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Specification :(In Japanese)有機ニトロキシドラジカル化合物、その製造方法、ナノエマルション粒子及びその用途

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)再公表特許(A1)
Date of issue Jan 10, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)有機ニトロキシドラジカル化合物、その製造方法、ナノエマルション粒子及びその用途
IPC (International Patent Classification) C07D 207/46        (2006.01)
A61K  49/18        (2006.01)
A61K  49/20        (2006.01)
A61K  49/10        (2006.01)
A61K  49/12        (2006.01)
A61K  47/10        (2006.01)
A61K  47/22        (2006.01)
FI (File Index) C07D 207/46 CSP
A61K 49/18
A61K 49/20
A61K 49/10
A61K 49/12
A61K 47/10
A61K 47/22
Demand for international preliminary examination (In Japanese)未請求
Total pages 35
Application Number P2018-504443
International application number PCT/JP2017/008469
International publication number WO2017/154767
Date of international filing Mar 3, 2017
Date of international publication Sep 14, 2017
Application number of the priority 2016044450
Priority date Mar 8, 2016
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Designated state AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】田村 類
【氏名】名倉 康太
Applicant (In Japanese)【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
Representative (In Japanese)【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4C069
4C076
4C085
F-term 4C069AA05
4C069AA23
4C069BB02
4C069BB08
4C069BB16
4C069BC04
4C069BC40
4C069CC05
4C076DD60
4C076EE23
4C076FF34
4C085HH07
4C085JJ03
4C085KA28
4C085KB56
4C085KB74
Abstract (In Japanese)MRI等のメタルフリー造影剤として利用可能なナノエマルション粒子、及び該ナノエマルション粒子を容易に調製することができる有機ニトロキシドラジカル化合物を提供すること。
式(1)(式中、R1は、炭素数10~26の直鎖アルキル基を示す。)で表される有機ニトロキシドラジカル化合物、及び該有機ニトロキシドラジカル化合物と非イオン性界面活性剤とが0.8:1から1.2:1のモル比で構成され、ニトロキシドラジカルが内包されている、ナノエマルション粒子。
JP2017154767A1_000019t.gif
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
式(1):
【化1】
JP2017154767A1_000016t.gif
(式中、R1は、炭素数10~26の直鎖アルキル基を示す。)
で表される有機ニトロキシドラジカル化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の有機ニトロキシドラジカル化合物の製造方法であって、式(2):
【化2】
JP2017154767A1_000017t.gif
(式中、R1は、炭素数10~26の直鎖アルキル基を示す。)
で表される化合物を2価の銅化合物の存在下で酸化する、製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の有機ニトロキシドラジカル化合物と非イオン性界面活性剤とが0.8:1から1.2:1のモル比で構成され、ニトロキシドラジカルが内包されている、ナノエマルション粒子。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤が、炭素数10~26の直鎖アルキル基を有する非イオン性界面活性剤である、請求項3に記載のナノエマルション粒子。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が、式(3):
【化3】
JP2017154767A1_000018t.gif
(式中、R2は、炭素数10~26の直鎖アルキル基を示す。nは2以上の整数である。)
で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルである、請求項3又は4に記載のナノエマルション粒子。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載のナノエマルション粒子を含むMRI用造影剤。
【請求項7】
請求項3~5のいずれか1項に記載のナノエマルション粒子を含むドラッグデリバリーシステムキャリアー。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ニトロキシドラジカル化合物、その製造方法、ナノエマルション粒子及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、磁気共鳴画像法(MRI)に使用される血管内投与造影剤として、Gd-DTPA等のガドリニウム製剤が用いられている。しかしながら、ガドリニウム製剤は副作用があることが知られているため、金属を含まないメタルフリーの造影剤を使用することが望まれている。
【0003】
有機ニトロキシドラジカルは常磁性を有しているため、近年、MRI等のメタルフリー造影剤としての応用が研究されている。例えば、非特許文献1及び2にはTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)という有機ニトロキシドラジカルを共有結合させた両親媒性ブロック共重合高分子化合物を合成し、これを用いて水中でコア・シェル型ナノ粒子を調製したことが開示されている。
また、特許文献1には、ニトロキシドラジカルを側鎖に有するポリマー、及び該ポリマーからなる高分子ミセルが開示されている。しかしながら、いずれの場合も、高分子化合物の合成及び精製が煩雑であり、粒径分布が広く、さらにニトロキシドラジカルが血液中でビタミンC等により還元されやすく、ラジカルの機能を発揮できない等の問題がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2009/133647号
【0005】

【非特許文献1】X. Zhuang et al., Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 48, 5404-5410 (2010)
【非特許文献2】T. Yoshitomi et al., Biomacromolecules, 10, 596-601 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況において、本発明が解決しようとする主な課題は、MRI等のメタルフリー造影剤として利用可能なナノエマルション粒子、及び該ナノエマルション粒子を容易に調製することができる有機ニトロキシドラジカル化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはメタルフリー造影剤として利用可能なナノエマルション粒子を開発すべく鋭意検討した結果、水系溶媒中で特定の構造を有する有機ニトロキシドラジカル化合物と非イオン性界面活性剤とを特定の割合で混合することによりニトロキシドラジカルを内包したナノエマルション粒子を製造することができ、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記項1~7に示す有機ニトロキシドラジカル化合物、製造方法、ナノエマルション粒子等に係る。
項1. 式(1):
【0009】
【化1】
JP2017154767A1_000003t.gif

【0010】
(式中、R1は、炭素数10~26の直鎖アルキル基を示す。)
で表される有機ニトロキシドラジカル化合物。
項2. 上記項1に記載の有機ニトロキシドラジカル化合物の製造方法であって、式(2):
【0011】
【化2】
JP2017154767A1_000004t.gif

【0012】
(式中、R1は、炭素数10~26の直鎖アルキル基を示す。)
で表される化合物を2価の銅化合物の存在下で酸化する、製造方法。
項3. 上記項1に記載の有機ニトロキシドラジカル化合物と非イオン性界面活性剤とが0.8:1から1.2:1のモル比で構成され、ニトロキシドラジカルが内包されている、ナノエマルション粒子。
項4. 前記非イオン性界面活性剤が、炭素数10~26の直鎖アルキル基を有する非イオン性界面活性剤である、上記項3に記載のナノエマルション粒子。
項5. 前記非イオン性界面活性剤が、式(3):
【0013】
【化3】
JP2017154767A1_000005t.gif

