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明細書 :エレクトロクロミック表示素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年12月20日(2018.12.20)
発明の名称または考案の名称 エレクトロクロミック表示素子
国際特許分類 G02F   1/15        (2006.01)
G02F   1/155       (2006.01)
G09F   9/30        (2006.01)
FI G02F 1/15 508
G02F 1/155
G09F 9/30 380
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 14
出願番号 特願2017-563751 (P2017-563751)
国際出願番号 PCT/JP2016/089208
国際公開番号 WO2017/130636
国際出願日 平成28年12月29日(2016.12.29)
国際公開日 平成29年8月3日(2017.8.3)
優先権出願番号 2016016790
優先日 平成28年1月31日(2016.1.31)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】小林 範久
【氏名】中村 一希
【氏名】小野寺 涼
出願人 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
審査請求 未請求
テーマコード 2K101
5C094
Fターム 2K101AA22
2K101DA01
2K101DB04
2K101DB13
2K101DB35
2K101DC04
2K101DC05
2K101DC06
2K101DC37
2K101DC63
2K101EC14
2K101ED01
2K101ED11
2K101EE02
2K101EG52
2K101EJ13
2K101EJ14
5C094AA60
5C094BA52
5C094EA05
5C094FB04
5C094FB12
5C094JA08
要約 本発明は、良好なメモリー性を備えるエレクトロクロミック表示素子を提供することを目的とする。
本発明にかかるエレクトロクロミック表示素子(1)は、それぞれ電極(21,31)が形成された第一の基板(2)及び第二の基板(3)と、第一の基板(2)と第二の基板(3)の間に、銀を含む第一の電解質層(4)、陰イオン交換膜(5)、及びメディエータを含む第二の電解質層(6)を備えていることを特徴とする。この場合において、第一の基板(2)上に形成される電極(21)は、触針式による表面粗さが50nm以上400nm以下の範囲にある凹凸のある透明電極であることが好ましく、また、凹凸のある透明電極は透明導電性粒子修飾電極であることが好ましく、さらには、メディエータは、銅(II)イオンを含むことが好ましい。
特許請求の範囲 【請求項1】
それぞれ電極が形成された第一の基板及び第二の基板と、
前記第一の基板と前記第二の基板の間に、銀を含む第一の電解質層、陰イオン交換膜、及びメディエータを含む第二の電解質層を備えたエレクトロクロミック表示素子。
【請求項2】
前記第一の基板上に形成される前記電極は、触針式による表面粗さが50nm以上400nm以下の範囲にある凹凸のある透明電極である請求項1記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項3】
前記凹凸のある透明電極は透明導電性粒子修飾電極である請求項2記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項4】
前記メディエータは、銅(II)イオンを含む、請求項1記載のエレクトロクロミック表示素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
透過する光量を調節する素子は、例えば表示装置、調光フィルタ等として現在市販されている。
【0003】
テレビやパソコンモニタ、携帯電話ディスプレイを始めとした情報を表示するための装置(表示装置)は、近年の情報化社会において欠かすことのできない装置である。また、外部から入射する光量を調節する調光フィルタ、防眩ミラー等は、屋内、車、航空機等の空間において、外部からの光を調節することができるためカーテン等と同様の効果を有し、生活において非常に役立つものである。
【0004】
上記のうち、表示装置の表示方式は、一般に反射型、透過型、発光型の3つに大きく分けることができる。表示装置を製造する者は、表示装置の製造において、表示装置の置かれる環境を想定して好ましい表示方式を選択するのが一般的である。
【0005】
ところで近年の表示装置の小型化、薄膜化により表示装置の携帯性が向上し、様々な明るさの環境に携帯移動して表示装置を使用する機会が非常に多くなってきており、ユーザーのニーズも多様化してきている。表示装置のモードとして、例えば、明暗の表示だけでなく、表示画面を鏡面状態にするニーズ等も求められてきている。この点は、調光フィルタ等においても同様である。
