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明細書 :水素貯蔵剤および水素の貯蔵・放出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-188325 (P2018-188325A)
公開日 平成30年11月29日(2018.11.29)
発明の名称または考案の名称 水素貯蔵剤および水素の貯蔵・放出方法
国際特許分類 C01B   3/22        (2006.01)
B01J  23/46        (2006.01)
C07C 211/64        (2006.01)
C07C 311/48        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
FI C01B 3/22 Z
B01J 23/46 311Z
C07C 211/64
C07C 311/48
B01J 23/42 Z
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2017-090770 (P2017-090770)
出願日 平成29年4月28日(2017.4.28)
発明者または考案者 【氏名】畠山 義清
出願人 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
審査請求 未請求
テーマコード 4G140
4G169
4H006
Fターム 4G140DA05
4G140DB01
4G140DC03
4G140DC07
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BA08A
4G169BA36A
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC04B
4G169BC68A
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE17A
4G169BE17B
4G169BE20A
4G169BE20B
4G169BE22A
4G169BE22B
4G169BE34A
4G169BE34B
4G169CB02
4G169CB03
4G169CB07
4G169CB62
4G169CB66
4G169DA03
4H006AA01
4H006AB80
要約 【課題】効率よく、安全に水素を貯蔵することができる水素貯蔵剤および水素の貯蔵・放出方法を提供すること。
【解決手段】カチオンおよびアニオンからなるイオン液体を含む水素貯蔵剤であって、前記カチオンまたは/およびアニオンが炭素-炭素不飽和結合を含む、水素貯蔵剤を用い、該水素貯蔵剤に水素を接触させて水素を貯蔵し、さらに、貯蔵された水素を脱水素化反応により放出する。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
カチオンおよびアニオンからなるイオン液体を含む水素貯蔵剤であって、前記カチオンまたは/およびアニオンが炭素-炭素不飽和結合を含む、水素貯蔵剤。
【請求項2】
前記カチオンまたは/およびアニオンがフェニル基を含む、請求項1に記載の水素貯蔵剤。
【請求項3】
カチオンが第4級アンモニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオンまたはピペリジニウム系カチオンである、請求項1または2に記載の水素貯蔵剤。
【請求項4】
アニオンがフッ素系アニオンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の水素貯蔵剤。
【請求項5】
イオン液体が以下のいずれかで表される、請求項1~4のいずれか一項に記載の水素貯蔵剤。
【化1】
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【請求項6】
さらに、水素化触媒を含有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の水素貯蔵剤。
【請求項7】
水素化触媒が金属ナノ粒子である、請求項6に記載の水素貯蔵剤。
【請求項8】
金属ナノ粒子が、白金、ニッケル、ロジウム、パラジウム、イリジウムまたはこれらを主成分とする合金である、請求項7に記載の水素貯蔵剤。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子は担持体によって担持された、請求項7または8に記載の水素貯蔵剤。
【請求項10】
担持体がアルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、シリカ、ゼオライトおよびカーボンからなる群より選択される、請求項9に記載の水素貯蔵剤。
【請求項11】
金属ナノ粒子はスパッタ法、アークプラズマ法、またはレーザアブレーション法によってイオン液体中に配置された、請求項7または8に記載の水素貯蔵剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の水素貯蔵剤に水素を接触させる工程を含む、水素の貯蔵方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の水素貯蔵剤に水素を接触させて得られる有機ハイドライド化合物を脱水素化する工程を含む、水素の放出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は水素を効率よく貯蔵し、運搬することのできる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水素の貯蔵・運搬にベンゼン環を有する有機化合物を利用する技術が知られている。このベンゼン環を有する有機化合物が水素化された物質は有機ハイドライドと呼ばれ、有機ハイドライドから白金等の触媒を用いて水素を取り出すことが可能である。特に実用化に近い有機ハイドライドとしてはメチルシクロヘキサンが挙げられ、現在、実証試験が行われている。しかしながら、現在検討されている有機ハイドライドはすべて揮発しやすい炭化水素であり、燃料電池等の高純度水素を必要とするデバイスへの使用には水素精製機構の搭載が必須となる上、この水素精製機構も開発途上の段階である。また、メチルシクロヘキサンはトルエンを水素化して生成され、脱水素化して再びメチルシクロヘキサンに戻るサイクルを利用するが、トルエンは引火性を有し、毒性が強いという問題点もある。
