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明細書 :金属酸化物メソ結晶及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6053831号 (P6053831)
登録日 平成28年12月9日(2016.12.9)
発行日 平成28年12月27日(2016.12.27)
発明の名称または考案の名称 金属酸化物メソ結晶及びその製造方法
国際特許分類 C01B  13/18        (2006.01)
C01G  23/053       (2006.01)
C01G   3/02        (2006.01)
C01G   9/02        (2006.01)
C01G  53/00        (2006.01)
C01G  53/04        (2006.01)
B01J  23/06        (2006.01)
B01J  23/72        (2006.01)
B01J  23/755       (2006.01)
B01J  23/80        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
B01J  35/02        (2006.01)
FI C01B 13/18
C01G 23/053
C01G 3/02
C01G 9/02 B
C01G 53/00 A
C01G 53/04
B01J 23/06 M
B01J 23/72 M
B01J 23/755 M
B01J 23/80 M
B82Y 30/00
B82Y 40/00
B01J 35/02 J
請求項の数または発明の数 7
全頁数 22
出願番号 特願2014-559510 (P2014-559510)
出願日 平成25年12月2日(2013.12.2)
国際出願番号 PCT/JP2013/082345
国際公開番号 WO2014/119117
国際公開日 平成26年8月7日(2014.8.7)
優先権出願番号 2013017258
優先日 平成25年1月31日(2013.1.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年6月26日(2015.6.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】真嶋 哲朗
【氏名】立川 貴士
【氏名】ビエン ジンフン
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】大城 公孝
参考文献・文献 特開2005-153027(JP,A)
特開2011-140426(JP,A)
LI, B. et al,Facile synthesis and photocatalytic activity of ZnO-CuO nanocomposite,Superlattices and Microstructures,2010年 3月12日,Vol.47, No.5,p.615-623,DOI:10.1016/j.spmi.2010.02.005
XU, M. et al,Electrochemical synthesis of leaf-like CuO mesocrystals and their lithium storage properties,RSC Advances,2012年 2月 7日,Vol.2,p.2240-2243,DOI:10.1039/c2ra01119k
XU, H. et al,Hierarchical-Oriented Attachment: From One-Dimensional Cu(OH)2 Nanowires to Two-Dimensional CuO Nano,Cryst. Growth Des.,2007年11月15日,Vol.7, No.12,p.2720-2724,DOI:10.1021/cg060727k
BIAN, Z. et al,Superior Electron Transport and Photocatalytic Abilities of Metal-Nanoparticle-Loaded TiO2 Superstru,J. Phys. Chem. C,2012年11月13日,Vol.116, No.48,p.25444-25453,DOI:10.1021/jp309683f
LAUSSER, C. et al,Mesocrystals of Vanadium Pentoxide: A Comparative Evaluation of Three Different Pathways of Mesocrys,ACS Nano,2011年 1月 4日,Vol.5, No.1,p.107-114,DOI:10.1021/nn1017186
CAI, J.G. et al,TiO2 mesocrystals: Synthesis, formation mechanisms and applications,Sci. China Chem.,2012年 8月 3日,Vol.55, No.11,p.2318-2326,DOI:10.1007/s11426-012-4706-7
