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明細書 :ソルガム改良植物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年11月15日(2018.11.15)
発明の名称または考案の名称 ソルガム改良植物
国際特許分類 A01H   5/00        (2018.01)
A01H   5/10        (2018.01)
C12Q   1/6806      (2018.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A01H 5/00 ZNAA
A01H 5/10
C12Q 1/6806 Z
C12N 15/09 Z
国際予備審査の請求
全頁数 22
出願番号 特願2017-562802 (P2017-562802)
国際出願番号 PCT/JP2017/001175
国際公開番号 WO2017/126458
国際出願日 平成29年1月16日(2017.1.16)
国際公開日 平成29年7月27日(2017.7.27)
優先権出願番号 2016008121
優先日 平成28年1月19日(2016.1.19)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】佐塚 隆志
【氏名】春日 重光
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2B030
4B063
Fターム 2B030AA02
2B030AB03
2B030AD08
2B030CA01
4B063QA01
4B063QQ04
4B063QQ42
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS36
4B063QS40
要約 より高バイオマスであり、且つ糖原料の含有割合がより高い(高糖含量)ソルガム品種を提供すること。
ソルガム品種74LH3213の改良植物であって、6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されている74LH3213改良植物、並びに該74LH3213改良植物とソルガム品種MS79Aとを交配して得られた天高改良植物。
特許請求の範囲 【請求項1】
ソルガム品種74LH3213の改良植物であって、
6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されている、
74LH3213改良植物。
【請求項2】
前記DNA領域が、下記(A)DNAマーカーSB3412から(J)DNAマーカーSB3762までのDNA領域である、請求項1に記載の74LH3213改良植物:
(A)DNAマーカーSB3412から、
(J)DNAマーカーSB3762まで。
【請求項3】
前記置換を対の6番染色体の両方に有する、請求項1又は2に記載の74LH3213改良植物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の74LH3213改良植物の種子。
【請求項5】
工程(ア)~(エ)を含む、請求項1~3のいずれかに記載の74LH3213改良植物を製造する方法:
(ア)ソルガム品種74LH3213とソルガム品種SIL-05とを交配してF1個体を得る工程、
(イ)該F1個体をソルガム品種74LH3213に戻し交配してBC1F1個体(BCはバッククロスの意、BC1は戻し交配の回数が1であることを示す)を得る工程、
(ウ)必要に応じて、戻し交配を複数回繰り返す工程、及び
(エ)工程(ア)~(ウ)からなる群より選択される少なくとも1つの工程で得られた個体において、6番染色体DNAの一部又は全部がソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されていることを確認する工程。
【請求項6】
ソルガム品種天高の改良植物であって、
請求項1~3のいずれかに記載の74LH3213改良植物とソルガム品種MS79とを交配して得られ、且つ
74LH3213改良植物由来の6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されている、
天高改良植物。
【請求項7】
前記DNA領域が、下記(A)DNAマーカーSB3412から(J)DNAマーカーSB3762までのDNA領域である、請求項6に記載の天高改良植物:
(A)DNAマーカーSB3412から、
(J)DNAマーカーSB3762まで。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の天高改良植物の種子。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかに記載の74LH3213改良植物とソルガム品種MS79とを交配することを含む、請求項6~8のいずれかに記載の天高改良植物を製造する方法。
【請求項10】
以下の(a)~(j)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAマーカー増幅用プライマーセットを含む、ソルガム品種SIL‐05のゲノムDNAとソルガム品種74LH3213のゲノムDNAとを区別するためのキット:
(a)DNAマーカーSB3412増幅用プライマーセット、
(b)DNAマーカーSB3420増幅用プライマーセット、
(c)DNAマーカー38139115_EcoRI増幅用プライマーセット、
(d)DNAマーカー40436197_XhoI増幅用プライマーセット、
(e)DNAマーカー40470717_BamHI増幅用プライマーセット、
(f)DNAマーカーSB3517増幅用プライマーセット、
(g)DNAマーカーSB3613増幅用プライマーセット、
(h)DNAマーカーSB3621増幅用プライマーセット、
(i)DNAマーカーSB3683増幅用プライマーセット、並びに
(j)DNAマーカーSB3762増幅用プライマーセット。
【請求項11】
前記(c)~(e)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAマーカー増幅用プライマーセットを含む、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のキットを用いることを特徴とする、ソルガム品種SIL‐05のゲノムDNAとソルガム品種74LH3213のゲノムDNAとを区別する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルガム改良植物に関する。
【背景技術】
【0002】
「持続可能な開発」という理念の下、バイオリファイナリー技術の開発が進められている。バイオリファイナリー技術とは、生物資源を原料に、バイオ燃料や樹脂等を製造する技術である。バイオリファイナリー技術の具体例としては、草本系又は木質系植物体を原料としてグルコースやスクロース等の糖原料を得て、該糖原料からバイオエタノール等のバイオ燃料; 汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック、セルロース材料、複合材料等の各種樹脂; 医薬品中間体; 食品添加物等を製造する技術が知られている。これらの技術は、バイオマスから糖原料を得ることを根幹としており、この効率を高めることが重要な課題となっている。
【0003】
サトウキビは、高バイオマスであり、また簡便な処理(例えば搾汁)により糖原料を得ることができるので、上記バイオリファイナリー技術の原料として有用であるとされている。しかし、サトウキビは食用の砂糖の原料でもあるので、バイオリファイナリー技術の利用が拡大するにつれて、食用の砂糖の価格が高騰するという問題が生じている。このため、サトウキビに代わる、バイオリファイナリー技術の原料を開発することが極めて重要である。
【0004】
