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明細書 :多能性幹細胞から樹状分岐した集合管を伴う腎臓構造を作製する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-183137 (P2018-183137A)
公開日 平成30年11月22日(2018.11.22)
発明の名称または考案の名称 多能性幹細胞から樹状分岐した集合管を伴う腎臓構造を作製する方法
国際特許分類 C12N   5/077       (2010.01)
C12N   5/074       (2010.01)
C12N   1/00        (2006.01)
C12N   5/0735      (2010.01)
FI C12N 5/077
C12N 5/074
C12N 1/00 G
C12N 1/00 B
C12N 1/00 T
C12N 5/0735
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 42
出願番号 特願2018-083304 (P2018-083304)
出願日 平成30年4月24日(2018.4.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 2017年11月9日、Cell Stem Cell、2017 Dec 7;21(6):730-746.e6.doi:10.1016/j.stem.2017.11.011.Epub 2017 Nov 9において発表
優先権出願番号 2017086533
優先日 平成29年4月25日(2017.4.25)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】西中村 隆一
【氏名】太口 敦博
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100102015、【弁理士】、【氏名又は名称】大澤 健一
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
Fターム 4B065AA90X
4B065BA25
4B065CA60
要約 【課題】本発明の目的は、in vitroにおいて多能性幹細胞から尿管芽細胞を作製する方法を提供することなどである。より具体的には、尿管芽細胞及びその前駆細胞であるWD前駆細胞様細胞の作製方法を提供することである。
【解決手段】工程A: C-X-Cケモカイン受容体4(Cxcr4)陽性かつKIT癌原遺伝子受容体チロシンキナーゼ(KIT)陽性細胞を得る工程を含む、ウォルフ管(WD)前駆細胞様細胞の作製方法及び、Cxcr4陽性かつKIT陽性であるWD前駆細胞を用いた尿管芽様細胞の作製方法、並びに該尿管芽様細胞を用いた腎臓オルガノイドの作製方法が提供された。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
工程A: C-X-Cケモカイン受容体4(Cxcr4)陽性かつKIT癌原遺伝子受容体チロシンキナーゼ(KIT)陽性細胞を得る工程を含む、ウォルフ管(WD)前駆細胞様細胞の作製方法。
【請求項2】
前記Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞を得る工程が、Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞が、全細胞中の30%以上となる細胞の選別工程である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞が、さらにPaired box(Pax)2、LIM homeobox(Lhx)1、empty spiracles homeobox(Emx)2、ret proto-oncogene(RET)及びhomeobox(HOX)B7からなる群から選ばれる少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくは全て、を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
下記の工程B1、B2、C及びD:
工程B1 多能性幹細胞を、アクチビンA又は腫瘍増殖因子を含む培地中で培養する工程、
工程B2 工程B1により得られる細胞を、Wntアゴニストを含む培地中で培養する工程、
工程C 工程B2により得られる細胞を、(i) レチノイン酸又はレチノイン酸アナログ、(ii) 線維芽細胞成長因子及び(iii) TGFβシグナル経路阻害物質又はWntアゴニスト、を含む培地中で培養する工程、
工程D 工程Cにより得られる細胞を、(i) レチノイン酸又はレチノイン酸アナログ、(ii) Wntアゴニスト、及び(iii) 線維芽細胞成長因子を含む培地中で培養する工程、
(但し、各工程の成分は、同一物質であっても異なった物質であってもよい)
を更に含む、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
工程Aが、工程Dにより得られる細胞から、Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞を選別することにより行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
多能性幹細胞がヒトiPS細胞である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
工程B1において用いる培地が、1 ~ 1000 ng/mLのアクチビンAを含み、工程B2において用いる培地が、1 ~ 1000μMのCHIR99021を含む、請求項3~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
工程B2の培養時間が、1日~2日である、請求項3~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
工程(E) C-X-Cケモカイン受容体4(Cxcr4)陽性かつKIT癌原遺伝子受容体チロシンキナーゼ(KIT)陽性のWD前駆細胞様細胞を、(i) レチノイン酸又はレチノイン酸アナログ、(ii) Wntアゴニスト、(iii) FGF9、及び(iv) ROCK阻害物質を含む培地中で培養する工程を含む、尿管芽様細胞の製造方法。
【請求項10】
さらに、
工程(F) 工程(E)により得られる細胞を、(i) レチノイン酸又はレチノイン酸アナログ、(ii) Wntアゴニスト、(iii) 線維芽細胞成長因子、(iv) ROCK阻害物質、及び(v) グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)又はGDNFアナログを含む培地中で培養する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、
工程(G) 工程(F)により得られる細胞を、(i) レチノイン酸又はレチノイン酸アナログ、(ii) Wntアゴニスト、(iii) ROCK阻害物質、及び(iv) GDNF又はGDNFアナログを含む培地中で培養する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
C-X-Cケモカイン受容体4(Cxcr4)陽性かつKIT癌原遺伝子受容体チロシンキナーゼ(KIT)陽性のWD前駆細胞様細胞から誘導した尿管芽様細胞を、ネフロン前駆細胞、及び胚性腎臓由来の Platelet Derived Growth Factor Receptor Alpha(Pdgfra)陽性間質細胞と共培養することを含む、腎臓オルガノイドの製造方法。
【請求項13】
WD前駆細胞様細胞が、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法により製造されたWD前駆細胞様細胞である、請求項9~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
尿管芽様細胞が、Hnf1b、E-Cadherin及びCALB1を発現する、請求項9~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
アクチビンAを含む培地B1、
Wntアゴニストを含む培地B2、
RA、FGF9、及び、TGFβシグナル経路阻害物質又はWntアゴニストを含む培地C及び
RA、GSK-3β阻害物質及びFGF9を含む培地D
を含む、多能性幹細胞からのWD前駆細胞様細胞作製用キット。
【請求項16】
さらに、Cxcr4抗体及びKIT抗体を含む、請求項15に記載のキット。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多能性幹細胞を用いたウォルフ管(WD)前駆細胞様細胞の作製方法及び尿管芽様細胞の作製方法、並びに腎臓構造の作製方法に関するものである。前記WD前駆細胞様細胞の作製方法は、C-X-Cケモカイン受容体4(Cxcr4)陽性かつKIT癌原遺伝子受容体チロシンキナーゼ(KIT)陽性細胞を得る工程を含む。
【背景技術】
【0002】
腎臓は大きく分けて2つのグループ、3種類の前駆細胞と血管から形成される。3種類の前駆細胞とは、(1)腎臓の濾過を司る機能単位、ネフロンの元になる細胞である、ネフロン前駆細胞 (nephron progenitor)、(2)ネフロン前駆細胞の周囲に存在しその形成を補助する細胞である、間質前駆細胞(stromal progenitor)、(3)ネフロンで作製された尿を集め排泄する管になる細胞である、尿管芽細胞(ureteric bud)であり、これらのうち、(1)及び(2)は成り立ちが近いため、まとめて後腎間葉(metanephric mesenchyme)とも呼ばれる。
【0003】
本発明者らは、これまでに多能性幹細胞から、腎臓の機能モジュールであるネフロンの前駆細胞、ネフロン組織を誘導することに世界で初めて成功し、報告している。
一方で、腎臓のもう一つの構成要素である排泄路のもとになる尿管芽細胞を誘導したという報告がある(非特許文献1及び2)が、ネフロン同士を互いに接続して集合管の樹状分岐構造が再現できたものはない。例えば、非特許文献2においては、尿管芽細胞及びネフロン前駆細胞を同時に誘導しているものの、該尿管芽は樹状分岐能を持たないものであった。
腎臓が働くためには、ネフロンで血液から濾過されて作られた尿が、一つの出口をもつ集合管に接続されていなければならず、多数のネフロンと接続した管が1ヵ所の出口を持つためには、1つの尿管芽と呼ばれる突起が先端で2分岐を繰り返して枝を増やす樹状分岐が再現される必要がある。また、胎児期相当の再生臓器には本来十分な大きさにまで育つための前駆細胞ニッチを維持することが必要であるが、これまで他の臓器を含めてこの前駆細胞ニッチを再現できているものは報告がない。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Xia Y et al., Nat Cell Biol. 2013 Dec;15(12):1507-15.
【非特許文献2】Takasato M et al., Nature. 2015 Oct 22;526(7574):564-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、尿管芽様細胞へと分化誘導できるWD前駆細胞様細胞及び尿管芽様細胞の作製方法を提供することなどである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、尿管芽が形成される過程に必要とされるシグナルを明らかにし、かつ尿管芽様細胞へと誘導できるWD前駆細胞様細胞を分取・精製できる細胞表面抗原を同定したことで、マウスES細胞・ヒトiPS細胞から尿管芽様細胞を誘導することに成功した。誘導された尿管芽様細胞をネフロン前駆細胞と共培養することにより、三次元の樹状分岐構造を形成し、前駆細胞ニッチをともなった胎児腎臓の高次構造を再現することに成功した。
発明者らはさらに本発見に基づいて鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の態様を含むものである:
[1] 工程A: C-X-Cモチーフケモカイン受容体4(Cxcr4)陽性かつKIT癌原遺伝子受容体チロシンキナーゼ(KIT)陽性細胞を得る工程を含む、ウォルフ管(WD)前駆細胞様細胞の作製方法。
[2]前記Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞を得る工程が、Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞が、全細胞の30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上となる細胞の選別工程であることを特徴とする上記[1]に記載の方法。
[3]Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞が、さらにPaired box(Pax)2、LIM homeobox(Lhx)1、empty spiracles homeobox(Emx)2、ret proto-oncogene(RET)及びhomeobox(HOX)B7からなる群から選ばれる少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくは全て、を発現する、[1]に記載の方法。
[4]下記の工程B1、B2、C及びD:
工程B1 多能性幹細胞を、アクチビンA又は腫瘍増殖因子(Tgfb1又はTgfb2)(好ましくはアクチビンA)を含む培地中で培養する工程、
工程B2 工程B1により得られる細胞を、Wntアゴニスト(好ましくは、Glycogen Synthase Kinase(GSK)-3β阻害物質、より好ましくはCHIR99021 又はSB216763)を含む培地中で培養する工程、
工程C 工程B2により得られる細胞を、レチノイン酸(RA)又はRAアナログ(好ましくはRA又はAGN193109)、線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF4、FGF7、FGF9、又はFGF20、好ましくはFGF9)、及びTGFβシグナル経路阻害物質又はWntアゴニスト(好ましくはSB431542 又はA83-01)を含む培地中で培養する工程、
工程D 工程Cにより得られる細胞を、RA又はRAアナログ(好ましくはRA又はAGN193109)、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質、より好ましくはCHIR99021 又はSB216763)、及び線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF4、FGF7、FGF9、又はFGF20、好ましくはFGF9又はFGF20、より好ましくはFGF9)を含む培地中で培養する工程、
(但し、各工程の成分は、同一物質であっても異なった物質であってもよい)
を更に含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の方法。
[5] 工程Aが、工程Dにより得られる細胞から、Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞を選別することにより行われる、[4]に記載の方法。
[6] 多能性幹細胞が胚性幹細胞である、[4]又は[5]に記載の方法。
[7] 多能性幹細胞がiPS細胞である、[4]又は[5]に記載の方法。
[8] 多能性幹細胞がヒトiPS細胞である、[4]又は[5]に記載の方法。
[9] 工程B1において用いる培地が、1 ng/mL~1000 ng/mL、好ましくは1 ng/mL~100 ng/mL、より好ましくは3~30 ng/mLのアクチビンAを含む、[4]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10] 工程B1において用いる培地が、さらにBMPシグナル経路作用物質(好ましくはBMP2、BMP4、又はBMP7、より好ましくはBMP2又はBMP4,さらに好ましくはBMP4)を含む、[4]~[9]のいずれか一つに記載の方法。
[11] 工程B1において用いる培地が、10 ng/mL以下、好ましくは0.1 ng/mL~10 ng/mL、より好ましくは0.3 ng/mL~3 ng/mL、さらに好ましくは約1ng/mLのBMP4を含む、[4]~[9]のいずれか一つに記載の方法。
[12] 工程B2及びDのWntアゴニストがCHIR99021又はSB216763(好ましくは、CHIR99021)である、[4]~[11]のいずれか一つに記載の方法。
[13] 工程B2において用いる培地が、1 μM~1000 μM、好ましくは1 μM~200 μM、より好ましくは3 μM~30 μM、さらに好ましくは約10 μMのCHIR99021を含む、[4]~[11]のいずれか一つに記載の方法。
[14] 工程B2において用いる培地が、さらにBMPシグナル経路作用物質(好ましくはBMP2、BMP4、又はBMP7、より好ましくはBMP2又はBMP4,さらに好ましくはBMP4)を含む、[4]~[13]のいずれか一つに記載の方法。
[15] BMPシグナル経路作用物質がBMP4である、[10]又は[14]に記載の方法。
[16] 工程B2において用いる培地が、10 ng/mL以下、好ましくは5 ng/mL以下、より好ましくは0.3 ng/mL ~3 ng/mLのBMP4を含む、[4]~[13]のいずれか一つに記載の方法。
[17] 工程B2の培養時間が、約1日~2日である、[4]~[16]のいずれか一つに記載の方法。
[18] 工程B2の培養時間が、約1.5日である、[4]~[16]のいずれか一つに記載の方法。
[19] 工程B1の培養時間が、約1日である、[4]~[16]のいずれか一つに記載の方法。
[20] 工程B1の培養時間が約1日であり、工程B2の培養時間が約1.5日である、[4]~[16]のいずれか一つに記載の方法。
[21] 工程CにおけるTGFβシグナル経路阻害物質又はWntアゴニストが、TGFβシグナル経路阻害物質(好ましくはSB431542又はA83-01)である、[4]~[20]のいずれか一つに記載の方法。
[22] 工程Cにおいて用いる培地が、1 μM~1000 μM、好ましくは、3 μM~500 μM、より好ましくは10 μM~200 μMのSB431542を含む、[4]~[20]のいずれか一つに記載の方法。
[23] 工程Cにおいて用いる培地が、10 nM~1μM、好ましくは10~500 nM、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのレチノイン酸を含む、[4]~[22]のいずれか一つに記載の方法。
[24] 工程Cにおいて用いる培地が、10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは50 ng~200 ng/mL、さらに好ましくは約100 ng/mLのFGF9を含む、[4]~[23]のいずれか一つに記載の方法。
[25] WD前駆細胞様細胞がヒト細胞であり、工程Cにおいて用いる培地が、さらにBMPシグナル経路阻害物質を含む、[4]~[24]のいずれか一つに記載の方法。
[26] 工程Cで用いるBMPシグナル経路阻害物質がLDN193189又はNogginである、[25]に記載の方法。
[27] 工程Cにおいて用いる培地が、1 nM~1000 nM、好ましくは3 nM~500 nM、より好ましくは10 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのLDN193189を含む、[26]に記載の方法。
[28] 工程Cの培養時間が、約1~3日、好ましくは約1~2日である、[4]~[27]のいずれか一つに記載の方法。
[29] 工程Dにおいて用いる培地が、10 nM~1μM、好ましくは10~500 nM、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは、約100 nMのレチノイン酸を含む、[4]~[28]のいずれか一つに記載の方法。
[30] 工程Dにおいて用いる培地が、0.1 μM~100 μM、好ましくは1 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~10 μM、さらに好ましくは約3 μM~5 μMのCHIR99021を含む、[4]~[29]のいずれか一つに記載の方法。
[31] 工程Dにおいて用いる培地が、10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは30 ng~300 ng/mL、さらに好ましくは約100 ng/mLのFGF9を含む、[4]~[30]のいずれか一つに記載の方法。
[32] WD前駆細胞様細胞がヒト細胞であり、工程Dにおいて用いる培地が、さらにBMPシグナル経路阻害物質を含む、[4]~[31]のいずれか一つに記載の方法。
[33] 工程Dで用いるBMPシグナル経路阻害物質がLDN193189又はNogginである、[32]に記載の方法。
[34] 工程Dにおいて用いる培地が、1 nM~500 nM、好ましくは10 nM~100 nM、より好ましくは10 nM~50 nM、さらに好ましくは約30 nMのLDN193189を含む、[33]に記載の方法。
[35] 工程Dの培養時間が、約1~3日であり、好ましくは約1.5日~約2.5日である、[4]~[34]のいずれか一つに記載の方法。
[36] 工程(E) Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞のWD前駆細胞様細胞を、RA又はRAアナログ(好ましくはRA又はAGN193109)、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質又はRspondin1、より好ましくは、CHIR99021、SB216763又はRspondin1)、線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF4、FGF7、FGF9、又はFGF20、好ましくはFGF9)及びROCK阻害物質(好ましくは、Y27632又はFasudil hydrochloride)を含む培地中で培養する工程を含む、尿管芽様細胞の製造方法。
[37] 前記Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞のWD前駆細胞様細胞が、[1]又は[2]の方法で得られた細胞である、[36]に記載の方法。
[38] 工程(E)に用いられる培地が、0.1 ng/mL~100 ng/mL、好ましくは0.5 ng/mL~50 ng/mL、より好ましくは2 ng/mL~10 ng/mL、さらに好ましくは約5 ng/mLのFGF9を含む、[36]又は[37]に記載の方法。
[39] 工程(E)に用いられる培地が、10 nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nMで、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのRAを含む、[36]~[38]のいずれか一つに記載の方法。
[40] ROCK阻害物質が、Y27632である、[36]~[39]のいずれか一つに記載の方法。
[41] 工程(E)に用いられる培地が、1μM~1000μM、好ましくは1μM~100μM、より好ましくは1μM~50μM、さらに好ましくは 約10μMのY27632を含む、[36]~[39]のいずれか一つに記載の方法。
[42] Wntアゴニストが、CHIR99021又はRspondin1である、[36]~[41]のいずれか一つに記載の方法。
[43] 工程(E)に用いられる培地が、0.1μM~100μM、好ましくは0.1 μM~10 μM、より好ましくは0.3 μM~5 μM、さらに好ましくは約1 μMのCHIR99021を含む、[36]~[41]に記載の方法。
