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明細書 :酸化チタンメソ結晶

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6061872号 (P6061872)
登録日 平成28年12月22日(2016.12.22)
発行日 平成29年1月18日(2017.1.18)
発明の名称または考案の名称 酸化チタンメソ結晶
国際特許分類 C01G  23/053       (2006.01)
B01J  21/06        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
FI C01G 23/053
B01J 21/06 M
B01J 35/02 J
請求項の数または発明の数 15
全頁数 22
出願番号 特願2013-556429 (P2013-556429)
出願日 平成25年1月30日(2013.1.30)
国際出願番号 PCT/JP2013/051972
国際公開番号 WO2013/115213
国際公開日 平成25年8月8日(2013.8.8)
優先権出願番号 2012018148
優先日 平成24年1月31日(2012.1.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年1月12日(2016.1.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】真嶋 哲朗
【氏名】立川 貴士
【氏名】ビエン ジンフン
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開2009-067655(JP,A)
特開2009-256137(JP,A)
特表2004-512253(JP,A)
特開2011-140426(JP,A)
特開2005-153027(JP,A)
Lei ZHOU et al.,"Ammonium oxotrifluorotitanate: morphology control and conversion to anatase TiO2",Physica Status Solidi. A. Applications and Materials Science,2008年,Vol.205, No.10,p.2317-2323
ZHOU, L. et al,A Facile Synthesis of Uniform NH4TiOF3 Mesocrystals and Their Conversion to TiO2 Mesocrystals,J. Am. Chem. Soc.,2008年 1月 9日,Vol.130, No.4,p.1309-1320,DOI:10.1021/ja076187c
YE, J. et al.,Nanoporous Anatase TiO2 Mesocrystals: Additive-Free Synthesis, Remarkable Crystalline-Phase Stabilit,J. Am. Chem. Soc.,2010年12月10日,Vol.133, No.4,p.933-940,DOI:10.1021/ja108205q
Takashi TACHIKAWA et al.,"Evidence for Crystal-Face-Dependent TiO2 Photocatalysis from Single-Molecule Imaging and Kinetic An,Journal of the American Chemical Society,2011年,Vol.133, No.18,p.7197-7204
LI, H. et al,Large ZnO Mesocrystals of Hexagonal Columnar Morphology Derived from Liquid Crystal Templates,Journal of the American Ceramic Society,2011年 4月 4日,Vol.94, No.10,p.3267-3275,DOI:10.1111/j.1551-2916.2011.04498.x
LAUSSER, C. et al,Mesocrystals of Vanadium Pentoxide: A Comparative Evaluation of Three Different Pathways of Mesocrys,ACS Nano,2011年 1月 4日,Vol.5, No.1,p.107-114,DOI:10.1021/nn1017186
調査した分野 C01G 23/00-23/08
C01B 37/00-37/08
C30B 29/16
B82Y 30/00、40/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
平均幅の平均厚みに対する比(平均幅/平均厚み)が10~100であり、比表面積が10m/g以上である、酸化チタンメソ結晶。
(ここで、平均幅は、その結晶の表面が正方形又は長方形である板状結晶と見立てた場合に、見立てた正方形又は長方形の辺の平均値をいい、平均厚みは、板状結晶の場合はその厚みの平均値、板状でない場合は板状結晶と見立てた場合の厚みの平均値をいう。)
【請求項2】
主な結晶面が[001]面である表面を有し、その表面の平均幅の平均厚みに対する比(平均幅/平均厚み)が10~100であり、比表面積が10m/g以上である、酸化チタンメソ結晶。
【請求項3】
平均幅が2~8μmである、請求項1又は2に記載の酸化チタンメソ結晶。
【請求項4】
平均厚みが50~300nmである、請求項1~3のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶。
【請求項5】
アナターゼ型酸化チタンナノ結晶の集合体である、請求項1~のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶。
【請求項6】
単結晶である、請求項1~のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶。
【請求項7】
板状である請求項1~のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶。
【請求項8】
TiF、NHNO、NHF及び水を含み、且つ、TiFとNHNOとの含有比率が1:4~15(モル比)であり、TiFとNHFとの含有比率が1:1~9(モル比)である前駆体水溶液を、酸素雰囲気下400~700℃の条件下に焼成する工程を備える、請求項1~のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶の製造方法。
【請求項9】
TiF、NHNO、NHF及び水を含み、且つ、TiFとNHNOとの含有比率が1:4~15(モル比)であり、TiFとNHFとの含有比率が1:1~9(モル比)である前駆体水溶液を、空気雰囲気又は酸素雰囲気下250~700℃の条件下に焼成した後に、酸素雰囲気下400~700℃の条件下に焼成する工程を備える、請求項1~のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶の製造方法。
【請求項10】
前記前駆体水溶液からなる液層を基板上に形成させた後に焼成する、請求項8又は9に記載の酸化チタンメソ結晶の製造方法。
【請求項11】
基板の表面に、請求項1~のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶からなる層が形成された複合材料。
【請求項12】
前記基板が、スズドープ酸化インジウム(ITO)又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)である請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
平均幅の平均厚みに対する比(平均幅/平均厚み)が10~100である、NHTiOF結晶。
(ここで、平均幅は、その結晶の表面が正方形又は長方形である板状結晶と見立てた場合に、見立てた正方形又は長方形の辺の平均値をいい、平均厚みは、板状結晶の場合はその厚みの平均値、板状でない場合は板状結晶と見立てた場合の厚みの平均値をいう。)
【請求項14】
TiF、NHNO、NHF及び水を含み、且つ、TiFとNHNOとの含有比率が1:4~15(モル比)であり、TiFとNHFとの含有比率が1:1~9(モル比)である前駆体水溶液を、空気雰囲気下250~300℃の条件下に焼成する工程
を備える、請求項13に記載のNHTiOF結晶の製造方法。
【請求項15】
前記前駆体水溶液からなる液層を基板上に形成させた後に焼成する、請求項14に記載のNHTiOF結晶の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタンメソ結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン、特に化学的に安定で高活性なアナターゼ酸化チタン(TiO)ナノ粒子は、これまで、光水分解、環境浄化光触媒、色素増感型太陽電池等様々な用途に幅広く用いられてきた。しかしながら、酸化チタンナノ粒子は無秩序に凝集しやすく、そのために生じる表面積の低下、界面の不整合等により、光活性(光触媒活性等)、光エネルギー変換効率等を低下させる一因となっている。
