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明細書 :脱毛および白毛化を抑制もしくは改善するための組成物ならびにその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6355222号 (P6355222)
登録日 平成30年6月22日(2018.6.22)
発行日 平成30年7月11日(2018.7.11)
発明の名称または考案の名称 脱毛および白毛化を抑制もしくは改善するための組成物ならびにその使用
国際特許分類 A61K  31/166       (2006.01)
A61K  31/122       (2006.01)
A61K  31/16        (2006.01)
C12Q   1/37        (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
A61P  17/14        (2006.01)
FI A61K 31/166
A61K 31/122
A61K 31/16
C12Q 1/37
A61P 17/00
A61P 17/14
請求項の数または発明の数 11
全頁数 36
出願番号 特願2017-561131 (P2017-561131)
出願日 平成29年1月11日(2017.1.11)
国際出願番号 PCT/JP2017/000610
国際公開番号 WO2017/122668
国際公開日 平成29年7月20日(2017.7.20)
優先権出願番号 2016003424
優先日 平成28年1月12日(2016.1.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年1月19日(2018.1.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】西村 栄美
【氏名】松村 寛行
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100106297、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 克博
審査官 【審査官】岩下 直人
参考文献・文献 国際公開第99/62465(WO,A1)
特開2011-148792(JP,A)
国際公開第2013/031003(WO,A1)
調査した分野 A61K 31/166
A61K 31/122
A61K 31/16
C12Q 1/37
A61P 17/00
A61P 17/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
脱毛の抑制または改善に用いるための組成物であって、該脱毛がCOL17A1を有する個体における脱毛であり、シベレスタットナトリウム水和物またはアポシニンを含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
白毛化の抑制または改善に用いるための組成物であって、該白毛化がCOL17A1を有する個体における白毛化であり、シベレスタットナトリウム水和物またはアポシニンを含有することを特徴とする組成物。
【請求項3】
毛包老化の抑制に用いるための組成物であって、該毛包の老化がCOL17A1を有する個体における毛包の老化であり、シベレスタットナトリウム水和物またはアポシニンを含有することを特徴とする組成物。
【請求項4】
脱毛症の治療または予防に用いるための医薬組成物であって、該脱毛症がCOL17A1を有する個体における脱毛症であり、シベレスタットナトリウム水和物またはアポシニンを含有することを特徴とする、医薬組成物。
【請求項5】
脱毛症が、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症および瘢痕性脱毛症からなる群より選ばれたいずれかの脱毛症であることを特徴とする請求項記載の医薬組成物。
【請求項6】
COL17A1を有する個体における老人性脱毛症による脱毛の抑制もしくは改善に有効な物質をスクリーニングするための方法であって、
i)in vitroで好中球エラスターゼ(ELANE)と試験物質とを接触させる工程、
ii)好中球エラスターゼの活性を測定する工程、および
iii)該試験物質が好中球エラスターゼ(ELANE)の活性を低下させるか否かを決定する工程
を含む、方法。
【請求項7】
脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、Marimastatを含有することを特徴とする、組成物。
【請求項8】
白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、Marimastatを含有することを特徴とする、組成物。
【請求項9】
毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物であって、Marimastatを含有することを特徴とする、組成物。
【請求項10】
脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、Marimastatを含有することを特徴とする、組成物。
【請求項11】
脱毛症が、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および癒痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、請求項10記載の組成物。
発明の詳細な説明
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、特願2016-003424号(出願日:2016年1月12日)の優先権の利益を享受する出願であり、これは引用することによりその全体が本明細書に取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、脱毛を抑制もしくは改善するための組成物、白毛化を抑制もしくは改善するための組成物、毛包のミニチュア化(矮小化)を抑制するための組成物、脱毛症の治療もしくは予防用の組成物、または脱毛、白毛化もしくは毛包のミニチュア化を抑制する物質のスクリーニング方法に関する。より具体的には、DNA修復を促進する剤、DNA損傷を抑制する剤、もしくはXVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲンの分解を抑制する物質またはXVII型コラーゲンの発現を誘導する物質を含有する脱毛抑制、白毛化抑制、もしくは毛包ミニチュア化抑制組成物、またはXVII型コラーゲンの分解抑制活性を指標とする脱毛抑制剤(育毛剤)、白毛化抑制剤、もしくは毛包ミニチュア化抑制剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
組織や臓器は加齢に伴い、その機能や構造において衰えが見られるようになる。組織や個体レベルでの老化を理解するために、これまでに多くの仮説が提唱されてきた。老化形質の発現や個体の寿命に関わる遺伝子が知られるようになったが、実際に組織レベルでどのようにして加齢変化が進んでいくのか、生体内での実際のメカニズムについては十分に明らかにされてはいない。
【0004】
DNAの複製エラー、活性酸素、テロメア末端問題、染色体異常などによって起こりうる内因性のDNA損傷が、組織を構成する細胞に蓄積することが知られており、これが組織の老化に関わるとされている。白髪や脱毛などの典型的な老化形質は、早老症候群で見られる内因性のゲノム不安定性のみならず、放射線照射などの環境要因による外因性のゲノム不安定性によっても促進されることが知られている。
【0005】
これまでゲノム不安定性による組織の衰えは、細胞老化や細胞死によって説明されてきた。しかし、典型的な細胞老化の特徴を持つ細胞は、皮膚にゲノム不安定性を誘導したからといって速やかに出現するものではなく、むしろ皮膚の色素細胞母斑や乳頭腫などにおいて特徴的に見られ、発癌抑制に関わると考えられている。今日、加齢に伴う組織幹細胞における変化(Stem cell aging)は、今日では、老化の特徴の一つと見なされているが、加齢した組織幹細胞の運命や、DNA損傷がその運命にどのような影響をもたらすのか、さらには組織や臓器の老化過程における役割については未だ殆ど明らかにされてはいない。
【0006】
毛包幹細胞は、毛包のなかほどバルジ領域に局在し、毛周期ごとの毛の再生を担っている(特許文献1;非特許文献1)。マウスの毛包幹細胞は、一般に明らかな衰えを示さないとされているが、実際には加齢に伴って休止期が長くなり、毛包幹細胞におけるサイトカインシグナルに変化が見られ、コロニー形成能力も低下することが知られている。その一方で、寿命の長い哺乳類は加齢とともに毛や毛包を失うとされている。
【0007】
毛髪の成長は一般に、成長期(anagen)、退行期(catagen)、休止期(telogen)に分類される(非特許文献2)。ヒトの頭髪の場合、成長期が2~7年続いた後、退行期、休止期を経て、脱毛する。
【0008】
毛髪の主な機能としては、外傷や直射日光からの保護、体温喪失の防止などがあり、毛包は皮膚の幹細胞の貯蔵庫としての役割も併せ持っている。また、毛髪は、社会的コミュニケーションを媒介する上でも重要であり、頭髪量の減少は人々のQOLの低下も招きうる。
【0009】
脱毛症のなかには、男性型脱毛症、女性型脱毛症、脂漏性脱毛症、老人性脱毛症、円形脱毛症、薬物性脱毛症、瘢痕性脱毛症、出産後に起こる産後脱毛症などがある。薬剤性脱毛症や瘢痕性脱毛症は、それぞれ抗癌剤やX線照射などのがん治療の副作用により医原性に誘発されるものを含む。しかし、これらの脱毛への対処法は、今のところ十分に確立されていない。
【0010】
現在、医薬品として認可されている主な発毛・育毛剤には、ミノキシジルとフィナステリドがある。ミノキシジルは、当初、血管拡張を主作用とする経口の高血圧治療剤として開発された医薬品であるが、高血圧治療剤による治療を受けている患者に適応したところ、血管を拡張し、毛根の再生を促すなどの多毛症が認められたことから、医療用の外用発毛剤として改めて開発された医薬品である。ミノキシジルは毛乳頭細胞からの細胞成長因子(VEGFなど)の産生促進や血管平滑筋ATP感受性Kチャネルの活性化を介して血管拡張を促す。これによって、毛包を休止期から初期成長期へと移行させたり、成長期を延長して毛髪を太く成長させる効果が知られている。
【0011】
DHT(ジヒドロテストステロン)は前頭部や頭頂部を中心に毛の成長を阻害する作用をもつ。フィナステリドは、テストステロン(男性ホルモン)をDHTへ変換する酵素である2型5-α還元酵素を阻害し、DHTの生成を抑制することによって作用する。男性ホルモンを原因とする前立腺肥大症の治療薬を男性型脱毛症(AGA)の治療薬に応用して開発された医薬品である。
【0012】
これらの医薬品が現在市販されているものの、脱毛対策に関しては、より有効な医薬品が今なお求められている。また同様に、白毛化対策に関しても、有効な医薬品が求められている。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開2009-161509
【0014】

