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明細書 :血液浄化装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-186904 (P2018-186904A)
公開日 平成30年11月29日(2018.11.29)
発明の名称または考案の名称 血液浄化装置
国際特許分類 A61M   1/16        (2006.01)
A61M   1/34        (2006.01)
B01D  61/14        (2006.01)
B01D  61/24        (2006.01)
B01D  61/58        (2006.01)
FI A61M 1/16 101
A61M 1/34 100
B01D 61/14 500
B01D 61/24
B01D 61/58
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2017-089961 (P2017-089961)
出願日 平成29年4月28日(2017.4.28)
発明者または考案者 【氏名】佐野 吉彦
【氏名】鵜川 豊世武
出願人 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100170818、【弁理士】、【氏名又は名称】小松 秀輝
審査請求 未請求
テーマコード 4C077
4D006
Fターム 4C077AA05
4C077BB01
4C077BB02
4C077CC03
4C077DD01
4C077EE01
4C077FF05
4C077LL02
4C077LL05
4C077LL17
4C077NN01
4D006GA06
4D006GA14
4D006HA01
4D006JA53Z
4D006KA12
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006MA01
4D006MA21
4D006MB05
4D006MC88
4D006PA01
4D006PB09
4D006PB44
4D006PB45
4D006PB46
4D006PB63
4D006PB70
4D006PC47
要約 【課題】透析治療を必要とする患者が携帯可能であることにより、定期的な通院や長時間の拘束を要せず、患者の負担を軽減する血液浄化装置を提供する。
【解決手段】血液浄化装置1は、老廃物Aを含む被処理血液B1を受け入れて、限外濾過によって被処理血液B1から血液成分BCを含まない希薄血液B2及び血液成分BCを含む濃縮血液B3をそれぞれ生成する濾過部3と、希薄血液B2が含む水分を濃縮血液B3に吸収させることにより水分が減少した希薄血液B2を人口尿Uとして排出すると共に、水分を吸収した濃縮血液B3を浄化血液B4として排出する再吸収部4と、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
除去対象成分を含む血液又は前記血液を含む液体である被処理液を受け入れて、限外濾過によって前記被処理液から前記除去対象成分を含み且つ血液成分を含まない第1処理液を生成すると共に前記血液成分を含む第2処理液を生成する濾過部と、
前記第1処理液及び前記第2処理液を受け入れて、前記第1処理液が含む水分を前記第2処理液に吸収させることにより、前記水分が減少した前記第1処理液を排液として排出すると共に前記水分を吸収した前記第2処理液を浄化血液として排出する再吸収部と、を備える、血液浄化装置。
【請求項2】
前記濾過部は、
前記被処理液を受け入れる受入部と、
前記第1処理液を排出する第1排出部と、
前記第2処理液を排出する第2排出部と、
前記受入部と前記第1排出部とを互いに隔てるように配置された第1処理膜と、を有し、
前記再吸収部は、
前記第1処理液を受け入れて、前記第1処理液を保持する第1保持部と、
前記第2処理液を受け入れて、前記第2処理液を保持する第2保持部と、
前記第1保持部と前記第2保持部とを互いに隔てるように配置された第2処理膜と、有し、
前記第1処理膜は、前記血液成分より小さい第1細孔を有し、前記第1細孔より小さい前記除去対象成分を前記水分と共に通過させ、
前記第2処理膜は、前記除去対象成分よりも小さい第2細孔を有し、前記第2細孔よりも小さい前記水分を通過させる、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記第1処理膜の分画分子量は66,000以下であり、かつ、前記第2処理膜の分画分子量は20以上100以下である請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記第2保持部に接続されて、前記第2処理液に電解質を提供する電解質提供部をさらに備える、請求項2又は3に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記濾過部の前記受入部に接続されて、前記被処理液に対して圧力を提供するポンプをさらに備える、請求項2~4の何れか一項に記載の血液浄化装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓は、血液から老廃物や余分な水分などの人体に不要な成分を取り除く機能を有する。例えば、特許文献1に開示されている透過型濾過システムは、この機能を補助又は代替するいわゆる人工透析装置である。