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明細書 :切断装置及び切断方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-176218 (P2018-176218A)
公開日 平成30年11月15日(2018.11.15)
発明の名称または考案の名称 切断装置及び切断方法
国際特許分類 B23K  26/38        (2014.01)
B23K  26/04        (2014.01)
B23K  26/08        (2014.01)
B23K 101/06        (2006.01)
FI B23K 26/38 B
B23K 26/04
B23K 26/08 Z
B23K 101:06
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2017-078928 (P2017-078928)
出願日 平成29年4月12日(2017.4.12)
発明者または考案者 【氏名】中村 保之
【氏名】岩井 紘基
【氏名】佐野 一哉
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100113608、【弁理士】、【氏名又は名称】平川 明
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
【識別番号】100131392、【弁理士】、【氏名又は名称】丹羽 武司
【識別番号】100175190、【弁理士】、【氏名又は名称】大竹 裕明
審査請求 未請求
テーマコード 4E168
Fターム 4E168AD07
4E168CB03
4E168CB08
4E168CB18
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA28
4E168EA17
4E168FB01
4E168FC04
4E168JA02
4E168KA16
要約 【課題】本願は、ビームダンパを用いることなく切断対象物をレーザ光で切断可能な切断装置および切断方法を提供する。
【解決手段】中空の切断対象物をレーザ光で切断する切断装置であって、レーザ光を出射するレーザ切断ヘッドと、レーザ切断ヘッドを切断対象物の外側で周回させるハンドリング装置と、を備え、ハンドリング装置は、切断対象物の外側を周回するレーザ切断ヘッドが形成する仮想の軌道面に対し、レーザ光の光軸を傾けた状態でレーザ切断ヘッドを周回させる。
【選択図】図8
特許請求の範囲 【請求項1】
中空の切断対象物をレーザ光で切断する切断装置であって、
レーザ光を出射するレーザ切断ヘッドと、
前記レーザ切断ヘッドを前記切断対象物の外側で周回させるハンドリング装置と、を備え、
前記ハンドリング装置は、前記切断対象物の外側を周回する前記レーザ切断ヘッドが形成する仮想の軌道面に対し、前記レーザ光の光軸を傾けた状態で前記レーザ切断ヘッドを周回させる、
切断装置。
【請求項2】
前記ハンドリング装置は、前記レーザ光のビームウェストを前記切断対象物の外面に位置合わせした状態を保ちながら前記レーザ切断ヘッドを周回させる、
請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記ハンドリング装置は、前記軌道面に対する前記光軸の傾き角を、前記レーザ光の広がり角よりも大きくなるように前記光軸を傾けた状態で前記レーザ切断ヘッドを周回させる、
請求項1または2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記ハンドリング装置は、先端に前記レーザ切断ヘッドを設けたロボットアームを有する、
請求項1から3の何れか一項に記載の切断装置。
【請求項5】
中空の切断対象物をレーザ光で切断する切断方法であって、
レーザ光を出射するレーザ切断ヘッドを、前記切断対象物の外側で周回させる工程を有し、
前記レーザ切断ヘッドを前記切断対象物の外側で周回させる工程においては、前記切断対象物の外側を周回する前記レーザ切断ヘッドが形成する仮想の軌道面に対し、前記レーザ光の光軸を傾けた状態で前記レーザ切断ヘッドを周回させる、
切断方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置及び切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なレーザ加工技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特表2011-524259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施設の解体現場では、切断対象物の切断や破砕といった様々な解体手法が用いられる。切断対象物を切断する手法にも様々あり、例えば、回転刃で切断する手法、対向する一対の切断刃で挟んで切断する手法、火炎あるいはレーザ光で焼き切る手法がある。
【0005】
