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明細書 :有機薄膜光集積回路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年11月22日(2018.11.22)
発明の名称または考案の名称 有機薄膜光集積回路
国際特許分類 G02B   6/12        (2006.01)
H01L  31/0232      (2014.01)
G02F   1/065       (2006.01)
FI G02B 6/12 301
G02B 6/12 371
H01L 31/02 D
G02F 1/065
国際予備審査の請求
全頁数 23
出願番号 特願2017-564161 (P2017-564161)
国際出願番号 PCT/JP2017/001076
国際公開番号 WO2017/130744
国際出願日 平成29年1月13日(2017.1.13)
国際公開日 平成29年8月3日(2017.8.3)
優先権出願番号 2016012136
優先日 平成28年1月26日(2016.1.26)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】雨宮 智宏
【氏名】金澤 徹
【氏名】荒井 滋久
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001807、【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2H147
2K102
5F849
Fターム 2H147AA02
2H147AB02
2H147AB05
2H147AB32
2H147AC05
2H147BC05
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2H147BG17
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2H147EA16C
2H147EA16D
2H147EA19A
2H147EA19C
2H147EA20C
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2H147FC06
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2H147FE07
2K102AA21
2K102AA28
2K102AA40
2K102BA01
2K102BA08
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BC10
2K102CA00
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2K102DB04
2K102DD01
2K102DD10
2K102EA02
2K102EA05
2K102EB08
2K102EB22
5F849AB11
5F849BA01
5F849BA03
5F849FA05
5F849LA01
5F849LA02
5F849XA01
5F849XA22
要約 フレキシブルで可視光にも対応可能な有機薄膜光集積回路を提供する。有機薄膜光集積回路(1)は、有機薄膜フィルム(2)上に、モノリシック集積技術により形成された光導波路(10)と、受光器(20)と、変調器(30)と、光スイッチ(40)と、金属グレーティングカプラ(50)と、を備える。受光器(20)は、ポリマーからなる下部クラッド層(21)と、下部クラッド層(21)上の機能性領域(60)に2次元配置された2次元系材料(22)と、2次元系材料(22)の2次元平面上に積層されたポリマーからなるコア層(23)と、コア層(23)を埋め込んで積層されたポリマーからなる上部クラッド層(24)と、コア層(23)を挟む第1電極(25)および第2電極(26)と、を有する。
特許請求の範囲 【請求項1】
可撓性を有する有機薄膜フィルムと、
前記有機薄膜フィルムの所定領域に2次元配置された2次元系材料と、
前記2次元系材料の2次元平面上に形成された有機材料からなる1または複数の光機能素子と、
を備えることを特徴とする有機薄膜光集積回路。
【請求項2】
前記有機薄膜フィルム上に、複数の前記光機能素子を備える場合、
各前記光機能素子は、同一の有機材料を用いて共通するプロセスで作製するモノリシック光集積技術により作製された
ことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜光集積回路。
【請求項3】
前記光機能素子は、コア層と、前記コア層を埋め込むクラッド層と、前記コア層を挟む一対の電極と、を有する受光器であり、
前記コア層の直下に前記2次元系材料を備え、
前記2次元系材料は、フォトキャリアを生成し、生成したフォトキャリアが前記一対の電極から引き抜かれる構造である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機薄膜光集積回路。
【請求項4】
前記光機能素子は、コア層と、前記コア層を埋め込むクラッド層と、前記コア層を挟む一対の電極と、コア層の下部に配置された下部電極と、を有する変調器であり、
前記コア層の直下に前記2次元系材料を備え、
前記2次元系材料の下方に前記下部電極を備え、
前記下部電極に電圧印加して、前記2次元系材料の化学ポテンシャルの位置を制御する構造である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機薄膜光集積回路。
【請求項5】
前記変調器は、前記2次元系材料がグラフェンである場合、化学ポテンシャルの位置を制御することによって、バンド間吸収に起因する誘電体的特性からバンド内吸収に起因する金属的特性へと変化させて強度変調を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の有機薄膜光集積回路。
【請求項6】
前記光機能素子は、第1コア層と、第2コア層と、前記第1コア層および前記第2コア層を埋め込むクラッド層と、前記第1コア層および前記第2コア層をそれぞれ覆うヒータとを備え、前記ヒータの一方を通電加熱して一方のコア層とクラッド層との屈折率を変えてスイッチングを行う光スイッチである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機薄膜光集積回路。
【請求項7】
前記光機能素子は、コア層と、前記コア層を埋め込むクラッド層と、を備える光導波路を含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機薄膜光集積回路。
【請求項8】
前記2次元系材料は、グラフェン、フォスフォレン、または、MoS、WS、WSeを含む遷移金属ダイカルコゲナイドである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機薄膜光集積回路。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜光集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークに用いられている各種光素子には、多重化素子、変調器、レーザ・変調器・光スイッチ・受光器等を集積した光集積回路がある。光集積回路とは、レーザ・変調器・合分波器などの各種モジュールを光ファイバを介さずに1チップ上に集積したものである。光集積デバイスの利点は、光通信における様々な機能を1チップの小型モジュールで実現することが可能になる。また、消費電力・製造コストともに減少させることができる。
【0003】
上記多重化素子の材料としては、SiOがある。また、上記変調器の材料としては、大きなEO(Electro-optic、電気光学)効果を示すニオブ酸リチウム(LiNbO)、ランタン添加のチタン酸ジルコン酸鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O)などの無機光学結晶が広く用いられている。上記光集積回路の材料としては、インジウムリン(InP)またはSiがある。
【0004】
例えば、InP系光集積回路は、光源も含めた機能集積技術で形成され、結晶成長を活かした多機能化が実現可能である(例えば特許文献1)。InP系光集積回路は、伝搬特性が良好な特徴がある。また、Si系光集積回路は、Siの閉じ込めを活かした高密度技術が実現可能であり、CMOS(Complementary MOS)プロセスとの互換性がある。ただし、光源のみモノリシック集積が不可である。
InP系またはSi系のいずれの光集積回路にあってもフレキシブル化は、実現されていない。
なお、有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタ(OTFT:Organic Thin Film Transistor)では、フレキシブル化、軽量化などが図られている(例えば特許文献2)。
また、非特許文献1には、有機トランジスタを用いたフレキシブル電子デバイスが発表されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2015-179183号公報
【特許文献2】特開2015-176919号公報
【0006】