【0003】
一方、特許文献1にはイオン液体と、イオン液体と化学反応したガスと、未反応ガスである水素とを混合させたガスの貯蔵及び運搬用の混合物が開示されている。しかし、この技術はファン・デル・ワールス力若しくは水素結合等の分子間力でイオン液体内に水素を吸着させることを特徴とするものであり、水素の吸着が弱いという問題がある。
また、特許文献2には担体であるイオン液体に水素を放出可能に組み込み、水素を運搬・保管するシステムが開示されているが、イオン液体に水素を吸着させる具体的方法やイオン液体に吸着させた水素をイオン液体から放出させる具体的方法については開示されていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-150346
【特許文献2】特表2008-537719
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は効率よく、安全に水素を貯蔵することができる水素貯蔵剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はイオン液体の極めて低い蒸気圧に着目し、イオン液体を有機ハイドライドとして利用することを検討した。すなわち、イオン液体から水素を出し入れすることができれば、蒸気圧を無視しうる有機ハイドライドが開発できると考え、検討を行った。その結果、カチオンまたは/およびアニオンに炭素-炭素不飽和結合を含むイオン液体を用いることにより、水素を常温で効率よく貯蔵・運搬できること、すなわち、イオン液体を有機ハイドライドとして利用することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下を提供する。
[1]カチオンおよびアニオンからなるイオン液体を含む水素貯蔵剤であって、前記カチオンまたは/およびアニオンが炭素-炭素不飽和結合を含む、水素貯蔵剤。
[2]前記カチオンまたは/およびアニオンがフェニル基を含む、[1]に記載の水素貯蔵剤。
[3]カチオンが第4級アンモニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニ
ウム系カチオン、ホスホニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオンまたはピペリジニウム系カチオンである、[1]または[2]に記載の水素貯蔵剤。
[4]アニオンがフッ素系アニオンである、[1]~[3]のいずれかに記載の水素貯蔵剤。
[5]イオン液体が以下のいずれかで表される、[1]~[4]のいずれかに記載の水素貯蔵剤。
【化1】
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[6]さらに、水素化触媒を含有することを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の水素貯蔵剤。
[7]水素化触媒が金属ナノ粒子である、[6]に記載の水素貯蔵剤。
[8]金属ナノ粒子が、白金、ニッケル、ロジウム、パラジウム、イリジウム、またはこれらを主成分とする合金である、[7]に記載の水素貯蔵剤。
[9]前記金属ナノ粒子は担持体によって担持された、[7]または[8]に記載の水素貯蔵剤。
[10]担持体がアルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、シリカ、ゼオライトおよびカーボンからなる群より選択される、[9]に記載の水素貯蔵剤。
[11]金属ナノ粒子はスパッタ法、アークプラズマ法、またはレーザアブレーション法によってイオン液体中に配置された、[7]または[8]に記載の水素貯蔵剤。
[12][1]~[11]のいずれかに記載の水素貯蔵剤に水素を接触させる工程を含む、水素の貯蔵方法。
[13][1]~[11]のいずれかに記載の水素貯蔵剤に水素を接触させて得られる有機ハイドライド化合物を脱水素化する工程を含む、水素の放出方法。
【発明の効果】
【0008】
イオン液体は蒸気圧がほぼゼロに近いため、水素貯蔵する有機ハイドライドとして用いることで、水素製造所から水素消費地までが非常に遠距離の場合でも、既存のトルエン等の有機ハイドライドと比較して圧倒的に揮発量が少ないという利点を有する。また、イオン液体は不燃性であり、毒性も比較的低いため、イオン液体を用いて水素を陸送する場合でも、既存のガソリンタンクローリと同様の仕様で安全に製造・運搬できるため、製造・運搬コストを低く抑えられるという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】トリメチルフェニルアンモニウム(TMPA)カチオンの1H-NMRスペクトルを示す図。
【図2】シクロヘキシルトリメチルアンモニウム(CTMA)カチオンの1H-NMRスペクトルを示す図。
【図3】TMPAカチオンの水素化実験の結果を示す図。
【図4】CTMAカチオンの脱水素化実験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<イオン液体>
本発明の水素貯蔵剤は、カチオンまたは/およびアニオンが炭素-炭素不飽和結合(好ましくは炭素-炭素二重結合)を含むイオン液体を含むものである。ここで、イオン液体は、カチオンとアニオンとの組み合わせからなり、液体状態を取りうる塩を意味し、一般に、常圧で融点が100℃以下であるものが好ましく、常温(例えば、20~40℃)で液体状態にあるものがより好ましい。