【0003】
この問題を解決するため、酸化チタンナノ粒子を高密度且つ規則的に集積させた酸化チタンメソ結晶の開発が進められている(例えば、非特許文献1~2参照)。しかしながら、そのサイズが1μm以上にも及ぶ酸化チタンメソ結晶においては、比表面積が一般的な酸化チタンナノ粒子(代表的な光触媒である酸化チタンナノ粒子P25は約50m/g程度)と比較して非常に低下し、10m/gにも満たない。そのため、充分な光触媒活性等を得られていないのが現状である。
【0004】
一方、比表面積の大きな酸化チタン結晶も知られている(非特許文献3)が、そのサイズ(長さ)は450nm以下と非常に小さい。このように小さい結晶を使用すると、酸化チタンナノ粒子と同様に、無秩序に凝集しやすく、やはり光触媒活性等が低下するため、根本的な解決には至っていない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】L. Zhou et al., J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 1309-1320
【非特許文献2】J. Feng et al., CrystEngComm, 2010, 12, 3425-3429
【非特許文献3】J. Ye et al., J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 933-940
【非特許文献4】L. Zhou et al., Small 2008, 4, 1566-1574
【非特許文献5】G. Liu et al., Chem. Commun. 2011, 47, 6763-6783
【非特許文献6】J. Zhu et al., CrystEngComm, 2010, 12, 2219-2224
【非特許文献7】T. Tachikawa et al., J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 7197-7204
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、サイズ及び比表面積の大きい酸化チタンメソ結晶を提供することを目的とする。また、本発明は、光触媒活性、フォトルミネッセンス特性、光誘起電荷分離特性等に優れた酸化チタンメソ結晶を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、TiF、NHNO、NHF及び水を所定量含む前駆体水溶液を、空気雰囲気下で焼成した後に、酸素雰囲気下でより高温で焼成することで、サイズ及び比表面積の大きい酸化チタンメソ結晶を提供することを見出した。本発明は、さらに研究を重ね、完成させたものである。すなわち、本発明は以下の構成を包含する。
項1.平均幅の平均厚みに対する比(平均幅/平均厚み)が10~100であり、比表面積が10m/g以上である、酸化チタンメソ結晶。
項2.平均幅が3~5μmである、項1に記載の酸化チタンメソ結晶。
項3.平均厚みが50~300nmである、項1又は2に記載の酸化チタンメソ結晶。
項4.アナターゼ型酸化チタンナノ結晶の集合体である、項1~3のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶。
項5.単結晶である、項1~4のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶。
項6.板状である項1~5のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶。
項7.TiF、NHNO、NHF及び水を含み、且つ、TiFとNHNOとの含有比率が1:4~15(モル比)であり、TiFとNHFとの含有比率が1:1~9(モル比)である前駆体水溶液を、酸素雰囲気下400~700℃の条件下に焼成する工程を備える、項1~6のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶の製造方法。
項8.TiF、NHNO、NHF及び水を含み、且つ、TiFとNHNOとの含有比率が1:4~15(モル比)であり、TiFとNHFとの含有比率が1:1~9(モル比)である前駆体水溶液を、空気雰囲気又は酸素雰囲気下250~700℃の条件下に焼成した後に、酸素雰囲気下400~700℃の条件下に焼成する工程を備える、項1~6のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶の製造方法。
項9.機能性材料の表面に、項1~6のいずれかに記載の酸化チタンメソ結晶からなる層が形成された複合材料。
項10.平均幅の平均厚みに対する比(平均幅/平均厚み)が10~100である、NHTiOF結晶。
項11.TiF、NHNO、NHF及び水を含み、且つ、TiFとNHNOとの含有比率が1:4~15(モル比)であり、TiFとNHFとの含有比率が1:1~9(モル比)である前駆体水溶液を、空気雰囲気下250~300℃の条件下に焼成する工程を備える、項10に記載のNHTiOF結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サイズ及び比表面積の大きい酸化チタンメソ結晶を提供することが可能である。特に比表面積については、代表的な光触媒である酸化チタンナノ粒子P25の50m/gより大きくすることも可能である。また、この本発明の酸化チタンメソ結晶は、光触媒活性、フォトルミネッセンス特性、光誘起電荷分離特性等に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】メソ結晶について説明する概念図である。N-I、N-II及びN-IIIは、酸化チタンナノ粒子が規則的に配列した様々な酸化チタンナノ結晶を表している。そして、M-I、M-II及びM-IIIが、これらが規則的に配列した酸化チタンメソ結晶を表している。
【図2】従来のナノ粒子系と本発明の酸化チタンメソ結晶における酸化チタンナノ結晶の配列を説明する概念図である。
【図3】本発明の製造方法の一例を示す概念図である。
【図4】実施例1~3及び比較例4、5及び11の結晶の粉末X線回折(XRD)の結果を示すグラフである。なお、参考として、アナターゼ型酸化チタン、NHNO、及びNHTiOFのピークも示す。
【図5】比較例1~2の結晶の粉末X線回折(XRD)の結果を示すグラフである。
【図6】比較例3の結晶の粉末X線回折(XRD)及び電子顕微鏡(SEM)観察の結果を示す図である。
【図7】実施例2の酸化チタンメソ結晶の電子顕微鏡(SEM及びTEM)観察の結果を示す図である。
【図8】実施例2の酸化チタンメソ結晶の厚みの分布を示すグラフである。
【図9】実施例1、3、比較例4、5の結晶の電子顕微鏡(SEM)観察の結果を示す図である。
【図10】実施例5及び比較例6~8の電子顕微鏡(SEM)観察の結果を示す図である。
【図11】実施例6~7及び比較例9~10の電子顕微鏡(SEM)観察の結果を示す図である。
【図12】比較例1の電子顕微鏡(TEM)観察の結果を示す図である。
【図13】比較例2の電子顕微鏡(a:TEM、b:SEM)観察の結果を示す図である。
【図14】実施例1~4及び比較例1~3、5の結晶のp-クロロフェノールの光触媒酸化活性を示すグラフである。
【図15】実施例1~4及び比較例1~3、5の結晶のCr6+の光触媒還元活性を示すグラフである。
【図16】実施例1~4及び比較例1~3、5の結晶のRhBの光触媒酸化活性を示すグラフである。
【図17】実施例と比較例1~2におけるナノ結晶の配列と電子の移動の一例を説明する概念図である。
【図18】実施例2及び比較例1における時間分解拡散反射率の測定結果を示すグラフである。
【図19】実施例2及び比較例1における酸化チタン結晶表面上のMTPMの吸着挙動の測定結果を示すグラフである。
【図20】実施例3~4における時間分解拡散反射率の測定結果を示すグラフである。
【図21】比較例2における時間分解拡散反射率の測定結果を示すグラフである。
【図22】実施例2及び比較例1における単一粒子蛍光分光の測定結果を示すグラフである。
【図23】実施例2において、UV照射強度による光電流応答についての測定結果を示すグラフである。
【図24】実施例2及び比較例1の結晶の光電流応答の対比の結果を示すグラフである。
【図25】酸化チタンメソ結晶の幅及び厚みの違いによる光電流応答の対比を示すグラフである。
【図26】実施例8の酸化チタンメソ結晶-機能性材料の複合材料の電子顕微鏡(SEM)観察の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.酸化チタンメソ結晶
本発明の酸化チタンメソ結晶は、平均幅の平均厚みに対する比(平均幅/平均厚み)が10~100であり、比表面積が10m/g以上である。

