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明細書 :顕微鏡観察用容器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-200458 (P2018-200458A)
公開日 平成30年12月20日(2018.12.20)
発明の名称または考案の名称 顕微鏡観察用容器
国際特許分類 G02B  21/34        (2006.01)
G01N   1/28        (2006.01)
FI G02B 21/34
G01N 1/28 U
G01N 1/28 F
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-187424 (P2017-187424)
出願日 平成29年9月28日(2017.9.28)
優先権出願番号 2017105701
優先日 平成29年5月29日(2017.5.29)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】井上 貴文
【氏名】中澤 誠
【氏名】染谷 さやか
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
【識別番号】595040205
【氏名又は名称】株式会社東海ヒット
個別代理人の代理人 【識別番号】100098936、【弁理士】、【氏名又は名称】吉川 晃司
【識別番号】100098888、【弁理士】、【氏名又は名称】吉川 明子
審査請求 未請求
テーマコード 2G052
2H052
Fターム 2G052AA28
2G052AA33
2G052AA36
2G052DA12
2G052DA13
2G052DA15
2G052DA33
2G052GA32
2G052JA01
2H052AE13
要約 【課題】下側部材の底部の厚さ寸法を0.1mm程度のごく小さなものとできて高倍率の対物レンズに対応することが可能で、しかも下側部材の底部が変形しても顕微鏡観察用容器そのものを交換する必要のない顕微鏡観察用容器を提供する。
【解決手段】収容部19に培養液Bと細胞Cを入れて、顕微鏡のステージに載置する。そして、対物レンズTを下方から板状ガラス18の下面に接近させて細胞Cの観察を行う。WDが0.15mmの高倍率の対物レンズTを用いた場合にステージをスライドさせて観察箇所を変更しても、プレート状部材4の厚さ寸法が0.1mmであるので、対物レンズTがプレート状部材4に接触するのを防止することができる。プレート状部材4だけを交換できるので、下側部材2と上側部材3は、そのまま継続して使用することが可能である。
【選択図】 図4
特許請求の範囲 【請求項1】
筒状部と底部を有する下側部材と、前記下側部材の底部に形成された開口と、前記下側部材の筒状部に嵌る筒状部を有する上側部材と、前記上側部材の筒状部が前記下側部材の筒状部に嵌った状態で上側部材と下側部材を固定する固定手段とを備えた顕微鏡観察用容器であって、
穴を有するプレート状部材を備え、前記プレート状部材を前記底部の上面の前記開口の縁部分に設置して、前記プレート状部材の上面に板状ガラスを設置し、前記穴を閉鎖する状態とし、前記上側部材の筒状部を前記下側部材の筒状部に嵌め、前記上側部材と前記板状ガラスとの間に介装したOリングを押圧して、弾性変形させると共に板状ガラスの上面に密着させ、前記固定手段によって前記上側部材と前記下側部材を固定することで前記上側部材の円筒部の内面と、Oリング及び板状ガラスによって囲まれた空間により水漏れしない収容部を形成することを特徴とする顕微鏡観察用容器。
【請求項2】
請求項1に記載した顕微鏡観察用容器において、プレート状部材は、少なくとも穴の周辺部の厚さ寸法は0.1mm以下であることを特徴とする顕微鏡観察用容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載した顕微鏡観察用容器において、プレート状部材は金属製であり、プレス成形によって製作されていることを特徴とする顕微鏡観察用容器。
【請求項4】
請求項1または2に記載した顕微鏡観察用容器において、プレート状部材は合成樹脂製であることを特徴とする顕微鏡観察用容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した顕微鏡観察用容器において、プレート状部材は下側部材の底部の上面に係合する係合部と、前記係合部に連続し、且つ係合部より下方に位置して前記底部の開口に対応する開口対応部とから成ることを特徴とする顕微鏡観察用容器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した顕微鏡観察用容器において、固定手段は上側部材、下側部材のいずれか一方に設けられたマグネットと、他方に設けられた磁性体部によって構成されていることを特徴とする顕微鏡観察用容器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載した顕微鏡観察用容器において、上側部材にはOリングの一部が前記上側部材の下端面より下側へ突出する状態で嵌る保持溝が形成され、前記上側部材の下端には前記保持溝に嵌ったOリングを係止する係止凸部が形成されていることを特徴とする顕微鏡観察用容器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は顕微鏡を用いて生体細胞等の被検査物を観察するために用いられる顕微鏡観察用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大学や企業において、生体細胞、生物組織片、微生物等、もしくはこれらの培養物、またはこれらに薬物や遺伝子等を注入したものの経時的な変化を顕微鏡で観察して、生物化学的、薬学的な研究が行われている。