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特表2002-528241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在の人工透析装置は、老廃物の輸送原理の一つとして拡散現象を利用する。拡散現象によれば、血液に含まれる老廃物の濃度と老廃物に対応する成分を含む透析液の濃度との濃度差を駆動力として、老廃物を血液から透析液に移動させる。つまり、拡散現象を利用する人工透析装置は、例えば一回の透析治療につき120リットルといった大量の透析液が必要であるので、事実上持ち運ぶことができない。このような事情から、透析治療を必要とする患者は、例えば、定期的に通院すると共に所定時間に亘って拘束されるような透析治療を受けることがある。このような透析治療にあっては、患者のクオリティーオブライフ(QOL)を向上させ難い。
【0005】
そこで、本発明は、クオリティーオブライフ(QOL)の向上が可能な血液浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、除去対象成分を含む血液又は血液を含む液体である被処理液を受け入れて、限外濾過によって被処理液から除去対象成分を含み且つ血液成分を含まない第1処理液を生成すると共に血液成分を含む第2処理液を生成する濾過部と、第1処理液及び第2処理液を受け入れて、第1処理液が含む水分を第2処理液に吸収させることにより、水分が減少した第1処理液を排液として排出すると共に水分を吸収した第2処理液を浄化血液として排出する再吸収部と、を備える。
【0007】
この血液浄化装置は、濾過部において第1処理液を生成する。この第1処理液には、除去されるべき成分が含まれる。そうすると、第2処理液における除去対象成分は、被処理液における除去対象成分に比べて少なくなる。次に、血液浄化装置は、再吸収部において、第1処理液中の水分を第2処理液に吸収させる。この吸収により、第2処理液における血液成分の割合が被処理液と等価である浄化血液が得られる。この浄化血液は、除去対象成分の量が被処理液よりも小さいので、被処理液が浄化されたことになる。上述したように、血液浄化装置は、拡散現象を利用することなく被処理液から除去対象成分が取り除かれた浄化血液を得ることができる。そうすると、血液浄化装置は、透析液を必要としないので、患者が携帯可能な大きさまで小型化及び軽量化が可能である。従って、定期的な通院や長時間の拘束を要しなくなるので、患者の負担を軽減することができる。ひいては、血液浄化装置は患者のクオリティーオブライフ(QOL)を向上させることができる。
【0008】
濾過部は、被処理液を受け入れる受入部と、第1処理液を排出する第1排出部と、第2処理液を排出する第2排出部と、受入部と第1排出部とを互いに隔てるように配置された第1処理膜と、を有し、再吸収部は、第1処理液を受け入れて、第1処理液を保持する第1保持部と、第2処理液を受け入れて、第2処理液を保持する第2保持部と、第1保持部と第2保持部とを互いに隔てるように配置された第2処理膜と、有し、第1処理膜は、血液成分より小さい第1細孔を有し、第1細孔より小さい除去対象成分を水分と共に通過させ、第2処理膜は、除去対象成分よりも小さい第2細孔を有し、第2細孔よりも小さい水分を通過させてもよい。
【0009】
血液浄化装置は、受入部から濾過部へ被処理液を受け入れる。受け入れられた被処理液は、第1処理膜を通過して第1処理液となる。この第1処理膜は、血液成分より小さい第1細孔を有する。従って、第1処理液は、血液成分より小さい除去対象成分と水分とを含む。従って、濾過部によって、被処理液から第2処理液が得られる。次に、第1処理液と第2処理液は、再吸収部に送られる。再吸収部は、第1保持部における第1処理液と第2保持部における第2処理液とを第2処理膜によって隔てる。第2処理膜は、水分子よりも小さい第2細孔を有する。そうすると、第1処理液と第2処理液との浸透圧差に起因して、第1保持部における第1処理液から第2保持部における第2処理液への水分の移動が浸透圧差がなくなるまで継続する。この水分の移動により、第2処理液から浄化血液が得ることができる。
【0010】
第1処理膜の分画分子量は66,000以下であり、かつ、第2処理膜の分画分子量は20以上100以下であってもよい。この構成によれば、浄化血液を好適に得ることができる。
【0011】
一形態に係る血液浄化装置は、第2保持部に接続されて、第2処理液に電解質を提供する電解質提供部をさらに備えてもよい。濾過部における濾過処理によれば、被処理液に含まれる電解質も第1処理液側へ移動する。そこで、電解質提供部によれば、第2処理液に電解質を提供することにより、第2処理液の電解質量を所望の値に補正することができる。
【0012】
一形態に係る血液浄化装置は、濾過部の受入部に接続されて、被処理液に対して圧力を提供するポンプをさらに備えてもよい。この構成によれば、濾過部における濾過処理に要する圧力を確実に提供することが可能になる。従って、血圧が相対的に低い静脈から採取された被処理液を好適に処理することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る血液浄化装置によれば、患者のクオリティーオブライフ(QOL)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態に係る血液浄化装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。