[44] WD前駆細胞用細胞がヒト細胞であり、工程(E)に用いられる培地が、さらに、FGF1及びBMPシグナル経路阻害物質(好ましくはLDN193189又はNoggin)を含む、[36]~[43]のいずれか一つに記載の方法。
[45] 工程(E)に用いられる培地が、10 ng/mL~1000 ng/mL、好ましくは10 ng/mL~500 ng/mL、より好ましくは50 ng/mL~200 ng/mL、さらに好ましくは約100 ng/mLのFGF1を含む、[44]に記載の方法。
[46] BMPシグナル経路阻害物質が、LDN193189である、[44]~[45]のいずれか一つに記載の方法。
[47] 工程(E)に用いられる培地が、1 nM~300 nM、好ましくは1 nM~100 nM、より好ましくは1 nM~20 nM、さらに好ましくは約10 nMのLDN193189を含む、[44]~[45]のいずれか一つに記載の方法。
[48] さらに、
工程(F) 工程(E)により得られる細胞を、RA又はRAアナログ(好ましくはRA又はAGN193109)、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質又はRspondin1、より好ましくは、CHIR99021、SB216763又はRspondin1)、維芽細胞成長因子(FGF2,FGF4、FGF7、FGF9、又はFGF20、好ましくはFGF9)、ROCK阻害物質(好ましくは、Y27632又はFasudil hydrochloride)、及びグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)又はGDNFアナログ(好ましくはBT18)又はFGF10を含む培地中で培養する工程を含む、[36]~[47]のいずれか一つに記載の方法。
[49] 工程(F)に用いられる培地が、0.1 ng~100 ng/mL、好ましくは0.1 ng~10 ng/mL、より好ましくは0.5 ng~10 ng/mL、さらに好ましくは約1 ng/mLのGDNFを含む、[36]~[47]のいずれか一つに記載の方法。
[50] 工程(F)に用いられる培地が、0.1 ng/mL~100 ng/mL、好ましくは0.5 ng/mL~50 ng/mL、より好ましくは2 ng/mL~10 ng/mL、さらに好ましくは約5 ng/mLのFGF9を含む、[48]又は[49]に記載の方法。
[51] 工程(F)に用いられる培地が、好ましくは10 nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nMで、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのRAを含む、[48]~[50]のいずれか一つに記載の方法。
[52] 工程(F)におけるROCK阻害物質が、Y27632である、[48]~[51]のいずれか一つに記載の方法。
[53] 工程(F)に用いられる培地が、1μM~1000μM、好ましくは1μM~100μM、より好ましくは1μM~50μM、さらに好ましくは 約10μMのY27632を含む、[48]~[51]のいずれか一つに記載の方法。
[54] 工程(F)におけるWntアゴニストが、CHIR99021である、[48]~[53]のいずれか一つに記載の方法。
[55] 工程(F)に用いられる培地が、0.1μM~300μM、好ましくは0.3 μM~100 μM、より好ましくは1μM~5μM、さらに好ましくは約3 μMのCHIR99021を含む、[48]~[53]のいずれか一つに記載の方法。
[56] WD前駆細胞様細胞がヒト細胞であり、工程(F)に用いられる培地が、さらにFGF1及びBMPシグナル経路阻害物質(好ましくはLDN193189又はNoggin)を含む、[48]~[55]のいずれか一つに記載の方法。
[57] 工程(F)に用いられる培地が、10 ng/mL~1000 ng/mL、好ましくは10 ng/mL~500 ng/mL、より好ましくは50 ng/mL~200 ng/mL、さらに好ましくは約100 ng/mLのFGF1を含む、[56]に記載の方法。
[58] BMPシグナル経路阻害物質が、LDN193189である、[56]又は[57]に記載の方法。
[59] 工程(F)に用いられる培地が、1 nM~300 nM、好ましくは1 nM~100 nM、より好ましくは5 nM~20 nM、さらに好ましくは約10 nMのLDN193189を含む、[56]又は[57]に記載の方法。
[60] さらに、
工程(G) 工程(F)により得られる細胞を、RA又はRAアナログ(好ましくはRA又はAGN193109)、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質又はRspondin1、より好ましくは、CHIR99021、SB216763又はRspondin1)、ROCK阻害物質(好ましくは、Y27632又はFasudil hydrochloride)、及びGDNF又はGDNFアナログ(好ましくはBT18)を含む培地中で培養する工程を含む、[48]~[59]のいずれか一つに記載の方法。
[61] 工程(G)に用いられる培地が、0.1 ng~100 ng/mL、好ましくは0.2 ng~20 ng/mL、より好ましくは0.5 ng~10 ng/mL、さらに好ましくは約2 ng/mLのGDNFを含む、[60]に記載の方法。
[62] 工程(G)に用いられる培地が、10 nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nMで、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのRAを含む、[60]又は[61]に記載の方法。
[63] 工程(G)におけるROCK阻害物質が、Y27632である、[60]~[62]のいずれか一つに記載の方法。
[64] 工程(G)に用いられる培地が、1 μM~1000 μM、好ましくは1 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~50 μM、さらに好ましくは 約10 μMのY27632を含む、[60]~[62]のいずれか一つに記載の方法。
[65] 工程(G)におけるWntアゴニストが、CHIR99021である、[60]~[64]のいずれか一つに記載の方法。
[66] 工程(G)に用いられる培地が、0.1 μM~30 0μM、好ましくは0.3 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~5 μM、さらに好ましくは約3 μMのCHIR99021を含む、[60]~[64]のいずれか一つに記載の方法。
[67] WD前駆細胞様細胞がヒト細胞であり、工程(G)に用いられる培地が、さらにFGF1及びBMPシグナル経路阻害物質(好ましくはLDN193189又はNoggin)を含む、[60]~[66]のいずれか一つに記載の方法。
[68] 工程(G)に用いられる培地が、10 ng/mL~1000 ng/mL、好ましくは10 ng/mL~500 ng/mL、より好ましくは50 ng/mL~200 ng/mL、さらに好ましくは約100 ng/mLのFGF1を含む、[67]に記載の方法。
[69] BMPシグナル経路阻害物質が、LDN193189である、[67]又は[68]に記載の方法。
[70] 工程(G)に用いられる培地が、1 nM~300 nM、好ましくは1 nM~100 nM、より好ましくは5 nM~20 nM、さらに好ましくは約10 nMのLDN193189を含む、[67]又は[68]に記載の方法。
[71] Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞のWD前駆細胞様細胞から誘導した尿管芽様細胞を、ネフロン前駆細胞、及び胚性腎臓由来のPlatelet Derived Growth Factor Receptor Alpha(Pdgfra)陽性間質細胞集団を共培養することを含む、腎臓オルガノイドの製造方法。
[72] WD前駆細胞様細胞が、[2]~[35]のいずれか一つに記載の方法により作製されたWD前駆細胞様細胞である、[71]に記載の方法。
[73] 尿管芽様細胞が、Hnf1b、E-Cadherin及びCALB1を発現する、[36]~[70]のいずれか一つに記載の方法。
[74] 尿管芽様細胞が、Emx2、Wnt11、Hnf1b、E-Cadherin及びCALB1を発現する、[36]~[70]のいずれか一つに記載の方法。
[75] アクチビンAを含む培地B1、
Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質、より好ましくは、CHIR99021又はSB216763)を含む培地B2、
RA又はRAアナログ、線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF9又はFGF20のいずれか)及びTGFβシグナル経路阻害物質(好ましくは、SB431542 又はA83-01)を含む培地C及び
RA又はRAアナログ、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質、より好ましくは、CHIR99021又はSB216763)及び線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF9又はFGF20のいずれか)を含む培地D
を含む、多能性幹細胞からのWD前駆細胞様細胞作製用キット。
[76] [75]に記載のキット並びにRA又はRAアナログ、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質又はRspondin1、より好ましくは、CHIR99021、SB216763又はRspondin1)、線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF9,又はFGF20のいずれか)、及びROCK阻害物質(好ましくは、Y27632又はFasudil hydrochloride)を含む培地Eを含む、多能性幹細胞からの尿管芽様細胞作製用キット。
[77] さらに、CXCR4抗体及びKIT抗体を含む、[75]又は[76]に記載のキット。
【発明の効果】
【0007】
本発明において提供される方法によれば、in vitroにおいて、マウス胎仔尿管芽に相応の樹状分岐形成能を持ち、分岐の先端に前駆細胞ニッチを維持し、かつ個々のネフロンと接続されている腎臓オルガノイドを形成可能な尿管芽様細胞を作製することが可能となり得る。本発明によれば、Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞を得ることにより、機能的な尿管芽様細胞に分化し得る細胞を得ることができ、その結果、分岐した尿管芽を構成し得る尿管芽様細胞を得ることが可能となり得る。また、本発明の方法によれば多能性幹細胞から、高効率でCxcr4陽性かつKIT陽性細胞を得ることが可能となり、従って、効率よくに、機能的な尿管芽様細胞を誘導することが可能となり得る。
本発明において提供されるWD前駆細胞様細胞の作製方法によれば、これまで多能性幹細胞から誘導することのできなかった、(I)後腎間葉と混ぜ合わせるか、分岐を促進する成長因子の中で培養すると、分岐形成「branching」を行う、(II)後腎間葉と混ぜ合わせると、その中のネフロン前駆細胞の未分化性を維持する前駆細胞ニッチを形成する能力を持つ、(III)後腎間葉と混ぜ合わせると、その中のネフロン前駆細胞の分化をネフロンへと誘導する能力を持つという特徴を有する尿管芽様細胞の作製が可能となり得る。本発明により提供される方法を用いて作製された尿管芽様細胞は、ネフロン前駆細胞、間質細胞と共に、ネフロン同士を互いに接続する集合管の樹状分岐構造を有する腎臓オルガノイドを形成し得る。本発明者らにより、再構築することに成功した腎臓オルガノイドは、腎臓の高次構造を世界で初めて再現したものであり、従って、本発明は、将来的に機能的な人工腎臓の作成を可能にするための必要不可欠な技術であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の尿管芽の誘導のプロトコルの概略(上図)、及び、本発明により作成した尿管芽とともに胚性腎臓の高次構造を作成するためのネフロン前駆細胞の誘導のプロトコルの概略(下図)を示す図である。
【図2】マウス胚性幹細胞からの尿管芽の誘導のプロトコルの概要を示す図である。A10:10ng/mL アクチビン;B0.3:0.3ng/mL Bmp4;C5:5 μM CHIR;C10:10 μM CHIR;R:0.1μMレチノイン酸;F9-100:100ng/mL Fgf9;SB10:10 μM SB431542。なお、図中には、本発明の実施における好ましい一態様として、濃度や期間が記載されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図3】ヒトiPS細胞から尿管芽の誘導のプロトコルの概略を示す図である。A10:10ng/mL アクチビン;B1:1 ng/mL Bmp4;C1, C3, C5, C10:ぞれぞれ、1, 3, 5 又は10 μM CHIR;;R:0.1μMレチノイン酸;F9-100, F9-5:それぞれ、100 又は5 ng/mL Fgf9;SB100:100 μM SB431542;LDN10, 30, 100:それぞれ、10, 30又は100 nM LDN193189。。なお、図中には、本発明の実施における好ましい一態様として、濃度や期間が記載されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図4】WD発生過程の概略図を示している。再構築アッセイ又はマイクロアレイ解析に利用したWDの部分を、破線により外形を描いた。
【図5】再構築した分枝尿管の上皮の先端数を測定した結果である*P<0.05及び**P<0.01。【図7】レチノイン酸、Wnt及びFgf/Gdnfシグナリングが、WD前駆細胞を尿管芽に成熟させることを示す結果である。平均値±s.e.m.(n=4)として、β-アクチンに対する各転写物の相対的な発現を示す。Y:Y27632(Rock阻害剤);R:レチノイン酸、C:3μM CHIR 99021(カノニカルWntアゴニスト)、C1:1μM CHIR 99021、C3:3μM CHIR 99021、F:100ng/mL Fgf9、F5:5ng/mL Fgf9、G1:1ng/ml GDNF、G2:2ng/ml GDNF。(上図)選別したE9.5WDのin vitro 分化2日の結果を示す。(下図)選別したE8.75WDのin vitro 分化1日の結果を示す。
【図8】培養3日目(Day 3)の、誘導した尿管芽の明視野像及びGFP蛍光像である。スケールバー、100μm。
【図9】マーカー遺伝子の経時的な動態を解析した結果である。各マーカーセットの左側にin vivo WDにおける発現レベルを示す。平均値±s.e.m.(n=4)として、β-アクチン発現に対する各転写物の相対的な発現を示す。
【図10】(上図)WDマーカー遺伝子発現のFACS分析。左のパネル:Hoxb7-GFP及びFlk1の解析。Hoxb7-GFP+/Flk1-WD前駆細胞画分を四角で囲んだ。右パネル:Hoxb7-GFP+/Flk1-陰性WD前駆細胞における、Kit/Cxcr4発現の解析。Kit+/Cxcr4+WD前駆細胞画分を四角で囲んだ。(下図)胎仔全身におけるCxcr4及びKit強陽性画分(WD前駆細胞画分)の、マーカーとしての特異性を示す図である。
【図11】Step 4における分化因子の調節による、D6.25のFACS解析の結果である。結果を平均値±s.e.m.(n=3)として示す。NO:添加なし;RC:0.1 μM レチノイン酸+5μM CHIR99021;RF:0.1 μM レチノイン酸+100ng/mL Fgf9;CF:5μM CHIR99021+100 ng/mL Fgf9;RCF:0.1 μM レチノイン酸+5μM CHIR99021+100ng/mL Fgf9。
【図12】Step 2での Bmp4濃度の調節による、Day 6.25(UB)又はDay 8.5(MM)のFACS解析の結果である。結果を平均値±s.e.m.(n=3)として示す。B0C10:0ng/mL Bmp4+10μM CHIR、B0.3C10:0.3ng/mL Bmp4+10μM CHIR、B1C10:1ng/mL Bmp4+10μM CHIR。
【図13】Step 1におけるアクチビンA濃度の調節による、Day 6.25(UB)又は8.5(MM)のFACS解析の結果である。結果を平均値±s.e.m.(n=3)として示す。A0:0ng/mL アクチビン、A1:1ng/mL アクチビン、A3:3ng/mL アクチビン、A10:10ng/mL アクチビン、A30:30ng/mL アクチビン。
【図14】図14は、マウスES細胞を用いた場合の、エピブラストのパターン形成ステージにおけるアクチビン/Bmp濃度の最適化を示す図である。エピブラストのパターン形成ステージにおけるアクチビン/Bmp濃度が、UB(左表及びグラフ)対MM(右表及びグラフ)の運命決定に及ぼす影響を示す。
【図15】Day 0の未成熟なマウスES細胞からDay 6.25のWD前駆細胞ステージ(E8.75のWD前駆細胞に対応している)におけるマーカー遺伝子の経時的な動態を示している。E8.75胚性のWD前駆細胞における発現レベルを、三角で示す。β-アクチン発現に対する、各転写物の相対的な発現を、平均値±s.e.m.(n=3)として示す。
【図16】in vitroでの、選別したE8.75WD前駆細胞細胞分化プロトコルの概要を示す。Y:Y27632(Rock阻害剤);R:0.1μMレチノイン酸、C1:1μM CHIR 99021、C3:3μM CHIR 99021、F9-5:5ng/mL Fgf9、G1:1ng/ml GDNF、G2:2ng/ml GDNF。
【図17】マウス胚性幹細胞からの誘導した分化Day 9.25のUBを示す。左パネル:スフェロイド全体の低倍率イメージ。蛍光画像を下記に示す。右パネル:手作業で単離した誘導したUBの拡大図。蛍光画像を右側に示す。スケールバー、100μm。
【図18】マウス胚性幹細胞からの誘導したWD前駆細胞のマーカー遺伝子の経時的な動態を示す。E11.5の胚性UBにおける発現レベルを三角の点で示す。β-アクチン発現に対する各転写物の相対的な発現を平均値±s.e.m.(n=3)として示す。
【図19】図19左図は、再構築したオルガノイドの経時的な画像である。Day 1.5(D1.5)からDay 6(D6)までの各タイムポイントを示す。矢印及び数は、指し示した二分枝の世代数を示す。蛍光画像を下パネルに示す。スケールバー、100μm。右図は、UB及び誘導したUBにより再構築されたオルガノイドの合計先端数を平均値±s.e.m.(n=6)として示す。P=0.53。
【図20】左図は、免疫染色した7日目オルガノイドの3D投影像である。上パネル:CK8及びSix2の統合した画像。下パネル:CK8を単染色した画像。スケールバー、100μm。右図は、免疫染色した7日目オルガノイドの3D投影像である。それぞれ表示した分子が、単色(左の4つのパネル)又は統合した画像(merged:最も右のパネル)により染色された。スケールバー、200μm。右下図は、免疫染色した7日目オルガノイドの切片画像である。UB先端領域を拡大した。スケールバー、20μm。
【図21】マウスES細胞由来のネフロン前駆細胞、誘導したUB及び胚性の間質細胞により再構築されたオルガノイドの免疫染色の結果である。左の2つのパネル:オルガノイドの3D投影像。右の二つのパネル:オルガノイド切片。
【図22】ヒトiPS細胞から尿管芽誘導法のStep3における各分化因子の影響を確認した結果である。左図は、特定の尿管芽マーカー遺伝子の発現を確認したデータであり、β-アクチン発現に対する各転写物の相対的な発現をDay 4.5に解析し、平均値±s.e.m.(n=4)として示した。右図は、Day 6.25のFACS解析の結果である。CXCR4陽性・cKIT陽性分画の誘導率を平均値±s.e.m.(n=3)として示す。R:0.1μMレチノイン酸、F:100 ng/mL Fgf9、L:LDN100nM、S:SB100μM。
【図23】ヒトiPS細胞を用いた場合のStep 1におけるアクチビン濃度の調節による分化誘導効率を確認した結果である。左図は、Day 6.25での尿管芽誘導率のFACS解析の結果を、右図は、Day 12でのネフロン前駆誘導率のFACS解析の結果を示す。Bmp4追加条件では1 ng/mL のBmp4を添加した。結果をを平均値±s.e.m.(n=3)として示す。
【図24】ヒトiPS細胞を用いた場合の、エピブラストのパターン形成ステージにおけるアクチビン/Bmp濃度の最適化を示す図である。ヒトiPS細胞のエピブラストのパターン形成ステージにおけるアクチビン/Bmp濃度が、UB(上表及びグラフ)対MM(下表及びグラフ)の運命決定に及ぼす影響を示す。
【図25】図25は、Step 2におけるBmp濃度の調節による、Day 6.25(UB系譜)又はDay 12(MM系譜)のFACS解析の結果である。Bmp4添加条件では1 ng/mLのBmp4を添加した。結果を平均値±s.e.m.(n=3)として示す。L30C10:30nM LDN+10μM CHIR、B0C10:0ng/mL Bmp4+10μM CHIR、B1C10:1ng/mL Bmp4+10μM CHIR。
【図26】最適化した条件で誘導したヒトiPS細胞の、Day 6.25におけるCXCR4/KIT発現のFACS解析の結果である。
【図27】最適化した条件で誘導したヒトiPS細胞の、WDマーカー遺伝子の経時的な動態の分析結果である。β-アクチン発現に対する、各転写物の相対的な発現を平均値±s.e.m.(n=3)として示す。
【図28】50 % マトリゲル培養環境における、誘導したUB分枝の明視野像である。スケールバー、200μm。
【図29】免疫染色した13日目オルガノイドの3D投影像を示す。左図は、CK8及びSOX9染色した像である。右図は、PAX2及びE-cadherinで染色した像である。スケールバー、200μm。
【図30】ヒトUB分化におけるPAX2の細胞-自律的な要求性を示す図である。Day 8.5~Day 12.5までの成熟化培養後の凝集塊、及び、及び選別したWD前駆細胞の分枝培養3日目及び12日目の凝集塊の明視野像である。
【図31】マウス後腎間葉をそれぞれ胎仔脊髄組織(左)あるいはマウスES細胞由来の誘導尿管芽(右)と組み合わせて移植した際のネフロン形成数に及ぼす影響を示す図である。写真は免疫不全マウスへ組織を移植後、15日目に回収した像である。点状の構造が後腎間葉から形成された糸球体である。糸球体数を数えて形成されたネフロンの数を見積もり定量、比較したのが右のグラフである。SC:胎仔脊髄との共培養、iUB:誘導尿管芽との共培養。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、例示的な実施態様を例として詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施態様に限定されるものではない。なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等又は同様の任意の材料および方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。
また、本明細書に記載された発明に関連して本明細書中で引用されるすべての刊行物および特許は、例えば、本発明で使用できる方法や材料その他を示すものとして、本明細書の一部を構成するものである。
本明細書において「及び/又は」は、いずれか一方、あるいは、両方を包含する意味で使用される。本明細書において「約」とは、±10%を許容する意味で用いる。
本明細書において腎臓オルガノイドという場合は、糸球体および尿細管からなる分化したネフロン、ネフロン前駆細胞、間質細胞と共に、分化したネフロン同士を互いに接続する集合管の樹状分岐構造を有する、高次構造をもつ腎臓様組織を意味する。