【非特許文献1】“フレキシブル有機トランジスタの高性能化”、[online]、July01,2014、[平成27年12月1日検索]、インターネット〈URL:http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/aed/japanese/result.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の光集積回路は、InPやSiベースのものであるので、光通信には問題ないものの、透過波長が赤外域に限定されること、フレキシブル性に欠けることから他の応用が困難という課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、フレキシブルで可視光にも対応可能な有機薄膜光集積回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するため、本発明による請求項1に係る有機薄膜光集積回路は、可撓性を有する有機薄膜フィルムと、前記有機薄膜フィルムの所定領域に2次元配置された2次元系材料と、前記2次元系材料の2次元平面上に形成された有機材料からなる1または複数の光機能素子と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、有機薄膜フィルム上に、光機能を一括集積することができ、フレキシブルで可視光にも対応可能な有機薄膜光集積回路を実現することができる。
【0011】
請求項2に係る有機薄膜光集積回路は、前記有機薄膜フィルム上に、複数の前記光機能素子を備える場合、各前記光機能素子は、同一の有機材料を用いて共通するプロセスで作製するモノリシック光集積技術により作製されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、モノリシック光集積技術により有機薄膜フィルム上に光機能素子を一括集積することができる。
【0013】
請求項3に係る有機薄膜光集積回路は、前記光機能素子は、コア層と、前記コア層を埋め込むクラッド層と、前記コア層を挟む一対の電極と、を有する受光器であり、前記コア層の直下に前記2次元系材料を備え、前記2次元系材料は、フォトキャリアを生成し、生成したフォトキャリアが前記一対の電極から引き抜かれる構造であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、有機薄膜フィルム上に受光器を含む光機能素子を集積することができる。
【0015】
請求項4に係る有機薄膜光集積回路は、前記光機能素子は、コア層と、前記コア層を埋め込むクラッド層と、前記コア層を挟む一対の電極と、コア層の下部に配置された下部電極と、を有する変調器であり、前記コア層の直下に前記2次元系材料を備え、前記2次元系材料の下方に前記下部電極を備え、前記下部電極に電圧印加して、前記2次元系材料の化学ポテンシャルの位置を制御する構造であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、有機薄膜フィルム上に変調器を含む光機能素子を集積することができる。
【0017】
請求項5に係る有機薄膜光集積回路は、前記変調器は、前記2次元系材料がグラフェンである場合、化学ポテンシャルの位置を制御することによって、バンド間吸収に起因する誘電体的特性からバンド内吸収に起因する金属的特性へと変化させて強度変調を行うことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、グラフェンを用いて化学ポテンシャルの位置を制御することができる。
【0019】
請求項6に係る有機薄膜光集積回路は、前記光機能素子は、第1コア層と、第2コア層と、前記第1コア層および前記第2コア層を埋め込むクラッド層と、前記第1コア層および前記第2コア層をそれぞれ覆うヒータとを備え、前記ヒータの一方を通電加熱して一方のコア層とクラッド層との屈折率を変えてスイッチングを行う光スイッチであることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、有機薄膜フィルム上に光スイッチを含む光機能素子を集積することができる。
【0021】
請求項7に係る有機薄膜光集積回路は、前記光機能素子は、コア層と、前記コア層を埋め込むクラッド層と、を備える光導波路を含むことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、有機薄膜フィルム上に、各光機能素子をつなぐ光伝送路となる光導波路を集積することができる。
【0023】
請求項8に係る有機薄膜光集積回路は、前記2次元系材料は、グラフェン、フォスフォレン、または、MoS、WS、WSeを含む遷移金属ダイカルコゲナイドであることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、2次元系材料として、様々な2次元機能性原子・分子薄膜を選択的に用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、フレキシブルで可視光にも対応可能な有機薄膜光集積回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る有機薄膜光集積回路の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る有機薄膜光集積回路の有機薄膜フィルムにモノリシック集積技術により形成された光導波路の構造を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る有機薄膜光集積回路の有機薄膜フィルムにモノリシック集積技術により形成された受光器の構造を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る有機薄膜光集積回路の有機薄膜フィルムにモノリシック集積技術により形成された変調器の構造を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る有機薄膜光集積回路の有機薄膜フィルムにモノリシック集積技術により形成された光スイッチの構造を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る有機薄膜光集積回路の有機薄膜フィルムにモノリシック集積技術により形成された金属グレーティングカプラの構造を示す図である。
【図7】本実施形態に係る有機薄膜光集積回路の作製方法を説明する図である。
【図8】本実施形態に係る有機薄膜光集積回路の作製方法を説明する図である。
【図9】本実施形態に係る有機薄膜光集積回路の作製方法を説明する図である。
【図10】図3の受光器のシミュレーションによる光強度を示す図である。
【図11】図4の変調器のシミュレーションによる光強度を示す図である。
【図12】図6の金属グレーティングカプラの解析結果を示す図である。
【図13】1.55μmのTEモード光を入出力カプラを通して有機薄膜光集積回路内の光導波路に伝送させた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機薄膜光集積回路の構成を示す図である。本実施形態の有機薄膜光集積回路は、従来のInP,Siに次ぐ新しいプラットフォームとして、有機薄膜フィルムを用いたものである。本実施形態は、有機薄膜フィルムにモノリシック集積技術により形成した例である。
図1に示すように、有機薄膜光集積回路(Organic Thin Film Photonic Integrated Circuits)1は、可撓性を有する有機薄膜フィルム(Organic Thin Film)2と、有機薄膜フィルム2上に、モノリシック集積技術により形成された光導波路(Waveguide)10と、受光器(Detector)20と、変調器(Modulator)30と、光スイッチ(Optical Switch)40と、金属グレーティングカプラ(Metal Grating coupler)50と、を備える。
有機薄膜光集積回路1は、厚さ数μmの有機薄膜フィルム2上に、光源以外の光機能素子(ここでは、光導波路10、受光器20、変調器30および光スイッチ40)全てを一括集積する。

