, 4℃, for 5 min)にかけて上清液を回収し、これを凍結乾燥した。乾固物を1mLの50mM KHPOに溶解し、Inertsil ODS-3V(GL Sciences社製)を備えたHPLC system(Shimadzu社製)で濃度測定をしてカロチノイド(βカロチン、アスタキサンチン)含量を算出した。上述のビタミン解析結果及びカロチノイド解析の結果を図6に示す。図6中、Azisu-1株又はAzisu-2株については上記方法で解析したビタミン、βカロチン、又はアスタキサンチン含量を示す。また、図6中、他の微細藻類のビタミン、βカロチン、又はアスタキサンチン含量の参考として、Chlorella vulgaris株は次の文献(L. Gouveia et al., Bioresource Technol 57 (1996) 157—163, Y. Panahi et al., Nutr Diet 69 (2012) 13—19)、Scenedesmus obliquus株は次の文献(J. Burczyk et al., Planta 151 (1981) 247—250, E.W. Becker et al., Microalgae: biotechnology and microbiology, pp. 177—195., Cambridge University Press, New York (1984), R. Patnaik et al., Algal Res 12 (2015) 328—336)、Spirulina platensis株は次の文献(上記E.W. Beckerらの文献、M. Olaizola et al., J Appl Phycol 2 (1990) 97—104)、Tetraselmis suecica株は次の文献(S. Aaronson et al., Arch Microbiol 112 (1977) 57—59, J. Fabregas et al., J Ind Microbiol 5 (1990) 259—264)、Isochrysis galbana株は次の文献(上記J. Fabregasらの文献、R. Berger et al., Biochem Syst Ecol 5 (1977) 71—75)、Dunaliella tertiolecta株は次の文献(上記J. Fabregasらの文献、上記I. Maruyamaらの文献)、Nannochloropsis oculata株は次の文献(上記I. Maruyamaらの文献、L.P.Jr. Goh et al., Malays J Nutr 15 (2009) 77—86)、Pavlova pinguis株は次の文献(M.R. Brown et al., J Appl Phycol 11 (1999) 247—255)、Haematococcus pluvialisは次の文献(M. Kobayashi et al., J Ferment Bioeng 71 (1991) 335—339, R.T. Lorenz et al., Naturose Technical Bull 060 (1999))に記載された、菌体に含まれるビタミン、βカロチノイド、又はアスタキサンチン含量を記載した。
【実施例5】
【0058】
図5、6の結果より、本発明の微細藻類は、γ-アミノ酪酸(GABA)、プロリン、及びやヒトを含む動物の必須アミノ酸であるバリン(Val)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、リシン(Lys)や、ビタミンB1、B3、B6、B12、C等のビタミンやアスタキサンチンを多く含有することが明らかとなった。したがって、本発明の微細藻類は健康食品の主成分、天然由来の食品添加物、化粧品成分、家畜・養殖魚の飼料として有用であることが明らかとなった。
【実施例6】
【0059】
(CO2固定化量)
培地1LあたりのCO2固定化量は、乾燥物の中での炭素の割合を50%、これにCO2の分子量44を考慮すると、以下の式で算出することが可能である。
CO2固定化量(mg/L)=乾燥物(mg/L)/2×44/12
【実施例6】
【0060】
本発明のAzisu-1株又はAzisu-2株を上記AS培養液10L(pH8)中、10%のCO2を含有するガスの雰囲気下で、蛍光灯照射下8,000lux、25℃で2週間静置培養した後、6,000rpm、10分で遠心分離し、上澄みを除去したものを-50℃で乾燥した。その結果、Azisu-1株、Azisu-2株についてそれぞれ33mg/Lの乾燥菌体を得た。得られた乾燥藻体を上記CO2固定化量の算出方法に基づいて計算すると、Azisu-1株、Azisu-2株についてそれぞれ60.5mg/LのCO2が固定化されたこととなる。したがって、本発明の微細藻類は火力発電所や製鉄所のような高濃度CO2を含有するガスのCO2を固定化してCO2排出量の低減や資源化に応用できることが明らかとなった。
【実施例7】
【0061】
(共生細菌の死滅によるAzisu-1株又はAzisu-2株の生育への影響)
共生細菌の影響を調べるため、抗生物質によって処理した場合の生育への影響を調べた。寒天シャーレに100μg/mLでアンピシリンあるいはクロラムフェニコールを添加してAzisu-1株又はAzisu-2株の単離を試みた。その結果、細菌コロニーは生えなかったが、Azisu-1株又はAzisu-2株も生えなくなった。したがって、本発明のAzisu-1株又はAzisu-2株の生育において、細菌が共生していることが好ましいことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の微細藻類は、産業ガスに含まれるCOの固定化分野、及び産業ガスに含まれるCOを炭素源としたアミノ酸やビタミン類の生産分野で利用可能である。生産されたアミノ酸やビタミンは健康食品、化粧品、家畜・養殖魚の飼料などに応用が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5