【0010】
以下、本発明の詳細を説明する。
図1に、本発明のウォルフ管(WD)前駆細胞様細胞の作製方法及びそれを用いた尿管芽の誘導のプロトコルの概略(上図)、及び、本発明により作成した尿管芽とともに胚性腎臓の高次構造を作成するためのネフロン前駆細胞の誘導のプロトコルの概略(下図)を示す図である。以下、各工程について説明する。

【0011】
C-X-Cケモカイン受容体4(Cxcr4)陽性かつKIT癌原遺伝子受容体チロシンキナーゼ(KIT)陽性細胞を得る工程Aを含む、ウォルフ管(WD)前駆細胞様細胞の作製方法
本発明は、C-X-Cケモカイン受容体4(Cxcr4)陽性かつKIT癌原遺伝子受容体チロシンキナーゼ(KIT)陽性細胞を得る工程Aを含む、ウォルフ管(WD)前駆細胞様細胞の作製方法(本明細書中、本発明の方法1とも称する)を提供する。
本発明の方法により作製されるWD前駆細胞様細胞は、細胞集団として作製される場合は、Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞が全細胞中の30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上の割合となるようにして作製される。

【0012】
本明細書中、「WD前駆細胞様細胞」とは、発生学的に適切な刺激があれば、分岐能力を有する尿管芽細胞に分化するように運命づけられた細胞を意味し、WD前駆細胞様細胞は、C-X-Cケモカイン受容体4(Cxcr4)及びKIT癌原遺伝子受容体チロシンキナーゼ(KIT)を発現する細胞である。
発生学的に適切な刺激とは、実施例に記載の方法に準じた方法により、WD前駆細胞を尿管芽様細胞へと分化させる刺激を意味する。尿管芽様細胞が分岐能力を有するとは、尿管芽様細胞同士が集合してできる尿管芽が樹状に分岐することを意味する。

【0013】
WD前駆細胞様細胞は、Cxcr4、KITに加え、好ましくはさらに、Paired box(Pax)2、LIM homeobox(Lhx)1、empty spiracles homeobox(Emx)2、ret proto-oncogene(RET)及びhomeobox(HOX)B7の少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくは全てを発現する。
WD前駆細胞様細胞は、好ましくはFLK1陰性(すなわち血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)陰性)の細胞である。

【0014】
上記発生学的に適切な刺激の一例としては、ネフロン前駆細胞、及び胚性腎臓由来のPdgfra+間質細胞集団とを実施例に記載の方法に準じた方法にて共培養することが挙げられる。

【0015】
特定のマーカー(例、Cxcr4、KITなど)に対して陽性である細胞(或いは細胞集団)は、これに限定されないが、例えば、フローサイトメトリー、すなわちFACS(fluorescence activated cell sorting)を使用することにより分離し、得ることができる。例えば、Cxcr4陽性細胞は、抗Cxcr4抗体(例、APC anti-human CD184 (CXCR4) Antibody, Clone 12G5, BioLegend社、APC anti-mouse CD184 (CXCR4) Antibody, Clone L276F12, BioLegend社)などの特異的な試薬への結合強度に基づき、並びに細胞の大きさ及び光散乱などの他のパラメーターに基づいて、セルソーターにより、Cxcr4陽性であるWD前駆細胞様細胞集団を分離することもできる。また、KIT陽性細胞集団の分離には、抗KIT抗体(例、PE anti-human CD117 (c-kit) Antibody, Clone 104D2, BioLegend社、CD117 (c-Kit) Monoclonal Antibody (2B8), PE , eBioscience社)などを用いることもできる。

【0016】
マーカーについて陽性である細胞(或いは細胞集団)の分離は、例えば、該マーカーに対して特異的な抗体とアイソタイプ適合対照抗体とを用いたFACSにより行うことができる。細胞の、マーカーに対し特異的な抗体による染色の強度が、アイソタイプ適合対照抗体による細胞(或いは細胞集団)の染色の強度を上回る場合に、該細胞は該マーカー陽性であると決定することができる。また、細胞の、マーカーに対して特異的な抗体による染色の強度と、アイソタイプ適合対照抗体による細胞(或いは細胞集団)の染色の強度とに差が存在しない場合に、該細胞は該マーカー陰性であると決定することができる。

【0017】
また、特定のマーカーに対して陽性である細胞は、従来の親和性又は抗体技術を用い、細胞を濃縮、枯渇、分離、選別、及び/又は精製することもできる。例えば、リガンド及び/又は抗体に、標識、例えば、磁気ビーズ;アビジン又はストレプトアビジンに対して高親和性で結合するビオチン;蛍光標示式細胞分取器で使用することのできる蛍光色素;ハプテン;及び同様物などを結合させることで、特定の細胞種の分離を容易にすることもできる。

【0018】
本発明の一態様において、本発明の方法は、Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞をセルソーターにより、ソーティングする工程を含む。

【0019】
多能性幹細胞からWD前駆細胞様細胞を誘導する方法
さらに、本発明は、多能性幹細胞からWD前駆細胞様細胞を誘導する方法(本発明のWD誘導方法とも称する)を提供する。
具体的には、本発明は、
工程B1 多能性幹細胞を、アクチビン又は腫瘍増殖因子(Tgfb1又はTgfb2)を含む培地中で培養する工程、
工程B2 工程B1により得られる細胞を、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質)を含む培地中で培養する工程、
工程C 工程B2により得られる細胞を、レチノイン酸(RA)又はRAアナログ(AGN193109、AM580、AM80、BMS453、BMS195614、AC 261066, AC55649, Isotretinoin)、線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF4、FGF7、FGF9、又はFGF20)及びTGFβシグナル経路阻害物質又はWntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質)を含む培地中で培養する工程、
工程D 工程Cにより得られる細胞を、RA又はRAアナログ(AGN193109、AM580、AM80、BMS453、BMS195614、AC 261066, AC55649, Isotretinoin)、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質)、及び線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF4、FGF7、FGF9、又はFGF20)を含む培地中で培養する工程
を含む、多能性幹細胞からWD前駆細胞様細胞を誘導する工程を含み得る。

【0020】
工程B1
本明細書中、「多能性幹細胞(PSC)」とは、未分化状態を保持しながら増殖することを可能とする「自己複製」、及び胚の3つ全ての一次胚葉に分化することを可能とする「多能性」を保有する、いかなる未分化細胞であってもよい。本発明において用いる多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES)又は誘導多能性幹細胞(iPS細胞)が好ましく、iPS細胞がより好ましい。

【0021】
ES細胞は、初期胚(例えば、胚盤胞)の内部細胞塊から樹立することのできる、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。ES細胞は、受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取り出し、線維芽細胞フィーダー細胞上で、内部細胞塊を培養することにより樹立することができる。ES細胞の樹立及び維持方法は公知である。

【0022】
誘導多能性幹(iPS)細胞は、体細胞に由来する人工的な幹細胞であって、特異的な再プログラム化因子をDNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することにより製造することができ、ES細胞とほぼ同等の特性(例、分化多能性及び自己複製に基づく増殖能)を示す(K. Takahashi及びS. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M. et al., Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);WO2007/069666)。再プログラム化因子は、ES細胞で特異的に発現される遺伝子、その遺伝子産物若しくはその非コードRNA、ES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物若しくはその非コードRNA、又は低分子量化合物で構成されてもよい。再プログラム化因子に含まれる遺伝子の例としては、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-MYC、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3、Glis1等が挙げられる。これらの再プログラム化因子は、単独で、あるいは組合わせて使用してもよい。なお、再プログラミング因子としてc-MYCの遺伝子を体細胞に導入して用いる場合は、iPS細胞の作成後に、導入したc-MYC遺伝子が標的細胞の染色体に組み込まれる可能性が低い導入方法を用いるのが好ましく、例えば、これに限定されないが、センダイウイルスベクターやエピゾーマルベクターを用いた導入をあげることができる。

【0023】
ES細胞又はiPS細胞の作製方法、培養方法、未分化状態の維持方法などは自体公知であり、例えば上記に例示した文献に記載の方法或いは実施例に記載の方法に準じて、作製及び培養することができる。

【0024】
本発明において、特に限定されるものではないが、培養温度は、通常約30~40℃、好ましくは約37℃であり、培養は、CO2含有空気の雰囲気下で行われ、CO2濃度は、約2~5%、好ましくは5%である。

【0025】
本発明において用いる培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地の例としては、所望の細胞が得られる限り限定されるものではないが、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、DMEM/F12培地、GMEM(グラスゴーMEM)培地、Ham’s F12培地、IMDM(イスコブ改変ダルベッコ培地)、αMEM(イーグル最小必須培地 α改変型)など、及びこれらの混合物が挙げられる。

【0026】
本発明において用いる培地は、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。本発明において用いる培地は、必要に応じて、例えば、アルブミン、N-2サプリメント(Thermo Fisher Scientific)、B-27(登録商標)サプリメントマイナスビタミンA(Thermo Fisher Scientific)、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、アミノ酸、L-グルタミン、非必須アミノ酸、アスコルビン酸などの少なくとも1以上の培地添加物も含有し得る。

【0027】
アクチビンAとは、2つのインヒビンβA鎖のホモダイマーを意味し、本発明においては、N末端ペプチドが切断された活性型である、インヒビンβA鎖(例えば、NCBIアクセッション番号:NP_002183)のN末端ペプチドが切断されたGly311-Ser426断片がジスルフィド結合したホモダイマーを用いることが好ましい。このようなアクチビンAは、例えば、R&D Systems社(R&D)などから購入可能である。
本発明の工程B1で用いる培地(本明細書中、培地B1とも称する)中におけるアクチビンAの濃度は、用いる細胞や培養時間、工程B2において使用されるWntアゴニストの量などによっても異なり、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常1 ng/mL~1000 ng/mL、好ましくは1 ng/mL~100 ng/mL、より好ましくは、3 ng/mL~30 ng/mL、さらに好ましくは約10 ng/mLである。工程B1においては、アクチビンAの代わりに、腫瘍増殖因子、Tgfb1又はTgfb2を用いることができる。用いるTgfb1又はTfgb2の濃度は、アクチビンAを参照として同等の効果を示すTgfb1又はTfgb2の濃度を設定することができる。

【0028】
工程B1における培地はさらに、ROCK阻害物質を含んでいてもよい。ROCK阻害物質は、Rhoキナーゼ(ROCK)の機能を抑制できるものである限り特に限定されないが、本発明においては、例えば、Y27632、Fasudil hydrochloride、GSK 429286、GSK 269962、AS 1892802、H 1152 dihydrochloride、又はHA 1100 hydrochlorideを用いることができ、好ましくは、Y27632又はFasudil hydrochloride、より好ましくは、Y27632を用いることができる。Y27632を用いる場合は、濃度は、1μM~1000μM、好ましくは1μM~100μM、より好ましくは1μM~100μM、さらに好ましくは 約10μMである。工程B1において、Y27632の代わりに他のRock阻害剤を用いる場合は、Y27632を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0029】
工程B1における培養時間は、例えば、5日以下の培養であり、好ましくは0.5~3日であり、より好ましくは約1日である。

【0030】
工程B1においては、100~100,000細胞程度の細胞を凝集させ、凝集塊を形成させて浮遊培養を行うことができる。これに限定されないが、例えば、マウスの場合は約1,000細胞程度、ヒトの場合は約10,000細胞程度の細胞を用いて行うことができる。
浮遊培養とは、細胞を培養器へ非接着の状態で培養することである。特に限定はされないが、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリックス等によるコーティング処理)されていないものを用いる方法などによって行うことができる。特に限定されるものではないが、このような細胞非接着性の培養器の例とはしては、V底96ウエル低細胞結合プレート(住友ベークライト)などが挙げられる。

【0031】
ヒト多能性幹細胞(例、ヒトiPS細胞)を用いる場合、培地B1は、工程Dにより得られる細胞集団中のCxcr4及びKIT両陽性細胞の割合を高めるという観点からさらにBMPシグナル経路作用物質(好ましくはBMP2、BMP4、又はBMP7、より好ましくはBMP2又はBMP4,さらに好ましくはBMP4)を含むことが好ましい。本発明の培地B1中におけるBMP4の濃度は、用いる細胞や培養時間、工程Cにおいて用いられるBMPシグナル経路作用物質の量、Wntアゴニストの量などによっても異なり、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、例えば、10 ng/mL以下であり、好ましくは0.1 ng/mL~10 ng/mL、より好ましくは0.3 ng/mL~3 ng/mL、さらに好ましくは約1 ng/mLである。他のBMPシグナル経路作用物質を用いる場合は、BMP4を用いた場合に得られる効果を同様の効果を発揮できる濃度を適宜選択することができる。

