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明細書 :歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と歯槽骨由来の未分化骨芽細胞用担体との複合物及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年11月8日(2018.11.8)
発明の名称または考案の名称 歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と歯槽骨由来の未分化骨芽細胞用担体との複合物及びその利用
国際特許分類 C12N  11/04        (2006.01)
A61L  27/38        (2006.01)
A61L  27/56        (2006.01)
A61L  27/36        (2006.01)
A61L  27/18        (2006.01)
A61L  27/22        (2006.01)
A61L  27/34        (2006.01)
A61L  27/44        (2006.01)
A61L  27/58        (2006.01)
A61P  19/08        (2006.01)
FI C12N 11/04 ZNA
A61L 27/38 111
A61L 27/56
A61L 27/38 300
A61L 27/36 110
A61L 27/36 311
A61L 27/18
A61L 27/22
A61L 27/34
A61L 27/44
A61L 27/58
A61P 19/08
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 41
出願番号 特願2017-562912 (P2017-562912)
国際出願番号 PCT/JP2017/001827
国際公開番号 WO2017/126638
国際出願日 平成29年1月19日(2017.1.19)
国際公開日 平成29年7月27日(2017.7.27)
優先権出願番号 2016008352
優先日 平成28年1月19日(2016.1.19)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】齋藤 正寛
【氏名】半田 慶介
【氏名】稲垣 雅彦
【氏名】北川 全
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B033
4C081
Fターム 4B033NA01
4B033NA16
4B033NB14
4B033NB15
4B033NB33
4B033NB57
4B033NB65
4B033NB69
4B033NC06
4B033NC12
4B033ND12
4B033NF06
4B033NH03
4B033NH04
4C081AB03
4C081AB04
4C081BA12
4C081BA13
4C081BA16
4C081BC01
4C081CA171
4C081CA172
4C081CD151
4C081CD152
4C081CD34
4C081DA05
4C081DA06
4C081DA16
4C081DB03
4C081DB06
4C081DC03
4C081DC04
4C081DC06
4C081DC13
要約 本発明は、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と該歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を用いた骨組織再生に有用な担体との複合物等を提供することを主な目的とする。
歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と担体との複合物:ここで、該担体は3次元網目構造を有する繊維成形物であり、該繊維成形物の嵩密度は0.0001~0.25g/cmであり、該繊維成形物を構成する繊維は生体適合性ポリマーを含む。
特許請求の範囲 【請求項1】
歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と担体との複合物:
ここで、該担体は3次元網目構造を有する繊維成形物であり、該繊維成形物の嵩密度は0.0001~0.25g/cmであり、該繊維成形物を構成する繊維は生体適合性ポリマーを含む。
【請求項2】
前記繊維成形物を構成する繊維が、生体適合性の疎水性ポリマーを含むものである、請求項1に記載の複合物。
【請求項3】
前記繊維成形物を構成する繊維が、生体適合性の疎水性ポリマーと生体適合性の親水性ポリマーとを含有する複合繊維を含むものである、請求項1または2のいずれかに記載の複合物。
【請求項4】
前記複合繊維が、前記疎水性ポリマーの繊維の内部に前記親水性ポリマーの繊維が形成された構造を有する、請求項3に記載の複合物。
【請求項5】
前記親水性ポリマーの繊維が前記複合繊維内部で3次元網目構造を形成し、該親水性ポリマーの繊維が互いに接合することにより、前記複合繊維に捩じれ構造を形成して該複合繊維同士の接触を制御している、請求項4に記載の複合物。
【請求項6】
前記繊維成形物が少なくとも一部に被覆層を有する、請求項1~5のいずれかに記載の複合物。
【請求項7】
前記被覆層の厚みが1000μm以下である、請求項6に記載の複合物。
【請求項8】
前記被覆層が平均孔径10μm以上の複数の貫通孔を備える、請求項6または7に記載の複合物。
【請求項9】
前記複数の貫通孔によって形成される開口部の面積が、前記被覆層の表面積の50%以上である、請求項8に記載の複合物。
【請求項10】
前記担体の厚みが0.05~500mmである、請求項1~9のいずれかに記載の複合物。
【請求項11】
前記歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の少なくとも一部が歯槽骨由来の骨芽細胞に分化した状態にある、請求項1~10のいずれかに記載の複合物。
【請求項12】
前記歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の少なくとも一部が石灰化した状態にある、請求項1~10のいずれかに記載の複合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と歯槽骨由来の未分化骨芽細胞用担体との複合物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は歯周組織の炎症性崩壊により歯の喪失を引き起こす感染症であり、日本国内の患者数は5000万人とも言われている。歯周病は、口腔機能の低下を引き起こす最大の原因ともいわれており、更に、歯周病の原因となる歯周病菌や炎症性物質は心臓血管疾患、糖尿病、呼吸器疾患等の疾患の発症や進行をもたらすことも報告されている。このことから、口腔内だけでなく全身の健康を害する原因のひとつであることが明らかになっている歯周病に対する治療や歯周病からの回復は重要視されている。
【0003】
また、歯周病は年齢を問わず注意すべき感染症であり、40歳代以上、特に50歳代以上の中高年齢層は重篤に進行した侵襲性歯周病の高リスク集団であることが知られている。このような重篤な歯周病への対策として、歯周組織を回復するための再生医療技術の開発が求められている。
【0004】
従来の歯周組織再生医療技術として、骨組織の損傷箇所に対する人工固定化、骨補填剤の移植または自家骨が採用されてきた。しかし、これらの方法では骨組織が正常な状態にまで十分に回復できず、また、長期間を要するという問題がある。これらの問題を克服するために、骨再生能力を有する間葉系幹細胞を用いた細胞移植技術が開発されてきた。しかし、間葉系幹細胞は、骨再生能力に個人差があり、また中高年齢層から入手することも困難であるなど、有用な技術とは言えないところがある。また、約300℃での牛骨焼却処理物やヒト脱灰凍結乾燥骨等を移植する方法も知られているが、これらはプリオン由来の狂牛病や未知ウイルス感染のリスクから使用が懸念されている。
【0005】
また、再生医療においては、細胞を高分子ゲルやセラミック材料等の担体に担持させ、得られた担持物を移植する方法が知られている。しかし、担持物において細胞が十分に増殖しない、分化しない、移植先の複雑な形態への適応性が乏しいといった問題があり、臨床上、実用可能な程度に十分に有用な技術が構築されているとは言い難い。
【0006】
一方、本発明者らは、これまでに歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の取得に成功している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】国際公開第2010/021162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と該歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を用いた骨組織再生に有用な担体との複合物及び該複合物を用いて骨組織を再生する方法等を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、後述する特定の担体を用いることにより歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を効率良く増殖及び/または分化できることを見いだした。また、本発明者らは、該担体を歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と組み合わせて用いることにより、臨床上、実用可能な程度に骨組織を再生できることを見いだした。本発明は前記知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と担体との複合物:
ここで、該担体は3次元網目構造を有する繊維成形物であり、該繊維成形物の嵩密度は0.0001~0.25g/cmであり、該繊維成形物を構成する繊維は生体適合性ポリマーを含む。
項2.前記繊維成形物を構成する繊維が、生体適合性の疎水性ポリマーを含むものである、項1に記載の複合物。
項3.前記繊維成形物を構成する繊維が、生体適合性の疎水性ポリマーと生体適合性の親水性ポリマーとを含有する複合繊維を含むものである、項1または2のいずれかに記載の複合物。
項4.前記複合繊維が、前記疎水性ポリマーの繊維の内部に前記親水性ポリマーの繊維が形成された構造を有する、項3に記載の複合物。
項5.前記親水性ポリマーの繊維が前記複合繊維内部で3次元網目構造を形成し、該親水性ポリマーの繊維が互いに接合することにより、前記複合繊維に捩じれ構造を形成して該複合繊維同士の接触を制御している、項4に記載の複合物。
項6.前記繊維成形物を構成する繊維の平均径が0.05~30μmである、項1~5に記載の複合物。
項7.前記繊維成形物が少なくとも一部に被覆層を有する、項1~6のいずれかに記載の複合物。
項8.前記被覆層の厚さが1000μm以下である、項7に記載の複合物。
項9.前記被覆層が平均孔径10μm以上の複数の貫通孔を備える、項7または8に記載の複合物。
項10.前記複数の貫通孔によって形成される開口部の面積が、前記被覆層の表面積の50%以上である、項9に記載の複合物。
項11.前記担体の厚みが0.05~500mmである、項1~10のいずれかに記載の複合物。
項12.前記繊維成形物を構成する繊維が、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸及びこれらの2種以上から成る共重合体よりなる群より選択される少なくとも1種の疎水性ポリマーを含むものである、項1~11のいずれかに記載の複合物。
項13.前記担体が、実施例に示す担体2(嵩密度0.21g/cm、厚み80μm程度の繊維形成体)を用いた場合よりも歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の骨芽細胞への分化を効率良く誘導できるものである、項1~12のいずれかに記載の複合物;ここで、未分化骨芽細胞の骨芽細胞への分化はアルカリフォスファターゼ染色を指標として評価され、アルカリフォスファターゼ染色は、前記複合物を10mmol/l β-グリセロリン酸、50μg/ml アスコルビン酸、100nmol/l デキサメタゾンを含むMF培地(東洋紡社製)で37℃、5%CO2存在下で培養し、10wt%ホルムアルデヒドで30分間固定し、アルカリフォスファターゼ染色剤で5分間染色される。
項14.前記担体が、実施例に示す担体2(嵩密度0.21g/cm、厚み80μm程度の繊維形成体)を用いた場合よりも、複合体において石灰化を促進できるものである、項1~13のいずれかに記載の複合物;ここで、石灰化はアリザリンレッド染色を指標として評価され、アリザリンレッド染色は、前記複合物を10mmol/l β-グリセロリン酸、50μg/ml アスコルビン酸、100nmol/l デキサメタゾンを含むMF培地(東洋紡社製)で37℃、5%CO存在下で培養し、10wt%ホルムアルデヒドで30分間固定し、アリザリンレッドを用いて5分間染色される。
項15.前記歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の少なくとも一部が歯槽骨由来の骨芽細胞に分化した状態にある、項1~14のいずれかに記載の複合物。
項16.前記歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の少なくとも一部が石灰化した状態にある、項1~14のいずれかに記載の複合物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を担体において効率良く増殖及び/または分化できる。また、本発明によれば、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞に由来する骨組織を簡便に、効率良く製造することができる。本発明によれば、実用可能な程度に骨組織を再生できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、捩れ構造が形成された、疎水性ポリマーと親水性ポリマーを含む複合繊維の一例である。
【図2】図2は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーを含む複合繊維の内、疎水性ポリマーのみを溶媒を用いてエッチングし、複合繊維内の親水性ポリマーの構造を可視化した一例である。
【図3】図3は、捩れ構造が形成された、疎水性ポリマーと親水性ポリマーを含む複合繊維の一例である。
【図4】図4は、本発明の担体が被覆層を備えているモデル図である。綿状の繊維成形体の表面に被覆層(形状安定化層)が形成された繊維成形体のモデル図である。
【図5】図5は、被覆層表面の拡大写真である。
【図6】図6は、綿状の繊維成形体の表面に被覆層と高密度層が形成された繊維成形体のモデル図である。
【図7】図7は、綿状の繊維成形体の内部に高密度層が形成され、表面に被覆層が形成された繊維成形体のモデル図である。
【図8】図8は、綿状の繊維成形体の内部及び表面に高密度層が形成され、表面に被覆層が形成された繊維成形体のモデル図である。
【図9】図9は、異なる任意成分を含有する、またはポリマーの組成が異なる、あるいはそれらの両方の特徴を有し、表面に被覆層が形成された綿状の繊維成形体のモデル図である。
【図10】図10は、異なる任意成分を含有する、またはポリマーの組成が異なる、あるいはそれらの両方の特徴を有する綿状の繊維成形体内部に、異なる任意成分を含有する、または、ポリマーの組成が異なる、あるいはそれらの両方の特徴を有する高密度層が形成され、表面に被覆層が形成された繊維成形体のモデル図である。
【図11】図11は、異なる組成または内部構造を有する担体が複数接合されてなる繊維成形体のモデル図である。
【図12】図12のA)には、各年齢層の歯槽骨から得られたHAOBのPDを測定した結果を示す。また、図12のB)には、間期に誘導したHAOB3(PD35)をG-band法(上)及びSKY法(下)により核型検査を行った結果を示す。
【図13】図13は、各種増殖因子を添加した培地において、HAOB3を培養し、細胞増殖活性を評価した結果を示す。図中、縦軸は、血清非添加のDMEMを用いて培養した場合の細胞数を1として算出した、細胞増殖活性の相対値を示す。また、図中、「MF」はMF培地、「20%FCS」は20容量%のFCSを含むDMEM培地、「PDGFAA」は10ng/mlのPDGFAAを添加したDMDM培地、「PDGFAB」は10ng/mlのPDGFABを添加したDMEM培地、「PDGFBB」は10ng/mlのPDGFBBを添加したDMEM培地、「bFGF」は10ng/mlのbFGFを添加したDMEM培地を示す。
【図14-1】図14-1のA)には、HAOB3をhBMP-2添加培地またはMF培地で培養した後に、アリザリンレッド染色した結果(左)及びアルカリフォスファターゼ活性を測定した結果(右)を示す。また、図14-1のB)には、HAOB3をhBMP-2添加培地またはMF培地で培養した後に、細胞内のRUNX2、OSTERIX、OCN及びBSPの発現レベルを測定した結果を示す。B)における縦軸は、β-Actinの発現量を100にして算出した、各分化マーカーの発現量の相対値を示す。
【図14-2】図14-2は、HAOB3をhBMP-2添加培地またはMF培地で培養した後に、OPNに対する抗体とOCNに対する抗体を用いて染色した結果を示す。
【図15】図15のA)には、6PD~29PDのHAOB3を培養した後に、アリザリンレッド染色した結果を示す。図15のB)には、6PD等のHAOB3をhBMP-2添加培地で培養した後に、細胞内のOCNの発現レベルを測定した結果を示す。図15のC)には、6PD等のHAOB3をhBMP-2添加培地で培養した後に、細胞内のRUNX2、OSTERIX及びBSPの発現レベルを測定した結果を示す。B)及びC)における縦軸は、β-Actinの発現量を100にして算出した、各分化マーカーの発現量の相対値を示す。
【図16】図16のA)には、HAOB3及びNHOstを50~1000ng/mlの濃度のhBMP-2を含む培地で培養した後に、アリザリンレッド染色した結果(左)及びアルカリフォスファターゼ活性を測定した結果(右)を示す。図16のB)には、HAOB3及びNHOstをhBMP-2を100ng/mlの濃度で含む培地で培養した後に、細胞内のRUNX2、OSTERIX、OCN及びBSPの発現レベルを測定した結果を示す。B)における縦軸は、β-Actinの発現量を100にして算出した、各分化マーカーの発現量の相対値を示す。
【図17】図17のaには分化誘導したHAOB3のOPNを染色した結果、bには分化誘導したHAOB3のOCNを染色した結果、cにはaとbを重ね合わせた像、dには分化誘導したNHOstのOPNを染色した結果、eには分化誘導したNHOstのOCNを染色した結果、fにはdとeを重ね合わせた像を示す。
【図18】図18は、HAOB3及びNHOstをhBMP-2を100ng/mlの濃度で含む培地で培養した後に、BMP-2の発現量を測定した結果を示す。縦軸は、β-Actinの発現量を100にして算出した、hBMP-の発現量の相対値を示す。
【図19】図19のA)は、HAOB3(6PDと35PD)におけるMGP、STMN2、及びNEBLの発現量を測定した結果を示す。A)における縦軸は、β-Actinの発現量を100にして算出した、各遺伝子の発現量の相対値を示す。B)は、HAOB3(6PD)におけるRUNX2、OSTERIX、OCN、BSP、MGP、STMN2、NEBLの発現量を測定した結果を示す。図19のB)における縦軸は、β-Actinの発現量を100にして算出した、各遺伝子の発現量の相対値を示す。図19のC)は、HAOB3の6PDと35PDにおけるRUNX2、OSTERIX、OCN、BSP、MGP、STMN2、NEBLの遺伝子発現変化率(%)を示す。この遺伝子発現変化率は、HAOB3の6PDにおける遺伝子発現量をHAOB3の35PDにおける遺伝子発現量で除した値に100を掛けることにより算出している。
【図20】図20は、HAOB1~4、ヒト表皮由来繊維芽細胞(HFF)、ヒト骨肉腫細胞(MG63)、及び大腿骨由来骨芽細胞(NHOst)におけるSTMN2、NEBL及びMGPの発現量を測定した結果を示す。各図における縦軸は、β-Actinの発現量を100にして算出した、各遺伝子の発現量の相対値を示す。
【図21】図21は、担体上での歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の増殖を示す。
【図22】図22は、アルカリフォスファターゼ活性の変化を示した結果を示す。
【図23】図23は、アリザリンレッド染色によってカルシウム沈着の経時的な変化を示す。
【図24】図24は、複合物の石灰化関連遺伝子の発現変化を示した結果を示す。
【図25】図25は、担体上での歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の増殖を示す。
【図26】図26は、アルカリフォスファターゼ活性の変化、アリザリンレッド染色によるカルシウム沈着の変化を示す。
【図27】図27は、生体内での骨様構造物の形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について説明する。
歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と担体との複合物
本発明は、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と担体との複合物に関する。