【0011】
本発明で使用されるイオン液体を構成するカチオンとアニオンのいずれか一方が炭素-炭素不飽和結合を含む基を有していればよいが、カチオンとアニオンの両方が炭素-炭素不飽和結合を含む基を有していてもよい。炭素-炭素不飽和結合を含む基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ビニル基、アリル基などが挙げられるが、フェニル基、ナフチル基などのアリール基がより好ましい。なお、フェニル基やナフチル基などのアリール基は置換基を有してもよい。炭素-炭素不飽和結合を含む基を有するカチオンおよびアニオンはもともと炭素-炭素不飽和結合を含む基を有するものでもよいが、下記のようなイオン液体を構成するカチオンおよびアニオンにおいて、一部の置換基が炭素-炭素不飽和結合を含む基に変換されることにより、炭素-炭素不飽和結合を含む基が導入されたものでもよい。

【0012】
<カチオン>
イオン液体のカチオンのカチオンとしては、例えば、第4級アンモニウム系、イミダゾリウム系、ピリジニウム系、ホスホニウム系、ピロリジニウム系、またはピペリジニウム系のカチオンを使用することができる。

【0013】
第4級アンモニウム系カチオンとしては、脂肪族アンモニウム系カチオンが例示され、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウムなどが挙げられる。
例えば、炭素-炭素不飽和結合を含む基を有する第4級アンモニウム系カチオンとしては、テトラメチルアンモニウムのメチル基の1つがフェニル基に置換された以下のカチオンが挙げられる。
【化2】
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【0014】
イミダゾリウム系カチオンとしては、例えば1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-ヘキシルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムなどが挙げられる。

【0015】
ピリジニウムカチオンとしては、ピリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオンの窒素に結合した水素がアルキル基により置換されたピリジニウムカチオンを挙げることができ、例えば、N-メチルピリジニウムカチオン、N-エチルピリジニウムカチオン、N-ブチルピリジニウムカチオン、N-プロピルピリジニウムカチオン、N-ヘキシルピリジニウムカチオン、N-エチル-3-メチルピリジニウムカチオン、N-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、N-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、N-(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムカチオン等を挙げることができる。

【0016】
ホスホニウム系カチオンとしては、例えば、トリブチル-n-オクチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラ-n-オクチルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、イソプロピルトリフェニルホスホニウム、メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、ブチルトリフェニルホスホニウム、(1-ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。

【0017】
ピロリジニウム系カチオンとしては、例えば、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムなどが挙げられる。

【0018】
ピペリジニウムカチオンとしては、ピペリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオンの窒素に結合した水素がアルキル基により置換されたピペリジニウムカチオンが挙げられ、例えば、N,N-ジメチルピペリジニウムカチオン、N-エチル-N-メチルピペリジニウムカチオン、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムカチオン、N-ブチル-N-メチルピペリジニウムカチオン、N-メチル-N-ペンチルピペリジニウムカチオン、N-ヘキシル-N-メチルピペリジニウムカチオン、N-メチル-N-オクチルピペリジニウムカチオン、N-デシル-N-メチルピペリジニウムカチオン、N-ドデシル-N-メチルピペリジニウムカチオン、N-(2-メトキシエチル)-N-メチルピペリジニウムカチオン、N-(2-メトキシエチル)-N-エチルピペリジニウムカチオン、N-(2-エトキシエチル)-N-メチルピペリジニウムカチオン、N-メチル-N-(2-メトキシフェニル)ピペリジニウムカチオン、N-メチル-N-(4-メトキシフェニル)ピペリジニウムカチオン、N-エチル-N-(2-メトキシフェニル)ピペリジニウムカチオン、N-エチル-N-(4-メトキシフェニル)ピペリジニウムカチオン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルピペリジニウムカチオン等を挙げることができる。