このような細胞等の経時的変化を顕微鏡で観察する際には、一般に培養容器を兼ねた顕微鏡観察用容器が用いられている。この顕微鏡観察用容器としては、直径35mmのペトリディッシュが用いられることが多い。このペトリディッシュはプラスチック製の容器本体と、この容器本体の上面開口を覆う蓋体を有している。そして、容器本体の底部には穴が形成されており、この穴を覆うように板状ガラスが取り付けられている。このように板状ガラスを備えた構成としているのは、特に高倍率の対物レンズを用いる場合においてより高い光学的性能を出すためである。
【0003】
ところが、このタイプのペトリディッシュは使い捨てとなるので、ランニングコストが嵩むという不都合がある。ペトリディッシュを大量に使用する実験もあり、それに費やすコストは相当なものとなる。更に、ペトリディッシュは容積が大きいので、これに入れる培養液等はある程度の量が必要となる。このため、特に培養液等が高価なものである場合はランニングコストが嵩んでしまうことになる。
そこで、非特許文献1に示す顕微鏡観察用容器が用いられることもある。この顕微鏡観察用容器は、ステンレス合金等の金属によって構成されており、底部に穴を有する下側部材と、この下側部材の穴に対応する開口を有する上側部材とから成る。下側部材の円筒部には雌ネジが形成され、また上側部材の円筒部には下側部材の雌ネジに螺合する雄ネジが形成されている。
【0004】
顕微鏡観察用容器を使用する際には、下側部材の底部内側に板状ガラスを設置し、板状ガラスによって穴を閉鎖する状態とする。そして、上側部材の下端部にOリングを嵌めて、上側部材を下側部材に螺合する。ネジを締めていくことで上側部材が進行してOリングが上側部材と板状ガラスとの間で押圧され、弾性変形して板状ガラスの上面に密着する。この状態においては、上側部材の円筒部の内面と、Oリング及び板状ガラスによって囲まれた空間により水漏れしない収容部が形成される。
【0005】
上記収容部に培養液等と細胞等を収容して、対物レンズを板状ガラスの下面へ接近させて顕微鏡観察を行う。
この従来の顕微鏡観察用容器は、Oリングと板状ガラスを除いて繰り返し使用することができ、しかも収容部の容積が上記ペトリディッシュのそれよりも小さいため、ランニングコストを抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Aireka Scientific Co. Ltd、[online]、[平成29年5月8日検索]、インターネット<http://airekacells.com/cell-chamber/coverslip-cell-chamber-sc15012.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の顕微鏡観察用容器は、その下側部材を切削加工によって製作しており、底部の厚さ寸法は約0.8mmである。また、熟練の技能を持った者でも底部の厚さ寸法を0.25mm程度にするのが限界である。高倍率の対物レンズでは、そのワーキングディスタンス(以下、WDという。)、すなわち対物レンズの先端面と板状ガラスの下面までの距離が0.15mm以下であることが必要である。このため、下側部材の厚さ寸法を0.25mmにしたとして、顕微鏡観察用容器を載置したステージをスライドさせると、対物レンズが下側部材の底の穴の縁に当たってしまい、顕微鏡観察に支障が生じてしまうことになる。
【0008】
また、上記従来の顕微鏡観察用容器の底部の厚さ寸法は既述のように高倍率の対物レンズのWDに対応するために小さくする必要があるが、底部の厚さ寸法を小さくすると強度が低くなり耐久性を損なうことになる。すなわち、上側部材と下側部材とを螺合させると、Oリングと板状ガラスを介して下側部材の底部に押圧力が加わるので、底部の強度が低いと顕微鏡観察用容器を繰り返し使用している間に底部が変形してしまう。底部が変形すると板状ガラスの一部分に大きな押圧力が加わるため、板状ガラスが破損してしまうことになる。このような場合には、高価な顕微鏡観察用容器そのものを交換しなくてはならなくなる。