【0032】
マウス多能性幹細胞(例、マウスES細胞)を用いる場合、Accutase(ESGRO)などにより解離させた該細胞を、凝集塊あたり約1,000細胞で凝集させた後、アクチビンAを含まないこと以外は本発明の培地B1と同様の成分を有する培地中で、約2日間培養し、得られる培養物を本発明の工程B1に付すことが好ましい。

【0033】
工程B2
上記工程B1の培養により得られる培養の結果物を、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質)を含む培地中で培養することにより未成熟な中胚葉細胞を得ることが可能となる。

【0034】
Wntアゴニストは、細胞中でTCF/LEF介在性の転写を活性化する薬剤として定義される。従ってWntアゴニストは、Wntファミリータンパク質のありとあらゆるものを含むFrizzled受容体ファミリーメンバーに結合し、活性化する真のWntアゴニスト、細胞内β-カテニン分解の阻害剤およびTCF/LEFの活性化物質から選択される。Wntアゴニストはまた、Wntシグナル伝達経路阻害物質、GSK-3β阻害物質、Dkk1アンタゴニスト等も含む。
GSK-3β阻害物質とは、Glycogen Synthase Kinase(GSK)-3βタンパク質のキナーゼ活性(例えば、βカテニンに対するリン酸化能)を阻害する物質として定義され、例えば、CHIR99021(CAS番号:252917-06-9)、BIO(CAS番号:667463-62-9)、SB216763(CAS番号:280744-09-4)など、既に多数のものが知られている。
本発明において用いられるWntアゴニストは、好ましくは、CHIR99021、SB216763、BIO、A 1070722、Lithium carbonate、3F8、SB 415286、TDZD 8、TWS 119、TCS 2002、Wnt3、Wnt3aであり、より好ましくはCHIR99021、又はSB216763であり、さらに好ましくはCHIR99021である。

【0035】
工程B2においてWntアゴニストとしてCHIR99021を用いる場合、工程B2に用いる培地(本明細書中、培地B2とも称する)中のCHIR99021の濃度は、用いる細胞や培養時間、工程B1において使用されるアクチビンAの量などによっても異なり、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常1 μM~1000 μM、好ましくは1 μM~200 μM、より好ましくは3 μM~30 μM、さらに好ましくは約10 μMである。工程B2において、CHIR99021の代わりに他のWntアゴニストを用いる場合は、CHIR99021を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0036】
工程B2における培養時間は、工程Dにおいて得られる細胞集団中のCxcr4及びKIT両陽性細胞の割合を高めるという観点から、好ましくは約1~2日であり、より好ましくは、約1.5日である。

【0037】
工程B2は、例えば、工程B1の培養後、培地B1を工程2の培地B2に置き換えることにより、行うことができる。

【0038】
培地B2は、さらにBMPシグナル経路作用物質(好ましくはBMP2、BMP4、又はBMP7、より好ましくはBMP2又はBMP4,さらに好ましくはBMP4)を含み得る。培地B2に含まれるBMPシグナル経路作用物質の濃度は、工程B1において使用されるアクチビンA等の量などに応じて、工程Dにより得られる細胞集団中のCxcr4及びKIT両陽性のWD前駆細胞様細胞の割合を高めるように適宜調整することができるが、例えば、10 ng/mL以下、好ましくは5 ng/mL以下、より好ましくは0.3 ng/mL ~3 ng/mLである。他のBMPシグナル経路作用物質を用いる場合は、BMP4を用いた場合に得られる効果を同様の効果を発揮できる濃度を適宜選択することができる。

【0039】
工程C
本発明の一態様において、上記工程B2の培養により得られる培養の結果物を、RA又はRAアナログ、線維芽細胞成長因子(FGF2,Fgf4、Fgf7、FGF9、又はFGF20)、及び、TGFβシグナル経路阻害物質又はWntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質)を含む培地中で培養する。

【0040】
本発明において用いることのできるレチノイン酸としては、全トランスレチノイン酸(ATRA)が例示され、Sigma-Aldrichなどから購入することができる。また、天然のレチノイン酸が有する機能を保持しながら人工的に修飾されたレチノイン酸も使用され得る。
工程Cにおいてレチノイン酸としてATRAを用いる場合、培地C中のATRAの濃度は、培養条件などによっても異なり、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常、10 nM~1μM、好ましくは10~500 nM、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMである。

【0041】
工程Cにおいては、レチノイン酸の代わりにレチノイン酸アナログを用いることができる。レチノイン酸アナログとしては、例えば、AGN193109、AM580、AM80、BMS453、BMS195614、AC 261066, AC55649, Isotretinoinをあげることができ、特にAGN193109が好ましい。工程Cにおいて、RAの代わりにRAアナログを用いる場合は、RAを参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0042】
培地Cに用いる線維芽細胞成長因子(FGF2,FG4、FGF7、FGF9、又はFGF20)は、公知のアミノ酸配列情報に基づいて自体公知の方法を参照して作製してもよく、R&D Systemsなどから組換えヒトFGFタンパク質を購入したものを用いることもできる。用いるFGFは、FGF9又はFGF20が好ましく、FGF9がより好ましい。培地C中のFGF9タンパク質の濃度は、培養条件などによっても異なるが、例えば、10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは50 ng~200 ng/mL、さらに好ましくは約100 ng/mLである。工程Cにおいて、FGF9に代わりに他のFGFを用いる場合は、FGF9を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0043】
TGFβシグナル経路阻害物質とは、TGFβの受容体への結合からSMADへと続くシグナル伝達を阻害する物質として定義され、例えば、TGFβの受容体であるALKファミリーへの結合を阻害する物質、ALKファミリーによるSMADのリン酸化を阻害する物質などの多数の物質が報告されている。
本発明の工程Cにおいて用いられるTGFβシグナル経路阻害物質又はWntアゴニストとしては、工程Dにおいて所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、ALK阻害物質である、SB431542(CAS番号:301836-41-9)又はA83-01(CAS番号:909910-43-6)、D4476、GW788388、LY364947、R268712、RepSox、SB505124、SB525334、又はSD208をあげることができ、SB431542又はA83-01が好ましく、SB431542がより好ましい。
工程CにおいてTGFβシグナル経路阻害物質又はWntアゴニストとしてSB431542を用いる場合、工程Cに用いる培地(本明細書中、培地Cとも称する)中のSB431542の濃度は、培養条件などによっても異なり、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常、1 μM~1000 μM、好ましくは、3 μM~500 μM、より好ましくは10 μM~200 μMであり、工程B1においてマウス多能性幹細胞を用いた場合には、約10μMがより好ましく、工程B1においてヒト多能性幹細胞を用いた場合には、約100μMがより好ましい。工程Cにおいて、SB431542の代わりに他の成分を用いる場合は、SB431542を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0044】
培地Cは、GSK-3β阻害物質を実質的に含有しなくてもよい。所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、具体的には、約5μM以下であることが好ましく、約3μM以下であることが好ましい。

【0045】
工程Cにおける培養時間は、工程Dにおいて得られる細胞集団中のWD前駆細胞様細胞の割合が減少しない限り特に限定されるものではないが、例えば、約1~3日であり、より好ましくは、約1~2日である。

【0046】
工程Cは、例えば、工程B2の培養後、培地B2を培地Cに置き換えることにより、行うことができる。

【0047】
工程B1においてヒト多能性幹細胞(好ましくはヒトiPS細胞)を用いる場合、培地Cは、さらにBMPシグナル経路阻害物質(好ましくはLDN193189、Noggin、Gremlin、 DMH-1、DMH2、Dorsomorphin dihydrochloride、K 02288、LDN 212854、又はML 347をあげることができ、より好ましくはLDN193189又はNoggin、さらに好ましくはLDN193189をあげることができる)を含み得る。
工程B1においてマウス多能性幹細胞(好ましくはマウスES細胞)を用いる場合、培地Cは、BMPシグナル経路阻害物質及びBMPシグナル経路作用物質のいずれも含まないことが好ましい。
培地CがLDN193189を含む場合、培地C中のLDN193189の濃度としては、好ましくは1 nM~1000 nM、より好ましくは3 nM~500 nM、さらに好ましくは10 nM~200 nM、よりさらに好ましくは約100 nMである。工程Cにおいて、LDN193189の代わりに他の物質を用いる場合は、LDN193189を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0048】
工程D
本発明の一態様において、上記工程Cの培養により得られる培養の結果物を、RA又はRAアナログ、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質)、及び、線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF4、FGF7、FGF9、又はFGF20)を含む培地D中で培養する。

【0049】
工程Dにおいてレチノイン酸としてATRAを用いる場合、工程Dに用いる培地(本明細書中、培地Dとも称する)中のATRAの濃度は、培養条件などによっても異なり、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常10 nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nMであり、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMである。

【0050】
工程Dにおいては、レチノイン酸の代わりにレチノイン酸アナログを用いることができる。レチノイン酸アナログとしては、工程Cで列記した化合物をあげることができ、AGN193109が好ましい。工程Dにおいて、RAの代わりにRAアナログを用いる場合は、RAを参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0051】
培地Dで用いることができるFGFは、工程Cと同様であり、FGF9又FGF20が好ましく、FGF9がより好ましい。培地D中のFGF9タンパク質の濃度は、培養条件などによっても異なるが、例えば、10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは30 ng~300 ng/mL、さらに好ましくは約100ng/mLである。工程Dにおいて、FGF9に代わりに他のFGFを用いる場合は、FGF9を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0052】
工程Dにおいて用いるWntアゴニストは、工程B2において列記した成分を用いることができ、好ましくはCHIR99021又はSB216763であり、より好ましくはCHIR99021である。工程DにおいてCHIR99021を用いる場合、培地D中のCHIR99021の濃度は、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常、、0.1 μM~100 μM、好ましくは1 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~10 μM、さらに好ましくは約3 μM~約5 μMである。工程Dにおいて、CHIR99021の代わりに他のWntアゴニストを用いる場合は、CHIR99021を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0053】
工程Dにおける培養時間は、工程Dにおいて得られる細胞集団中のWD前駆細胞様細胞の割合が減少しない限り特に限定されるものではないが、例えば、約1~3日であり、好ましくは、約1.5日~2.5日である。

【0054】
工程Dは、例えば、工程Cの培養後、培地Cを培地Dに置き換えることにより、行うことができる。

【0055】
工程B1においてヒト多能性幹細胞(好ましくはヒトiPS細胞)を用いる場合、培地Dは、さらにBMPシグナル経路阻害物質を含み得る。工程Dにおいて用いることができるBMPシグナル経路阻害物質は、工程Cにおいて列記した物質をあげあることができ、好ましくはLDN193189又はNoggin、より好ましくはLDN193189をあげることができる。培地DがLDN193189を含む場合、培地D中のLDN193189の濃度としては、好ましくは1 nM~500 nM、より好ましくは10 nM~100 nM、さらに好ましくは10 nM~50 nM、よりさらに好ましくは約30 nMである。工程Dにおいて、LDN193189の代わりに他の物質を用いる場合は、LDN193189を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0056】
工程Dの培養の成果物として、WD前駆細胞様細胞を含む細胞集団を得ることができる。

【0057】
本発明のWD前駆細胞様細胞の作製方法は好ましくは、
工程A: Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞(好ましくはCxcr4、KITに加え、さらにPax2、Lhx1、Emx2、RET及びHOXB7陽性細胞であり、より好ましくはFlk1陰性細胞)を得る工程を含む、ウォルフ管(WD)前駆細胞様細胞の作製方法であって、
下記の工程B1、B2、C及びD:
工程B1 多能性幹細胞(好ましくは、ES細胞又はiPS、より好ましくはヒトiPS細胞又はマウスES細胞)を、アクチビンA(1 ng/mL~1000 ng/mL、好ましくは1 ng/mL~100 ng/mL、より好ましくは3~30 ng/mL のアクチビンA)を含む(ヒトiPS細胞との培養にあたっては、アクチビンAの加えて、好ましくは10 ng/mL以下、好ましくは0.1 ng/mL~10 ng/mL、より好ましくは0.3 ng/mL~3 ng/mL、さらに好ましくは約1ng/mLのBMP4、或いはそれと同様の効果を発揮できる濃度のBMPシグナル経路作用物質を含む)培地B1中で培養する(好ましくは、浮遊培養を行い;その培養期間が、5日以下、好ましくは、0.5~3日であり、より好ましくは、約1日である)工程、
工程B2 工程B1により得られる細胞を、Wntアゴニスト、好ましくはGSK-3β阻害物質(好ましくはCHIR99021であり、1 μM~1000 μM、好ましくは1 μM~200 μM、より好ましくは3 μM~30 μM、さらに好ましくは約10 μMのCHIR99021)を含む(好ましくは、Wntアゴニストに加えて、10 ng/mL以下、好ましくは5 ng/mL以下、より好ましくは0.3 ng/mL ~3 ng/mLのBMP4、或いはそれと同様の効果を発揮できる濃度のBMPシグナル経路作用物質を含む)培地B2中で培養する(好ましくは、浮遊培養を行い;その培養期間は、好ましくは、約1~2日であり、より好ましくは、約1.5日)工程、
工程C 工程B2により得られる細胞を、レチノイン酸(好ましくはATRAであり、10 nM~1μM、好ましくは10~500 nM、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのATRA)、FGF9(10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは50 ng~200 ng/mL、さらに好ましくは約100 ng/mLの FGF9)、及びTGFβシグナル経路阻害物質(好ましくはSB431542であり、1 μM~1000 μM、好ましくは、3 μM~500 μM、より好ましくは10 μM~200 μMのSB431542、工程B1においてマウス多能性幹細胞を用いた場合には約10μM、工程B1においてヒト多能性幹細胞を用いた場合には約100μMのSB431542)を含む(工程B1においてヒト多能性幹細胞(好ましくはヒトiPS細胞)を用いる場合、さらにBMPシグナル経路阻害物質(好ましくはLDN193189であり、1 nM~1000 nM、好ましくは3 nM~500 nM、より好ましくは10 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのLDN193189を含む)培地C中で培養する(好ましくは約1~2日であり、より好ましくは約1日培養する)工程、
工程D 工程Cにより得られる細胞を、RA(好ましくはATRAであり、10 nM~1μM、好ましくは10~500 nM、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは、約100 nMのATRA)、FGF9(10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは30 ng~300 ng/mL、さらに好ましくは約100 ng/mLの FGF9)、及びGSK-3β阻害物質(好ましくはCHIR99021であり、0.1 μM~100 μM、好ましくは1 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~10 μM、さらに好ましくは約3 μM~5 μMのCHIR99021)を含む(工程B1においてヒト多能性幹細胞(好ましくはヒトiPS細胞)を用いる場合、さらにBMPシグナル経路阻害物質(好ましくはLDN193189であり、1 nM~500 nM、好ましくは10 nM~100 nM、より好ましくは10 nM~50 nM、さらに好ましくは約30 nMのLDN193189を含む)培地D中で培養する(好ましくは約1~3日、より好ましくは約1.5日~2.5日培養する)工程
を含む方法である。

【0058】
本発明はさらに上記培地A、B、C及びDからなる群より選択されるいずれか1以上の培地、或いは該群より選択される2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4の培地を組み合わせてなる、多能性幹細胞からWD前駆細胞様細胞を作製するためのキットを提供する。
上記培地は、液体培地又は粉末培地として提供され得、或いは市販の基礎培地に添加することで本発明の培地を提供し得る培地添加剤として提供され得る。
上記キットは、上記培地又は培地添加剤に加え、抗Cxcr4抗体及び/又は抗KIT抗体を含み得る。該抗体は、細胞のソーティング用として、蛍光分子などの標識分子と結合した状態で提供され得る。
本発明はさらに、上記キットに加え、後述する培地E、F、Gからなる群より選択されるいずれか1以上の培地、或いは該群より選択される2以上、より好ましくは3の培地をさらに含む、多能性幹細胞から尿管芽様細胞を作製するためのキットを提供する。

【0059】
工程E
本発明のWD前駆細胞様細胞はさらなる成熟化培養に供し、尿管芽様細胞へと分化させることができる。本発明はさらに、工程Eとして、Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞のWD前駆細胞様細胞をRA又はRAアナログ、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質又はRspondin1)、線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF4、FGF7、FGF9、又はFGF20)、及びROCK阻害物質を含む培地(本明細書中、培地Eとも称する)中で培養する工程を含む、尿管芽様細胞の製造方法を提供する。

【0060】
工程Eにおいてレチノイン酸としてATRAを用いる場合、培地E中のATRAの濃度は、培養条件などによっても異なり、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常、10 nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nMであり、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMである。