【0016】
図1に示されるように、本実施形態に係る血液浄化装置1は、被処理液である被処理血液B1に含まれている老廃物A(除去対象成分、図1における黒塗りの四角形を参照)を取り除く。被処理血液B1から老廃物Aを取り除く処理を浄化処理と呼ぶ。この浄化処理により、血液浄化装置1は、浄化血液B4と、人口尿U(排液)とを生成する。被処理液は、被処理血液B1だけでなく被処理血液B1を含む液体であってもよい。以下の説明においては、被処理液の例として被処理血液B1を例に説明する。

【0017】
血液浄化装置1は、血液導入部1aと、血液排出部1bと、人口尿排出部1cとを有する。血液浄化装置1は、被処理血液B1を血液導入部1aから取り入れて、浄化処理する。血液導入部1aは、カテーテルを介して患者100に接続される。具体的には、血液導入部1aは、患者100の血管もしくはバスキュラーアクセスに接続される。血液浄化装置1は、浄化処理によって得られた浄化血液B4を血液排出部1bから排出する。血液排出部1bは、カテーテルを介して患者100に接続される。血液浄化装置1は、浄化処理によって得られた人口尿Uを人口尿排出部1cから排出する。

【0018】
血液浄化装置1は、主要な構成要素として、ポンプ2と、濾過部3と、再吸収部4と、電解質提供部5とを有する。

【0019】
いわゆる血液ポンプであるポンプ2は、血液導入部1aと、濾過部3とに接続される。ポンプ2は、濾過部3における限外濾過処理に要する圧力を発生させる。なお、患者100の動脈から被処理血液B1を取り出すような場合、限外濾過処理に要する圧力は、患者100の動脈における血圧(例えば100mHg)により足りることがある。その場合には、ポンプ2は、省略してもよい。

【0020】
濾過部3は、ポンプ2と、再吸収部4とに接続される。濾過部3は、老廃物Aを含む被処理血液B1を受け入れて、限外濾過によって希薄血液B2(第1処理液)と、濃縮血液B3(第2処理液)をそれぞれ生成する。ここで、老廃物Aには、例えば、尿素、窒素、クレアチニン等が挙げられる。また、血液成分BCには、例えば、白血球、赤血球、アルブミン、血小板等が挙げられる。さらに、希薄血液B2とは、老廃物A及び電解質E(図1における黒塗りの三角形を参照)を含み且つ血液成分BCを含まない液体をいい、濃縮血液B3は血液成分BCを含む液体をいう。なお、濃縮血液B3は、老廃物Aや電解質Eを含んでいてもよい。要するに、濃縮血液B3は、被処理血液B1よりも少ない老廃物Aを含み得る。

【0021】
濾過部3は、第1受入部3aと、第1領域3bと、第2領域3cと、希薄血液B2を排出する第1排出部3dと、濃縮血液B3を排出する第2排出部3eと、第1処理膜6と、を有する。第1受入部3aは、ポンプ2に接続されて、所定の圧力を有する被処理血液B1を受け入れる。第1受入部3aは、第1領域3bの入り口であり、第2排出部3eは、第1領域3bの出口に対応する。つまり、第2排出部3eは、濃縮血液B3を排出する。第1処理膜6は、第1受入部3aと第1排出部3dとを隔てるように配置される。つまり、第1受入部3aと第2排出部3eとの間を隔てる構成物は存在しないが、第1受入部3aと第1排出部3dとを隔てる構成物(第1処理膜6)が存在する。