【0006】
公知の技術として、例えば、下記特許文献1には、鏡面状態を有するエレクトロクロミック表示素子が開示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2015-148825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の表示装置では、鏡面状態を維持する場合において課題がある。具体的には、一対の電圧間に印加される電圧を解除すると、鏡面状態が早期に解消されてしまうといった課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、良好なメモリー性を備えるエレクトロクロミック表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一観点に係るエレクトロクロミック表示素子は、それぞれ電極が形成された第一の基板及び第二の基板と、第一の基板と第二の基板の間に、銀を含む第一の電解質層、陰イオン交換膜、及びメディエータを含む第二の電解質層を備えたものである。
【0011】
また、本観点において、第一の基板上に形成される電極は、触針式による表面粗さが50nm以上400nm以下の範囲にある凹凸のある透明電極であることが好ましい。
【0012】
また、本観点において、凹凸のある透明電極は透明導電性粒子修飾電極であることが好ましい。
【0013】
また、本観点において、メディエータは、銅(II)イオンを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上、本発明によって、良好なメモリー性を備えるエレクトロクロミック表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態にかかる表示素子の断面概略を示す図である。
【図2】実施形態にかかる表示素子の断面概略を示す図である。
【図3】実施例にかかる表示素子の透過率測定の結果を示す図である。
【図4】実施例にかかる表示素子のCV測定の結果を示す図である。
【図5】実施例にかかる表示素子の透過率測定の結果を示す図である。
【図6】実施例にかかる表示素子の透過率測定の結果を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例における具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係るエレクトロクロミック表示素子(以下「本素子」という。)1の断面の概略を示す図である。本図で示すように、本素子1は、それぞれ電極21、31が形成された第一の基板2及び第二の基板3と、第一の基板2と第二の基板3の間に、銀を含む第一の電解質層4、陰イオン交換膜5、及びメディエータを含む第二の電解質層6を備えたものである。
【0018】
本素子1において、第一の基板2及び第二の基板3は、上記の記載から明らかなように、第一の電解質層4、陰イオン交換膜5、及び第二の電解質層6を挟持するための部材であり、第一の電解質層4、陰イオン交換膜5、及び第二の電解質層6の光の透過状態を制御することで表示を行わせることができるよう、少なくとも一方が透明な部材であればよい。ただし、双方透明な部材であれば、透過型の表示装置を実現することができる。そのため、本実施形態では説明のため双方透明な場合で説明する。なお、基板の材料としては、ある程度の硬さ、化学的安定性を有し、安定的に材料層を保持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、ガラス、プラスチック、金属、半導体等を採用することができ、透明な基板として用いる場合はガラスやプラスチックを用いることができる。
【0019】
また本実施形態において、第一の基板2、第二の基板3のそれぞれには、対向する面側(内側)に第一の電極21、第二の電極31がそれぞれ形成されている。この電極は第一の基板2と第二の基板3によって挟持される電解質層に電圧を印加するために用いられるものである。第一の電極及び第二の材料としては、好適な導電性を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば基板の材質が透明な基板である場合はITO、IZO、SnO、ZnO等の少なくともいずれかを含む透明電極であることが好ましい。
【0020】
また本実施形態において、第一の電極21、第二の電極31のいずれも、表面が平滑な電極であってもよいが、第一の電極21は、比較的大きな凹凸が付された透明導電性の粒子修飾電極であることも好ましい。第一の電極21を比較的大きな凹凸が付された透明導電性の粒子修飾電極とすることで、銀が析出した場合に、黒状態を達成することができる。なお、第一の電極21が平滑な電極である場合は、鏡状態を達成することができる。