【0061】
工程Eにおいては、レチノイン酸の代わりにレチノイン酸アナログを用いることができる。レチノイン酸アナログとしては、工程Cで列記した化合物をあげることができ、AGN193109が好ましい。工程Eにおいて、RAの代わりにRAアナログを用いる場合は、RAを参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0062】
培地Eで用いることができる線維芽細胞成長因子は、工程Cと同様であり、FGF9又FGF20が好ましく、FGF9がより好ましい。所望の尿管芽様細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、培地E中のFGF9タンパク質の濃度は、例えば、0.1 ng/mL~100 ng/mL、好ましくは0.5 ng/mL~50 ng/mL、より好ましくは2 ng/mL~10 ng/mL、さらに好ましくは約5 ng/mLである。工程Eにおいて、FGF9に代わりに他のFGFを用いる場合は、FGF9を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0063】
工程Eにおいて用いるWntアゴニストは、工程B2において列記した成分及びそれに加えてRspondin1を用いることができ、好ましくはCHIR99021、SB216763又はRspondin1であり、より好ましくはCHIR99021である。工程EにおいてWnitアゴニストとしてCHIR99021を用いる場合、培地E中のCHIR99021の濃度は、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、例えば0.1 μM~100μM、好ましくは0.1 μM~10μM、より好ましくは0.3 μM~5μMであり、さらに好ましくは約1 μMである。工程Eにおいて、CHIR99021の代わりに他のWntアゴニストを用いる場合は、CHIR99021を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0064】
培地Eはさらに、細胞の生存率を高めるという観点から、ROCK阻害物質を含み得る。ROCK阻害物質は、Rhoキナーゼ(ROCK)の機能を抑制できるものである限り特に限定されないが、具体的には、工程B1で列記した物質をあげることができ、好ましくは、Y27632又はFasudil hydrochlorideであり、より好ましくは、Y27632である。Y27632を用いる場合は、濃度は、1μM~1000μM、好ましくは1μM~100μM、より好ましくは1μM~50μM、さらに好ましくは 約10μMである。工程Eにおいて、Y27632の代わりに他のRock阻害剤を用いる場合は、Y27632を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0065】
好ましい態様において、培地Eは、培養の支持体、これに限定されないが、例えば、グロースファクターリデューストマトリゲル、コラーゲン、ラミニンをさらに含み得る。培地Eがグロースファクターリデューストマトリゲルを含む場合、培地E中のその濃度は、例えば、5%~50%、好ましくは5%~20%、より好ましくは10%~20%、さらに好ましくは約10%である。

【0066】
WD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合、培地Eは上記FGFに加えさらに別の線維芽細胞成長因子(FGF1,FGF2、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF10、又はFGF20であり、好ましくはFGF1又はFGF2であり、より好ましくはFGF1である)を含み得る。
培地Eに用いる上記FGF(例えばFGF1)は、公知のアミノ酸配列情報に基づいて自体公知の方法を参照して作製したものを用いてもよく、R&D Systemsなどから組換えヒトFGFタンパク質を購入したものを用いることもできる。培地E中のFGF1タンパク質の濃度は、培養条件などによっても異なるが、例えば、10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは50ng~200 ng/mL、さらに好ましくは約100ng/mLである。工程Eにおいて、FGF1に代わりに他のFGFを用いる場合は、FGF1を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0067】
工程Eに必須のFGF、及びヒト多能性幹細胞より誘導されたWD前駆細胞様細胞の培養のためのFGFの組合せは、これに限定されないが、例えば、FGF9又はFGF20、と、FGF1又はFGF2の組合せをあげることができ、好ましくは、FGF9とFGF1の組合せである。

【0068】
WD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合、培地Eはさらに、BMPシグナル経路阻害物質を含み得る。工程Eにおいて用いることができるBMPシグナル経路阻害物質は、工程Cにおいて列記した物質をあげあることができ、好ましくはLDN193189又はNoggin、より好ましくはLDN193189をあげることができる。
培地EがLDN193189を含む場合、培地の濃度としては、好ましくは1 nM~300 nM、より好ましくは1 nM~100 nM、さらに好ましくは1 nM~20 nM、よりさらに好ましくは約10 nMである。工程Eにおいて、LDN193189の代わりに他の物質を用いる場合は、LDN193189を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0069】
工程Eにおける培養時間は、特に限定されるものではないが、例えば、約1~5日であり、より好ましくは、約1日~3日であり、WD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合は約2日~3日がより好ましい。

【0070】
工程Eにおいては、100~100,000細胞(例えば約10,000細胞)程度のWD前駆細胞様細胞を凝集させ、凝集塊を形成させて浮遊培養を行うことができ、特に限定されるものではないが、培養器としては、V底96ウエル低細胞結合プレート(Sumitomo Bakelite)などを用いることができる。

【0071】
Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞のWD前駆細胞様細胞(好ましくは上記工程B1、B2、C、D及びAにより作製されたWD前駆細胞様細胞;好ましくは100~100,000細胞であり、より好ましくは1000~50,000細胞)をレチノイン酸(好ましくはATRAであり、10 nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nMであり、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのATRA)、Wntアゴニスト、好ましくはGSK-3β阻害物質又はRspondin1(好ましくはCHIR99021であり、例えば0.1 μM~100μM、好ましくは0.1 μM~10μM、より好ましくは0.3 μM~5μMであり、さらに好ましくは約1 μMのCHIR99021)、FGF9(0.1 ng/mL~100 ng/mL、好ましくは0.5 ng/mL~50 ng/mL、より好ましくは2 ng/mL~10 ng/mL、さらに好ましくは約5 ng/mLのFGF9)及びROCK阻害物質(好ましくはY27632であり、1μM~1000μM、好ましくは1μM~100μM、より好ましくは1μM~50μM、さらに好ましくは 約10μMのY27632)を含む(好ましくはさらにグロースファクターリデューストマトリゲルを含み、5%~50%、好ましくは5%~20%、より好ましくは10%~20%、さらに好ましくは約10%のグロースファクターリデューストマトリゲルを含む)培地E中で培養(好ましくは浮遊凝集塊培養し、より好ましくは低接着性培養器上で浮遊凝集塊として培養し;好ましくは約1~5日間培養し、WD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合には約2日~3日、マウス多能性幹細胞由来である場合には約1日~3日培養する)する工程である。

【0072】
好ましい一態様において、工程Eにおいて得られる細胞は、Emx2、Ret陽性であり、かつHnf1b、Wnt9b、Calb1、E-cadherin陽性である。

【0073】
工程F
本発明はさらに、工程(F)として、工程(E)により得られる細胞を、RA又はRAアナログ、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質又はRspondin1)、線維芽細胞成長因子(FGF2,FGF4、FGF7、FGF9、又はFGF20)、ROCK阻害物質、及び、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)又はGDNFアナログ(BT18、又はSIB4035)又はFGF10、を含む培地(本明細書中、培地Fとも称する)中で培養する工程を含む、尿管芽様細胞の製造方法を提供する。

【0074】
工程Fにおいてレチノイン酸としてATRAを用いる場合、培地中のATRAの濃度は、培養条件などによっても異なり、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常10nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nM、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMである。

【0075】
工程Fにおいては、レチノイン酸の代わりにレチノイン酸アナログを用いることができる。レチノイン酸アナログとしては、工程Cで列記した化合物をあげることができ、AGN193109が好ましい。工程Fにおいて、RAの代わりにRAアナログを用いる場合は、RAを参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0076】
培地Fで用いることができる線維芽細胞成長因子は、工程Cと同様であり、FGF9又FGF20が好ましく、FGF9がより好ましい。所望の尿管芽様細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、培地F中のFGF9タンパク質の濃度は、例えば、0.1 ng~100 ng/mL、好ましくは0.5 ng~50 ng/mL、より好ましくは2 ng~10 ng/mL、さらに好ましくは約5 ng/mLである。工程Fにおいて、FGF9に代わりに他のFGFを用いる場合は、FGF9を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0077】
工程Fにおいて用いることができるWntアゴニストは、工程B2において列記した成分及びそれに加えてRspondin1を用いることができ、好ましくはCHIR99021、SB216763又はRspondin1であり、より好ましくはCHIR99021である。工程FにおいてWntアゴニストとしてCHIR99021を用いる場合、培地F中のCHIR99021の濃度は、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常0.1 μM~300 μM、好ましくは0.3 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~5 μM、さらに好ましくは約3 μMである。工程Fにおいて、CHIR99021の代わりに他のWntアゴニストを用いる場合は、CHIR99021を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0078】
培地Fに用いるグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)は、公知のアミノ酸配列情報に基づいて自体公知の方法を参照して作製したものを用いてもよく、R&D Systemsなどから組換えヒトGDNFタンパク質を購入したものを用いることもできる。培地F中のGDNFタンパク質の濃度は、培養条件などによっても異なるが、例えば、0.1 ng~100 ng/mL、好ましくは0.1 ng~10 ng/mL、より好ましくは0.5 ng~10 ng/mL、さらに好ましくは約1 ng/mLである。

【0079】
培地Fにおいては、GDNFの代わりにGDNFアナログ又はFGF10を用いることができる。GDNFアナログとしては、BT18、又はSIB4035をあげることができ、BT18が好ましい。工程Fにおいて、GDNFの代わりにGDNFアナログ又はFGF10を用いる場合は、GDNFを参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0080】
培地Fはさらに、細胞の生存率を高めるという観点から、ROCK阻害物質を含み得る。ROCK阻害物質は、Rhoキナーゼ(ROCK)の機能を抑制できるものである限り特に限定されないが、具体的には、工程B1で列記した物質をあげることができ、好ましくは、Y27632又はFasudil hydrochlorideであり、より好ましくは、Y27632である。培地FがY27632を含む場合、培地中の濃度は、例えば、1μM~1000μM、好ましくは1μM~100μM、より好ましくは1μM~50μM、さらに好ましくは 約10μMである。培地Fにおいて、Y27632の代わりに他のRock阻害剤を用いる場合は、Y27632を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0081】
好ましい態様において、培地Fは、グロースファクターリデューストマトリゲルをさらに含み得る。培地Fがグロースファクターリデューストマトリゲルを含む場合、培地F中のその濃度は、例えば、5 %~50 %、好ましくは5 %~20 %、より好ましくは10 %~20 %、さらに好ましくは約10%である。

【0082】
WD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合、培地Fは上記FGFに加えさら別の線維芽細胞成長因子(FGF1,FGF2、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF10、又はFGF20であり、好ましくはFGF1又はFGF2であり、より好ましくはFGF1である)を含み得る。
培地Fに用いる上記FGF(例えばFGF1)は、公知のアミノ酸配列情報に基づいて自体公知の方法を参照して作製したものを用いてもよく、R&D Systemsなどから組換えヒトFGFタンパク質を購入したものを用いることもできる。培地F中のFGF1タンパク質の濃度は、培養条件などによっても異なるが、例えば、10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは50 ng~200 ng/mL、さらに好ましくは約100ng/mLである。工程Fにおいて、FGF1に代わりに他のFGFを用いる場合は、FGF1を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0083】
工程Fに必須のFGF、及びヒト多能性幹細胞より誘導されたWD前駆細胞様細胞の培養のためのFGFの組合せは、これに限定しないが、例えば、FGF9又はFGF20、と、FGF1又はFGF2の組合せをあげることができ、好ましくは、FGF9とFGF1の組合せである。

【0084】
WD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合、培地Fはさらに、BMPシグナル経路阻害物質を含み得る。工程Fにおいて用いることができるBMPシグナル経路阻害物質は、工程Cにおいて列記した物質をあげあることができ、好ましくはLDN193189又はNoggin、より好ましくはLDN193189をあげることができる。培地FがLDN193189を含む場合、培地中の濃度としては、好ましくは1 nM~300 nM、より好ましくは1 nM~100 nM、さらに好ましくは5 nM~20 nM、よりさらに好ましくは約10 nMである。工程Fにおいて、LDN193189の代わりに他の物質を用いる場合は、LDN193189を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0085】
工程Fにおける培養時間は、特に限定されるものではないが、例えば、約1~5日であり、より好ましくは、約1日~3日である。工程(E)において用いたWD前駆細胞様細胞がマウス多能性幹細胞より誘導されたものである場合はより好ましくは約1日であり、工程(E)において用いたWD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合には、約2日である。

【0086】
好ましい態様において、工程Fは、工程(E)により得られる細胞(好ましくは細胞凝集塊)を、レチノイン酸(好ましくはATRAであり、10nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nM、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのATRA)、Wntアゴニスト(好ましくはCHIR99021であり、0.1 μM~300 μM、好ましくは0.3 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~5 μM、さらに好ましくは約3 μMのCHIR99021)、ROCK阻害物質(好ましくはY27632、、1μM~1000μM、好ましくは1μM~100μM、より好ましくは1μM~50μM、さらに好ましくは 約10μMのY27632)及びGDNF(0.1 ng~100 ng/mL、好ましくは0.1 ng~10 ng/mL、より好ましくは0.5 ng~10 ng/mL、さらに好ましくは約1 ng/mLのGDNF)を含む(好ましくはさらにグロースファクターリデューストマトリゲルを含み、5 %~50 %、好ましくは5 %~20 %、より好ましくは10 %~20 %、さらに好ましくは約10%グロースファクターリデューストマトリゲルを含み;工程(E)において用いたWD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合には、好ましくは10 ng~1 μg/mL、より好ましくは10 ng~500 ng/mL、さらに好ましくは50 ng~200 ng/mL、よりさらに好ましくは約100ng/mLのFGF1をさらに含み;工程(E)において用いたWD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合には、好ましくは1 nM~300 nM、より好ましくは1 nM~100 nM、さらに好ましくは5 nM~20 nM、よりさらに好ましくは約10 nMのLDN193189をさらに含む)培地中で培養する(好ましくは浮遊凝集塊培養し、より好ましくは低接着性培養器上で浮遊凝集塊として培養し;好ましくは約1~5日間培養し、より好ましくは約1日~3日培養する)工程である。

【0087】
工程G
本発明はさらに、工程(G)として、工程Fにより得られる細胞を、RA又はRAアナログ、Wntアゴニスト(好ましくは、GSK-3β阻害物質又はRspondin1)、ROCK阻害物質、及び、GDNF又はGDNFアナログ(BT18、又はSIB4035)又はFGF10を含む培地(本明細書中、培地Gとも称する)中で培養する工程を含む、尿管芽様細胞の製造方法を提供する。
工程Gにおいてレチノイン酸としてATRAを用いる場合、培地中のATRAの濃度は、培養条件などによっても異なり、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常10nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nM、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMである。

【0088】
工程Gにおいては、レチノイン酸の代わりにレチノイン酸アナログを用いることができる。レチノイン酸アナログとしては、工程Cで列記した化合物をあげることができ、AGN193109が好ましい。工程Eにおいて、RAの代わりにRAアナログを用いる場合は、RAを参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0089】
工程Gにおいて用いることができるWntアゴニストは、工程B2において列記した成分及びそれに加えてRspondin1を用いることができ、好ましくはCHIR99021、SB216763又はRspondin1であり、より好ましくはCHIR99021である。工程GにおいてWntアゴニストとしてCHIR99021を用いる場合、培地G中のCHIR99021の濃度は、所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、通常0.1 μM~300 μM、好ましくは0.3 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~5 μM、さらに好ましくは約3 μMである。工程Gにおいて、CHIR99021の代わりに他のWntアゴニストを用いる場合は、CHIR99021を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0090】
所望の尿管芽様細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、培地G中のGDNFタンパク質の濃度は、例えば、0.1 ng~100 ng/mL、好ましくは0.2 ng~20 ng/mL、より好ましくは0.5 ng~10 ng/mL、さらに好ましくは約2 ng/mLである。

【0091】
培地Gにおいては、GDNFの代わりにGDNFアナログ又はFGF10を用いることができる。GDNFアナログとしては、BT18、又はSIB4035をあげることができ、BT18が好ましい。工程Gにおいて、GDNFの代わりにGDNFアナログ又はFGF10を用いる場合は、GDNFを参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0092】
培地Gはさらに、細胞の生存率を高めるという観点から、ROCK阻害物質を含み得る。ROCK阻害物質は、Rhoキナーゼ(ROCK)の機能を抑制できるものである限り特に限定されないが、具体的には、工程B1で列記した物質をあげることができ、好ましくは、Y27632又はFasudil hydrochlorideであり、より好ましくは、Y27632である。培地GがY27632を含む場合、培地中の濃度は、1 μM~1000 μM、好ましくは1 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~50 μM、さらに好ましくは 約10 μMである。培地Gにおいて、Y27632の代わりに他のRock阻害剤を用いる場合は、Y27632を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0093】
好ましい態様において、培地Gは、グロースファクターリデューストマトリゲルをさらに含み得る。培地Gがグロースファクターリデューストマトリゲルを含む場合、培地G中のその濃度は、例えば、5 %~50 %、好ましくは5 %~20 %、より好ましくは10 %~20 %、さらに好ましくは約10%である。