【0011】
本発明において、「酸化チタンメソ結晶」とは、酸化チタンナノ結晶が規則的に配列したメソサイズ(具体的には1~10μm程度)の結晶性超構造体を意味する。なお、超構造体とは、ナノ粒子又はナノ結晶が無秩序に凝集しているのではなく、規則的に配列した構造を意味する(図1、非特許文献4のFigure 1参照)。図1において、N-I、N-II及びN-IIIは、酸化チタンナノ粒子が規則的に配列した様々な酸化チタンナノ結晶を表している。そして、M-I、M-II及びM-IIIが、これらが規則的に配列した酸化チタンメソ結晶を表している。この際、酸化チタンメソ結晶において、酸化チタンナノ粒子1つ1つも、規則的に配列している。このように、本発明の酸化チタンメソ結晶は、酸化チタンナノ結晶が無秩序に凝集せず、規則的に配列した大きなサイズの結晶であるため、無秩序な凝集を抑制することができる。

【0012】
また、本発明の酸化チタンメソ結晶においては、上記のように、酸化チタンナノ結晶が規則的に配列していることから、全体として単結晶とすることも可能である。

【0013】
なお、図1において、左下に示されているAmorphous Solid及びPolycrystalは、酸化チタンナノ粒子又は酸化チタンナノ結晶が無秩序に凝集した状態を表している。

【0014】
また、図2にも示されるように、従来の無秩序な凝集体では、酸化チタンナノ結晶同士の接点が少なく(図2では点でのみ接しており)、太陽光により発生した電子が伝導しにくかったが、本発明の酸化チタンメソ結晶においては、酸化チタンナノ結晶が規則的に配列しており、酸化チタンナノ結晶同士の接点が多く(図2では線で接しており)、電子が伝導しやすくなり、高い電気伝導度が得られる。また、本発明の酸化チタンメソ結晶では凝集を抑制することができることから、同程度の比表面積を有する酸化チタンナノ粒子を使用した場合と比較しても、高い比表面積を維持することができ、光触媒活性を飛躍的に向上させることもできる。

【0015】
本発明の酸化チタンメソ結晶においては、厚みと比較して幅が充分大きいことが特徴の1つである。具体的には、平均幅の平均厚みに対する比(平均幅/平均厚み)が10~100、好ましくは40~50程度である。平均幅の平均厚みに対する比を大きくすることで、酸化チタンメソ結晶のサイズを大きくすることができ、無秩序な凝集を抑制することができるが、大きすぎると壊れやすくなる観点から、上記の範囲が好ましい。

【0016】
また、本発明の酸化チタンメソ結晶は、上記のとおり、平均幅の平均厚みに対する比が大きいことから、表面エネルギーの高い{001}面を主な結晶面として有することができる。{001}面は、高活性な結晶面として注目されているため(非特許文献5)、本発明の酸化チタンメソ結晶は、{001}面を主な結晶面として有することにより、光触媒活性等を向上させることができる。

【0017】
このように、平均幅の平均厚みに対する比を大きくすることが好ましいため、平均幅は大きいほうが好ましい。また、平均厚みは小さいほうが好ましい。具体的には、平均幅は、2~8μm程度が好ましく、4~5μm程度がより好ましい。また、平均厚みは、50~300nm程度が好ましく、70~110nm程度がより好ましい。

【0018】
なお、本発明の酸化チタンメソ結晶では、平均幅とは、表面が正方形又は長方形である板状結晶と見立てた場合において、見立てた正方形又は長方形の辺の平均値を意味する。また、本発明の酸化チタンメソ結晶の平均厚みとは、板状結晶の場合にはその厚みの平均値、板状でない場合には板状結晶と見立てた場合の厚みの平均値である。これらの幅及び厚みは、例えば、電子顕微鏡観察(SEM等)等により測定することができる。

【0019】
また、本発明の酸化チタンメソ結晶の比表面積は、10m/g以上である。酸化チタンメソ結晶の比表面積が小さすぎると、光触媒活性及び光電流寿命に劣る。本発明では、酸化チタンメソ結晶の比表面積は、代表的な光触媒である酸化チタンナノ粒子P25の50m/gより大きくすることも可能である。なお、酸化チタンメソ結晶の比表面積は、10~80m/g程度が好ましく、50~70m/g程度がより好ましい。また、本発明の酸化チタンメソ結晶の比表面積は、例えば、BET法等により測定することができる。

【0020】
本発明の酸化チタンメソ結晶を構成する酸化チタンナノ結晶としては、アナターゼ型であってもルチル型であってもよい。なかでも、触媒活性が高いことから、本発明の酸化チタンメソ結晶は、アナターゼ型酸化チタンナノ結晶の集合体とすることが好ましい。なお、酸化チタンナノ結晶の結晶構造は、例えば、粉末X線回折等により測定することができる。