【0021】
ここで粒子修飾電極とは、粒子が電極表面に固定され比較的大きな凹凸、ナノオーダーの凹凸が形成された電極をいう。粒子修飾電極の凹凸の大きさとしては限定されるわけではないが、測定した領域における凹凸の高低差(最大高さと最小高さの差)が50nm以上500nm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは100nm以上500nm以下の範囲である。これは、例えば、粒径が50nm以上500nm以下、より好ましくは100nm以上500nm以下の粒子を基板に配置、固定したもので実現することができる。粒子の材料としては限定されるわけではないが、ITO、ATO、FTO、AZO、IZO、酸化チタン、NiO、SnO及びZnO等を例示することができ、ITO、ATO、IZOの粒子、特にITOであることは導電性を確実にすることができる観点からより好ましい。また一方で、平滑な電極は、上記ほど凹凸のない、凹凸があってもナノオーダー以下である電極であって、限定されるわけではないが、高低差が20nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である。平滑な電極の材料としては、上記粒子修飾電極と同様の材料を採用することができる。
【0022】
また、本実施形態において、粒子修飾電極の表面粗さとしては、更に、触針式の測定による表面粗さ(Ra)が、100nm以上400nm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、50nm以上400nm以下の範囲である。この範囲とすることで後に詳述する黒状態を実現することができる。一方、平滑な電極の場合、表面粗さはこれ以下であることが好ましく、具体的には触針式の測定による表面粗さ(Ra)が20nm、より好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下であることが好ましい。この範囲とすることで、後に詳述する鏡状態を実現することができる。
【0023】
また本実施形態に係る第一の電極21及び第二の電極31は、第一の基板2及び第二の基板3上に、表示したい文字などのパターンにあわせた形状として形成してもよく、また、同じ複数の領域毎に区分された電極パターンを複数基板上に並べて形成したものであってもよい。複数の領域毎に区分すると、この各領域を画素とし、画素毎に表示を制御し、複雑な形状の表示にも対応できるといった利点がある。
【0024】
第一の電極2と第二の電極3の間の距離としては、後に詳述するエレクトロクロミック材料における銀が微粒子として十分析出し、消失する電界を印加することができる限りにおいて限定されるわけではないが、1μm以上10mm以下が可能であり、望ましくは1μm以上1mm以下の範囲である。
【0025】
なお本素子1における電極は、それぞれ導電性を有する配線を介して電源に接続されており、この電源のON、OFFにより材料層に電圧の印加、印加の解除を制御することができる。
【0026】
また本素子1における第一の電解質層4は、支持塩としての電解質を含むとともに、銀イオンを含むエレクトロクロミック材料を含んでいる。また本実施形態に係る第一の電解質層4は、上記銀を含むエレクトロクロミック材料41のほか、これら材料を保持するための溶媒を含んでいる。第一の電解質層4の厚さは、第二の電解質、陰イオン交換膜の合計で上記第一と第二の電極の間の距離の範囲に収めることができる限りにおいて適宜調節可能である。
【0027】
また本素子1における第二の電解質層6は、支持塩としての電解質を含むとともに、メディエータを含んでいる。また本実施形態に係る第二の電解質層6は、メディエータのほか、これら材料を保持するための溶媒を含んでいる。第二の電解質層4の厚さは、第一の電解質、陰イオン交換膜の合計で上記第一と第二の電極の間の距離の範囲に収めることができる限りにおいて適宜調節可能である。
【0028】
また本素子1における上記電解質は、エレクトロクロミック材料の酸化還元等を促
進するためものであり支持塩であることは好ましい一例である。電解質は、臭素イオンを含むことが好ましく、例えばLiBr、KBr、NaBr、臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)等を例示することができる。なお、電解質の濃度としては、限定されるわけではないが、モル濃度でエレクトロクロミック材料の5倍程度、具体的には3倍以上6倍以下含んでいることが好ましく、例えば3mM以上6M以下であることが好ましく、より好ましくは5mM以上5M以下、より好ましくは6mM以上3M以下、更に好ましくは15mM以上600mM以下、更に好ましくは25mM以上500mM以下、30mM以上300mM以下の範囲である。
【0029】