【非特許文献1】Tanimura et al., Cell Stem Cell Vol.8, February 2011, pp.177-187
【非特許文献2】K. S. Stenn and R. Paus, PHYSIOLOGICAL REVIEWS Vol. 81, No. 1, January 2001, pp.449-494
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、脱毛を抑制もしくは改善するための組成物、白毛化を抑制もしくは改善するための組成物、毛包のミニチュア化を抑制するための組成物を提供することを目的の一つとする。また、本発明は、脱毛、白毛化もしくは毛包のミニチュア化を抑制もしくは改善する物質のスクリーニング方法を提供することも目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者らは、マウスおよびヒトの加齢した毛包幹細胞でDNAの損傷の蓄積を認め、XVII型コラーゲン(COL17A1)の発現が減少していること、DNA損傷を誘発することが知られている放射線照射によってもCOL17A1の分解によってマウスの毛包幹細胞におけるその発現が減少すること、さらに毛包幹細胞において特異的にCOL17A1を欠損させるマウスを作成し、これによって毛包や皮膚での加齢性変化を模倣できることを見出した。さらに、DNA損傷応答によって毛包幹細胞を含む基底膜上の角化細胞において誘発される好中球エラスターゼ(ELANE)が加齢やX線照射によるCOL17A1の分解に関与することを明らかにした。マウスの毛包および表皮の基底細胞にCOL17A1を強制発現すると、加齢による毛包幹細胞の変化を抑制して幹細胞が維持されるようになり、毛包や皮膚全体の変化が遅延することを確認した。以上のことから、毛包幹細胞など基底層の角化細胞が発現するCOL17A1は、加齢やX線照射に伴うDNA損傷に抗して毛包および皮膚の加齢変化を抑制していると考えられ、DNA損傷の修復を促進したり、DNA損傷を抑制したり、COL17A1の分解を抑制したり、発現を上げるなどしてCOL17A1を安定的に発現させることは、皮膚および毛包のアンチエイジング、脱毛および白毛化の抑制、育毛に役立つと考えられた。本発明は、これらの知見を基礎とするものであり、具体的には以下の事項に関する。
【0017】
[1]脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲンの分解抑制剤を含有することを特徴とする、組成物。
[2]白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲンの分解抑制剤を含有することを特徴とする、組成物。
[3]毛包のミニチュア化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲンの分解抑制剤を含有することを特徴とする、組成物。
[4]脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲンの分解抑制剤を含有することを特徴とする、組成物。
[5]脱毛症が、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[4]記載の組成物。
[6]XVII型コラーゲンの分解抑制剤が、好中球エラスターゼ(ELANE)の阻害剤である、[1]~[5]のいずれか一項記載の組成物。
[7]好中球エラスターゼの阻害剤が、α1アンチトリプシン(α1-AT)、シベレスタットナトリウム水和物(Monosodium N-{2-[4-(2,2-dimethylpropanoyloxy)-phenylsulfonylamino]benzoyl}aminoacetate tetrahydrate;エラスポールとも呼ばれる)、ONO-6818(2-(5-Amino-6-oxo-2-phenylhydropyrimidinyl)-N-[2-(5-tert-butyl-1,3,4-oxadiazol-2-yl)-1-(methylethyl)-2-oxoethyl]acetamide)、デペレスタット(Depelestat;EPI-hNE4またはDX-890とも呼ばれる)から成る群から選択される化合物である、[6]記載の組成物。
[8]好中球エラスターゼの阻害剤がモノクローナル抗体またはその断片である、[6]記載の組成物。
[9]好中球エラスターゼの阻害剤がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、[6]記載の組成物。
[10]好中球エラスターゼの阻害剤がsiRNAである、[6]記載の組成物。
[11]医薬組成物である、[1]~[10]のいずれか一項記載の組成物。
[12]美容用組成物である、[1]~[10]のいずれか一項記載の組成物。
[13]美容サプリメントである、[1]~[10]のいずれか一項記載の組成物。
[14]経口剤である、[1]~[13]のいずれか一項記載の組成物。
[15]注射剤である、[1]~[13]のいずれか一項記載の組成物。
[16]外皮用剤である、[1]~[13]のいずれか一項記載の組成物。
[17]哺乳動物における脱毛を抑制もしくは改善するための方法であって、XVII型コラーゲンの分解抑制剤または安定化剤を該哺乳動物に投与することを含む、方法。
[18]哺乳動物における白毛化を抑制もしくは改善するための方法であって、XVII型コラーゲンの分解抑制剤または安定化剤を該哺乳動物に投与することを含む、方法。
[19]哺乳動物における毛包のミニチュア化を抑制するための方法であって、XVII型コラーゲンの分解抑制剤や安定化剤を該哺乳動物に投与することを含む、方法。
[20]哺乳動物における脱毛症を治療または予防するための方法であって、XVII型コラーゲンの分解抑制剤または安定化剤を該哺乳動物に投与することを含む、方法。
[21]脱毛症が、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[20]記載の方法。
[22]哺乳動物における脱毛を抑制もしくは改善するための方法であって、XVII型コラーゲンの分解を抑制する工程を含む、方法。
[23]哺乳動物における白毛化を抑制もしくは改善するための方法であって、XVII型コラーゲンの分解を抑制する工程を含む、方法。
[24]哺乳動物における毛包のミニチュア化を抑制するための方法であって、XVII型コラーゲンの分解を抑制する工程を含む、方法。
[25]哺乳動物における脱毛症を治療または予防するための方法であって、XVII型コラーゲンの分解を抑制する工程を含む、方法。
[26]脱毛症が、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[25]記載の方法。
[27]脱毛の抑制もしくは改善に用いるための医薬の製造における、XVII型コラーゲン分解抑制剤の使用。
[28]白毛化の抑制もしくは改善に用いるための医薬の製造における、XVII型コラーゲン分解抑制剤の使用。
[29]毛包のミニチュア化の抑制に用いるための医薬の製造における、XVII型コラーゲン分解抑制剤の使用。
[30]脱毛症の治療または予防に用いるための医薬の製造における、XVII型コラーゲン分解抑制剤の使用。
[31]脱毛症が、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[30]記載の使用。
[32]脱毛の抑制もしくは改善、白毛化の抑制もしくは改善、および/または毛包のミニチュア化の抑制に有効な物質をスクリーニングするための方法であって、i)in vitroで好中球エラスターゼと試験物質とを接触させる工程、ii)好中球エラスターゼ(ELANE)の活性を測定する工程、およびiii)該試験物質が好中球エラスターゼ(ELANE)の活性を低下させるか否かを決定する工程を含む、方法。
[33]好中球エラスターゼの活性を増強する工程を含む、脱毛促進方法。
[34]脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、好中球エラスターゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[35]白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、好中球エラスターゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[36]毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物であって、好中球エラスターゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[37]脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、好中球エラスターゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[38]脱毛症が、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[37]記載の組成物。
[39]毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症の治療または予防に用いるための医薬組成物であって、XVII型コラーゲンタンパク質もしくはそれをコードする核酸、またはXVII型コラーゲンを安定化する剤もしくは安定的に発現させる剤を含有することを特徴とする、医薬組成物。
[40]毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症の治療または予防のための方法であって、対象にXVII型コラーゲンタンパク質もしくはそれをコードする核酸、またはXVII型コラーゲンを安定化する剤もしくは安定的に発現させる剤を投与する工程を含む、方法。
[41]毛髪が次第に細くなる(毛包がミニチュア化する)過程を経る脱毛症(老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症など)の治療または予防に用いるための医薬組成物であって、(i)毛包幹細胞もしくは角化細胞においてXVII型コラーゲン(COL17A1)の発現を上昇もしくは安定化させる化合物もしくは核酸、または(ii)XVII型コラーゲンを発現する細胞を増やす化合物もしくは核酸を含有することを特徴とする、医薬組成物。
[42]毛が次第に細く薄くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症の治療もしくは予防、ならびに/または白毛化の抑制に有用な化合物のスクリーニング方法であって、(i)in vitroで毛包幹細胞または角化細胞に化合物を接触させる工程、(ii)毛包幹細胞または角化細胞におけるXVII型コラーゲンの発現量の変化を調べる工程、および(iii)毛包幹細胞または角化細胞におけるXVII型コラーゲンの発現量を増加もしくは安定化させる化合物を同定する工程、を含むスクリーニング方法。
[43]脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、DNA損傷の修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を含有することを特徴とする、組成物。
[44]白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、DNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を含有することを特徴とする、組成物。
[45]毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物であって、DNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を含有することを特徴とする、組成物。
[46]脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、DNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を含有することを特徴とする、組成物。
[47]脱毛症が、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[46]記載の組成物。
[48]DNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤が、スギノリ(Gigartina tenella)抽出物、サルカンドラ グラブラ(Sarcandra glabra)抽出物、サラカ ディベス(Saraca dives)抽出物、クドラニア プベセンス(Cudrania pubescens)抽出物、タキソディウム ディスティチュム(Taxodium distichum)抽出物、ルビジア オクトバリス(Ludwigia octovalis)抽出物、ドイチャンタス トンキネンシス(Deutzianthus tonkinensis)抽出物、アルコルネア トレビオイデス(Alchornea trewioides)抽出物、ベルケミア ポリフィラ(Berchemia polyphylla)抽出物、グロチディオン プベルム(Glochidion puberum)抽出物、ササフラス ツム(Sassafras tzumu)抽出物、キナ抽出物、コンフリー抽出物、コーヒーノキ抽出物、カッコン抽出物、ゴボウ抽出物、オウレン抽出物、クララ抽出物、クロレラ抽出物、ラベンダー抽出物、メマツヨイグサ抽出物、バラ抽出物、アマチャヅル抽出物、エンメイソウ抽出物、オドリコソウ抽出物、カロット抽出物、シナノキ抽出物、ジユ抽出物、ハス抽出物、茶抽出物、およびオクラ抽出物からなる群から選択される一種または二種以上の抽出物であることを特徴とする[43]~[47]のいずれか一項記載の組成物。
[49]哺乳動物における脱毛を抑制もしくは改善するための方法であって、DNA損傷の修復を促進する若しくはDNA損傷を抑制する工程、好ましくはDNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
[50]哺乳動物における白毛化を抑制もしくは改善するための方法であって、DNA損傷の修復を促進する若しくはDNA損傷を抑制する工程、好ましくはDNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
[51]哺乳動物における毛包のミニチュア化を抑制するための方法であって、DNA損傷の修復を促進する若しくはDNA損傷を抑制する工程、好ましくはDNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
[52]哺乳動物における脱毛症を治療または予防するための方法であって、DNA損傷の修復を促進する若しくはDNA損傷を抑制する工程、好ましくはDNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
[53]脱毛の抑制もしくは改善に用いるための医薬の製造における、DNA損傷修復促進剤もしくはDNA損傷抑制剤の使用。
[54]白毛化の抑制もしくは改善に用いるための医薬の製造における、DNA損傷修復促進剤もしくはDNA損傷抑制剤の使用。
[55]毛包のミニチュア化の抑制に用いるための医薬の製造における、DNA損傷修復促進剤もしくはDNA損傷抑制剤の使用。
[56]脱毛症の治療または予防に用いるための医薬の製造における、DNA損傷修復促進剤もしくはDNA損傷抑制剤の使用。