【0019】
<アニオン>
イオン液体のアニオンとしては、例えば、ハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、ホウ素系アニオン、フッ素系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸アニオンが挙げられる。

【0020】
ハロゲン系アニオンとしては、例えば、クロリドイオン、ブロミドイオン、ヨードイオン等が挙げられる。

【0021】
硫黄系アニオンとしては、スルファートアニオン、水素スルファートアニオン、アルキルスルホナートアニオン(例えば、メタンスルホナート、エチルスルホナート、ブチルスルホナート、ベンゼンスルホナート、p-トルエンスルホナート、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホナート、スチレンスルホナート、3-スルホプロピルメタクリレートアニオン、3-スルホプロピルアクリレート等)、アルキルスルファートアニオン(例えば、メチルスルファートアニオン、エチルスルファートアニオン、ブチルスルファートアニオン、オクチルスルファートアニオン、2-(2-メトキシエトキシ)エチルスルファートアニオン等)含窒素複素環を有するアルカンスルホナートアニオン等が挙げられる。

【0022】
リン系アニオンとしては、ホスファートアニオン、水素ホスファートアニオン、二水素ホスファートアニオン、ホスホナートアニオン、水素ホスホナートアニオン、ホスフィナートアニオン、アルキルホスファートアニオン(例えば、ジメチルホスファート、ジエチルホスファート、ジプロピルホスファートアニオン、ジブチルホスファートアニオン等)、アルキルホスホナートアニオン(例えば、メチルホスホナートアニオン、エチルホスホナートアニオン、プロピルホスホナートアニオン、ブチルホスホナートアニオン、メチルメチルホスホナートアニオン等)、アルキルホスフィナートアニオン、ヘキサアルキルホスファートアニオン等が挙げられる。

【0023】
シアン系アニオンとしては、例えば、テトラシアノボレートアニオン、ジシアナミド、チオシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオン等が挙げられる。

【0024】
ホウ素系アニオンとしては、例えば、テトラフルオロボレートアニオン、ビスオキサレートボラートアニオン、テトラフェニルボレート、テトラアルキルボレートアニオン等が挙
げられる。

【0025】
フッ素系アニオンとしては、フルオロハイドロジェネートアニオン、パーフルオロアルキルスルホナートアニオン(例えば、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホナートアニオン、ノナフラートアニオン、パーフルオロオクタンスルホーナートアニオン等)、フルオロホスファートアニオン(例えば、ヘキサフルオロホスファートアニオン、トリ(ペンタフルオ
ロエチル)トリフルオロホスファートアニオン等)、フルオロボレートアニオン(例えば、テトラフルオロボレートアニオン等)、2,2,2-トリフルオロ-N-(トリフルオロメタンスルホニル)アセトアミドアニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば、ビス(トリフルオロメ
チルスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス
(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブチルスル
ホニル)イミドアニオン等)、トリス(パーフルオロアルキルスルホニル)メチドアニオ
ン(例えば、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ノナフルオロブタンスルホニル)メチドアニオン等)、フルオロカルボン酸アニオン(例えば、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、パーフルオロノナン酸等のフルオロカルボン酸からプロトンが解離したアニオン)等が挙げられる。

【0026】
窒素酸化物系アニオンとしては、例えば、硝酸アニオン、亜硝酸アニオンが挙げられる。

【0027】
カルボン酸アニオンは、例えば、飽和脂肪族カルボン酸アニオン、不飽和脂肪族カルボン酸アニオン、脂環式カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオン、カルボニルカルボン酸アニオン、アルキルエーテルカルボン酸アニオン、ハロゲンカルボン酸アニオン、シアノ基含有カルボン酸、アミノ酸アニオン等が挙げられる。