ところで、切断対象物をレーザ光で切断する場合、切断対象物を貫通したレーザ光が予期せぬ箇所に照射されるのを防ぐため、切断対象の切断対象物の背面にレーザ光を吸収するビームダンパが設置される。しかし、例えば、配管やタンクの外周面のような曲面にレーザ光を照射して周方向に切断する場合、ビームダンパを設置すべき箇所を特定するのが難しい。また、例えば、切断対象の切断対象物が狭隘な場所に設置されている場合、当該切断対象物の背面にビームダンパを設置するのが容易でない。
【0006】
そこで、本願は、ビームダンパを用いることなく切断対象物をレーザ光で切断可能な切断装置および切断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、中空の物体を切断対象物とし、レーザ光を出射するレーザ切断ヘッドを切断対象物の外側で周回させる。その際、切断対象物の外側を周回するレーザ切断ヘッドが形成する仮想の軌道面に対し、レーザ光の光軸を傾けた状態にすることにした。
【0008】
詳細には、本発明は、中空の切断対象物をレーザ光で切断する切断装置であって、レーザ光を出射するレーザ切断ヘッドと、レーザ切断ヘッドを切断対象物の外側で周回させるハンドリング装置と、を備え、ハンドリング装置は、切断対象物の外側を周回するレーザ切断ヘッドが形成する仮想の軌道面に対し、レーザ光の光軸を傾けた状態でレーザ切断ヘッドを周回させる切断装置である。
【0009】
なお、ここでいう軌道面とは、切断対象物の外側を周回するレーザ切断ヘッドが描く仮想の軌跡が含まれる平面であり、例えば、切断対象物が直管でレーザ切断ヘッドが当該直管の中心線を軸に周回する場合は当該直管の中心軸に直交する面が当該軌道面に該当する。
【0010】
このような切断装置であれば、切断対象物の外側を周回するレーザ切断ヘッドが形成する仮想の軌道面に対し、レーザ光の光軸が傾いているため、レーザ切断ヘッドが切断対象物の周囲を半分以上周回しても、切断対象物の外面に形成された貫通孔からレーザ光が漏れ出さない。すなわち、中空の切断対象物の中に入ったレーザ光が切断対象物の中に留ま
る。このため、切断対象物の内面がビームダンパとして実質的に機能し、ビームダンパの省略が可能となる。
【0011】
なお、ハンドリング装置は、レーザ光のビームウェストを切断対象物の外面に位置合わせした状態を保ちながらレーザ切断ヘッドを周回させるものであってもよい。上記切断装置がこのようなハンドリング装置を備えていれば、切断対象物の内面に投射されるレーザ光のエネルギー密度が下がるため、切断対象物の内面がビームダンパとしての機能を維持することができる。
【0012】
また、ハンドリング装置は、軌道面に対する光軸の傾き角を、レーザ光の広がり角よりも大きくなるように光軸を傾けた状態でレーザ切断ヘッドを周回させるものであってもよい。上記切断装置がこのようなハンドリング装置を備えていれば、レーザ切断ヘッドが切断対象物を半周以上周回しても、切断対象物を貫通して切断対象物の内部を通過したレーザ光が反対側の貫通孔から漏れ出ない。
【0013】
また、ハンドリング装置は、先端にレーザ切断ヘッドを設けたロボットアームを有するものであってもよい。上記切断装置がこのようなハンドリング装置を備えていれば、様々な形態の切断対象物に対応自在である。
【0014】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、中空の切断対象物をレーザ光で切断する切断方法であって、レーザ光を出射するレーザ切断ヘッドを、切断対象物の外側で周回させる工程を有し、レーザ切断ヘッドを切断対象物の外側で周回させる工程においては、切断対象物の外側を周回するレーザ切断ヘッドが形成する仮想の軌道面に対し、レーザ光の光軸を傾けた状態でレーザ切断ヘッドを周回させる切断方法であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記の切断装置および切断方法であれば、ビームダンパを用いることなく切断対象物をレーザ光で切断可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施形態に係る切断装置を示した図である。
【図2】図2は、制御装置の構成図である。
【図3】図3は、切断装置において実現される動作内容を示したフローチャートである。
【図4】図4は、切断装置が切断対象物を切断中に多関節ロボットで保持する切断対象物に対するレーザ切断ヘッドの相対的な姿勢の一例を示した図である。
【図5】図5は、切断対象物の外周面に位置合わせされるビームウェストと切断対象物Wの内周面に投射されるビームスポットとの大小関係を示した図である。
【図6】図6は、レーザ光のビーム伝搬特性を示した図である。
【図7】図7は、レーザ光による平板の切断の可否がスタンドオフや切断速度に依存することを示したグラフである。
【図8】図8は、切断装置が切断対象物を切断する際のレーザ切断ヘッドの動きを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。

