TOP > 国内特許検索 > 電荷生成装置 > 明細書

明細書 :電荷生成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-102381 (P2020-102381A)
公開日 令和2年7月2日(2020.7.2)
発明の名称または考案の名称 電荷生成装置
国際特許分類 H01M  14/00        (2006.01)
FI H01M 14/00 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2018-240273 (P2018-240273)
出願日 平成30年12月21日(2018.12.21)
発明者または考案者 【氏名】杉村 明彦
出願人 【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098305、【弁理士】、【氏名又は名称】福島 祥人
【識別番号】100108523、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 雅博
【識別番号】100187931、【弁理士】、【氏名又は名称】澤村 英幸
審査請求 未請求
テーマコード 5H032
Fターム 5H032EE20
要約 【課題】新規な電荷生成装置を提供する。
【解決手段】電荷生成装置1は、電荷生成層30、電界印加用の電極層12、電界印加用の電極層22、電荷取り出し用の電極層14および電荷取り出し用の電極層24を備える。電荷生成層30は、サーモトロピック液晶性を有する糖脂質系材料により形成される。電荷生成層30の一面上に電流取り出し用の電極層14、絶縁層13および電界印加用の電極層12が順に配置される。電荷生成層30の他面上に電荷取り出し用の電極層24、絶縁層23および電界印加用の電極層22が順に配置される。電界印加用の電極層12と電界印加用の電極層22との間に高電界が印加される。電荷取り出し用の電極層14および電極層24を通して生成された電荷が取り出される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
サーモトロピック液晶性を有する糖脂質系材料により形成された電荷生成層と、
前記電荷生成層に電界を印加するための第1および第2の電極と、
前記電荷生成層において生成された電荷を取り出すための第3および第4の電極とを備えた、電荷生成装置。
【請求項2】
前記糖脂質系材料は、鎖状の基を有するグルコシドを含む、請求項1記載の電荷生成装置。
【請求項3】
前記糖脂質系材料は、アルキルグルコシドを含む、請求項1または2記載の電荷生成装置。
【請求項4】
前記糖脂質系材料は、オクチル-β-D-グルコシドまたはドデシル-β-D-グルコシドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電荷生成装置。
【請求項5】
前記電荷生成層は、互いに反対側の第1および第2の面を有し、
前記第1の電極は第1の電極層を含み、
前記第2の電極は第2の電極層を含み、
前記第3の電極は第3の電極層を含み、
前記第4の電極は第4の電極層を含み、
前記電荷生成層の前記第1の面上に前記第3の電極層および前記第1の電極層が順に配置され、前記第3の電極層と前記第1の電極層との間に第1の絶縁層が配置され、
前記電荷生成層の前記第2の面上に前記第4の電極層および前記第2の電極層が順に配置され、前記第4の電極層と前記第2の電極層との間に第2の絶縁層が配置された、請求項1~4のいずれか一項に記載の電荷生成装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷を生成する電荷生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の偏光板の材料として、溶液中でリオトロピック液晶相を示す化合物を用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。また、液晶表示装置の位相差基板の材料として、サーモトロピック液晶化合物を用いることが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2011-191461号公報
【特許文献2】特開2011-232537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糖脂質系材料は、親水性の糖ヘッドグループと疎水性のアルキル鎖とからなり、両親媒性を有している。このため、糖脂質の分子は、水溶液中でリオトロピック液晶性を示し、環境に優しい材料として、表面活性剤または製薬等の分野で幅広く応用されている。一方、一部の糖脂質系材料は、分子間親和力が比較的強いため、無水状態でサーモトロピック液晶性を併せ持っている。この無水液晶は、電気的、磁気的および光学的異方性を有し、新規な電子材料としての応用の可能性を有している。
【0005】
しかしながら、無水状態でサーモトロピック液晶性を有する糖脂質系材料の相構造は多様であり、無水糖脂質系材料の作製の困難性のため、基礎および応用研究例は少ない。本発明者は、一部の糖脂質系材料が特定の条件下で新規な現象を示すことを見出し、その知見に基づいて糖脂質系材料を用いて新規な電荷生成装置を開発することに注力した。
【0006】
本発明の目的は、新規な電荷生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電荷生成装置は、サーモトロピック液晶性を有する糖脂質系材料により形成された電荷生成層と、電荷生成層に電界を印加するための第1および第2の電極と、電荷生成層において生成された電荷を取り出すための第3および第4の電極とを備える。
【0008】
その電荷生成装置においては、第1の電極および第2の電極を通して電荷生成層に電界が印加されると、電荷生成層で電子雪崩崩壊現象により電荷が生成される。生成された電荷は、第3の電極および第4の電極を通して取り出される。この場合、電荷生成層には、電界の印加による電流がほとんど流れない。したがって、小さなエネルギーで負荷に電流を供給することが可能となる。
【0009】
糖脂質系材料は、鎖状の基を有するグルコシドを含んでもよい。糖脂質系材料は、アルキルグルコシドを含んでもよい。糖脂質系材料は、オクチル-β-D-グルコシドまたはドデシル-β-D-グルコシドを含んでもよい。
【0010】
電荷生成層は、互いに反対側の第1および第2の面を有し、第1の電極は第1の電極層を含み、第2の電極は第2の電極層を含み、第3の電極は第3の電極層を含み、第4の電極は第4の電極層を含み、電荷生成層の第1の面上に第3の電極層および第1の電極層が順に配置され、第3の電極層と第1の電極層との間に第1の絶縁層が配置され、電荷生成層の第2の面上に第4の電極層および第2の電極層が順に配置され、第4の電極層と第2の電極層との間に第2の絶縁層が配置されてもよい。
【0011】
この場合、第1の電極層と第2の電極層との間に電流は流れない。したがって、極めて小さなエネルギーで負荷に電流を供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新規な電荷生成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電荷生成装置の構成を示す模式的断面図である。
【図2】(a)はオクチル-β-D-グルコシドの化学式を示す図であり、(b)はドデシル-β-D-グルコシドの化学式を示す図である。
【図3】第1の電極構造体、電荷生成層および第2の電極構造体の詳細な構成および配置の一例を示す模式的断面図である。
【図4】図3の第1の電極構造体の模式的平面図である。
【図5】図3の電荷生成装置の模式的平面図である。
【図6】図1の電荷生成装置における電荷生成の原理を説明するための説明図である。
【図7】実証実験に用いた測定用セルの模式的断面図である。
【図8】測定用セルへの電圧印加に伴う過渡電流の時間変化の測定結果を示す図である。
【図9】印加された電界強度と電流との関係の測定結果を示す図である。
【図10】電荷生成層の厚さと過渡電流が発生する電界強度のしきい値との関係の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係る電荷生成装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。