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、下側部材の底部の厚さ寸法を0.1mm程度のごく小さなものとできて高倍率の対物レンズに対応することが可能で、しかも下側部材の底部が変形しても顕微鏡観察用容器そのものを交換する必要のない顕微鏡観察用容器の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために為されたものであり、請求項1の発明は、筒状部と底部を有する下側部材と、前記下側部材の底部に形成された開口と、前記下側部材の筒状部に嵌る筒状部を有する上側部材と、前記上側部材の筒状部が前記下側部材の筒状部に嵌った状態で上側部材と下側部材を固定する固定手段とを備えた顕微鏡観察用容器であって、穴を有するプレート状部材を備え、前記プレート状部材を前記底部の上面の前記開口の縁部分に設置して、前記プレート状部材の上面に板状ガラスを設置し、前記穴を閉鎖する状態とし、前記上側部材の筒状部を前記下側部材の筒状部に嵌め、前記上側部材と前記板状ガラスとの間に介装したOリングを押圧して、弾性変形させると共に板状ガラスの上面に密着させ、前記固定手段によって前記上側部材と前記下側部材を固定することで前記上側部材の円筒部の内面と、Oリング及び板状ガラスによって囲まれた空間により水漏れしない収容部を形成することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載した顕微鏡観察用容器において、プレート状部材は、少なくとも穴の周辺部の厚さ寸法は0.1mm以下であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した顕微鏡観察用容器において、プレート状部材は金属製であり、プレス成形によって製作されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1または2に記載した顕微鏡観察用容器において、プレート状部材は合成樹脂製であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した顕微鏡観察用容器において、プレート状部材は下側部材の底部の上面に係合する係合部と、前記係合部に連続し、且つ係合部より下方に位置して前記底部の開口に対応する開口対応部とから成ることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した顕微鏡観察用容器において、固定手段は上側部材、下側部材のいずれか一方に設けられたマグネットと、他方に設けられた磁性体部によって構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載した顕微鏡観察用容器において、上側部材にはOリングの一部が前記上側部材の下端面より下側へ突出する状態で嵌る保持溝が形成され、前記上側部材の下端には前記保持溝に嵌ったOリングを係止する係止凸部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の顕微鏡観察用容器によれば、高倍率の対物レンズを用いた場合にステージをスライドさせて観察箇所を変更しても、対物レンズがプレート状部材に接触するのを防止することができる。従って、穴の端部近傍の領域まで観察範囲とすることが可能となる。
また、プレート状部材だけを交換することができるので、下側部材と上側部材は、そのまま継続して使用することが可能であり、実験にかかるコストを低く抑えることができるようになる。
プレート状部材を下側部材とは別の部材としているので、Oリングが弾性変形する際に、プレート状部材も僅かに弾性変形する。このため、Oリングの板状ガラスに対して接する部分の圧力がいずれの部位においてもほぼ等しくなり、収容部の水漏れを確実に防止することができ、また板状ガラスの一部に押圧力が集中することがなくなり、板状ガラスが割れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る顕微鏡観察用容器を斜め上方から見た分解斜視図である。
【図2】図1の顕微鏡観察用容器を斜め下方から見た分解斜視図である。
【図3】図1の顕微鏡観察用容器を分解した状態の断面図である。
【図4】図1の顕微鏡観察用容器を組み立てた状態の断面図である。
【図5】図1の顕微鏡観察用容器を用いて顕微鏡観察を行った場合の対物レンズの動作状態を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る顕微鏡観察用容器を斜め上方から見た分解斜視図である。
【図7】図6の顕微鏡観察用容器を分解した状態の断面図である。
【図8】図6の顕微鏡観察用容器を組み立てた状態の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る顕微鏡観察用容器を斜め上方から見た分解斜視図である。
【図10】図9の顕微鏡観察用容器を斜め下方から見た分解斜視図である。
【図11】図9の顕微鏡観察用容器を分解した状態の断面図である。
【図12】図9の顕微鏡観察用容器を組み立てた状態の断面図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係る顕微鏡観察用容器を組み立てた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態1に係る顕微鏡観察用容器1を図1から図5にしたがって説明する。
顕微鏡観察用容器1はステンレス合金によって構成された下側部材2、上側部材3及びプレート状部材4から成る。
下側部材2の構造を説明する。
符号5は高さ寸法の小さい筒状部を示し、この筒状部5は底部6を有している。筒状部5の内周面には雌ネジ7が形成され、底部6の中心部には円形の開口8が形成されている。底部6の厚さ寸法は0.85mmである。このような厚さ寸法とすることで底部6の強度を大きくでき、下側部材2の耐久性を向上させることが可能となる。なお、底部6の厚さ寸法は十分な強度を得ることができれば本寸法に限定されるものではない。

