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明細書 :中性子検出器等の信号のみに基づいて核分裂性物質の組成、未臨界度、遅発中性子割合、中性子世代時間、即発中性子寿命を測定する方法。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-159669 (P2018-159669A)
公開日 平成30年10月11日(2018.10.11)
発明の名称または考案の名称 中性子検出器等の信号のみに基づいて核分裂性物質の組成、未臨界度、遅発中性子割合、中性子世代時間、即発中性子寿命を測定する方法。
国際特許分類 G21C  17/00        (2006.01)
G21C  17/108       (2006.01)
FI G21C 17/00 Y
G21C 17/10 B
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-057974 (P2017-057974)
出願日 平成29年3月23日(2017.3.23)
発明者または考案者 【氏名】山根 祐一
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110001922、【氏名又は名称】特許業務法人 日峯国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G075
Fターム 2G075BA12
2G075FA19
2G075FB15
要約 【課題】例えば事故後の原子炉のように、核燃料体系の内部の構造や全体の形状の情報が得られない状況であっても、反応度を適切に測定することができる方法及びその方法を用いた装置を提供すること。
【解決手段】中性子検出器によって検出される、核燃料内の時刻tにおける中性子数をn(t)、反応度等の変動後に安定した状態となった時の中性子数をn、未臨界度の関数をαy、中性子数n(t)の重み付き時間微分n(t)をq(t)としたとき、
n(t) = αq(t) + n の式が成り立つこと、及びαyqとn - n(中性子検出信号からノイズ成分を除いた計数率であるn とその安定時の値n の差)の比が時間によらず1になることを利用して、遅発中性子比率と遅発中性子崩壊定数を定める。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
中性子検出器の検出信号もしくはこれを校正することによって得られる、核燃料内の時刻tにおける中性子数をn(t)、反応度等の変動後に安定した状態となった時の検出信号もしくはこれを校正することによって得られる中性子数をn、未臨界度の関数をαy、検出信号もしくはこれを校正することによって得られる中性子数n(t)の重み付き時間微分n(t)をq(t)としたとき、
n(t) = αq(t) + n の式が成り立つことを利用して、αyqとn - n(中性子検出信号からノイズ成分を除いた計数率であるn とその安定時の値n の差)の比が測定期間中のいずれの時刻においても最も1に近くなるように、遅発中性子比率と遅発中性子崩壊定数を定める方法。
【請求項2】
請求項1において、中性子検出器の検出信号を基に求められる、時系列データ(q, n)が、直線n = αyq + n 上にあることを利用して、未臨界度ρ$とn(t)の安定値n を求める方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、n = exp(f (t))を用いて(n, n)の組を求める方法。
ここで、f(t) はn(t)が検出器信号を再現するように定めたtの関数である。
【請求項4】
請求項1又は3において、前回の測定値(未臨界度ρ0$、中性子検出器の安定値n0∞ )を用いて新たな未臨界度におけるn を推定する方法。
【請求項5】
請求項2において、a = 1/ρ0 - r/ρk、b = 1 - r, r = n0∞/nk∞とすると、ρk→ρ0のとき、a/bが未臨界度ρ0におけるβに収束することを用いて実効遅発中性子割合βを求める方法。
【請求項6】
請求項2において、Λ/β= l(-ρ)+ l/β が成り立つことを利用して、即発中性子寿命l [s]、中性子世代時間Λ[s]を求める方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば事故後の原子炉における燃料デブリなど、あらかじめ内部構造や形状が不明である未臨界状態の核燃料体系の動特性を、中性子検出器の信号のみに基づいて測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウラン235、プルトニウム239など、中性子を吸収して核分裂を生じる核分裂性物質か、核分裂性物質と構造材等の核分裂性ではない物質の混在する物質(例えば原子炉では炉心全体)を以下では核燃料体系と呼ぶ。核燃料体系について、そのうちの核分裂性物質の組成(ウラン235が100%とか、ウラン235が90%で残りがプルトニウム239といった割合)を調べる主な方法は、少量のサンプルを採取して行う化学分析が知られている。