ソルガム(Sorghum bicolor)は、品種によってはサトウキビのように高バイオマスのものがある。例えば天高という品種は平均稈長が約3.5 mもあり、これはサトウキビに匹敵するレベルである。しかし、天高は糖原料の含有割合が高くはなく、このため天高からは糖原料を高効率で得ることが期待できない。一方、SIL-05という品種は糖原料の含有割合が高いものの、低バイオマスである。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】新農業展開ゲノムプロジェクト(発行元:農林水産省農林水産技術会議事務局)、512号、p1-253、2014年3月発行.
【非特許文献2】Yonemaru J, Ando T, Mizubayashi T, Kasuga S, Matsumoto T, Yano M. Development of genome-wide simple sequence repeat markers using whole-genome shotgun sequences of sorghum (Sorghum bicolor (L.) Moench). DNA Res. 2009 Jun;16(3):187-93.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より高バイオマスであり、且つ糖原料の含有割合がより高い(高糖含量)ソルガム品種を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、高バイオマス品種である天高をゲノム育種することに着目した。しかし、天高は、ソルガム品種74LH3213とソルガム品種MS79Bとの交配によって得られるF1ハイブリッド品種であり、ソルガム以外の作物を含めてF1品種をゲノム育種した例はほとんどない。さらに、ソルガムは純系でさえ、ゲノム育種された品種は、少なくとも日本にはない。
【0008】
天高をゲノム育種して高糖含量品種を得るには、高糖含量品種のSIL-05の高糖性遺伝子座qBRX-6(非特許文献1)をDNAマーカー育種により導入する方法が考えられる。しかし、天高及びその親品種(74LH3213及びMS79)とSIL-05を区別できるDNAマーカーは開発されていなかった。
【0009】
このように前例もなく、必要なツールもないという困難な状況下で、本発明者等は、鋭意研究を進め、まず、天高親品種である74LH3213とSIL-05とを区別できるDNAマーカーを選抜及び開発した。そして、さらに鋭意研究を進め、このDNAマーカーを指標とした戻し交配により、74LH3213に高糖性遺伝子座qBRX-6を導入して、74LH3213改良品種を得た。この74LH3213改良品種をMS79と交配して、天高改良品種を得た。この天高改良品種は糖収量が天高よりも高く、また予想外にも一株全重も天高よりも重かった。これらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。
【0010】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する:
項1. ソルガム品種74LH3213の改良植物であって、
6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されている、
74LH3213改良植物.
項2. 前記DNA領域が、下記(A)DNAマーカーSB3412から(J)DNAマーカーSB3762までのDNA領域である、項1に記載の74LH3213改良植物:
(A)DNAマーカーSB3412から、
(J)DNAマーカーSB3762まで.
項3. 前記置換を対の6番染色体の両方に有する、項1又は2に記載の74LH3213改良植物.
項4. 項1~3のいずれかに記載の74LH3213改良植物の種子.
項5. 工程(ア)~(エ)を含む、項1~3のいずれかに記載の74LH3213改良植物を製造する方法:
(ア)ソルガム品種74LH3213とソルガム品種SIL-05とを交配してF1個体を得る工程、
(イ)該F1個体をソルガム品種74LH3213に戻し交配してBC1F1個体(BCはバッククロスの意、BC1は戻し交配の回数が1であることを示す)を得る工程、
(ウ)必要に応じて、戻し交配を複数回繰り返す工程、及び
(エ)工程(ア)~(ウ)からなる群より選択される少なくとも1つの工程で得られた個体において、6番染色体DNAの一部又は全部がソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されていることを確認する工程.
項6. ソルガム品種天高の改良植物であって、
項1~3のいずれかに記載の74LH3213改良植物とソルガム品種MS79とを交配して得られ、且つ
74LH3213改良植物由来の6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されている、
天高改良植物.
項7. 前記DNA領域が、下記(A)DNAマーカーSB3412から(J)DNAマーカーSB3762までのDNA領域である、項6に記載の天高改良植物:
(A)DNAマーカーSB3412から、
(J)DNAマーカーSB3762まで.
項8. 項6又は7に記載の天高改良植物の種子.
項9. 項1~3のいずれかに記載の74LH3213改良植物とソルガム品種MS79とを交配することを含む、項6~8のいずれかに記載の天高改良植物を製造する方法.
項10. 以下の(a)~(j)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAマーカー増幅用プライマーセットを含む、ソルガム品種SIL‐05のゲノムDNAとソルガム品種74LH3213のゲノムDNAとを区別するためのキット:
(a)DNAマーカーSB3412増幅用プライマーセット、
(b)DNAマーカーSB3420増幅用プライマーセット、
(c)DNAマーカー38139115_EcoRI増幅用プライマーセット、
(d)DNAマーカー40436197_XhoI増幅用プライマーセット、
(e)DNAマーカー40470717_BamHI増幅用プライマーセット、
(f)DNAマーカーSB3517増幅用プライマーセット、
(g)DNAマーカーSB3613増幅用プライマーセット、
(h)DNAマーカーSB3621増幅用プライマーセット、
(i)DNAマーカーSB3683増幅用プライマーセット、並びに
(j)DNAマーカーSB3762増幅用プライマーセット.
項11. 前記(c)~(e)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAマーカー増幅用プライマーセットを含む、項10に記載のキット.
項12. 項10又は11に記載のキットを用いることを特徴とする、ソルガム品種SIL‐05のゲノムDNAとソルガム品種74LH3213のゲノムDNAとを区別する方法.
【発明の効果】
【0011】
本発明よれば、より高バイオマスであり、且つ糖原料の含有割合がより高い(高糖含量)ソルガム品種(天高改良植物)、さらには該品種を簡便に生産することができる親品種(74LH3213改良植物)を提供することができる。この天高改良植物からは、糖原料を簡便且つ高効率で得ることができるので、該植物はバイオリファイナリー技術の原料として好適に利用することができる。また、本発明により見出されたDNAマーカーを利用することにより、さらなるゲノム育種も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】天高改良植物(炎龍)、天高、及びSIL-05の、一株当たりの糖収量を示す。縦軸の単位は(g/株)である。
【図2】天高改良植物(炎龍)、天高、及びSIL-05の、一株全重を示す。縦軸の単位は (g)である。
【図3】天高改良植物(炎龍)、天高、及びSIL-05の、Brix値を示す。
【図4】天高改良植物(炎龍)、天高、及びSIL-05の、乾物率を示す。
【図5】天高改良植物(炎龍)、天高、及びSIL-05の、主稈の稈長を示す。縦軸の単位は(mm)である。
【図6】天高改良植物(炎龍)、天高、及びSIL-05の、到花日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中において、「含有」なる表現については、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。