【0014】
(式中、R2は、炭素数10~26の直鎖アルキル基を示す。nは2以上の整数である。)
で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルである、上記項3又は4に記載のナノエマルション粒子。
項6. 上記項3~5のいずれか1項に記載のナノエマルション粒子を含むMRI用造影剤。
項7. 上記項3~5のいずれか1項に記載のナノエマルション粒子を含むドラッグデリバリーシステムキャリアー。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機ニトロキシドラジカル化合物は、本発明者らが初めて合成に成功した、文献未記載の新規化合物である。かかる有機ニトロキシドラジカル化合物を、水系溶媒中において、非イオン性界面活性剤と特定の割合で混合することによりニトロキシドラジカルを内包したナノエマルション粒子を容易に製造することができる。
【0016】
このナノエマルション粒子は、分子の外側が親水性、分子の内部が疎水性という両親媒性の粒子であって、分子の内部にニトロキシドラジカルを内包していることにより磁性を有することから、MRI等の造影剤として好適に利用することができる。
また、本発明のナノエマルション粒子は、水系溶媒中で極めて安定であり、ビタミンC等により還元されにくい。さらに分子の内部に抗がん剤等の疎水性物質を内包させることができることから、ドラッグデリバリーシステムキャリアーとして利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】化合物(1)と非イオン性界面活性剤とが形成する入れ子構造の模式図である。
【図2】実施例1で得られたナノエマルション粒子の1日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図3】実施例1で得られたナノエマルション粒子の3日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図4】実施例1で得られたナノエマルション粒子の5日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図5】実施例1で得られたナノエマルション粒子の7日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図6】比較例1で得られたナノエマルション粒子の1日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図7】比較例1で得られたナノエマルション粒子の3日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図8】比較例1で得られたナノエマルション粒子の5日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図9】比較例1で得られたナノエマルション粒子の7日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図10】比較例2で得られたナノエマルション粒子の1日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図11】比較例2で得られたナノエマルション粒子の3日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図12】比較例2で得られたナノエマルション粒子の5日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図13】比較例2で得られたナノエマルション粒子の7日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図14】実施例1で得られたナノエマルション粒子の希釈前及び10倍希釈後のEPR及びDLSの結果を示す。
【図15】リン酸緩衝水溶液中で調製したナノエマルション粒子の1日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図16】リン酸緩衝水溶液中で調製したナノエマルション粒子の3日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図17】リン酸緩衝水溶液中で調製したナノエマルション粒子の4日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図18】リン酸緩衝水溶液中で調製したナノエマルション粒子の7日後に測定したEPR及びDLSの結果を示す。
【図19】リン酸緩衝水溶液中で調製したナノエマルション粒子のアスコルビン酸に対する安定性を示すグラフである。
【図20】リン酸緩衝水溶液のみ(Only (-)-PBS)の吸収スペクトルである。
【図21】ピレンをリン酸緩衝水溶液に添加した後の上澄み溶液(Pyrene /(-)-PBS)の吸収スペクトルである。
【図22】ピレンのみを内包したミセル(Pyrene /5/(-)-PBS)の吸収スペクトル、及びDLSの結果を示す。
【図23】化合物1a及びピレンを内包したナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)の吸収スペクトル、及びDLSの結果を示す。
【図24】図23の350~500nmの範囲の吸収スペクトルの拡大図である。
【図25】リン酸緩衝水溶液のみ(Only (-)-PBS)の蛍光スペクトルである。
【図26】ピレンをリン酸緩衝水溶液に添加した後の上澄み溶液(Pyrene /(-)-PBS)の蛍光スペクトルである。
【図27】ピレンのみを内包したミセル(Pyrene /5/(-)-PBS)の蛍光スペクトルである。
【図28】化合物1a及びピレンを内包したナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)の蛍光スペクトルである。
【図29】図28の425~500nmの範囲の蛍光スペクトルの拡大図である。
【図30】(-)-PBS中における(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションのアスコルビン酸に対する耐性評価である。
【図31】4.7 Tの磁場印加条件下における(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション、擬似ドラッグ或いはドラッグを内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションのT1強調画像及び、水の縦緩和速度定数の決定である。
【図32】(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションと7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションのHeLa細胞に対する毒性評価である。
【図33】(-)-PBS中における(±)-3を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製からそれぞれ2時間後と3時間後に測定した(a)EPR及び(b)DLSの結果である。界面活性剤1と(±)-3の濃度は各々10 mMである。
【図34】(-)-PBS中における(±)-2 (n=4)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から3時間後と3時間半後に測定した(a)EPR及び(b)DLSの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=4)の濃度は各々10 mMと5 mである。
【図35】(-)-PBS中における(±)-2 (n=8)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から(a)1時間半後及び(b)2日後に測定したEPRの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=8)の濃度は各々10 mMと5 mMである。
【図36】(-)-PBS中における(±)-2 (n=8)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から(a)1時間後及び(b)2日後に測定したDLSの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=8)の濃度は各々10 mMと5 mMである。
【図37】(-)-PBS中における(±)-2 (n=14)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から(a)2時間後及び(b)2日後に測定したEPRの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=14)の濃度は各々10 mMである。
【図38】(-)-PBS中における(±)-2 (n=14)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の(a)調製直後及び(b)調製から2日後に測定したDLSの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=14)の濃度は各々10 mMである。
【図39】(-)-PBS中における(±)-2 (n=16)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から(a)4時間後, (b)2日後及び(c)6日後に測定したEPRの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=16)の濃度は各々10 mMである。
【図40】(-)-PBS中における(±)-2 (n=16)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から(a)2時間後, (b)2日後及び(c)6日後に測定したDLSの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=16)の濃度は各々10 mMである。
【図41】(-)-PBS中における(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から(a)2時間後, (b)2日後, (c)7日後及び(d)14日後に測定したEPRの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=18)の濃度は各々10 mMである。
【図42】(-)-PBS中における(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から(a)1時間後, (b)2日後, (c)7日後及び(d)14日後に測定したDLSの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=18)の濃度は各々10 mMである。
【図43】(-)-PBS中における(±)-2 (n=20)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から(a)2時間後, (b)2日後及び(c)6日後に測定したEPRの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=20)の濃度は各々10 mMである。
【図44】(-)-PBS中における(±)-2 (n=20)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション粒子の調製から(a)1時間後, (b)2日後及び(c)6日後に測定したDLSの結果である。界面活性剤1と(±)-2 (n=20)の濃度は各々10 mMである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の有機ニトロキシドラジカル化合物、その製造方法、ナノエマルション粒子及びその用途について詳細に説明する。

【0019】
有機ニトロキシドラジカル化合物
本発明の有機ニトロキシドラジカル化合物は、式(1):

【0020】
【化4】
JP2017154767A1_000006t.gif

【0021】
(式中、R1は、炭素数10~26の直鎖アルキル基を示す。)
で表される化合物である(以下、単に「化合物(1)」ともいう。)。該有機ニトロキシドラジカル化合物は、R1が疎水性部分であり、その他の部分が親水性部分である両親媒性を有している。

【0022】
R1は、炭素数10~26の直鎖アルキル基であり、例えば、n-デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、イコシル基等が挙げられる。
R1として、炭素数16~22の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数18~22の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数18~20の直鎖アルキル基が特に好ましい。

【0023】
本発明の有機ニトロキシドラジカル化合物は、ラセミ体及び光学活性体のいずれかであることができる。

【0024】
有機ニトロキシドラジカル化合物の製造方法
化合物(1)は、例えば、式(2):

【0025】
【化5】
JP2017154767A1_000007t.gif

【0026】
(式中、R1は、前記に同じ。)
で表される化合物(以下、単に「化合物(2)」ともいう。)を酸化してラジカルを発生させることにより製造することができる。

【0027】
酸化は、例えば、適当な溶媒中、塩基の存在下で2価の銅化合物を触媒とし、酸化剤を用いて行うことができる。

【0028】
溶媒は、化合物(2)が溶解又は分散し易く、酸化反応に悪影響を及ぼさないものを使用することができる。このような溶媒として、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン等が挙げられる。溶媒の使用量は、化合物(2)1質量部に対して、通常40~60質量部程度であり、35~55質量部程度が好ましい。

【0029】
塩基として、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム等が挙げられる。溶媒の使用量は、化合物(2)1質量部に対して、通常3~5質量部程度であり、2~4質量部程度が好ましい。

【0030】
触媒として、酢酸銅(II)、硝酸銅(II)等の2価の銅化合物が挙げられる。触媒の使用量は適宜選択することができる。例えば、化合物(2)1モルに対して、通常2~5モル程度、好ましくは3~4モル程度使用することができる。

【0031】
酸化剤として、酸素、オゾン、空気、酸化銀、過酸化水素等を挙げられる。酸化剤の使用量は、化合物(2)1モルに対して、通常2~5モル程度、好ましくは3~4モル程度使用することができる。

【0032】
反応温度及び反応時間は、使用する化合物(2)の量、酸化剤等により適宜調整することができる。例えば、反応温度は、通常10~40℃程度、好ましくは20~30℃程度である。反応時間は、通常1~5分間程度、好ましくは1~2分間程度である。

