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明細書 :三次元物体を作成する方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-116783 (P2020-116783A)
公開日 令和2年8月6日(2020.8.6)
発明の名称または考案の名称 三次元物体を作成する方法および装置
国際特許分類 B29C  64/112       (2017.01)
B29C  64/314       (2017.01)
B29C  64/321       (2017.01)
B33Y  10/00        (2015.01)
B33Y  30/00        (2015.01)
B29C  64/209       (2017.01)
FI B29C 64/112
B29C 64/314
B29C 64/321
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B29C 64/209
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2019-008092 (P2019-008092)
出願日 平成31年1月21日(2019.1.21)
発明者または考案者 【氏名】木村 浩
【氏名】武野 明義
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100147038、【弁理士】、【氏名又は名称】神谷 英昭
審査請求 未請求
テーマコード 4F213
Fターム 4F213AC05
4F213AR12
4F213WA25
4F213WA53
4F213WA83
4F213WB01
4F213WL10
4F213WL15
4F213WL29
4F213WL32
4F213WL52
4F213WL67
4F213WL74
4F213WL96
要約 【課題】本発明の課題は、三次元物体があたかも宙に浮いているような状態で形成することで、従来必要とされている基盤や保持部材を使用することなく3Dプリンター技術を適用する方法を提案することである。
【解決手段】 ゲル状態から熱又は力学的作用によって一時的に流動化する媒体内に、造形材料をプリントするプリントヘッドを挿入し、プリントヘッド部を加熱するか或いは動作させることによってプリントヘッド部直近の媒体を液状化させ、造形材料をプリントヘッドのノズルより噴出し、噴出後は液状化した前記媒体がゲル状態に戻ることにより所望の形状を付与することを特徴とする三次元物体の作成方法。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
ゲル状態から熱又は力学的作用によって一時的に流動化する媒体内に、
造形材料をプリントするプリントヘッドを挿入し、
プリントヘッド部を加熱するか或いは動作させることによってプリントヘッド部直近の媒体を液状化させ、
造形材料をプリントヘッドのノズルより噴出し、
噴出後は液状化した前記媒体がゲル状態に戻ることにより所望の形状を付与することを特徴とする三次元物体の作成方法。
【請求項2】
前記媒体が、加熱により流動化し冷却によりゲル化する寒天ゲルまたは、流動パラフィンを5~10%に相当する量のポリエチレンでゲル化したもの、
粒子径10~100nmの粘土鉱物を体積分率0.0001~0.1の範囲で塩濃度0.0001~1[M]の水中に分散させてなる物理ゲル、
のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の三次元物体の作成方法。
【請求項3】
前記粘土鉱物が、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイトから選択される一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元物体の作成方法。
【請求項4】
造形材料から所望の形状の三次元物体を製造する装置であって、
造形材料をプリントするプリントヘッドと、
ゲル状態から熱又は力学的作用によって一時的に流動化する媒体を有し、
プリントヘッド部を加熱するか或いは動作させることによってプリントヘッド部直近の媒体を液状化させ、造形材料をプリントヘッドのノズルより噴出し、
噴出後は液状化した前記媒体がゲル状態に戻ることにより所望の形状を付与することを特徴とする三次元物体の製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のデザインの三次元物体を作る方法および装置に関し、特に従来基板上に噴射して造形するいわゆる3Dプリンターの技術を応用して、熱又は力学的作用によって一時的に流動化する媒体内に三次元物体を構成する樹脂等を噴出することにより形成する方法およびその製造装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
3DプリンターはASTM F2792-12aにおいてはAdditive Manufacturing(付加製造)と定義されているが、一般的に理解しやすいために本明細書では3Dプリンターの用語を使用する。3Dプリンターの技術は、材料、製造方式、システム、製造方式別の個別技術、アプリケーション技術の5つの要素技術に区分することができる。