【0013】
歯槽骨由来の未分化骨芽細胞
本発明において歯槽骨由来の未分化骨芽細胞は次のように説明される。

【0014】
本発明において、未分化骨芽細胞とは、骨芽細胞に分化する前の前骨芽細胞であって、増殖能を有しており、骨芽細胞に分化する能力を有する細胞を意味する。ここで、「増殖能を有する」とは、後述する未分化骨芽細胞が増殖可能な培地において、細胞分裂して増殖できることを示す。また、「骨芽細胞に分化する能力を有する」とは、BMP2等の骨芽細胞誘導因子の存在下で、または後述する担体に担持された状態で、骨芽細胞に分化する性質を有していることを示す。骨芽細胞に分化した場合、例えば、アルカリフォスファターゼ活性の増大、アリザリンレッド染色による細胞の染色強度の上昇、及び骨芽細胞の分化マーカー(RUNX2、OSTERIX、OSTEOCALCIN(OCN)、BONE SIALOPROTEIN(BSP)、OSTEOPONTIN(OPN))の発現量の増大等が認められるので、骨芽細胞に分化したか否かはこれらを指標として判断される。

【0015】
歯槽骨は、当業者であればその入手方法は容易に理解でき、例えば通常の外科的手法によって採取することができ、簡便には、抜歯時に除去された歯槽骨を使用することもできる。

【0016】
本発明で使用される歯槽骨由来の未分化骨芽細胞は、歯槽骨を酵素処理して、歯槽骨由来の細胞を得た後に、未分化骨芽細胞が増殖可能な培地で培養することによって得ることができる。

【0017】
ここで、歯槽骨を酵素処理して歯槽骨由来の細胞を得るには、リン酸緩衝液等の緩衝液中で歯槽骨に対して酵素を作用させればよい。歯槽骨から歯槽骨由来の細胞を得るために使用される酵素としては、生体組織片から細胞を分離する際に一般的に使用される酵素を使用すればよく、具体的には、コラーゲナーゼ、ペプシン、トリプシン等のプロテアーゼが例示される。これらの酵素の中で、歯槽骨から効率良く細胞を回収するとの観点から、コラーゲナーゼが好適である。

【0018】
また、酵素処理効率を高めるために、酵素処理に先立って、採取された歯槽骨を5~10mm片に細切化しておいてもよい。

【0019】
歯槽骨に対して酵素を作用させる条件としては、歯槽骨由来の細胞を遊離させ得る限り特に制限されないが、一例として以下の条件が挙げられる。
歯槽骨濃度:3つの歯槽骨片に対して1ml、好ましくは1つの歯槽骨片に対して0.5~1.5mlとなるように歯槽骨の濃度を設定する。
酵素濃度:例えば、コラーゲナーゼ(>1.5U/mg)を使用する場合であれば、1~4mg/ml、好ましくは1.5~3mg/mlとなるように酵素濃度を設定する。なお、本明細書において、コラーゲナーゼ1Uとは、25℃で1分間に、4-phenyl-azobenxyl-oxycarbonyl-L-prolyl-L-leucyl-L-glycyl-L-prolyl-D-arginineから、1μモルの4-phenyl-azobenxyl-oxycarbonyl-L-prolyl-L-leucineを遊離できる酵素力価を表す。
処理温度:37℃±2℃に設定する。
処理時間:10~40分間、好ましくは15~25分間に設定する。

【0020】
歯槽骨に対する酵素処理は、歯槽骨由来の細胞の回収率を高めるために、必要に応じて複数回繰り返して行ってもよく、好ましくは4~12回が例示される。

【0021】
このようにして酵素処理することにより、歯槽骨から歯槽骨由来の細胞が遊離する。このため、酵素処理後に、歯槽骨由来の細胞を遠心分離等の公知の手段を行うことにより、該細胞を取得することができる。

【0022】
このようにして得られる歯槽骨由来の細胞を、未分化骨芽細胞が増殖可能な培地で培養することによって、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞群を得ることができる。

【0023】
未分化骨芽細胞が増殖可能な培地としては、動物細胞を増殖するに際して必須成分である、無機塩類、アミノ酸、ビタミン類等を含む基礎培地に、未分化骨芽細胞の増殖に求められる増殖因子や添加成分が添加されたものが挙げられる。このような基礎培地としては、例えばイーグル基本培地(MEM)、αイーグル基本培地(αMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF-12培地等が挙げられる。歯槽骨由来の未分化骨芽細胞が得られる限り制限されないが、該未分化骨芽細胞が増殖可能な培地の好適な例として、増殖因子としてPDGF(血小板由来増殖因子)を含む培地が挙げられる。PDGFが存在することによって、歯槽骨由来の細胞から骨組織再生能が優れた未分化骨芽細胞を効率良く増殖させることが可能になる。PDGFは培地に含まれているものでもよく、外添により培地に含ませても良い。

【0024】
PDGFは、サブユニットの組合せにより、PDGFAA、PDGFAB、PDGFBB等に別けられるが、本発明ではいずれであってもよい。また、PDGFの由来についても特に制限されず、動物組織由来のもの、遺伝子組換技術により作製したもの等のいずれであってもよい。培地中のPDGFの濃度としては、1~100ng/ml、好ましくは10~30ng/mlが例示される。

【0025】
また、未分化骨芽細胞が増殖可能な培地として、前記PDGF以外に、モノエタノールアミンを含んでいることが好ましい。モノエタノールアミンを含む場合、培地中のモノエタノールアミンの濃度としては、0.1~100μg/ml、好ましくは6μg/mlが例示される。

【0026】
更に、前記培地には、インスリン、トランスフェリン、bFGF(塩基性繊維芽細胞成長因子)の内、1種または2種以上が含有されてもよい。インスリンを培地に添加する場合、培地中のインスリンの濃度としては、1~100μg/ml、好ましくは10μg/mlが例示される。トランスフェリンを培地に添加する場合、培地中のトランスフェリンの濃度としては、1~100μg/ml、好ましくは5~15μg/mlが例示される。bFGFを培地に添加する場合、培地中のbFGFの濃度としては、1~100ng/ml、好ましくは5~15ng/mlが例示される。

【0027】
また、未分化骨芽細胞が増殖可能な培地には、ストレプトマイシン、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質が含有されていてもよい。

【0028】
未分化骨芽細胞を簡単に増殖させる観点から、未分化骨芽細胞が増殖可能な培地の好適な具体例として、MF培地(東洋紡社製)が例示される。

【0029】
歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を得るには、未分化骨芽細胞が増殖可能な培地に歯槽骨由来の細胞を添加して、例えば37℃、5%CO条件下で、1~7日間、好ましくは4日間培養すればよい。

【0030】
このように培養することにより、増殖した未分化骨芽細胞は培養容器の基底に付着した状態で存在するので、培養容器の基底に付着した細胞を回収することによって、本発明に使用される歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を得ることができる。特に、増殖した未分化骨芽細胞はこのように培養容器の基底に付着した状態で存在するので、培養容器の基底に付着した細胞群を回収することによって、本発明に使用される歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を効率良く得ることができる。

【0031】
培養容器の基底に付着した細胞を回収する方法は、公知の方法に従えばよく、例えば培養容器の基底に付着した細胞に対して0.25%トリプシン及び1mMEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を作用させればよい。このことから、本発明によれば、歯槽骨から採取された未分化骨芽細胞を培養して得られる、骨組織再生能を有する細胞群を得ることができる。

【0032】
また、前述の説明は、採取された歯槽骨組織を酵素処理し、歯槽骨由来の未分化細胞を得る第1工程、前記第1工程で得られた歯槽骨由来の未分化細胞を、未分化骨芽細胞が増殖可能な培地で培養する第2工程、ならびに前記第2工程で増殖した歯槽骨由来の未分化骨芽細胞及び/または細胞群(即ち歯槽骨由来の未分化骨芽細胞(細胞群))を回収する第3工程を含む、骨組織再生能を有する歯槽骨由来の未分化骨芽細胞(細胞群)を製造する方法を説明するものともいえる。

【0033】
本発明で使用される歯槽骨由来の未分化骨芽細胞は、従来公知の骨芽細胞に比して、骨組織再生能が格段に優れている。従って、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞(細胞群)を用いることにより、特に該未分化骨芽細胞(細胞群)を後述する担体と共に使用することにより、臨床上実用可能な骨組織再生が可能となる。

【0034】
また、該未分化骨芽細胞は、継代培養が長期間(例えば30 Population Doublingまで)可能であるという点でも特筆すべき特徴がある。継代培養は、前述の未分化骨芽細胞が増殖可能な培地を用いて従来公知の手順に従い細胞を培養させればよく、例えば後述の実施例の通り、前述の未分化骨芽細胞が増殖可能な培地において3日間おきに培地を交換して行えばよい。