【0028】
飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、イソ酪酸、2-メチル酪酸、イソ吉草酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0029】
不飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、マレイン酸、フマル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0030】
脂環式カルボン酸アニオンは、シクロヘキサン環骨格を有する脂環式カルボン酸アニオンが好ましく、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0031】
芳香族カルボン酸アニオンは、ベンゼン環骨格を有する芳香族カルボン酸アニオンが好ましく、例えば、安息香酸、ケイヒ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0032】
飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、1~4個の水酸基を有する炭素数2~7の飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましく、例えば、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシデカンリン酸、3-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、セレブロン酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0033】
不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、例えば、リシノール酸、リシノレイン酸、リシネライジン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0034】
脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンは、1~4個の水酸基を有する6員環骨格の脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましく、例えば、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、キナ酸(1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸)、シキミ酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0035】
芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、例えば、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、バニリン酸、シリング酸、ピロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0036】
カルボニルカルボン酸アニオンは、CH((CHCO(CH)COO(n及びpは0~2の整数を示す。)で表わされるカルボニルカルボン酸アニオンが好ましく、例えば、ピルビン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0037】
アルキルエーテルカルボン酸アニオンは、CH(CHO(CHCOO(q及びrは0~4の整数を示す。)で表わされるアルキルエーテルカルボン酸アニオンが好ましく、例えば、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、メトキシ酪酸、エトキシ酪酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0038】
ハロゲンカルボン酸アニオンとしては、例えば、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、パーフルオロノナン酸等のフッ素置換ハロゲンカルボン酸からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。

【0039】
シアノ基含有カルボン酸アニオンとしては、シアノ酢酸、6-シアノヘキサン酸等からプロトンが解離したアニオンなどが挙げられる。

【0040】
前記アニオンの中ではフッ素原子を含有するアニオンが好ましく、PF6 - 、PF3 (C2 5 3 - 、PF3 (CF3 3 - 、BF4 - 、BF2 (CF)2 - 、BF3 (C
3 2 - 、N(FSO2 2- 、N(SO2 CF32 - 、N(SO2 2 5 2-
よびCF3 SO3- などが好ましい。この中では、低融点下効果の大きい、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(N(SO2 CF32 - [TFSA] -)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド(N(SO2 252-)、ビス(フルオロスルホニル)アミド(N(FSO22-)がより好ましい。
アニオンに水素を貯蔵することを考えると、下記のトリフルオロメタンスルホンアニリドなど、[TFSA]-にフェニル基を導入した(SO2 CF3の1つがフェニル基で置換された)タイプのアニオンも利用できる。
【化3】
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【0041】
本発明において、水素貯蔵剤として使用される炭素-炭素不飽和結合を有する基を含むイオン液体としては、上記のカチオンおよびアニオンから任意の組み合わせが選択でき、その任意の組み合わせにおいて、カチオンおよびアニオンのいずれか一方または両方が炭素-炭素不飽和結合を有する基を含むイオン液体を使用できるが、より好ましい組み合わせとしては、例えば、以下である。
【化4】
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なお、イオン液体は公知の方法で入手または調製することができる。例えば、東京化成工業株式会社や関東化学株式会社などから入手できる。