【0018】
図1は、実施形態に係る切断装置を示した図である。切断装置1は、切断対象物Wをレ
ーザ光で切断する装置であり、図1に示すように、多関節ロボット2、レーザ切断ヘッド3、レーザ発振器4、制御装置5、発信器用チラー6、切断ヘッド用チラー7、アシストガス容器8を備える。多関節ロボット2は、ロボットアーム21と制御盤22を有する。レーザ切断ヘッド3は、ロボットアーム21の先端に設けられており、レーザ発振器4から光ファイバを通じて送られるレーザ光Lを切断対象物Wに照射する。ロボットアーム21は、制御装置5の指令に従い、制御盤22から供給される電力で作動し、レーザ切断ヘッド3を適宜動かす。発信器用チラー6は、レーザ発振器4を冷却する。切断ヘッド用チラー7は、レーザ切断ヘッド3を冷却する。アシストガス容器8は、レーザ切断ヘッド3にアシストガスを供給する。制御装置5は、ロボットアーム21の動作を制御する他にレーザ発振器4を制御し、レーザ切断ヘッド3から出射されるレーザ光Lの照射状態やレーザ切断ヘッド3から噴射されるアシストガスの噴射状態を制御する。

【0019】
レーザ発振器4としては、例えば、波長1070nmのレーザ光を発光するファイバレーザ発振器が好適であるが、ファイバレーザ発振器以外の固体レーザ発振器や炭酸ガスレーザ発振器等の各種レーザ発振器も適用可能である。レーザ発振器4から出射されたレーザ光は、光ファイバを介してレーザ切断ヘッド3へ送られ、レーザ切断ヘッド3の出射口より外部に向けて出射される。

【0020】
切断対象物Wの切断は、切断対象物Wの外周面の予定切断箇所にレーザ切断ヘッド3から出射されたレーザ光Lを照射して、レーザ光Lの照射部を局部的に溶解し、溶解部に生成されたドロスをレーザ切断ヘッド3から噴射されるアシストガスによって吹き飛ばすことにより行われる。従って、レーザ切断ヘッド3に設けられるアシストガスの噴射口は、レーザ光Lが照射されている照射部に、ドロスを除去するに十分な圧力及び風量のアシストガスが噴射されるように設計される。

【0021】
多関節ロボット2は、切断対象物Wに対するレーザ切断ヘッド3の位置及び姿勢、切断対象物Wに対するレーザ光Lの照射方向(回転方向)を自在に変更するもので、多関節のリンクと各リンクを駆動するモータ等のアクチュエータとを有する。多関節ロボット2は、例えば、図1に示すように、切断対象物Wの付近にレーザ切断ヘッド3を配置し、切断対象物Wの外周面の予定切断箇所にレーザ光Lのビームウェストを位置合わせした状態を保ちながら、レーザ切断ヘッド3を切断対象物Wの外側で360度周回させることができる。

【0022】
図2は、制御装置5の構成図である。制御装置5は、いわゆるPC(Personal Computer)であり、図2に示すように、入力部51、RAM52、ROM53、CPU54、H
DD55、出力部56を有する。入力部51には、多関節ロボット2から提供される各アクチュエータの角度等の制御情報、レーザ発振器4から提供されるレーザ光Lの発光状態に関する情報、オペレータが操作するキーボードからの情報等が入力される。RAM52には、CPU54がROM53やHDD55にアクセスして読み込んだコンピュータプログラムや、CPU54がコンピュータプログラムの実行中に生成する各種演算データが一時的に格納される。ROM53とHDD55には多関節ロボット2の制御やその他の諸機能を担う各種のコンピュータプログラムが格納されている。出力部56は、CPU54によって制御量が算出された多関節ロボット2の制御信号を出力する。

【0023】
CPU54が参照するHDD55のデータには、ロボットアーム21の各リンク長、レーザ切断ヘッド3の形状、レーザ切断ヘッド3のレンズの状態によって定まるスタンドオフ量、切断対象物Wの外周面に設定されている予定切断箇所の座標、レーザ切断ヘッド3の移動速度、切断対象物Wに対するレーザ切断ヘッド3の傾斜角の設定値、その他の各種情報が含まれる。