【0003】
また、核燃料体系の未臨界度を測定する手法としては、従来、例えば稼働中の原子炉においては、未臨界度測定法の代表的なものとして、例えば(1)負のペリオド法、(2)制御棒落下法(特許文献1)、(3)補償法、(4)中性子源増倍法(特許文献2)、(5)逆動特性法(特許文献3)、(6)炉雑音解析法、(7)パルス中性子源法が知られている。
【0004】
上述の7つの従来手法の内、最初の3つの手法は、初期状態として臨界状態にしてやる必要や(負のペリオド法、制御棒落下法)、予め校正された制御棒がすでに存在する必要が(補償法)ある。また、中性子源増倍法では未臨界度が既知である基準体系を必要とする。また、逆動特性法は、動特性パラメータの精度良い推定が必要であり、臨界近傍の浅い未臨界(中性子束分布の形状が臨界時の形状と等しいとみなせる程度の未臨界)でのみ用いることができる。また、炉雑音法は、工程異常が起きる場合では溶液条件や 即発中性子寿命が時間とともに変化するために、異常と判定されるアルファ値が変動する。さらに測定システムの時間追随性が問題となる。高次モードの影響の除去が困難である。また、最後に掲げたパルス中性子源法は、一定周期のパルス中性子源を必要とする上、入射中性子に励起される中性子束分布の高次モードの影響を補正するためには、あらかじめ数値解析が必要である。
【0005】
実効遅発中性子割合の測定手法としては、252Cf中性子源法、Rossi-アルファ、Nelson 数法、改良Bennett 法、炉雑音法が知られている。これらの手法では、あらかじめ数値解析を行うために核燃料体系の内部構造に関する詳細な寸法を必要とする。252Cf中性子源法とNelson 数法では、核燃料体系が未臨界であるが臨界に近いことを前提としている。
【0006】
さらにまた、中性子世代時間、即発中性子寿命については、通常、核分裂性物質やそれを含む(原子炉で言えば)炉心全体などの内部構造に関する詳細な寸法を用いて数値解析により求められる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平8-313669号公報
【特許文献2】特開平09-178887号公報
【特許文献3】特開2016-142623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
核燃料体系内部の核分裂性物質の組成を調べるための化学分析では、対象のサンプルを採取する必要がある。また、従来の未臨界度測定手法のうち、上述のパルス中性子源法を除くいずれの方法も、動特性パラメータの解析値の精度に依存する。また、パルス中性子源法は補正用の数値解析の精度に依存する。またこれらの数値解析には、核燃料体系の内部の構造や全体の形状の情報もしくは制御棒等の反応度を必要とする。
【0009】
総じて、従来の手法では、数値解析のために核燃料体系の内部構造に関する詳細な寸法を必要とする。それ故に、未臨界度、実効遅発中性子割合、中性子世代時間、即発中性子寿命の評価結果はそれらの寸法の精度や解析に用いる計算コードの計算精度に依存する。
【0010】
本発明の目的は、広範囲の未臨界(中性子束分布の形状を限定しない未臨界)において、通常の原子炉にあっては、炉内の寸法の精度や数値計算コードの精度の影響を受けないで、核分裂性物質の組成、未臨界度、遅発中性子割合、中性子世代時間、即発中性子寿命を測定する方法を提供することにある。
【0011】
例えば事故後の原子炉のように、核燃料体系の内部の構造や全体の形状の情報が得られない状況であっても、核分裂性物質の組成、未臨界度、遅発中性子割合、中性子世代時間、即発中性子寿命を適切に測定することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、未臨界状態の核燃料体系について、内部構造や全体の形状についてあらかじめ分かっていないために予備解析等によって正確なパラメータを事前に求めることができない状況又は、予備解析由来の誤差を排除したい状況、予め構成された制御棒等が使用できない状況、事前に臨界にできない状況、初めて到達した未臨界度において測定したい状況で、正又は負の反応度の添加により臨界に近づくもしくは遠ざかる場合かつ/又は外部中性子源の出力変動があった場合に、中性子検出器等からの核分裂率に比例する信号のみに基づいて、核分裂性物質の組成、未臨界度、遅発中性子割合、中性子世代時間、即発中性子寿命を測定する方法である。
【0013】
具体的には、中性子検出器によって検出される、核燃料体系内の時刻tにおける中性子数をn(t)、未臨界度をρ(t)、中性子源強度をS(t)とすると、未臨界度と中性子源強度のどちらかもしくは両方が変動した後でその変動がほとんど停止した時(ρ(t) ≒ S(t) ≒ 0)から最終的に安定した状態になってn(t)が一定の値nとなるまでの間に、以下の式が成り立つことを用いる。
【0014】
【数1】
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ここでαyは、実効遅発中性子割合をβとすると、ドル単位の未臨界度ρ$=ρ/βにより