【0015】
(1)電荷生成装置の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る電荷生成装置の構成を示す模式的断面図である。図1に示される電荷生成装置1は、第1の電極構造体10、第2の電極構造体20および電荷生成層30を含む。

【0016】
第1の電極構造体10は、ガラス基板11、電界印加用の電極層12、絶縁層13および電荷取り出し用の電極層14を含む。ガラス基板11上に、電極層12、絶縁層13および電極層14が順に形成されている。第2の電極構造体20は、ガラス基板21、電界印加用の電極層22、絶縁層23および電荷取り出し用の電極層24を含む。ガラス基板21上に、電極層22、絶縁層23および電極層24が順に形成されている。電極層12,14,22,24は、例えばITO(酸化インジウムスズ)により形成される。絶縁層13,23は、例えばSiO(二酸化ケイ素)により形成される。

【0017】
電荷生成層30は、サーモトロピック液晶性を有する糖脂質系材料により形成される。サーモトロピック液晶性を有する糖脂質系材料は、例えば、鎖状の基を有するグルコシド(glucoside)である。鎖状の基は、例えばアルキル基(alkyl group)である。この場合、鎖状の基を有するグルコシドは、アルキルグルコシド(alkyl glucoside)である。アルキルグルコシドの例としては、オクチル-β-D-グルコシド(Octyl-β-D-glucoside)またはドデシル-β-D-グルコシド(Dodecyl-β-D-glucoside)が挙げられる。

【0018】
図2(a)はオクチル-β-D-グルコシドの化学式を示す図である。図2(b)はドデシル-β-D-グルコシドの化学式を示す図である。

【0019】
図1に示すように、電荷生成層30の一面上に第1の電極構造体10の電極層14が形成される。電荷生成層30の他面上に第2の電極構造体20の電極層24が形成されている。