【0003】
要素技術の一つである「材料」としては、製造方式や用途に応じて、様々な材料が開発されており、主材料としては光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、金属、セラミックス、ワックス等がある。また、結合剤噴射法で用いるバインダや、着色剤もこの材料に含まれる。
【0004】
例えば、低臭気で、変形が少なく、透明性・表面処理性に優れた造形品を造形し得る、熱溶融積層方式の3Dプリンター用造形材料(特許文献1)、付加製造技術に用いる熱可塑性樹脂フィラメントであって、フィラメント断面において、内側層と外側層を備え、各層を構成する樹脂組成物のメルトフローレイトの差が10(g/10分)以下であることを特徴とする材料(特許文献2)などが挙げられる。
【0005】
一方、要素技術の「製造方式」については、ASTMによって大きく7つの方式に分類されており、1.液状の結合剤を粉末床に噴射して選択的に固化させる方式、2.材料を供給しつつ、ビーム等を集中させることによって熱の発生位置を制御し、選択的に溶融・結合させる方式、3.流動性のある材料をノズルから押し出して堆積させつつ固化させる方式(代表的にはFDM法)、4.材料の液滴を噴射し、選択的に堆積して固化させる方式(代表的にはインクジェット法)、5.粉末を敷いた領域を熱エネルギーによって選択的に溶融結合させる方式(代表的にはレーザー焼結法)6.紙、樹脂、金属箔等のシート状の材料を接着させる方式、7.タンクにためられた液状の光硬化性樹脂を光重合によって選択的に硬化させる方式(光造形法)がある。
【0006】
現在家庭用として普及している3Dプリンターは前記FDM(Fused Deposition Modeling)方式を採用している。FDM方式(熱溶解積層法)とは、その名前の通り樹脂等を熱で溶かしてZ軸方向に積層して造形する方式である。この技術に関しては米国Stratasys社が特許権(特許文献3)を有しており、2009年に権利有効期間を満了すると、多くのメーカーが参入して、一般ユーザーも気軽に手に入れることのできるプリンターが市場に導入されるようになった。
【0007】
さらに、前記のレーザー焼結法といわれる技術に関する基本特許(3D Systems社)も2014年に権利期間を満了した。レーザー焼結法は、粉末を薄層に展開する薄層形成工程と、形成された薄層に、造形対象物の断面形状に対応する形状にレーザー光を照射して、その粉末を結合させる断面形状形成工程とを順次繰り返すことにより製造する方法であり、他の造形方法と比較して精密造形に好適であり、保持部材が不要であるという利点を有する。
【0008】
このレーザー光による焼結法は、使用可能な素材の種類が多く、ナイロン等の樹脂以外にも、チタン、銅、ニッケル等の金属が利用できることも特徴である。またFDM方式では、造形中に造形物が倒れないように保持部材が必要であるところ、焼結法では硬化後に造形物が沈まないので前記の通り保持部材が不要となる。ただし、レーザー光を利用するためにFDM方式の3Dプリンターに比較して装置がやや高めになるという課題もある。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2016-60147号公報
【特許文献2】特開2017-65111号公報
【特許文献3】米国特許5121329号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、基本的にはFDM、インクジェットの各方式を採用する製造技術に係わるものであって、所望の形状の三次元物体を作成する方法、特に三次元物体が支持基盤を不要とする製造方法およびその方法に使用する装置を提供することである。
【0011】
3Dプリンターの製造方法の分類の欄で述べた、FDM、インクジェットの各方式においては、3Dプリンター用造形材料を基盤上に配置することから成形が始まる。このとき、造形材料の各部分は他の造形部分との連続性(一体性)を保つか、基盤からの支持がなければ、形成することはできない。
【0012】
例えば、複数のリング同士が連結された鎖のような造形物などを考えてみる。鎖を構成する各リングは他のリングと物理的に接続されていないこと、リング以外に突出部(例えば基盤からの支持部材;従来の射出成形ではランナー部ということもできる)などが無いこと、各リングは他の1つ以上のリングの環を貫通して形成されていることが、条件である。
【0013】
前記のような鎖を従来の3Dプリンターの製造方法をそのまま適用しても、直接的には製造できない。ステップバイステップで、先に形成されたリングを何らかの保持部材に固定して、次のリングを基盤あるいは別の保持部材により支持しつつ、先に形成されたリングを貫通して次のリングを形成することを繰り返すような手法が必要となる。
【0014】