【0014】
1.74LH3213改良植物
本発明は、ソルガム品種74LH3213の改良植物であって、6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されている、74LH3213改良植物(本明細書において、「74LH3213改良植物」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。

【0015】
ソルガム品種74LH3213(74LH3213)は、ソルガム品種天高の花粉親であり、極早生のソルガムである。該品種は、非特許文献2等の種々の学術研究において使用されており、例えば農業生物資源研究所から種子を譲り受けることができる。また、該品種は、メキシコの国際トウモロコシ・コムギ改良センター(CIMMYT:Centro Internacional de Mejoramiento de Maiz y Trigo)から日本に導入された経緯がある。

【0016】
ソルガム品種SIL-05は、農林水産省で品種登録された高糖含量の品種である(登録番号:21454、登録年月日:2012/02/21)。その特性の概要は次のとおりである。出穂期はやや晩、出穂期の葉身の緑色の濃淡はやや淡、出穂期の止め葉の主脈の変色の強弱は弱、止め葉の主脈の緑色の濃淡(出穂期に変色しない場合。)はより淡い、出穂期の止め葉の主脈の黄着色の濃淡は弱、開花時の護頴の芒の着生の強弱は中、開花時の柱頭のアントシアニン着色の強弱は無又は極弱、開花時の柱頭の黄色の着色の強弱は中、開花終期の穂の粒着の粗密は中、成熟期の草丈はかなり高、稈の直径はやや大、成熟期の葉の幅は中、成熟期の穂の長さは中、成熟期の穂の粗密は中、成熟期の穂の形は狭卵形体、成熟期の穂首の長さはやや長、成熟期の頴の色は黒、脱穀後の頴果の色は黄白、正面から見た子実の形は楕円である。(カラーチャートはRHSを使用)また、対照品種「ヒロミドリ」と比較して、脱穀後の頴果の色が黄白であること、胚乳の質(縦断面)が3/4ガラス質であること、胚乳のガラス質の色が淡黄であること等で区別性が認められる。対照品種「KCS105」と比較して、子実の千粒重が軽であること、胚乳の質(縦断面)が3/4ガラス質であること等で区別性が認められる。

【0017】
74LH3213改良植物は、生育している植物体そのものであってもよいし、該植物体から分離した、該植物体の一部であってもよい。また、本発明には、該植物体に成長する種子(すなわち74LH3213改良植物の種子)も包含される。

【0018】
高糖性遺伝子座qBRX-6は、ソルガム品種SIL-05に高糖含量という性質をもたらす遺伝子座として、非特許文献1等において明らかにされている。

【0019】
ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域は、ソルガム品種SIL-05の6番染色体中の、上記qBRX-6を含むDNA領域である限り特に限定されない。該DNA領域は、好ましくは、下記(A)DNAマーカーSB3412から(J)DNAマーカーSB3762まで:
(A)DNAマーカーSB3412から、
(J)DNAマーカーSB3762まで。
のDNA領域である。これにより、74LH3213改良植物とソルガム品種MS79とを交配して得られる後述の天高改良植物において、一株全重をより重くすることができる。