【0020】
電極層12と電極層22との間に抵抗RLを介して交流電源50が接続される。交流電源50は、電極層12と電極層22との間に交流電圧V(t)=Asinωtを印加する。ここで、tは時間、Aは交流電圧の振幅、ωは角周波数である。電極層12と電極層14との間には絶縁層13が設けられ、電極層22と電極層24との間には絶縁層23が設けられている。そのため、電極層12と電極層22との間には電流が流れない。電荷生成層30には、高電界が印加される。

【0021】
電極層14と電極層24との間に負荷Ldが接続される。電荷生成層30において後述する現象により電荷が生成される。それにより、生成された電荷が電極層14および電極層24を通して負荷Ldに流れる。

【0022】
図3は第1の電極構造体10、電荷生成層30および第2の電極構造体20の詳細な構成および配置の一例を示す模式的断面図である。図4は図3の第1の電極構造体10の模式的平面図である。図5は図3の電荷生成装置1の模式的平面図である。

【0023】
図3の例では、絶縁層13,23の長さL2は、ガラス基板11,21および電極層12,22の長さL1よりも短く、電極層14,24の長さは、絶縁層13,23の長さL2よりも短い。ガラス基板11,21および電極層12,22の長さL1は、それぞれ例えば22mmであり、絶縁層13,23の長さL2は、それぞれ例えば19mmであり、電極層14,24の長さL3は、それぞれ例えば14mmであるが、長さL1,L2,L3はこれらの値に限定されない。第1の電極構造体10および第2の電極構造体20の幅D(図4)は、例えば12mmであるが、幅Dはこの値に限定されない。

【0024】
電荷生成層30の厚さd(電極層14,24間の間隔)は、例えば15μmであるが、厚さdはこの値に限定されない。電極層12,14,22,24の厚さは、それぞれ例えば40nmであるが、電極層12,14,22,24の厚さはこれらの値に限定されない。電極層12,14,22,24は、例えばスパッタ法により形成される。絶縁層13,23の厚さはそれぞれ例えば200nmであるが、絶縁層13,23の厚さはこの値に限定されない。絶縁層13,23は、例えば真空蒸着により形成される。

【0025】
図4においては、絶縁層13の図示が省略されている。電極層12は、長方形の一対の端部12a,12b、矩形の中央部12cおよび帯状の一対の連結部12d,12eを有する。中央部12cの対向する2辺と端部12a,12bの内側の辺とが連結部12d,12eにより連結されている。中央部12cと連結部12d,12eの一部が絶縁層13(図示せず)を介して電極層14と重なる。電極層12の実効電極面積は、例えば50mmである。

【0026】
電極層12の露出する部分(端部12a)に引き出し線B1が接続される。電極層14の露出する部分に引き出し線T1が接続される。なお、第2の電極構造体20の構成は、第1の電極構造体10の構成と同様である。

【0027】
図5において、第2の電極構造体20の電極層22(図3)の露出する部分に引き出し線B2が接続され、電極層24(図3)の露出する部分に引き出し線T2が接続される。引き出し線B1,B2間に図1の交流電源50が接続され、引き出し線T1,T2間に負荷Ldが接続される。

【0028】
(2)電荷生成の原理
図6は図1の電荷生成装置1における電荷生成の原理を説明するための説明図である。図6の例における糖脂質系材料は、糖ヘッドHおよびチェーン(鎖)Cにより構成される。電極層12,22間の電荷生成層30には、高電界が印加される。高電界の電界強度Eは、例えば、2MV/m以上である。電荷生成層30の媒質中の自由電子が高電界により加速される。加速された電子は、糖脂質系材料の分子に衝突する。電子の衝突により糖脂質系材料の分子が衝突電離現象によりイオン化され、糖脂質系材料から電子が生成される。生成された電子と糖脂質系材料との衝突が繰り返されることにより、多数の電子が生成され、電子雪崩崩壊が生じる。電荷生成層30中の糖脂質系材料の全ての電子が電極層14,24を通して外部回路(負荷)に流出したときに衝突電離が終了する。

【0029】
(3)電荷生成の実証実験
本発明者は、図2(a)のオクチル-β-D-グルコシドおよび図2(b)のドデシル-β-D-グルコシドを用いて2種類の測定用セルを作製し、電荷生成の実証実験を行った。