本発明では、三次元物体(例えば前記各リング)があたかも宙に浮いているような状態で形成することで、前記の基盤や保持部材を使用することなく3Dプリンター技術を適用する方法を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ゲル状態から熱又は力学的作用によって一時的に流動化する媒体内に、造形材料をプリントするプリントヘッドを挿入し、プリントヘッド部を加熱するか或いは動作させることによってプリントヘッド部直近の媒体を液状化させ、造形材料をプリントヘッドのノズルより噴出し、噴出後は液状化した前記媒体がゲル状態に戻ることにより所望の三次元物体を作成することを特徴とする。すなわち、媒体は、造形材料を噴出している間は通常の3Dプリンターの造形空間と同じ状態となり、噴出後には造形材料の周囲がゲル化することで造形材料が固化する際の鋳型となるものである。
【0016】
具体的な媒体としては、加熱により流動化し冷却によりゲル化する寒天ゲルや流動パラフィンを5~10%に相当する量のポリエチレンでゲル化したものや、力学的作用によって流動化する媒体の例として、粒子径10~100nmの粘土鉱物を体積分率0.0001~0.1の範囲で塩濃度0.0001~1[M]の水中に分散させてなる物理ゲルが好ましい。物理ゲルはいわゆるチキソトロピー性を有していることが特徴である。
【0017】
さらに前記粘土鉱物としては、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイトから選択される一種以上であることが好ましい。チキソトロピー性の発現・制御の面で好適であり、粘度調整剤や分散化剤として化粧品にも使用されるなど、安全性の高い物質だからである。
【0018】
粘土鉱物のような層状珪酸塩鉱物は、水に分散された場合に層間が負に、層の端部は正に帯電し、静電気的な結合を生じることにより、カードハウス構造を形成する。この構造を形成する力が抵抗となり、弾性が生じて物理ゲル化する。一方で層状珪酸塩鉱物の水分散液で形成される水性ゲル状組成物に水溶性の金属塩を加えると均一なカードハウス構造が形成されず、凝集や沈殿を生じ、ゲルが形成されず、ゾル状に変化する。従って、本発明では、塩濃度が所定の範囲内であることを物理ゲルの要件とした。
【0019】
また、本発明の三次元物体の製造装置は、造形材料をプリントするプリントヘッドと、ゲル状態から熱又は力学的作用によって一時的に流動化する媒体を有し、プリントヘッド部を加熱するか或いは動作させることによってプリントヘッド部直近の媒体を液状化させ、造形材料をプリントヘッドのノズルより噴出し、噴出後は液状化した前記媒体がゲル状態に戻ることにより所望の形状を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の三次元物体を作成する方法およびそれに使用する製造装置は、成形品の保持具や支持基盤などを不要とし、従来の3Dプリンター技術の適用範囲を拡大することができる。これまでのFDM、インクジェットなどによる成形方法では、基盤上に配置することが前提となっていたが、本発明により空間(宙に浮いたような状態)内に造形材料を噴射することによっても形を付与することが可能となった。
【0021】
いわば三次元物体が他との接触をしていなくても成形することができるようになるので、例えば球体、チェーンなど従来の技術では、どうしても余計な部分(射出成形のランナー部のようなもの)ができてしまうところ、本発明の適用によって目的物のみを成形することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の媒体として、各種粘土鉱物の体積分率(φ)=0.001のときの(x軸)水分散液の塩化ナトリウム濃度[M]と(y軸)せん断弾性率(Pa)との関係を示す図である。図中のSAはサポナイト、HEはヘクトライト、STはスチブンサイトを示す(以下同様)。
【図2】図2は、本発明の媒体として、各種粘土鉱物の体積分率(φ)=0.005のときの(x軸)水分散液の塩化ナトリウム濃度[M]と(y軸)せん断弾性率(Pa)との関係を示す図である。
【図3】図3は、本発明の媒体として、各種粘土鉱物の体積分率(φ)=0.01のときの(x軸)水分散液の塩化ナトリウム濃度[M]と(y軸)せん断弾性率(Pa)との関係を示す図である。
【図4】図4は、本発明の媒体(サポナイトを含む物理ゲル)を使用して、造形材料(アラルダイト)を成形したとき(実施例1)の結果を示す写真である。
【図5】図5は、媒体を寒天として用い、プリントヘッド部を加熱しないで挿入して成形を試みたとき(比較例1)の結果を示す写真である。
【図6】図6は、本発明例中、媒体としてハイコール ジェル(登録商標)を用い、プリントヘッド部を加熱しつつ、造形材料(熱可塑性樹脂)で成形を試みたとき(実施例2)の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による三次元物体の作成方法は、ゲル状態から熱又は力学的作用によって一時的に流動化する媒体内に、造形材料をプリントするプリントヘッドを挿入し、プリントヘッド部を加熱するか或いは動作させることによってプリントヘッド部周辺の媒体を液状化させ、造形材料をプリントヘッドのノズルより噴出し、噴出後は液状化した前記媒体がゲル状態に戻ることにより所望の形状を付与することを特徴とする。