[57]毛が次第に細く薄くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症の治療もしくは予防、ならびに/または白毛化の抑制に有用な化合物のスクリーニング方法であって、(i)in vitroで毛包幹細胞または角化細胞に化合物を接触させる工程、(ii)毛包幹細胞または角化細胞におけるDNA損傷修復能の変化を調べる工程、および(iii)毛包幹細胞または角化細胞におけるDNA損傷修復能を増加させる化合物を同定する工程を含むスクリーニング方法。
[58]脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、MMP阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[59]白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、MMP阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[60]毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物であって、MMP阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[61]脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、MMP阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[62]脱毛症が、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[61]記載の組成物。
[63]MMP阻害剤が、Marimastat、Batimastat、PD166793、Ro32-3555、WAY170523、UK370106、TIMP1、TIMP2、TIMP3、およびTIMP4から成る群から選択される化合物である、[58]~[62]のいずれか一項記載の組成物。
[64]脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、NADPHオキシダーゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[65]白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、NADPHオキシダーゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[66]毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物であって、NADPHオキシダーゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[67]脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、NADPHオキシダーゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[68]脱毛症が、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[67]記載の組成物。
[69]NADPHオキシダーゼ阻害剤が、アポシニン、AEBSF、GK-136901、ML171、VAS2870、VAS3947から成る群から選択される化合物である、[64]~[68]のいずれか一項記載の組成物。
[70]脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、酸化防止剤を含有することを特徴とする、組成物。
[71]白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、酸化防止剤を含有することを特徴とする、組成物。
[72]毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物であって、酸化防止剤を含有することを特徴とする、組成物。
[73]脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、酸化防止剤を含有することを特徴とする、組成物。
[74]脱毛症が、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[73]記載の組成物。
[75]酸化防止剤が、アスコルビン酸、エダラボン、α-トコフェロール、グルタチオン、カテキン、レスベラトロールから成る群から選択される化合物である、[70]~[74]のいずれか一項記載の組成物。
[76]脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、ADAM阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[77]白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、ADAM阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[78]毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物であって、ADAM阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[79]脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、ADAM阻害剤を含有することを特徴とする、組成物。
[80]脱毛症が、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症であることを特徴とする、[79]記載の組成物。
[81]ADAM阻害剤が、TAPI-2、セコフェノール(Secophenol)、GI 254023X、エリスロロサミン(Erythrolosamine)、TIMP1、TIMP2、TIMP3、およびTIMP4から成る群から選択される化合物である、[76]~[80]のいずれか一項記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】若齢マウス(8週齢)と加齢マウス(28ヶ月齢)の代表的な写真である。
【図1B】加齢マウス(18ヶ月齢以降)の背中の首元と体幹において、脱毛が特徴的に見られることを示す写真である。
【図1C】ヘマトキシリン・エオジン染色による若齢マウス(8週齢)と中年齢(12ヶ月齢)と加齢マウス(24、34ヶ月齢)の背中の皮膚の代表的な組織像を示す写真である。
【図1D】1mmあたりの毛包の数を示すグラフである。
【図1E】休止期における毛包の模式図である。
【図1F】毛包老化の経時的ステージングを示す写真である。
【図1G】1mmあたりのそれぞれの毛包ステージの数を示すグラフである。
【図1H】毛包のある領域(H)と毛包のない領域(HL)の8週齢と24ヶ月齢の毛包幹細胞マーカーCD34による免疫染色像である。
【図1I】8週齢と16ヶ月齢と24~26ヶ月齢の毛包幹細胞マーカーCOL17A1、LHX2、SOX9による免疫染色像である。
【図1J】8週齢と16ヶ月齢と24~26ヶ月齢の毛包幹細胞マーカーCOL17A1、K15、S100A6による免疫染色の蛍光強度の定量的解析について示しているグラフである。
【図1K】8週齢と16ヶ月齢と24ヶ月齢の毛包幹細胞マーカーLHX2,SOX9による免疫染色による核内陽性細胞数の定量的解析について示しているグラフである。
【図1L】8週齢と28ヶ月齢のFACSによる毛包幹細胞分画(CD34強陽性、ITGA6強陽性、SCA-I陰性)の解析について示している図である。
【図2A】毛包幹細胞由来細胞の遺伝的運命解析の実験デザインについて示した図である。
【図2B】毛周期誘導後のK15-crePR;CAG-CAT-EGFPマウスのEGFP発現とケラチン1による免疫染色像である。
【図2C】毛周期誘導後のK15-crePR;CAG-CAT-EGFPマウスのEGFP発現とケラチン10による免疫染色像である。
【図2D】毛周期誘導後のK15-crePR;CAG-CAT-EGFPマウスのEGFP発現とLRIG1による免疫染色像である。
【図2E】毛周期誘導後のK15-crePR;CAG-CAT-EGFPマウスのEGFP発現とインボルクリンによる免疫染色像写真である。
【図2F】lacZ陽性の毛包幹細胞由来細胞が、ステージI~IIIのバルジ細胞(Bg)、ステージ-III-IVの毛包接合部細胞(JZ)、および、ステージVの表皮の細胞(Epi)で出現することを示している写真である。
【図2G】毛包幹細胞の運命の模式図である。
【図2H】毛周期誘導後の若齢(8週齢)と加齢(25~26ヶ月齢)の毛包幹細胞のマイクロアレイで比較して2倍以上変化した遺伝子のオントロジー解析について示している図である。
【図2I】毛周期誘導後、若齢と加齢の毛包幹細胞のマイクロアレイ比較での“上皮分化”の遺伝子セットによる抽出遺伝子比較(GSEA)解析を示している図である。
【図2J】8週齢と25~26ヶ月齢の毛包幹細胞分画のK1、c-Myc、Notch1、Fbxw7の遺伝子の定量的RT-PCR解析結果を示したグラフである。
【図3A】加齢(24~25ヶ月齢)の毛包幹細胞のマイクロアレイの比較において2倍以上増加/減少した遺伝子における、DNA損傷応答/DNA損傷修復に関するオントロジー解析について示している図である。
【図3B】若齢(8週齢)の毛包幹細胞のマイクロアレイの比較において2倍以上増加/減少した遺伝子における、DNA損傷応答/DNA損傷修復に関するオントロジー解析について示している図である。
【図3C】若齢と加齢の毛包幹細胞のマイクロアレイ比較での“DNA修復”の遺伝子セットによる抽出遺伝子比較(GSEA)解析を示している図である。
【図3D】サイバーグリーン染色による代表的なDNA損傷断片(テイルモーメント)像を示している写真である。
【図3E】若齢(8週齢)と加齢(24ヶ月齢)の毛包幹細胞のテイルモーメントの頻度のグラフである。
【図3F】若齢(8週齢)と加齢(24ヶ月齢)のバルジおよびサブバルジのDNA損傷応答反応マーカーγH2AXによる代表的な染色像である。
【図3G】バルジやサブバルジや毛母や真皮や表皮のγH2AXフォーサイの核内集積を示すグラフである。
【図4A】若齢(8週齢)、中年齢(12~16ヶ月齢)加齢(27ヶ月齢)マウスの毛包バルジのCOL17A1やELANEの蛍光染色像である。
【図4B】8週齢、12~16ヶ月齢、27ヶ月齢マウスのバルジや表皮のELANEの蛍光強度の定量的解析を示しているグラフである。
【図4C】10Gy放射線照射、12時間後、1日後、7日後の毛包バルジにおけるCOL17A1とELANEおよび、SOX9とケラチン15の蛍光染色像である。
【図4D】初代培養ケラチノサイトにおけるウエスタンブロットによる解析について示している写真である。
【図4E】若齢(8週齢)、加齢(25ヶ月齢)マウスのCOL17A1陽性の毛包バルジにおける53BP1やγH2AXフォーサイの蛍光免疫染色像である。
【図4F】8週齢、25ヶ月齢マウスのバルジ領域におけるCOL17A1弱陽性とCOL17A1陽性の領域の53BP1フォーサイ数のグラフである。
【図4G】8.5ヶ月齢の対照とCOL17A1 cKOマウスの背中の毛並みの写真である。
【図4H】対照とCOL17A1 cKOマウスの組織像である。
【図4I】1mmあたりの毛包の数を示すグラフである。
【図4J】生理的老化に似た形態を示すCOL17A1 cKOマウスに見られる代表的なミニチュア化毛包のステージングを示している写真である。
【図4K】1mmあたりのそれぞれの毛包ステージ数を示すグラフである。
【図4L】毛周期誘導後の12週齢の対照とCOL17A1 cKOマウスにおけるc-MYCとLHX2および、NOTCH1とケラチン1の免疫染色像である。
【図4M】若齢と加齢マウスとの比較で2倍以上増加した遺伝子と対照とCOL17a1 cKOマウスとの比較で2倍以上増加した遺伝子の中で重なる遺伝子のベン図である。
【図4N】LacZによりラベルしたCOL17A1欠損の毛包幹細胞の遺伝的運命解析を示している写真である。
【図5A】17ヶ月、24ヶ月、32ヶ月齢の野生型マウスおよび、ヒト型COL17A1トランスジェニック(hCOL17A1tg)マウスの毛並みの写真である。
【図5B】24~25ヶ月齢の野生型マウスおよびhCOL17A1tgマウスの組織像である。
【図5C】1mmあたりの24~25ヶ月齢の野生型マウスおよびhCOL17A1tgマウスにおける毛包の数を示すグラフである。
【図5D】1mmあたりの24~25ヶ月齢の野生型マウスおよびhCOL17A1tgマウスにおけるそれぞれの毛包のステージ数を示すグラフである。
【図5E】24~25ヶ月齢の野生型マウスおよびhCOL17A1tgマウスにおける毛包幹細胞マーカー、ケラチン15とLHX2による染色像である。
【図5F】バルジにおける免疫染色によるLHX2陽性の核の数の定量的解析について示しているグラフである。
【図6A】加齢(59,70歳)、中年齢(40歳)の女性の頭皮のヘマトキシリン・エオジン染色による組織像である。
【図6B】ミニチュア化毛包の比率を示すグラフである。
【図6C】若齢と加齢の毛包幹細胞マーカーの発現解析を示している免疫染色像である。
【図6D】ヒトCOL17A1の蛍光強度の定量的解析を示すグラフである。
【図6E】ケラチン15陽性のバルジ領域のサイズの解析について示しているグラフである。
【図6F】それぞれの年齢でのヒト頭皮におけるケラチン15陽性の表皮やバルジにおけるγH2AXフォーサイ形成を示している写真である。
【図6G】γH2AXフォーサイの蛍光強度の定量的解析を示すグラフである。
【図6H】ヒトのバルジ領域における異所性の表皮分化を示している写真である。
【図7A】毛包老化の模式図である。
【図7B】毛包老化の模式図である。
【図8】アポシニンによるCOL17A1の発現誘導を示す電気泳動図である。
【図9】アスコルビン酸によるCOL17A1の発現誘導を示す電気泳動図である。
【図10】MarimastatによるCOL17A1の発現誘導を示す電気泳動図である。
【図11】アポシニンによる老齢マウスにおける増毛効果を示す写真である。
【図12】老齢マウスにおけるミノキシジル(上段)とアポシニン(下段)の増毛効果の比較を示す写真である。
【図13】放射線照射マウスにおけるシベレスタット背部塗布の効果を示す写真である。
【図14】放射線照射マウスにおけるシベレスタット皮内投与の効果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を詳細に説明する。発明者らは、マウスおよびヒトの加齢した毛包幹細胞でXVII型コラーゲン(Col17A1)の発現が減少していること、放射線照射によるCol17A1の分解によってマウスの毛包幹細胞におけるその発現が減少することを見出した。さらに、好中球エラスターゼ(ELANE)がCol17A1の分解に関与することを明らかにした。マウスの毛包および表皮の基底細胞にCOL17A1を強制発現すると、加齢による毛包幹細胞の変化を抑制して幹細胞が維持されるようになり、毛包や皮膚全体の変化が遅延することを確認した。以上のことから、毛包幹細胞が発現するCOL17A1は、加齢やX線照射に伴う毛包および皮膚の加齢変化を抑制していると考えられ、たとえば、好中球エラスターゼの阻害剤を用いてその分解を抑制することが、皮膚および毛包のアンチエイジング、白毛化の抑制もしくは改善、脱毛の抑制もしくは改善(育毛)に有効となりうることが、当業者には理解される。なお、本明細書において用いられる「脱毛もしくは白毛化の抑制」とは、脱毛もしくは白毛化の進行を止める、または遅らせることを含むと解される。また、「脱毛もしくは白毛化の改善」とは、脱毛もしくは白毛化の進行を逆転させること、つまり増毛または黒毛化の促進を含むと解される。