LI, H. et al,Large ZnO Mesocrystals of Hexagonal Columnar Morphology Derived from Liquid Crystal Templates,Journal of the American Ceramic Society,2011年 4月 4日,Vol.94, No.10,p.3267-3275,DOI:10.1111/j.1551-2916.2011.04498.x
LI, T. et al,Controllable growth of ZnO mesocrystals using a facile electrochemical approach,Chemical Physics Letters,2012年10月27日,Vol.555,p.154-158,DOI:10.1016/j.cplett.2012.10.046
調査した分野 C01B 13/14-13/36
B01J 21/00-38/74
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
金属酸化物メソ結晶の製造方法であって、
1種又は2種以上の金属酸化物前駆体、アンモニア塩、界面活性剤、及び水を含む前駆体水溶液を、300~600℃にする工程
を備える、製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物前駆体が、金属硝酸塩及び/又は金属フッ化物塩である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アンモニア塩がNHNOである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記界面活性剤が、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記前駆体水溶液は、金属酸化物前駆体と界面活性剤との含有比率が1~1000:1(モル比)である、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記前駆体水溶液は、アンモニア塩と界面活性剤の含有比率が1~1000:1(モル比)である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体水溶液を300~600℃にする工程を基板上で行う、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物メソ結晶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物ナノ粒子は、これまで、光水分解、環境浄化光触媒、色素増感型太陽電池等様々な用途に幅広く用いられてきた。しかしながら、金属酸化物ナノ粒子は無秩序に凝集しやすく、そのために生じる表面積の低下、界面の不整合等により、光活性(光触媒活性等)、光エネルギー変換効率等を低下させる一因となっている。
【0003】
この問題を解決するために、金属酸化物ナノ粒子が自己組織化した超構造体である金属酸化物メソ結晶は、環境浄化や水分解を目的とした光触媒、太陽電池等の光電変換素子、バッテリー、センサー等様々な応用が期待されている新材料である(非特許文献1、2)。金属酸化物メソ結晶は、これまで多くの合成法が報告されてきた(非特許文献1、2)が、いずれも手順が煩雑で合成に時間がかかる場合が多く、また、特定の種類の金属酸化物1種類のみのメソ結晶しか合成することができなかった。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】R. -Q. Song et al., Adv. Mater. 22, 1301-1330 (2010)
【非特許文献2】L. Zhou et al., J. Phys. Chem. Lett. 3, 620-628 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本発明者らは、酸化チタンナノ粒子からなるメソ結晶が、簡便な手法により合成できることを見出した。この酸化チタンメソ結晶は、大きな比表面積と高い電荷輸送能をあわせもっており、光触媒をはじめとする太陽光エネルギー産業への応用が期待される。ただし、2種以上の金属酸化物、又は合金酸化物からなる複合型メソ結晶を合成することはできなかった。
【0006】
様々な金属酸化物メソ結晶を簡便に合成できる一般的合成法を確立することができれば、個々の物質の有する物理的・化学的特徴を生かした応用展開の可能性が飛躍的に広がるとともに、これまで成し遂げられていない複数の金属酸化物、又は合金酸化物からなる複合型メソ結晶の開発への糸口が得られると期待される。
【0007】
以上から、本発明は、様々な金属酸化物メソ結晶を簡便に合成できる方法と、それにより得られる金属酸化物メソ結晶を提供することを目的とする。また、複数の金属酸化物、又は合金酸化物からなる複合型メソ結晶を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、1種又は2種以上の金属酸化物前駆体、アンモニア塩、界面活性剤、及び水を含む前駆体水溶液を、特定の条件下に焼成することで、様々な金属酸化物メソ結晶を簡便に合成できることを見出した。この際、2種以上の金属酸化物の前駆体を使用すれば、複数の金属酸化物、又は合金酸化物からなる複合型メソ結晶を提供することも可能である。本発明は、さらに研究を重ね、完成させたものである。すなわち、本発明は以下の構成を包含する。