αy = 1/ρ$-1と表され、q(t)はn(t)の時間的変化率n(t)と以下の式で表される時間の関数μ(t)の比(n(t)の重み付き時間微分)である。
【0015】
【数2】
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【0016】
Ci(t)は、n(t)が中性子数である場合には、第i群の遅発中性子先行核の量Ci(t)の時刻tにおける時間的変化率を表す。通常は6群が用いられるが、以下の測定では群数に制限はない。λiは第i群の遅発中性子先行核の崩壊定数である。
【0017】
式1において、αyはドル単位の未臨界度ρ$のみ、nは未臨界度ρ及び中性子源強度Sの関数で、βは未臨界度ρの関数であるから、ρ及びSの時間的変化が十分に小さければ、αyとnは定数とみなせる。このとき、式1はαyを傾き、nを切片とする直線の方程式とみなすことができる。以下の測定では、このことを利用する。
【0018】
中性子源強度としては、中性子源から放出される中性子のうち、対象となる核燃料体系に到達するもののみを考慮する(実効的な中性子源強度)。
【0019】
n(t)については、中性子検出器信号(計数率)から校正定数が求められている場合にはそれを用いれば容易に得ることができる。あらかじめ校正できない場合には、中性子検出器信号を用いる。不感時間の補正など、必要かつ実施可能な補正や変換を行う。
【0020】
具体的には、本発明は、式1が成り立つことを用いた、以下の方法にある。
【0021】
(1)αyqとn-nの比の時系列データと1との差が最も小さくなるように、遅発中性子比率と遅発中性子減衰定数を定める方法。
【0022】
(2)時系列データ(q, n)が直線n(t)=αyq(t)+n上にあることを利用して、未臨界度ρ$とn(t)の安定時の値nを求める方法。
【0023】
(3)上記項目(1)または(2)において、n = exp(f (t))を用いて(n, n)の組を求める方法。
【0024】
(4)上記項目(2)において、a = 1/ρ0-1/ρk、b = 1-r、r = n0∞/nk∞とすると、ρk$→ρ0$ のとき、a/bが未臨界度ρ0におけるβに収束することを用いて実効遅発中性子割合βを求める方法。
【0025】
(5)上記項目(2)において、Λ/β=l(-ρ)+l/β が成り立つことを利用してl[s]、Λ[s]を求める方法。
【発明の効果】
【0026】
未臨界状態の核燃料について、内部構造や全体の形状についてあらかじめ分かっていないために予備解析等によって正確なパラメータを事前に求めることができない状況又は、予備解析由来の誤差を排除したい状況、予め構成された制御棒等が使用できない状況、事前に臨界にできない状況、初めて到達した未臨界度において測定したい状況で、正又は負の反応度の添加により臨界に近づくもしくは遠ざかる場合かつ/又は外部中性子源の出力変動があった場合に、中性子検出器等からの信号のみに基づいて、遅発中性子比率と遅発中性子減衰定数、ドル単位の反応度を求めることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る未臨界状態の核燃料体系の反応度測定装置の概略説明図。
【図2】検出器信号(青色マーカー)に直線をフィッティングして傾きαyと切片nの値を求めた図(フィッティングの結果はαy = -1.094、n = 6.902×10-5)。
【図3】ウラン235が100%であるような場合に、時々刻々のαyq/(n-n) の値を、遅発中性子比率と遅発中性子先行核崩壊定数の値としてウラン235の値を用いた場合(青)とプルトニウム239の値を用いた場合(赤)の比較を示した図。
【図4】反応度が添加され、未臨界度が浅くなったあとの中性子検出器信号の変化の様子を表した図。
【図5】図4の時系列データを加工して(n-n)の時系列データを作成した図。
【図6】図5の時系列データを加工して(n-n)の自然対数、ln(n-n)、 の時系列データを作成しこれに直線y=at+bをフィッティングして、係数a、bを求めた図。
【図7】図6で求めた係数a, bの値を用いてn = n + eat+bの時系列データを作成し、元の図4のデータと比較した図。
【図8】異なった反応度ρ0$, ρ1$, ρ2$,・・・に対して(1-r)をx軸、(1/ρ0$-r/ρk$)をy軸(r = n0∞/nk∞)としてプロットし、原点と最も原点に近い点を用いて傾きβを求めた図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る未臨界状態の核燃料体系の反応度測定装置の基本構成を図1に示す。反応度測定装置10は、中性子検出器等から成る検出部1、数値計算を行うためのデータを入力するための入力部2、数値計算を行う演算部3、演算部3に接続された、数値計算に必要なデータを保存する記憶部4、測定結果を外部に伝える出力部5からなる。検出部1の信号は核分裂で放出される出力の値に相当するように予め校正しておく。出力部5は、数値データを外部機器に伝送したり、結果を分かり易く画面に表示したりすることができる構成になっている。