【0094】
工程(E)において用いるWD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合、培地Gはさらに、線維芽細胞成長因子(FGF1,FGF2、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF10、又はFGF20であり、好ましくはFGF1又はFGF2であり、より好ましくはFGF1である)を含み得る。培地G中のFGF1タンパク質の濃度は、例えば、10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは50 ng~200 ng/mL、さらに好ましくは約100ng/mLである。工程Gにおいて、FGF1に代わりに他のFGFを用いる場合は、FGF1を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0095】
工程(E)において用いたWD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合、培地Gはさらに、BMPシグナル経路阻害物質を含み得る。工程Gにおいて用いることができるBMPシグナル経路阻害物質は、工程Cにおいて列記した物質をあげあることができ、好ましくはLDN193189又はNoggin、より好ましくはLDN193189をあげることができる。
培地GがLDN193189を含む場合、培地G中のLDN193189の濃度としては、好ましくは1 nM~300 nM、より好ましくは1 nM~100 nM、さらに好ましくは5 nM~20 nM、よりさらに好ましくは約10 nMである。工程Fにおいて、LDN193189の代わりに他の物質を用いる場合は、LDN193189を参照として同等の効果を示す濃度を設定することができる。

【0096】
工程Gにおける培養時間は、特に限定されるものではないが、例えば、約0.5~5日であり、より好ましくは、約1日~3日である。工程(E)において用いたWD前駆細胞様細胞がマウス多能性幹細胞より誘導されたものである場合はより好ましくは約1日であり、工程(E)において用いたWD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合には、約2日である。

【0097】
好ましい態様において、工程Gは、工程(F)により得られる細胞(好ましくは細胞凝集塊)を、レチノイン酸(好ましくはATRAであり、10nM~1μM、好ましくは10 nM~500 nM、より好ましくは50 nM~200 nM、さらに好ましくは約100 nMのATRA)、Wntアゴニスト(好ましくはCHIR99021であり、0.1 μM~300 μM、好ましくは0.3 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~5 μM、さらに好ましくは約3 μMのCHIR99021)、ROCK阻害物質(好ましくはY27632であり、1 μM~1000 μM、好ましくは1 μM~100 μM、より好ましくは1 μM~50 μM、さらに好ましくは 約10 μMのY27632)及びGDNF(0.1 ng~100 ng/mL、好ましくは0.2 ng~20 ng/mL、より好ましくは0.5 ng~10 ng/mL、さらに好ましくは約2 ng/mLのGDNF)を含む(好ましくはさらにグロースファクターリデューストマトリゲルを含み、5 %~50 %、好ましくは5 %~20 %、より好ましくは10 %~20 %、さらに好ましくは約10%のグロースファクターリデューストマトリゲルを含み;工程(E)において用いたWD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合には、10 ng~1 μg/mL、好ましくは10 ng~500 ng/mL、より好ましくは50 ng~200 ng/mL、さらに好ましくは約100ng/mLのFGF1をさらに含み;工程(E)において用いたWD前駆細胞様細胞がヒト多能性幹細胞より誘導されたものである場合には、BMPシグナル経路阻害物質(好ましくはLDN193189であり、1 nM~300 nM、より好ましくは1 nM~100 nM、さらに好ましくは5 nM~20 nM、よりさらに好ましくは約10 nMのLDN193189をさらに含む)培地中で培養する(好ましくは浮遊凝集塊培養し、より好ましくは低接着性培養器上で浮遊凝集塊として培養し;好ましくは約1~5日間培養し、より好ましくは約1日~3日培養する)工程である。