【0030】
オクチル-β-D-グルコシド(以下、βOGと呼ぶ。)およびドデシル-β-D-グルコシド(以下、βDG)は、温度上昇に伴い、固相・スメクチックA(SmA)液晶相および等方性相へと相転移する。図7は実証実験に用いた測定用セルの模式的断面図である。発明者は、以下の方法で図7の測定用セル100を作製した。

【0031】
βOGおよびβDGを等方性相になるまで加熱した。2枚のガラス基板101,201上に透明電極である(ITO)を塗布することにより電極層102,202を形成した。電極層102,202間にβOGまたはβDGを浸透圧を用いて封入することにより電極層102,202間に電荷生成層300を形成した。このようにして、電荷生成層300の材料としてβOGおよびβDGをそれぞれ用いた2種類の測定用セル100を作製した。

【0032】
電極層102,202間に抵抗RLを介して交流電源500を接続し、電極層102,202間にサイン波形でかつ周波数5Hz~10kHzの交流電圧を印加した。また、交流電源500の代わりに直流電源を接続し、電極層102,202間に直流電圧を印加した。この状態で、電荷生成層300に流れる電流を測定した。

【0033】
図8は測定用セル100への電圧印加に伴う過渡電流の時間変化の測定結果を示す図である。図8の横軸は時間(秒)、縦軸は電流(mA)である。電荷生成層30の材料はβOGであり、電荷生成層30の厚さdは50μmである。電極実効面積Sは50mmである。温度T=85℃で電極層102,202間に実効電圧VRMS=100Vを印加した。このときの電界強度は2MV/mである。印加した電圧の周波数を0(DC:直流)、5Hz、10Hz、50Hz、100Hz、500Hz、1kHz、3kHzおよび10kHzとした場合の過渡電流の時間的変化を測定した。βOGは、85℃ではスメクチックA相である。周波数10kHzの場合には、約20mAの過渡電流ピークが発生した。

【0034】
85℃でのβOGの導電率σは、周波数100Hz以上10kHz以下の範囲内で6×10-7~5×10-6Ω-1-1の範囲内にあるため、通常の定常電流Iは約0.2mAである。図7の測定用セル100を用いた実証実験では、定常電流Iの100倍程度の過渡電流が発生していることがわかる。この過渡電流は、非可逆的であり、再度の電圧印加では発生しない。また、過渡電流は、βOGの等方性相でも発生しない。

【0035】
過渡電流の発生原因として、(a)電極層102,202から電荷生成層300への電荷の注入、(b)電荷生成層300の温度の増加(ジュール熱)による導電率の増加、(c)トンネル効果、(d)電気的な絶縁破壊、および(e)電子雪崩崩壊等が考えられる。

【0036】
図9は印加された電界強度と電流との関係の測定結果を示す図である。電荷生成層300の厚さdは10μmである。印加電圧を0Vから100Vまで変化させた場合、電界強度は0MV/mから10MV/mまで変化する。印加電圧の掃引速度は20mV/sである。βOGは、110℃では、液晶相と等方性相とが混在した状態であり、85℃では、液晶相の状態である。

【0037】
図9には、周波数1kHzで110℃の測定結果が細い実線で示され、周波数10kHzで85℃の測定結果が太い実線で示され、周波数1kHzで85℃の測定結果が一点鎖線で示されている。また、導電率σが7×10-6Ω-1-1の場合および導電率σが1.6×10-6Ω-1-1の場合の電界強度と電流とのオーミックな関係が点線で示されている。

【0038】
図9の測定結果より、例えば、周波数1kHzで温度110℃の場合には、電界強度2MV/m近傍までは、電流はオーミックな関係に沿って増加している。また、電界強度9MV/m近傍で電気的な絶縁破壊が発生している。これらの結果より、過渡電流の発生原因として上記の(a)~(d)は考えられない。