【0020】
74LH3213改良植物においては、6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されている。すなわち、74LH3213改良植物は、ソルガム品種74LH3213の6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されてなる、ゲノムDNAを有する。

【0021】
74LH3213改良植物のゲノムDNAにおいては、好ましくはsbPhyB遺伝子(第1番染色体)を含むDNA領域、sbGhd7遺伝子(第6番染色体)を含むDNA領域、及びMdr1遺伝子(第7番染色体)を含むDNA領域からなる群より選択される少なくとも1種のDNA領域(好ましくは対の染色体の両方のDNA領域)、より好ましくはこれら全てのDNA領域が、74LH3213由来のDNA領域であることが好ましい。この好ましい態様において、74LH3213改良植物のゲノムDNAにおいては、上記「6番染色体DNAの一部又は全部」以外のDNA領域の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上、よりさらに好ましくは100%が、74LH3213由来のDNA領域であることが好ましい。

【0022】
置換対象領域である「6番染色体の一部又は全部」とは、ソルガム品種74LH3213の6番染色体中、上記した「ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域」に相当するDNA領域である。すなわち、上記した「ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域」が上記「(A)DNAマーカーSB3412から(J)DNAマーカーSB3762まで」であれば、置換対象領域である「6番染色体の一部又は全部」も上記「(A)DNAマーカーSB3412から(J)DNAマーカーSB3762まで」である。

【0023】
74LH3213改良植物は、上記「置換」を、対の6番染色体の片方のみに有していても(上記「置換」のヘテロ接合体であっても)よいし、対の6番染色体の両方に有していても(上記「置換」のホモ接合体であっても)よい。ただ、片方のみにしか有していない場合、74LH3213改良植物とソルガム品種MS79とを交配して後述の天高改良植物を得る場合、1/2は高糖性遺伝子座qBRX-6を有する個体(すなわち、後述の天高改良植物)であるが、残りの1/2は高糖性遺伝子座qBRX-6を有しない個体となってしまう。このため、より効率的に天高改良植物を得るという観点からは、74LH3213改良植物は、上記「置換」を、対の6番染色体の両方に有していることが好ましい。

【0024】
74LH3213改良植物は、好ましくは6番染色体の片方のみ又は両方において、下記(A)~(J)全てのDNAマーカーの領域が、ソルガム品種SIL-05由来であることが好ましい。すなわち、下記(A)~(J)のDNAマーカーについて調べた結果、これら全てのDNAマーカーがSIL-05型を示すことが好ましい。これにより、74LH3213改良植物とソルガム品種MS79とを交配して得られる後述の天高改良植物において、一株全重をより高くすることができる。なお、これらのDNAマーカーは、ソルガム品種74LH3213のゲノムDNAとソルガム品種SIL-05のゲノムDNAとを区別できるDNAマーカーとして、本発明において初めて見出されたものである。これらの内、(A)~(B)及び(F)~(J)のDNAマーカーに関する情報は、非特許文献2において公開されている。

【0025】
(A)DNAマーカーSB3412
(B)DNAマーカーSB3420
(C)DNAマーカー38139115_EcoRI
(D)DNAマーカー40436197_XhoI
(E)DNAマーカー40470717_BamHI
(F)DNAマーカーSB3517
(G)DNAマーカーSB3613
(H)DNAマーカーSB3621
(I)DNAマーカーSB3683
(J)DNAマーカーSB3762。

【0026】
(A)DNAマーカーSB3412は、(TA)3(GA)3(GC)3(CT)3(CGC)3(TAA)7(CGC)6のモチーフ(数字はATx623品種における繰り返し数であり、品種によって変動する。)を有するDNAマーカー(Genbank ID: 54964339)であり、第6番染色体の5’末端から約1.8 Mb(具体的には、1841444~1841722)の位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号1に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片の長さは、BTx623品種の場合で278である。

【0027】
(B)DNAマーカーSB3420は、(TA)3(AG)3(TC)18のモチーフ(数字はATx623品種における繰り返し数であり、品種によって変動する。)を有するDNAマーカー(Genbank ID: 55075727)であり、第6番染色体の5’末端から約2.5 Mb(具体的には、2548519~2548806)の位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片の長さは、BTx623品種の場合で287である。

【0028】
(C)DNAマーカー38139115_EcoRIは、dCAPSマーカーであり、第6番染色体の5’末端から約38.1 Mbの位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片(長さ233)をEcoRIで切断して得られる長い方の断片の長さは、SIL-05品種の場合で207である。一方、74LH3213品種の方は、PCR増幅DNA断片(長さ233)はEcoRIでは切断されない。

【0029】
(D)DNAマーカー40436197_XhoIは、dCAPSマーカーであり、第6番染色体の5’末端から約40.4 Mbの位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号7に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片(長さ229)をXhoIで切断して得られる長い方の断片の長さは、74LH3213品種の場合で203である。一方、SIL-05品種の方は、PCR増幅DNA断片(長さ229)はXhoIでは切断されない。