【0029】
本発明に係る反応度測定装置10の内、検出部1を除く部分は、基本的にマイクロコンピューターで構成できる。したがって、臨界安全管理されていない容器に本発明に係る装置を据え付けることで、核燃料物質の誤移送による臨界近接を検知することもできる。

【0030】
次に、上述の反応度測定装置10の演算部3で行う、未臨界状態の核燃料体系の反応度測定方法の演算手順について説明する。

【0031】
本発明で使用する方程式は、次の考え方に基づいて一点炉動特性方程式から導出したものである。核燃料体系に対して未臨界度ρの変化や中性子源強度Sの変化といった外的擾乱が与えられたとき、それに対する応答としての中性子数nの変動は未臨界度ρと密接に結びついているはずであり、特にρとSの時間的変化率(dρ/dt及びdS/dt)が非常に小さい場合には、中性子数nの変動(nの値及びその時間変化率dn/dt)は未臨界度ρの影響を受けつつ、遅発中性子先行核の崩壊(遅発中性子先行核濃度Ci、遅発中性子先行核崩壊定数λi、遅発中性子比率βiで特徴づけられる)、により供給される中性子に支配されると考えられるので、一点炉動特性方程式にρとSの時間的変化率(dρ/dt及びdS/dt)が非常に小さい条件を適用して当該方程式を導出した。なお、本明細書では、便宜上、例えば、nの時間微分をnのように示す。また、Ciについても同様にCiのように示す。

【0032】
<(1)反応度測定方法>
検出部からの信号をnとし、その時間微分をnで表す。nより次式でμを求める。

【0033】
【数3】
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【0034】
【数4】
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【0035】
ここで、βは実効遅発中性子割合、βiは第i群の遅発中性子比率、Λは中性子世代時間、λiは第i群の遅発中性子先行核崩壊定数、Ciは第i群の遅発中性子先行核量である。 CiはCiの時間微分を表す。
nとμより次式でqを求める。

【0036】
【数5】
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データの組(q, n)を用いて自己回帰分析によりαyとn を求める。αyよりドル単位の反応度ρ$を次式で求める。

【0037】
【数6】
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【0038】
<(2)遅発中性子比率測定方法>
図3を参照する。(1)において、αyq とn - nの比を時系列データとして求める。この比が計算対象となる時間の範囲においてできる限り1に近くなるように、(βi、λi)の値を調整する。多変量回帰分析の手法を用いても良い。あらかじめ想定される核分裂性物質がある場合は、その値の組(βi、λi)を物質の種類ごとに用意し、(例えばU-235, Pu-239など)それらの混合割合に応じて(βi、λi)の内挿値をもとめ、得られた値の組(βi、λi)を適用してαyq とn - nとの比を計算する。この比が最も1に近くなったときの混合割合が、核分裂性物質の混合割合となる。

【0039】
<(3)時刻tにおける(n, n)の値の組を求める方法>
n(図4)もしくはn - nまたはn - n(図5)の時系列データの対数をとって得られたデータをn1とする(図6)。得られたn1データを時間の関数で近似し(図7)、その関数をもとに、時刻tにおける(n, n)値の組を求める。

【0040】
<(4)あらたな未臨界度においてαy とnの値を推定する方法>
(3)において、(1)を一度以上実施した後であれば、αy とnの最初の推定値を以下のように得ることができる。先に実施して得られた未臨界度ρ0 ( = ρ$0×β )と安定時中性子数n0∞を用いて得られる次の値p0を用いると、

【0041】
【数7】
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未臨界度がそれほど大きく変わらなければ、前述の式1は常に点(p0, -p0)を通るので、あらたな未臨界度ρ1におけるα1y とn1∞の最初の推定値を次のようにして得ることができる。