【0020】
脱毛抑制組成物
本発明の実施形態の一つは、脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲンの分解抑制剤を含有することを特徴とする、組成物に関する。上記のように、発明者らは、COL17A1の分解により、毛包幹細胞が、そのニッチにおいて幹細胞性を失って表皮分化を引き起こし、角化細胞に終末分化して、皮膚表面から放出されることで、段階的な毛包のミニチュア化や脱毛が引き起こされることを見出した。よって、当業者には、XVII型コラーゲンの分解抑制剤(例えば、ELANE阻害剤)を用いて、XVII型コラーゲンの減少を抑制することで、脱毛(薄毛化)を抑制もしくは改善しうることが理解される。XVII型コラーゲンの分解抑制剤としては、例えば、XVII型コラーゲンを切断する好中球エラスターゼ(ELANE)の阻害剤を挙げることができる。すなわち、本発明の実施形態の一つは、脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、好中球エステラーゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物を含む。XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、XVII型コラーゲンの分解抑制剤ないし好中球エステラーゼ阻害剤は、例えば、低分子化合物や、ポリペプチド、タンパク質、抗体、核酸などの高分子でありうる。

【0021】
白毛化抑制組成物
本発明の実施形態の一つは、白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲンの分解抑制剤を含有することを特徴とする、組成物に関する。XVII型コラーゲンは、メラノサイト幹細胞(MSC)の維持にも必要であることが知られている(非特許文献1)。よって、当業者には、XVII型コラーゲンの分解抑制剤(例えば、ELANE阻害剤)を用いて、XVII型コラーゲンの減少を抑制することで、白毛化を抑制もしくは改善しうることが理解される。XVII型コラーゲンの分解抑制剤としては、例えば、XVII型コラーゲンを切断する好中球エラスターゼ(ELANE)の阻害剤を挙げることができる。すなわち、本発明の実施形態の一つは、白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物であって、好中球エステラーゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物を含む。XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、XVII型コラーゲンの分解抑制剤ないし好中球エステラーゼ阻害剤は、例えば、低分子化合物や、ポリペプチド、タンパク質、抗体、核酸などの高分子でありうる。

【0022】
毛包ミニチュア化抑制組成物
本発明の実施形態の一つは、毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物であって、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲンの分解抑制剤を含有することを特徴とする、組成物に関する。ミニチュア化毛包とは、ヘアサイクルにおける髪の毛の成長期が短縮したために小さくなってしまった毛包のことをいう。図7Aおよび7Bは、毛包老化の模式図を示している。毛包幹細胞プールは、加齢において休止期状態を維持する(ステージIa)。DNA損傷応答を示す毛包幹細胞は、ELANEプロテアーゼの発現誘導を介して、COL17A1の分解を引き起こす(ステージIb)。それらのCOl17A1の発現が弱陽性の毛包幹細胞は、そのニッチにおいて、幹細胞性を失い、表皮分化を引き起こす。それらの「エイジング」した毛包幹細胞は、毛周期とともに、毛包接合部を通って、表皮に向かって移動する。それらは、角化細胞に終末分化して、皮膚表面から放出されることで、段階的な毛包のミニチュア化や薄毛や脱毛を引き起こす。よって、当業者には、XVII型コラーゲンの分解抑制剤(例えば、ELANE阻害剤)を用いて、XVII型コラーゲンの減少を抑制することで、毛包のミニチュア化を抑制しうることが理解される。XVII型コラーゲンの分解抑制剤としては、例えば、XVII型コラーゲンを切断する好中球エラスターゼ(ELANE)の阻害剤を挙げることができる。すなわち、本発明の実施形態の一つは、毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物であって、好中球エステラーゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物を含む。XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、XVII型コラーゲンの分解抑制剤ないし好中球エステラーゼ阻害剤は、例えば、低分子化合物や、ポリペプチド、タンパク質、抗体、核酸などの高分子でありうる。

【0023】
脱毛症の治療/予防用組成物
本発明の実施形態の一つは、脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲンの分解抑制剤を含有することを特徴とする、組成物に関する。対象となりうる脱毛症としては、男性型脱毛症、脂漏性脱毛症、老人性脱毛症、円形脱毛症、制癌剤の投与などが原因の薬物脱毛症、瘢痕性脱毛症、出産後に起こる産後脱毛症、精神疾患の抜毛症、その中でも特に、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症を挙げることができるが、これらに限定はされない。XVII型コラーゲンの分解抑制剤としては、例えば、XVII型コラーゲンを切断する好中球エラスターゼ(ELANE)の阻害剤を挙げることができる。すなわち、本発明の実施形態の一つは、脱毛症の治療または予防に用いるための組成物であって、好中球エステラーゼ阻害剤を含有することを特徴とする、組成物を含む。XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、XVII型コラーゲンの分解抑制剤ないし好中球エステラーゼ阻害剤は、例えば、低分子化合物や、ポリペプチド、タンパク質、抗体、核酸などの高分子でありうる。

【0024】
XVII型コラーゲン分解抑制剤
XVII型コラーゲン(COL17A1/BP180/BPAG2)は、膜貫通タンパク質型の細胞接着分子であり、上皮組織の細胞結合の1つである半接着斑(ヘミデスモソーム)のタンパク質である。発明者らは、毛包バルジのXVII型コラーゲンが好中球エラスターゼ(ELANE)によって分解されることを見出した。よって、ELANEの阻害剤をXVII型コラーゲンの分解抑制剤として利用することができる。なお、XVII型コラーゲンを分解する他の酵素の阻害剤もELANE阻害剤と同様に使用されうることが当業者には理解される。

【0025】
好中球エラスターゼ(ELANE)阻害剤
好中球エラスターゼ(ELANE、EC3.4.21.37)は、分子量約3万の中性プロテアーゼであり、アズール顆粒(ライソゾーム)に存在する。好中球エラスターゼ(ELANE)阻害剤は、ELANEの活性を阻害するものでも、発現を抑制するものでも良い。また、ELANE阻害剤は、選択的ELANE阻害剤であっても、非選択的ELANE阻害剤であっても良い。ELANE阻害剤は、例えば、低分子化合物や、ポリペプチド、タンパク質、抗体、核酸などの高分子でありうる。

【0026】
低分子阻害剤
ELANEを阻害する低分子化合物としては、例えば、シベレスタットナトリウム水和物(Monosodium N-{2-[4-(2,2-dimethylpropanoyloxy)-phenylsulfonylamino]benzoyl}aminoacetate tetrahydrate;エラスポールとも呼ばれる)、ONO-6818(2-(5-Amino-6-oxo-2-phenylhydropyrimidinyl)-N-[2-(5-tert-butyl-1,3,4-oxadiazol-2-yl)-1-(methylethyl)-2-oxoethyl]acetamide)が知られている。これらの好中球エラスターゼ阻害性低分子化合物は、薬学的に許容される塩または誘導体の形で用いることもできる。

【0027】
ポリペプチド/タンパク質阻害剤
ELANEを阻害するポリペプチドまたはタンパク質としては、例えば、α1アンチトリプシン(α1-AT;A1AT)が知られている。α1-アンチトリプシンは、分子量51,000、394個のアミノ酸からなる糖タンパク質であり、エラスターゼやトリプシンの活性部位にほぼ不可逆的に結合することでエラスターゼの働きを阻害する。α1アンチトリプシンの配列は公知であり、1または複数の変異を導入したα1アンチトリプシンバリアントをELANE阻害剤として使用してもよい。

【0028】
ELANEを阻害する他のポリペプチドとして、デペレスタット(Depelestat;EPI-hNE4またはDX-890とも呼ばれる)が知られている。デペレスタットは、ファージディスプレイ法によって同定された、強力かつ選択的な小タンパク質ELANE阻害剤である。ファージディスプレイ法等によって同定された他の人工のELANE阻害も同様に使用されうることが当業者には理解される。また、天然物由来の阻害剤として、シソ葉の発酵物(特開2006-61091号公報)、パセリの発酵物(特開2006-75085号公報)、ピーマンの発酵物(特開2006-76926号公報)を含有するエラスターゼ活性阻害剤などを使用してもよい。

【0029】
抗体
ELANE阻害剤は、抗ELANE抗体であってもよい。抗ELANE抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を使用できるが、モノクローナル抗体を用いることが好ましい。ELANEに対する阻害活性を有する抗体であれば、全長である必要はなく、抗体の断片であっても使用することができる。抗体の由来する哺乳動物は、特に限定されず、ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体などを使用できる。ヒトに対して用いる場合、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体のいずれであっても使用することができるが、ヒト抗体であることが好ましい。また、抗体または抗体の断片は、ファージディスプレイ法等によるスクリーニングによって同定されたペプチド配列を含むものであってもよい。

【0030】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
ELANE阻害剤は、抗ELANEアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、例えば、10~50塩基のオリゴヌクレオチドをELANE遺伝子の塩基配列に基づき設計することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNA、DNA、その他の修飾核酸を含みうる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列に完全に相補的なものであっても、1もしくは複数のミスマッチを含むものであってもよい。ELANE遺伝子の塩基配列は既知であり、例えば、GenBankなどのデータベースから入手することができる:
ELANE elastase, neutrophil expressed [ Homo sapiens (human) ]
Gene ID: 1991
mRNA: NM_001972.2
Elane elastase, neutrophil expressed [ Mus musculus (house mouse) ]
Gene ID: 50701
mRNA: NM_015779.2