【0019】
上側部材3の構造を説明する。
符号9は筒状部を示し、この筒状部9の上端部にはフランジ部10が形成されている。また、筒状部9の下端部は下方へ僅かに突出する凸部11となっている。
筒状部9の貫通穴12は下方へ行くに従って徐々に縮径し、凸部11においては同じ径寸法が連続する形状に形成されている。

【0020】
筒状部9の外周面の上下方向のほぼ中央部には下側部材2の雌ネジ7に螺合する雄ネジ13が形成されている。
上記雌ネジ7と雄ネジ13によって固定手段が構成されている。
また、凸部11の外周面には後述するようにOリング14が嵌る保持溝15が形成され、更に凸部11の下端には係止凸部16が形成されている(図3参照)。

【0021】
プレート状部材4の構造を説明する。
プレート状部材4はステンレス合金製で、下側部材2の底部6より僅かに小さいほぼ円板形でプレス成形によって製作されている。プレート状部材4は、平坦な環状の外縁部4a、この外縁部4aの内側に連続して設けられ下方へ突出する中間部4b及び中間部4bの内側に連続して設けられ下方へ僅かに突出する中央部4cによって構成されている。中央部4cには円形の穴17が形成されている。
穴17の直径は8mmであり、後述する直径10mmの円板状の板状ガラス18に対応するものである。
そして、穴17の周辺部である中央部4cの厚さ寸法は0.1mmに形成されている。穴17の周辺部とは後述するように顕微鏡観察を行う際に対物レンズTが対向する範囲をいう。なお、外縁部4a、中間部4bの厚さ寸法も0.1mmとなっている。
中央部4cの直径は、直径10mmの円板状の板状ガラス18より僅かに大きいサイズに形成されている。
上記外縁部4aによって係合部が構成され、中間部4bと中央部4cによって開口対応部が構成されている。

【0022】
次に、この顕微鏡観察用容器1の使用方法を説明する。
下側部材2の底部6にプレート状部材4を備えて、外縁部4aを底部6の上面の開口8の縁部分に係合する。この状態ではプレート状部材4の中間部4b、中央部4cは開口8に対応して入り込んでいる。
次いで、中央部4cに板状ガラス18を設置する。これにより、プレート状部材4の穴17は板状ガラス18によって閉鎖された状態となる。
一方、Oリング14を上側部材3の凸部11に取り付けて保持溝15に嵌める。この状態ではOリング14の一部が凸部11の下端面より下側へ突出する。保持溝15に嵌ったOリング14は係止凸部16に係止されるので、Oリング14が保持溝15から不用意に脱落してしまうのを防止することができる。