【0024】
本発明の媒体は、室温において通常はゲル状態であるが、熱又は作用力が加えられると一時的に流動化するものを用いる。これにより造形材料は、液体中に噴出されるので通常の3Dプリンターと同じようにプリントが行われる。仮に造形材料が噴出後しばらくの間液体状態であって、光架橋等で後々固化(架橋)させるものであった場合でも、プリント後には前記造形材料の周囲の媒体がゲル化するので、それに合わせて形状が付与されることとなる。従って、媒体が鋳型ともなり得るのである。

【0025】
このような媒体としては、以下に例示する三つのタイプが考えられる。

【0026】
一つ目として、加熱により流動化し冷却することでゲル化する寒天などが挙げられる。寒天ゲルを媒体として利用する際には、3Dプリンター側のプリントヘッド部が発熱するタイプである必要がある。流動化する前にプリントヘッドが動くと寒天ゲルに亀裂を生じさせ、その亀裂へ造形材料が流入することになり、所望の形状を付与できないおそれがあるからである。

【0027】
寒天ゲルを媒体として使用する場合、寒天は0.6~1.6重量%程度の濃度で熱水に一旦溶解させ、冷却することによってゲル化させて使用することができる。周知のように寒天ゲルは85℃程度以上にならないと溶けないので、プリントヘッド部の温度もそれ以上に加熱されることになる。プリントヘッド部によって加熱され流動化した媒体中に造形材料が噴射される。

【0028】
二つ目としては、粘土鉱物を分散させた物理ゲルを使用する。この場合には、粒子径10~100nmの粘土鉱物を体積分率0.0001~0.1の範囲で塩濃度0.0001~1[M]の水中に分散させたものを使用することが好ましい。物理ゲルを媒体とする場合には、プリントヘッド部が加熱される必要はなく、単にヘッドが動くことに追従して、ヘッド部の進行方向周囲のゲルが可逆的に液状化する。