また本素子1における溶媒は、上記エレクトロクロミック材料、メディエータ及び電解質を安定的に保持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、水等の極性溶媒であってもよいし、極性のない有機溶媒等一般的なものも用いることができる。溶媒としては、限定されるわけではないが、例えばDMSOを用いることができる。
【0030】
また本素子1において、エレクトロクロミック材料とは、直流電圧を印加することによって酸化還元反応を起こす材料であり、銀イオンを含む塩であることが好ましい。このエレクトロクロミック材料は酸化還元反応によって銀微粒子を析出、又は消失させ、これに基づく色の変化を生じさせ表示を行なうことができる。銀を含むエレクトロクロミック材料としては限定されるわけではないが、AgNO、AgClO、AgBr、を挙げることができる。なお、エレクトロクロミック材料の濃度については、上記機能を有する限りにおいて特に限定されるわけではなく、材料によって適宜調整が可能であるが、5M以下であることが望ましく、より望ましくは1mM~1M、さらに望ましくは5mM~100mMである。
【0031】
本素子1においてメディエータとは、銀よりも電気化学的に低いエネルギーで酸化還元を行なうことのできる材料をいう。メディエータの酸化体が銀から随時電子を授受することによって酸化による消色反応を補助することができる。なお、メディエータとしては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、銅(II)イオンの塩であることが好ましく、例えばCuCl、CuSO、CuBrを挙げることができる。なお、上記のほか銅(I)イオンの塩を共存させてもよい。二価のイオンと共存させることで駆動の改善を図ることができる可能性がある。なおメディエータの濃度としては、上記機能を奏する限りにおいて限定されず、また材料によって適宜調整が可能であるが、5mM以上20mM以下であることが望ましく、より望ましくは15mM以下である。20mM以下とすることで過度の色付きを防止することができる。なお、銀イオンと銅(II)イオンの濃度比としては、限定されるわけではないが、銀イオンを10とした場合、銅(II)イオンは1以上3以下の範囲であることが好ましい。
【0032】
また、本素子1においては、第一の電解質層4及び第二の電解質層6の少なくともいずれかに、上記構成要件のほか、例えば増粘剤を加えることができる。増粘剤を加えることでエレクトロクロミック素子のメモリー性を向上させることができる。なお増粘剤の例としては、特に限定されるわけではないが、例えばポリビニルアルコールを例示することができる。なお増粘剤の濃度としては、特に限定されるわけではないが、例えば電解質層の総重量に対し5重量%以上20重量%以下の範囲で含ませておくことが好ましい。
【0033】
また本素子1では、第一の基板2と第二の基板3の間に、第一の電解質層4と第二の電解質層6を分離する陰イオン交換膜5、を備えている。この陰イオン交換膜をそなえることで、電極間の電圧の印加を解除した場合であっても、析出した銀近傍へのメディエータによる銀の溶解を防ぐことが可能となり、素子の発色状態の長期の維持を図ることができる。陰イオン交換膜の厚さは、第二の電解質、陰イオン交換膜の合計で上記第一と第二の電極の間の距離の範囲に収めることができる限りにおいて適宜調節可能である。

【0034】
ここで陰イオン交換膜5とは、陰イオンを容易に透過させる一方、陽イオンを容易に透過させない膜をいう。本素子1における陰イオン交換膜は、陽イオンを容易に透過させないため、メディエータの陽イオンを透過させにくくしているため、銀イオンが析出する側においてメディエータの陽イオンによって再び溶解されにくくなる。
【0035】
陰イオン交換膜5の例としては、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば四級アンモニウム等のカチオン性基を備えたポリマー膜等を例示することができるがこれに限定されない。なお、陰イオン交換膜5は、溶媒を分離することができるよう第一の基板と第二の基板の間に配置されていればよいが、スペーサー等により保持することが好ましく、場合によっては、基板の端部に設けられた突起等に保持されていてもよい。
【0036】
本素子1では、第一の電極を平滑な電極とすることで例えば電圧を印加した状態で反射(鏡)状態を、また第一の電極を凹凸のある電極とすることで黒状態をそれぞれ実現でき、電圧を解除した状態で長期にこの状態を維持することができる。なお、電圧を逆に印加すれば透過状態を実現することができる。本実施形態に係る素子の状態の概念図を図2に示しておく。なお図2(A)は鏡表示の状態を、図2(B)は黒表示の状態をそれぞれ示しておく。
【0037】