【0035】
また、本発明で使用される歯槽骨由来の未分化骨芽細胞は、MGP(matrix gla protein:NM_000900.3(National center for biotechnology(NCBI))、STMN2(stathmin-like 2 :NM_007029.3(NCBI))及びNEBL(nebulette:NM_006393.2(NCBI))を発現しているという特徴もある。これらの遺伝子は、大腿骨由来の骨芽細胞では殆ど発現していないか発現量が少なく、本発明で使用される歯槽骨由来の未分化骨芽細胞において高発現しており、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞に特有の新規なマーカーとして使用できる。より具体的には、β-Actinの発現量を100とした相対値で、MGPが70以上、NEBLが50以上、及びSTMN2が50以上発現しているものが、本発明で使用される歯槽骨由来の未分化骨芽細胞として特定される。これらの遺伝子の発現量は、遺伝子チップ解析、RT-PCR法、リアルタイムPCR法等の従来公知の方法で測定される。これらの遺伝子の発現量の測定方法としては、遺伝子チップ解析及びリアルタイムPCR法が好適である。遺伝子チップ解析に使用される遺伝子チップは、市販のもの(例えば、HT Human Genome U133 Array Plate Set(Gene Chip; Affymetrix,CA,U.S.A.))を使用してもよく、また公知の方法(Lipshutz, R. J. et al., (1999) Nature genet. 21, Suppliment, 20-24)に従って作製したものを使用してもよい。

【0036】
更に、該未分化骨芽細胞は、in vitroで、BMP-2(bone morphogenetic protein-2)の存在下で骨芽細胞に分化誘導されるという特徴も備えている。なお、この場合、該未分化骨芽細胞を骨芽細胞に分化させるには、具体的には、BMP-2、デキサメタゾン、アスコルビン酸、β-グリセロリン酸を含む培地で、該未分化骨芽細胞を培養すればよい。更に、該未分化骨芽細胞は、BMP-2の存在下で分化誘導することにより、BMP-2を分泌するという特徴も備えている。このような特徴は、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞が、従来公知の骨芽細胞とは異なるものであることを裏付ける1つの証左である。更に、該未分化骨芽細胞は、骨芽細胞に分化した場合、例えばアルカリフォスファターゼ活性の増大、アリザリンレッド染色による細胞の染色強度の上昇、及び骨芽細胞の分化マーカー(RUNX2、OSTERIX、OSTEOCALCIN(OCN)、BONE SIALOPROTEIN(BSP)、OSTEOPONTIN(OPN))の発現量の増大等が認められる。これらの発現量は、従来公知の手順に従い知ることができる。

【0037】
歯槽骨由来の未分化骨芽細胞用担体
本発明において歯槽骨由来の未分化骨芽細胞用担体は次のように説明される。

【0038】
本発明において該担体は3次元網目構造を有する繊維成形物であり、該繊維成形物の嵩密度は0.0001~0.25g/cmであり、該繊維成形物を構成する繊維は生体適合性ポリマーを含む。

【0039】
本発明において3次元網目構造を有する繊維成形物とは繊維の凝集物を意味し、一本または複数本の繊維が積層され、織り、編まれ、またはその他の手法により形成された3次元網目構造の多孔質成形体をいう。この限りにおいて本発明を制限するものではいが、該繊維成形物の形態として、例えば綿状の繊維成形物、不織布状の繊維成形物、これらの混合繊維成形物等の任意の形態が挙げられる。また、繊維成形物の形状として、本発明を制限するものではいが、例えばブロック状、円柱状、板状、チューブ状、球状、定形バルク状等の任意の形状が挙げられる。

【0040】
本発明において繊維成形物の嵩密度は0.0001~0.25g/cmであり、好ましくは0.001~0.1g/cmであり、3次元形態の良好な保持、前記未分化骨芽細胞の増殖効率及び/または前記未分化骨芽細胞の分化効率の観点から、より好ましくは0.001~0.05g/cm、更に好ましくは0.002~0.03g/cmが例示される。ここで嵩密度は、室温(25℃)において測定した担体(繊維成形物)の体積と重量を用いて算出する。ここで体積は、繊維成形物を直方体に切り出して(約8cm)、その外形を定規やノギス等を利用して直接計測し、その縦、横、高さを乗じることにより算出する、または撮影した像等から得たその外形を画像解析により計測、算出することにより求める。本発明において嵩密度とは、前述のように測定した嵩密度の3点以上の平均値を意味する。

【0041】
該繊維成形物を構成する繊維は、生体適合性ポリマーを含むものであれば制限されない。本発明において生体適合性ポリマーとは、生体に適用した際に生体に対して悪影響が無いか悪影響が小さく、長期に亘って生体内で使用可能なポリマーをいい、生体分解性ポリマー、生体吸収性ポリマー等が例示される。

【0042】
該ポリマーとして、例えばラクチド類、ラクトン類(例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、β-ピバロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等)、グリコリドを含むグリコール酸類、シュウ酸エチレン(1,4-ジオキサン-2,3-ジオン)、カーボネート類(例えばトリメチリンカーボネート等)、エーテル類(例えば1,3-ジオキサン等)、エーテルエステル類(例えばジオキサノン等)、ラクタム類(εカプロラクタム等)等の環状モノマー;乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシブタン酸、4-ヒドロキシブタン酸、6-ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;脂肪族エステルモノマー類の単独または共重合体、ブロック共重合体等の脂肪族ポリエステル系樹脂等が例示される。これらは生体適合性の疎水性ポリマーと称することができる。該ポリマーとして、好ましくは、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、それらの2種類以上から成る共重合体等が例示され、より好ましくはポリL-乳酸、ポリDL-乳酸、ポリD-乳酸、ポリ-p-ジオキサノン、ポリL-乳酸/ε-カプロラクトン共重合体、ポリL-乳酸/グリコール酸共重合体、ポリDL-乳酸/グリコール酸共重合体等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。

【0043】
更に、前記繊維成形物を構成する繊維は、更に生体適合性の親水性ポリマーを含んでいても良い。親水性ポリマーとして、例えばセルロース、アガロース、アルギン酸、ガム類等の多糖類、メチルセルロース、プロピルセルロース、ベンジルセルロース等の多糖類の誘導体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート等のアセテート繊維、ヘパリンもしくはその誘導体、コンドロイチンもしくはその誘導体、ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン、キチン、キトサン類等のムコ多糖類もしくはその誘導体、アテロペプチドコラーゲンや再構成繊維コラーゲン等のコラーゲンもしくはその誘導体、ゼラチン、フィブロイン、ケラチン、ポリグルタミン酸もしくはその塩などのポリペプチド、またはこれらの高分子の2種類以上からなる混合体、架橋体、複合体等が例示される。天然由来のポリマーについては、分子量分布や等イオン点などの性質が製造方法により異なるが、前記繊維成形物を得るにあたりポリマー溶液を所定の粘度になるように調製できるものであれば目的などに合わせて適宜用いてもよい。該ポリマーとして、好ましくは、ゼラチン、コラーゲン、ポリグルタミン酸とその塩、アガロースが例示され、より好ましくはゼラチン、コラーゲン、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸ナトリウムが例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。

【0044】
前記繊維成形物を構成する繊維に親水性ポリマーが含まれている場合、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとがランダムまたは均一に混合された繊維を形成していてもよく、親水性ポリマーと疎水性ポリマーが実質的に混ざることなく繊維を形成していてもよく、親水性ポリマーが前記疎水性ポリマーの表面の少なくとも一部に存在して繊維を形成していてもよい。繊維成形物を構成する繊維は、これらの繊維の任意の混合物であってもよい。例えば、前記繊維成形物は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとがランダムまたは均一に混合されて形成された繊維と、親水性ポリマーと疎水性ポリマーが実質的に混ざることなく形成された繊維の両方を備えていてもよく、また、前記繊維成形物は、前述の一方の繊維または両方の繊維を備えており、その少なくとも一部に更に親水性ポリマーが存在していてもよい。

【0045】
本発明を制限するものではないが、本発明において患部の骨組織を再生させるために、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞(少なくとも一部が骨芽細胞へ分化していてもよく、石灰化していてもよい)と前記担体との複合物を含む人工骨材料は、立体的な形状を有することが望ましく、この観点から、担体は立体的に成形され、細胞培養や分化中においても、その3次元的な形状を安定に維持できることがより好ましい。担体の3次元形状をより安定に維持させる観点から、担体を構成する繊維成形体の繊維は、疎水性ポリマーの繊維の内部に親水性ポリマーの繊維が形成された複合繊維を形成していることがより好ましく、該親水性ポリマーの繊維が複合繊維内部で3次元網目構造を形成し親水性ポリマーの繊維が互いに接合していることにより複合繊維に捩れ構造を形成して複合繊維同士の接触を制御し、担体の3次元的な形状を安定させることが更に好ましい。この場合、複合繊維に捩れ構造を形成させるため親水性ポリマーの繊維の繊維径は10~1000nmであることが好ましい。

【0046】
本発明を制限するものではないが、このような繊維を図1~3に例示する。図1は、捩れ構造が形成された、疎水性ポリマーと親水性ポリマーを含む複合繊維である。繊維の捩れにより複合繊維同士の接触が制限され、担体の3次元的な形状を安定させることに寄与する。図2は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーを含む複合繊維の内、疎水性ポリマーのみを溶媒を用いてエッチングし、複合繊維内の親水性ポリマーの構造を可視化したものである。該親水性ポリマーの繊維が複合繊維内部で3次元網目構造を形成し親水性ポリマーの繊維が互いに接合している。図3は、このような複合繊維のモデル図の一例である。なお、本発明を制限するものではないが、図3は複合繊維の表面の一部が親水性ポリマーに被覆された例示である。

【0047】
本発明の効果が得られる限り制限されないが、前記繊維成形物を構成する繊維中、生体適合性ポリマーの含有量(疎水性ポリマーと親水性ポリマーの総量)は好ましくは50重量%以上、より好ましくは70~100重量%、更に好ましくは90~100重量%が例示され、特に好ましくは実質的に100重量%が例示される。

【0048】
また、本発明の効果が得られる限り制限されないが、前記繊維成形物を構成する繊維中、生体適合性ポリマーの疎水性ポリマーと親水性ポリマーを含む複合繊維は好ましくは疎水性ポリマーが50重量%以上、より好ましくは疎水性ポリマーが70重量%以上、特に好ましくは疎水性ポリマーが80~99.5重量%であることが例示される。

【0049】
前記繊維には、本発明の効果が得られる範囲において、生体適合性ポリマー以外のポリマー等の任意の成分を必要に応じて含んでもよい。該成分として、例えば界面活性剤、薬剤、充填物(ポリマー粒子、金属粒子、セラミックス粒子など)が例示される。

【0050】
任意の成分のうち界面活性剤について、本発明を制限するものではないが、例えば脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等の非イオン性界面活性剤;グリセロリン脂質(ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミンなどもしくはその水素添加物)、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリンなど)やスフィンゴ糖脂質等のリン脂質等、その誘導体またはそれらの混合物等が例示される。これらにおいて好ましくはリン脂質等、その誘導体またはそれらの混合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよく、使用目的に合わせて当業者が選択すればよい。

【0051】
薬剤について、本発明を制限するものではないが、例えば抗炎症剤、フイブロネクチン、アルブミン、ラミニン、凝血または抗凝血因子(アンチトロンビン、プラスミン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、フイブリノーゲンアクチベータ、トロンビン等)、カリクレイン、キニン、ラジキニン拮抗薬、血液に作用しない酵素、ホルモン、骨形成因子や細胞増殖因子等の成長因子、タンパク性骨増殖因子、凝血または抗凝血薬剤、溶血防止剤、骨粗鬆症治療薬等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよく、使用目的に合わせて当業者が選択すればよい。

【0052】
充填物について、本発明を制限するものではないが、例えばポリマー、セラミックス、金属、これらの任意の複合体の顆粒、ハイドロゲル、その乾燥体等が挙げられる。また、充填物は内部に薬剤等を保持していても良く、薬剤としては前述のものが例示される。薬剤を保持ずるための充填物としては、本発明を制限するものではないが、例えばポリビニルアルコール、コラーゲン、ゼラチン、寒天、ヒアルロン酸、キチン・キトサン、ポリ酢酸ビニルのいずれかのうちの1種以上からなるハイドロゲル、その乾燥体、ポリ乳酸系高分子、ポリエチレングリコール系ポリマー等の生分解性ポリマー等や、それらとリン酸カルシウム系セラミックスを複合したものが好ましく例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよく、使用目的に合わせて当業者が選択すればよい。

【0053】
繊維における任意の成分の含有量は、本発明の効果が妨げられない限り制限されないが、任意の成分を含有する場合、繊維中、任意の成分は50重量%以下が好ましく、界面活性剤については0.05~5重量%が好ましく例示される。

【0054】
本発明において前記繊維成形物の繊維の平均繊維径は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、繊維成形物の強度且つ表面積の観点から、好ましくは0.05~30μmが例示される。ここで、繊維径とは繊維断面の直径をいい、繊維の電子線顕微鏡像または共焦点レーザー顕微鏡像等により測定される少なくとも3か所の平均値から求める。繊維断面が楕円形の場合は、楕円形の長軸方向の長さと短軸方向の長さの平均をその繊維径として算出する。繊維断面が円形でも楕円形でもないときには、円または楕円に近似して繊維径を算出する。

【0055】
前記繊維成形物体は、エレクトロスピニング法により製造される。エレクトロスピニング法は公知の方法であり、高電圧を印加することによりシリンジ等の吐出部から吐出された高分子溶液が電荷を帯び、ミクロレベルやナノレベルの繊維をコレクターに付着させる技術であり、得られた繊維を成形することにより3次元の繊維構造物を製造できる。