【0098】
好ましい一態様において、工程Gにおいて得られる細胞は、PAX2、Emx2、Ret陽性であり、かつHnf1b、Wnt9b及びCalb1陽性である。

【0099】
腎臓オルガノイドの作製
本発明はまた、本発明の方法を用いて作製した尿管芽様細胞を、ネフロン前駆細胞及び間質前駆細胞集団と共培養することを含む腎臓オルガノイドの作製方法を含む。ネフロン前駆細胞としては、胚から単離した胚性ネフロン前駆細胞、多能性幹細胞(例えば、ES細胞やiPS細胞)から誘導したネフロン前駆細胞のいずれも用いることができる。多能性幹細胞からネフロン前駆細胞を誘導する方法は、例えば、本発明者らによる報告(A. Taguchiら、Cell Stem Cell 14, 53-67, 2014)を参照して作製することができる。間質前駆細胞集団としては、例えば、胚から単離した間質前駆細胞集団を用いることができ、これに限定されないが、胚性腎臓から選別した間質細胞集団を用いることができる。好ましくは、Pdgfra+の間質細胞集団をあげることができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の動物実験は、熊本大学医学部動物実験委員会の承認を得たプロトコルにて行った。
【実施例】
【0101】
(材料及び方法)
マウス
Hoxb7-GFPマウス系統は非近交系のバックグラウンド(Jcl:ICR、日本クレア(株))で維持した。マウスは、12時間の光サイクルで、CE-2放射線滅菌飼料を与え、プラスチックケージ内で飼育した。全ての解析は最低限3匹の同腹子を用いて行った。胚性期の解析は、交配した雌に腟栓が確認された日の正午を胎生期(E)0.5日とみなした。Hoxb7プロモーターの断片の制御下でGFPを発現するHoxb7-GFPは、Jackson laboratoryから購入した。
【実施例】
【0102】
マウスES細胞培養培地
マウスES細胞株(Osr1-GFP)(Taguchi et al., Cell stem cell 14, 53-67, 2014)は、15 % FBS、1 %(v/v)非必須アミノ酸(NEAA)、0.1 mM 2-メルカプトエタノール(2-ME)及び1,000 U/mL 白血病阻害因子(LIF : Millipore)を添加したDMEM中、有糸分裂不活性化マウス胚性線維芽細胞(MEF)上で維持した。分化の開始前、ES細胞は、15% FBS、1 %(v/v)非必須アミノ酸、0.1 mM 2-ME、1 × ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)、1,000 U/mL LIF、3μM CHIR99021(Axon)及び1μM PD0325901(Wako)を添加したDMEM中で、フィーダー細胞フリーのゼラチンコート培養皿上で、一継代培養した。
樹立したマウスES細胞株(Hoxb7-GFP)は、14 % KSR、1 % FBS、1%(v/v)NEAA、1%(v/v)ピルビン酸ナトリウム、0.1 mM 2-ME、1,000 U/mL LIF、1.5 μM CHIR99021及び0.5 μM PD0325901を添加したGMEM中、有糸分裂不活性化MEF上で維持した。全てのマウスES細胞株は、37℃、5%CO2の加湿雰囲気条件で培養した。細胞を1日おきに植え継いだ。
【実施例】
【0103】
マウスES細胞分化培地
培地は、75% Iscove’s改変Dulbecco’s培地(IMDM)と25%Ham’s F12培地の混合培地に、0.5 × N2(Thermo Fisher)、0.5 × レチノイン酸不含B27(Thermo Fisher)、0.5 × P/S、0.05% BSA、2mM L-グルタミン、0.5mMアスコルビン酸及び4.5×10-4 M 1-チオグリセロールを添加したものを用いた。
【実施例】
【0104】
ヒトiPS細胞培養培地
ヒトiPS細胞(201B7)は、StemFit AK03N培地(味の素(株))にて、iMatrix-511((株)ニッピ)上で維持した。ヒトiPS細胞は、37℃、5%CO2加湿雰囲気条件で培養した。細胞を6日毎に植え継いだ。
【実施例】
【0105】
ヒトiPS細胞分化培地
2 %(v/v)B27(レチノイン酸不含)、2mM L-グルタミン、1 %(v/v)ITS、1 %(v/v)NEAA(レチノイン酸不含)、90 μM 2-ME及び0.5 × P/Sを添加したDMEM/F12(Invitrogen)を含む無血清分化培地を用いた。
【実施例】
【0106】
マウスES細胞の樹立
卵巣を過刺激した雌の129/svマウスを雄のHoxb7-GFPマウスと交配し、受精した8細胞ステージ卵を得た。M2培地(ARK Resource)中で採取した胚を24時間培養した。胚盤胞ステージに成長した胚を、マウスES細胞維持培地が入った0.1%ゼラチンコートプラスティック皿に移した。6日後、増殖した細胞を、ES細胞維持培地が入った有糸分裂不活性化マウス胚性線維芽細胞(MEF)上に植え継いだ。樹立したES細胞をさらに増殖させ、継代早期の細胞を分化実験に用いた。
【実施例】
【0107】
腎臓再構築アッセイ
後腎は、E11.5のICRマウス胚から手作業で解剖して取り出した。1 mg/mL Type XIコラゲナーゼ(SIGMA)を含むDMEM/10% FBS中で、腎臓を4分間37℃でインキュベートすることにより無傷の尿管芽(UB)を単離した。UBは30G針を用いて後腎間葉(MM)から手作業で単離した。回収したMMをPBS中で一度洗浄し、0.05 %トリプシン/EDTAを用いて37℃で5分間インキュベーションすることにより解離させた。解離させたMM細胞は、70,000細胞/100μLとなるようにマウスES細胞分化培地に再懸濁し、低細胞結合U底プレート(Thermo)に播種し、遠心(1,000 rpm、3分)により、MM細胞を沈降させた。単離したUB又はウォルフ管(WD)、或いは誘導したUBを、沈着させたシート様のMM細胞上に置いた。MM細胞は自発的に凝集し、UBを包み、最終的に、培養24時間後にスフェロイドを形成した。再凝集させたスフェロイドは、DMEM/F12培地(10 % FBS及びP/S)中の50 % マトリゲル(50μL)を含むトランスウェルインサート(Corning)に移し、次いで、トランスウエルをDMEM/F12培地(10 % FBS及びペニシリン/ストレプトマイシン)培地中に挿入した。
【実施例】
【0108】
選別した胚性細胞の培養
E9.5の胚性組織培養のために、22~26体節ステージ胚の前肢から、後腎領域を回収した。回収した組織を1 mg/mL Type XIコラゲナーゼを含むDMEM/10 % FBS中で6分間、37℃でインキュベートし、続いて37℃、6分間、DNase I及び0.25 % トリプシンで処理することにより単一細胞に解離させた。正常マウス血清でブロッキングした後、細胞表面マーカー(Flk1)染色を行った。FACSで選別したHoxb7-GFP+/Flk1- 細胞をマウスES細胞分化培地中で再懸濁し、ウエルあたりに約1,600細胞となるように、V底96ウエル低細胞結合プレート(住友ベークライト、Cat#MS-9096V)に播種した。遠心(210 G、4 min)後、上清培地を、10 μM Y27632(Wako)、0.1 μM レチノイン酸、3 μM CHIR99021、5 ng/mL ヒトFgf9(R&D)、1 ng/mL ヒトGDNF(R&D)及び10 % グロースファクターリデューストマトリゲル(BD)を含む培地(「Step 6培地」)に交換した。24時間後、凝集させたスフェロイドを、10 μM Y27632、0.1 μM レチノイン酸、3 μM CHIR99021、2 ng/mL ヒトGDNF及び10%グロースファクターリデューストマトリゲルを含む培地(「Step 7培地」)に移した。
【実施例】
【0109】
E8.75の胚性組織培養のため、12~15体節ステージ胚の心臓原基より尾側の領域を回収しHoxb7-GFP+/Flk1- 細胞をFACSにより選別した。選別した細胞を、V底96ウエル低細胞結合プレートで、凝集塊あたり約1,200細胞で凝集させた。最初の24時間は、10 μM Y27632、0.1 μMレチノイン酸、1 μM CHIR99021、5 ng/mL ヒトFgf9及び10%グロースファクターリデューストマトリゲルを含む培地(「Step 5培地」)を用いて培養し、続いて、スフェロイドを、「Step 6培地」、そして「Step 7培地」に移し、それぞれ24時間培養し、分化させた。
【実施例】
【0110】
マウスES細胞からのUB系譜誘導
無血清培地にて、以下の通りにしてES細胞の分化を行った。Accutase(商標)(ESGRO)を用いてES細胞を解離させ、無血清マウスES細胞分化培地にて培養した。回収した細胞を、96ウエルU底低細胞結合プレートで、凝集塊あたり1,000細胞で凝集させ、胚様体(EBs)を形成させた。48時間後(Day 2)、EBsを、Accutaseを用いて解離させ、10 ng/mL ヒトアクチビンA(R&D)を添加した無血清分化培地中で再凝集させた(Step 1)。24時間後(Day 3)、培地を、0.3 ng/mL ヒトBmp4(R&D)及び10 μM CHIR 99021を含む培地に交換した(Step 2)。36時間後(Day 4.5)、培地を、0.1 μM レチノイン酸、100 ng/mL ヒトFgf9、10 μM SB431542(Wako)を含むStep 3培地に交換した。Day 5.5(24時間後)に、培地を、0.1 μM レチノイン酸、100 ng/mL ヒトFgf9及び5 μM CHIR99021を含む培地(「Step 4培地」)に交換した。Hoxb7-GFP ES細胞株の分化因子を、Osr-GFP ES細胞株の分化因子とともに、以下の表に示す。
【実施例】
【0111】
【表1】
JP2018183137A_000003t.gif
【実施例】
【0112】
マウスES細胞由来のウォルフ管(WD)前駆細胞の成熟化培養
Day 6.25(6.26日目)に、誘導したスフェロイドを回収し、0.25 % トリプシン/EDTA中で、37℃で6分間インキュベートすることにより細胞を解離させた。正常マウス血清でブロッキングした後、1 % BSA、1 × HBSS及び0.035 % NaHCO3を含む緩衝液中で細胞表面マーカー(Cxcr4/Kit)染色を行った。FACS選別した3,000のHoxb7-GFP+/Cxcr4+/Kit+細胞を、V底96ウエル低細胞結合プレートで凝集させ、スフェロイドを形成させた。続いて、上記のE8.75胚性組織培養条件を用いて培養した。
【実施例】
【0113】
マウスES細胞由来の単一尿管芽分枝培養
Day 9.25(9.25日目)に、マウスES細胞由来の誘導尿管芽(UB)を尖ったタングステン針により手作業で単離した。単離したUBを、24ウエルのトランスウエルインサートに入った150μLの分枝培地中に入れた。分岐培地は、50 % マトリゲル、10 % FBS、0.1 μM レチノイン酸、100 ng/mL ヒトRspondin 1(R&D)、2 ng/mL ヒトGDNF及び100 ng/mL マウスFgf1(R&D)を含有したDMEM/F12培地(Life Technologies)である。マトリゲルを含まない分枝培地500μL中で、トランスウエルインサートを培養した。
【実施例】
【0114】
マウスES細胞からMM系譜の誘導
既報のマウスES細胞のMM系譜誘導プロトコル(上記Taguchi, 2014)を、最小限の改良を加えて用いた。96ウエルU底低細胞結合プレートで1,000細胞の凝集塊を作らせ胚様体(EBs)を形成させた。48時間後(Day 2)、Accutase(商標)を用いて胚様体(EBs)を解離させ、次いで、1 ng/mL ヒトアクチビンA(R&D)を添加した無血清分化培地中で再凝集させた。24時間後(Day 3)、培地を10 μM CHIRを含む培地に交換した。36時間後(Day 4.5)に、10 μM Y27632及び10 μM CHIRを含む新鮮な培地に交換した。Day 5.5(5.5日目)に、培地を、10 ng/mL アクチビンA、3 ng/mL Bmp4、3 μM CHIR、0.1 μMレチノイン酸及び10 μM Y27632を含む培地に交換した。Day 6.5(6.5日目)に、培地を、1 μM CHIR、5 ng/mL ヒトFgf9及び10 μM Y27632を含む培地に交換した。
【実施例】
【0115】
ヒトiPS細胞からの尿管芽(UB)系譜の誘導
10 μM Y27632及び10 ng/mL ヒトアクチビンA及び1 ng/mL ヒトBmp4を含む培地(「Step 1培地」)を用い、V底96ウエル低細胞結合プレートで、細胞を凝集塊あたり10,000細胞で再凝集させ、胚様体(EBs)を形成させた。24時間後(Day 1)、凝集塊を、10 μM CHIR及び1 ng/mL ヒトBmp4を含む培地(「Step 2培地」)を入れたU底96ウエル低細胞結合プレートに移した。36時間後(Day 2.5)に、培地を、0.1 μM レチノイン酸、100 ng/mL ヒトFgf9、100 nM LDN193189、100 μM SB431542を含む培地(「Step 3培地」)に交換した。Day 4.5(4.5日目)に、培地を、0.1 μM レチノイン酸、5 μM CHIR、100 ng/mL ヒトFgf9及び30 nM LDN193189を含む培地(「Step 4培地」)に交換した。
【実施例】
【0116】
ヒトiPS細胞由来のウォルフ管(WD)前駆細胞の成熟化培養
Day 6.25(6.25日目)に、誘導したスフェロイドを回収し、0.25%トリプシン/EDTA中で、6分間、37℃でインキュベートすることにより細胞を解離させた。正常マウス血清でブロッキングした後、1 % BSA、1 × HBSS及び0.035 % NaHCO3を含む緩衝液中で、細胞表面マーカー(CXCR4/KIT)染色を行った。FACS選別した5,000個のCXCR4+/KIT+細胞を、V底96ウエル低細胞結合プレートに播種し、遠心(210 G 4分間)により沈殿させた。上清を、10 μM Y27632、0.1 μMレチノイン酸、1 μM CHIR、5ng/mL ヒトFgf9、100 ng/mL ヒトFgf1、10 nM LDN193189及び10 % グロースファクターリデューストマトリゲルを含む培地(「Step 5培地」)に交換した。Day 8.5(8.5日目)に、スフェロイドを、10 μM Y27632、0.1 μMレチノイン酸、3 μM CHIR、5 ng/mL ヒトFgf9、1 ng/mL ヒトGDNF、100 ng/mL ヒトFgf1、10nM LDN193189及び10 % グロースファクターリデューストマトリゲルを含む培地(「Step 6培地」)に移した。Day 10.5(10.5日目)に、スフェロイドを、10 μM Y27632、0.1 μMレチノイン酸、3 μM CHIR、2 ng/mL ヒトGDNF、100 ng/mL ヒトFgf1、10 nM LDN193189及び10 % グロースファクターリデューストマトリゲルを含む培地(「Step 7培地」)に移した。
【実施例】
【0117】
ヒトiPS細胞由来の尿管芽の分枝培養
Day 12.5(12.5日目)に、ヒトiPS細胞由来の誘導尿管芽スフェロイドを、24ウエルのトランスウェルインサート中の150μLの分枝培地に入れた。分岐培地は、50 %マトリゲル、10 % FBS、0.1 μMレチノイン酸、100 ng/mL ヒトRspondin 1(R&D)、2 ng/mL ヒトGDNF、100 ng/mL ヒトFgf1、30 ng/mL ヒトFgf7及び10 nM LDN193189を含有したDMEM/F12培地である。マトリゲルを含まない分枝培地500μL中で、トランスウエルインサートを培養した。
【実施例】
【0118】
ヒトiPSCからのMM系譜の誘導
既報のプロトコル(上記Taguchi 2014)を改変して用いた。10 μM Y27632及び1 ng/mL ヒトアクチビンAの存在下で、V底96ウエル低細胞結合プレートで、細胞を、凝集塊あたり10,000細胞で再凝集させて胚様体(EBs)を形成させた。24時間後(Day 1)、凝集塊を、10 μM CHIR を含有する中胚葉誘導培地が入ったU底96ウエル低細胞結合プレートに移した。続いて、培養培地の半分量を、1日おきに新鮮な培地に交換した(Day 3及びDay 5)。Day 7(7日目)に、培地を、10 ng/mL ヒトアクチビンA、3 ng/mL ヒトBmp4、3 μM CHIR及び0.1 μMレチノイン酸を含むABC3R培地に交換した。Day 9(9日目)に、培地を、1 μM CHIR 及び5 ng/mL ヒトFgf9を含むC1F培地に交換した。
【実施例】
【0119】
全載標本免疫組織化学
オルガノイドを、4 % PFAを含むPBS中で、60分間固定し、0.1 % TrytonX-100を含むPBSで3回洗浄し、10 % ヤギ血清、1% Tryton X-100、2%スキムミルクを含むPBSで、1時間ずつ、2回ブロッキングした。組織を一次抗体とインキュベートし、次いで、Alexa Fluor 488、568、594、633又は647結合二次抗体とインキュベートした。免疫染色後、組織を透明にした(Klingberg et al., J. Am Soc Nephrol 28, 452-459, 2017)。標本をエタノールで脱水し、ケイ皮酸エチルに交換した。3D蛍光画像は、2光子顕微鏡(FV1000-MPE;Olympus)又は共焦点顕微鏡(TSCSP8;Leica)で撮影し、ソフトウェア(Imaris;Bitplane又はLASX;Leica)により再構築した。
【実施例】
【0120】
切片免疫組織化学
試料は、4 % PFAを含むPBSで60分間固定し、PBSを用いて洗浄し、スクロースを含むPBSを用いて脱水し、OCTコンパウンド(TissueTek)に包埋し、厚さ10μmの凍結切片を作製した。蛍光免疫組織化学分析のため、切片を、一次抗体とインキュベートし、続いて、Alexa Fluor 488、568、594、633又は647結合二次抗体とインキュベートした。核をDAPIで対比染色した。共焦点顕微鏡(TSCSP8;Leica)で蛍光画像を撮影した。
【実施例】
【0121】
RNA抽出、逆転写及び定量的RT-PCR
回収したスフェロイド又は細胞は、ホモジナイズし、RNeasy Plus Micro Kit(Qiagen)を用いて全RNAを単離し、ランダムプライマー及びSuperscript III(Invitrogen)を用いて逆転写反応を行った。Real-TimePCRシステム(Takara Bio)及びThunderbird SYBR qPCR Mix(Toyobo)を用いて定量的PCRを実行した。β-アクチン遺伝子により標準化し、相対的なmRNA発現レベルを解析した。.
【実施例】
【0122】
免疫染色を用いたフローサイトメトリー解析
胚性組織又はマウスES細胞/ヒトiPS細胞から誘導した細胞凝集塊を解離させ、正常マウス血清を用いてブロッキングし、1 % BSA、1 × HBSS及び0.035 % NaHCO3を含む緩衝液中で細胞表面マーカー染色を行った。データ解析は、FlowJoソフトウェア(Treestar)を用いて行った。
【実施例】
【0123】
マイクロアレイ解析
Agilent SurePrint G3マウス遺伝子発現(8 × 60K)マイクロアレイを用いて、マイクロアレイ解析を行った。データを、遺伝子SpringGXソフトウェア(Agilent)により標準化した。
【実施例】
【0124】
定量化及び統計的解析
全てのデータ解析は、他に記載のない限り、3回の独立した実験により行った。値は、平均値±SEとして表した。2つのグループの統計的解析には、Student’s t検定を適用した。
【実施例】
【0125】
(結果)
実施例1:
ウォルフ管(WD)発生の成熟化により頑強な分枝能力を獲得できることを以下のようにして確認した。
初期ステージのWDの機能の成熟化過程を評価するため、本発明者らはまず、Hoxb7-GFPトランスジェニックマウス系統(Srinivas et al., Dev Genet 24, 241-151, 1999)を利用し、腎臓再構築アッセイ系を作成した。図4にWDの発生過程の概略図を示す。再構築アッセイ又はマイクロアレイ解析に利用したWDの部分を、破線により示してある。E8.75では、WDへの分化が決定づけられたWD前駆体細胞"committedWD progenitor"となる。単離したE11.5後腎間充織(ネフロン前駆細胞及び間質細胞を含む)を、単一細胞に解離させ、E9.5、E10.5及びE11.5ステージ胚から単離したWD又UBと共に再凝集させた。それぞれのオルガノイドが分枝を停止した、器官培養の7日目に、単離したUB又はWDの分枝した先端数を数えた。E11.5胚から単離したUB又はWDは、頑強な分枝形成を示した。一方、E10.5及びE9.5ステージ胚から単離したWDは、より少ない分枝数を示した。結果を、図5に示す。最終的な分枝数は、E10.5又はE11.5胚の尾部及び吻部のWDの間で統計学的に差がなかった。これらの結果は、WDの前後方向の位置にかかわらず保持される分枝能力が、発生の進行により獲得されることを示す。
【実施例】
【0126】
遺伝子発現アレイ解析を行った。発生の成熟化過程をモニターすることのできるマーカーを同定するため、E8.75~E11.5からの、UB、WD及びそれらの前駆細胞の各ステージにおける遺伝子発現アレイ解析を行った。結果を図6に示す。Hoxb7-GFPトランスジェニック系統は、血管内皮の集団の一部にGFP蛍光が漏れるため、フローサイトメトリーにより、Hoxb7-GFP+/Flk1-画分のWD前駆細胞を選別した。代表的なUBマーカー遺伝子に対する、non-biasedクラスタリング解析及びsimilar entity解析により、異なる遺伝子発現動態を示すいくつかのグループを同定した。初期WD発生にかかわるキーとなる転写因子の多く(Pax2、Lhx1、Emx2、Sim1、Gata3)は、E8.75のWD前駆細胞においてすでに発現し、発生段階又は前後の位置にかかわらず、維持されていた。もう一つのグループは、尿管の先端マーカー遺伝子(例えば、En2、Wnt11、Ret)であり、WD又はUBの先導先端(leading tip legion)においてより高い発現を示していた。反対に、一連の遺伝子(例えばE-cadherin、Wnt9b、Hnf1b)の発現は、発生の進行により増加し、これは、成熟化をモニターするのに有用であろう。
【実施例】
【0127】
実施例2:
本発明者らは、次に、以下のようにしてレチノイン酸、Wnt及びFgf/GdnfのシグナリングがWD前駆細胞を尿管芽様細胞に成熟させることを確認した。
本発明者らは、逆誘導アプローチにより、UBを作製するためのプロトコルを樹立した。第一段階として、E9.5WDをE11.5UB様細胞へ成熟させる因子を以下のようにして見出した。マイクロアレイ解析により、WDにおいて、初期の発生の初めから、レチノイン酸合成酵素(Raldh3)、Wnt共受容体(Lgr5)及びFgf受容体/標的遺伝子の度重なる発現が同定された(データ示さず)。そこで、解離させたE9.5マウス胚からWDを選別し、これらの成長因子の組み合わせの存在下で再凝集させた。上皮細胞の生存をサポートするため、Rhoキナーゼ阻害剤(10 μM Y27632)及び10 %グロースファクターリデューストマトリゲルを含めた。
【実施例】
【0128】
RA、Wntアゴニスト(3 μM CHIR99021)及びFgf9の組み合わせは、相乗的に、系譜マーカー(Pax2、Emx2)、先端型マーカー(Ret)を維持し、成熟WDマーカー(Hnf1b、Wnt9b及びCalb1)を誘導した(図7)。しかしながら、凝集塊(sphere)は、Wnt11の発現を維持せず、形態上では芽形成が行われなかった。従って、尿管芽の強力な誘導物質であり、Wnt11のよく知られた上流誘導物質であるGdnfの利用を試みた。期待どおり、Gdnfを利用し最適化した条件は、Wnt11の発現及び芽様構造形成を成功裏に誘導した(図5)。これらの結果は、WD発生期の、Fgf、カノニカルWntシグナル及びレチノイン酸シグナルを含む、各成長因子シグナルの必要性を示す既報の遺伝的な機能欠失研究と一致する。