【0029】
ここで、物理ゲルは分散させる水中の塩濃度が重要である。粘土鉱物のような層状珪酸塩鉱物は、水に分散された場合に層間が負に、層の端部は正に帯電し、静電気的な結合を生じることにより、カードハウス構造を形成する。この構造を形成する力が抵抗となり、弾性が生じて物理ゲル化する。一方で層状珪酸塩鉱物の水分散液で形成される水性ゲル状組成物に水溶性の金属塩を加えると均一なカードハウス構造が形成されず、凝集や沈殿を生じ、ゲルが形成されず、ゾル状に変化する。従って、前記塩濃度が所定の範囲内であることを要件とした。

【0030】
塩濃度が前記範囲よりも、低い場合および高い場合には図1~図3に示すように、分散後のせん断弾性率が低くなる、すなわち物理ゲルとしての固形状態の形状保持性が劣ることになる。図1には、粘土鉱物としてサポナイト(SA)、ヘクトライト(HE)、スチブンサイト(ST)を体積分率0.001で水中に分散させ、塩化ナトリウムの濃度(M:mol/L)が0.007[M]~0.1[M]の範囲にあるときの、物理ゲルのせん断弾性率G(Pa)を示したものである。せん断弾性率は、せん断力による変形のしにくさを表す物性値である。同様に図2には各粘土鉱物の体積分率が0.005であるとき、図3には体積分率が0.01のときの塩濃度とせん断弾性率の関係を示したものである。

【0031】
粘土鉱物の濃度(体積分率)が低い場合(図1または図2)には特に、塩濃度が高くなるとせん断弾性率が急激に低下する傾向がある。一方、粘土鉱物の濃度が高い場合(図3)には、塩濃度が高くなっても比較的影響は少ない。これは塩の存在によってカードハウス構造を形成するべき粘土鉱物が凝集などによって失われても、溶液中にその消失分を補うことができるだけの余力があることを示している。

【0032】
本来の目的としては、粘土鉱物は物理ゲルの構造を維持するだけの量が存在すれば足り、多量に含ませる必要はない。物理ゲルが鋳型としても機能するので、多量に含むと造形材料との接触面に粘土鉱物が析出するなどのおそれがあり、造形物の平滑な表面形成の妨げになる可能性があるからである。

【0033】
前記物理ゲルは塩濃度の調整された水に粘土鉱物を分散させて得ることができる。この水としては、イオン交換などにより脱塩処理された純水が好ましく、具体的には電気伝導率が0.05~1mS/m程度である。もちろん前記電気伝導率よりも低い場合あるいは高い場合であっても、粘土鉱物中の塩濃度および別途添加する塩濃度を適宜調整することで、所定のせん断弾性率に調整することができる。

【0034】
三つ目の例として、流動パラフィンを5~10%に相当する量のポリエチレンでゲル化したものが挙げられる。このタイプのものは、前記寒天ゲルと物理ゲルの両方の性質を有しており、プリントヘッド部の加熱又は動きによって、その軌跡における範囲内でゲルが一次的に液状となり、プリントヘッド部の動きが停止するか、プリントヘッド部が離れた位置にあることで、液状から元のゲル状態へと可逆的に変化する。これによって、造形材料が噴出される間は、従来の3Dプリンターによる基盤上への噴射と同様の環境を提供し、噴出後は造形材料の周囲でゲル化した媒体が、鋳型の代わりとなるのである。

【0035】
本発明は、前記方法に使用する三次元物体の製造装置に係わるものでもある。本発明の装置は、造形材料から所望の形状の三次元物体を製造する装置であって、造形材料をプリントするプリントヘッドと、ゲル状態から熱又は力学的作用によって一時的に流動化する媒体を有し、プリントヘッド部を加熱するか或いは動作させることによってプリントヘッド部直近の媒体を液状化させ、造形材料をプリントヘッドのノズルより噴出し、噴出後は液状化した前記媒体がゲル状態に戻ることにより所望の形状を付与することを特徴とする。すなわち、従来の3Dプリンター用装置に、本発明で使用する媒体を適用して、従来のプリント用に用いていた基盤などを必要とする環境を一変し、媒体内で成形する装置を提供するものである。