【0031】
siRNA
ELANE阻害剤は、ELANEを標的としたsiRNAであってもよい。ELANE遺伝子の塩基配列は既知であり、例えば、GenBankなどのデータベースから入手することができる。siRNAの設計法は当業者には既知である。

【0032】
XVII型コラーゲン発現安定化剤
本明細書の文脈において、XVII型コラーゲンの発現を安定化する剤には、XVII型コラーゲンの発現誘導剤が含まれる。発明者らは、MMP阻害剤、NADPHオキシダーゼ阻害剤、酸化防止剤およびADAM阻害剤がXVII型コラーゲンの発現を上昇させることを見出した。したがって、本発明に係る組成物および方法においては、MMP阻害剤、NADPHオキシダーゼ阻害剤、酸化防止剤および/またはADAM阻害剤を有効成分として使用できる。よって、本発明の実施形態には、MMP阻害剤、NADPHオキシダーゼ阻害剤、および/または酸化防止剤を含有する、脱毛の抑制もしくは改善に用いるための組成物、白毛化の抑制もしくは改善に用いるための組成物、毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物、および脱毛症の治療または予防に用いるための組成物が含まれる。

【0033】
MMP阻害剤としては例えば、Marimastat、Batimastat、PD166793、Ro32-3555、WAY170523、UK370106、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TIMP4などを挙げることができるが、これらに限定はされない。NADPHオキシダーゼ阻害剤としては例えば、アポシニン、AEBSF、GK-136901、ML171、VAS2870、VAS3947などを挙げることができるが、これらに限定はされない。酸化防止剤としては、アスコルビン酸、エダラボン、α-トコフェロール、グルタチオン、カテキン、レスベラトロールなどを挙げることができるが、これらに限定はされない。ADAM阻害剤としては例えば、TAPI-2、セコフェノール(Secophenol)、GI 254023X、エリスロロサミン(Erythrolosamine)、TIMP1、TIMP2、TIMP3、TIMP4などを挙げることができるが、これらに限定はされない。

【0034】
医薬組成物
本発明の実施形態の一つは、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲン分解抑制剤、より具体的にはELANE阻害剤、またはDNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物に関する。別の言い方をすれば、本発明の実施形態の一つは、医薬の製造における、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲン分解抑制剤、より具体的にはELANE阻害剤の使用、またはDNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤の使用に関する。有効成分として働くELANE阻害剤としては、例えば、上記のような低分子化合物、ポリペプチド、タンパク質、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAなどを使用できる。本発明に係る医薬組成物は、錠剤、粉末、液体、半固体などの任意の形態をとることができ、ELANE阻害剤に加えて、適当な賦形剤、添加剤を含みうる。また、本発明に係る医薬組成物には、ミノキシジルやフィナステリドなどの他の活性成分が配合されていてもよい。各成分の配合量は、医薬として許容される範囲で適宜決定することができる。また、組成物の投与量は、使用する薬剤の種類、投与する対象に応じて、適宜決定することができる。投与経路についても、使用する薬剤の種類、投与する対象に応じて、適宜決定することができる。

【0035】
本発明に係る医薬組成物は、脱毛症もしくは薄毛の治療もしくは予防に使用することができる。脱毛症の類型としては、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症挙げることができるが、これらに限定はされない。

【0036】
美容用組成物
本発明の実施形態の一つは、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲン分解抑制剤、より具体的にはELANE阻害剤、またはDNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を有効成分として含有することを特徴とする美容用組成物に関する。有効成分として働くELANE阻害剤としては、例えば、上記のような低分子化合物、ポリペプチド、タンパク質、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAなどを使用できる。本発明に係る美容用組成物は、液体、エマルジョン、ゲル、クリームなどの任意の形態をとりうる。薬剤の含有量は、使用する薬剤の種類、適用する対象に応じて、適宜決定することができる。

【0037】
美容サプリメント
本発明の実施形態の一つは、XVII型コラーゲン発現を安定化する剤、好ましくはXVII型コラーゲン分解抑制剤、より具体的にはELANE阻害剤、またはDNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を有効成分として含有することを特徴とする美容サプリメントに関する。有効成分として働くELANE阻害剤としては、例えば、上記のような低分子化合物、ポリペプチド、タンパク質、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAなどを使用できる。本発明に係る美容サプリメントは、錠剤、粉末、液体などの任意の形態をとりうる。本発明に係る美容サプリメントは、例えば、1日1~3回、食前、食中、食後に経口摂取するものとして調製されうる。

【0038】
脱毛抑制方法、白毛化抑制方法等
本発明の実施形態の一つは、哺乳動物における脱毛、白毛化、もしくは毛包のミニチュア化を抑制もしくは改善するための方法に関する。このような方法は、XVII型コラーゲンの分解を抑制する工程、より具体的には、例えば、ELANE阻害剤などのXVII型コラーゲンの分解抑制剤を該哺乳動物に投与することを含みうる。あるいは、このような方法は、XVII型コラーゲンの発現を安定化(上昇)させる工程、より具体的には、例えば、MarimastatなどのMMP阻害剤、アポシニンなどのNADPHオキシダーゼ阻害剤および/またはアスコルビン酸などの酸化防止剤を該哺乳動物に投与することを含みうる。哺乳動物としては、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、アルパカ、ウマ、ミンク、キツネ、テン、タヌキ、チンチラ、ラッコ、カワウソ、ビーバー、アザラシなどが含まれる。投与量は、使用する薬剤の種類、投与する対象に応じて、適宜決定することができる。投与経路についても、使用する薬剤の種類、投与する対象に応じて、適宜決定することができる。好ましい投与経路としては、例えば、液剤、ローション剤、クリーム剤の脱毛領域への塗布または噴霧、あるいは、液剤の皮下注射、固形剤、液剤の経口投与を挙げることができる。薬剤を含有する貼付剤を調製して皮膚に適用してもよい。

【0039】
スクリーニング方法
本発明の実施形態の一つは、脱毛の抑制もしくは改善、白毛化の抑制もしくは改善、および/または毛包のミニチュア化の抑制に有効な物質をスクリーニングするための方法に関する。このようなスクリーニング方法は、以下の工程i~iiiを含みうる:
i)in vitroで好中球エラスターゼと試験物質とを接触させる工程、
ii)好中球エラスターゼの活性を測定する工程、および
iii)該試験物質が好中球エラスターゼの活性を低下させるか否かを決定する工程。

【0040】
好中球エラスターゼ活性の測定は、当業者に公知の任意の方法を用いて行うことができる。上記のスクリーニング方法によって同定された物質は、本発明に係る、脱毛の抑制もしくは改善、白毛化の抑制もしくは改善、および/または毛包のミニチュア化の抑制に用いるための組成物の成分として有用である。また、本発明に係る、哺乳動物における脱毛の抑制もしくは改善、白毛化の抑制もしくは改善、および/または毛包のミニチュア化の抑制のための方法において、該哺乳動物に投与する物質としても有用である。

【0041】
脱毛促進方法
本発明の実施形態の一つは、好中球エラスターゼの活性を増強する工程を含む、脱毛を促進する方法に関する。このような方法は、好中球エラスターゼの活性を増強する組成物または好中球エラスターゼ自体(核酸もしくはタンパク質)を投与する工程を含みうる。さらに、本発明の別の実施形態の一つとしては、好中球エラスターゼの発現または活性を増強する物質を含む、脱毛を促進する組成物も含まれる。

【0042】
毛が次第に細くなっていく脱毛症の治療/予防用組成物および治療/予防方法
男性型脱毛症、女性型脱毛症は、老人性の脱毛症と比較してよりパターン性の強い脱毛症で、比較的若齢より見られる。しかし、次第に加齢に伴ってびまん性(diffuse)となり、老人性脱毛症との区別がつきにくい、あるいは併発する例が多くみられるようになることが知られている。典型的な老人性脱毛症のみならず、男性型脱毛症、女性型脱毛症、円形脱毛症のいずれも慢性期に至ると残存する毛も次第に細くなり脱毛が顕著になるなど、毛包がミニチュア化した際に見られる毛髪変化を示すようになる。これらは原因や誘因は様々であっても、毛包のミニチュア化という毛包の幹細胞の枯渇に基づく毛包変化を反映するものと推察される。そのため、いずれの治療においても根本的な原因に対する治療法に加えて、慢性化傾向のある症例においては、それぞれの脱毛症に対応する薬剤に加えて毛包のミニチュア化自体を抑制する剤の併用が有効であると考えられる。たとえば男性型脱毛症においてフィナステリドの内服などによってDHCの産生を抑制することによって男性ホルモン依存性の脱毛のみを抑制しても、反応が不十分な症例が存在する。これらの症例においては本発明に基づく対策が有効になると考えられる。

【0043】
本発明の実施形態の一つは、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症の治療または予防に用いるための医薬組成物であって、毛周期に伴うDNA損傷の修復を促進する剤、DNA損傷を抑制する剤、XVII型コラーゲンタンパク質もしくはそれをコードする核酸、またはXVII型コラーゲンを安定化する剤もしくは安定的に発現させる剤を含有することを特徴とする、医薬組成物に関する。別の言い方をすれば、本発明の実施形態の一つは、医薬の製造における、毛周期に伴うDNA損傷の修復を促進する剤、DNA損傷を抑制する剤、XVII型コラーゲンタンパク質もしくはそれをコードする核酸、またはXVII型コラーゲンを安定化する剤もしくは安定的に発現させる剤の使用に関する。上記のように、発明者らは、加齢や、毛周期の進行、X線照射などによるDNA損傷によって誘導される好中球エラスターゼ(ELANE)やその他のCOL17A1の分解酵素によってCOL17A1が不足すると、毛包幹細胞が、そのニッチにおいて幹細胞性を失って表皮分化を引き起こし、角化細胞に終末分化して、皮膚表面から放出されることで、段階的な毛包のミニチュア化や脱毛が引き起こされることを見出した。よって、当業者には、DNA損傷修復促進剤、DNA損傷を抑制する剤、XVII型コラーゲンタンパク質やそれをコードする核酸、あるいはその発現を誘導または安定化する剤や核酸を用いて、毛包幹細胞におけるXVII型コラーゲンの量を安定化もしくは増加させることで、老人性脱毛症または男性型脱毛症などの脱毛症の治療または予防を行うことが可能なことが理解される。なお、先行技術における以前の報告は、COL17A1の先天性欠損に対してCOL17A1を補うと正常化した、という内容であり、加齢による脱毛とXVII型コラーゲンとの関係は全く知られていなかった。段階的な毛包のミニチュア化は、男性型脱毛症の特徴であると考えられてきたが、加齢によって進行することが確認されたため、DNA損傷を修復する機能を促進したり、DNA損傷を抑制したり、XVII型コラーゲンの発現を回復または安定化させたり、XVII型コラーゲンを発現する細胞を増やすことによって、男性型脱毛症や女性型脱毛症の症例においても加齢による進行を抑制または改善しうると考えられる。よって、本発明の実施形態の一つは、毛髪が細くなる(毛包がミニチュア化する)過程を経る脱毛症(老人性脱毛症、男性型脱毛症、および女性型脱毛症など)の治療または予防に用いるための医薬組成物であって、毛包幹細胞や角化細胞などの細胞においてDNA損傷を修復する機能を促進したり、DNA損傷を抑制したり、XVII型コラーゲン(COL17A1)の発現を上昇させたり、発現する細胞を増やす化合物または核酸を含有することを特徴とする医薬組成物、あるいは、毛髪が細くなる(毛包がミニチュア化する)過程を経る脱毛症(老人性脱毛症、男性型脱毛症、および女性型脱毛症など)の治療または予防のための方法であって、(i)毛包幹細胞や角化細胞などの細胞におけるXVII型コラーゲンの発現を上昇させたり安定化させる工程、(ii)XVII型コラーゲンを発現する細胞を増やす工程、または(iii)毛包幹細胞や角化細胞などの細胞におけるDNA損傷の修復を促進する若しくはDNA損傷を抑制する工程を含む方法、にも関する。