【0028】
有機薄膜光集積回路1は、一枚の有機薄膜フィルム2上に、光導波路10、受光器20、変調器30、光スイッチ40などの光機能素子が組み合わせされてモノリシック集積技術により作製されている。有機薄膜光集積回路1におけるモノリシック集積技術とは、同一の有機材料から共通するプロセスで作製することである。換言すれば、最初のウエハから、マスク露光ですべて作製できるモノリシック集積技術である。ステッパ露光やコンタクト露光のマスクパターンを複数用意しておけばよい。

【0029】
有機薄膜フィルム2は、有機材料からなるフレキシブル薄膜である。有機薄膜フィルム2は、膜厚が例えば数μmであり、食品用ラップフィルムの約100分の一以下の厚さである。

【0030】
有機薄膜フィルム2のポリマー材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA、poly methyl methacrylate)、Cytop(登録商標 以下同様。)、Ormocer(登録商標 以下同様。)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド等が挙げられる。より具体的な有機材料としては、PMMA、Cytop、Ormocer、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリメタアクリレート、ポリ-L-リシン、スルホン化ポリスチレン、グリシジル変性ポリエステル、ポリエステル、スルホン酸変性ポリエステル、カルボン酸変性ポリエステル、カルボキシメチルセルロース、エポキシ樹脂、サッカロース、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する高分子化合物または共重合体、等を例示することができる。

【0031】
上記ポリマー材料は、透明であることが好ましい。グラフェン(graphene)(後記)は透明性を有しているので、上記ポリマー材料が透明であることによって、本実施形態の有機薄膜フィルム2は透明となる。その結果、汎用な用途に適用可能となる。

【0032】
[光導波路]
図2は、有機薄膜光集積回路1の有機薄膜フィルム2にモノリシック集積技術により形成された光導波路10の構造を示す断面図である。
図2に示すように、光導波路10は、有機材料としてポリマー(ポリマー膜)からなるクラッド層(屈折率n1:~1.34)11と、クラッド層21に埋め込まれたポリマーからなるコア層(屈折率n2:~1.49 ただしn2>n1 以下同様。)12と、を有する光伝送路である。なお、図2では、有機薄膜フィルム2の裏面に剥離用ポリイミド材料101(図7参照)が残されている例を示している。

【0033】
クラッド層11には、Cytop(屈折率n1:~1.34)からなる有機材料を用いる。
コア層12には、低損失ポリマー導波路やプラスチックファイバのために作られた有機材料であるPMMA(屈折率n2:~1.49)を用いる。
本実施形態では、有機薄膜フィルム2の有機材料として屈折率の異なる2つのポリマーを用いている。すなわち、有機薄膜フィルム2のポリマーとしてコア層12に屈折率(屈折率n2:~1.49)のPMMAとクラッド層11に屈折率(屈折率n1:~1.34)のCytopとを組み合わせている。ちなみに、Cytopは、シリコン基板全体を覆う保護層やスピンコート用のフッ素系高分子溶液としてスピンコートした保護膜として用いられていた。

【0034】
本実施形態では、光導波路10は、低損失ポリマー導波路やプラスチックファイバのために作られた有機材料であるPMMA(屈折率n2:~1.49)からなるクラッド層11とCytop(屈折率n1:~1.34)からなるコア層12とを組み合わせることで、有機薄膜光集積回路1における光伝送路を形成する。
光導波路10は、屈折率が高いコア層12を屈折率が低いクラッド層11が取り囲んだ埋め込み型構造であり、入射した光はコア層12とクラッド層11との界面で反射しながら光導波路10中を伝播する。
有機薄膜光集積回路1における伝送路は、Siベースの光導波路に比べ、屈折率差が小さいので、光導波路10の最小曲率半径は200μm位となる。

【0035】
[受光器]
図3は、有機薄膜光集積回路1の有機薄膜フィルム2にモノリシック集積技術により形成された受光器20の構造を示す断面図である。
図3に示すように、受光器20は、有機材料としてポリマー(ポリマー膜)からなる下部クラッド層(屈折率n1:~1.34)21と、下部クラッド層21上の機能性領域60(所定領域)に2次元配置された2次元系材料22と、2次元系材料22の2次元平面上に積層されたコア層(屈折率n2:~1.49)23と、コア層23を埋め込んで積層されたポリマーからなる上部クラッド層(屈折率n1:~1.34)24と、コア層23を挟む第1電極25および第2電極26(一対の電極)と、を有する。なお、図2では、有機薄膜フィルム2の裏面に剥離用ポリイミド材料101(図7参照)が残されている例を示している。