【0021】
また、本発明の酸化チタンメソ結晶を構成する酸化チタンナノ結晶の平均粒子径は、光触媒活性により優れる観点から、30~70nm程度が好ましく、35~40nm程度がより好ましい。酸化チタンナノ粒子の平均粒子径は、例えば、粉末X線回折(シェラーの式を用いて)等により測定することができる。

【0022】
本発明の酸化チタンメソ結晶における細孔径及び細孔容積は、より比表面積を向上させる観点から大きいほうが好ましい。具体的には、平均細孔径は、3~8nm程度が好ましい。また、平均細孔容積は、0.1~0.2cm/g程度が好ましい。これらは、BJHモデルによる吸着等温線等から測定することができる。

【0023】
本発明の酸化チタンメソ結晶においては、酸化チタンの純度を向上させ、不純物である窒素、フッ素等を実質的に含まない結晶とすることができる。このことは、本発明の酸化チタンメソ結晶のバンドギャップが、酸化チタンと同程度であることから確認することができる。

【0024】
本発明の酸化チタンメソ結晶の形状は、板状であっても、他の形状であってもよい。なかでも、表面エネルギーの高い{001}面を主な結晶面として有するためには平均幅の平均厚みに対する比が大きいことが好ましいことから、板状が好ましい。

【0025】
2.NHTiOF結晶
上記説明した本発明の酸化チタンメソ結晶は、後述のように、本発明のNHTiOF結晶を用いて、トポタクティック反応により得ることができる。このトポタクティック反応においては、結晶の形状はほぼ維持される(非特許文献1等参照)ので、結晶の形状は本発明の酸化チタンメソ結晶と同様である。具体的には、以下のとおりである。

【0026】
本発明のNHTiOF結晶においては、厚みと比較して幅が充分大きいことが特徴である。具体的には、平均幅の平均厚みに対する比(平均幅/平均厚み)が10~100、好ましくは40~50程度である。平均幅の平均厚みに対する比を多くすることで、最終的に得られる酸化チタンメソ結晶のサイズを大きくすることができ、酸化チタンメソ結晶の無秩序な凝集を抑制することができるが、大きすぎると壊れやすくなる観点から、上記の範囲が好ましい。

【0027】
また、本発明のNHTiOF結晶は、上記のとおり、平均幅の平均厚みに対する比が大きいことから、最終的に得られる酸化チタンメソ結晶を、表面エネルギーの高い{001}面を主な結晶面として有することができる。{001}面は、高活性な結晶面として注目されているため(非特許文献5)、本発明の酸化チタンメソ結晶は、{001}面を主な結晶面として有することにより、光触媒活性等を向上させることができる。

【0028】
このように、平均幅の平均厚みに対する比を大きくすることが好ましいため、平均幅は大きいほうが好ましい。また、平均厚みは小さいほうが好ましい。具体的には、平均幅は、2~8μm程度が好ましく、4~5μm程度がより好ましい。また、平均厚みは、50~300nm程度が好ましく、70~110nm程度がより好ましい。

【0029】
なお、平均幅及び平均厚みは、上記説明したものである。

【0030】
本発明のNHTiOF結晶の形状は、板状であっても、他の形状であってもよい。なかでも、最終的に得られる酸化チタンメソ結晶において、表面エネルギーの高い{001}面を主な結晶面として有するためには平均幅の平均厚みに対する比が大きいことが好ましいことから、板状が好ましい。

【0031】
3.酸化チタンメソ結晶及びNHTiOF結晶の製造方法
本発明の酸化チタンメソ結晶は、TiF、NHNO、NHF及び水を含み、且つ、TiFとNHNOとの含有比率が1:4~15(モル比)であり、TiFとNHFとの含有比率が1:1~9(モル比)である前駆体水溶液を、空気雰囲気又は酸素雰囲気下250~700℃の条件下に焼成した後に、酸素雰囲気下400~700℃の条件下に焼成する工程を備える方法により、製造することができる。

【0032】
本発明の酸化チタンメソ結晶の製造方法では、まず、前駆体水溶液を、空気雰囲気又は酸素雰囲気下250~700℃の条件下に焼成する。

【0033】
具体的には、前駆体水溶液からなる液層を基板上に形成し、空気雰囲気又は酸素雰囲気下250~700℃の条件下に焼成すればよい。

【0034】
基板としては、特に制限はなく、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。使用できる基板の具体例としては、例えば、シリコン、各種ガラス、透明樹脂等が挙げられる。ただし、後述のように、400℃以上で焼成する必要があることから、シリコン、ガラス等を用いるのが好ましい。

【0035】
液層の膜厚は、特に制限されないが、通常2mm以下程度が好ましい。

【0036】
液層の形成法は特に限定されるものではなく、用いる基板の種類により公知の方法を適宜採用することができる。例えば、基板上にディープコート、スピンコート等を施したり、基板材料と前駆体水溶液の混合溶液をシリコン、ガラス等に滴下したりすればよい。

【0037】
なお、基板としては、上記の他、機能性材料を用いて、本発明の酸化チタンメソ結晶との複合材料を容易に製造することができる。機能性材料としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等が挙げられる。

【0038】
前駆体水溶液に含まれるチタン前駆体としては、TiFを使用する。TiF中のFイオンが酸化チタンナノ結晶の{001}面に強く吸着し、{001}面を主な結晶面として有する、つまり、サイズが大きい酸化チタンメソ結晶が得られる。

【0039】
チタン前駆体としては、TiFよりも非常に安価なTiClを使用することも知られている(非特許文献2等)が、実際には、酸化チタンナノ結晶が規則的に配列することはなく、つまり酸化チタンメソ結晶が得られることはなく、凝集体しか得られない。その他、チタン前駆体として、Ti(OC、Ti(SO等を使用した場合も同様に、凝集体しか得られない。

【0040】
本発明の製造方法においては、酸化チタンメソ結晶の結晶構造を制御するためにNHNOを使用する。この際、NHNOの使用量は、TiFとNHNOとの含有比率が1:4~15(モル比)、好ましくは1:6~9(モル比)である。NHNOの使用量が少なすぎると、結晶構造を有しない酸化チタンナノ粒子の凝集物しか得られず、酸化チタンメソ結晶は得られない。一方、NHNOの使用量が多すぎると、酸化チタンメソ結晶と酸化チタンナノ粒子との混合物となり、酸化チタンナノ粒子の凝集を防ぐことができない。NHNOの使用量を上記範囲内とすることで、より結晶性の高い酸化チタンメソ結晶が得られる。