【0024】
図3は、切断装置1において実現される動作内容を示したフローチャートである。切断装置1では、制御装置5がコンピュータプログラムを実行することにより、次のような動作内容が実現される。すなわち、切断装置1は、ロボットアーム21の各アクチュエータを作動させてレーザ切断ヘッド3を適当な箇所に位置合わせする(S101)。次に、切断装置1は、レーザ切断ヘッド3からのアシストガスの噴射を開始する(S102)。次に、切断装置1は、レーザ切断ヘッド3からレーザ光Lが規定の出力で出射されるようにレーザ発振器4を作動させる(S103)。次に、切断装置1は、レーザ切断ヘッド3からのレーザ光Lの出射を開始し、切断対象物Wへのレーザ光Lの照射を開始する(S104)。そして、切断装置1は、ロボットアーム21の各アクチュエータを作動させ、レーザ切断ヘッド3を切断対象物Wの外周面に沿って周回させる(S105)。切断装置1は、レーザ切断ヘッド3が切断対象物Wの周囲を一回りして切断対象物Wの切断が完了した時点で、レーザ切断ヘッド3からのレーザ光Lの出射を停止する(S106)。そして、切断装置1は、レーザ切断ヘッド3から噴射されるアシストガスの噴射を停止する(S107)。

【0025】
ところで、本実施形態においては、切断対象物Wのような中空の切断対象物を、ビームダンパを用いることなく切断可能とするため、切断対象物Wに対するレーザ切断ヘッド3の相対的な姿勢が以下の状態を保つように多関節ロボット2がレーザ切断ヘッド3を動かす。図4は、切断装置1が切断対象物Wを切断中に多関節ロボット2で保持する切断対象物Wに対するレーザ切断ヘッド3の相対的な姿勢の一例を示した図である。レーザ切断ヘッド3には、レーザ発振器4からレーザ切断ヘッド3へレーザ光を送る光ファイバの終端から放たれるレーザ光を平行状態にするコリメートレンズ3a、コリメートレンズ3aを透過した平行状態のレーザ光を一点に収束させるフォーカシングレンズ3bが備わっている。ここで、コリメートレンズ3aとフォーカシングレンズ3bの中心点を繋ぐ軸(以下、単に「光軸」という)に対するレーザ光Lの広がり角をAとし、切断対象物Wの中心軸線に直交する面に対する光軸の傾き角をBとした場合、切断装置1は、切断対象物Wの切断中、少なくともBがAよりも大きい状態を保ちながらレーザ切断ヘッド3を動かす。切断対象物Wに対するレーザ切断ヘッド3の姿勢が、少なくともBがAよりも大きい状態で保たれていれば、レーザ切断ヘッド3が切断対象物Wを半周以上周回しても、切断対象物Wを貫通して切断対象物Wの内部を通過したレーザ光Lが反対側の貫通孔から漏れ出ない。

【0026】
また、切断装置1は、レーザ光Lのビームウェストが切断対象物Wの外周面の予定切断箇所に位置合わせされた状態を保持しながら切断対象物Wの切断を行うため、切断対象物Wの内面にはレーザ光Lが以下のように投射される。図5は、切断対象物Wの外周面に位置合わせされるビームウェストと切断対象物Wの内周面に投射されるビームスポットとの大小関係を示した図である。また、図6は、レーザ光Lのビーム伝搬特性を示した図である。切断対象物Wの内面に投射されるレーザ光LのスポットサイズWz(mm)は、以下の数式で表される。
Wz=W(1+(4λz/πW))1/2
なお、Wはレーザ光Lのビームウェストにおけるスポットサイズ(mm)、zはビームスポットから切断対象物Wの内面に投射されるレーザ光Lの像の中心までの距離(mm)、λはレーザ光Lの波長(m)、πは円周率である。

【0027】
本実施形態においては、中空の切断対象物Wの内面をビームダンパとして利用する。よって、レーザ光Lのビームウェストを切断対象物Wの外周面の予定切断箇所に位置合わせすることで、切断対象物Wの内周面に投射されるビームスポットの大きさが、切断対象物Wの外周面に投射されるビームスポットよりも大きくなるようにしている。切断対象物Wの内周面に投射されるビームスポットが大きければ、切断対象物Wの内面に投射されるレーザ光Lのエネルギー密度が下がり、切断対象物Wの内面から始まる切断対象物Wの溶解
が抑制される。切断対象物Wの内面に投射されるレーザ光Lのエネルギー密度は、Wzの大きさの2乗に反比例する。よって、切断装置1を用いる際は、切断対象物Wの内面をビームダンパとして機能させるべく、レーザ切断ヘッドの焦点距離、スタンドオフ、切断対象物Wの大きさからWzが算出され、切断対象物Wの内面がビームダンパとして機能するレーザ光Lの強度(出力)や切断速度が設定される。なお、本実施形態の切断装置1は、切断対象物Wの内周面に投射されるビームスポットの大きさを、切断対象物Wの外周面に投射されるビームスポットより大きくするものであればよく、例えば、レーザ光Lの焦点が切断対象物Wの外周面から位置ずれしてもよい。