【0036】
下部クラッド層21および上部クラッド層24は、いずれもCytop(屈折率n1:~1.34)からなる有機材料である。下部クラッド層21と上部クラッド層24とは、Cytopにより一体に形成されている。
コア層23は、PMMAからなるポリマー材料である。

【0037】
2次元系材料22は、有機材料(ここではCytopおよびPMMA)に、所定の機能性を持たせるために配置される。受光器20の場合は、2次元系材料22は、フォトキャリアを生成する。2次元系材料22には、グラフェンを用いる。グラフェンは、後記する理由で有機薄膜光集積回路1の2次元系材料22に適している。

【0038】
第1電極25および第2電極26は、2次元系材料22で生成されたフォトキャリアを引き抜くための電極である。
第1電極25は、Ti金属、第2電極26は、Pd金属からなる。または、第1電極25と第2電極26は、いずれもAu金属またはAu合金からなる。第1電極25と第2電極26の金属材料を異ならせると、両電極間のフェルミレベルが異なるので低電圧駆動が可能になる。

【0039】
本実施形態では、有機薄膜フィルム2の有機材料として屈折率の異なる2つの有機材料を用いている。すなわち、有機材料としてコア層23に屈折率(屈折率n2:~1.49)のPMMAと下部クラッド層21および上部クラッド層22に屈折率(屈折率n1:~1.34)のCytopとを組み合わせている。

【0040】
2次元系材料22は、有機薄膜フィルム2にモノリシック集積技術により光機能素子を形成する場合、有機材料(ここではCytopおよびPMMA)に、所定の機能性(後記)を持たせるために配置される。2次元系材料22は、光機能素子を形成しようとする機能性領域60に2次元配置し、2次元系材料22を用いて、機能(受光器20ではフォトキャリア生成)を持たせる。
なお、本明細書では説明の便宜上、2次元系材料22と表記しているが、2次元機能性原子・分子薄膜、2次元結晶、2次元物質などと呼称してもよい。

【0041】
受光器に求められるのは、感度および高速性の2点であり、それらを決める要因は、素子を構成する材料の光吸収効率、光吸収により生成されたフォトキャリアの移動時間、光吸収層の容量などが挙げられる。
本実施形態では、受光器20の光吸収層として2次元系材料22であるグラフェン(詳細後記)を用いる。グラフェンは、その優れた電気伝導特性からトランジスタなどへの応用が期待されているが、受光器20の観点から見ても、高感度・低暗電流を実現できる材料である。
また、グラフェンは、他の2次元系材料にはない特徴として、可視光から赤外領域が透明であることが挙げられる。

【0042】
図3に示すように、受光器20は、コア層23の直下の機能性領域60にグラフェンからなる2次元系材料22が転写されており、2次元系材料22で生成したフォトキャリアが左右の電極(第1電極25と第2電極26)から横方向に引き抜かれる構造とする。

【0043】
<2次元系材料>
2次元系材料22について述べる。
有機薄膜フィルム2にモノリシック集積技術により光機能素子を形成する場合、有機材料だけを用いて、この有機材料に光機能性を持たせることは困難である。そこで本発明者らは、有機薄膜フィルム2の機能性領域60に2次元系材料22を2次元配置することで、有機薄膜フィルム2に機能性を持たせ、2次元系材料22の2次元平面上に光機能素子をモノリシック集積技術により作製することを見出した。

【0044】
2次元系材料22は、有機材料に機能性を持たせることができ、かつ、展性、曲げに強いことが求められる。さらに、有機薄膜光集積回路1(光デバイス)として用いるので、波長帯も考慮する。

【0045】
グラフェンは、有機薄膜光集積回路1の2次元系材料22に適している。
グラフェンは、炭素原子のsp結合によって形成されたハチの巣状の原子層1層のシート構造である。グラフェンは、高キャリア移動度、光波長無依存性(高い透明度)、高光非線形性など独自の利点を有する。グラフェンは、炭素原子のみで構成された六角形のセル構造のみならず、六角形のセルに対してある種の置換基/官能基が結合されていてもよいし、あるいは、酸化グラフェンのような前駆体もまた存在していてもよい。本実施形態では、グラフェンが有機薄膜フィルム2の機能性領域60に、長さ方向および幅方向に、2次元配置されている。さらに、グラフェンは、単層グラフェンのみでなく2層以上の複数層のグラフェンでもよい。

【0046】
グラフェンは、コーン型のバンド構造でバンドギャップがなく、高いキャリア移動度、高い透明度でどの波長帯でも機能する。本実施形態の有機薄膜光集積回路1の波長帯はどのようなものでもよいので、この波長帯の観点からもグラフェンが好ましい。

【0047】
2次元系材料22は、有機材料に機能性を持たせることができものであればよく、グラフェンには限定されない。
グラフェン以外の2次元系材料22としては、フォスフォレン(原子層黒リン)、遷移金属ダイカルコゲナイド(MoS、WS、WSeなど)が挙げられる。ただし、フォスフォレンや二硫化モリブデン(MoS)は、バンドギャップと高いキャリア移動度を持つ半導体の性質を有する。ここで、有機薄膜光集積回路1(光デバイス)は、半導体の性質は必要ではない。