【0036】
媒体に関する特徴や、特定事項は前記の通りであるのでここでは、プリントヘッド部に関してのみ説明する。本発明の装置に係わるプリントヘッド部は、媒体中に挿入されたのちに動作する。媒体が熱によって流動化するものを採用する場合には、挿入されるヘッド部が加熱される必要がある。加熱の方法は従来の電熱方式で良く、寒天ゲルを媒体とすれば、85℃以上の温度に加熱された後に、媒体内に挿入される。

【0037】
その後、プリントヘッド部が媒体内を所定の方向、位置まで移動され、ヘッド部より造形材料が噴射されつつ、所望の形状を形成するための範囲内において動作する。一定量の噴出が終了すると、ヘッド部は一旦媒体の外に移動する。冷却された媒体は、造形材料を内部に留めた状態でゲル化し、外部からの紫外線照射などにより造形材料が硬化させられる。続いて、次の形状形成のためにプリントヘッド部が再び、媒体中に挿入され、以後、この動作を繰り返して、最終的に目的とする形状が形成される。

【0038】
媒体が力学的作用によって一次的に流動化するもの(例えば前記物理ゲルや、流動パラフィンをゲル化したもの)の場合には、プリントヘッド部が加熱される必要はなく、ヘッド部の動きがある間はゲルが液状化する点が異なるだけで、その他の動作は前記と同様となる。

【0039】
以下本発明をより具体的に明らかにするために、いくつかの例を示す。

【0040】
(実施例1)
スメクトンSA(合成サポナイト;クニミネ工業株式会社製)0.5gをイオン交換水(電気伝導率0.0001mS/m)5.5gに分散させて、本発明に使用する媒体を得た。体積分率は0.036である。また媒体の塩濃度は0.1[M]以下である。

【0041】
造形材料として、予め水性塗料(黄色)を若干混ぜ合わせたアラルダイト(エポキシ系接着剤:ハンツマン・ジャパン株式会社製)を使用し、これをシリンジ(本発明の3Dプリンター用のプリントヘッド部の代替)に入れた。

【0042】
前記シリンジの先端を、前記媒体中に挿入に造形材料を噴射しつつ、造形物1を作成した結果、図4に示すような各種形状の物品が形成できた。

【0043】
(比較例1)
媒体として寒天を用いた。また、シリンジは加熱しないで、実施例1の操作どおりに操作した。その結果、寒天は常にゲル状態であったため、造形材料(実施例1と同じ素材)は、直ぐに押しつぶされ、形状を形成する前にシリンジの動作で破壊された寒天ゲルの亀裂部分に侵入し、或いはゲルの表面よりにじみ出て、所望の形状を付与できなかった。その結果を図5に示す。図5には上からみたときの状態と、側面からみたときの状態が示されており、いずれの状態からも造形材料2が拡散していることがわかる。なお、シリンジを加熱しながら行えば、前記実施例1のように成形できる可能性はある。

【0044】
(実施例2)
媒体として、ハイコール ジェル(登録商標 カネダ株式会社製;流動パラフィンを5~10%に相当する量のポリエチレンでゲル化したもの)を用い、造形材料として熱可塑性樹脂を使用した。なお、この際に使用したプリントヘッド部は150℃以上に加熱されていた。

【0045】
図6に結果を示す。ヘッド部が加熱されているので、その内部に熱可塑性樹脂が射出された結果となった。樹脂の硬化が早いこと、ヘッド部の加熱により媒体ハイコール ジェル(登録商標)が液状化したこと、によりリング形状の造形物3が作成できた。

【0046】
このように媒体に応じて、プリントヘッド部の構成、すなわち媒体が液状化する条件で成形を行えば、所望の造形物が得られることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、三次元物体があたかも宙に浮いているような状態で形成することで、従来必要とされている基盤や保持部材を使用することなく3Dプリンター技術を適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 造形物
2 造形材料
3 造形物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5