【0033】
化合物(2)は、市販されている製品を使用することができる。或いは、化合物(2)を公知の製造方法を適用して製造することができる。例えば、ニトロンと、ベンゼン環の1位及び4位がそれぞれBrMg基及びOR1基で置換されたグリニャール試薬とのグリニャール反応により製造することができる。
グリニャール試薬の製造、及びグリニャール反応は、グリニャール反応で通常用いられる条件等に従って行うことができる。詳細な反応条件等は、実施例に記載する。

【0034】
ナノエマルション粒子及びその用途
本発明のナノエマルション粒子は、前記有機ニトロキシドラジカル化合物と非イオン性界面活性剤とが0.8:1から1.2:1のモル比で構成され、ニトロキシドラジカルが内包されているものである。

【0035】
本発明のナノエマルション粒子は、前記有機ニトロキシドラジカル化合物と非イオン性界面活性剤とで構成され、前記有機ニトロキシドラジカル化合物が前記非イオン性界面活性剤1モルに対して0.8~1.2モル含まれており、粒子中にニトロキシドラジカルが内包されていることが特徴である。
前記有機ニトロキシドラジカル化合物と前記非イオン性界面活性剤とのモル比が0.8:1から1.2:1であることにより、水系溶媒中で安定なエマルション粒子として存在することができる。より安定なエマルション粒子が得られることから、前記有機ニトロキシドラジカル化合物と非イオン性界面活性剤とのモル比は、1:1であることが好ましい。

【0036】
有機ニトロキシドラジカル化合物は、上述した通りである。

【0037】
非イオン性界面活性剤は、疎水性部分と親水性部分とを有する両親媒性化合物である。
該非イオン性界面活性剤として、例えば、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリアルキレングリコール等のエステルエーテル型界面活性剤;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤;デシルグリコシド、ラウリルグリコシド等のアルキルグリコシド、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。

【0038】
これらの非イオン性界面活性剤の中で、炭素数10~26の直鎖アルキル基を有するものが好ましい。より好ましくは、下記式(3):

【0039】
【化6】
JP2017154767A1_000008t.gif

【0040】
(式中、R2は、炭素数10~26の直鎖アルキル基を示す。nは2以上の整数である。)
で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルである。なお、前記式(3)の非イオン性界面活性剤においては、R2が疎水性部分であり、その他の部分が親水性部分である。

【0041】
R2は、炭素数10~26の直鎖アルキル基であり、例えば、n-デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、イコシル等が挙げられる。
R2の炭素数は、R1の炭素数に近いことが好ましく、R1の炭素数と同じであることがより好ましい。R2として、炭素数16~22の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数18~22の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数18~20の直鎖アルキル基が特に好ましい。
炭素数10~26の直鎖アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等が挙げられる。

【0042】
nは2以上の整数であり、好ましくは、10~20の整数である。

【0043】
また、前記非イオン性界面活性剤は、生体適合性を有するものが好ましい。

【0044】
前記非イオン性界面活性剤として、市販品を使用することができる。例えば、Brij(登録商標)30、Brij(登録商標)35、Brij(登録商標)56、Brij(登録商標)58、Brij(登録商標)78、Brij(登録商標)98等を挙げることができる。

【0045】
本発明のナノエマルション粒子は、水系溶媒中で前記有機ニトロキシドラジカル化合物(化合物(1))と前記非イオン性界面活性剤(化合物(2))とを混合した後、混合物を加熱することにより得ることができる。

【0046】
本発明のナノエマルション粒子の製造に用いる水系溶媒としては、水、親水性有機溶媒、又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒等を使用することができる。
水系溶媒としては、水が好ましい。

【0047】
溶媒における前記有機ニトロキシドラジカル化合物の濃度は、1×10-3~1×10-2mol/Lが好ましく、1×10-2mol/Lがより好ましい。濃度を前記範囲にすることにより、安定性の良好なナノエマルション粒子を得ることができる。

【0048】
溶媒における前記非イオン性界面活性剤のモル濃度は、1×10-3~1×10-1mol/Lが好ましく、1×10-2mol/Lがより好ましい。濃度の前記範囲にすることにより、安定性の良好なナノエマルション粒子を得ることができる。

【0049】
前記有機ニトロキシドラジカル化合物と前記非イオン性界面活性剤との混合比率は、有機ニトロキシドラジカル化合物:非イオン性界面活性剤=0.8:1から1.2:1のモル比の範囲内が好ましく、1:1のモル比がより好ましい。前記有機ニトロキシドラジカル化合物と前記非イオン性界面活性剤とを前記比率で混合することにより、安定性の良好なナノエマルション粒子を得ることができる。
このことから、本発明のナノエマルション粒子は、図1に示すような前記有機ニトロキシドラジカル化合物と前記非イオン性界面活性剤との入れ子構造により形成されているものと推察される。
さらに、前記非イオン性界面活性剤の炭素鎖(R2)と前記有機ニトロキシドラジカル化合物の炭素鎖(R1)とがほぼ等しい長さである場合には、図1のような入れ子構造を形成する際、炭素鎖同士が密に組み合わされ、分子間で働く相互作用も増大するため、より安定なナノエマルション粒子が得られることが考えられる。

【0050】
水系溶媒中で前記有機ニトロキシドラジカル化合物(化合物(1))と前記非イオン性界面活性剤(化合物(2))とを混合する。化合物(1)と化合物(2)とを混合は、好ましくは攪拌下で行われる。化合物(1)と化合物(2)とを、常圧下で、数秒間から数時間攪拌しながら行うことがより好ましい。
攪拌及び混合は、例えば、マグネチックスターラー等を用いて行うこともできるし、超音波又はマイクロウェーブを照射することにより行うこともできる。例えば、水系溶媒中でとして水を用いる場合、攪拌している前記非イオン性界面活性剤の水溶液中に、前記有機ニトロキシドラジカル化合物を滴下して攪拌し、さらに超音波照射することにより両者を混合することが好ましい。
前記有機ニトロキシドラジカル化合物が水に難溶である場合には、前記有機ニトロキシドラジカル化合物が可溶である親水性有機溶媒に予め溶解させ、得られた溶液を前記非イオン性界面活性剤の水溶液中に滴下することが好ましい。混合した後に加熱する温度としては、60~90℃程度が好ましく、85~90℃程度がより好ましい。加熱時間は、15~40分間程度が好ましく、30分間程度がより好ましい。

【0051】
ナノエマルション粒子が形成されたことは、溶液の色が濁色から透明に変化することにより確認することができるが、これに限定されるものではない。

【0052】
本発明のナノエマルション粒子は、粒子の外側が親水性、粒子の内部が疎水性という両親媒性の粒子であって、分子内部にニトロキシドラジカルを内包している。よって、本発明のナノエマルション粒子は、安定的なラジカル構造を有しており、ビタミンC等による還元を受けにくい。
本発明のナノエマルション粒子は、ニトロキシドラジカルにより常磁性を有しており、磁場による運動制御が可能な機能性有機材料として使用することができる。また、ラジカル構造の組織化を効率的におこなうことができるため、磁場制御による物質輸送等への応用、安定ラジカルを含む医薬品ドラッグデリバリーシステム(DDS)への活用が可能である。

【0053】
詳細には、本発明のナノエマルション粒子は、磁性粒子をMRIにより体内の深部までリアルタイムに追跡できることから、MRI用造影剤として利用することが可能である。