【0023】
次に、上側部材3の筒状部9を下側部材2の筒状部5に嵌め、雄ネジ13を雌ネジ7に螺合させて上側部材3を回してネジを締める。これにより、上側部材3は下側部材2に向かって進行し、上側部材3と板状ガラス18との間にOリング14が介装された状態となる。更に、上側部材3を回してネジを締めると、Oリング14が押圧される。これにより、Oリング14が弾性変形して板状ガラス18の上面に密着する。この状態で、雄ネジ13と雌ネジ7との螺合によって上側部材3と下側部材2が固定され、上側部材3の筒状部9の内面と、Oリング14及び板状ガラス18によって囲まれた空間により水漏れしない収容部19が形成される。
なお、プレート状部材4を下側部材2とは別の部材としているので、Oリング14が弾性変形する際に、プレート状部材4も僅かに弾性変形する。このため、Oリング14の板状ガラス18に対して接する部分の圧力がいずれの部位においてもほぼ等しくなり、収容部19の水漏れを確実に防止することが可能となる。
また、板状ガラス18の一部に押圧力が集中することがなくなり、板状ガラス18が割れるのを防止することができる。

【0024】
そして、図4に示すように収容部19に培養液Bと細胞Cを入れて、図示しない顕微鏡のステージに載置する。そして、細胞Cを培養しながら対物レンズTを顕微鏡観察用容器1の下方から板状ガラス18の下面に接近させて細胞Cの観察を行う。WDが0.15mmの高倍率の対物レンズTを用いた場合に、図5に示すようにステージをスライドさせて観察箇所を変更しても、中央部4cの厚さ寸法が0.1mmであるので、対物レンズTが中央部4cの穴17以外の部分に対向しても、中央部4cに接触するのを防止することができる。従って、穴17の端部近傍の領域まで観察範囲とすることが可能となる。

【0025】
上記のように上側部材3と板状ガラス18との間に介装したOリング14を押圧することで弾性変形させ板状ガラス18の上面に密着させているので、プレート状部材4に圧力が加わることになる。このため、顕微鏡観察用容器1を繰り返し使用しているとプレート状部材4が変形する。プレート状部材4が変形すると、板状ガラス18の一部分に大きな押圧力が加わるため、板状ガラスが破損してしまう。これを防止するためプレート状部材4を交換する。このようにプレート状部材4だけを交換すれば足りるので、下側部材2と上側部材3は、そのまま継続して使用することが可能であり、実験にかかるコストを低く抑えることができるようになる。

【0026】
本発明の実施の形態2に係る顕微鏡観察用容器21を図6から図8に従って説明する。
顕微鏡観察用容器21は実施の形態1に係る顕微鏡観察用容器1と同様の構成部分を有しているので、顕微鏡観察用容器1と同様の構成部分については実施の形態1で用いた符号を付して、その説明を省略し、異なる構成部分についてのみ説明する。
下側部材22の底部6には2つのマグネット25が埋設状に設けられており、マグネット25の上面は底部6の上面に露出している。マグネット25の上面は底部6の上面と同じ高さとなっている。2つのマグネット25は下側部材22の軸心を中心として180°の間隔を開けて配置されている。

【0027】
また、上側部材23の下面には2つの磁性体部としての磁性体ブロック24が埋設状に設けられており、磁性体ブロック24の下面は上側部材23の底面に露出している。2つの磁性体ブロック24は2つのマグネット25に対応して配置されている。
上記マグネット25と磁性体ブロック24によって固定手段が構成されている。なお、下側部材22、上側部材23のいずれにも雌ネジ、雄ネジは設けられていない。

【0028】
顕微鏡観察用容器21では、上側部材23の筒状部9を下側部材22の筒状部5に嵌めると、磁性体ブロック24がマグネット25に吸着されて、上側部材23と下側部材22とが固定される。これにより、Oリング14が弾性変形して板状ガラス18の上面に密着する。この状態で、上側部材23と下側部材22が固定され、上側部材23の筒状部9の内面と、Oリング14及び板状ガラス18によって囲まれた空間により水漏れしない収容部19が形成される。