【0042】
【数8】
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ここで、t0は未臨界度と中性子源強度の変動が停止した直後(未臨界度はρ1)以降の任意の時刻である。

【0043】
<(4)実行遅発中性子割合βを求める方法>
上記(1)により求めた、互いに異なった未臨界度の二組以上のデータ(ρk$, nk∞)(うち実効遅発中性子割合を求めたい反応度におけるデータの組を(ρ0$, n0∞)とする)を用いて、a= 1/ρ0$ -r/ρk$ 及びb = 1 - rkを求める(ここで rk = n0∞/ nk∞ とする)。データの組(a, b)が原点に近づくにつれて比a/bが実効遅発中性子割合βに収束することを用いて、βを求める。

【0044】
以下、核燃料物質に設置された中性子検出器からの信号(中性子計数率n[数/s])を用いたデータ処理手順をさらに詳細に説明する。

【0045】
中性子検出器の信号もしくはそれを校正、加工した信号は、一定もしくは任意の時間間隔(Δt)で得られるものとし、その得られたデータ列n1、n2、n3、・・・、nj、を以下では時系列データと呼ぶ。以下ではこれらをまとめてn(t)と書く。

【0046】
ここで取り扱う物理量について説明する。
ウランなどの核分裂により生じる核分裂片のうち、一定の時定数で崩壊して中性子を放出する核種を遅発中性子先行核という。有限の大きさを持つ現実の体系で遅発中性子の中性子の全数(即発中性子と遅発中性子の和)に対する割合が実効遅発中性子割合(βであらわす)である。遅発中性子先行核は多数存在するが、通常、崩壊定数の近いものをまとめて一つの群として扱い、その濃度(単位体積当たりの数)を遅発中性子先行核濃度と呼び、Ci(r,t)であらわす。iは群の番号で、通常6個の群が用いられる。Ci(r,t)を体系全体で空間積分したものをCi(t)であらわす。これは第i群の遅発中性子先行核の時刻tにおける総量を表す。遅発中性子のうち、Ci(t)から生じたものの比率(第i群の遅発中性子比率)をbiであらわす。biは式9を満たす。第i群の遅発中性子先行核の崩壊定数をλiとする。6個の(bi、λi)の組は、核分裂性物質(ウラン235、プルトニウム239など)ごとに異なった値が提案されている(文献James J. Duderstadt and Louis J. Hamilton, “Nuclear Reactor Analysis”, John Wiley & Sons, ISBN 0-471-22363-8を参照)。

【0047】
【数9】
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【0048】
評価する物理量は順に、中性子検出器信号からノイズ成分を除いた係数率n [数/s]、この中性子計数率の時間変化率n(=dn/dt)[数/s2]、遅発中性子先行核相当量Ci(t)、Ci(t)の時間変化率Ci(t)、変数μ(t)[1/s]、変数q(t)[1/s]、未臨界度ρの関数α(ρ)[-]および安定時のnの値n(ρ)[数/s]、ドル単位の未臨界度ρ$(=ρ/β)[-]、第i群の遅発中性子先行核崩壊定数λi[1/s]、第i群の遅発中性子比率bi[-]、実効遅発中性子割合β[-]、即発中性子寿命l[s]、中性子世代時間Λ[s]である。nと nを含む時間の関数となっている変数は時系列データである。手順は、未臨界度の変化もしくは中性子源強度の変化により中性子検出器信号が上昇する場合、手順A、下降する場合、手順Bを用いる。

【0049】
<手順1-A(ノイズ成分を除いたnおよび nの評価)>
検出器の信号が安定した後ならば、nの測定値を、変動中であれば適当な予測値を用いてx = ln(n-n )を計算し、この時系列データx(t)を適当な時間の関数f(t)で近似する。たとえばx(t)のデータに対してy=at+bをフィッティングして定数a,bを求めることで、f(t)=at+bでx(t)を近似する。このf(t)を用いてnと nはそれぞれ下式10、11とあらわされる。

【0050】
【数10】
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【0051】
【数11】
JP2018159669A_000013t.gif

【0052】
<手順1-B(ノイズ成分を除いたnおよびnの評価)>
検出器の信号が安定した後ならば、nの測定値を、変動中であれば適当な予測値を用いてx = ln(n-n)を計算し、この時系列データx(t)を適当な時間の関数f(t)で近似する。たとえばx(t)のデータに対してy=at+bをフィッティングして定数a,bを求めることで、f(t)=at+bでx(t)を近似する。このf(t)を用いてnと nはそれぞれ下式12、13とあらわされる。