【0044】
また、本発明の実施形態の一つは、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症の治療または予防のための方法であって、対象にXVII型コラーゲンタンパク質またはそれをコードする核酸を投与する工程を含む、方法に関する。この治療/予防方法における対象は、哺乳動物であり、典型的にはヒトである。なお、XVII型コラーゲンの遺伝子配列は公知であり、1または複数の変異を導入したXVII型コラーゲンバリアントを使用してもよい。このようなバリアントの作製方法は、当業者には公知である。

【0045】
さらに、本発明の実施形態の一つは、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症老人性脱毛症または男性型脱毛症の治療または予防のための方法であって、対象にDNA損傷修復を促進する剤もしくはDNA損傷を抑制する剤を投与する工程を含む、方法に関する。なお、本明細書に記載の組成物または方法において使用するDNA損傷修復を促進する剤としては、例えば、スギノリ(Gigartina tenella)抽出物(特開2006-273761を参照)、またはキナ抽出物(WO2013/031003を参照)などを用いることができる。DNA損傷修復を促進する剤のDNA損傷修復能は、宿主細胞回復法(Host-cell reactivation assay)などの当業者に公知の任意の方法を用いて評価することができる。本明細書に記載の組成物または方法において使用するDNA損傷を抑制する剤としては、例えば、サルカンドラ グラブラ(Sarcandra glabra)抽出物、サラカ ディベス(Saraca dives)抽出物、クドラニア プベセンス(Cudrania pubescens)抽出物、タキソディウム ディスティチュム(Taxodium distichum)抽出物、ルビジア オクトバリス(Ludwigia octovalis)抽出物、ドイチャンタス トンキネンシス(Deutzianthus tonkinensis)抽出物、アルコルネア トレビオイデス(Alchornea trewioides)抽出物、ベルケミア ポリフィラ(Berchemia polyphylla)抽出物、グロチディオン プベルム(Glochidion puberum)抽出物、ササフラス ツム(Sassafras tzumu)抽出物(特開2008-247854を参照)、キナ抽出物、コンフリー抽出物、コーヒーノキ抽出物、カッコン抽出物、ゴボウ抽出物、オウレン抽出物、クララ抽出物、クロレラ抽出物、ラベンダー抽出物、メマツヨイグサ抽出物、バラ抽出物、アマチャヅル抽出物、エンメイソウ抽出物、オドリコソウ抽出物、カロット抽出物、シナノキ抽出物、ジユ抽出物、ハス抽出物、茶抽出物、またはオクラ抽出物(WO2013/031003を参照)などを用いることができる。DNA損傷を抑制する剤のDNA損傷抑制能は、コメットアッセイ(COMET assay)やDNA損傷応答にて誘導されるDNAダメージフォーカスを検出するアッセイなどの当業者に公知の任意の方法を用いて評価することができる。

【0046】
さらに、本発明の実施形態の一つは、毛が次第に細くなっていく脱毛症、特に、老人性脱毛症、男性型脱毛症、びまん性脱毛症、女性型脱毛症、薬物脱毛症、および瘢痕性脱毛症から成る群より選択されるいずれかの脱毛症の治療もしくは予防、ならびに/または白毛化の抑制に有用な化合物のスクリーニング方法に関する。このようなスクリーニング方法は、(i)in vitroで毛包幹細胞または角化細胞に化合物を接触させる工程、(ii)毛包幹細胞におけるXVII型コラーゲンの発現量の変化を調べる工程、および(iii)毛包幹細胞または角化細胞におけるXVII型コラーゲンの発現量を増加させたり安定化させる化合物を同定する工程、を含みうる。XVII型コラーゲンの発現量の測定は、当業者に公知の任意の方法を用いて行うことができる。上記のスクリーニング方法によって同定された物質は、本発明に係る、老人性脱毛症や男性型脱毛症などの脱毛症の治療または予防に用いるための医薬組成物の成分として有用である。また、本発明に係る、老人性脱毛症や男性型脱毛症などの脱毛症の治療または予防のための方法において、対象に投与する物質としても有用である。

【0047】
また、上記のスクリーニング方法は、(i)in vitroで毛包幹細胞または角化細胞に化合物を接触させる工程、(ii)毛包幹細胞または角化細胞におけるDNA損傷修復能の変化を調べる工程、および(iii)毛包幹細胞または角化細胞におけるDNA損傷修復能を増加させる化合物を同定する工程、を含むものでも良い。DNA損傷修復能の変化の評価は、例えば宿主細胞回復法(Host-cell reactivation assay)などの、当業者に公知の任意の方法を用いて行うことができる。このようなスクリーニング方法によって同定された物質は、本発明に係る、老人性脱毛症や男性型脱毛症などの脱毛症の治療または予防に用いるための医薬組成物の成分として有用である。また、本発明に係る、老人性脱毛症や男性型脱毛症などの脱毛症の治療または予防のための方法において、対象に投与する物質としても有用である。