【0048】
波長帯は、全域で使うのであればグラフェン、可視域の波長帯で使うのであれば、MoS(molybdenum sulfide)、WS(tungsten sulfide)を用いる。製作の容易性を考慮すると、実際にはグラフェン、MoS、WSとなる。
ちなみに、グラフェン、MoS、WSは、光デバイスとしての報告例は、高い移動度を利用することであった。グラフェンは、これらの中で最も高い移動度を持つもののバンドギャップがない(オフすることができない)ので、移動度はグラフェンよりも小さいがバンドギャップのあるMoS、WSを利用していた。このため光デバイスとしての報告例は、高い移動度に関してののみであり、波長帯に着目された報告例はなかった

【0049】
[変調器]
図4は、有機薄膜光集積回路1の有機薄膜フィルム2にモノリシック集積技術により形成された変調器30の構造を示す断面図である。
図4に示すように、変調器30は、Cytop(屈折率n1:~1.34)からなる下部クラッド層(屈折率n1:~1.34)21と、下部クラッド層21に埋め込まれたAu金属またはAu合金からなる下部電極31と、下部クラッド層21上の機能性領域60に配置されたグラフェンからなる2次元系材料22と、2次元系材料22上に積層されたPMMAからなるコア層(屈折率n2:~1.49)23と、コア層23を埋め込んで積層されたCytop(屈折率n1:~1.34)からなる上部クラッド層(屈折率n1:~1.34)24と、Ti/Au金属からなる第1電極25と、Ti/Au金属からなる第2電極26と、を有する。なお、図4では、有機薄膜フィルム2の裏面に剥離用ポリイミド材料101(図7参照)が残されている例を示している。

【0050】
2次元系材料22は、有機材料(CytopおよびPMMA)に、所定の機能性を持たせるために配置される。変調器30の場合は、2次元系材料22は、化学ポテンシャルの位置を制御する。

【0051】
下部電極31は、電圧印加されて2次元系材料22(グラフェン)の化学ポテンシャルの位置を制御する。

【0052】
変調器30についても、受光器20と同様に、2次元系材料22としてグラフェンを用いることで機能性を実現する。グラフェンは、化学ポテンシャルの位置を制御することによって、バンド間吸収に起因する誘電体的特性からバンド内吸収に起因する金属的特性へと変化させることが可能である。このような性質を利用した変調器は、既にSi系において実現されており、高速かつ高い消光比を有する(例えばACS Nano 6,3577,2012参照)。

【0053】
本実施形態では、有機薄膜光集積回路1において適当な変調特性を得ることができるよう、それらに表面プラズモン(Surface Plasmon)を併用する。変調器30は、Au金属の下部電極31を配置し、下部電極31に電圧を印加することでグラフェンの化学ポテンシャルを制御する。
Cytop(登録商標)は、耐圧性に優れた有機材料(1-3MV/cm)であり、光伝送路のクラッド層(例えば図2の光導波路10のクラッド層11)としての効果に加えて、有効な絶縁膜としての役割も担う。

【0054】
変調器30は、印加電圧が無い場合、グラフェンが金属的特性を有し、下部電極31へのプラズモン励振が強くなり、伝搬光の損失が激しくなる(理論解析では~2400/cm)。一方、電圧印加した場合、グラフェンにバンドギャップが生じ誘電体的特性を示し、下部電極31のプラズモン励振が抑制され損失が抑えられる(理論解析では~1100/cm)。これによって強度変調を行うことが可能となる。

【0055】
[光スイッチ]
図5は、有機薄膜光集積回路1の有機薄膜フィルム2にモノリシック集積技術により形成された光スイッチ40の構造を示す断面図である。
図5に示すように、光スイッチ40は、Cytop(屈折率n1:~1.34)からなるクラッド層(屈折率n1:~1.34)11と、クラッド層11に埋め込まれたPMMAからなる第1コア層(屈折率n2:~1.49)41と、第1コア層41と並列にクラッド層11に埋め込まれたPMMAからなる第2コア層(屈折率n2:~1.49)42と、第1コア層41の上部を覆うTi/Au金属からなる金属薄膜ヒータ43aとその第1電極パッド43と、第2コア層42の上部を覆うTi/Au金属からなる金属薄膜ヒータ44aとその第2電極パッド44と、を有する。なお、図5では、有機薄膜フィルム2の裏面に剥離用ポリイミド材料101(図7参照)が残されている例を示している。

【0056】
第1コア層41および第2コア層42は、PMMAからなるポリマー膜である。コア層41,42の他の材料として、Ormocer(登録商標)が挙げられる。
光スイッチ40のクラッド層11は、図2の光導波路10のクラッド層(屈折率n1:~1.34)11、および、図3および図4の下部クラッド層21および上部クラッド層24と同様に、モノリシック集積技術により形成される。

【0057】
光スイッチ40は、変調器30ほどの高速性は必要とされず、低損失でクロストークを抑えたスイッチング動作が必要である。本実施形態では、最も標準的である熱光学効果を用いたポリマ熱光学効果型PLC(Planar Lightwave Circuit:基板導波路)スイッチを用いる。マッハツェンダー干渉器のアーム上部に、金属薄膜ヒータ43a,44aや電極パッド43,44、その間の配線を形成する。金属薄膜ヒータ43a,44aの一方を通電し加熱することで、周囲の温度上昇に応じてポリマーの屈折率が低下する。これにより、マッハツェンダー干渉器の両アーム間の位相をコントロールすることでスイッチングを行う。
光スイッチ40は、金属薄膜ヒータ43a,44aに通電しない状態では光が半分ずつに分岐するスプリッタである。ここで、金属薄膜ヒータ43a,44aの一方に通電し加熱すると、その周囲のポリイミドは温度上昇に応じて屈折率が低下して光を導波しなくなり、光は他方の出力導波路に集中する。