【0030】
(E)DNAマーカー40470717_BamHIは、dCAPSマーカーであり、第6番染色体の5’末端から約40.5 Mbの位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号9に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号10に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片(長さ229)をBamHIIで切断して得られる長い方の断片の長さは、SIL-05品種の場合で203である。一方、74LH3213品種の方は、PCR増幅DNA断片(長さ229)はBamHIIでは切断されない。

【0031】
(F)DNAマーカーSB3517は、(AG)9(AG)12(TA)3(TG)5(AGC)3のモチーフ(数字はATx623品種における繰り返し数であり、品種によって変動する。)を有するDNAマーカー(Genbank ID: 40656077)であり、第6番染色体の5’末端から約44.7 Mb(具体的には、44671001~44671206)の位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号11に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号12に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片の長さは、BTx623品種の場合で210である。

【0032】
(G)DNAマーカーSB3613は、(AC)3(AG)3(TG)5(GAA)6のモチーフ(数字はATx623品種における繰り返し数であり、品種によって変動する。)を有するDNAマーカー(Genbank ID: 54713363)であり、第6番染色体の5’末端から約51.717 Mb(具体的には、51717672~51717949)の位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号13に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号14に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片の長さは、BTx623品種の場合で254である。

【0033】
(H)DNAマーカーSB3621は、(AC)3(AG)19(AC)3のモチーフ(数字はATx623品種における繰り返し数であり、品種によって変動する。)を有するDNAマーカー(Genbank ID: 55017903)であり、第6番染色体の5’末端から約52.13 Mb(具体的には、52137810~52137940)の位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号15に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号16に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片の長さは、BTx623品種の場合で130である。

【0034】
(I)DNAマーカーSB3683は、(TC)3(TCA)8のモチーフ(数字はATx623品種における繰り返し数であり、品種によって変動する。)を有するDNAマーカー(Genbank ID: 54843017)であり、第6番染色体の5’末端から約55.2 Mb(具体的には、55246684~55246927)の位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号17に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号18に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片の長さは、BTx623品種の場合で243である。

【0035】
(J)DNAマーカーSB3762は、(AC)3(AT)3(TCA)9(CTT)3のモチーフ(数字はATx623品種における繰り返し数であり、品種によって変動する。)を有するDNAマーカー(Genbank ID: 55255040)であり、第6番染色体の5’末端から約58.4 Mb(具体的には、58394270~58394479)の位置に存在する。該マーカーは、例えば、配列番号19に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号20に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから構成されるプライマーセットで検出することができる。該プライマーセットでPCRして得られる増幅DNA断片の長さは、BTx623品種の場合で209である。

【0036】
74LH3213改良植物の作製方法は、特に限定されないが、例えば、連続戻し交雑によるDNAマーカー育種が挙げられる。具体的には、例えば、ソルガム品種74LH3213とソルガム品種SIL-05とを交配して得られたF1個体を、6番染色体DNAの一部又は全部がソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されていることを確認しながら、ソルガム品種74LH3213に戻し交配する方法が挙げられる。より具体的には、以下の工程を含む方法が挙げられる:
(ア)ソルガム品種74LH3213とソルガム品種SIL-05とを交配してF1個体を得る工程、
(イ)該F1個体をソルガム品種74LH3213に戻し交配してBC1F1個体(BCはバッククロスの意、BC1は戻し交配の回数が1であることを示す)を得る工程、
(ウ)必要に応じて、戻し交配を複数回繰り返す工程、及び
(エ)工程(ア)~(ウ)からなる群より選択される少なくとも1つの工程で得られた個体において、6番染色体DNAの一部又は全部がソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されていることを確認する工程。

【0037】
工程(ア)~(ウ)における交配及び戻し交配は、ソルガムの公知の交配方法に従って又は準じて行うことができる。また、交配によって得られた種子から栽培する方法も、ソルガムの公知の栽培方法に従った又は準じた方法を採用することができる。

【0038】
工程(ウ)を行う場合、工程(イ)の戻し交配の回数(1回)と合わせた、戻し交配の総回数は、好ましくは5以上である。該回数を増やすことにより、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域以外のDNA領域を、ソルガム品種74LH3213により近付けることができる。これにより、得られた74LH3213改良植物とソルガム品種MS79とを交配した場合に、天高の高バイオマスの特性をより安定に維持することができる。

【0039】
工程(エ)は、例えば、DNAマーカーの型(SIL-05型か否か)を判定することにより行うことができる。このようなDNAマーカーとしては、例えば、上記した(A)~(J)のDNAマーカーが挙げられる。

【0040】
工程(エ)の具体的な手順を例示すると以下のようになる。まず、植物体からDNAを抽出する。DNA抽出に用いる組織は特に限定されず、葉、根、茎など、いずれの組織であってもよい。さらに、これらの組織は、核酸抽出の効率を良く行うことができるように液体窒素を用いて粉砕しておくことが好ましい。