【0022】
第1処理膜6は、血液成分BCより小さい第1細孔6aを有し、血液成分BCより小さい老廃物Aを通過させる。換言すると、第1処理膜6は、血液成分BC(例えば、アルブミン)を通過させない。このような処理膜として、例えば、HD(Hemodialysis)膜やHF(hemofiltration)膜が挙げられる。第1細孔6aの大きさは、例えば分画分子量66,000(アルブミン分子量)以下の大きさとすることができる。分画分子量とは使用する膜が対象分子の通過を阻止できる分子量の目安である。また、アルブミンは人工透析での漏洩を抑えたい有用タンパク質であり、分画分子量66,000は細孔径の最大値である。また、濾過部3の構成は、いわゆるダイアライザーの構成を採用してもよい。この場合には、濾過部3は、第1処理膜6としてHD膜やHF膜により形成される複数の中空糸膜を有する。中空糸膜の特性である膜透過率は、圧力と分離率により決定できる。

【0023】
再吸収部4は、希薄血液B2及び濃縮血液B3をそれぞれ受け入れて、希薄血液B2が含む水分を濃縮血液B3に吸収させる。この吸収により、希薄血液B2を人口尿Uへ変化させると共に、濃縮血液B3を浄化血液B4に変化させる。つまり、再吸収部4は、水分が減少した希薄血液B2を人口尿Uとして排出すると共に、水分を吸収した濃縮血液B3を浄化血液B4として排出する。この人口尿Uは、濃縮された老廃物Aと電解質Eと水分とを含む。

【0024】
再吸収部4は、希薄血液B2を保持する第1保持部7と、濃縮血液B3を保持する第2保持部8と、第2処理膜9と、有する。第1保持部7は、第2受入部7aと、第3排出部7bとを有し、第2受入部7aから希薄血液B2を受け入れて、第3排出部7bから人口尿Uを排出する。第2保持部8は、第3受入部8aと第4排出部8bとを有し、第3受入部8aから濃縮血液B3を受け入れて、第4排出部8bから浄化血液B4を排出する。第2処理膜9は、第1保持部7と第2保持部8とを隔てるように配置される。第2処理膜9は、いわゆる逆浸透膜(RO(Reverse Osmosis)膜)である。第2処理膜9は、老廃物Aよりも小さい第2細孔9aを有する。例えば、第2処理膜9は、水は透過するが、尿素といった水以外の物質は透過しない。従って、第2処理膜9の第2細孔9aは、第1処理膜6の第1細孔6aよりも小さい。第2細孔9aの大きさは、例えば分画分子量が20~100程度とすることができる。

【0025】
ここで、濾過部3における濾過処理にあっては、老廃物Aと共に電解質Eも水分と共に希薄血液B2側へ移動する。つまり、濃縮血液B3の電解質Eの量は、患者100から取り出された直後の被処理血液B1の電解質Eの量と異なる。具体的には、濃縮血液B3の電解質Eの量は、被処理血液B1の電解質Eの量より少ない。そこで、電解質提供部5は、濃縮血液B3に電解質Eを提供することにより補正を行う。具体的には、電解質提供部5は、例えば、ナトリウムイオンNa、クロールイオンCl、重炭酸イオンHCoといった電解質Eを保持する。そして、電解質提供部5は、濃縮血液B3における電解質Eの量に応じて、濃縮血液B3に電解質Eを提供する。電解質提供部5は、例えば、第2保持部8の第4受入部8cを介して、第2保持部8に接続される。

【0026】
以下、本実施形態に係る血液浄化装置1の動作について説明する。血液浄化装置1は、濾過処理と再吸収処理とを利用して、被処理血液B1を浄化する。

【0027】
患者100から取り出された被処理血液B1は、まず、濾過処理に付される。濾過処理では、老廃物Aを水分と共に被処理血液B1から取り出す。具体的には、第1処理膜6は、血液成分BCより小さい第1細孔6aを有する。従って、水分と老廃物Aとは第1細孔6aを通過する。一方、血液成分BCは、第1細孔6aを通過できない。