【0042】
<金属ナノ粒子>
本発明の水素貯蔵剤は、水素化のための触媒を含むことが好ましい。水素化のための触媒としては、白金、 ニッケル、 ロジウム、 パラジウム、イリジウムなどの触媒機能を有
する金属またはこれらを主成分とする合金が挙げられ、これらの金属のナノ粒子(平均粒径がnmオーダーの粒子)を含むことが好ましい。
これらの金属粒子はイオン液体中に添加することができるが、アルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、シリカ、ゼオライト、およびカーボン等の担体に金属粒子を付着させた状態でイオン液体中に添加することが好ましい。
あるいは、スパッタ法、アークプラズマ法、レーザアブレーション法等を用いて金属ナノ粒子をイオン液体中に直接形成してもよい。
スパッタ法とは、アルゴンガス粒子をターゲット材にぶつけて、その衝撃でターゲット材成分をたたき出し、ターゲット材近辺に置いた基板上にターゲット材成分の薄膜を形成する方法をいう。また、アークプラズマ法とは、円筒状のアノード電極とこのアノード電極の内側に蒸着材料を電気的に接続した円柱状のカソード電極を同軸上に配置したアークプラズマ蒸着源から、前記蒸着材料を原子又は分子として照射し、イオン液体中にナノ粒子を単分散化して混入形成させることを特徴とする製造方法をいう。
また、レーザーアブレーション法とは、集光されたレーザー光を真空中に設置された固体原料に照射し、光化学反応を伴う爆発的な気化によって発生した励起科学種を対向する基板上に薄膜 として堆積する方法をいう。

【0043】
<水素貯蔵方法>
本発明の水素貯蔵剤は炭素-炭素不飽和結合を有する基を含むため、水素化反応により炭素-炭素不飽和結合の部位に水素を結合させることができる。
水素化反応は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、イオン液体、好ましくはイオン液体と触媒を含む組成物を含む反応系に水素を加え、100℃以上、より好
ましくは200℃以上、500℃以下の温度条件下において加圧する。水素圧は0.1~70 MPaの
範囲が好ましい。

【0044】
<水素放出方法>
貯蔵した水素は脱水素化反応により放出させることができる。例えば、イオン液体、好ましくはイオン液体と触媒を含む組成物を含む容器内で真空から大気圧において100℃以上
、より好ましくは200℃以上500℃以下に加熱することで水素を取り出すことができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の態様には限定されない。
【実施例】
【0046】
イオン液体の水素化確認には、トリメチルフェニルアンモニウム(ビストリフルオロメタンスルホニル)アミド([TMPA][TFSA])を使用した。[TMPA][TFSA]は、東京化成工業株式会社製のトリメチルフェニルアンモニウムクロリドと関東化学株式会社製のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドを、どちらも水溶液にしたのち混合することで合成した。[TMPA][TFSA]を使用したのは、[TFSA] -を構成アニオンとするイオン液体が低融点となる利点があるためである。
【化5】
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【実施例】
【0047】
[TMPA][TFSA]の水素化は、アルミナ上に担持されたロジウム触媒(和光純薬工業株式会社製、ロジウム5%)を用いて、温度150℃、水素圧4.5 MPaの条件下、高圧容器中において24
h撹拌することにより行った。触媒の量は[TMPA][TFSA]2 mlに対し30 mgとした。[TMPA][TFSA]の水素化は1H-NMRにより確認した。その結果、図1に示されるTMPAのベンゼン環の
水素およびメチル基の水素のピークは、図3のように変動し、これはベンゼン環が水素化されてシクロヘキシル環に変化したことにより、シクロヘキシル環の水素のピークが現れ、メチル基の水素のピークも低シフト領域に移動したと考えられた。分子数としては [TMPA][TFSA]の5%程度が水素化されたことが確認された。
【実施例】
【0048】
次に、[TMPA][TFSA]を完全に水素化した状態のイオン液体である、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルアミド([CTMA][TFSA])を用いて脱水素化を行った。[CTMA][TFSA]は東京化成工業株式会社製の試薬を用いた。脱水素化は、アルミナ上に担持された白金触媒(和光純薬工業株式会社製、白金5%)を用いて、温度150℃、1000 Pa以下の条件下、ガラス容器中において24 h撹拌することにより行った。触媒の量は[CTMA][TFSA]2 mlに対し30 mgとした。その結果、図4に示すように、分子数とし
て0.1%程度の[CTMA][TFSA]が脱水素化されたことを1H-NMRにより確認できた。
【実施例】
【0049】
以上のように、フェニル基を含むイオン液体を用いることにより、上記のような極めて温和な条件でも水素の貯蔵と放出を行うことができた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3