【0041】
DNAの抽出は、公知の方法で行うことができ、好ましくはCTBA法[Murrayら、Nucleic Acids Res. 8, 4321-4325 (1980)]が用いられる。具体的には、以下のような手順で行う。まず組織を液体窒素中で磨砕する。該磨砕物に臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)溶液を添加してインキュベートした後、クロロホルム-イソアミルアルコールを加えてよく混和する。遠心分離により水層を分離・回収し、これにイソプロピルアルコールを加えてよく混和する。遠心分離により沈殿部を回収後、例えばEDTA等含有の緩衝液を加えて溶解し、RNase処理する。処理後、フェノール、フェノールとクロロホルム-イソアミルアルコール、クロロホルム-イソアミルアルコールの順序で溶媒を置換する。置換処理後、エタノールを加えてよく混和し、遠心分離によりゲノムDNAを得ることができる。抽出には市販のキット(例えば、QIAGEN社の「DNeasy」等)を利用して行うこともできる。なお、DNA抽出量としては、DNAマーカーの解析が可能な量が抽出されていればよい。PCRに供する場合には、例えば、1反応あたり1ng以上である。

【0042】
次いで、抽出したDNAを鋳型とし、DNAマーカーの検出用プライマーセットを用いて、PCR増幅を行う。PCR増幅は前述のプライマーセットを用いる以外は特に制限はなく、常法に従って行えばよい。具体的には、鋳型DNAの変性、プライマーへの鋳型へのアニーリング、および耐熱性酵素(Taqポリメラーゼ)を用いたプライマーの伸長反応を含むサイクルを繰り返すことにより、目的とするDNAマーカーを含む断片を増幅させる。PCR反応液の組成、PCR反応条件(温度サイクル、サイクルの回数等)は、上記のプライマーセットを用いたPCRにおいて高感度でPCR増幅産物が得られるような条件を予備実験等により当業者であれば適切に選択および設定することができる。プライマーのTmに基づいて適当なPCR反応条件を選択する方法は、当該技術分野においてよく知られている。このようなPCRの一連の操作は、市販のPCRキットやPCR装置を利用して、その操作説明書に従って行うことができる。PCR装置は、例えば、GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社製)、GeneAmp PCR System 9600(Applied Biosystems社製)などが使用できる。

【0043】
PCR増幅産物の検出は、アガロースゲル電気泳動やキャピラリー電気泳動などの慣用の電気泳動、DNAハイブリダイゼーションやリアルタイムPCR等の方法を用いて確認する。例えば、アガロースゲル電気泳動では、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を単一のバンドとして検出し、コントロールバンド(SIL-05品種のPCR産物及び/又は74LH3213品種のPCR産物のバンド)の位置との比較により、SIL-05型か否かを判定する。

【0044】
また、DNAマーカーが上記(C)~(E)のようにdCAPSマーカーである場合は、PCR増幅産物を適当な制限酵素で消化し、該消化断片のバンドの位置と、コントロールバンドSIL-05品種のPCR産物の消化断片及び/又は74LH3213品種のPCR産物の消化断片のバンド)に基づいて、SIL-05型か否かを判定する。

【0045】
上記工程(ア)~(エ)で得られた個体は、6番染色体の片方のみにおいて、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域への置換が起こっている。さらにこの個体の自殖種子を得ることにより、対の6番染色体の両方において、該置換を有する個体を得ることができる。

【0046】
2.天高改良植物
本発明は、ソルガム品種天高の改良植物であって、74LH3213改良植物とソルガム品種MS79Aとを交配して得られ、且つ74LH3213改良植物由来の6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されている、天高改良植物(本明細書において、「天高改良植物」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。

【0047】
ソルガム品種天高は、農林水産省で品種登録された高バイオマスの品種である(登録番号:4290、登録年月日:1995/03/09)。その特性の概要は次のとおりである。広島県立農業試験場から導入した細胞質雄性不稔系統後代を母系とし,草地試験場から導入した自殖系統後代を父系とする交雑品種であり,稈長は極長で,通常の栽培条件では出穂しない飼料用向きの品種である。稈長は極長,径はかなり太,分げつ数はかなり少である。主稈葉数は極多,葉長は長,幅は広,葉色の濃淡及び葉身の着生角度は中,葉身中肋の色は淡緑である。年生は1年生,初期生育は中,出穂期,開花期及び成熟期は極晩,茎の乾汁性は混,甘味は少,茎葉の乾物率含量は低である。耐倒伏性はやや弱,紋枯病抵抗性及び条斑細菌病抵抗性は強である。「FS902」と比較して,主稈葉数が多いこと,出穂期,開花期及び成熟期が晩いこと等で区別性が認められる。

【0048】
ソルガム品種MS79A(MS79A、IS2830A)は、ソルガム品種天高の種子親であり、極早生のグレインソルガム細胞質雄性不稔系統である。該品種は、例えば農業生物資源研究所から種子を譲り受けることができる。

【0049】
天高改良植物は、生育している植物体そのものであってもよいし、該植物体から分離した、該植物体の一部であってもよい。また、本発明には、該植物体に成長する種子(すなわち天高改良植物の種子)も包含される。

【0050】
天高改良植物においては、74LH3213改良植物由来の6番染色体DNAの一部又は全部が、ソルガム品種SIL-05由来の高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域に置換されている。用語の意味や、好ましい態様等については、上記「1.74LH3213改良植物」と同様である。