【0041】
本発明の製造方法においては、酸化チタンメソ結晶のサイズ(幅)と厚みを制御するためにNHFを使用する。この際、NHFの使用量は、TiFとNHFとの含有比率が1:1~9(モル比)であり、好ましくは1:3~5(モル比)である。NHFの使用量が少なすぎると、平均幅が小さく厚みが大きくなり、凝集を防ぐことができない。一方、NHFの使用量が多すぎると、酸化チタンメソ結晶の幅が大きくなりすぎ、且つ、厚みが薄くなりすぎて形状が崩壊するため凝集を防ぐことができない。

【0042】
本発明の製造方法においては、溶媒としては水を使用する。原料が有機材料の場合には有機溶媒を使用できるが、本発明では無機系材料を使用するため、水性溶媒、特に水が好ましい。水の使用量は、他の成分に対して過剰量とすればよいが、製膜のためには多すぎないほうがよい。具体的には、TiFと水との含有比率を1:100~1000(モル比)程度とすればよい。

【0043】
なお、本発明の製造方法では、従来の方法(非特許文献1等)で使用されていた界面活性剤を使用せずとも、酸化チタンナノ結晶を規則的に配列して酸化チタンメソ結晶を製造することが可能である。

【0044】
本発明の製造方法においては、上記説明した前駆体水溶液を、まず空気雰囲気下250~700℃、好ましくは250~300℃、より好ましくは250~290℃の条件下に焼成する(第1焼成)。これにより、上記した本発明のNHTiOF結晶を製造することができる。この際、酸素雰囲気下でも本発明のNHTiOF結晶を製造することができる。また、焼成温度が低すぎる場合には、NHNOとの混合物となる。さらに、焼成温度が高すぎる場合には、比表面積が10m/g以下の酸化チタン結晶となる。第1焼成において、酸素雰囲気下で400~700℃で焼成すれば、NHTiOF結晶を経由することなく、1ポットで本発明の酸化チタンメソ結晶を得ることも可能である。

【0045】
その後、製造したNHTiOF結晶を、酸素雰囲気下400~700℃の条件下に焼成する(第2焼成)。この焼成により、トポタクティック反応(非特許文献1等参照)を起こさせ、本発明の酸化チタンメソ結晶が得られる。この際、上記の空気雰囲気下での焼成と同じ炉で行ってもよいし、異なる炉で行ってもよい。なお、上述したように、第1焼成において、酸素雰囲気下で400~700℃の条件下で焼成した場合には、第2焼成を行わずに本発明の酸化チタンメソ結晶を得ることも可能である。

【0046】
第2焼成(第1焼成しか行わない場合は第1焼成)の雰囲気を酸素雰囲気とすることで、酸化チタンメソ結晶内への窒素、フッ素等の不純物の混入を抑制することができる。なお、本発明において、酸素雰囲気とは、100%の酸素ガスもしくは酸素濃度が90%以上の酸素と空気の混合ガス雰囲気が好ましい。

【0047】
また、第2焼成の焼成温度は400~700℃、好ましくは400~600℃、より好ましくは450~550℃である。焼成温度が低すぎると、NHTiOFを充分にTiOに変換することができず、酸化チタンメソ結晶が得られない。また、比表面積を大きくすることができない。一方、焼成温度が高すぎると、酸化チタンメソ結晶は得られるが、比表面積は低下し、光触媒活性等が悪化する。なお、通常は高温で焼成すると酸化チタンは活性の高いアナターゼ型を維持できず、ルチル型に構造変化するが、本発明においては、高温(上記温度範囲の上限近く)で焼成しても、アナターゼ型を維持することができる。