【0056】
本発明においては、エレクトロスピニング法を用いて、前記生体適合性ポリマーを含む溶液を吐出部から吐出させることにより、前記生体適合性ポリマーを含む繊維を製造し、繊維構造物を成形すればよい。ここで、生体適合性ポリマーから繊維を製造するにあたり、本発明において使用される繊維が製造できる限り制限されないが、エレクトロスピニングに用いる電場として500~5000V/cmが例示される。得られた繊維を必要に応じて積層、圧縮、接合及び/または切断等することにより前記繊維成形物、すなわち前記担体を製造できる。担体の大きさ、厚みは、使用目的や適用部位等に応じて、当業者が適宜設定すればよい。本発明を制限するものではないが、担体の厚みとして、0.05~500mmが例示される。この限りにおいて制限されないが、担体の製造をより容易にする観点から、担体の厚みとして好ましくは0.5~100mm、より好ましくは0.5~50mmが例示される。担体の厚みは、担体に圧力をかけずに繊維成形物の高さを定規やノギス等を利用して直接計測する、または撮影した像等から得たその外形を画像解析により計測、算出することにより求める。本発明において厚みとは、このようにして測定した値の3点以上の平均値を意味する。なお、本発明において、通常、厚みは、担体を構成する3辺(縦、横、高さ)のうち最も短い辺をいう。

【0057】
生体適合性ポリマーを含む溶液として、所望の繊維が製造できる限り制限されないが、前記生体適合性ポリマーと、生体適合性ポリマーを溶解可能な溶媒との混合液、また、前記任意の成分を必要に応じて更に含有する混合液が例示される。溶媒も、所望の繊維が製造できる限り制限されないが、例えば溶媒としてはクロロホルム、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、水、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、アセトン等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0058】
本発明の担体を製造するにあたって用いる前記ポリマーを含む溶液(ポリマー溶液)中、前述の生体適合性ポリマーの含有量は2重量%以上、より好ましくは2.5~25重量%、更に好ましくは5~15重量%が例示される。溶液中の溶媒や任意の成分は、目的とする繊維成形体に応じて当業者が適宜設定すればよい。

【0059】
また、本発明の担体は、必要に応じて担体を貫通する孔及び/または貫通しない孔を有していても良い。孔径は目的に応じて適宜定めればよいが、例えば、細胞を担体内部に一層効率良く浸透させる観点から、好ましくは平均孔径が10μmより大きい孔が例示され、より好ましくは平均孔径10μmより大きく1000μm以下が例示される。孔の形成手法は特に制限されず、当業者が適宜形成すればよいが、例えば穿孔が例示され、より具体的には加工用レーザーを用いた穿孔が例示される。また、本発明の担体が後述する被覆層及び/または高密度層を備えている場合も同様に説明される。ここで、平均孔径は、孔の投影面積を画像解析などにより測定し、同じ面積を有する円の直径として計算される値である。

【0060】
本発明の担体は、前記繊維成形物の少なくとも一部に被覆層を有していてもよい。本発明を制限するものではないが、本発明の担体が被覆層を備えているモデルを図4に簡単に例示する。被覆層は、前記繊維成形物の少なくとも一部の表面の繊維間をブリッジしている。

【0061】
該被覆層の厚みは、本発明の効果が得られる限り制限されないが、好ましくは1000μm以下が例示され、より好ましくは0.5~10μm、更に好ましくは1~5μmが例示される。ここで、被覆層の厚みとは、被覆層の高さを平均した値であり、断面の顕微鏡像の画像解析などにより算出される。被覆層の高さとは、被覆層において実質的に繊維成形物と垂直な方向をいう。被覆層が薄く計測が困難な場合は平滑な金属基盤などに被覆層を形成した後、段差計や共焦点レーザー顕微鏡による解析により算出する。本発明の担体において繊維成形物が被覆層を有している場合も、被覆層を含めて前記嵩密度は0.0001~0.25g/cmを充足することが好ましい。また、本発明の担体において繊維成形物が被覆層を有している場合も、被覆層を含めて担体の厚みとして前記0.05~500mmを充足することが好ましい。

【0062】
また、被覆層は、好ましくは該被覆層を貫く平均孔径10μm以上の孔を有しており、より好ましくは平均孔径10~1000μmが例示される。ここで、平均孔径は被覆層の有する貫通孔の投影面積を画像解析などにより測定し、同じ面積を有する円の直径として計算される値である。

【0063】
また、該被覆層は、好ましくは該被覆層の表面積の50%以上の開口部を有していることが例示される。ここで、開口部とは、該被覆層内に存在しながらも、被覆層を貫き、被覆されている繊維成形物がむき出しになっている部分を言う。被覆層の表面積とは、被覆層が覆う担体の外形の表面積であり、担体の寸法を定規やノギスなどを利用して直接計測する、あるいは撮影した像等から、担体の外形が有する表面積を画像解析により算出しても良い。

【0064】
繊維成形物に被覆層を設けることにより、繊維成形物の形状をより安定して維持することができる。特に、繊維成形物の嵩密度が低いほど繊維成形物の安定性が乏しい傾向にあり、被覆層を設けることにより繊維成形物の形状をより安定して維持でき、これにより繊維成形物に歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を効率よく担持できるようになり、特に繊維成形体内部に該細胞を効率良く導入できるようになる。この観点から、より好ましくは繊維成形物は被覆層を備えている。安定性を一層高める観点から、被覆層は、より好ましくは厚みが1000μm以下であり且つ被覆層を貫く孔の平均孔径が10μm以上であるものが例示でき、更に好ましくは厚みが0.5~10μmであり且つ被覆層を貫く孔の平均孔径が10~1000μmであるものが例示される。また、この観点から、被覆層は、好ましくは繊維の凝集体からなる。このような特徴を有する被覆層の例示を図5に示す。図5は被覆層表面の拡大写真である。

【0065】
被覆層を繊維成形物に形成させる方法としては、前記被覆層が得られる限り制限されないが、繊維成形体の外面の一部または全部において、レーザー等を用いてその最表面の繊維同士を融着させることによる封止処理等が例示され、これにより繊維成形物に融着した繊維層から成る被覆層が形成できる。

【0066】
また、被覆層が、繊維の凝集体からなる場合において好ましくは、前記担体表面にエレクトロスピニングにより不織布状の繊維形成体を形成する方法が例示される。エレクトロスピニング法において高電圧を印加したシリンジ等のポリマー溶液の吐出部と繊維を捕集する対電極の間に担体を設置することで担体の表面に被覆層が形成される。被覆層の形成をより容易にするために、ポリマー溶液の吐出部に印加している極性とは逆の極性を有するイオン風を担体に照射するなどしてもよい。また、好ましい例として、担体の3次元形状をより安定に維持させる観点から、担体を構成する繊維成形体の繊維において、疎水性ポリマーの繊維の内部に親水性ポリマーの繊維が形成された綿状の複合繊維をエレクトロスピニングにより形成している場合、ポリマー溶液から親水性ポリマーの成分を除いたポリマー溶液に切り替えるか、エレクトロスピニングの電場条件を適宜変更することで不織布状の複合繊維からなる被覆層を綿状の繊維成形体の最表面に形成することができ、これ
により繊維成形体表面に被覆層を設けることができる。

【0067】
被覆層を構成する繊維の平均繊維径は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、好ましくは0.05~30μmが例示される。繊維径は前述と同様に説明される。

【0068】
また、本発明の担体は、繊維成形物の少なくとも一部に、多孔質な高密度層を1層以上有していても良い。言い換えると、本発明の担体は、繊維成形物において嵩密度が低い層(低密度層)と嵩密度が高い層(高密度層)とを有していても良く、この場合、本発明の担体は粗密構造を有しているといえる。

【0069】
該低密度層と該高密度層のそれぞれの嵩密度は、前記嵩密度0.0001~0.25g/cmの範囲内にある。本発明を制限するものではないが、本発明の担体において、好ましくは高密度層の嵩密度が、該高密度層と隣接する低密度層の嵩密度より2倍以上大きい嵩密度を有しており、より好ましくは5倍以上大きい嵩密度を有している。高密度層は、繊維成形物の表面の少なくとも一部に存在していてもよく、内部の少なくとも一部に存在していてもよく、その両方に存在していてもよい。

【0070】
本発明の担体において、繊維成形物が高密度層を有している場合も、高密度層及び低密度層を含めて前記嵩密度は0.0001~0.25g/cmを充足することが好ましい。また、本発明の担体において、繊維成形物が前記被覆層、高密度層及び低密度層を有している場合も、被覆層及び高密度層を含めて前記嵩密度は0.0001~0.25g/cmを充足することが好ましい。

【0071】
高密度層の厚みは制限されないが、好ましくは1000μm以下が例示され、より好ましくは5~30μmが例示される。当然ながら高密度層の厚み、更に低密度層の厚みは、前記繊維成形物の厚みを超えない。また、本発明の担体において繊維成形物が高密度層を有している場合も、高密度層を含めて担体の厚みとして前記0.05~500mmを充足することが好ましい。

【0072】
歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を効率よく増殖及び/または分化させる観点から、該高密度層は、繊維の集積体から成る。

【0073】
また、高密度層に平均孔径が10μmより大きい孔を穿孔し、細胞を通過させる通路を形成してもよい。孔の形成手法としては特に限定されないが加工用レーザーを用いた穿孔が例示される。平均孔径は前述と同様に測定される。

【0074】
本発明において繊維成形物が高密度層を有することは、高密度層に歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を一層効率よく増殖、分化させる点で役立つ。

【0075】
高密度層を繊維成形物に形成させる方法としては、前記高密度層が得られる限り制限されない。高密度層が繊維の凝集体からなる場合において好ましくは、繊維成形物表面にエレクトロスピニングにより不織布状の繊維形成体を形成する方法が例示される。エレクトロスピニング法において高電圧を印加したシリンジ等のポリマー溶液の吐出部と繊維を捕集する対電極の間に繊維成形物を設置することで繊維成形物の表面に高密度層が形成される。高密度層の形成をより容易にするために、ポリマー溶液の吐出部に印加している極性とは逆の極性を有するイオン風を担体に照射するなどしてもよい。また、好ましい例として、担体の3次元形状をより安定に維持させる観点から、担体を構成する繊維成形体の繊維において、疎水性ポリマーの繊維の内部に親水性ポリマーの繊維が形成された綿状の複合繊維をエレクトロスピニングにより形成している場合、ポリマー溶液から親水性ポリマーの成分を除いたポリマー溶液に切り替えるか、エレクトロスピニングの電場の条件を変更することで不織布状の複合繊維からなる高密度層を綿状の成形体の最表面に形成することができる。

【0076】
高密度層を繊維成形物の内部に形成させる方法としては、前記高密度層が得られる限り制限されないが、担体の3次元形状をより安定に維持させる観点から、担体を構成する繊維成形体の繊維において、疎水性ポリマーと親水性ポリマー成分が混合されたポリマー溶液のエレクトロスピニングにより疎水性ポリマーの繊維の内部に親水性ポリマーの繊維が形成された綿状の複合繊維の成形体を形成している場合、ポリマー溶液から親水性ポリマーの成分を除いたポリマー溶液に切り替えることで不織布状の複合繊維からなる高密度層を前記綿状の成形体(低密度層)の最表面に形成することができる。続けて、疎水性ポリマーと親水性ポリマー成分が混合されたポリマー溶液に切り替えることで綿状の複合繊維を前記高密度層の上に形成することができる。

【0077】
また、高密度層を繊維成形物の内部に形成させる別の方法としては、疎水性ポリマーと親水性ポリマー成分が混合されたポリマー溶液のエレクトロスピニングにより疎水性ポリマーの繊維の内部に親水性ポリマーの繊維が形成された綿状の複合繊維の成形体を形成している場合、エレクトロスピニングの電場を大きくすることにより不織布状の複合繊維からなる高密度層を前記綿状の成形体(低密度層)の最表面に形成することができる。続けて電場を元に戻すことにより綿状の複合繊維を前記高密度層の上に形成することができる。

【0078】
該操作を複数回行うことにより、綿状の成形体内部に、複数の高密度層が前述の範囲において任意の厚さで形成された、粗密構造を有する担体を形成することが可能である。高密度層及び低密度層の厚みは、例えば、該層をエレクトロスピニングにより集積する時間を変更することにより容易に制御することができる。また、異なるポリマー組成からなるポリマー溶液や異なる任意の成分を含有するポリマー溶液を切り替えながらエレクトロスピニングを行うことにより担体を形成することで、担体内部の層毎に、薬剤除去や異なる細胞応答、異なる生分解速度等の機能を付与することができる。

【0079】
高密度層を、繊維成形物の内部及び表面の両方に形成させる方法としては、本発明を制限するものではないが、例えば、繊維成形物の内部に高密度層を形成させる方法と、繊維成形物の表面に高密度層を生成させる方法を組み合わせればよい。

【0080】
該高密度層を構成する繊維の平均繊維径は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、好ましくは0.05~30μmが例示される。繊維径は前述と同様に説明される。

【0081】
本発明において担体はこの限りにおいて制限されないが、後述する複合体において、担持された歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の骨芽細胞への分化を一層効率良く誘導する観点から、複合体を構成する担体としてより好ましくは、後述の実施例に示すアルカリフォスファターゼ染色を指標とする評価において、担体2(嵩密度0.21g/cm、厚み80μm程度の繊維形成体)を用いた場合よりも歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の骨芽細胞への分化を効率良く誘導できる(分化誘導を促進できる)担体が例示される。