【0054】
また、本発明のナノエマルション粒子は、分子の内部が疎水性であることから、分子内部に抗がん剤等の疎水性物質を内包させることができる。さらに粒子径が70nm程度であって、粒子として安定であることから、抗がん剤を内包したナノエマルション粒子に外部磁場を印加することにより、抗がん剤を腫瘍組織に誘導することが可能となる。よって、本発明のナノエマルション粒子は、DDSキャリアーとして利用することが可能である。
この手法によれば、がん細胞近辺に磁石を設置することにより、がん細胞へ効率的に抗がん剤を送達することが可能であり、特に皮膚がん、乳がん等の皮膚直下にできるがん細胞へのターゲッティングに威力を発揮することが期待される。また、本発明のナノエマルション粒子の内部に蛍光剤を内包させれば、がん細胞の位置を特定することが可能となる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
実施例における分析および評価は、以下の方法によって実施した。なお、実施例で使用した試薬は、特に断りがない限り、市販品を購入し、精製せずにそのまま用いた。
【実施例】
【0057】
実施例における分析及び評価は、以下の方法によって実施した。
(1)電子常磁性共鳴(EPR)
EPRは、パルスESR装置(日本電子株式会社製、JES-PX1050型)を使用して測定した。詳細には、サンプルをEPRキャピラリー管内に封入し、両端をパテで閉じた。次にこのキャピラリーをEPR管に挿入し、これをキャビティーに設置した。EPR測定は、室温化、0.33Tの磁場印加条件下でサンプルにマイクロ波を照射して行った。
(2)動的光散乱測定(DLS)
DLSは、動的光散乱解析装置(マイクロトラック・ベル社製、UPA-UT151)を用いて、動的光散乱(DLS)法によって流体力学的直径を測定した。
(3)吸収スペクトル
吸収スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、UV-3600型)を使用して測定した。
(4)蛍光スペクトル
蛍光スペクトルは、BioTek Instruments, Inc.製、Cytation 5 Cell Imaging Multi-Mode Readerを使用して測定した。
【実施例】
【0058】
製造例1(ニトロンの合成)
常圧下、110℃で蒸留した3-ブテン-2-オン(22.0g、0.314mol)を2-ニトロプロパン(139g、1.56mol)に溶解させた。得られた溶液に、0℃でテトラメチルグアニジン(10.8g、0.094mol)をゆっくり加え、混合物を常温で一晩攪拌し、その後、2N塩酸を加えてジエチルエーテルで抽出した。
有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を除去した。さらに、減圧蒸留により未反応の2-ニトロプロパンを除き、5-メチル-5-ニトロヘキサン-2-オン(14.4g、0.090mol、収率29%)を得た。
【実施例】
【0059】
次に、5-メチル-5-ニトロヘキサン-2-オン(20.1g、0.125mol)に水(139mL)及び塩化アンモニウム(17.301g、0.323mol)を加えた。得られた混合物に0℃で亜鉛粉末(77.9g、0.236mol)をゆっくり加えて4時間反応させた。溶液を吸引濾過して固体をメタノールで洗浄した。
濾液をクロロホルム(50mL×3)で抽出して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。クロロホルムを除去した後、ベンゼン共沸により乾燥した。3時間真空乾燥した後、ニトロン((±)-11)を得た(4.83g、0.038mol、収率30%)。
【実施例】
【0060】
実施例1
(1)有機ニトロキシドラジカル化合物の合成(炭素数18の合成例および元素分析結果)
式(1)において、R1が炭素数14の直鎖アルキル基である有機ニトロキシドラジカル化合物(化合物1a)を、以下のようにして合成した。
【実施例】
【0061】
【化7】
JP2017154767A1_000009t.gif
【実施例】
【0062】
マグネシウム(0.506g、20.0mmol)を二口フラスコに入れ、減圧下で乾燥させ、フラスコをアルゴンで満たした。これにテトラヒドロフラン(20mL)及び1-ブロモ-4-テトラデシロキシベンゼン(7.10g、20.0mmol)を加えた。さらに、1,2-ジブロモエタンを少量入れて反応を開始させ、常温で4時間攪拌し、グリニャール試薬を調製した。
【実施例】
【0063】
一方で、製造例1で合成したニトロン(1.27g、10.0mmol)を二口フラスコに入れ、数滴のベンゼンで共沸させた。二口フラスコ内を真空にした後、アルゴンで満たした。そこにテトラヒドロフラン(20mL)を加え、-78℃に冷却し、グリニャール試薬を滴下した。混合物をゆっくり昇温した後、常温で一晩撹拌を続けた。反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)に注ぎ、ジクロロメタン(50mL)で抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。
【実施例】
【0064】
残渣をメタノール(30mL)に溶解させ、25%濃アンモニア水(2mL)及び酢酸銅(0.805g、4.00mmol)を加え、酸素を1分間吹き込んだ。溶液が濃青色に変化した後、反応液を減圧濃縮し、メタノールを留去した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、ジクロロメタン(50mL)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。
最後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/ジエチルエーテル=90/10(容積比))により精製し、化合物1a(0.478g、1.15mmol、収率11.5%)を得た。
【実施例】
【0065】
元素分析Calculated (%): C, 77.83; H, 11.13; N, 3.36. Found (%): C, 77.61; H, 11.01; N, 3.34.
EPR(THF, 25℃):g=2.0067, aN=1.38 mT
【実施例】
【0066】
(2)ナノエマルション粒子の調製
界面活性剤として、シグマ・アルドリッチ社製Brij(登録商標)58(ポリオキシエチレンセチルエーテル、n=20)(0.114g)をバイアルに入れ、必要量の水を加え、2分間超音波照射を行い、1×10-2Mの界面活性剤水溶液10mLを調製した。
【実施例】
【0067】
化合物1a(8.52mg、20.4μmol)を少量のジエチルエーテルに溶解させた。得られたジエチルエーテル溶液を、激しく攪拌している界面活性剤水溶液(2.0mL)中に少しずつ滴下し、30分間攪拌させた。その後、3分間超音波照射し、続いて90℃で30分間加熱することによりナノエマルション粒子を調製した。
【実施例】
【0068】
比較例1
1-ブロモ-4-テトラデシロキシベンゼンの代わりに1-ブロモ-4-ブトキシベンゼン(4.58g、20.0mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、式(1)においてR1が炭素数4の直鎖アルキル基である有機ニトロキシドラジカル化合物を合成した(0.396g、1.43mmol、収率14.3%)。
【実施例】
【0069】
元素分析Calculated (%): C, 73.87; H, 9.48; N, 5.07. Found (%): C, 73.63; H, 9.66; N, 5.02.
EPR(THF, 25℃):g=2.0067, aN=1.39 mT
【実施例】
【0070】
実施例1(2)で調製した界面活性剤水溶液(1×10-2M)に、上で得られた有機ニトロキシドラジカル化合物(2.76mg、10μmol)をマイクロシリンジで滴下した。そこに5秒間超音波照射するとマクロエマルション(粒子径約1mm)が生成し、バイアル底部に沈降した。このマクロエマルションは永久磁石(最大500mT)に応答し、水中を自由に動いた。
これは、該マクロエマルション中の有機ニトロキシド化合物が磁性を有していることに基づくものである。これより、同様の有機ニトロキシド化合物を有している実施例1で調製したナノエマルション粒子も、磁性を有していることが容易に予想できる。
【実施例】
【0071】
その後、再度超音波照射し(20秒間)、次いで90℃で30分間加熱することによりナノエマルション粒子を調製した。
【実施例】
【0072】
比較例2
1-ブロモ-4-テトラデシロキシベンゼンの代わりに1-ブロモ-4-オクトキシベンゼン(5.71g、20.0mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、式(1)においてR1が炭素数8の直鎖アルキル基である有機ニトロキシドラジカル化合物を合成した(0.686g、2.06mmol、収率20.6%)。
【実施例】
【0073】
元素分析Calculated (%): C, 75.86; H, 10.31; N, 4.21. Found (%): C, 75.99; H, 10.35; N, 4.19.
EPR(THF, 25℃):g=2.0066, aN=1.39 mT
【実施例】
【0074】
上記で得られた有機ニトロキシドラジカル化合物を用い、実施例1(2)と同様にしてナノエマルション粒子を調製した。
【実施例】
【0075】
試験例1(ナノエマルション粒子の安定性評価)
実施例1、比較例1及び比較例2で調製したナノエマルション粒子について、1日後、3日後、5日後、及び7日後にEPR及びDLSを測定した。実施例1のナノエマルション粒子の結果を図2~5に、比較例1のナノエマルション粒子の結果を図6~9に、及び比較例3のナノエマルション粒子の結果を図10~13に示す。
【実施例】
【0076】
図2~5より、実施例1のナノエマルション粒子は、1日目から2日目にかけて粒径が急激に増加し、2日目以降、粒径が一定(約70nm)となったことから、7日間にわたって安定に存在することが分かった。EPRスペクトルに化合物1a由来のピーク(3本線)が見られなかったことから、滴下したほぼすべての化合物1aがナノエマルション粒子内部に内包されていることがわかった。
【実施例】
【0077】
図6~9より、7日間にわたって粒径は一定(約9nm)であり、EPRスペクトルの線形にも大きな変化が見られなったことから、ナノエマルション粒子は7日間にわたって安定に存在していることがわかった。しかし、EPRスペクトルのピークが若干3本見えていることから、ナノエマルション粒子から化合物1aの漏れが生じていることがわかった。
【実施例】
【0078】
図10~13より、7日間にわたって粒径は一定(約100nm)であり、EPRスペクトルの線形にも大きな変化が見られなったことから、ナノエマルション粒子は7日間にわたって安定に存在していることがわかった。しかし、EPRスペクトルのピークが若干2本見えていることから、ナノエマルション粒子から化合物1aの漏れが生じていることがわかった。
【実施例】
【0079】
上記結果より、実施例1のナノエマルション粒子は水中で安定に存在することがわかった。
【実施例】
【0080】
試験例2(ナノエマルション粒子の安定性評価(10倍希釈))
実施例1でナノエマルション粒子を調製した後、水溶液の濃度を10倍に希釈し、EPR及びDLSを測定した。その結果を図14に示す。
【実施例】
【0081】
図14より、希釈の前後でEPRスペクトルの線形に大きな変化はなく、粒子径も変わらないことから、実施例1で調製したナノエマルション粒子は、10倍希釈後も安定に存在することがわかった。
【実施例】
【0082】
実施例2
ナノエマルションをリン酸バッファー中で調製した。
【実施例】
【0083】
界面活性剤であるBrij(登録商標)58(0.114g)をバイアルに入れ、必要量のリン酸緩衝水溶液((-)-PBS)を加え、2分間超音波照射を行い、1×10-2Mの界面活性剤のリン酸緩衝水溶液10mLを調製した。
【実施例】
【0084】