【0051】
天高改良植物のゲノムDNAにおいては、上記「6番染色体DNAの一部又は全部」以外のDNA領域の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上、よりさらに好ましくは100%が、天高由来のDNA領域であることが好ましい。

【0052】
天高改良植物は、74LH3213改良植物とソルガム品種MS79Aとを交配して得ることができる。74LH3213改良植物が、上記置換(高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域の置換)を対の6番染色体の片方のみにしか有していない場合、得られる個体の内、1/2は高糖性遺伝子座qBRX-6を有する個体(すなわち、後述の天高改良植物)であるが、残りの1/2は高糖性遺伝子座qBRX-6を有しない個体となる。したがって、この場合は、高糖性遺伝子座qBRX-6を有する個体を、上記「1.74LH3213改良植物」に記載されるDNAマーカー型に従って選抜することにより、天高改良植物を得ることができる。74LH3213改良植物が、上記置換(高糖性遺伝子座qBRX-6を含むDNA領域の置換)を対の6番染色体の両方に有する場合であれば、得られる個体は、全て、天高改良植物である。交配やDNAマーカー型の判定等については、上記「1.74LH3213改良植物」と同様である。

【0053】
3.ソルガム品種判別用キット
本発明は、 以下の(a)~(j)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAマーカー増幅用プライマーセットを含む、ソルガム品種SIL‐05のゲノムDNAとソルガム品種74LH3213のゲノムDNAとを区別するためのキット(本明細書において、「ソルガム品種判別用キット」と示すこともある。)に関する:
(a)DNAマーカーSB3412増幅用プライマーセット、
(b)DNAマーカーSB3420増幅用プライマーセット、
(c)DNAマーカー38139115_EcoRI増幅用プライマーセット、
(d)DNAマーカー40436197_XhoI増幅用プライマーセット、
(e)DNAマーカー40470717_BamHI増幅用プライマーセット、
(f)DNAマーカーSB3517増幅用プライマーセット、
(g)DNAマーカーSB3613増幅用プライマーセット、
(h)DNAマーカーSB3621増幅用プライマーセット、
(i)DNAマーカーSB3683増幅用プライマーセット、並びに
(j)DNAマーカーSB3762増幅用プライマーセット。

【0054】
(a)~(j)の各プライマーセットの各オリゴヌクレオチドの塩基配列は、特に制限されない。例えば、配列番号1~20に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと実質的に同一の機能を有する限り、配列番号1~20に示す塩基配列において1~数個(例えば、5個、好ましくは3個、より好ましくは1個)の塩基が欠失、付加、置換した塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。

【0055】
(a)~(j)の各プライマーセットの各オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの合成法として当技術分野で公知の方法、例えば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられるDNA自動合成装置(例えば、Applied Biosystems社製Model 394など)を利用して合成することが可能である。

【0056】
また、上記オリゴヌクレオチドは、これらをプライマーとするPCR増幅産物の検出を容易にするために、標識物質をつけたオリゴヌクレオチドであってもよい。標識物質としては、当該技術分野においてよく知られる蛍光物質(FITC、ROC等)、放射性同位体、化学発光物質(例えば、DNP)、ビオチン、DIG(ジゴキシゲニン)等を用いることができる。