本表示装置では、電極間に電圧を印加すると、一方の電極では第1の電解質層中の銀イオンが還元されて銀として析出し、電圧を解除しても長期に(メモリー性をもって)この状態を維持することができる。これは、陰イオン交換膜によってメディエータ側の陽イオンの移動をブロックすることで、析出した銀イオンを長期にわたり保持することができるためと考えられる。なお、この直流電圧印加の際の電圧の強度としては、一対の基板間の距離、一対の電極間の距離によって適宜調整が可能であり、限定されるものではなく、電界強度として例えば1.0×10V/m以上1.0×10V/m以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.0×10V/m以下の範囲内である。
【実施例】
【0038】
上記表示素子について実際に作製しその効果について確認した。以下具体的に説明する。
【0039】
まず、第一の基板及び第二の基板としてガラス基板を用い、第一の電極及び第二の電極としてITO電極を用いた。なお本実施例では第一の電極および第二の電極も平滑な電極とした。
【0040】
また、第一の電解質層として、エレクトロクロミック材料としてAgNO(50mM)を、溶媒としてDMSOを、支持電解質としてLiBr(250mM)を用いた。
【0041】
また、第二の電解層として、メディエータとしてCuCl(50mM)を、溶媒としてDMSOを、支持電解質としてLiBr(250mM)を用いた。
【0042】
また、陰イオン交換膜として、旭ガラス社製、セレミオンDSV(スチレンビニルベンゼン主体、4級アミン)を用いた。なおこの陰イオン交換膜の厚さは100μmのものを用いた。
【0043】
また、第一の電解質層の厚さは125μm、第二の電解質層の厚さは250μmとした。
【0044】
そして、作製したこの表示素子に対し、-2.5V60s電圧を印加した場合における光透過率を測定した。この結果を図3に示す。なお、本図では、測定前に電圧を印加し、反射及び透過状態を経由している。この結果、電圧を解除した後でも2000s近くこの状態を維持することができ、長期のメモリー性を達成していることを確認した。なお、比較例として上記作製した表示素子から陰イオン交換膜を配置していないだけの比較表示素子を作製し、同様の測定をしたところ、電圧の解除と同時に光透過率が変化し始め、300s程度で元の状態に戻ってしまった。
【0045】
また、この作製した表示素子に対し、CV測定を行った。この結果を図4に示しておく。この結果によると、-0.1Vから発生するCu2++e→Cuの反応に起因する還元電流が観測されなかったため、対極に存在するCu2+の作用極への拡散は陰イオン交換膜により防がれていることがわかった。また、-1.7Vより銀の析出によって透過率が減少し、-0.8Vより銀の溶解が始まり、0Vにおいて透過率は初期の値と等しくなった。
【0046】
また、上記作製したセルについて、電圧を印加することで、光の透過率について測定を行った。この結果を図5に示しておく。本図は、(a)素子作製直後、(b)測定前に1.5Vを120s印加した場合、(c)-1.1Vを120s印加した場合において発色電圧を印加後、回路を開放し、波長700nmにおける透過率の変化を測定したものである。
【0047】
(a)素子作製直後においては、電圧印加終了後、透過率は全く変化せず30分経過してもその発色状態を保持していた。一方で、(b)の測定前に1.5Vを120s印加した場合は、回路開放後、13分後には初期透過率まで戻った。さらに、(c)の-1.1Vを120s印加した場合は、銀の溶解による透過率の上昇は見られるものの、回路開放後30分が経過した所において、10%程の上昇しか見られず良好な発色保持特性を示していることが明らかとなった。
【0048】
素子に1.5V印加するとBrが酸化し、Br3-の量が増える。一方でー1.1V印加することでBr3-が還元されるために、Br3-の量が減る。素子作製直後のBr3-が全く無い状態のメモリー性が一番良いが、Brの酸化還元を行ない、Br3-の量を変えることで素子のメモリー性を制御できることが明らかとなった。
【0049】
また、繰り返し安定性について確認を行った。具体的には、上記作製した素子に発色電圧(-2.2V60s)印加後、消色電圧(0.5V20s)印加し、その際の波長700nmにおける透過率変化を測定した。これを10サイクル繰り返し、素子の発消色の繰り返し安定性を評価した。この結果を図6に示しておく。
【0050】
この結果、発色電圧である-2.2V印加後、60sの時点で素子の透過率は18%まで減少した。その後、消色特性を0.5V印加したところ、10s後には初期の透過率まで戻った。メモリー性を付与することで、素子の消色特性が悪くなるものも多い。Cuはメディエータとしては作用しないが、対極反応材料として機能するため、サイクルを繰り返しても、同様の挙動を示し、良好な繰り返し安定性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上、本発明は、表示素子として産業上の利用可能性がある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5