化合物1a(8.52mg、20.4μmol)を少量のエーテルに溶解させた。得られたエーテル溶液を、激しく攪拌している界面活性剤のリン酸緩衝水溶液(2.0mL)中に少しずつ滴下し、30分間攪拌させた。その後、3分間超音波照射し、続いて90℃で1時間加熱することによりナノエマルション溶液(2.0mL)を調製した。
【実施例】
【0085】
試験例3(リン酸バッファー中におけるナノエマルション粒子の安定性評価)
実用性を評価する目的で、化合物1aを内包した界面活性剤のナノエマルション粒子のリン酸緩衝水溶液中における安定性(経時変化)をEPR分光法及びDLS測定により評価した。結果を図15~18に示す。
【実施例】
【0086】
図15~18より、純水中とは異なり、7日目にはエマルション粒子同士が合一した。これは、エマルション以外の別の構造体(会合ミセル、ラメラ構造等)に変化したと考えられる。よって、ナノエマルション粒子は、リン酸緩衝水溶液中においては純水中ほど安定することができないと考えられる。
【実施例】
【0087】
試験例4(リン酸バッファー中におけるナノエマルション粒子のアスコルビン酸に対する安定性評価)
アスコルビン酸に対する安定性を評価するため、実施例2と同様にして調製したナノエマルション粒子のリン酸緩衝水溶液(2.0mL)に、アスコルビン酸(3.59mg、0.02mmol)を添加し、EPRスペクトルを測定した。測定開始直後の314.5mT~339.5mT(3145~3395ガウス)の範囲のEPRスペクトルの面積値(2回積分値)を100%として、スペクトル面積値の時間変化を測定した。結果を図19に示す。
【実施例】
【0088】
図19より、化合物1aの濃度が一定となるまでに約150分かかった。よって、このナノエマルション粒子は還元剤に対して徐々に還元されるため、DDS、MRI用造影剤等への適用に有利であると考えられる。
【実施例】
【0089】
実施例3
リン酸バッファー中でピレン(疑似薬剤)及び化合物1aを内包した界面活性剤のナノエマルション粒子を調製した。
【実施例】
【0090】
化合物1a(8.52mg、20.4μmol)及びピレン(0.20mg、0.99μmol)を少量のエーテルに溶解させた。得られたエーテル溶液を、激しく攪拌している界面活性剤のリン酸緩衝水溶液(2.0mL)中に少しずつ滴下し、30分間攪拌させた。その後、3分間超音波照射し、続いて90℃で1時間加熱することによりナノエマルション溶液(2.0mL)を調製した。
【実施例】
【0091】
試験例5(リン酸バッファー中におけるピレンを内包したナノエマルション粒子の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定)
エマルション内部にピレンが内包されていることを確認するために、実施例3で調製したナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)の吸収スペクトルを測定した。
比較として、リン酸緩衝水溶液のみ(Only (-)-PBS)、ピレンをリン酸緩衝水溶液に添加した後の上澄み溶液(Pyrene /(-)-PBS)、ピレンを内包したミセル(Pyrene /5/(-)-PBS)の吸収スペクトルをそれぞれ測定した。
また、ナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)及びピレンを内包したミセル(Pyrene /5/(-)-PBS)についてはDLSを測定した。それらの結果を図20~23に示す。
また、ナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)については、350~500nmの範囲の吸収スペクトルの拡大図を図24に示す。
【実施例】
【0092】
図23より、化合物1aとともにピレンが内包された界面活性剤のナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)では、ピレン由来の吸収スペクトルが確認された。また、ピレンは通常水に極めて難溶でありバイアルの底部に沈殿するが、実施例3で調製したエマルション溶液ではバイアルの底部に沈殿物は確認されなかった。よって、加えられたピレンは磁性エマルションの内部に内包されていると考えられる。
【実施例】
【0093】
また、DLS測定より、化合物1a及びピレンを内包したナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)の粒径は約15nmとなった(図23)。
化合物1aなしでピレンのみを内包したミセル(Pyrene /5/(-)-PBS)の粒径が約10nmであることから(図22)、エマルション粒子1個に内包されるピレンは微量であると考えられる。
【実施例】
【0094】
さらに、化合物1aとともにピレンが内包された界面活性剤のナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)については蛍光スペクトルを測定した。比較のために、リン酸緩衝水溶液のみ(Only (-)-PBS)、ピレンをリン酸緩衝水溶液に添加した後の上澄み溶液(Pyrene /(-)-PBS)、ピレンを内包したミセル(Pyrene /5/(-)-PBS)の蛍光スペクトルをそれぞれ測定した。
図23の吸収スペクトルから最大吸収波長を見積もり、励起波長(λex=320±10nm)を決定した。それらの結果を図25~28に示す。
また、ナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)については、425~500nmの範囲の蛍光スペクトルの拡大図を図29に示す。
【実施例】
【0095】
図28より、化合物1a及びピレンを内包したナノエマルション粒子に関しては、強度の大きい発光現象は見られなかった。この原因は、化合物1a中のニトロキシドラジカル(N-O・)がn-π*遷移(450nm)を有しているため(図24参照)、蛍光消光するためと考えられる。
その証拠に、図28の化合物1a及びピレンを内包したナノエマルション粒子(Pyrene/(±)-10c/5/(-)-PBS)の蛍光スペクトルを拡大すると、450nm近傍にわずかながら発光が見られた(図29)。
【実施例】
【0096】
実施例4
磁性ナノエマルションのMRI造影能評価と抗癌剤内包磁性ナノエマルションの細胞毒性評価
【実施例】
【0097】
(1)有機ニトロキシドラジカル化合物(±)-2(n=18)の合成
式(1)において、R1が炭素数18の直鎖アルキル基である有機ニトロキシドラジカル化合物(化合物1b)を、以下のようにして合成した。
【化8】
JP2017154767A1_000010t.gif
【実施例】
【0098】
削り状のマグネシウム(0.253 g, 10 mmol)を二口フラスコに入れ、減圧下で乾燥させ、フラスコをアルゴンで満たした。これにテトラヒドロフラン(10 mL)及び少量の1,2-ジブロモエタンを加え、10分間撹拌させた。これに、事前にベンゼン共沸により乾燥させた1-ブロモ-4-オクタデシロキシベンゼン(4.255 g, 10 mmol)を溶解させたテトラヒドロフラン溶液(40 mL)を加えた。常温で2時間攪拌し、グリニャール試薬を調製した。
【実施例】
【0099】
一方で、製造例1で合成したテトラメチルニトロン(0.635 g, 5.00 mmol)を二口フラスコに入れ、数滴のベンゼンで共沸させた。二口フラスコ内を真空にした後、アルゴンで満たした。そこにテトラヒドロフラン (20 mL) を加え、-78 oCに冷却し、グリニャール試薬を滴下した。混合物をゆっくり昇温した後、常温で一晩撹拌を続けた。反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(100 mL) に注ぎ、ジクロロメタン (100 mL) で抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。
【実施例】
【0100】
残渣をメタノール(30 mL)とジクロロメタン(30 mL) の混合溶液に溶解させ、25%濃アンモニア水(2 mL)及び酢酸銅(0.805g, 4.00 mmolを加え、酸素を1分間吹き込んだ。溶液が濃青色に変化した後、反応液を減圧濃縮し、メタノールを留去した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)を加え、ジクロロメタン(100 mL)で抽出した。
【実施例】
【0101】
得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。最後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン/ジエチルエーテル=90/10 (容積比))により精製し、有機ニトロキシドラジカル化合物(±)-2 (n=18)(0.440 g, 0.93 mmol、収率18.6 %)を得た。
元素分析Calculated (%): C, 78.76; H, 11.51; N, 2.96. Found (%): C, 78.89; H, 11.49; N, 2.78.
EPR (0.1 mM in THF, 25 oC): g=2.0068, aN=1.39 mT
【実施例】
【0102】
(2)(-)-PBS中における(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性
(ナノエマルション粒子の調製)
界面活性剤として、シグマ・アルドリッチ社製Brij(登録商標)58(ポリオキシエチレンセチルエーテル、n=20) (0.225 g, 200 μmol)をバイアルに入れ、必要量の(-)-PBSを加え、加熱(90 oC, 2分間)と超音波照射 (1分間)を行い、10 mMの界面活性剤水溶液20 mLを調製した。
化合物(±)-2 (n=18) (7.06 mg, 15μmol)を少量のジエチルエーテルに溶解させた。これに界面活性剤水溶液(1.5 mL) を滴下し、1分間攪拌させた。その後、90 oCで10分間加熱することにより(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションを調製した。
【実施例】
【0103】
(3)(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションの還元耐性
【化9】
JP2017154767A1_000011t.gif
【実施例】
【0104】
(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションをダルベッコリン酸緩衝液(-)-PBS(Wako, Lot. DSJ7024)中で作製し、磁性ナノエマルションの還元剤に対する安定性を評価した。具体的には、(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションの水溶液にラジカルに対して1.75倍のアスコルビン酸を添加し、磁性ナノエマルションのアスコルビン酸耐性をDLS法とEPR分光法を用いて評価した。
【実施例】
【0105】
界面活性剤1と(±)-2 (n=18)とアスコルビン酸の濃度比は、[1/ (±)-2 (n=18) / Ascorbic acid = 1.0 ×10-2 mM / 1.0 ×10-2 mM / 1.75 ×10-2 mM]とした。調製方法は、少量のエーテルに溶解させた(±)-2 (n=18)の溶液に界面活性剤水溶液を1.5 mL加えた後、90 ℃で加熱し、エーテルを系から除去することで、磁性ナノエマルションを調製した。得られた磁性ナノエマルションにアスコルビン酸を添加し、EPR測定とDLS測定を直ちに行った。
【実施例】
【0106】
ラジカル濃度の変化については、EPRスペクトルを二回積分し、開始直後のEPRスペクトルの二回積分値を100として計算を行った(図30)。
その結果、この磁性ナノエマルションはTEMPOLのような水溶性ラジカルと比べて、ゆっくりと還元を受けることが分かった。この結果は、磁性ナノエマルションがアスコルビン酸に対して優れた還元耐性を有していることが示された。
本測定では、EPR装置としてJEOL RE-2Xを使用した。
【実施例】
【0107】
(4)MRIファントム測定