【0053】
【数12】
JP2018159669A_000014t.gif

【0054】
【数13】
JP2018159669A_000015t.gif

【0055】
上述の手順1-A、1-Bにおいて、nに予測値を使った場合は、得られたnの時系列データと中性子検出器信号の時系列データを比較して、すべてのデータの二乗和を評価し、これが最も小さくなるようにnの値を調節して、手順1-A,1-Bを再度実施する。この手順を繰り返して、差が最も小さくなるようにする。

【0056】
手順1において、手順5を一度以上実施した後であれば、nの最初の推定値を以下のように得ることができる。先に実施して得られた未臨界度ρ0 ( = ρ$0×β )と安定時中性子数n0∞を用いて得られる次の値p0を用いると、

【0057】
【数14】
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未臨界度がそれほど大きく変わらなければ、式1は常に点(p0, -p0)を通るので、あらたな未臨界度ρ1におけるn1∞の最初の推定値を

【0058】
【数15】
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ここで、t0は未臨界度と中性子源強度の変動が停止した直後(未臨界度はρ1)以降の任意の時刻である。

【0059】
これまでのやり方では、一点炉動特性方程式に基づくため、その解の形から、例えば手順1-Aの場合、n = n - ΣAief(ti) のような関数形を考える必要があった。しかし、n = αyq - n が成立つことにもとづく本手法では、n = αyq - n より解の形はn =n - ef(t) となることが示されるため、より簡単にノイズ成分のないnと nの値を求めることができる。

【0060】
<手順2(Ci(t)、Ci(t)の評価)>
bi、λi、Λ、について、想定される核燃料物質の値もしくは、もっとも近いと想定できる仮の値を用いて、以下の式により、Ci(t)を求める。ここでβi=β×biである。

【0061】
【数16】
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Δt後のCi(t+Δt)を以下により求める。

【0062】
【数17】
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このような数値積分はルンゲクッタ法や陰解法など多数存在するので、どれを用いてもよい。Ciの初期値は、中性子検出器信号が安定している状態のときに

【0063】
【数18】
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として求めておく。

【0064】
<手順3(μの評価)>
時刻tにおけるμ(t)の値は以下の計算により評価する。

【0065】
【数19】
JP2018159669A_000021t.gif

【0066】
<手順4(qの評価)>
時刻tにおけるq(t)の値は以下の計算により評価する。

【0067】
【数20】
JP2018159669A_000022t.gif

【0068】
<手順5(αy、n、ρ$評価)>
上述の手順4で求めたq(t)の時系列データと手順(1)で求めたn(t)の時系列データを用いる。横軸にq(t)、縦軸にnをとって、時刻ごとに点(q(t),n(t))をプロットする。このとき、の点の軌跡に直線の方程式をフィッティングして得られる傾きの値がαy 、切片の値がnである。次式でρ$を計算する。

【0069】
【数21】
JP2018159669A_000023t.gif

【0070】
<手順6(λi[1/s]、bi[-]の評価)>
上述の手順5で得られたαy 、nの値を用いて以下の時系列データy(t)を計算する。

【0071】
【数22】
JP2018159669A_000024t.gif

縦軸をy、横軸をtとして点(t,y(t))をプロットする。このとき、y(t)が直線y=1に最も近くなるように、λi[1/s]、bi[-]を調整する。このとき、biの全群の総和は1となるようにする。

【0072】
より簡単には、核分裂性物質の種類に応じて、ウラン235、プルトニウム239など、それぞれに(λi[1/s]、bi[-])の組(i=1,・・・,6)が文献で与えられている。以下では、ウラン235のそれをλ5i[1/s]、b5i[-]、プルトニウム239のそれをλ9i[1/s]、b9i[-]とする。たとえば対象としている核燃料物質中にウラン235とプルトニウム239が存在することが想定されているが、その割合が不明のときにλi[1/s]、bi[-]を調整する場合、核分裂性物質全体のうちのウラン235の個数割合をRとすると、λi[1/s]、bi[-]は以下の式で表される。