【0082】
ここで、後述の実施例に示すアルカリフォスファターゼ染色を指標とする評価とは次の手順に従う。すなわち、未分化骨芽細胞と担体との複合物を、10mmol/l β-グリセロリン酸、50μg/ml アスコルビン酸、100nmol/l デキサメタゾンを含むMF培地(東洋紡社製)で37℃、5%CO2存在下で培養し、10wt%ホルムアルデヒドで30分間固定し、アルカリフォスファターゼ染色剤で5分間染色し、アルカリフォスファターゼ活性を測定する。骨芽細胞への分化が効率良く誘導できるとは、複合体を構成する担体として担体2を用いた場合よりも、アルカリフォスファターゼ陽性となる時間が早いことをいう。

【0083】
また、本発明において担体はこの限りにおいて制限されないが、複合体において石灰化を一層効率良く誘導する観点から、複合体を構成する担体として好ましくは、後述の実施例に示すアリザリンレッド染色を指標とする石灰化評価において、担体2を用いた場合よりも効率良く石灰化を誘導できる(石灰化を促進できる)担体が例示される。

【0084】
ここで、後述の実施例に示すアリザリンレッド染色を指標とする評価とは次の手順に従う。すなわち、未分化骨芽細胞と担体との複合物を10mmol/l β-グリセロリン酸、50μg/ml アスコルビン酸、100nmol/l デキサメタゾンを含むMF培地(東洋紡社製)で37℃、5%CO存在下で培養し、10wt%ホルムアルデヒドで30分間固定し、アリザリンレッドを用いて5分間染色する。効率良く石灰化されるとは、該染色において、複合体を構成する担体として担体2を用いた場合よりも、石灰化する時間が早いことをいう。

【0085】
このようにして得られる担体の形態、大きさ等は特に制限されず、適用対象となる骨組織の損傷部位に応じて適宜設計すればよい。

【0086】
本発明を制限するものではないが、前述のようにして得られる担体のモデル図を、図6~11に例示する。

【0087】
複合物
本発明において歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と担体との複合物とは、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞が前記担体の少なくとも一部に担持されている限り制限されない。

【0088】
担持方法としては、該担体に該細胞が接触する限り制限されず、例えば該担体に該細胞を含有する溶液(液状、半固形状を含む)及び/または固形物を含浸、塗布、噴霧、注入、埋め込む等の方法が挙げられ、該細胞は細胞スフェロイドの状態であってもよい。また、例えば、細胞シートや細胞を担持したシート状材で前記担体の少なくとも一部を覆いながら培養して細胞を前記担体に付着させる方法が挙げられる。

【0089】
また、該細胞の該担体への担持量も、本発明の効果が得られる限り制限されないが、例えば、担体1cmあたり、前記歯槽骨由来の未分化骨芽細胞が好ましくは1×10~5×10cells、より好ましくは1×10~4×10cellsとなる担持量が例示される。

【0090】
本発明を制限するものではないが、例えば、該細胞を含有する溶液等を一旦繊維成形体に保持させた後、圧縮して内部に保持された細胞培養液等の溶液を排出することで、前記担体中で容易に細胞を濃縮することができる。圧縮後の繊維成形体の密度を担体として用いるのに好ましい範囲として、本発明の複合物として適宜用いてもよい。

【0091】
本発明の複合物によれば、優れた骨組織再生能が可能であるため、骨組織の損傷を伴う疾患において、骨組織を再生して正常な状態に回復させるために使用することができる。本発明の複合物は、歯周病によって損傷した歯槽骨、骨肉腫により損傷した骨、骨転移した癌により損傷した骨、骨折等のあらゆる骨組織の損傷に対して適用することができ、適用対象は制限されない。本発明の複合体において、格段に優れた治療(再生)効果を奏させるとの観点から、歯周病によって損傷した歯槽骨が好適な適用対象である。

【0092】
本発明の複合物は、骨組織の損傷部位に投与(移植)することによって使用される。また、本発明の複合物は、そのまま骨組織の損傷部位に投与(移植)してもよく、in vitroにおいて担持させた前記未分化骨芽細胞の少なくとも一部を担体で増殖させた後に、骨組織の損傷部位に投与(移植)してもよい。また、本発明の複合物は、in vitroにおいて前記未分化骨芽細胞の少なくとも一部を骨芽細胞に分化させた後に、骨組織の損傷部位に投与(移植)してもよい。このことから、本発明は、前記歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の少なくとも一部が歯槽骨由来の骨芽細胞に分化した状態にある複合物を提供するものでもあり、これは、骨芽細胞分化複合物ということもできる。また、本発明の複合物は、in vitroで担体の少なくとも一部に骨組織が形成された後に、骨組織の損傷部位に投与(移植)してもよい。このことから、本発明は、前記歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の少なくとも一部が石灰化した状態にある複合物を提供するものでもあり、これは石灰化複合物ということもできる。

【0093】
骨組織の損傷部位に、本発明の複合物を投与(移植)する方法としては、本分野において従来公知の方法に従えばよく、また、対象となる骨組織の種類や損傷の程度等に応じて適宜設定すればよい。

【0094】
本発明における骨組織の再生において、本発明の複合物の投与量については、疾患の症状の程度、患者の性別や年齢等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、骨組織の損傷部位あたり、前記歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の適用量が1×10~1×10cells、好ましくは2×10~4×10cells、より好ましくは2.5×10~3.5×10cellsとなるように設定すればよい。

【0095】
なお、本発明の複合物は、自家移植のための複合物として用いられてもよく、他家移植のための複合物として用いられても良い。拒絶反応を一層抑制するとの観点から、本発明の複合物は、自家移植用として用いられることが好ましい。

【0096】
本発明の複合物をこのように投与(移植)することによって、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の骨組織の損傷部位での生着率を一層高めて、従来困難であった臨床上有用な骨組織再生を一層促進することが可能になる。

【0097】
本発明の複合物は、必要に応じて、更に薬学的に許容される希釈用担体と共存していてもよい。ここで、薬学的に許容される希釈用担体としては、例えば生理食塩水といった緩衝液等が例示される。本発明の複合物は、必要に応じて、更に薬理活性成分と共存していてもよい。これらのことから、本発明の複合物は骨組織再生用の細胞製剤として使用することができる。また、本発明の複合物は必要に応じて薬学的に許容される緩衝液や薬理活性成分等の任意の成分とともに使用してもよく、これらの任意の成分は当業者が適宜選択すればよい。

【0098】
また、本発明の複合物は、本発明の効果を妨げない範囲において、また、薬学的に許容される限り、従来公知のスキャフォールドと更に組み合わせて使用してもよく、このようなスキャフォールドとして、例えば、ゲル状体または多孔体で、生体適合性を有する材料が挙げられる。このようなスキャフォールドの具体的な例として、フィブリンゲル(フィブリン糊)、ヒドロシキアパタイト、PGLA(poly DL-lactic-co-glycolic acid)-コラーゲンスポンジ等が例示される。本発明の複合物は、このようなスキャフォールドと共に骨組織の損傷部位に投与(移植)してもよい。

【0099】
このことから本発明は、前記複合物を含有する骨組織再生用の細胞製剤を提供するともいえる。該細胞製剤は必要に応じて前述の任意の成分を含有してもよく、前述の従来公知のスキャフォールドを含有してよく、各成分やスキャフォールドの選択、その含有量等は、当業者が適宜選択すればよい。

【0100】
前記複合物を用いた骨組織再生方法
また、本発明は、骨組織の損傷を伴う患者の該骨組織部位に、前記複合物を投与する工程を含む、骨組織の損傷の治療方法を提供する。該治療方法において、治療対象となる骨組織の損傷、使用される複合物、複合物の投与量、投与方法等については、前述の通りである。