ガドリニウム製剤に代わるMRI造影剤として(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションが有効であると考えた。
そこで、4.7 Tの磁場印加条件下でMRIファントム測定を行い、磁性ナノエマルションと疎水性擬似ドラッグ或いはドラッグを内包した磁性エマルションのMRIにおける画像造影能力を評価した。
擬似ドラッグとしてピレン6 (SIGMA-ALDRICH, Lot. S22012)、テトラフェニルポルフィリン8を使用した。また、疎水性のドラッグとしてヒドロコルチゾン9 (TCI, LOT. SZ6YA)とパクリタキセル7 (サワイ、パクリタキセル注射液30 mg)を使用した。7は実際に医療現場で使用されている抗がん剤である。
【実施例】
【0108】
測定法
本測定では、Bruker 4.7 Tマシン (BioSpec 47 USR) を使用した。(-)-PBS中で (±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション[1 / (±)-2 (n=18) = 10 mM / 10 mM]を調製した。さらに、この溶液を1/2, 1/8, 1/16に希釈し、1.25 mMから10 mMの(±)-2 (n=18)を内包した磁性ナノエマルションを計4種類調製した。
【実施例】
【0109】
また、擬似ドラッグ或いはドラッグを内包した磁性エマルションについては、(±)-2 (n=18)に対して10 mol%の疎水性化合物6, 7, 8或いは9を内包した磁性ナノエマルション [1と(±)-2 (n=18)の最終濃度: 各々10 mM] を調製した。ただし、7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションについては、先と同様に水溶液を希釈し、1.25 mMから10 mMの(±)-2 (n=18)を内包した磁性ナノエマルションを計4種類調製した。
【実施例】
【0110】
これらのサンプルから1 mLをプラスチック製のチューブに移し、それをサンプルホルダーに設置した。続いてこのホルダーをMR装置内に挿入した。最後に、レーザーによるサンプルの位置決めを行った後、室温条件下で測定を行った。測定手法としてはスピンエコー法を用いた。画像用の測定条件とr1値算出用の測定条件は異なっており、それぞれ次のようになっている。
【実施例】
【0111】
[画像用の条件; エコー時間 (TE) = 20 ms, 繰り返し時間 (TR) = 200 ms, r1値算出用の測定条件; エコー時間 (TE) = 10 ms, 繰り返し時間 (TR) = 5000, 3000, 1500, 800, 400 and 200 ms].
【実施例】
【0112】
測定結果
図31aに得られたMR画像を示す。
(a) パネル(A-D): (±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションのT1強調画像 [1 と(±)-2 (n=18)の最終濃度: 各々10, 5, 2.5, 1.25 mM] パネル(E-H): 10 mol%の7を内包した界面活性剤1 と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションのT1強調画像 [1と(±)-2(n=18)の最終濃度: 各々10, 5, 2.5, 1.25 mM] パネル(I-K): 10 mol%の(I) 6、(J) 8、(K) 9を内包した界面活性剤1と (±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションのT1強調画像 [1と(±)-2 (n=18)の最終濃度: 各々10 mM] パネル(L): コントロール(-)-PBS.
図31aより、コントロール[(-)-PBS]と比較して、何れのサンプルからもコントラストの増加が観察されたが、10 mMの(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションは優れた造影効果を示した。
さらに、10 mol%の7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションはより優れた造影効果を示すことが分かった。
(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションと7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションに関しては、各々の濃度におけるT1緩和時間を算出し、(±)-2 (n=18)の造影能力の指標となるr1値を算出した。r1値はy軸にT1緩和時間の逆数を、x軸に(±)-2 (n=18)の濃度をとって描いた近似直線の傾きとして求められる。
【実施例】
【0113】
図31bと図31cは、それぞれ、 (±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションと7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルション中に含まれる(±)-2 (n=18)の濃度とT1緩和時間の関係を示す。
(b) (±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションと(c) 7を内包した界面活性剤1 と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションにおける(±)-2 (n=18)の濃度とT1緩和時間の関係.
グラフの傾きからr1値を算出すると、それぞれ0.12 s-1/mMと0.16 s-1/mMと算出された。この結果は、7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションが、(±)-2 (n=18)のみを内包した磁性ナノエマルションと比べて水の緩和をより効果的に短縮することを示唆している。
7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションの粒径は12 nmであり、(±)-2 (n=18)のみを内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション (粒径16 nm)よりも小さい。また、EPRスペクトルは三本線成分が観察された。
これらのことを勘案すると、7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションにおいては、その内部に存在している水分子と外部に存在している水分子との間で早い交換が起こっていると考えられる。さらに、(±)-2 (n=18)の回転相関時間が増加していることを示唆されている。
【実施例】
【0114】
(5)In vitroにおける細胞毒性評価
(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションと、7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションのHeLa細胞に対する毒性評価行った。
【実施例】
【0115】
測定法
10%のウシ胎児血清 (SIGMA-ALDRICH, LOT 14A189)と1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Wako, Penicillin-Streptomycin Solution (×100))を含むダルベッコ改変イーグル培地 (Wako, LOT DSG7015)中で培養されたHeLa細胞を、96ウェルマイクロプレート (ThermoFisher SCIENTIFIC, Nunclon(TM)Delta 96-Well MicroWell(TM) Plates, Sterile)の各ウェルにHeLa細胞を9,000個/100 μLずつ播種した。
続いて界面活性剤1のミセル水溶液、(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション、0.001 mol%の7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルション、7の(-)-PBS溶液をそれぞれ10 μLずつウェルに加え、インキュベータ(Thermo SCIENTIFIC, HERACELL 150i)で24時間培養 (温度: 37 oC、二酸素濃度: 5%)した。
ミセル水溶液 [1の濃度: 10 mM]、(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション [1 と(±)-2 (n=18)の濃度: 各々10 mM]と7の(-)-PBS溶液 [7の濃度: 10 μM]は、ウェルに添加される前に(-)-PBSで1/32 [1 と(±)-2 (n=18)の最終濃度: 各々0.313 mM]、1/64 [0.156 mM]、1/128 [0.078 mM]、1/256 [0.039 mM]に希釈された。
続いて、これらの水溶液を各ウェルに添加した。24時間培養後、各ウェルを(-)-PBSで二回洗浄し、cck-8 評価法(同仁化学研究所、LOT JH159)により評価した。
本測定では、cck-8試薬を添加後、30分間培養し、マイクロプレートリーダー (TECAN、infinite M200)により細胞数に応じた吸光度 (波長: 450 nm)を測定した。解析の際は、コントロールとして(-)-PBSのみを添加した際に得られた細胞生存率を100%として各サンプルにおける細胞生存率を算出した。また、一つのサンプルにつき4ウェル使用し、各ウェルから得られた細胞生存率の平均を算出した。
なお、ミセル水溶液とすべての磁性エマルションは(-)-PBS中で調製した。
【実施例】
【0116】
測定結果
図32a:界面活性剤1のミセル水溶液と(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションの細胞毒性.
図32b:7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションと、7の(-)-PBS溶液の細胞毒性.
図32aより、32倍かそれ以上の希釈条件ではHeLa細胞に対してほとんど毒性を示さないことがわかった。
一方、図32bより、7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションと7の(-)PBS溶液は、32倍かそれ以上の希釈条件においてもHeLa細胞に対して毒性を示した。
この結果は、抗がん剤を磁性ナノエマルションに内包させた場合でも、それが抗がん剤として有効に働くことを示している。さらに、64倍と128倍希釈条件における殺細胞効果を見ると、磁性ナノエマルションに内包された7が、溶液中に分散した状態でいる7よりも2倍の細胞毒性を示すことが分かった。
このことは、比較的低濃度条件において、7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションがHeLa細胞内に効果的に取り込まれることを示している。磁性ナノエマルション内部から放出された7が薬剤活性であるという事実は、7を内包した界面活性剤1と(±)-2 (n=18)から構成された磁性ナノエマルションが薬剤送達システムのキャリヤとして有効であることを示している。
【実施例】
【0117】
実施例5
化合物の最適化の経緯を示すデータ
【化10】
JP2017154767A1_000012t.gif
界面活性剤1とそれぞれ長さの異なるアルキル側鎖を有する疎水性のラジカルを用いて、リン酸緩衝液(-)-PBS中で純有機磁性ナノエマルションを作製し、その安定性を評価した。
具体的には(-)-PBS中で作製した磁性ナノエマルションの安定性をEPR分光法とDLS法により評価した。
磁性ナノエマルションの安定化条件の結果を示す。
【化11】
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【実施例】
【0118】
(1)(±)-3を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション

【化12】
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(±)-3をエーテルに溶解させて、この溶液を界面活性剤水溶液で分散させることにより磁性ナノエマルションの調製を試み、磁性ナノエマルションの安定性をEPR分光法とDLS法により評価した。
界面活性剤1と(±)-3の濃度比は、[1 /(±)-3 = 10 mM / 10 mM]とした。調製方法は、少量のエーテルに溶解させた(±)-3の溶液に、界面活性剤水溶液を1 mL加えた後、90 ℃で加熱し、エーテルを系から除去することで、ナノエマルションを調製した。系からエーテルが除去されると、溶液の色が黄濁色から黄色透明に変化した。
図33は調製後のEPRスペクトルと平均粒径である。EPR測定の結果から、三本線成分が確認された。これは、ラジカルが(-)-PBS中で分散していることを示している。
【実施例】
【0119】
(2)(±)-2 (n=4)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション
同様に、(±)-2 (n=4)をエーテルに溶解させて、この溶液を界面活性剤水溶液で分散させることにより磁性ナノエマルションの調製を試み、磁性ナノエマルションの安定性をEPR分光法とDLS法により評価した。
界面活性剤1と(±)-2 (n=4)の濃度比は、[1 / (±)-2 (n=4) = 10 mM / 5.0 mM]とした。界面活性剤に対してラジカルの量は半分である。調製方法は、少量のエーテルに溶解させた(±)-2 (n=4)の溶液に、界面活性剤水溶液を1 mL加えた後、90 ℃で加熱し、エーテルを系から除去することで、ナノエマルションを調製した。
系からエーテルが除去されると、溶液の色が黄濁色から黄色透明に変化した。図34は調製後のEPRスペクトルと平均粒径である。(±)-3の場合と同様に、EPRスペクトルを測定すると三本線成分が確認された。
これは、ラジカルが(-)-PBS中で分散していることを示す。
【実施例】
【0120】
(3)(±)-2 (n=8)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション
(±)-2 (n=8)をエーテルに溶解させて、この溶液を界面活性剤水溶液で分散させることにより磁性ナノエマルションの調製を試み、磁性ナノエマルションの安定性をEPR分光法とDLS法により評価した(図35及び36)。
界面活性剤1と(±)-2 (n=8)の濃度比は、[1 / (±)-2 (n=8) = 10 mM / 5.0 mM]とした。界面活性剤に対してラジカルの量は半分である。調製方法は、少量のエーテルに溶解させた(±)-2 (n=8)の溶液に、界面活性剤水溶液を1 mL加えた後、90 ℃で加熱し、エーテルを系から除去することで、磁性ナノエマルションを調製した。
系からエーテルが除去されると、溶液の色が黄濁色から黄色透明に変化した。調製してから20分経過しないうちに溶液が白濁した。DLS測定の結果から、調製3日後に1000 nm付近に大きな会合体由来のピークが観察された。
これらの結果は、(±)-2 (n=8)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションが(-)-PBS中で非常に不安定であることを示す。
【実施例】
【0121】
(4)(±)-2 (n=14)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション
(±)-2 (n=14)は水に難溶である。そこで、(±)-2 (n=14)をエーテルに溶解させて、この溶液を界面活性剤水溶液で分散させることにより磁性ナノエマルションの調製を試み、磁性ナノエマルションの安定性をEPR分光法とDLS法により評価した(図37及び38)。
界面活性剤1と(±)-2 (n=14)の濃度比は、[1 /(±)-2 (n=14) = 1.0 ×10-2 M / 1.0 ×10-2 M]とした。調製方法は、少量のエーテルに溶解させた(±)-2 (n=14)の溶液に、界面活性剤水溶液を1 mL加えた後、90 ℃で加熱し、エーテルを系から除去することで、ナノエマルションを調製した。
エーテルが除去されると、溶液の色が黄濁色から黄色透明に変化した。DLS測定の結果から、2日後の磁性ナノエマルションの粒径が調製直後と比較して増加していることが分かった。また、水溶液の色も黄色透明から黄濁色に変化していた。6日後には、水溶液中に浮遊物が確認された。
この水溶液は0.45μmφのmembrane filterを通過出来なかったため、DLS測定等は行っていない。
以上の結果から、(±)-2 (n=14)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションは(-)-PBS中で不安定であると考えられる。
【実施例】
【0122】
(5)(±)-2 (n=16)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション
(±)-2 (n=16)をエーテルに溶解させて、この溶液を界面活性剤水溶液で分散させることにより黄色透明の磁性ナノエマルションの調製を試み、磁性ナノエマルションの安定性をEPR分光法とDLS法により評価した(図39及び40)。
EPR測定の結果、(-)-PBS中では、会合体形成に由来するブロードな一本線のみが観測された。また、粒形の経時変化は1日目が16 nm、2日後が27 nm、6日後が37 nmであり、徐々に大きくなった。
この結果から、磁性ナノエマルションは7日間に渡って、安定に存在していることがわかった。
【実施例】
【0123】
(6)(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション
(±)-2 (n=18)をエーテルに溶解させて、この溶液を界面活性剤水溶液で分散させることにより黄色透明の磁性ナノエマルションの調製を試み、磁性ナノエマルションの安定性をEPR分光法とDLS法により評価した(図41及び42)。
EPR測定の結果、(-)-PBS中では、会合体形成に由来するブロードな一本線のみが観測された。また、粒形の経時変化は1日目が16 nm、2日後が17 nm、14日後が24 nmであり、徐々に大きくなった。
この結果から、磁性ナノエマルションは14日間に渡って、安定に存在していることがわかった。また、DLS測定の結果から(±)-2 (n=16)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションと比較して、会合し難いことが分かった。
このことは、(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションが、(±)-2 (n=16)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションよりも(-)PBS中で安定であることを示している。
【実施例】
【0124】
(7)(±)-2 (n=20)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルション
同様に、(±)-2 (n=20)をエーテルに溶解させて、この溶液を界面活性剤水溶液で分散させることにより黄色透明の磁性ナノエマルションの調製を試み、磁性ナノエマルションの安定性をEPR分光法とDLS法により評価した(図43及び44)。
EPR測定の結果、(-)-PBS中では、会合体形成に由来するブロードな一本線のみが観測された。また、粒形の経時変化は7日間に渡って17 nmで一定となった。
この結果から、(±)-2 (n=20)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションが、(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションと同様に、(-)-PBS中で7日間以上、安定であることが分かった。
【実施例】
【0125】
(8)類似のPEG系界面活性剤から構成された磁性ナノエマルション
【化13】
JP2017154767A1_000015t.gif
界面活性剤4と界面活性剤5を用いて、(-)-PBS中で安定な(±)-2 (n = 12, 14, 16, 18 or 20)を内包した磁性ナノエマルションを調製することはできなかった。この理由としては、入れ子構造を形成するには、4と5のポリエチレングリコール鎖或いは、アルキル鎖の長さが短すぎると考えられる。
【実施例】
【0126】
(9)結論
(±)-2 (n=18)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションの平均粒径は16 nm (調製直後)となった。この値は、界面活性剤1のミセル水溶液の粒径(9.0 nm)と(±)-2 (n=18)の分子長(3.3 nm, MM2計算より)の2倍値(6.6 nm)の合計(15.6 nm)とほぼ等しい値である。
(±)-2 (n=20)を内包した界面活性剤1の磁性ナノエマルションの場合は、(±)-2 (n=20)の分子長が3.4 nmであるので、合計(15.8 nm)となる。この値も、DLS測定の結果とよく一致している。
以上より、(±)-2 (n=18)と1または、(±)-2 (n=20)と1の組み合わせが、安定な磁性ナノエマルションを作製する上で最適な選択肢であると結論付けられる。