【0058】
[金属グレーティングカプラ]
図6は、有機薄膜光集積回路1の有機薄膜フィルム2にモノリシック集積技術により形成された金属グレーティングカプラの構造を示す図である。なお、図6は、光導波路10(図2)、受光器(図3)、変調器(図4)および光スイッチ(図5)の断面図と異なり、横方向から見た側面図であるが、説明の便宜上、モノリシック集積技術により形成された同一材料には同じハッチングで表記している。
ポリマー導波路は、屈折率差が小さいために、有機薄膜フィルム2上の光導波路10の表層に溝を形成するだけでは、適切な結合を得ることが非常に困難である。
そこで、本発明者らは、入出力カプラに、金属グレーティング構造を使用することを見出した。

【0059】
図6に示すように、金属グレーティングカプラ50は、有機薄膜フィルム2上の光導波路10の表層に幅Wの金属51のスリットを周期的(2W)に形成する。金属グレーティングカプラ50は、有機薄膜フィルム2上の光導波路10に接続して光インタフェースの役割を果たしている。
金属グレーティングカプラ50は、金属51に他の機能素子にも使っているものと同一材料(Ti/Au)を用いるので、モノリシック集積の条件が崩れることはない。
有機薄膜光集積回路1における伝送路の入出力部については、金属グレーティングカプラ構造を採用することで、有機薄膜フィルム2の上下方向からの外部信号入出力が可能な構成とする。
このように、有機薄膜フィルム2内に各種光機能(受光器20、変調器30、光スイッチ30など)をモノリシックに一括集積し、回路内の最も基本的な構成要素である光伝送路と入出力カプラを集積するようにしている。

【0060】
次に、有機薄膜光集積回路1の作製方法について説明する。
図7ないし図9は、有機薄膜光集積回路1の作製方法を説明する図である。モノリシック集積技術による光機能素子として、受光器20(図3参照)の作製を例に採る。なお、図3には、本作製方法により作製される対応部材を括弧書きで表記している。

【0061】
<初期基板>
図7に示すように、剥離用ポリイミド材料101を支持基板100に塗布し、その上に、各種ポリマー102を塗布し、さらに各種ポリマー102上の全面にグラフェン103転写を行い初期基板とする。
支持基板100は、例えばInPやSi基板であるが、どのような基板でもよい。
剥離用ポリイミド材料101は、InPやSi基板から剥離し易い例えばECRIOS(登録商標)を用いる。
各種ポリマー102は、有機薄膜フィルム2を構成し、例えばCytopを用いる。Cytopからなる有機材料は、有機薄膜光集積回路1の光機能素子(ここでは、受光器20)(図1参照)のクラッド層21を形成する。

【0062】
グラフェン103は、2次元系材料22(図3および図4参照)として用いる。上述したように、グラフェン103は、単層グラフェンのみでなく2層以上の複数層のグラフェンでもよい。また、グラフェン103は、転写(グラフェン転写)により有機薄膜フィルム2(図1参照)(ここではポリマー102表面)に転写する。

【0063】
なお、グラフェンを製造する方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition、化学蒸着)法、グラファイトからの化学的剥離法、グラファイトからの機械的剥離法等が用いられている。CVD法は、所定の条件下で、銅等の基板上にメタン等のガスを接触させることによって、銅等の基板上に主に単層グラフェンを形成する手法である。CVD法を用いて形成された単層グラフェンは、有機薄膜フィルム2に転写される場合、接着している銅等とともに転写され、転写後に銅等をエッチングで除去することによって、グラフェンを積層した有機薄膜フィルム2が得られる。

【0064】
<グラフェンパターニング>
図8(a)の<第1工程>に示すように、ポリマー102に転写されたグラフェン103をパターニングして必要な機能性領域60におけるグラフェン103を残す。機能性領域60とは、有機薄膜フィルム2上に受光器20および変調器30(図3および図4参照)をモノリシックで形成する場合、その光機能が形成される活性領域である。より詳細には、図示しない別のポリマーを塗付し、図示しないマスクを用いて必要箇所に窓開けをし、アッシングを行うと、必要部分以外のグラフェンは分解・除去される。

【0065】
<EB描画・蒸着lift-offによる電極形成>
図8(b)の<第2工程>に示すように、パターニングされたグラフェン103が形成されたポリマー102の表面に対して、EB(electron beam)描画・蒸着lift-offにより電極104を形成する。

【0066】
<コア層塗布・パターニング露光>
図8(c)の<第3工程>に示すように、電極104が形成された基板上に、スピンコート法でコア層105となるPMMAを作製する。そしてフォトリソグラフィ法を用いてレジストによるパターニングを行い、反応性イオンエッチング法(RIE、Reactive Ion Etching)を用いてコア層105のみを残してドライエッチングを行い、不要なPMMAを除去する。

【0067】
<クラッド塗布>
図9(a)の<第4工程>に示すように、この基板上に、スピンコート法でクラッド層106となるCytopを塗布する。

【0068】
<窓開け・電極形成>
図9(b)の<第5工程>に示すように、Cytopが形成された有機薄膜フィルム2上(クラッド層106表面)に、フォトリソグラフィ法でパターニングを行い、電極104上部に窓を開け、この窓部に再度フォトリソグラフィ法を用いて電極107(例えばAu金属)を成長させる。