【0101】
本発明の複合物をこのように投与(移植)することによって、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の骨組織の損傷部位での生着率を一層高めて、従来困難であった骨組織再生を一層促進することが可能になる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の調製
倫理委員会の規約に基づいてインフォームドコンセントを得られた4名の患者(66歳、53歳、52歳、27歳の4名の患者)から抜歯時に除去された歯槽骨を用いて、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の調製を行った。
【実施例】
【0103】
得られた歯槽骨を、2mg/mlの細菌由来のコラーゲナーゼ(>1.5 U/mg;Collagenase P, Roche社製)を含むPBS(Phosphate buffered saline, pH 7.2)4ml中に入れて、37℃で20分間酵素反応を行った。反応後、酵素液と等量のウシ血清を加えた後に遠心分離にて遊離した細胞を回収し、残存する歯槽骨に対しては、再度、前記と同条件で酵素処理を行った。この操作を繰り返して、最終的に8回の酵素処理を行った。それぞれの酵素処理後に回収された8個の細胞分画の内、1回目と2回目の酵素処理後に回収された細胞分画は廃棄し、残りの6つの細胞分画をそれぞれMFスタート培地(Toyobo, Tokyo, Japan)4mlを含む35mm培養皿に入れ、5%CO2、37℃の条件下で培養を行った。
【実施例】
【0104】
培養皿中で細胞が80%コンフルエントに達した時に、0.25%トリプシン/1mM EDTAを含むPBSで細胞を遊離させ、ヒト歯槽骨由来の未分化骨芽細胞(HAOB)を回収した。なお、以降に示す試験は、5回目の酵素処理後に回収された細胞分画から得られたHAOBを使用した。また、以降、66歳の患者から得られた歯槽骨由来のHAOBをHAOB1;53歳の患者から得られた歯槽骨由来のHAOBをHAOB2;52歳の患者から得られた歯槽骨由来のHAOBをHAOB3;及び27歳の患者性から得られた歯槽骨由来のHAOBをHAOB4とそれぞれ表記する。
【実施例】
【0105】
実施例2:歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の増殖能の評価
実施例1で得られたHAOBを、MF培地(Toyobo, Tokyo, Japan)に、3×104cells/mlとなるように播種し、3日間おきに培地を交換することにより、70日間継代培養した。その間、HAOBのpopulation doubling(PD)を測定した。
【実施例】
【0106】
また、35PDのHAOB3をColcemid (Karyo Max; Gibco BRL; 100 ng/ml for 6 h)処理を行うことにより間期に誘導した。斯くして間期に誘導されたHAOB3(約50cells)に対して、Gバンド法にてHAOB3の染色体構造を解析した。更に、斯くして間期に誘導されたHAOB3に対して、SKY(Spectral Karyotyping)法にてHAOB3の染色体構造を解析した。
【実施例】
【0107】
結果を図12に示す。図12のA)の結果から、中高年層の歯槽骨から得られたHAOB(HAOB1~3)は、若年者の歯槽骨から得られたHAOB(HAOB4)と同等の増殖速度を示すことが確認された。また、図12のB)に示す、間期のHAOB3の染色体構造を解析した結果から、正常2倍体像が確認されたことから、HAOBは正常且つ安定な増殖能を備えていることが分かった。他のHAOBにおいても同様の結果が認められた。
【実施例】
【0108】
実施例3:歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の増殖特性の評価
実施例1で得られたHAOB3を2×104 cells/wellで96穴プレートに播種し、血清非添加のDulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)で24 時間培養した後に、10ng/mlのbFGF、PDGFAA、PDGFABまたはPDGFBBを含むDMEM培地で96時間培養し、細胞増殖活性を評価した。また、コントロールとして、同様に、DMEM培地で培養後のHAOB3を、血清非添加のDMEM、20容量%FCSを含むDMEMまたはMF培地を用いて96時間培養して、細胞増殖活性を評価した。なお、細胞増殖活性は、Celltiter-Glo luminesescent cell viability assay (promega)を用い、業者指定の方法に従って測定した。
【実施例】
【0109】
結果を図13に示す。図13の縦軸には、細胞増殖活性として、血清非添加のDMEMを用いて培養した場合の細胞数を1として算出した相対値を示す。この結果から、HAOBの増殖は、PDGFAA、PDGFABまたはPDGFBBを添加した場合に格段に向上しており、これらの増殖因子の存在下で培養することがHAOBの増殖に有効であることが明らかとなった。
【実施例】
【0110】
実施例4:歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の分化能の評価(In vitro)-1
培養皿に、実施例1で得られたHAOB3を3×104 cells/ml/cm2の濃度で2ml播種した後に、100nMデキサメタゾン、50μg/mlアルコルビン酸、10mM β-グリセロリン酸、及び100ng/ml rhBMP-2(Recombinant human bone morphogenetic protein-2)を含むMF培地(以下、rhBMP-2添加培地と表記する)1ml/cm2に交換し、培地を3日間おきに交換しながら9日間培養し、HAOB3の分化特性を評価した。また、比較として、rhBMP-2添加培地の代わりに、rhBMP-2を含まないこと以外は上記rhBMP-2添加培地と同組成の培地を用いて上記と同条件で培養を行い、HAOB3の分化特性を評価した。
【実施例】
【0111】
更に、比較のために、ヒト表皮由来繊維芽細胞(HFF)(タカラバイオ株式会社)を上記と同条件で、hBMP-2添加培地またはMF培地で培養を行い、HFFの分化特性を評価した。
【実施例】
【0112】
なお、本試験において、分化特性は、アルカリフォスファターゼ活性の測定、アリザリンレッド染色、骨芽細胞の分化マーカー(RUNX2、OSTERIX、OSTEOCALCIN(OCN)、BONE SIALOPROTEIN(BSP))の発現レベルの測定、及びOSTEOPONTIN(OPN)とOCNに対する抗体で免疫染色を行うことにより、評価した。これの具体的な測定条件は次の通りである。
【実施例】
【0113】
<アルカリフォスファターゼ活性の測定>
細胞を4%パラホルムアルデヒドで20分間固定した後に、0.1 mg/ml naphthol AS-MX phosphate(Sigma)、0.5% N-N dimethyl formamide (Sigma)、2 mM MgCl2、0.6 mg/ml Fast Blue BB salt(Sigma)を含む0.1M TRIS-HCl(pH 8.5)溶液で室温にて反応させることにより、アルカリフォスファターゼ活性を測定した。
【実施例】
【0114】
<アリザリンレッド染色>
細胞を4%パラホルムアルデヒドで20分間固定した後に、2% alizarin red S (pH 6.4)(Sigma) で染色し、検出した。
【実施例】
【0115】
<骨芽細胞の分化マーカー発現レベルの測定>
細胞から全RNAを抽出し、PCR法によりRUNX2、OSTERIX、OCN、及びBSPの発現レベルを測定した。細胞から全RNAの抽出は、Isogen(Nippon Gene, Tokyo, Japan)を用いて業者指定の方法に従って実施した。cDNAは、1μg)の全RNAとreverse transcriptase(M-MLV reverse transcriptase, Invitrogen Corporation )を用いて作製した。また、mRNAの発現レベルは、Power SYBR Green PCR Master Mix (Applied Biosystems)を用いてAB 7300 Real-Time PCR System (Applied Biosystems)にて解析した。使用したプライマーの配列は以下の通りである。
OSTERIX (Forward primer : CTGAAGAATGGGTGGGGAAGG(配列番号1), reverse primer : GGCCTCTGTCCTCCTAGCTC(配列番号2))
RUNX2 (Forward primer : GAAACTCAACAGATTAACTATCGTTTGC(配列番号3), Reverse primer : GAATTTATCACAGATGGTCCCTAATGG(配列番号4))
OSTEOCALCIN (Forward primer : CACACTCCTCGCCCTATTGG(配列番号5), Reverse primer : TGCACCTTTGCTGGACTCTG(配列番号6))
BONE SIALOPROTEIN (Forward primer : CGAATACACGGGCGTCAATG(配列番号7), Reverse primer : GTAGCTGTACTCATCTTCATAGGC(配列番号8))
BMP2 (Forward primer : CCAGAAACGAGTGGGAAAAC(配列番号9), Reverse primer : AATTCGGTGATGGAAACTGC(配列番号10))
glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH) (Forward primer :AAGAGCACAAGAGGAAGAGAGAGAC(配列番号11)、Reverse primer : TTATTGATGGTACATGACAAGGTG(配列番号12))。
【実施例】
【0116】
<OPNとOCNに対する抗体を用いた免疫染色>
細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定後、OPNに対する抗体及びOCNに対する抗体で免疫染色を行い、OPNとOCNの発現量を測定した。
【実施例】
【0117】
結果を図14-1と図14-2に示す。図14-1のA)にアリザリンレッド染色結果(左)及びアルカリフォスファターゼ活性の測定結果(右)を示す。図14-1のA)の左図から明らかなように、HAOB3はhBMP-2添加培地(図中+)で培養することにより、アリザリンレッドによる染色が顕著に認められたことから、高い石灰化能力が発現していることが分かった。また、図14-1のA)の右図に示されるように、HAOB3はhBMP-2添加培地で培養することによって、骨形成の指標となるアルカリフォスファターゼ活性が著しく向上していることも確認された。一方、HFFでは、hBMP-2添加培地で培養しても、アリザリンレッドにより染色されず、アルカリフォスファターゼ活性も認められなかった。
【実施例】
【0118】
更に、図14-1のB)にRUNX2、OSTERIX、OCN及びBSPの発現レベルを測定した結果を示す。図14-1のB)では、各分化マーカーの発現量について、β-Actinの発現量を100とした相対値を示している。この結果からも、HAOB3はhBMP-2添加培地で培養することによって、RUNX2、OSTERIX、OCN及びBSPの発現レベルが上昇しており、骨形成能が発現されていることが確認された。一方、HFFでは、hBMP-2添加培地及びMF培地のいずれで培養しても、上記分化マーカーの発現は認められなかった。
【実施例】
【0119】
また、図14-2に、OPNとOCNに対する抗体を用いて免疫染色した結果を示す。図14-2から分かるように、rhBMP-2で刺激していないHAOB3はわずかながらOPN及びOCNを発現していたが、rhBMP-2で刺激したHAOB3ではOPN及びOCN抗体に強陽性の反応を示した。この結果からも、HAOBは、分化誘導前は未分化骨芽細胞の性質を示し、rhBMP-2刺激によりOPN陽性及びOCN陽性の骨芽細胞へと分化することが確認された。
【実施例】
【0120】
これらのことから、HAOBは未分化骨芽細胞から骨芽細胞へと良好に分化できること分かった。
【実施例】
【0121】
実施例5:歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の分化能の評価(In vitro)-2
実施例1で得られたHAOB3を、MF培地(Toyobo, Tokyo, Japan)に、3×104cells/mlとなるように播種し、3日間おきに培地を交換しながら、29PDまで培養を行った。6PD、11PD、16PD、21PD、24PD及び29PDのHAOB3について、上記実施例4と同条件で、rhBMP-2添加培地で培養した後に、アリザリンレッド染色及び骨芽細胞の分化マーカー(RUNX2、OSTERIX、OCN、BSP)の発現レベルの測定を行った。
【実施例】
【0122】
結果を図15に示す。図15のA)にアリザリンレッド染色結果、B)にOCNの発現レベルを測定した結果、並びにC)にRUNX2、OSTERIX及びBSPの発現レベルを測定した結果を示す。図15のB)及びC)では、各分化マーカーの発現量について、β-Actinの発現量を100とした相対値を示している。図15から明らかなように、16PDのHAOB3であっても、骨形成能を十分に発現可能であり、骨芽細胞分化能を保持していた。
【実施例】
【0123】
このことからHAOBは骨芽細胞分化能、骨形成能を十分に有していることが確認された。
【実施例】
【0124】
実施例6:歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の骨細胞への分化能の評価(In vitro)-3
培養皿に、実施例1で得られたHAOB3を3×104 cells/ml/cm2の濃度で播種した後に、100nMデキサメタゾン、50μg/mlアルコルビン酸、10mM β-グリセロリン酸、及び50, 100, 200, 500または1000ng/mlのrhBMP-2を含むMF培地に交換し、培地を3日間おきに交換しながら9日間培養し、HAOB3の分化特性を評価した。分化特性は、上記実施例4と同様の方法で、アルカリフォスファターゼ活性の測定、アリザリンレッド染色、及び骨芽細胞の分化マーカー(RUNX2、OSTERIX、OCN、BSP)の発現レベルの測定を行うことにより、評価した。
【実施例】
【0125】
また、比較として、大腿骨由来骨芽細胞(NHOst)(Lonza Walkersville Inc 、MD、USA)を用いて、上記と同条件で培養を行い、同様に分化特性を評価した。
【実施例】
【0126】
結果を図16に示す。図16のA)にアリザリンレッド染色結果(左)及びアルカリフォスファターゼ活性の測定結果(右)を示す。この結果から、HAOB3は、NHOstに比べて、アルカリフォスファターゼ活性に関しては両者共に同程度の活性が観察されたが、石灰化能力に関しては低濃度のrhBMP-2でアリザリンレッド染色陽性の石灰化物が形成されており、骨形成能を強く発現できることが確認された。
【実施例】
【0127】
また、図16のB)に100ng/mlのrhBMP-2で分化誘導したHAOB3とNHOstのRUNX2、OSTERIX及びBSPの発現レベルを測定した結果を示す。図16のB)では、各分化マーカーの発現量について、β-Actinの発現量を100とした相対値を示している。この結果からも、100ng/mlのrhBMP-2では、HAOB3は、NHOstに比べて強く分化誘導されており、骨形成能を強く発現できることが確認された。
【実施例】
【0128】
実施例7:歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の分化能の評価(In vitro)-4
100nMデキサメタゾン、50μg/mlアルコルビン酸、10mM β-グリセロリン酸、及び100ng/ml rhBMP-2を含むMF培地に、HAOB3またはNHOstを3×104 cells/ml/cm2となる濃度で混合し、その0.5mlをカバーグラス上に添加した。これを5%CO2、37℃の条件下で72時間培養を行った。次いで、カバーグラス上から培養上清を取り除き、50% acetone/methanol溶液で2分間固定した後に、1mg/ml ウシアルブミンを含むPBSでブロッキングを行った。斯くしてブロッキングを行ったカバーグラス上の細胞に、抗OCNモノクローナル抗体(clone GluOC4-5、Takara、Tokyo、Japan)を作用させた後に、抗mouse alexa 488二次抗体(Invitrogen Corporation)と反応させることによりOCNを染色した。また、ブロッキングを行ったカバーグラス上の細胞に、抗OSTEOPONTIN(OPN)ポリクローナル抗体(O-17、IBL、Gunnma、Japan)を作用させた後に、抗rabbit alexa 555 二次抗体 (Invitrogen Corporation)と反応させることによりOPNを染色した。更に、ブロッキングを行ったカバーグラス上の細胞に対して、DAPI(4’,6-diamino-2-phenylindole)で核染色を行った。