【0048】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【実施例】
【0049】
実施例1:加齢による薄毛や脱毛に先行して起こる毛包幹細胞シグニチャーの欠失および毛包ミニチュア化の解析
図1A~1Gは、C57BL/6野生型マウスにおける加齢による脱毛と毛包のミニチュア化について示している。図1Aは、若齢マウス(8週齢)と加齢マウス(28ヶ月齢)の代表的な写真である。図1Bは、加齢マウス(18ヶ月齢以降)の背中の首元と体幹において、脱毛が特徴的に見られることを示している。経時的に観察すると、その脱毛は、上下左右に拡散しながら広がる様子が見られた。図1Cは、ヘマトキシリン・エオジン染色による若齢マウス(8週齢)と中年齢(12ヶ月齢)と加齢マウス(24、34ヶ月齢)の背中の皮膚の代表的な組織像を示している。矢印は、ミニチュア化毛包を示している。図1Dは、1mmあたりの毛包の数を示すグラフである。図1Eは、休止期における毛包の模式図である。HSは毛幹(毛根)、IFは毛包漏斗部、SGは皮脂腺、JZは毛包接合部、Bgは毛隆起(バルジ)、sBg/HGは毛芽(サブバルジ)、DPは毛乳頭をそれぞれ示している。図1Fは、毛包老化の経時的ステージングを示す写真であり、代表的な違ったステージの毛包の組織像を示している。ステージIは正常な構造と大きさの毛包、ステージIIは毛乳頭を含むミニチュア(短縮)化した毛包、ステージIIIは毛乳頭を欠失したミニチュア化毛包、ステージIVは毛幹やバルジを欠失し、皮脂腺を残したミニチュア化毛包、ステージVは毛包を完全に欠失して、稀に繊維化のみ残る状態である。図1Gは1mmあたりのそれぞれの毛包ステージの数を示すグラフである。それぞれの群で、多数のサンプルから100毛包以上を数えた。図1H~1Kは、加齢に伴う毛包幹細胞マーカーの減少を示している。図1Hは、毛包のある領域(H)と毛包のない領域(HL)の8週齢と24ヶ月齢の毛包幹細胞マーカーCD34による免疫染色像を示している。図1Iは8週齢と16ヶ月齢と24~26ヶ月齢の毛包幹細胞マーカーCOL17A1、LHX2、SOX9による免疫染色像を示している。図1Jは8週齢と16ヶ月齢と24~26ヶ月齢の毛包幹細胞マーカーCOL17A1、K15、S100A6による免疫染色の蛍光強度の定量的解析について示している。それぞれのグループ(N=3匹マウス)でステージI~IIのみを調べた。図1Kは、8週齢と16ヶ月齢と24ヶ月齢の毛包幹細胞マーカーLHX2、SOX9による免疫染色による核内陽性細胞数の定量的解析について示している。図1Lは8週齢と28ヶ月齢のFACSによる毛包幹細胞分画(CD34強陽性、ITGA6強陽性、SCA-I陰性)の解析について示している。28ヶ月齢でも、毛包のある領域(H)では、毛包幹細胞分画は減少しないが、毛包のない領域(HL)では減少していた。
【実施例】
【0050】
実施例2:加齢した毛包幹細胞の表皮分化が、段階的な毛包のエイジングの根底にある
図2Aは、毛包幹細胞由来細胞の遺伝的運命解析の実験デザインについて示している。毛包幹細胞にGFPもしくはlacZ遺伝子を発現させるために、7週齢のK15-crePR;CAG-CAT-EGFPもしくは、K15-crePR;ROSA26RマウスにRu486(ミネプリストン)を塗布した。それから、12週齢(若齢時)もしくは、16ヶ月齢(加齢時)で毛周期誘導のために抜毛し、3日後に皮膚組織を回収した。図2B~2Eは、毛周期誘導後のK15-crePR;CAG-CAT-EGFPマウスのEGFP発現とケラチン1(図2B)とケラチン10(図2C)、LRIG1(図2D)、インボルクリン(図2E)による免疫染色像を示している。ケラチン1、ケラチン10、LRIG1、インボルクリンが、16ヶ月齢の毛周期誘導後に、バルジ(Bg)や毛包接合部(JZ)の毛包幹細胞由来細胞内で誘導された(矢印)。加えて、それらケラチン1陽性細胞は、表皮に現れていた(図2B)。図2Fは、同様の実験をK15-crePR;ROSA26Rマウスを使って行った結果を示している。K1とlacZの免疫染色が示すところによると、lacZ陽性の毛包幹細胞由来細胞は、ステージI~IIIのバルジ細胞(Bg)、ステージ-III~IVの毛包接合部細胞(JZ)、および、ステージVの表皮の細胞(Epi)で出現する。図2Gは、毛包幹細胞の運命の模式図である。若い毛包幹細胞は、毛包の細胞に分化するが、加齢した毛包幹細胞は、表皮分化を引き起こし、その結果、毛包のミニチュア化に繋がる。図2Hは、毛周期誘導後の若齢(8週齢)と加齢(25~26ヶ月齢)の毛包幹細胞のマイクロアレイで比較して2倍以上変化した遺伝子のオントロジー解析について示している。加齢した毛包幹細胞内において“表皮分化”のオントロジーが優位に検出された。図2Iは、毛周期誘導後、若齢と加齢の毛包幹細胞のマイクロアレイ比較での“上皮分化”の遺伝子セットによる抽出遺伝子比較(GSEA)解析を示している。加齢では“上皮分化”の遺伝子セットの発現が有意に増加していた。図2Jは8週齢と25~26ヶ月齢の毛包幹細胞分画のK1、c-Myc、Notch1、Fbxw7の遺伝子の定量的RT-PCR解析結果を示している。それぞれの群はN=3~5で、2群のサンプルを用いた。
【実施例】
【0051】
実施例3:加齢した毛包幹細胞のDNA損傷の蓄積と持続的なDNA損傷応答反応
図3Aおよび3Bは、若齢(8週齢)と加齢(24~25ヶ月齢)の毛包幹細胞のマイクロアレイの比較において2倍以上増加/減少した遺伝子における、DNA損傷応答/DNA損傷修復に関するオントロジー解析について示している。若齢では、DNA損傷修復能力が高く、一方、加齢では、DNA損傷応答反応が高い。図3Cは、若齢と加齢の毛包幹細胞のマイクロアレイ比較での“DNA修復”の遺伝子セットによる抽出遺伝子比較(GSEA)解析を示している。若齢では、“DNA修復”の遺伝子セットの発現が高い。図3D~3Eは、若齢(8週齢)と加齢(24ヶ月齢)の毛包幹細胞のDNA損傷検出(コメット)解析の結果である。図3Dは、サイバーグリーン染色による代表的なDNA損傷断片(テイルモーメント)像である。図3Eは、若齢(8週齢)と加齢(24ヶ月齢)の毛包幹細胞のテイルモーメントの頻度のグラフである。コメットアッセイの結果は、加齢に伴って毛包幹細胞にDNA損傷が蓄積することを示している。図3Fは、若齢(8週齢)と加齢(24ヶ月齢)のバルジおよびサブバルジのDNA損傷応答反応マーカーγH2AXによる代表的な染色像である。図3Gは、バルジやサブバルジや毛母や真皮や表皮のγH2AXフォーサイの核内集積を示すグラフである。それぞれの年齢群で、N=2~4匹のマウスを用いた。8週齢では、γH2AXフォーサイが、どの細胞集団でも観察されなかったが、17ヶ月齢以降では、バルジやサブバルジにおいて有意に上昇していた。
【実施例】
【0052】
実施例4:DNA損傷応答反応により誘導される毛包幹細胞(HFSC)のCOL17A1の分解が、表皮分化を通したダイナミックな毛包のミニチュア化を引き起こす
図4A~4Cは、加齢やDNA損傷応答反応により誘導されるELANEによるCOL17A1の分解を示している。図4Aは、若齢(8週齢)、中年齢(12~16ヶ月齢)、加齢(27ヶ月齢)マウスの毛包バルジのCOL17A1やELANEの蛍光染色像を示している。それぞれのグループで、N=3匹のマウスを用いた。この解析は、加齢したHFSCではELANEが異所的に誘導されているが、若いHFSCでは検知されないことを示している。ELANE以外のプロテアーゼとしては、ADAM(a disintegrin and metalloprotease)やMMP(matrix metalloproteinase)が挙げられる。よって、これらのプロテアーゼに対する阻害剤は本発明において有効成分として用いられうる。図4Bは、8週齢、12~16ヶ月齢、27ヶ月齢マウスのバルジや表皮のELANEの蛍光強度の定量的解析を示している。免疫組織学的解析から、ELANEが16ヶ月齢の毛包の約40%、24ヶ月齢の毛包の約60%のバルジ領域において顕著に異常に誘導されていることが示された。図4Cは10Gy放射線照射、12時間後、1日後、7日後の毛包バルジにおけるCOL17A1とELANEおよび、SOX9とケラチン15の蛍光染色像を示している。“7d”は、放射線照射7日後で、ELANEを誘導しながら、COL17A1や他の幹細胞マーカーの発現を減少させている典型的な毛包を示す。“7d R”は、放射線照射7日後でも、ELANEを発現せず、元の幹細胞マーカーの発現を維持している典型的な毛包を示す。図4Dは、初代培養ケラチノサイトにおけるウエスタンブロットによる解析について示している。ELANEで処置された初代培養ケラチノサイトは、180kDのCOL17A1とその120kDの外部ドメインの脱落形態の両方がin vitroでELANEにより速やかに分解されることを示した。COL17A1は、ELANEやその阻害因子A1ATを加えて2時間後に容量依存性に分解されていた。その分解はプロテアーゼ阻害剤のα1アンチトリプシン(A1AT)によって完全に抑制され、これは、DNAダメージに反応してHFSCで誘導されるELANEによって、COL17A1が効率的にタンパク質分解されることを強く示唆している。図4Eは、若齢(8週齢)、加齢(25ヶ月齢)マウスのCOL17A1陽性の毛包バルジにおける53BP1やγH2AXフォーサイの蛍光免疫染色像である。フォーサイは、COL17A1弱陽性の領域に見られた。図4Fは8週齢、25ヶ月齢マウスのバルジ領域におけるCOL17A1弱陽性とCOL17A1陽性の領域の53BP1フォーサイ数のグラフである。53BP1フォーサイは、25ヶ月齢のバルジ領域のCOL17A1弱陽性のエリアに有意に観察された。図4G~4Mは、毛包幹細胞特異的COL17A1欠損(COL17A1cKO)マウスの解析結果を示している。図4Gは8.5ヶ月齢の対照とCOL17A1 cKOマウスの背中の毛並みの写真である。繰り返しの抜毛により対照には見られない白髪や脱毛が、COL17A1 cKOマウスにおいて見られた。図4Hは、対照とCOL17A1 cKOマウスの組織像である。ミニチュア化毛包がCOL17A1 cKOマウスにおいて見られた(矢印)。図4Iは1mmあたりの毛包の数を示すグラフである。図4Jは、生理的老化に似た形態を示すCOL17A1 cKOマウスに見られる代表的なミニチュア化毛包のステージングを示している。図4Kは1mmあたりのそれぞれの毛包ステージ数を示すグラフである。COL17A1 cKOマウスでは、若週齢から毛包のミニチュア化が見られた。図4L~4Mは、COL17A1cKO欠損によるc-MYCやNOTCH1の発現上昇を伴う表皮分化の誘導について示している。図4Lは、毛周期誘導後の12週齢の対照とCOL17A1 cKOマウスにおけるc-MYCとLHX2および、NOTCH1とケラチン1の免疫染色像を示している。c-MYC発現は、COL17A1 cKOマウスのLHX2陽性バルジ領域に異所性に誘導された。NOTCH1陽性ケラチン1陽性細胞がCOL17A1 cKOマウスのバルジ領域に観察された。図4Mは、若齢と加齢マウスとの比較で2倍以上増加した遺伝子と対照とCOL17a1 cKOマウスとの比較で2倍以上増加した遺伝子の中で重なる遺伝子のベン図である。共通遺伝子の遺伝子オントロジー解析を行うと“表皮分化”や“角化”のオントロジーが、上位6位の中に検出された。図4Nは、LacZによりラベルしたCOL17A1欠損の毛包幹細胞の遺伝的運命解析を示している。COL17A1 cKOでは、ケラチン1陽性、LacZ陽性の毛包幹細胞由来細胞が毛包接合部や表皮において異所性に出現した。
【実施例】
【0053】
実施例5:毛包幹細胞におけるCOL17A1の強制発現は、毛包の老化や枯渇に対して保護的に機能する
図5Aは17ヶ月、24ヶ月、32ヶ月齢の野生型マウスおよび、ヒト型COL17A1トランスジェニック(hCOL17A1tg)マウスの毛並みの写真を示している。野生型で見られる脱毛が、hCOL17A1tgマウスでは軽減された。図5Bは24~25ヶ月齢の野生型マウスおよびhCOL17A1tgマウスの組織像を示している。矢印は、ステージIII~IVのミニチュア化毛包を示す。矢頭は、ステージIの毛包を示す。図5Cは1mmあたりの24~25ヶ月齢の野生型マウスおよびhCOL17A1tgマウスにおける毛包の数を示すグラフである。図5Dは1mmあたりの24~25ヶ月齢の野生型マウスおよびhCOL17A1tgマウスにおけるそれぞれの毛包のステージ数を示すグラフである。図5Eは24~25ヶ月齢の野生型マウスおよびhCOL17A1tgマウスにおける毛包幹細胞マーカー、ケラチン15とLHX2による染色像を示している。hCOL17A1tgマウスにおいて、野生型マウスで見られた毛包幹細胞マーカー発現減少が軽減された。図5Fは、バルジにおける免疫染色によるLHX2陽性の核の数の定量的解析について示している。hCOL17A1tgマウスでは、加齢によるLHX2陽性細胞数の減少が軽減されていた。