【0048】
なお、上記説明した本発明の製造方法の概念の一例を図3に示す。

【0049】
4.用途
本発明の酸化チタンメソ結晶は、上記のように、比表面積が大きいとともに、酸化チタンナノ結晶を規則的に配列したものであり、且つ、サイズも大きく凝集を抑制できることから、光触媒活性、フォトルミネッセンス特性、光誘起電荷分離特性が高く、導電性も高いものである。また、本発明によれば、非常に簡便な方法で酸化チタンメソ結晶を製造することができるため、大量生産性にも優れる。そのため、環境浄化光触媒、水素発生光触媒、色素増感太陽電池、リチウムイオンバッテリー等、種々様々な用途に適用することが可能である。
【実施例】
【0050】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
<実施例及び比較例>
実施例1:400℃焼成(Meso-TiO2-400)
まず、TiF、NHNO、NHを含む前駆体水溶液(組成はモル比で、TiF:NHNO:NH:HO=1:6.6:4:117)からなる液層を、シリコン基板に形成した。具体的には、前駆体水溶液を基板上に滴下した。液層の厚みは、1mm以下となるようにした。シリコン基板上に形成した液層を、空気雰囲気下250℃で2時間焼結することで、シリコン基板上にNHTiOF結晶を形成した。その後、酸素雰囲気(酸素100%)下400℃で8時間焼成することで、シリコン基板上に実施例1の酸化チタンメソ結晶を形成した。なお、前駆体水溶液に使用した原料はいずれも市販品を使用した。
【実施例】
【0052】
実施例2:500℃焼成(Meso-TiO2-500)
酸素雰囲気下での焼成温度を500℃とすること以外は実施例1と同様に、実施例2のNHTiOF結晶及び酸化チタンメソ結晶を作製した。
【実施例】
【0053】
実施例3:600℃焼成(Meso-TiO2-600)
酸素雰囲気下での焼成温度を600℃とすること以外は実施例1と同様に、実施例3のNHTiOF結晶及び酸化チタンメソ結晶を作製した。
【実施例】
【0054】
実施例4:700℃焼成(Meso-TiO2-700)
酸素雰囲気下での焼成温度を700℃とすること以外は実施例1と同様に、実施例のNHTiOF結晶及び酸化チタンメソ結晶を作製した。
【実施例】
【0055】
実施例5:500℃焼成、TiF:NHNO=1:9
前駆体水溶液において、TiF:NHNO=1:9(モル比)とすること以外は実施例2と同様に、実施例5の酸化チタンメソ結晶を作製した。
【実施例】
【0056】
実施例6:500℃焼成、TiF:NHF=1:2
前駆体水溶液において、TiF:NHF=1:2(モル比)とすること以外は実施例2と同様に、実施例6の酸化チタンメソ結晶を作製した。
【実施例】
【0057】
実施例7:500℃焼成、TiF:NHF=1:8
前駆体水溶液において、TiF:NHF=1:8(モル比)とすること以外は実施例2と同様に、実施例7の酸化チタンメソ結晶を作製した。
【実施例】
【0058】
比較例1:酸化チタンナノ結晶(Nano-TiO2
非特許文献6に従い、比較例1の酸化チタンナノ結晶を作製した。この試料は、酸素雰囲気下、600℃で8時間焼成した。
【実施例】
【0059】
比較例2:酸化チタン多結晶(Poly-TiO2
まず、TiFを含む前駆体水溶液(組成はモル比で、TiF:HO=1:117)からなる液層を、シリコン基板に形成した。その後、シリコン基板上に形成した液層を、空気雰囲気下500℃で2時間焼結した。さらに、酸素雰囲気下500℃で8時間焼成し、比較例2の酸化チタン多結晶を得た。
【実施例】
【0060】
比較例3:酸化チタンマイクロ結晶(Micro-TiO2
非特許文献7に従い、比較例3の酸化チタンマイクロ結晶を作製した。この試料は、酸素雰囲気下、600℃で8時間焼成した。
【実施例】
【0061】
比較例4:300℃焼成(TiO2-300)
酸素雰囲気下での焼成温度を300℃とすること以外は実施例1と同様に、比較例4の酸化チタン結晶を作製した。
【実施例】
【0062】
比較例5:800℃焼成(Meso-TiO2-800)
酸素雰囲気下での焼成温度を800℃とすること以外は実施例1と同様に、比較例5の酸化チタン結晶を作製した。
【実施例】
【0063】
比較例6:500℃焼成、TiF:NHNO=1:0
前駆体水溶液において、NHNOを使用しない(TiF:NHNO=1:0(モル比))こと以外は実施例2と同様に、比較例6の結晶を作製した。
【実施例】
【0064】
比較例7:500℃焼成、TiF:NHNO=1:3
前駆体水溶液において、TiF:NHNO=1:3(モル比)とすること以外は実施例2と同様に、比較例7の結晶を作製した。
【実施例】
【0065】
比較例8:500℃焼成、TiF:NHNO=1:20
前駆体水溶液において、TiF:NHNO=1:20(モル比)とすること以外は実施例2と同様に、比較例8の結晶を作製した。
【実施例】
【0066】
比較例9:500℃焼成、TiF:NHF=1:0
前駆体水溶液において、NHFを使用しない(TiF:NHF=1:0(モル比))こと以外は実施例2と同様に、比較例9の結晶を作製した。
【実施例】
【0067】
比較例10:500℃焼成、TiF:NHF=1:10
前駆体水溶液において、TiF:NHF=1:10(モル比)とすること以外は実施例2と同様に、比較例10の結晶を作製した。
【実施例】
【0068】
比較例11:250℃焼成(TiO2-250)
酸素雰囲気下での焼成温度を250℃とすること以外は実施例1と同様に、比較例11の酸化チタン結晶を作製した。
【実施例】
【0069】
<評価>
試験例1:比表面積
実施例1~4及び比較例1~5の結晶の比表面積をBET法により測定した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0070】
試験例2:細孔径及び細孔容積
実施例1~4及び比較例1~5の結晶の細孔径及び細孔容積をBJH法により測定した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0071】
試験例3:X線回折
実施例1~3及び比較例4、5及び11の結晶の特性を粉末X線回折(XRD)により測定した。また、実施例1~4及び比較例1~5の結晶について、X線回折ピークから、シェラーの式を用いて、各結晶を構成する酸化チタンナノ結晶の粒子径を評価した。結果を表1及び図4に示す。
【実施例】
【0072】
参考までに、比較例1~3の結晶のX線回折の結果も図5~6に示す。いずれも、アナターゼ型の酸化チタンが検出されている。
【実施例】
【0073】
【表1】
JP0006061872B2_000002t.gif
【実施例】
【0074】
試験例4:電子顕微鏡観察
実施例2の結晶の特性を走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。結果を図7~8に示す。
【実施例】
【0075】
図7aに示されるように、本発明の酸化チタンメソ結晶(特に実施例2)は、表面が略正方形状の板状結晶であった。
【実施例】
【0076】