【実施例】
【0129】
斯くして染色された細胞を403nm, 488nm及び543nmのレーザー光線を用いた共焦点レーザー顕微鏡(LSM510; Carl Zeiss MicroImaging, Jena, Germany )にて観察した。
【実施例】
【0130】
結果を図17に示す。図17中、aには分化誘導したHAOB3のOPNを染色した結果、bには分化誘導したHAOB3のOCNを染色した結果、cにはaとbを重ね合わせた像、dには分化誘導したNHOstのOPNを染色した結果、eには分化誘導したNHOstのOCNを染色した結果、fにはdとeを重ね合わせた像を示す。この結果からも、分化誘導されたHAOB3は、全て抗OPN抗体と抗OCN抗体に陽性反応を示しており、OPNとOCNの発現の程度も、NHOst と比較して顕著に高いものであった。
【実施例】
【0131】
実施例8:歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の分化特性の評価
培養皿に、実施例1で得られたHAOB3またはNHOstを3×104 cells/ml/cm2の濃度で播種した後に、100nMデキサメタゾン、50μg/mlアルコルビン酸、10mM β-グリセロリン酸、及び100ng/ml rhBMP-2を含むMF培地1ml/cm2に交換し、培地を3日間おきに交換しながら9日間培養した。培養9日後の細胞について、BMP-2の発現量をReal-Time PCR法により測定した。なお、細胞からのRNA採取及びcDNA合成は、上記実施例4と同じ手法で行った。RT-PCRはTakara EX taq (Takara 、Tokyo、Japan) を用い、業者指定の方法に従って行った。
【実施例】
【0132】
結果を図18に示す。図18に示すように、HAOB3から分化誘導された細胞は、NHOstから分化誘導された細胞に比して200倍以上ものBMP-2を発現していた。この結果からも、HAOBは、NHOstとは明らかに異なる特徴を有していることが支持された。
【実施例】
【0133】
実施例9:歯槽骨由来の未分化骨芽細胞に特異的な遺伝子の解析
歯槽骨由来の未分化骨芽細胞に特異的な遺伝子の発現を解析するために以下の試験を行った。
【実施例】
【0134】
実施例1で得られたHAOB1~4を、MF培地(Toyobo, Tokyo, Japan)に、3×104cells/mlとなるように播種し、3日間おきに培地を交換しながら、35PDまで培養を行った。
【実施例】
【0135】
次いで、6PD、11PD、16PD、21PD、24PD、29PD及び35PDのHAOBから全RNAを抽出し、6PD及び35PDのHAOBにおける発現遺伝子の強度を分析した。発現遺伝子の強度は、約3,3000個の遺伝子の完全長のプローブを含むHT Human Genome U133 Array Plate Set(Gene Chip; Affymetrix,CA,U.S.A.)を用い、Affymetrix社のマニュアル[http://www.affymetrix.com/support/technical/index.affx]に従い行った。データ解析はGene Chip Operation System(Affymetrix CA,U.S.A.)、及びGeneSpringGX software (Silicon Genetics)を用いて行った。チップ間の染色性の変化を標準化するため,全ての遺伝子のチップ上における測定値の中央値の平均を採用した。また、特異値分解(SVD)を用いた主成分分析(PCA法)にてロウデータ及び対数変換したデータにおける固有ベクトルを作製した。(参考文献:Kami D,Shiojima I, Makino H, Matsumoto K,Takahashi Y, Ishii R, Naito AT,Toyoda M, Saito H, Watanabe M,Komuro I, Umezawa A: Gremlin enhances the determined path to cardiomyogenesis, PLoS ONE,3:e2407.2008)
【実施例】
【0136】
また、比較のために、ヒト表皮由来線維芽細胞(HFF)(タカラバイオ株式会社)、ヒト骨肉腫細胞(MG63)(理研バイオリソースセンター)、及び大腿骨由来骨芽細胞(NHOst)(Lonza Walkersville Inc 、MD、USA)についても、同様に発現遺伝子の強度を分析した。
【実施例】
【0137】
PCA解析の結果、PDの増加に伴い、発現が低下する遺伝子群の存在が判明した。これらの遺伝子中から特にHAOBにおいて高発現している遺伝子をスクリーニングし、リアルタイムPCRにより遺伝子の発現量の測定を行った。その結果を図19のA)に示す。図19のA)では、各遺伝子の発現量について、β-Actinの発現量を100とした相対値を示している。図19のA)に示されるように、STMN2、NEBL、及びMGPが6PDのHAOBでは高発現しているが、35PDのHAOB3では殆ど発現していないことを確認した。
【実施例】
【0138】
HAOB3の6PDにおいて、これらの遺伝子発現と骨マーカー遺伝子であるRUNX2、OSTERIX、OSTEOCALCIN及びBSPの遺伝子発現量をリアルタイムPCRにより測定した。その結果を図19のB)に示す。図19のB)では、各遺伝子の発現量について、β-Actinの発現量を100とした相対値を示している。図19のB)に示されるように、STMN2、NEBL及びMGPの発現量が明らかに高い値であった。また、図19のC)に示すように、HAOB3の6PDと35PDにおける遺伝子変化率を解析した結果、OCNが最も高い変化率を示した。しかしながら、OCNは6PDでの発現量が少ないため、HAOBの識別マーカーとしては適していないと考えられる。
【実施例】
【0139】
次に、ヒト表皮由来繊維芽細胞(HFF)、ヒト骨肉腫細胞(MG63)、大腿骨由来骨芽細胞(NHOst)及びPD6のHAOB1~4におけるSTMN2、NEBL及びMGPの発現量をリアルタイムPCRで測定した。なお、リアルタイムPCRで使用したプライマーの配列は以下の通りである。
【実施例】
【0140】
STMN2 (Forward primer :acgtctgcaggaaaaggaga(配列番号13)、Reverse primer : acgatgtagtcgccgtctct(配列番号14))
NEBL(Forward primer : cattcccaaggctatggcta(配列番号15)、Reverse primer : acgatgtagtcgccgtctct(配列番号16))
MGP(Forward primer :cgcttcctgaagtagcgatt(配列番号17)、Reverse primer : ccctcagcagagatggagag(配列番号18))
得られた結果を図20に示す。図20では、各遺伝子の発現量について、β-Actinの発現量を100とした相対値を示している。図20から分かるように、HAOBにおいて明らかに高いSTMN2、NEBL及びMGPの発現が観察された。
【実施例】
【0141】
以上の結果より、STMN2、NEBL及びMGPの発現がHAOBの特異的マーカーになり得ることが確認された。
【実施例】
【0142】
実施例10:担体の作製
実施例10-1
次の手順に従い担体を製造した。クロロホルムにポリ-L-乳酸(PLLA)(商品名RESIMER L206s、Evonik Rohm GmbH社製)を10wt% となるように溶解した後、得られた溶液に、PLLAに対して0.5~13wt%の重量のゼラチン(商品名メディゼラチン、ニッピ社製)を溶解したホルムアミド溶液を5~25vol%となるように添加して混合しポリマー溶液を調製した。調製したポリマー溶液をシリンジから吐出しつつ、1000V/cmの電場を印可することで、エレクトロスピニングにより紡糸し、コレクター(対電極)上に捕集することで綿状の成形体を形成した。
【実施例】
【0143】
なお、ゼラチンのホルムアミド溶液の添加量が5vol%より小さい場合で且つゼラチンの添加量が1.3wt%より小さい場合には、綿状の成形体が得られなかった。また、ゼラチンのホルムアミド溶液の添加量が多すぎると、混合して得られるポリマー溶液の粘性が高くなりすぎて、エレクトロスピニングを行うことが困難になる。前記条件においてゼラチンのホルムアミド溶液の添加量がおおむね25vol%以下であれば、エレクトロスピニングを良好に実施することが可能で、綿状の形成体の製造が可能であった。
【実施例】
【0144】
次に、ポリマー溶液の組成を変更せずに電場の条件を1000V/cmから2000V/cmに変更するか、あるいは、電場の条件を変えずに、前記ポリマー溶液を、クロロホルムにPLLAを10wt%となるように溶解した後、N,N-ジメチルホルムアミドを1.1vol%になるように添加して混合して得たポリマー溶液に切り替えて、得られた綿状の成形体に対してエレクトロスピニングを行うことで、綿状の成形体上に被覆層(形状安定化層)を形成した。被覆層の厚みが2~3μmとなるように綿状の成形体の表面(上面及び下面)に被覆層を形成した。被覆層を施された綿状の繊維成形体を嵩密度がおよそ0.003g/cm3になるように調整して成形処理を行い、再生医療用の細胞培養担体とした。これを担体1(綿状担体)とした。担体1のモデル図は図4で表わされる。
【実施例】
【0145】
なお、嵩密度は、前記成形処理後の被覆層を付した繊維成形体は、全体として実質的に直方体であり、その縦、横、厚みを測定して体積を算出するとともに、ウルトラミクロ天秤にてその重量を秤量し、重量を体積で除することにより算出した。
実施例10-2
実施例10-1においてクロロホルムにPLLAを10wt%となるように溶解した後、N,N-ジメチルホルムアミドを1.1vol%になるように、ゼラチンを溶解したN,N-ジメチルホルムアミド溶液を添加して混合したポリマー溶液を用いた以外は、同様に紡糸、捕集することにより、布状に繊維を形成し、所定の厚み(80μm程度)の繊維形成体を形成し、該繊維形成体の嵩密度を0.21g/cm3に調整した。これを担体2(不織布状担体)とした。担体2の嵩密度は前述と同様にして算出した。
【実施例】
【0146】
実施例10-3
実施例10-1においてクロロホルムにPLLAを10wt%となるように溶解した後、エレクトロスピニングの条件を2000V/cmの電場へと変更して同様に紡糸、捕集することにより、布状に繊維を形成し、所定の厚み(80μm程度)の繊維形成体を形成し、該繊維形成体の嵩密度を0.21g/cm3に調整した。これを担体3(不織布状担体)とした。担体3の嵩密度は前述と同様にして算出した。
【実施例】
【0147】
実施例10-4
前記実施例10-1と同様の手順で綿状の成形体(低密度層)を形成する途中で、ポリマー溶液を前記実施例10-2で用いたN,N-ジメチルホルムアミドを1.1vol%になるように添加して混合したポリマー溶液に切り替えて前記実施例10-2と同様に紡糸、捕集することにより、布状の高密度層を形成し(高密度層の厚みは5~20μm)、次いで前記実施例10-1で用いたポリマー溶液に切り替えて実施例10-1と同様に紡糸、捕集することにより、綿状の成形体と布状の形成体との粗密構造を有する構造体を形成した。得られた構造体に、実施例10-1と同様に被覆層を形成した後、嵩密度を0.0035g/cm3に調整して成形処理を行い、担体を得た。これを担体4(粗密構造担体)とした。調整後の高密度層の嵩密度は0.21g/cm3、低密度層の嵩密度は0.003g/cm3であった。
【実施例】
【0148】
また、前記実施例10-1で用いたポリマー溶液と前記実施例10-2で用いたポリマー溶液を交互に切り替えながら積層することで成形体内部に複数の低密度層と高密度層を含む粗密構造を有する担体を形成することも可能であった。例えば、高密度層(高密度層の厚みは5~20μm)を3層形成して、前記実施例10-1と同様に被覆層を形成した後、高さが5mmとなるように低密度層と共に成形処理を行うことで、内部に約1.25mmの間隔で高密度層が形成された、嵩密度が0.0043g/cm3にある担体を製造することが可能であった。調整後の高密度層及び低密度層の嵩密度は前述と同様にいずれも0.0001~0.25g/cm3の範囲にあった。
【実施例】
【0149】
なお、この場合、綿状の成形体(低密度層)を構成する繊維は、平均径0.5~20μmの疎水性ポリマーを含む繊維の内部に、10~1000nmの親水性ポリマーを含む繊維を形成し、疎水性ポリマーを含む繊維の表面の少なくとも一部が親水性ポリマーで被覆されている状態にあり、高密度層はこのような状態になかった。
【実施例】
【0150】
実施例10-5
前記実施例10-1と同様の手順で綿状の成形体(低密度層)を形成する途中で、エレクトロスピニングの条件を1000V/cm から2000V/cmの電場へ変更して同様に紡糸、捕集することにより布状の高密度層を形成し、次いで再度1000V/cmの条件へ変更して同様に紡糸、捕集することにより、綿状の成形体(低密度層)と布状の形成体(高密度層)との粗密構造を有する構造体を形成した。得られた構造体に、実施例10-1と同様に被覆層を形成した後、嵩密度を0.0035g/cm3に調整して成形処理を行い、厚み10mm程度の担体を得た。これを担体5(粗密構造担体)とした。調整後の高密度層及び低密度層の嵩密度は前述と同様にいずれも0.0001~0.25g/cm3の範囲にあった。
【実施例】
【0151】
エレクトロスピニングの条件を1000V/cm と2000V/cmの電場に交互に切り替えながら積層することで成形体内部に複数の粗密構造を有する担体を形成することも可能であった。例えば、高密度層(高密度層の厚みは0.5~20μm)を3層形成して、実施例10-1と同様に被覆層を形成した後、高さが5mmとなるように低密度層と共に成形処理を行うことで、内部に約1.25mmの間隔で高密度層が形成された、嵩密度が0.0043g/cm3にある担体を製造することが可能であった。調整後の高密度層及び低密度層の嵩密度は前述と同様にいずれも0.0001~0.25g/cm3の範囲にあった。
【実施例】
【0152】
なお、この場合、平均径0.5~20μmの疎水性ポリマーを含む繊維の内部に、平均径10~1000nmの親水性ポリマーを含む繊維を形成し、疎水性ポリマーを含む繊維の表面の少なくとも一部が親水性ポリマーで被覆されている状態の繊維が高密度層を含む成形体全体に形成されていた。
【実施例】
【0153】
実施例11:担体における細胞培養
細胞培養
前述の担体5(実施例10-5、粗密構造担体)を1×1cm2に切り出し(すなわち、縦1cm、横1cm、高さ(厚み)1cm程度)、70wt %エタノールに浸漬して滅菌処理を行った後、24穴プレートの各ウェルに静置し、すぐにPBS(-)で洗浄後、MF培地で置換した。その後、HAOB3を1×10cells/担体で(すなわち切り出した担体の上部へ)播種し、CO2インキュベーターで37 ℃の条件で14日間インキュベーションし、WST8法(テトラゾリウム塩WST-8は細胞内脱水素酵素により還元され、水溶性のホルマザンを生成する。細胞数と生成するホルマザンの量は直線的な比例関係にあることから、このホルマザンの450nmの吸光度を直接測定することにより、生細胞数を計測できる。)により経時的に吸光度をVERSAMax(Molecular devices社製)を用いて測定し、細胞の増殖を調べた。担体5に代えて担体2(実施例10-2、すなわち縦横1×1cm2、高さ80μm程度)を用いた以外は同様にして実験を行った。また、比較例として、従来の再生医療において担体として使用されているコラーゲンスポンジ(商品名コラーゲンスポンジ、新田ゼラチン社製)を用いる以外は前記担体5と同様にしてHAOBを播種し、インキュベーションした。
【実施例】
【0154】
結果
結果を図21に示す。図21から明らかなように、培養後1~4日後にコラーゲンスポンジにおける細胞増殖が著しい結果となった。しかし、培養7日目以降に担体5において著しい増殖傾向を示し、培養14日後には、担体5において顕著な細胞増殖が認められ、一方で、コラーゲンスポンジでは有意な細胞増殖は認められなかった。担体2では、培養後1~4日後に細胞増殖が著しい結果となり、培養14日後においても顕著な細胞増殖が認められた。
【実施例】
【0155】
このことから、担体5は、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の増殖に適する担体であることが確認された。また、担体2も歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の増殖に有用であることが確認された。