【0029】
本発明の実施の形態3に係る顕微鏡観察用容器31を図9から図12に従って説明する。
顕微鏡観察用容器31も実施の形態2と同様に実施の形態1で用いた符号を付して、その説明を省略し、異なる構成部分についてのみ説明する。
下側部材32の構造を説明する。
符号35は高さ寸法の小さい筒状部を示し、この筒状部35は底部36を有している。底部36の下面の外縁部には突出壁37が形成されており、この突出壁37の高さ寸法は0.50mmである。また、突出壁37には4か所の切欠き部38が形成され、これらの切欠き部38は等間隔(90°間隔)に配置されている。

【0030】
上側部材33の構造を説明する。
符号39は筒状部を示し、この筒状部39の上端部にはフランジ部10が形成されている。
筒状部39の貫通穴42は下方へ行くに従って徐々に縮径し、凸部11においては同じ径寸法が連続する形状に形成されている。貫通穴42の内周面43は親水性を有している。なお、内周面43はブラスト加工等によって粗面としたり、メッキを施したりすることによって親水性が高められている。
また、内周面43には切削加工により円形のライン44が設けられている。このライン44は貫通穴42の容積を示す目盛りであり、ライン44の位置まで培養液Bを入れると、貫通穴42に2mlの培養液Bが入れられたことを示す。

【0031】
筒状部39の外周面の上下方向のほぼ中央部には下側部材32の雌ネジ7に螺合する雄ネジ13が形成されている。
上記雌ネジ7と雄ネジ13によって固定手段が構成されている。
また、凸部11の外周面にはOリング14が嵌る保持溝15が形成され、更に凸部11の下端には係止凸部16が形成されている(図3参照)。

【0032】
プレート状部材34の構造を説明する。
プレート状部材34はステンレス合金製で、プレス成形によって製作されている。このプレート状部材34は下側部材32の底部36より僅かに小さいほぼ円板形に形成されている。プレート状部材34は、平坦な環状の外縁部34a、この外縁部34aの内側に連続して設けられ下方へ突出する中間部34b及び中間部34bの内側に連続して設けられ下方へ僅かに突出する中央部34cによって構成されている。中央部34cには円形の穴47が形成されている。

【0033】
穴47の直径は10mmであり、後述する直径12mmの円板状の板状ガラス48に対応するものである。
そして、穴47の周辺部である中央部34cの厚さ寸法は0.1mmに形成されている。穴47の周辺部とは顕微鏡観察を行う際に対物レンズTが対向する範囲をいう。なお、外縁部34a、中間部34bの厚さ寸法も0.1mmとなっている。
中央部34cの直径は、直径12mmの円板状の板状ガラス48より僅かに大きいサイズに形成されている。
上記外縁部34aによって係合部が構成され、中間部34bと中央部34cによって開口対応部が構成されている。

【0034】
次に、この顕微鏡観察用容器31の使用方法を説明する。
顕微鏡観察用容器31の使用方法は実施の形態1に係る顕微鏡観察用容器1と同様であるので、その説明を省略し、顕微鏡観察用容器31特有の作用効果についてのみ説明する。
貫通穴42の内周面43は親水性を高める加工が施されているので、培養液Bを収容部19に入れた場合において、培養液Bの液体分子が内周面43に引き付けられることになる。従って、培養液Bの上面(液面)が表面張力によって盛り上がるのを防止することが可能となる。よって、凸型のメニスカスが形成されるのを抑制でき、顕微鏡観察に支障をきたすおそれがなくなる。

【0035】
また、下側部材32の底部36の下面には突出壁37が形成されているので、図12に示すように載置すると、顕微鏡のステージSの上面との間に隙間Gが形成される。従って、液浸を用いて顕微鏡観察を行った場合でも、液浸に用いた液体がステージSに付着するのを防止することができる。
更に、突出壁37には切欠き部38が形成されているので、底部36、突出壁37及びステージSの上面に囲まれた空間が負圧になり、下側部材32がステージSに吸着してしまうのを防止することができる。