【0069】
<基板劈開による剥離>
図9(c)の<第6工程>に示すように、電極107が形成された基板を劈開して、有機薄膜光集積回路1が形成された有機薄膜フィルム2(図1参照)を剥離用ポリイミド材料101部分で剥離する。劈開面のあるInP,Siからなる支持基板100(図7参照)を用いると、メス等を使って剥離しやすい。

【0070】
このように、有機薄膜光集積回路1の作製工程では、剥離用ポリイミド材料を支持基板に塗布し、その上に、各種ポリマー塗布・グラフェン転写などを行い初期基板とする(図7参照)。その後、その基板にポリマー塗布・リソグラフィ・エッチング・電極パターニングなどの一連のプロセスを経て各種素子を一括作製し、最後に支持基板からの剥離プロセスを行うことで薄膜化を行う(図8および図9参照)。

【0071】
なお、図7ないし図9では、受光器20(図3参照)の作製例に採っているが、他の光機能素子についてもモノリシック集積技術により同様の方法で作製できる。
例えば、光導波路10の場合は、グラフェン103のパターニングや電極104の作製工程がない(該当マスクパターンを用いる)。また、変調器30の場合は、下部クラッド層21(図4参照)の作製途中の工程で、下部電極31(図4参照)を作製し、下部クラッド層21に埋め込まれた下部電極31を形成する。すなわち、金属薄膜をスパッタ装置で成膜し、フォトリソ工程・反応性イオンエッチング工程によって下部電極31をパターン形成する。その後は、図8(a)以下の受光器20の作製方法と同様である。
また、光スイッチ40の場合、クラッド層11(図5参照)を形成し、第1コア層41および第2コア層42(図5参照)を埋め込んだクラッド層11(図5参照)を形成し、第1コア層41および第2コア層42の表面に、それぞれ金属薄膜ヒータ43a,44aや電極パッド43,44、その間の配線を形成する。例えば、金属薄膜をスパッタ装置で成膜し、コア層41,42と同様にフォトリソ工程・RIE工程によってパターン形成する。

【0072】
金属グレーティングカプラ50(図6参照)の作製方法について説明する。
まず、例えばInPからなる支持基板100(図7参照)上に、ECRIOSからなる剥離用ポリイミド101、下部クラッド用のCytopを塗布・硬化する。その上に、金属グレーティングを、電子ビーム描画およびリフトオフを用いて作製する。その後、PMMAを塗布し、電子ビーム描画により導波路構造(幅2.0μm)を形成した後、上部クラッド用のCytopを塗布・硬化することで金属グレーティングカプラ50を作製する。支持基板100からのフィルム剥離については、InPを裏面から劈開することで行う。

【0073】
このように、本実施形態の有機薄膜光集積回路1は、モノリシック集積技術を用いて、有機薄膜フィルム2上に、光導波路10、受光器20、変調器30、光スイッチ40などの光源以外の1または複数の光機能素子を作り込んでいる。また、全ての素子は、初期基板(図7参照)から一括プロセスでモノリシック集積することが可能である。

【0074】
図10は、図3の受光器20のシミュレーションによるTMモードの光強度を示す図である。図10の左上部の太実線の長さを1μmで表した場合に、コア層23の幅および高さは略図示の寸法である。下部クラッド層21および上部クラッド層24は、Cytop(屈折率n1:~1.34)、コア層23は、PMMA、2次元系材料22は、グラフェンである。第1電極25は、Ti金属、第2電極26は、Pd金属である。光はTMモード940/cmとした。
図10に示すように、受光器20は、グラフェンで生成したフォトキャリアを左右の第1電極25と第2電極26から横方向に引き抜く。このとき、低屈折率ポリマー伝送路の特性も相まって、比較的効率よくグラフェンへのフォトキャリア生成が可能であることを理論解析からシミュレーションしている。図10に示すように、光がコア層23に集中していることが解析できた。

【0075】
図11は、図4の変調器30のシミュレーションによるTMモードの光強度を示す図である。図11の左上部の太実線の長さを1μmで表した場合に、コア層23の幅および高さは略図示の寸法である。下部クラッド層21および上部クラッド層24は、Cytop(屈折率n1:~1.34)、コア層23は、PMMA、2次元系材料22は、グラフェンである。第1電極25および第2電極26は、Ti金属である。光はTMモードでバイアス2400/cmを印加した。

【0076】
変調器30は、印加電圧の無い場合、グラフェンが金属的特性を有し、下部電極31へのプラズモン励振が強くなり、伝搬光の損失が激しくなる。図11に示すように、理論解析では~2400/cmである。変調器30は、電圧印加した場合、グラフェンにバンドギャップが生じ誘電体的特性を示し、下部電極31のプラズモン励振が抑制され損失が抑えられる。図11に示すように、理論解析では~1100/cmである。これによって強度変調を行うことが可能となる。

【0077】
次に、回路内の最も基本的な構成要素である光伝送路と入出力カプラを集積した実験について述べる。
前記図6は、有機薄膜フィルム2上に光伝送路と入出力カプラを一括集積した素子の構造を示している。図12は、図6の金属グレーティングカプラ50の解析結果を示す図である。
図12に示すように、光伝送路はPMMAをコア層、Cytopをクラッド層とする光導波路10を採用し、入出力カプラには金属グレーティング構造を有するテーパ55(図13参照)を用いた。FDTD法による解析結果から、Λ=1500nm,duty比50%の金属グレーティング(Ti 10nm/Au 30nm)において、最大の結合効率となることを確認した。
図13は、1.55μmのTEモード光を入出力カプラ(金属グレーティングカプラ50)を通して有機薄膜光集積回路1内の光導波路10に伝送させた結果を示す図である。これにより、光導波路10の伝搬損失は0.14dB/mm、金属グレーティングカプラ50の結合損は約27dB/couplerと見積もられた。