【実施例】
【0156】
実施例12:担体における骨芽細胞分化
分化
実施例11と同様にして担体5にHAOB3を1×10cells/担体で播種し、HAOBと担体の複合物を作製した。得られた複合物におけるHAOBの骨芽細胞への分化について、骨芽細胞分化の指標としてアルカリフォスファターゼの活性度を染色によって評価した。具体的には、得られた複合物を、10mmol/l β-グリセロリン酸、50μg/ml アスコルビン酸、100nmol/l デキサメタゾンを含むMF培地(東洋紡社製)で37℃、5%CO2存在下で培養し、経時的に10wt%ホルムアルデヒドで30分間固定し、アルカリフォスファターゼ染色剤で5分間染色した。
【実施例】
【0157】
また、担体5に代えて担体2(実施例10-2)を用いた以外は同様にして実験を行った。
結果
アルカリフォスファターゼ活性の変化を示した結果を図22に示す。図22から明らかなように、担体5では培養3日目よりアルカリフォスファターゼ陽性になり、培養7日、14日、21日で上昇することが確認された。一方、担体2では、培養7日以降でアルカリフォスファターゼ染色が陽性になった。このため、いずれにおいても歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を骨芽細胞へ分化できることが確認された。なお、担体2と比較すると、担体5において分化速度が速かったことから、担体5によれば、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を一層効率良く骨芽細胞へ分化できることが確認された。
【実施例】
【0158】
実施例13:担体における石灰化誘導
実施例11と同様にして担体2及び5にHAOBを1×10cells/担体で播種し、HAOBと担体の複合物をそれぞれ作製した。得られた複合物におけるHAOBの石灰化物産生を評価するためにアリザリンレッド染色を行った。具体的には、得られた複合物を、10mmol/l β-グリセロリン酸、50μg/ml アスコルビン酸、100nmol/l デキサメタゾンを含むMF培地(東洋紡社製)で37℃、5%CO2存在下で培養し、経時的に10wt%ホルムアルデヒドで30分間固定し、2% Alizarin red S(アリザリンレッドS、和光純薬工業社製)を用いて5分間染色した。
【実施例】
【0159】
結果
アリザリンレッド染色によってカルシウム沈着の経時的な変化を図23に示す。担体2及び4のいずれにおいても石灰化物沈着が観察された。特に、図23から明らかなように、担体2では、培養14日目以降になって石灰化物沈着が観察されるが、担体5ではこれよりも早期に石灰化物沈着が観察された。このことから、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と複合物を形成することで、担体5は石灰化物沈着を効率良く誘導できることが確認された。
【実施例】
【0160】
このことから、特に担体5と歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の複合物は、骨欠損部に移植することによって効率良く骨欠損を改善できる複合物であることが確認された。
【実施例】
【0161】
実施例14:遺伝子解析
実施例13の培養後、複合物における遺伝子発現を調べるために Real time PCR法により定量化した。具体的には、前述の実施例13に従い各期間培養後、複合物からIsogenを用い製造業者の推奨する方法に従いtotal RNAを抽出した。1μgのtotal RNAから逆転写酵素M-MLVを用いてcDNAを合成した。その後、硬組織形成関連遺伝子群であるオステリックス、I型コラーゲン、Runt-related transcription factor 2 (Runx2)、オステオカルシン、骨シアロプロテインのmRNA発現量をReal time PCR法により定量した。また、定量的解析を補正するために内部標準としてGAPDH(Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)を用いた。反応条件は95℃、3分反応後に95℃、15秒、55℃、30秒、72℃、30秒を1サイクルとして45サイクル行った。製造業者の推奨するΔΔCT法によりサンプルのGAPDH mRNA発現量で補正し、各mRNA発現量の変化を算出した。
【実施例】
【0162】
結果
複合物の石灰化関連遺伝子の発現変化を示した結果を図24に示す。図24から明らかなように、培養14日目までは担体2及び5では各遺伝子群の発現に顕著な差は認められなかった。一方、培養21日目以降に、担体5は優位にオステリックス、オステオカルシン、骨シアロプロテインといった、石灰化を誘導する硬組織関連遺伝子群が高発現することが観察された。
【実施例】
【0163】
このことからも、担体5と歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の複合物は、骨欠損部に移植することによって効率良く骨欠損を改善できる複合物であることが確認された。
【実施例】
【0164】
これらのことから、本発明の担体は細胞培養操作等に耐えうる十分な性能を有しながらも、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の増殖、骨芽細胞への分化、石灰化を効率良く実施できることが確認された。これにより、大型の骨欠損を伴う重症歯周病の再生をはじめとする従来技術では成し得なかった骨組織の効率良い再生が可能になる。
【実施例】
【0165】
実施例15:担体の作製
実施例15-1
実施例10-1と同様にして、綿状の成形体(低密度層)及び被覆層を形成した。このようにして得た成形体を嵩密度がおよそ0.0032g/cm3(厚み2mm程度)となるよう圧縮し45℃以上で加熱して成形処理を行い、担体を得た。これを担体6とした。
【実施例】
【0166】
なお、担体6を構成する繊維は、疎水性ポリマーの繊維の内部に親水性ポリマーの繊維が形成された構造を有し、該構造を有する複合繊維内部で親水性ポリマーの繊維が3次元網目構造を形成していた。担体6では、このように親水性ポリマーの繊維が互いに接合することによって、複合繊維に捩じれ構造が形成されており、複合繊維同士の接触が制御されていた。また、担体6は図5と同様の被覆層を有していた。
【実施例】
【0167】
実施例15-2
紡糸時間を実施例15-1の2倍とする以外は前記実施例15-1と同様にして綿状の成形体(低密度層)を形成し、次いで、同様に被覆層を形成した。このようにして得た成形体を嵩密度がおよそ0.0048g/cm3(厚み2mm程度)となるよう調整して成形処理を行い、担体を得た。これを担体7とした。担体7も、担体6に認められた前記3次元網目構造を形成していた。また、担体7も図5と同様の被覆層を有していた。
【実施例】
【0168】
実施例15-3
紡糸時間を実施例15-1の3倍とする以外は前記実施例15-1と同様にして、綿状の成形体(低密度層)を形成し、次いで同様に被覆層を形成した。このようにして得た成形体を嵩密度がおよそ0.0064g/cm3(厚み2mm程度)となるよう調整して成形処理を行い、担体を得た。これを担体8とした。担体8も、担体6に認められた前記3次元網目構造を形成していた。また、担体8も図5と同様の被覆層を有していた。
【実施例】
【0169】
実施例15-4
被覆層を片面しか形成させない以外は実施例15-2と同様にして得た担体7’を被覆層が外側(一方の被覆層が上表面、他方の被覆層が下表面)になるように2つ上下に重ねたのち、前述と同様に成形処理し、嵩密度0.0096g/cm3、厚み2mm程度の担体を得た。これを担体9とした。担体9も、担体6に認められた前記3次元網目構造を形成していた。また、担体9も図5と同様の被覆層を有していた。
【実施例】
【0170】
実施例15-5
被覆層を片面しか形成させない以外は実施例15-3で得た担体8’を被覆層が外側になるように前述と同様に2つ上下に重ねたのち、前述と同様にして成形処理し、嵩密度0.0192g/cm3、厚み2mmの担体を得た。これを担体10とした。担体10も、担体6に認められた前記3次元網目構造を形成していた。また、担体10も図5と同様の被覆層を有していた。
【実施例】
【0171】
実施例16:担体における細胞培養
細胞培養
前記担体6~10及び担体2をそれぞれ縦1cm2×横1cm2に切り出し(厚みは前述の各値)、実施例11と同様に、70wt %エタノールに浸漬して滅菌処理を行った後、24穴プレートの各ウェルに静置し、すぐにPBS(-)で洗浄後、MF培地で置換した。その後、HAOB3を1×103cells/担体で播種して複合物をそれぞれ作製し、CO2インキュベーターで37 ℃の条件で1、4、7日間培養した。次いで、実施例11と同様にしてWST8法(Cell Counting Kit-8、同仁化学研究所製)により経時的に吸光度を測定し、細胞の増殖を調べた。
【実施例】
【0172】
結果
結果を図25に示す(縦軸は吸光度を示す)。図25から明らかなように、いずれの担体においても細胞の増殖が認められた。なお、担体2と比較すると、担体6~10では7日間という培養初期において、細胞増殖が抑えられていた。
【実施例】
【0173】
実施例17:担体における骨芽細胞分化及び石灰化
分化
前記担体6~10及び担体2をそれぞれ縦1cm2×横1cm2に切り出し、実施例16と同様の手順でMF培地を用いてHAOB3を1×104cells/担体で播種し、HAOBと担体の複合物をそれぞれ作製した。得られた複合物におけるHAOBの骨芽細胞への分化について、骨芽細胞分化の指標としてアルカリフォスファターゼの活性度を染色によって評価した。具体的には、得られた複合物を、10mmol/l β-グリセロリン酸、50μg/ml アスコルビン酸, 100nmol/l デキサメタゾンを含むMF培地(東洋紡社製)で37℃、 5%CO2存在下で1、2、3週間培養し、経時的に10wt%ホルムアルデヒドで30分間固定し、アルカリフォスファターゼ染色剤(N-N dimethl formamid、Naphthol AS-MX phosphate、Fast blue BB salt、MgCl2を含む1M tris-HCl)で5分間染色した。
【実施例】
【0174】
石灰化
前記実施例17と同様の手順でMF培地を用いてHAOB3を1×104cells/担体で播種し、HAOBと担体の複合物をそれぞれ作製した。得られた複合物におけるHAOBの石灰化物産生を評価するためにアリザリンレッド染色を行った。具体的には、得られた複合物を、前記実施例13と同様にして1、2、3週間培養し、経時的に10wt% ホルムアルデヒドで30分間固定し、2% Alizarin red Sを用いて染色した。なお、コントロールとして、HAOB3を播種していない各担体を用いる以外は前述と同様にして試験を行った。
【実施例】
【0175】
結果
結果を図26に示す。
図26から明らかなように、いずれの担体においてもアルカリフォスファターゼが陽性になり分化が認められた。また、これらの中でも、担体2と比較して、担体6~10においてより分化速度が速かった。このことから、担体6~10によれば、担体2と比較して、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を一層効率良く骨芽細胞へ分化できることが確認された。また、特に、担体8~10、更には担体9及び10においてより効率良く歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を骨芽細胞へ分化できることが確認された。
【実施例】
【0176】
また、図26から明らかなように、いずれの担体においても石灰化物沈着が観察された。また、これらのなかでも、担体2と比較して、担体6~10においてより早期に望ましい石灰化物沈着が観察された。なお、細胞を播種することなく石灰化誘導した担体を染色したところ、細胞を播種した担体と比較して、有意な染色は認められなかった(図26の下から2段目の各写真)。このことから、細胞を播種した前記担体において認められた石灰化は細胞由来(すなわち複合物由来)であることが確認された。
【実施例】
【0177】
このことから、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞と複合物を形成することで、担体6~10は石灰化物沈着を一層効率良く誘導できることが確認された。また、特に、担体8~10、更には担体9及び10においてより効率良く石灰化物沈着を誘導できることが確認された。
【実施例】
【0178】
これにより、このような担体と歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の複合物は、骨欠損部に移植することによって効率良く骨欠損を改善できる複合物であることが示唆された。
【実施例】
【0179】
実施例18:in vivoにおける骨再生
骨再生
担体10を縦1cm2×横1cm2に切り出し、前記実施例17と同様にしてHAOB3を1×4cellsを播種して複合物を作製した。次いで、骨分化誘導培地(ビタミンC、デキサメサゾン、βグリセロリン酸、BMP2を含むMF培地)で1週間培養を行った。培養後、免疫不全症マウス(SCIDマウス)の皮下に移植した。移植4週間後に摘出した組織片(移植した担体を含む組織)をヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)し、その形態を観察した。
具体的には、前記組織片を10wt%ホルムアルデヒド24時間固定し、80wt%メタノールとクロロホルムで脱脂した。次いで、10wt%ギ酸で24時間脱灰し水洗し通法に従いエタノールで脱水処理後レモゾールに置換し、パラフィンで透徹を行った。包埋して得た試料の5μmの薄切切片を作成し、HE染色を行った。HE染色は、レモゾール、エタノールで脱パラフィン後、細胞核をヘマトキシレン、細胞質をエオジンで染色することにより行い、エタノールで脱水、レモゾールで透徹封入して組織観察を行った。
なお、コントロールとして、HAOB3を播種していない担体10を用いる以外は前述と同様にして、骨再生について観察を行った。
【実施例】
【0180】
結果
図27に結果を示す。図から明らかなように、HAOB3を播種していない担体10と比較して(図27の右写真)、HAOB3を播種した担体10を用いた場合(図27の左写真)は、担体への血管侵入と担体周囲への骨芽細胞様細胞を伴う骨様構造物の形成(写真の矢印部分)が観察された。このことから、骨形成が認められた前記複合物は、生体内での骨再生に有用であることが確認された。
これらの実施例の結果から、前記担体によれば、未分化骨芽細胞の長期培養が可能であることが分かった。
また、担体2を用いた場合と比較して、担体5~10を用いた場合は、その複合物を7日間培養した場合に、すなわち培養初期に、未分化骨芽細胞の増殖が抑制された。また、担体2を用いた場合と比較して、担体5~10を用いた場合は、複合物において未分化骨芽細胞の骨細胞への分化誘導や石灰化誘導が促進された。このことから、担体2よりも、担体5~10は未分化骨芽細胞の骨芽細胞への分化誘導や石灰化誘導をより効率良く促進できることが確認された。これらの中でも、担体8~10、更に担体9及び10、特に担体10では歯槽骨由来の未分化骨芽細胞の骨芽細胞への分化誘導や石灰化誘導を一層効率良く促進できた。これらのことから、前記担体5~10、特に担体8~10、更に担体9及び10、更に特に担体10は、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞からの骨再生に一層有用であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明によれば、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞を担体において効率良く増殖及び/または分化できる。また、本発明によれば、歯槽骨由来の未分化骨芽細胞に由来する骨組織を簡便に、効率良く製造できる。本発明によれば、実用可能な程度に骨組織を再生できる。
【符号の説明】
【0182】
1:綿状の低密度層
1’:任意成分を含有する綿状の低密度層
1”:ポリマーの組成が異なる綿状の低密度層
2:被覆層(形状安定化層)
3:高密度層
3’:任意成分を含有する、または、ポリマーの組成が異なる、あるいはそれらの両方の
特徴を有する高密度層
4及び4’:内部構造や組成が異なる担体
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14-1】
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【図14-2】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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