【0039】
図10は電荷生成層300の厚さdと過渡電流が発生する電界強度のしきい値ETHとの関係の測定結果を示す図である。電荷生成層300の厚さdが20μm以上の場合、電界強度のしきい値ETHはほぼ一定である。一方、電荷生成層300の厚さdが20μm未満の場合、電界強度のしきい値ETHは厚さdの減少に伴って急激に増加する。このような性質は、絶縁体に見られる電子雪崩崩壊現象(アバランシェ崩壊現象)に特徴的な性質である。したがって、βOG中で高電界により加速された自由電子がβOGの分子との衝突を繰り返し、βOGの構成分子を破壊しながら電荷の生成を繰り返していると考えられる。

【0040】
電子雪崩崩壊現象は、電荷生成層300中で電子の走行距離が長いほど起こりやすい。電極層102,202間に電界が印加された場合、自由電子は電荷生成層300の厚さ方向に移動する。そのため、電荷生成層300の厚さdが大きいほど電子の走行距離が長くなる。したがって、図10に示されるように、電荷生成層300の厚さdがある値よりも小さいと、過渡電流が発生するための電界強度のしきい値ETHが増加する。

【0041】
図9の測定結果では、周波数1kHzで温度110℃の場合に、電界強度の範囲A(約2MV/m~約7MV/m)で電子雪崩崩壊現象が発生していると考えられる。また、周波数1kHzで温度85℃の場合に、電界強度の範囲B(約4MV/m~約9MV/m)で電子雪崩崩壊現象が発生していると考えられる。

【0042】
また、印加される電界の周波数が高いほど、自由電子が一方向に移動する時間が短くなるため、電子の走行距離が短くなる。図9の測定結果では、周波数が1kHzの場合に電子雪崩崩壊現象が発生しているが、周波数が10kHzの場合には電子雪崩崩壊現象が発生していない。

【0043】
なお、βOGの約10倍の抵抗率σを有するβDGを用いた場合にも、同様の過渡電流が発生する。

【0044】
これらの測定結果からβOGまたはβDGの厚さ、印加する電界強度および電界の周波数を適切な値に設定することにより電荷の生成が可能であることが実証された。

【0045】
(4)実施の形態の効果
本実施の形態に係る電荷生成装置1においては、電極層12,22間に高電界が印加されると、電荷生成層30で電子雪崩崩壊現象により電荷が生成される。生成された電荷は、電極層14,24から外部回路に取り出される。この場合、電極層12と電極層14との間には絶縁層13が配置され、電極層22と電極層24との間には絶縁層23が配置されているので、電極層12,22間に交流電源50による電流は流れない。そのため、高電界の印加のためにほとんど電力が消費されない。したがって、極めて小さなエネルギーで負荷に電流を供給することが可能となる。

【0046】
電荷生成装置1により生成される電子は真電荷であるため、電荷生成装置1は、例えばバイオ電池として利用することができる。

【0047】
(5)他の実施の形態の形態
上記実施の形態では、電荷生成層30の材料として、オクチル-β-D-グルコシドまたはドデシル-β-D-グルコシドが用いられているが、電荷生成層30の材料は、これらに限定されず、サーモトロピック液晶性を有する他の糖脂質系材料が用いられてもよい。例えば、電荷生成層30の材料として、オクチル基およびドデシル基以外のアルキル基を有するグルコシドが用いられてもよい。あるいは、アルキル基以外の鎖状の基を有するグルコシドが用いられてもよい。さらに、グルコシド以外のサーモトロピック液晶性を有する他の糖脂質系材料が用いられてもよい。

【0048】
電荷生成層30に高電界を印加するための電極の構成は上記実施の形態の構成に限定されず、任意の構成を用いることができる。また、電荷生成層30において生成された電荷を取り出すための電極の構成は上記実施の形態の構成に限定されず、任意の構成を用いることができる。

【0049】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、電極層12,22が第1および第2の電極の例または第1および第2の電極層の例であり、電極層14,24が第3および第4の電極の例または第3および第4の電極層の例であり、絶縁層13,23が第1および第2の絶縁層の例である。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1…電荷生成装置,10…第1の電極構造体,11,21,101,201…ガラス基板,12,14,22,24…電極層,12a,12b…端部,12c…中央部,12d,12e…連結部,13,23,T1,T2…絶縁層,20…第2の電極構造体,30,300…電荷生成層,50…交流電源,100…測定用セル,102,202…電極層,500…交流電源,C…チェーン(鎖),D…幅,ETH…しきい値,H…糖ヘッド,Ld…負荷,RL…抵抗,d…厚さ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9