また、図7bのように、酸化チタンナノ結晶が規則的に並んでいた。また、数nm程度の細孔が生じていた。細孔構造はTEMでも確認し(図7d)、結晶上の制限視野電子線回折(SAED)パターンから、{001}面に沿った単結晶のアナターゼ型結晶が確認された。酸化チタン粒子の接点の高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)像より、単結晶格子が、0.189nm程度の格子間隔を有するアナターゼ(200)又は(020)結晶面の原子面を示した(図7e)。これらの結果は、本発明の酸化チタンメソ結晶は、{001}面が表面に露出していることを強く示唆している。さらに、均一格子縞が明確に得られ、完璧に配向した酸化チタンナノ結晶が確認された。ナノ結晶が規則的に並ぶことにより、表面には多数の欠陥や孔が形成されていた(図7b及びe)。結晶端の孔を有する箇所のTEM像から、ナノ結晶は、正規構造に並んでいることが示された(図7f)。
【実施例】
【0077】
酸化チタンメソ結晶の平均厚みは、約80nmであり(図7c)、50~300nmの範囲で分布していた(図8)。
【実施例】
【0078】
他の実施例においても、本発明の酸化チタンメソ結晶の形状及び結晶構造は同様の結果が得られた(図4及び9等参照)。
【実施例】
【0079】
また、実施例5及び比較例6~8の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図10に示す。NHNOを使用しない場合や、量が少ない場合には、酸化チタン粒子の再結合による一次粒子の凝集体が見られた(図10a~b)。NHNOの量を増やすと、板状の酸化チタンメソ結晶が形成された(図10c)。さらにNHNOの量を増やすと、板状結晶と粒子との混合物となった(図10d)。このため、実施例5のみが、酸化チタンナノ粒子の凝集を抑制できることが示唆されている。
【実施例】
【0080】
さらに、実施例6~7及び比較例9~10の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図11に示す。NHFを使用しない場合は、酸化チタン結晶の厚みは300~500nm程度で、幅は約1μm程度であった(図11a)。NHFの量を増やすと、厚みは小さく、幅は大きくすることができた(図11b~c)。具体的には、厚みは70~110nm程度、幅は4~5μm程度とすることが可能であった。なお、本発明の酸化チタンメソ結晶の幅及び厚みは、焼成温度に依存せず、同程度の形状の結晶が得られる。さらにNHFの量を増やすと、厚みが小さすぎ、幅が大きすぎて酸化チタン結晶の形状が崩壊し、フラグメント化した小さな塊との混合物となった(図11d)。このため、実施例6~7が、酸化チタンナノ粒子の凝集を抑制しつつ幅と厚みの比を大きくできることが示唆されている。
【実施例】
【0081】
参考までに、比較例1~3の結晶の電子顕微鏡(SEM及びTEM)観察の結果も図6(比較例3)、12(比較例1)及び13(比較例2)に示す。比較例1~2は凝集しており、比較例3は幅と厚みの比率が小さいものである。
【実施例】
【0082】
試験例5:元素分析
エネルギー分散型X線分析(EDX)により、実施例2の酸化チタンメソ結晶の元素分析を行った。その結果、窒素、フッ素等のような酸化チタンの構成元素以外の元素は検出されなかった。
【実施例】
【0083】
また、定常状態拡散反射スペクトルから、実施例2の酸化チタンメソ結晶のバンドギャップは3.2eVと算出された。酸化チタンのバンドギャップと同程度であるので、このことからも、実施例2の酸化チタンメソ結晶には不純物が混入していないことが示唆されている。
【実施例】
【0084】
他の実施例においても、本発明の酸化チタンメソ結晶の元素分析の結果は同様の結果が得られた。
【実施例】
【0085】
試験例6:光触媒活性(p-クロロフェノール)
p-クロロフェノールの光触媒酸化を測定した。
【実施例】
【0086】
p-クロロフェノールを1.0×10-4M含む実施例1~4及び比較例1~3、5の結晶の分散液4mL(0.2g/L)を用いて、20分間超音波分解し、石英キュベット中に移した。光触媒反応を、室温でフィルター(365nm)を用いて水銀光源(REX-120)により紫外光を照射して開始させた。紫外光の強度は、70mW/cmとし、反応時間は4時間とした。紫外光照射を止めた後、試料を10000rpmで遠心分離し(HITACHI himac CF16RX)、パーティクルを除去した。未反応分子の濃度を、固有波長において紫外分光光度計((株)島津製作所のUV-3100)で分析し、分解率を算出した。
【実施例】
【0087】
結果を図14に示す。実施例の酸化チタンメソ結晶においては、他のどの比較例よりも優れた光触媒活性を示した(約2倍以上)。なかでも、500℃で焼成した実施例2が、最も優れた光触媒活性を示した。
【実施例】
【0088】
試験例7:光触媒活性(Cr6+
Cr6+の光触媒還元を測定した。
【実施例】
【0089】
p-クロロフェノールを1.0×10-4M含む分散液ではなく、Cr6+を4.0×10-4M含み、HSOでpHを3に調整した分散液を用いたこと以外は試験例と同様にして、Cr6+の分解率を算出した。
【実施例】
【0090】
結果を図15に示す。実施例の酸化チタンメソ結晶においては、他のどの比較例よりも優れた光触媒活性を示した(約2倍以上)。なかでも、500℃で焼成した実施例2が、最も優れた光触媒活性を示した。
【実施例】
【0091】
試験例8:光触媒活性(RhB)
ローダミンB(RhB)の光触媒酸化を測定した。
【実施例】
【0092】
p-クロロフェノールを1.0×10-4M含む分散液ではなく、ローダミンB(RhB)を1.0×10-5M含む分散液を用い、反応時間を10分としたこと以外は試験例と同様にして、RhBの分解率を算出した。
【実施例】
【0093】
結果を図16に示す。実施例の酸化チタンメソ結晶においては、他のどの比較例よりも優れた光触媒活性を示した(約2倍以上)。なかでも、500℃で焼成した実施例2が、最も優れた光触媒活性を示した。
【実施例】
【0094】
比較例1及び2(特に比較例1)の結晶は、実施例と比較しても遜色のない比表面積を有しているが、光触媒活性は著しく低下している。このことから、比較例1の結晶は、本発明の酸化チタンメソ結晶のように、規則的に酸化チタンナノ結晶が配列しているわけではなく、無秩序に凝集していることが示唆されている(図17参照)。
【実施例】
【0095】
試験例9:時間分解拡散反射率
電荷分離状態の寿命を評価するため、時間分解反射分光法を行った。この測定は、光触媒反応の効率の評価基準である。
【実施例】
【0096】
具体的には、以下のように行った。
【実施例】
【0097】
遅延発生器(Stanford Research Systems, DG535)を用いて時間的に制御されたQスイッチNd3+:YAGレーザー(Continuum, Surelite II-10)からの第三高周波(355 nm, 5 ns(半値全幅)、1.5 mJ/pulse)を酸化チタンの励起光源として用いた。パルス450Wキセノンアークランプ(Ushio, UXL-451-0)からの分析光は、集束レンズに集められ、分光器(Nikon, G250)を通して、シリコンアバランシェフォトダイオード検出器(Hamamatsu Photonics, S5343)に向かわせた。過渡信号は、オシロスコープ(Tektronix, TDS 580D)により記録した。実験は全て室温で行った。