【0028】
濾過処理によれば、血液成分BCを含まない血液(つまり希薄血液)と、血液成分BCを含む血液(つまり濃縮血液)とが得られる。本実施形態でいう「希薄」及び「濃縮」は、水分量に対する血液成分BCの量に基づく。つまり、「希薄血液」は、単位量あたりの血液成分BCの量が被処理血液B1よりよりも少ない点で、血液成分BCが「希薄」である。一方、「濃縮血液」は、単位量あたりの血液成分BCの量が被処理血液よりも多い点で、血液成分BCが「濃縮」されている。なお、老廃物Aが水と共に移動するので、希薄血液B2における老廃物Aの濃度は、濃縮血液B3における老廃物Aの濃度と同じである。希薄血液B2における老廃物Aの量は、移動した水の量で決まる。ただし、血液成分BCの量は、希薄血液B2よりも濃縮血液B3が多い。

【0029】
上記の濾過処理によって、被処理血液B1から老廃物Aが取り除かれる。しかし、濃縮血液B3は、単位量あたりの被処理血液B1に比べて血液成分BCの量が多い。従って、患者100に返血するためには、血液成分BCの量を所定の範囲に調整する必要がある。つまり、濃縮血液B3に水分を提供する。そして、濃縮血液B3に提供される水分は、希薄血液B2から得る。つまり、老廃物Aと共に取り出された水分を、再び濃縮血液B3に戻す。従って、この処理を、「再吸収」と呼ぶ。

【0030】
この水分の再吸収は、逆浸透現象を利用する。希薄血液B2と濃縮血液B3とを第2処理膜9によって隔てると、その浸透圧差は、例えば7×10Pa(約7気圧)程度にも達する。つまり、濃縮血液B3は、希薄血液B2から水分を引き込む力を発生させ得る。従って、希薄血液B2の浸透圧と濃縮血液B3との浸透圧との差異に起因して、希薄血液B2から濃縮血液B3へ水の移動が生じる。この水の移動は、例えば、第2細孔9aの細孔径(分画分子量)と分離率(濾過比)により変化する。また、浸透圧は、濃縮血液B3における血液成分BCのモル濃度に比例する。希薄血液B2の浸透圧と濃縮血液B3の浸透圧とが略等価(浸透圧平衡状態)になるまで、希薄血液B2から濃縮血液B3へ水の移動が継続する。なお、上記約7気圧とは、第1処理膜で電解質を全く透過させなかった場合の最大値である。また、第1処理膜で水分が半分になり、当該水分に含まれていた電解質Eの補正を行うと場合は3.5×10Pa(約3.5気圧)になる。3.5気圧でも7気圧でも十分に再吸収をすることができる。

【0031】
血液浄化装置1は、従来の血液浄化装置(すなわち人工透析装置)が利用する、「拡散現象」を利用することなく、被処理血液B1から老廃物Aを取り除く。この浄化処理は、互いに異なる特性を有する2種類の人工膜(第1処理膜6及び第2処理膜9)により実現される。従って、血液浄化装置1は、「拡散現象」を利用する装置では、必須の要素である「透析液」を備える必要が無い。このため、血液浄化装置1は、従来の血液浄化装置と比較すると、大幅な小型化及び軽量化が可能であり、患者100が持ち運べる程度の大きさにまでコンパクト化することができる。そうすると、患者100に課される時間や場所といった拘束が著しく低減されるので、患者100のクオリティーオブライフ(QOL)を向上させることができる。

【0032】
換言すると、血液浄化装置1は、濾過部3において希薄血液B2を生成する。この希薄血液B2には、除去されるべき成分が含まれる。そうすると、濃縮血液B3における老廃物Aの量は、被処理血液B1における老廃物Aの量に比べて少なくなる。次に、血液浄化装置1は、再吸収部4において、希薄血液B2中の水分を濃縮血液B3に吸収させる。この吸収により、濃縮血液B3における血液成分BCの量が被処理血液B1と等価である浄化血液B4が得られる。この浄化血液B4は、老廃物Aの量が被処理血液B1よりも少ないので、被処理血液B1が浄化されたことになる。上述したように、血液浄化装置1は、拡散現象を利用することなく被処理血液B1から老廃物Aが取り除かれた浄化血液B4を得ることができる。そうすると、血液浄化装置1は、透析液を必要としないので、患者100が携帯可能な大きさまで小型化及び軽量化が可能である。従って、定期的な通院や長時間の拘束を要しなくなるので、患者100の負担を軽減することができる。ひいては、血液浄化装置1は患者100のクオリティーオブライフ(QOL)を向上させることができる。