【0073】
【数23】
JP2018159669A_000025t.gif

【0074】
【数24】
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この計算をi=1~6のすべてで同時に行う。λi[1/s]、bi[-]を個別に変更しない。Rを変えて上述の手順2から手順6を繰り返し、(y(t)-1)2の総和が最も小さくなったときのRが、対象とする核燃料物質におけるウラン235の個数割合である。

【0075】
<手順7(βの評価)>
上述の手順5で求めたn、ρ$の値が一組あるとする。それをn∞0、ρ$0であらわす。未臨界度が変化して新たな未臨界度ρ$になったとき、上述の手順1から手順6を適用してnを求める。二つの安定出力の比をr(=n/ n∞0)とすると、βは次式で求められる。

【0076】
【数25】
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別の例としては、複数の値の組(n∞i、ρ$i)を用いて、点(n∞0、ρ$0)に対してyi = 1/ρ$0-r/ρ$i とxi = 1 - ri (ri=n∞0/ n∞i)を求め、これらの点(xi, yi)をプロットする。これらの点に原点を通る直線をフィッティングしたとき、この直線の傾きからβを得る。ここで得られたβの値を手順2で用いることにより、仮の値であったβの値を正確な値とすることができるため、手順2を安定的に実施することができる。

【0077】
<手順8(l[s]、Λ[s]の評価)>
未臨界度がρ$で一定の状態が続き、中性子検出器信号が安定した値nとなっている状態を初期状態とする。外部中性子源強度はSとする。外部中性子源(パルサトロンなど)の電源をOFFにしたり遮蔽したりして、瞬時にS=0の状態にする。上述の手順1-Bで得られたnとnからn/nの最大値ωを求める。Λ/β=ρ$/ωによりΛ/βを求める。未臨界度が異なる2組以上のデータの組(-ρ$k、Λk/β)をプロットする。直線y=ax+bをこれらの点にフィッティングして得られるa, bから、l = aもしくは l=b×βによりlを評価する。Λ=βρ$/ωもしくは、Λ= l/keff (keff=1/(1-ρ))によりΛを求める。ここで得たΛの値を上述の手順2で用いることで、仮の値であったΛの値を正確な値とすることができるため、上述の手順2を安定的に実施することができる。

【0078】
未臨界状態の核燃料について、内部構造や全体の形状についてあらかじめ分かっていないために予備解析等によって正確なパラメータを事前に求めることができない状況又は、予備解析由来の誤差を排除したい状況、予め構成された制御棒等が使用できない状況で、正又は負の反応度の添加により臨界に近づくもしくは遠ざかる場合かつ/又は外部中性子源の出力変動があった場合に、上述の手順1により、中性子検出器等からの核分裂率に比例する信号からノイズのない信号を抽出することが可能となった。上述の手順2から4により中性子数の重み付き時間微分を計算できる。手順5により、中性子検出器等からの核分裂率に比例する信号のみに基づいてドル単位の未臨界度を求めることが可能となった。手順6により遅発中性子比率と遅発中性子先行核崩壊定数を求めることが可能となり、さらにここで求めた遅発中性子比率と遅発中性子先行核崩壊定数を用いて上述の手順1から5の計算を行うことにより、初期値として与えた遅発中性子比率等の値に依存しない、中性子検出器等からの核分裂率に比例する信号のみに基づいた、ドル単位の未臨界度を求めることが可能となった。さらに、上述の手順7により実効遅発中性子割合を求めることが可能となり、これをドル単位の反応度に乗ずることで、ドル単位ではない未臨界度を求めることが可能となった。手順8により中性子世代時間及び即発中性子寿命を測定することが可能となった。

【0079】
本発明は、再処理施設においても、使用済み燃料を受け入れる際に中性子を照射することで核分裂性物質の比率(U-235, Pu-239, 241 など)を測定できるので、本発明は燃焼度測定に利用できる。また、臨界安全管理されていない容器に本発明に係る装置を据え付けることで、核燃料物質の誤移送による臨界近接を検知することができる。その際、流入する核燃料物質の種類が変化しても、自動的に補正して中性子実効増倍率を計算し続けることができる。中身が不明な物質に対して中性子を照射することで、核分裂性物質の同定ができる。原子炉の臨界近接の自動化が可能となる。また、本発明は、ADS(加速器駆動未臨界炉)での運転制御に必要な未臨界度測定方法の有力な候補となる。
【符号の説明】
【0080】
1・・・検出部
2・・・入力部
3・・・演算部
4・・・記憶装置
5・・・出力部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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