【実施例】
【0054】
実施例6:マウスで見られたCOL17A1の発現減少を伴う毛包ミニチュア化が、ヒトの頭皮においても見られた
図6Aは、加齢(59,70歳)、中年齢(40歳)の女性の頭皮のヘマトキシリン・エオジン染色による組織像を示している。矢印は、正常な毛包、矢頭は、ミニチュア化毛包を示す。図6Bは、ミニチュア化毛包の比率を示すグラフである。ミニチュア化毛包は、加齢群(55~70歳)で有意に増加していた。図6Cは、免疫染色による若齢と加齢の毛包幹細胞マーカーの発現解析を示している。33歳と68歳の女性の頭皮の正常毛包あるいは、ミニチュア化毛包のバルジ領域におけるヒトCOL17A1およびケラチン15の免疫染色像である。図6Dは、ヒトCOL17A1の蛍光強度の定量的解析を示すグラフである。ヒトCOL17A1の発現は、加齢したミニチュア化毛包で有意に減少していた。図6Eは、ケラチン15陽性のバルジ領域のサイズの解析について示している。加齢(60~70歳)したミニチュア化毛包では、バルジのサイズが減少していた。図6Fは、それぞれの年齢でのヒト頭皮におけるケラチン15陽性の表皮やバルジにおけるγH2AXフォーサイ形成を示している。図6GはγH2AXフォーサイの蛍光強度の定量的解析を示すグラフである。γH2AXフォーサイの蛍光強度の上昇は、40~70歳のバルジ領域で観察されたが、表皮の領域では観察されなかった。図6Hは、ヒトのバルジ領域における異所性の表皮分化を示している。ケラチン1およびケラチン15による代表的なヒトの毛包の免疫染色像が示されている。ケラチン1発現は、59歳のバルジ領域で誘導されていた。
【実施例】
【0055】
実施例7:毛包老化のメカニズム
図7Aおよび7Bは、毛包老化の模式図を示している。毛包幹細胞プールは、加齢において休止期状態を維持する(ステージIa)。DNA損傷応答を示す毛包幹細胞は、ELANEプロテアーゼの発現誘導を介して、COL17A1の分解を引き起こす(ステージIb)。それらのCOl17A1の発現が弱陽性の毛包幹細胞は、そのニッチにおいて、幹細胞性を失い、表皮分化を引き起こす。それらの「エイジング」した毛包幹細胞は、毛周期とともに、毛包接合部を通って、表皮に向かって移動する。それらは、角化細胞に終末分化して、皮膚表面から放出されることで、段階的な毛包のミニチュア化や薄毛や脱毛を引き起こす。
【実施例】
【0056】
実施例8:アポシニンによるCOL17A1発現誘導
10%FBSを含むD-MEM培地に6ウェルプレートで1ウェル当たり1x10個のHaCaT細胞(ヒト表皮角化細胞株)を播種し、アポシニンを1~60μMになるように添加した。48時間培養後、1次抗体としてAnti-Col17A1抗体を用い、ウエスタンブロッティングを行った。インターナルコントロールとしてAnti-GAPDH抗体を用い、Col17A1の180KDaのバンドとインターナルコントロールのGAPDHのバンドの濃さをルミノーイメージアナライザーLAS-3000を用い、定量した。結果として、アポシニンの増加に伴いCol17A1の増大が観察され、アポシニンにCol17A1発現を増大させる作用があることがわかった(図8)。
【実施例】
【0057】
実施例9:アスコルビン酸によるCOL17A1発現誘導
10%FBSを含むD-MEM培地に6ウェルプレートで1ウェル当たり1x10個のHaCaT細胞を播種し、アスコルビン酸(和光純薬)を0.3~60μg/mLになるように添加した。48時間培養後、1次抗体としてAnti-Col17A1抗体を用い、ウエスタンブロッティングを行った。インターナルコントロールとしてAnti-β-tubulin抗体を用い、Col17A1の180KDaのバンドとインターナルコントロールのβ-tubulinのバンドの濃さをルミノーイメージアナライザーLAS-3000を用い、定量した。結果として、アスコルビン酸の増加に伴いCol17A1の増大が観察され、アスコルビン酸にCol17A1発現を増大させる作用があることがわかった(図9)。
【実施例】
【0058】
実施例10:MMP阻害剤MarimastatによるCOL17A1発現誘導
10%FBSを含むD-MEM培地に6ウェルプレートで1ウェル当たり1x10個のヒト表皮角化細胞を播種し、Marimastat(MMP阻害剤)を3μMになるように添加した。48時間間培養後、1次抗体としてAnti-Col17A1抗体を用い、ウエスタンブロッティングを行った。インターナルコントロールとしてAnti-β-tubulin抗体を用い、Col17A1の180KDaのバンドとインターナルコントロールのβ-tubulinのバンドの濃さをルミノーイメージアナライザーLAS-3000を用い、定量した。結果として、Marimastatの添加でCol17A1の増大が観察され、MarimastatにCol17A1発現を増大させる作用があることがわかった(図10)。
【実施例】
【0059】
実施例11:アポシニンの老齢マウスの増毛効果
アポシニン(A727200;Tront Research Chemicals)は、DMSOで20mMの濃度に調整し、マウス塗布溶液として、アポシニン200μM溶液(アポシニン20mM 1%、水49%、エタノール50%)を調製した。コントロール溶液としてDMSO(シグマアルドリッチ)1%、水49%、エタノール50%を調製した。27ヶ月齢5匹と26ヶ月齢1匹のC57BL/6NCrSIc雌マウスに麻酔処置を行った後、頸部背面のみを抜毛し、コントロール溶液処置群3匹にはコントロール溶液100μlを、アポシニン溶液処置群には、アポシニン200μM溶液を100μlずつ28日間塗布した。経過観察として、代表的な初日(1日)と最終日(28日)の写真画像を示す(図11)。28日目においてアポシニン投与群は、コントロール群と比較し顕著な育毛作用を示した。
【実施例】
【0060】
実施例12:老齢マウスでのアポシニンとミノキシジルの増毛効果の比較
アポシニン(A727200;Tront Research Chemicals)は、DMSOで20mMの濃度に調整し、マウス塗布溶液として、アポシニン200μM溶液(アポシニン20mM 1%、水49%、エタノール50%)を調製した。ミノキシジル溶液としてリアップX5プラス(R)(5g/100mL、大正製薬)を使用した。17ヶ月齢のC57BL/6NCrSIc雌マウス6匹をイソフルラン(ファイザー)吸入麻酔後、頸部背面のみを抜毛し、ミノキシジル処置群3匹にはミノキシジルを100μlずつ、アポシニン処置群には、アポシニン200μM溶液を100μlずつ28日間塗布した。経過観察として、代表的な初日(1日)と最終日(28日)の写真画像を示す(図12)。14日目においてアポシニン投与群は、ミノキシジル投与群と比較し顕著な育毛作用を示した。
【実施例】
【0061】
実施例13:放射照射マウスにおけるシベレスタット背部塗布試験
7週齢のC57BL/6NCrSlc雄マウスの背面下部を抜毛し、シベレスタット群マウスの背部に10mg/mLになるようにDMSOで溶解したシベレスタットを125μL(=1250μg)塗布した。コントロール群マウスの背部にはDMSO 125μLを塗布した。背部塗布後、両群のマウス(day0)の皮膚に対し、CABINET X-RAY SYSTEM(Faxitron X-ray corporation)を用いて5Gyの放射線の低電圧照射を行った。day4まで1日1回上記と同様に薬剤の背部塗布を行い(計5回)、その後週に1度経過観察を行った。結果として、投与開始後14週、28週において投与群において白毛化の抑制が見られた(図13)。また、投与群においてはコントロール群と比較して毛が早く生える傾向があった。
【実施例】
【0062】
実施例14:放射照射マウスにおけるシベレスタット皮内投与試験
7週齢のC57BL/6NCrSlc雄マウスの背面下部を抜毛し、シベレスタット群マウスの背部に5mg/mLになるようにDMSOで溶解したシベレスタットを200μL(=1000μg)皮内投与した。コントロール群マウスの背部には、DMSO 200μLを皮内投与した。皮内投与後、両群のマウス(day0)の皮膚に対し、CABINET X-RAY SYSTEM(Faxitron X-ray corporation)を用いて5Gyの放射線の低電圧照射を行った。day4まで1日1回上記と同様に薬剤の皮内投与を行い(計5回)、その後週に1度経過観察を行った。結果として、投与開始後14週、28週において投与群において白毛化の抑制が見られた(図14)。また、投与群においてはコントロール群と比較して毛がより多く生える傾向があった。
【実施例】
【0063】
本明細書には、本発明の好ましい実施態様を示してあるが、そのような実施態様が単に例示の目的で提供されていることは、当業者には明らかであり、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変形、変更、置換を加えることが可能であろう。本明細書に記載されている発明の様々な代替的実施形態が、本発明を実施する際に使用されうることが理解されるべきである。また、本明細書中において参照している特許および特許出願書類を含む、全ての刊行物に記載の内容は、その引用によって、本明細書中に明記された内容と同様に取り込まれていると解釈すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
発明者らは、マウスおよびヒトの加齢した毛包幹細胞でXVII型コラーゲン(Col17A1)の発現が減少していること、放射線照射によるCol17A1の分解によってマウスの毛包幹細胞におけるその発現が減少することを見出した。さらに、好中球エラスターゼ(ELANE)がCol17A1の分解に関与することを明らかにした。マウスの毛包および表皮の基底細胞にCOL17A1を強制発現すると、加齢による毛包幹細胞の変化を抑制して幹細胞が維持されるようになり、毛包や皮膚全体の変化が遅延することを確認した。以上のことから、毛包幹細胞が発現するCOL17A1は、加齢やX線照射に伴う毛包および皮膚の加齢変化を抑制していると考えられ、たとえば、好中球エラスターゼを用いてその分解を抑制することにより、皮膚および毛包のアンチエイジング、白毛化の抑制もしくは改善、脱毛の抑制もしくは改善、育毛に用いることが可能なことが、当業者には理解される。脱毛あるいは白毛化を抑制もしくは改善する薬は、既存薬が少なく、またその効果も十分ではないため、市場におけるニーズは高いと考えられる。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図1D】
3
【図1E】
4
【図1F】
5
【図1G】
6
【図1H】
7
【図1I】
8
【図1J】
9
【図1K】
10
【図1L】
11
【図2A】
12
【図2B】
13
【図2C】
14
【図2D】
15
【図2E】
16
【図2F】
17
【図2G】
18
【図2H】
19
【図2I】
20
【図2J】
21
【図3A】
22
【図3B】
23
【図3C】
24
【図3D】
25
【図3E】
26
【図3F】
27
【図3G】
28
【図4A】
29
【図4B】
30
【図4C】
31
【図4D】
32
【図4E】
33
【図4F】
34
【図4G】
35
【図4H】
36
【図4I】
37
【図4J】
38
【図4K】
39
【図4L】
40
【図4M】
41
【図4N】
42
【図5A】
43
【図5B】
44
【図5C】
45
【図5D】
46
【図5E】
47
【図5F】
48
【図6A】
49
【図6B】
50
【図6C】
51
【図6D】
52
【図6E】
53
【図6F】
54
【図6G】
55
【図6H】
56
【図7A】
57
【図7B】
58
【図8】
59
【図9】
60
【図10】
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【図11】
62
【図12】
63
【図13】
64
【図14】
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