【0033】
血液浄化装置1は、第1受入部3aから濾過部3へ被処理血液B1を受け入れる。受け入れられた被処理血液B1は、第1処理膜6を通過して希薄血液B2となる。この第1処理膜6は、血液成分BCより小さい第1細孔6aを有する。従って、希薄血液B2は、血液成分BCより小さい老廃物Aと水分とを含む。従って、濾過部3によって、被処理血液B1から濃縮血液B3が得られる。次に、希薄血液B2と濃縮血液B3は、再吸収部4に送られる。再吸収部4は、第1保持部7における希薄血液B2と第2保持部8における希薄血液B2とを第2処理膜9によって隔てる。第2処理膜9は、水は透過するが、尿素といった水以外の物質は透過しない第2細孔9aを有する。そうすると、希薄血液B2と濃縮血液B3との浸透圧差に起因して、第1保持部7における希薄血液B2から第2保持部8における濃縮血液B3への水分の移動が浸透圧差がなくなるまで継続する。この水分の移動により、濃縮血液B3から浄化血液B4が得ることができる。

【0034】
また、血液浄化装置1は、患者100が持ち運び可能な程度にコンパクトであるので、継続的な血液浄化処理を行うことが可能になる。このため、血液浄化装置1は、一回の血液浄化サイクルで全ての老廃物Aを取り除くという能力は要求されない。従って、また、継続的な適用によれば、単位時間あたりに患者100から被処理血液B1を取り出す血液量を少なくすることが可能になる。そうすると、患者100に与える身体的な負担を軽減できる。

【0035】
例えば、従来の人工透析装置を利用する場合には、所望の血流量を得るためにシャントを用いる。しかし、本実施形態に係る血液浄化装置1は、従来の人工透析装置に比べて単位時間当たりの血流量が少なくてよいので、シャントを用いる必要が無い。従って、患者100の身体的負担を大きく軽減できる。

【0036】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。

【0037】
例えば、血液浄化装置1は、被処理血液B1に対して血液抗凝固剤を提供する血液抗凝固剤提供部を備えていてもよい。また、血液浄化装置1は、濾過部3と再吸収部4との間に配置されたポンプやバルブを有してもよい。さらに、血液浄化装置1は、再吸収部4よりも下流側に配置されたポンプやバルブを有してもよい。

【0038】
例えば、第1処理膜の例として、HD膜又はHF膜を例示した。しかし、第1処理膜はこれらの人工膜に限定されない。第1処理膜は、老廃物Aを透過し且つ血液成分BCを透過させない特性を有するものであれば、種々の膜を用いてよい。また、第2処理膜の例として、RO膜を例示した。しかし、第2処理膜はこの人工膜に限定されない。第2処理膜は、水分を透過し且つ老廃物A等を透過させない特性を有するものであれば、種々の膜を用いてよい。
【符号の説明】
【0039】
1…血液浄化装置、1a…血液導入部、1b…血液排出部、1c…人口尿排出部、2…ポンプ、3…濾過部、3a…第1受入部、3b…第1領域、3c…第2領域、3d…第1排出部、3e…第2排出部、4…再吸収部、5…電解質提供部、6…第1処理膜、6a…第1細孔、7…第1保持部、7a…第2受入部、7b…第3排出部、8…第2保持部、8a…第3受入部、8b…第4排出部、8c…第4受入部、9…第2処理膜、9a…第2細孔、100…患者、A…老廃物(除去対象成分)、B1…被処理血液(被処理液)、B2…希薄血液(第1処理液)、B3…濃縮血液(第2処理液)、B4…浄化血液、BC…血液成分、E…電解質、U…人口尿(排液)。
図面
【図1】
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