【0057】
ソルガム品種判別用キットは、上記(a)~(j)からなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは全て)のDNAマーカー増幅用プライマーセットを含むものであればよい。本発明のキットは、必要に応じて、DNA抽出用試薬、PCR用緩衝液やDNAポリメラーゼ等のPCR用試薬、反応の陽性コントロールとなるPCR増幅領域を含むDNA溶液、染色剤や電気泳動用ゲル等の検出用試薬、説明書などを含んでいてもよい。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
(1)DNAマーカーの選抜
非特許文献2に記載されているDNAマーカーの内、SBマーカーの一部(計830組)の候補DNAマーカーの中から、ソルガム品種74LH3213のゲノムDNAとソルガム品種SIL-05のゲノムDNAとを区別できるDNAマーカーを選抜した。具体的には、候補DNAマーカー検出すべく、非特許文献1に記載のプライマーセットを用い、且つソルガム品種74LH3213のゲノムDNAとソルガム品種SIL-05のゲノムDNA配列を鋳型DNAとして用いてPCRを行い、増幅DNA断片の有無、及びソルガム品種74LH3213とソルガム品種SIL-05との間における増幅DNA断片の長さの違いについて、調べた。
【実施例】
【0060】
その結果、以下の(A)~(B)及び(F)~(J)のDNAマーカーが、ソルガム品種74LH3213とソルガム品種SIL-05との間における増幅DNA断片の長さの違いを明瞭に判別できることが分かった。
【実施例】
【0061】
(A)DNAマーカーSB3412
(B)DNAマーカーSB3420
(F)DNAマーカーSB3517
(G)DNAマーカーSB3613
(H)DNAマーカーSB3621
(I)DNAマーカーSB3683
(J)DNAマーカーSB3762。
【実施例】
【0062】
(2)新規DNAマーカーの作製
ソルガム品種74LH3213及びソルガム品種SIL-05のゲノムDNA配列について、次世代シーケンサーを用いてりシーケンシングを行った。この結果に基づいて、両品種間で相違のあるSNPを同定した。さらに該SNPを検出できるdCAPSマーカーを作製した。作製したdCAPSマーカーは以下の(C)~(E)である。
【実施例】
【0063】
(C)DNAマーカー38139115_EcoRI
(D)DNAマーカー40436197_XhoI
(E)DNAマーカー40470717_BamHI。
【実施例】
【0064】
(3)ソルガム品種74LH3213の改良植物の作製
上記「(1)DNAマーカーの選抜」及び「(2)新規DNAマーカーの作製」を用いて、ソルガム品種74LH3213の改良植物(BC5F1-qBRX)を作製した。具体的には以下のように作製した。
【実施例】
【0065】
ソルガム品種74LH3213とソルガム品種SIL-05とを交配して、F1集団を得た。
【実施例】
【0066】
該F1とソルガム品種74LH3213とを交配して、BC1F1集団を得た。
【実施例】
【0067】
該BC1F1とソルガム品種74LH3213とを交配して、BC2F1集団を得た。BC2F1集団の5個体について、DNAマーカーSB3517、SB3613、SB3683、及びSB3762を用いてジェノタイピングを行い、6番染色体の一方において、これら全てのDNAマーカー領域がソルガム品種SIL-05由来である1個体(BC2F1-qBRX)を選抜した。
【実施例】
【0068】
該BC2F1-qBRXとソルガム品種74LH3213とを交配して、BC3F1集団を得た。BC3F1集団の4個体について、DNAマーカーSB3412、SB3420、SB3517、SB3613、SB3683、及びSB3762を用いてジェノタイピングを行い、6番染色体の一方において、これら全てのDNAマーカー領域がソルガム品種SIL-05由来である1個体(BC3F1-qBRX)を選抜した。
【実施例】
【0069】
該BC3F1-qBRXとソルガム品種74LH3213とを交配して、BC4F1集団を得た。BC4F1集団の15個体について、DNAマーカーSB3412、SB3420、38139115_EcoRI、40436197_XhoI、40470717_BamHI、SB3517、SB3613、SB3683、及びSB3762を用いてジェノタイピングを行い、6番染色体の一方において、これら全てのDNAマーカー領域がソルガム品種SIL-05由来である1個体(BC4F1-qBRX)を選抜した。さらに、該BC4F1-qBRXについては、6番染色体以外のDNAマーカー(計36組)を使用して、戻し交配により6番染色体以外の染色体DNAがソルガム品種74LH3213由来となっていることを確認した。
【実施例】
【0070】
該BC4F1-qBRXとソルガム品種74LH3213とを交配して、BC5F1集団を得た。BC5F1集団の25個体について、DNAマーカーSB3412、SB3420、SB3517、SB3613、SB3621、SB3683、及びSB3762を用いてジェノタイピングを行い、6番染色体の一方において、これら全てのDNAマーカー領域がソルガム品種SIL-05由来である1個体(BC5F1-qBRX)を選抜した。
【実施例】
【0071】
該BC5F1-qBRXを自殖して、BC5F2集団を得た。BC5F2集団の40個体について、DNAマーカーSB3412、SB3420、40436197_XhoI、40470717_BamHI、SB3517、SB3613、SB3621、SB3683、及びSB3762を用いてジェノタイピングを行い、6番染色体の両方において、これら全てのDNAマーカー領域がソルガム品種SIL-05由来である1個体(BC5F2-qBRX)を選抜した。
【実施例】
【0072】
選抜された個体(BC5F2-qBRX)を、ソルガム品種74LH3213の改良植物として、「74LH改0号」の名称で品種登録出願した(農林水産省 品種登録出願番号:第30854号、出願日:2016年2月22日、出願者:国立大学法人名古屋大学)。
【実施例】
【0073】
(4)ソルガム品種天高の改良植物の作製、及び特性の評価
上記「(3)ソルガム品種74LH3213の改良植物の作製」で得られたBC5F2-qBRXとソルガム品種MS79Aとを交配して、ソルガム品種天高の改良植物を得た。この天高改良植物(炎龍)を、開花から30日後に採取し、一株全重、Brix値、乾物率、主稈の稈長、及び到花日数について測定した。さらに、これらの測定値に基づいて、一株当たりの糖収量を算出した。
【実施例】
【0074】
なお、Brix値は、次のようにして測定した。稈全長の中央に位置する節間をサンプリングし、その節間中間部位約1cmを稈サンプルとして得た。これをペンチによって搾り搾汁液を採取した。この搾汁液の糖度を、屈折糖度計(ASONEポケットリフレクトメーターAPAL-1)を用いて測定した。
【実施例】
【0075】
結果を図1~6に示す。図中、*はP値が0.05以下であることを示し、**はP値が0.01以下であることを示す。
【実施例】
【0076】
図2及び3に示されるように、一株全重及びBrix値は、天高よりも、炎龍の方が高かった。一方、図4に示されるように、乾物率は、天高よりも、炎龍の方が低かった。このことは、得られた76LH3213改良植物が汁性になったことを意味している。これらの結果を反映して、一株当たりの糖収量は、天高よりも、炎龍の方が、約2倍以上も高かった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5