【0028】
図7は、レーザ光による平板の切断の可否がスタンドオフや切断速度に依存することを示したグラフであり、炭素鋼で出来た厚さ25mmの平板を実験的に切断した際の結果を示している。レーザ光による切断においては、図7のグラフから判るように、切断速度(レーザ光の移動速度)が速すぎると切断不可になることが判る。また、スタンドオフの大きさ(フォーカスレンズから切断箇所までの距離)が長くなるに従って切断が不可になっていくことが判る。そこで、本実施形態では、レーザ光を使った切断におけるこのような特性を利用し、切断対象物Wの内面がビームダンパとして機能するようにレーザ切断ヘッド3の選定や光学系の調整、位置の調整が行われる。

【0029】
図8は、切断装置1が切断対象物Wを切断する際のレーザ切断ヘッド3の動きを示した図である。切断装置1が切断対象物Wの切断を開始すると、切断対象物Wの外周面に出来た貫通孔をレーザ光Lが通り、切断対象物Wの内周面にレーザ光Lが投射される(図8(A)を参照)。そして、レーザ切断ヘッド3は、多関節ロボット2に動かされて切断対象物Wを周回する(図8(B)を参照)。しかし、レーザ切断ヘッド3は、切断対象物Wを周回することによって自身が形成する仮想の軌道面(切断対象物Wのような直管の場合、管の中心軸に対し直交する面)に対し、レーザ光の光軸を傾けた状態で多関節ロボット2に周回させられている。よって、レーザ切断ヘッド3が切断対象物Wを周回しても、レーザ光Lは、切断対象物Wの内周面を投射するに留まり、レーザ光Lによって切断対象物Wの外周面に形成された貫通孔から漏れ出すことは無い。すなわち、切断対象物Wの内周面がビームダンパとしての機能を果たす。そして、レーザ切断ヘッド3が切断対象物Wの周囲を一回りすると、切断対象物Wの切断が完了する(図8(C)を参照)。

【0030】
なお、本実施形態では、切断対象物Wとして配管を例示していたが、切断対象物Wはこれに限定されない。切断対象物Wは、中空の切断対象物であれば如何なるものであってもよく、例えば、液体や気体を貯蔵するタンク等の容器、機器等を収容する筐体、油圧で動くピストンが摺動するシリンダといった機械部品、その他の各種切断対象物であってもよい。

【0031】
また、本実施形態では、レーザ切断ヘッド3を動かすハンドリング装置の一例として、様々な形態の切断対象物に対応自在な多関節ロボット2を例示していたが、ハンドリング装置はこれに限定されない。レーザ切断ヘッド3を動かすハンドリング装置は、例えば、レーザ切断ヘッド3を保持しながら、切断対象物Wに巻き付けたチェーン状の走行レールを走行する装置であってもよいし、或いは、切断対象物Wを3点の車輪で挟持するクランプ状の装置が、レーザ切断ヘッド3を保持した状態で切断対象物Wの周りを自走しながら周回するものであってもよい。後者の場合、切断対象物Wは円筒状の部位を有し、当該部位を切断部位とするものに限定される。
【符号の説明】
【0032】
1・・切断装置:2・・多関節ロボット:21・・ロボットアーム:22・・制御盤:3・・レーザ切断ヘッド:3a・・コリメートレンズ・3b・・フォーカシングレンズ:4・・レーザ発振器:5・・制御装置:51・・入力部:52・・RAM:53・・ROM
:54・・CPU:55・・HDD:56・・出力部:6・・発信器用チラー:7・・切断ヘッド用チラー:8・・アシストガス容器:L・・レーザ光:W・・切断対象物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7