【実施例】
【0098】
図18に示されるように、実施例2の酸化チタンメソ結晶においては、可視から近赤外領域の広い波長範囲で過渡吸収が確認された。この範囲は、捕捉正孔(主として440~600nm)と捕捉電子(660~900nm)の吸収帯が重複している。
【実施例】
【0099】
ここで、プローブ分子として4-(メチルチオ)フェニルメタノール(MTPM)を選択し、電荷分離状態の寿命を評価した。プローブ分子としてMTPMを使用することで、正孔との反応によって生じる一電子酸化体の過渡信号をよりはっきりと認識することができるためである(図18)。また、MTPMは、p-クロロフェノールと似た構造を有しているためでもある。
【実施例】
【0100】
ここで、酸化チタン結晶表面上のMTPMの吸着挙動を測定すると、図19のように、実施例2と比較例1でほぼ同じ挙動を示した。このため、実施例2と比較例1とを比較すれば、反応効率における吸着の寄与を最小限にすることができる。
【実施例】
【0101】
ここで、光生成した正孔により吸着したMTPMの一電子酸化により生成するMTPM●+の550nm吸収バンドの吸収データから、酸化チタン中の電子との電荷再結合の速度を見積もることができる。図18では、これらの比較がなされており、半減期は実施例2では2μsと、比較例1の0.5μsよりも非常に長くなっている。実施例2以外の実施例3~4の酸化チタンメソ結晶についても、同様の結果となった(図20)。一方、比較例2の結晶については、非常に弱い過渡信号で、且つ、半減期が非常に短かった(図21)。
【実施例】
【0102】
試験例10:単一粒子蛍光分光
光生成した電子と正孔の再結合により、はっきりとしたフォトルミネッセンスが得られる。酸化チタンのフォトルミネッセンス特性を評価するため、単一粒子蛍光分光を行った。蛍光分光は、高い空間分解能で表面反応を観測することができる強力な手法である。
【実施例】
【0103】
単一粒子蛍光イメージ及び発光減衰曲線は、Olympus IX71倒立型蛍光顕微鏡に備えられた共焦点走査型顕微鏡システム(PicoQuant, Micro Time 200)により測定した。試料は、油浸対物レンズ(Olympus, UPLSAPO 100XO; 1.40 NA, 100×)を通して、PDL-800Bドライバー(PicoQuant)により制御された380nmの円偏光パルスレーザー(Spectra-Physics, 自動周波数ダブラー付きMAI TAI HTS-W, Inspire Blue TAST-W; 0.8 MHz repetition rate, 10μW excitation power)で励起した。実験は全て室温で行った。
【実施例】
【0104】
図22のように、実施例2の酸化チタンメソ結晶においては、結晶の中心部及び端部のいずれにおいても、450~600nmにおいて表面捕捉された電荷に起因するブロードな発光が得られた。
【実施例】
【0105】
また、発光減衰曲線を異なる場所で評価した結果、強度加重平均減衰寿命が、実施例2の酸化チタンメソ結晶においては、中心部が5.9ns、端部が7.1nsであった。また、実施例4については、中心部が6.6ns、端部が15.2nsであった。それに対して、比較例1については、2.0ns程度であった。このように、本発明の酸化チタンメソ結晶においては、より遅く電荷再結合が起こるため、電荷分離を促進することができる。
【実施例】
【0106】
試験例11:電流計測AFM測定
光誘起電荷分離特性を評価するため、UV光源を備えた電流計測AFM測定を行った。
【実施例】
【0107】
AFM像とI-V曲線は、Olympus IX71倒立型蛍光顕微鏡に取り付けられたORCAモジュール(Asylum Research, Model 59)を備えたMFP-3D原子間力顕微鏡(Asylum Research, Santa Barbara, CA)により得た。全ての電流測定は、Rocky Mountain Nanotechnology, LLCの固体白金カンチレバー(25Pt300B; チップ半径20nm未満)を用いて行った。電子輸送特性は、UV照射又は未照射で、試料表面にマークしたポイントで記録したI-V曲線から評価した。2色ビームスプリッター(Olympus, DM410)を通過したLED(OPTO-LINE, MS-LED-365)からの365nmの光は、減光フィルター(NDフィルター;Olympus)及び対物レンズ(Olympus, UPLSAPO 100XO; 1.40 NA, 100×)を通過させた後、試料に照射された。
【実施例】
【0108】
実施例2の酸化チタンメソ結晶においては、UV照射をしない場合には、印加電圧に対する電流応答は見られなかったが、UV照射により明確な光電流応答が見られた(図23)。
【実施例】
【0109】
また、実施例2、4及び比較例1の試料について、I-V曲線を測定した結果、同じ強度のUV照射に対して実施例2がより顕著な電流応答を示し、また、電流応答0.5nAに到達するまでのUV照射強度は実施例2のほうが小さくてよいことが見出された(図24)。具体的には、1.9mW/cmのUVを照射した場合には、光電流応答は、実施例2では約1.0nA、実施例4では約2.0nA、比較例1では約0.5nAであった。
【実施例】
【0110】
さらに、様々な試料のI-V曲線を測定した結果、酸化チタンメソ結晶の幅によっては光電流応答がほとんど変化しないが、厚みによって大きく異なることが示唆された(図25)。I-V値と酸化チタンメソ結晶の厚みの関係から得られた光伝導度は、1.9×10-2Ω-1-1であった。
【実施例】
【0111】
また、実施例2、4及び比較例1の結晶について、UV照射をやめた後の電流減衰を測定したところ、実施例2は20分より大きく、実施例4は約1分、比較例1は約5分であり、実施例2の酸化チタンメソ結晶が最も維持できていた。
【実施例】
【0112】
以上の試験9~11の結果から、電子及び正孔の電荷再結合の速度を遅くし、また、電子伝導度を向上させることができ、本発明の酸化チタンナノ結晶の水の光分解、太陽電池の電極材料への有用性が示唆されている。
【実施例】
【0113】
実施例8:酸化チタンメソ結晶-ITO膜
まず、TiF、NHNO、NHを含む前駆体水溶液(組成はモル比で、TiF:NHNO:NH:HO=1:6.6:4:117)からなる液層を、ITO膜基板に形成した。具体的には、前駆体水溶液を基板上に滴下した。液層の厚みは、1mm以下となるようにした。ITO基板上に形成した液層を、空気雰囲気下400℃で2時間焼結することで、シリコン基板上に酸化チタンメソ結晶を形成した。その後、酸素雰囲気下400℃で8時間焼成することで、ITO基板上に実施例1の酸化チタンメソ結晶を形成した。
【実施例】
【0114】
得られた酸化チタンメソ結晶について、試験例4と同様に、電子顕微鏡(SEM)観察をした結果を図26に示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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