【符号の説明】
【0127】
1 ナノエマルション粒子
2 有機ニトロキシドラジカル化合物
3 非イオン性界面活性剤
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7
(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
9
(In Japanese)【図11】
10
(In Japanese)【図12】
11
(In Japanese)【図13】
12
(In Japanese)【図14】
13
(In Japanese)【図15】
14
(In Japanese)【図16】
15
(In Japanese)【図17】
16
(In Japanese)【図18】
17
(In Japanese)【図19】
18
(In Japanese)【図20】
19
(In Japanese)【図21】
20
(In Japanese)【図22】
21
(In Japanese)【図23】
22
(In Japanese)【図24】
23
(In Japanese)【図25】
24
(In Japanese)【図26】
25
(In Japanese)【図27】
26
(In Japanese)【図28】
27
(In Japanese)【図29】
28
(In Japanese)【図30】
29
(In Japanese)【図31】
30
(In Japanese)【図32】
31
(In Japanese)【図33】
32
(In Japanese)【図34】
33
(In Japanese)【図35】
34
(In Japanese)【図36】
35
(In Japanese)【図37】
36
(In Japanese)【図38】
37
(In Japanese)【図39】
38
(In Japanese)【図40】
39
(In Japanese)【図41】
40
(In Japanese)【図42】
41
(In Japanese)【図43】
42
(In Japanese)【図44】
43