【0036】
本発明の実施の形態4に係る顕微鏡観察用容器41を図13に従って説明する。
顕微鏡観察用容器41も実施の形態3と同様に実施の形態1で用いた符号を付して、その説明を省略し、更にその使用方法は実施の形態1に係る顕微鏡観察用容器1と同様であるので、顕微鏡観察用容器41特有の作用効果についてのみ説明する。
上側部材53の構造を説明する。
符号59は筒状部を示し、この筒状部59の上端部にはフランジ部10が形成されている。また、筒状部59の下端部は下方へ僅かに突出する凸部11となっている。
筒状部59の貫通穴62は上下方向において同じ径寸法が連続し、凸部11においても同じ径寸法が連続する形状に形成されている。
このように、顕微鏡観察用容器41では、同じ径寸法が連続するように貫通穴62が形成されているので表面張力が抑えられて、培養液Bの上面(液面)に凸型のメニスカスが形成されるのを抑制でき、顕微鏡観察に支障をきたすおそれがなくなる。

【0037】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態では、プレート状部材4、34は、中央部4c、34cだけでなく、外縁部4a、34a、中間部4b、34bを含めたプレート状部材4、34全体の厚さ寸法を0.1mmとしたが、外縁部4a、34a、中間部4b、34bの厚さ寸法は0.1mmより大きい寸法としてもよい。すなわち、穴17、47の周辺部である中央部4c、34cの厚さ寸法は0.1mm以下とする必要があるが、中央部4c、34c以外の外縁部4a、34a、中間部4b、34bは上述のように対物レンズTが対向しないので、観察中に対物レンズTが接触するおそれがない。従って、外縁部4a、34a、中間部4b、34bは0.1mmより大きい寸法とすることが可能であり、プレート状部材4、34は少なくとも中央部4c、34cの厚さ寸法を0.1mm以下とする構成でよい。

【0038】
また、上記実施の形態2に係る顕微鏡観察用容器21は、下側部材22側にマグネット25を設け、上側部材23側に磁性体ブロック24を設けたが、これとは逆に上側部材23側にマグネット25を設け、下側部材22側に磁性体ブロック24を設ける構成としてもよい。
また、プレート状部材4、34はポリカーボネート等の合成樹脂によって構成してもよい。この場合にはプレート状部材4、34の強度を保つため、穴17、47の周辺部以外の部分については、厚さ寸法を0.1mmより大きい寸法とすることが望ましい。

【0039】
上記実施の形態では、直径10mmの板状ガラスに対応することができるプレート状部材4と、直径12mmの板状ガラスに対応することができるプレート状部材34を示したが、本発明はこれに限定されず、種々の直径の板状ガラスに対応することが可能なサイズのプレート状部材を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の顕微鏡観察用容器は、理化学機器の製造業において利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0041】
1…顕微鏡観察用容器 2…下側部材 3…上側部材 4…プレート状部材
4a…外縁部 4b…中間部 4c…中央部 5…筒状部
6…底部 7…雌ネジ 8…開口 9…筒状部
10…フランジ部 11…凸部 12…貫通穴 13…雄ネジ
14…Oリング 15…保持溝 16…係止凸部 17…穴
18…板状ガラス 19…収容部 21…顕微鏡観察用容器
22…下側部材 23…上側部材 24…磁性体ブロック
25…マグネット 31…顕微鏡観察用容器 32…下側部材
33…上側部材 34…プレート状部材 34a…外縁部
34b…中間部 34c…中央部 35…筒状部 36…底部
37…突出壁 38…切欠き部 39…筒状部 41…顕微鏡観察用容器
42…貫通穴 43…内周面 44…ライン 47…穴
48…板状ガラス 53…上側部材 59…筒状部 62…貫通穴
T…対物レンズ B…培養液 C…細胞 S…顕微鏡のステージ
G…隙間
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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