【実施例】
【0129】
第二段階として、E8.75WDをE9.5WDへ成熟させる因子を以下のようにして見出した。胚性E8.75からE9.5ステージであるWD前駆細胞の初期ステージにおける成熟化のきっかけ因子を調べた。胚性E8.75からE9.5ステージにおいて、Hoxb7-GFP陽性WD前駆細胞は、胚の前側体幹(8~10体節レベル)で最初に明らかに検出できる。E9.5からE11.5ステージへの誘導と同様に、選別したHoxb7-GFP陽性前駆細胞は、レチノイン酸(RA)、Wntアゴニスト及びFgf9の存在下で、Emx2及びRetの発現を維持した。対照的に、同じ濃度のWntアゴニスト及びFgf9(それぞれ、3 μM及び100 ng/ml)は、この段階における成熟化マーカー遺伝子(Hnf1b、Wnt9b、Calb1、E-cadherin)の発現に対し、抑制的に働いた(図7)。よって、RA及び低濃度のFgf9(5 ng/ml)及びWntアゴニスト(1 μM)の組み合わせが、この段階の誘導に最適であると結論できた。この段階においては、Gdnfを用いなくても、Fgf9によりWnt11の発現を維持させることができた。これらの結果は、WDの成熟化過程の初期及び後期の発生ステージの間で、遺伝子制御回路の幾分異なるモードが存在することを示唆している。
【実施例】
【0130】
最後に、上記の因子を組み合わせた、E8.75WDをE11.5UB様細胞へ成熟させる3日間の誘導プロトコルを、選別したE8.75WD前駆細胞に連続して適用した。概略を図1に示す。誘導3日目に、E11.5胚にて、尿管芽様構造の形成(図8)及び胚性UBと定量的に同等の遺伝子発現レベル(図9)を認めた。定量的RT-PCR解析により、生体外(ex vivo)の成熟化培養の間、生体内(in vivo)におけるものと同様の遺伝子発現動態を確認した。
【実施例】
【0131】
実施例3:
マウス胚性幹細胞からのE8.75WD前駆細胞様集団を用いて、WD前駆細胞の誘導因子を以下のようにして探索した。
最初に、WD前駆細胞誘導効率を特異的にそして定量的に評価するために、E8.75のWD前駆細胞において特異的に発現する細胞表面分子の組み合わせを探索した。発生段階ごとのウォルフ前駆細胞及び尿管芽細胞(E8.75WD、E8.75WD、E9.5WD_C、E10.5WD_R、E10.5WD_C、E11.5UB)及び後腎間葉系譜前駆細胞(E9.5IM_R、E9.5IM_C)において発現している遺伝子を比較し、後腎間葉系譜に発現がなくE8.75の最も初期のウォルフ管から発現している分子として、Cxcr4、Icam2、Itgb3、及びKitに着目にした。
ウォルフ管にGFPを発現するマウスのE8.75の胎仔を単一細胞に解離してWDに発現すると考えられた表面分子をフローサイトメトリーで解析した。Itgb3を用いて行ったFACS解析では、Hoxb7-GFP+である後腎間葉系譜前駆細胞のほとんどの細胞がItgb3陰性であった。また、Icam2を用いて行ったFACS解析により、Icam2は血管内皮で強く発現しているが、WDではごく一部が弱く発現しているに過ぎないことが明らかになった。Cxcr4及びcKITを用いたFACS解析により、cKITは血管内皮でもやや弱く発現しているが、Cxcr4はWDのみに発現しており、CXCR4陽性/Hoxb7-GFP陽性のWDの99%以上がKit陽性であった。E8.75のHoxb7-GFP陽性/Flk1-陰性WD前駆細胞の大部分は、Cxcr4及びKitに対し陽性であり、E8.75胚に含まれる細胞全体の中のWD前駆細胞の集団と、Cxcr4強陽性かつcKit強陽性の集団は一致しており、Cxcr4及びcKITのマーカーとして特異性が確認された(図10中の丸印)。
【実施例】
【0132】
実施例4:
T陽性の未成熟な中胚葉状態からのUB系譜(AIM)の誘導を検討した。
マウス胚性幹細胞からWD前駆細胞の誘導のため、最初に、in vivoでの、中間中胚葉内のA-Pパターン形成過程を検討した。本発明者らにより既に構築されているUB及びMMの系譜分離モデル(上記Taguchi, 2014)は、T陽性の未成熟な中胚葉状態からUB系譜がMM系譜よりも早く分化することを示しており、未成熟な状態は強力なWntシグナリングにより維持される。従って、最初に、暫定的に、高濃度のWntアゴニストによるインキュベーション期間を、MM誘導についての2.5日に対して、UBの誘導については1.5日に短縮した(図2のstep 2)。
【実施例】
【0133】
次に、前側中間中胚葉(AIM)(Osr1+、Pax2+、Pax8+、Emx2+、Lhx1+、Gata3+)及び後側中間中胚葉(PIM)(Osr1+、Wt1+、Hox11+)間で、最小限に保存されている遺伝子発現プロファイルに基づいて、PIMとは部分的に異なる、AIM分化段階のシグナリングを仮定した(図2のStep3)。
まずAIM及びPIM誘導の両方に対する共通の誘導物質としてレチノイン酸をあげた。内在性のFGFシグナルは、PIM誘導に十分であったが、高濃度のFgf9はAIMマーカーをさらに亢進させた。PIM誘導と対照的に、アクチビンA及びBmp4の添加は、AIMマーカーの誘導に対して抑制的であった。SB431542(SB)によるsmad2/3パスウェイの抑制は、AIMマーカー誘導を亢進させた。このことは、AIM対PIMの運命決定における、アクチビン/Tgfbシグナリングの主要な役割を示唆している。一方で、Bmpシグナルの添加又は阻害のいずれも、AIM誘導に対して抑制的に機能した。このことは、AIM特異化には、最適なレベルのBmpシグナルが要求されることを意味する。
【実施例】
【0134】
次いで、AIMを、Cxcr4+/Kit+でWD前駆細胞へ特異化する因子を調べた(図2:
step 4)。結果を図11に示す。この段階では、RA、Wntアゴニスト及びFgf9の相乗的な効果を見出した。特に、Wntアゴニストの除去は、Cxcr4+/KIT+の集団の誘導を劇的に減少させた。このことは、Wntアゴニストが、WD前駆細胞の誘導における重大な役割を果たしていることを示唆している。
【実施例】
【0135】
さらなる条件の微調整及びUB系譜分化過程の理解のため、再実験を行い、Wntとともにインキュベーションする期間を変更し、それにより、初期の中胚葉がAIMに効率的に分化する最適なタイミングを確認した(図2:step 2)。AIM誘導のために許される時間窓は、およそDay 4.5(36hのWnt処理)であった。Day 4(step2の期間が1日)又はDay 5(step2の期間が2日)のタイミングでは、その効率は、劇的に減少した。これは、in vivoにおいて、E8.5で中間中胚葉の2-体節幅(体節レベル8-10)内に初めて現れる前後方向に非常に狭い前側中間中胚葉ドメイン(前腎の原基)を反映しているかもしれない。
【実施例】
【0136】
分化のDay 2からDay 3(Step 1)及びDay 3からDay 4.5(Step 2)において、アクチビン/Bmpシグナリングによる濃度依存的なパターン形成が認められたので、エピブラスト及び原条/初期の中胚葉ステージ内での、運命特異化シグナルを検討した。中胚葉形成/パターン形成(Step 2)では、MMと比較してより高いBmp4濃度において、UB誘導が最大となった(図12)。エピブラストパターン形成ステージ(Step 1)では、UB誘導は、MMにおけるものと比較してより高い濃度のアクチビンが好ましかった(図13)。これらの2段階の組み合わせ解析は、UBとMMへの誘導に関して、最適な濃度幅は相反的なパターンを示した(図14)。これらの結果は、未成熟な中胚葉の形成前及び形成中に、UB及びMMの細胞運命パターン形成が開始することを示唆している。これらの最適化(step 1及びstep 2の最適化)により、マウスES細胞の分化のDay 6.25に、平均35.6%のCxcr4+/KIT+の集団を得ることができた。
【実施例】
【0137】
Day 0の未成熟なES細胞からDay 6.25のWD前駆細胞ステージ(E8.75のWD前駆細胞に対応している)における遺伝子発現動態を解析した。結果を図15に示す。誘導したスフェロイドは、E8.75のWD前駆細胞と定量的に同等の遺伝子発現レベルを示し、PIM又は後腎のネフロン前駆細胞マーカーの発現を欠いていた(Hoxd11、Wt1及びSix2)。このことは、UB系譜への選択的な誘導の成功を示している。
【実施例】
【0138】
実施例5:
誘導したUBを用いて、胚性腎臓の高次構造の再構築を以下のようにして行った。
次に、誘導したWD前駆細胞に対するWD成熟化因子を検討した。分枝形態形成を可視化するため、Hoxb7-GFPトランスジェニックマウスからマウス胚性幹細胞を樹立した。初期の誘導段階における最小限の改良により、分化のDay 6.25にHoxb7-GFP+/Cxcr4+/KIT+のWD前駆細胞の誘導に成功した。選別したGFP+/Cxcr4+/KIT+の細胞集団を再凝集させ、図16に示すE8.75のWD培養実験により確立したWD成熟化条件で培養した。凝集塊は、誘導のDay 9.25で尿管芽様構造を形成し(図17)、E11.5のUBレベルに匹敵するUBマーカーを発現した(図18)。単一の出口を作り分枝能力を確認するため、スフェロイドから、単一の直鎖状又は二分枝の芽を手作業で単離し、単離したE11.5のMMと共に再凝集させた。MMの存在下で、誘導したUBは、器官培養の6から7日において、二つに分かれる分枝形成を6回から7回生じた(1回/day)(図19左図)。単一の芽からの最終的な先端数は、平均して141±12(n=6)であり、これはE11.5の胚由来のUBによるものに匹敵した(図19右図)。既報(Rosines et al., Hum Mol Genet 20, 1143-1153, 2007)に記載の方法を変更することにより、無細胞分枝培養条件において、誘導したUBの分枝能力を評価した。その結果、最適化培地は、50%マトリゲルの存在下で、RA、Fgf1、Wntアゴニスト(Rspo1)、Gdnf及び10 % FBSを含むものであった。
【実施例】
【0139】
誘導したUBの機能性をさらに検証するため、前駆細胞ニッチの維持能力及び分化能力を、7日目に再構築されたオルガノイドの全載標本染色により解析した。
【実施例】
【0140】
誘導したUBは、オルガノイドの外縁部において、各UB端に、Six2-陽性のネフロン前駆細胞を維持しており、これは、胚性腎臓の腎形成領域(nephrogenic zone)にあたる(図20左図)。対照的に、オルガノイドの内側では、E-Cadherin陽性の遠位尿細管セグメント、LTL-陽性の近位尿細管セグメント及びNephrin陽性の糸球体構造が連続して含む分化したネフロンが認められた。このことより、誘導したUBのネフロン誘導能力が確認された(図20右図)。各ネフロンの遠位端は尿管の先端と連結されており、このことは、尿排出のためのネフロンとの相互連結に必須である(図20右下図)。
【実施例】
【0141】
典型的なUB先端マーカーである、Sox9が外縁において発現していた(データ示さず)。一方でcytokeratin 8は、E14.5の胚性の腎臓と同様に、腎臓の髄質領域において、より強力な発現を示した。このことは、適切な先端-茎(tip-stalk)パターン形成が起こっていることを示している。全尿管上皮におけるCalb1及びGata3のユビキタスな発現により、この分枝した上皮の尿管の系譜特異的な特徴をさらに確認した(データ示さず)。
【実施例】
【0142】
まとめると、誘導したUBは、分枝形態発生能力、ネフロン前駆細胞維持能力及び該ネフロン分化能力を含む、UBの機能的な判断基準を満たしている。このことは、後腎間充織を有する胚性腎臓の高次構造の再構築が可能となったことを示している。
【実施例】
【0143】
実施例6:
胚性MMの代わりに誘導したネフロン前駆細胞を用いることを検討した。
本発明者らは、ネフロン前駆細胞誘導可能な条件をすでに確立しているので、誘導したネフロン前駆細胞により胚性MMを置き換えることを検討した。まずMMを構成する集団;すなわち、ネフロン前駆細胞及び間質前駆細胞のそれぞれの必要性を検討した。既に明らかにしたように、E11.5のネフロン前駆細胞の殆どは、Itga8+/Pdgfra-画分に存在し、一方で、間質前駆細胞はPdgfraを提示する(Taguchi et al., Cell stem cell 14, 53-67, 2014)。よって、それぞれ単一の画分を選別し、誘導したUBと共に再凝集させた。間質細胞は、ネフロン前駆細胞の非存在下では、UBの分枝をサポートしなかった。その一方で、ネフロン前駆細胞は、間質細胞集団が存在しなくても、不規則な分枝形成を誘導し、典型的な二分枝又は三分枝よりはむしろ、多角的な形を示すUBの先端が形成された(データ示さず)。加えて、UBの先端のそれぞれの部位で、ネフロン前駆細胞の不規則に肥厚した層が観察された(データ示さず)。これは、既に報告されている機能的な間質集団を欠くノックアウトマウス表現型を想起させる。これらのことは、尿管芽の分枝形態形成の適切な組織化に、間質細胞集団及びネフロン前駆細胞集団の両方が必要であることを示している。従って、誘導したネフロン前駆細胞、誘導したUB、及び、E11.5の胚性腎臓から選別したPdgfra+間質細胞集団を用いて、腎臓オルガノイドを再構築することとした。全胚性MMを用いた再構築と同様に、再構築された腎臓組織は、ネフロン前駆細胞ニッチ及び分化したネフロン構成成分を有する頑強な分枝を示した。マウスES細胞由来のネフロン前駆細胞及び尿管芽の双方の機能性が示され、このことは、相互作用して腎臓オルガノイドの高次構造を形成することのできることを示している(図21)。それぞれの集団の選択的な寄与を確認するため、Pdgfra+間質細胞集団について、CAG-delta-Tomatoマウス胚を利用した。その胚性細胞は、オルガノイドのネフロン前駆細胞ニッチを囲む間質集団及び髄質領域に対し、限定的な寄与であることが分かった(データ示さず)。
【実施例】
【0144】
実施例7:
ヒトiPS細胞からのWDの誘導を以下のようにして行った。マウスES細胞を用いた実験を参考に、最初に、アクチビン及びそれに続く高濃度のWntアゴニストにより、初期の中胚葉を誘導した(図3、Step 1及びStep 2)。次いで、RA、Fgf9及びTgfb阻害剤又はRA、Wntアゴニスト及びFgf9を組み合わせることにより、それぞれのStepで(Step 3及びStep 4)で、AIM誘導因子及びWD誘導因子を作った。マウスES細胞の誘導と反対に、Bmp阻害剤LDNの添加は、これらの分化段階のいずれをもさらに亢進させた。特に、AIM誘導段階(Step 3)におけるLDNの投与は、AIMマーカー遺伝子発現及びCXCR4+/KIT+のWD前駆細胞の誘導を大きく亢進させた。このことは、それぞれDay 4.5及びDay 6.25の定量分析により確認された(図22)。
【実施例】
【0145】
次いで、初期の中胚葉から、前側又は後側中間中胚葉を誘導する最適な時間窓の検討を行った。初期の中胚葉集団は、高濃度のWntアゴニストにより維持されたため、Wntアゴニストによるインキュベーション期間を変化させ、それに続く分化に、UB又は後腎のネフロン前駆細胞系譜に特異的な条件を適用した。CXCR4+/KIT+のWD前駆細胞画分又はITGA8+/PDGFRA-ネフロン前駆細胞画分の誘導効率を、それぞれDay 6.25又はDay 12に検討した。マウスES細胞の実験と同様に、ヒトUB系譜も、AIM誘導のため柔軟性に欠ける時間窓を要求し、Day 2.5(2.5日目)(1.5日のCHIR処理)が最適であった。一方、ネフロン前駆細胞系譜の誘導効率はPIM誘導因子のDay 7での投与(6日間のCHIR処理)によりピークとなり、本発明者らの以前の報告を確認した。(上記Taguchi 2014文献)。ネフロン前駆細胞誘導のための、CHIR処理の許容される時間窓(5日~7日の間)と比較して、UB系譜は、最適な時間窓を超えると誘導されなかった。従って、UB系譜は、ネフロン前駆細胞分化のタイムフレームにおいては誘導されなかった。
【実施例】
【0146】
マウスES細胞の実験より、エピブラストから初期の中胚葉ステージの間の早過ぎるパターン形成が、UB対ネフロン前駆細胞の運命決定に影響していることが示されたため、次に、分化の最も早い段階におけるアクチビン/Bmp濃度の最適化を検討した。エピブラストパターン形成ステージ(分化0日~1日)では、UBは、より高いアクチビンシグナルを好み、これはマウスES細胞の結果と一致し、さらに、この段階での低濃度のBmp4の添加により、WD前駆細胞誘導がさらに亢進し、10 ng/mlのアクチビンA及び1 ng/mlのBmp4の組み合わせによりピークになった(図23左図、図24)。対照的に、Bmp4の非存在下において、より低い濃度のアクチビンにより、ネフロン前駆細胞の誘導が亢進し、1 ng/mlのアクチビンAで最大になった(図23右図、図24)。
それに続く、CHIR処理(UB誘導においては、Day 1~2.5、MM誘導においては、Day 1~7)による中胚葉誘導/パターン形成段階の間、同時投与したBmpシグナルの効果を検討した。UB前駆細胞は、1 ng/mlのBmp4の添加により最も効率的に誘導され、一方、ネフロン前駆細胞は、Bmpリガンド又はアンタゴニストの非存在下で最も効率的に誘導された(図25)。まとめると、これらの結果は、UB系譜及び後腎のネフロン前駆細胞系譜の間で、互いに独立の初期の系譜特異化過程が存在することを強く示唆している。最終的に決定された条件では、誘導6.25日目に、約51.2%のCXCR4+/KIT+のWD前駆細胞が誘導され(図26)、Day 0からDay 6.5の動態解析により、WDマーカーセットが効率の良く誘導されたことが分かった(図27)。
【実施例】
【0147】
次に、Day 6.25にCXCR4+/KIT+のWD前駆細胞画分を選別し、10 % マトリゲル及びWD成熟化因子の存在下で再凝集させた。ヒトWD前駆細胞の分化において、マウスWD成熟化カクテルに加えてFgf1及びLDNの継続的な投与は、成熟WDマーカー遺伝子発現をさらに亢進させた(データ示さず)。最適化した培養条件により、Hnf1b、E-Cadherin及びCALB1を含む成熟UBマーカーが誘導され(データ示さず)、培養の6日目(全体として誘導の12日目)に、複数芽形成が行われた(図28)。
誘導したUBは、ゲル培養環境において分枝能力を示した。この培養条件にて、およそ培養7日目に一回目の分枝を観察することができ、二週目の終わりに二分枝の二回目の形成を確認した(図28)。これは、マウスUB分枝と比較してかなり遅いが、in vivoでのヒト発生と同等のものである。分枝したUBオルガノイドは、尿管の上皮の先端領域でSox9を発現し、茎領域でCK8を発現した(図29左図)。これは、構造上、先端-茎パターン形成を示している。先端領域では、E-cadherin及びPAX2により染色された、典型的な二つに分かれた分岐が同定された(図29右図)。これは、in vitroでヒトUB分枝形態形成が再構築された最初の証拠を示す。
【実施例】
【0148】
実施例8:
本発明者らにより開発されたMM及びUBの選択的な誘導方法により発生遺伝子の系譜特異的な役割の解析が可能となったので、この方法を用いて、MM及びUB系譜における、PAX2遺伝子の細胞自律的な役割の検討を試みた。
【実施例】
【0149】
MM系譜からのPAX2の欠失は、少なくともネフロン前駆細胞誘導やネフロンへの間葉-上皮転換においては、全体的な異常を示さなかった。反対に、UB系譜では、UB分化が不完全である表現型を観察した。分化のDay 6.25に、対照に比べてノックアウトクローンでは、CXCR4+/KIT+であるWD前駆細胞の誘導効率のわずかな減少を認めた(データ示さず)。それにもかかわらず、定量的RT-PCR解析の結果は、PAX2を除き遺伝的に同等のWDマーカー遺伝子発現プロファイルを示し、また、顕著な割合で、CXCR4+/KIT+のWD前駆細胞が、対照及びPAX2ノックアウトクローンのいずれかからも得られた(データ示さず)。
【実施例】
【0150】
選別したCXCR4+/KIT+のWD前駆細胞集団を、WD成熟化条件においてさらに培養したが、Day 8.5(成熟化培養2日目)では、対照及びノックアウトクローン間での、形態上の巨視的差異は認められなかった。Day 10.5(成熟化培養4日目)で、対照クローンにおいて、形態上、遊走するWD先端(Soofi et al.,2012)を想起する活発な細胞突起(cellularprotrusion)形成が認められたが、ノックアウトクローンは、突起が少なく、LHX1、GATA3及びRETを含むPAX2標的遺伝子の発現の緩やかな減少が確認された(データ示さず)。
【実施例】
【0151】
Day 12.5(成熟化培養6日目)で、対照スフェロイドは巨大な尿管芽様構造に発達した一方、ノックアウトクローンでは明らかな芽形成はなく起伏のある表面を示した(図30)。ノックアウトクローンにおけるE-cadherinの発現レベルは、対照クローンより著しく低かった。ノックアウトクローンにおける、適切な間葉上皮転換の失敗を示唆している。全載標本免疫染色によりDay 12.5のスフェロイドを解析した所、対照では尿管芽の基底膜(basal)側領域の細胞外膜におけるE-cadherinシグナリングの明らかな蓄積を認めた一方、ノックアウトクローンにおいてはE-cadherinは膜に局在せず細胞質での弱い発現を示した。
このことは、UB系譜におけるPAX2の減少は、成熟化段階において上皮-間葉転換の誘導の失敗をもたらすことを意味する。
【実施例】
【0152】
実施例9:
ネフロン前駆細胞からネフロンへの分化誘導に与える影響について、本発明の方法を用いて作製した尿管芽様細胞を用いた場合と、従来の(尿管芽を用いない)胎仔脊髄組織との共培養法による場合で比較した。
実施例に記載の方法に従って作製した尿管芽様細胞を用いて、以下のようにしてネフロンを誘導した。糸球体上皮細胞がGFPによって蛍光を発するマウス胎仔から採取した後腎間葉を誘導尿管芽様細胞と凝集し、7日間の器官培養を行った後に、免疫不全マウスへ移植した。移植15日目に回収し、GFP陽性の球状構造として確認される糸球体の数をカウントし、最終的に形成されたネフロンの総数を見積もった。
比較として、本発明者らによる報告(A. Taguchiら、Cell Stem Cell 14, 53-67, 2014) に記載の、胎仔脊髄組織と後腎間葉を共培養する方法で器官培養し、移植を行った。
結果を図31に示す。本発明の方法を用いて作製した尿管芽様細胞を用いてネフロン前駆細胞を維持することにより、最終的に形成されるネフロン数が顕著に増加することが判った。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明において提供される方法によれば、in vitroにおいて、マウス胎仔尿管芽に相応の樹状分岐形成能を持ち、分岐の先端に前駆細胞ニッチを維持し、かつ個々のネフロンと接続されている腎臓オルガノイドを形成可能な尿管芽様細胞を作製することが可能となり得る。
本発明において提供されるWD前駆細胞様細胞の作製方法は、Cxcr4陽性かつKIT陽性細胞を得ることにより、(I)後腎間葉の細胞と混ぜ合わせるか、分岐を促進する成長因子の中で培養すると、分岐形成「branching」を行う、(II)後腎間葉と混ぜ合わせると、その中のネフロン前駆細胞の未分化性を維持する前駆細胞ニッチを形成する能力を持つ、(III)後腎間葉と混ぜ合わせると、その中のネフロン前駆細胞の分化をネフロンへと誘導する能力を持つという特徴を有する尿管芽様細胞の作製及び、その前駆細胞となるWD前駆細胞様細胞の作製を可能とし得る。
本発明により再構築を行った腎臓オルガノイドは、腎臓の高次構造を世界で初めて再現したものであり、将来的に機能的な人工腎臓の作成を可能にするための必要不可欠な技術であり得る。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30