【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る有機薄膜光集積回路1は、有機薄膜フィルム2上に、モノリシック集積技術により形成された光導波路10と、受光器20と、変調器30と、光スイッチ40と、金属グレーティングカプラ50と、を備える。受光器20は、ポリマー(例えばPMMA)からなる下部クラッド層21と、下部クラッド層21上の機能性領域60に2次元配置された2次元系材料22と、2次元系材料22の2次元平面上に積層されたポリマー(例えばCytop)からなるコア層23と、コア層23を埋め込んで積層されたポリマー(例えばPMMA)からなる上部クラッド層24と、コア層23を挟む第1電極25および第2電極26と、を有する。変調器30は、下部クラッド層21と、下部クラッド層21に埋め込まれた下部電極31と、下部クラッド層21上の機能性領域60に形成されたグラフェンからなる2次元系材料22と、2次元系材料22上に積層されたコア層23と、コア層23を埋め込んで積層された上部クラッド層24と、第1電極25および第2電極26と、を有する。

【0079】
従来、InPやSiの基板上の必要な箇所にグラフェンをおいてトランジスタ特性を高めるものはある。しかしながら、このような光集積回路は、グラフェンの高いキャリア移動度を利用するもので、本実施形態のように有機材料に機能性を持たせるものではない。また、グラフェンの光波長無依存性(高い透明度)に着目して有機薄膜光集積回路に適用した例はない。

【0080】
本実施形態に係る有機薄膜光集積回路1は、有機薄膜フィルム2の機能性領域60に2次元系材料22を2次元配置することで、有機薄膜フィルム2に機能性を持たせ、2次元系材料22の2次元平面上に光機能素子をモノリシック集積技術により作製する。すなわち、有機薄膜光集積回路1は、有機薄膜フィルム2の中に2次元系材料22を挟んで使うことで、モノリシック集積技術により作製される光機能素子に機能性を持たせる。モノリシック光集積は、同じ材料系を使って、同じプロセスで行う、光集積回路特有の構成である。本実施形態では、モノリシックに形成されているグラフェンを有する基板を用意し、必要な機能部のグラフェンを残すことで実現する。

【0081】
この構成により、フレキシブルな有機薄膜フィルム2に光機能を一括集積する有機薄膜光集積回路1を実現することができる。有機薄膜光集積回路1は、厚さ数μmの有機薄膜フィルム2上に光源以外の光機能全てを一括集積することができ、フレキシブルで可視光にも対応可能な有機薄膜光集積回路1を実現することができる。

【0082】
また、有機薄膜光集積回路1は、非常に薄い有機薄膜フィルム上に構成できるので、コストはInP,Siに比べて極めて安いという利点がある。

【0083】
また、有機薄膜光集積回路1を含む光デバイスは、応力による影響はほぼなく、それよりも曲げたときの曲げ損による屈折率(クラッド層とコア層の屈折率)の変化が影響する。例えば、光導波路の曲率半径が100μm以内の曲げであれば、ほぼロスなく(99%以上)伝送されることが確認できた。

【0084】
本実施形態では、クラッド層の有機材料として、Cytopを用いている。一般に、有機材料は、水分に対して弱く、吸湿すると特性が大幅に劣化することが知られている。Cytopは、保護膜として使用されるように、吸湿などの環境耐性があり、かつ、電圧耐圧もあるので好ましい。特に、モノリシック集積技術により光機能素子として変調器を作り込む場合、下部電極に対する有機材料の電圧耐圧が課題となる。モノリシック集積技術により、同じプロセスで作製する観点から電圧耐圧のあるCytopが好ましい。なお、クラッド層にCytopを用いる場合、コア層はロスが小さく、かつ屈折率の高いポリマーとして、PMMAを選択している。

【0085】
有機薄膜光集積回路1は、スーパーフレキシブル特性を利用した生体センサや人体に貼り付けるなどセンシングや医療応用などにも適用可能である。また、ウェアラブルで高速な光信号処理デバイスも可能となる。さらに、フレキシブル特性を活かした光通信以外の様々な応用、例えば、健康管理と監視のためのマトリクス型触覚センサ、薄膜ヒータ、温度・赤外線センサ等が考えられる。

【0086】
本発明は上記の実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
また、上記した実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記実施の形態では、有機薄膜光集積回路という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、名称は有機薄膜光集積回路装置、フレキシブル光集積回路等であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 有機薄膜光集積回路
2 有機薄膜フィルム
10 光導波路(光機能素子)
11 クラッド層(有機材料)
12,23,105 コア層(有機材料)
20 受光器(光機能素子)
21 下部クラッド層(有機材料)
22 2次元系材料
24 上部クラッド層(有機材料)
25 第1電極(一対の電極)
26 第2電極(一対の電極)
30 変調器(光機能素子)
31 下部電極
40 光スイッチ(光機能素子)
41 第1コア層(有機材料)
42 第2コア層(有機材料)
43 第1電極パッド
44 第2電極パッド
43a,44a 金属薄膜ヒータ
50 金属グレーティングカプラ(入出力カプラ)
60 機能性領域
100 支持基板
101 剥離用ポリイミド材料
102 各種ポリマー(有機材料)
103 グラフェン(2次元系材料)
104,107 電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12