項1.金属酸化物メソ結晶の製造方法であって、
1種又は2種以上の金属酸化物前駆体、アンモニア塩、界面活性剤、及び水を含む前駆体水溶液を、300~600℃の条件下に焼成する工程
を備える、製造方法。
項2.前記金属酸化物前駆体が、金属硝酸塩及び/又は金属フッ化物塩である、項1に記載の製造方法。
項3.前記アンモニア塩がNHNOである、項1又は2に記載の製造方法。
項4.前記界面活性剤が、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1~3のいずれかに記載の製造方法。
項5.前記前駆体水溶液は、
金属酸化物前駆体と界面活性剤との含有比率が1~1000:1(モル比)であり、
アンモニア塩と界面活性剤の含有比率が1~1000:1(モル比)である、
項1~4のいずれかに記載の製造方法。
項6.項1~5のいずれかに記載の製造方法により得られる金属酸化物メソ結晶。
項7.比表面積が0.5m/g以上であり、平均幅が0.01~1000μmである、遷移金属(ただしチタンを除く)の酸化物からなるメソ結晶。
項8.平均幅が400~1000nmであり、比表面積が10m/g以上である、酸化チタンメソ結晶。
項9.2種以上の金属を含むメソ結晶。
項10.比表面積が0.5m/g以上である、項9に記載のメソ結晶。
項11.2種類以上の金属酸化物からなる、項9又は10に記載のメソ結晶。
項12.前記金属酸化物が、2種以上の遷移金属酸化物からなる、項11に記載のメソ結晶。
項13.合金の酸化物からなる、項9又は10に記載のメソ結晶。
項14.機能性材料の表面に、項6~13のいずれかに記載のメソ結晶からなる層が形成された複合材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、様々な金属酸化物メソ結晶を簡便に合成することができる。また、複数の金属酸化物や、合金酸化物からなる複合型メソ結晶を提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】メソ結晶について説明する概念図である。N-I、N-II及びN-IIIは、金属酸化物ナノ粒子が規則的に配列した様々な金属酸化物ナノ結晶を表している。そして、M-I、M-II及びM-IIIが、これらが規則的に配列した金属酸化物メソ結晶を表している。
【図2】従来のナノ粒子径と本発明の金属酸化物メソ結晶における金属酸化物ナノ結晶の配列を説明する概念図である。
【図3】本発明の製造方法の一例を示す概念図である。
【図4】実施例及び比較例の結晶の粉末X線回折(XRD)の結果を示すグラフである。参考として、アナターゼ型酸化チタン、NHTiOF、ZnO、Zn(NO)(OH)・HO、NiO、Ni(NO(OH)、CuO、Cu(NO)(OH)、及びNHNOのピークも示している。また、aは酸化チタン(実施例1~3及び比較例1~3)、bは酸化亜鉛(実施例4~6及び比較例4)、cは酸化ニッケル(実施例7~8及び比較例5~6)、dは酸化銅(実施例9~11及び比較例7~9)、eは酸化亜鉛/酸化銅複合型メソ結晶(実施例12)、fは亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ粒子からなる複合型メソ結晶(実施例13)の結果である。
【図5】実施例1、4、7及び9の各メソ結晶の電子顕微鏡(SEM及びTEM)観察の結果を示す図である。
【図6】実施例12の複合型メソ結晶の電子顕微鏡(SEM及びTEM)観察の結果を示す図である。
【図7】実施例13の複合型メソ結晶の電子顕微鏡(SEM及びTEM)観察の結果を示す図である。
【図8】実施例4、12及び13における単一粒子蛍光分光による発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図9】実施例4、12及び13における単一粒子蛍光分光による発光寿命の測定結果を示すグラフである。
【図10】p-クロロフェノールの光触媒分解試験の結果を示すグラフである。
【図11】p-クロロフェノールの光触媒分解試験の結果を示すグラフである。
【図12】試験例7の結果を示す図面(ZnO/CuOメソ結晶の特性評価)である。(a)ZnO/CuOメソ結晶のHAADF-STEM像。(b)ZnO/CuOメソ結晶のEDXスペクトル(CuのKαピークは8.04keVであり、ZnのKαピークは8.63keVである)。(c)図12(a)中のラインに沿って走査したEDXラインスキャンプロファイル。矢印はメソ結晶表面上のZnOナノ結晶を示す。(d)ZnO/CuOメソ結晶の断面HAADF-STEM像。(e)ZnO/CuOメソ結晶断面のOのEDX元素マッピング。(f)ZnO/CuOメソ結晶断面のCuのEDX元素マッピング。(g)ZnO/CuOメソ結晶断面のZnのEDX元素マッピング。(h)ZnO/CuOメソ結晶の高分解能断面HAADF-STEM像。(i)ZnO/CuOメソ結晶断面のCuの高分解能EDXマッピング。(j)ZnO/CuOメソ結晶断面のZnの高分解能EDXマッピング。(k)図12(i)と図12(j)との合成画像。
【図13】試験例8の結果を示す図面(EPRスペクトル)である。図中、実線はUV非照射下であり、破線はUV照射下である。また、sim.及びobs.はそれぞれシミュレート及び実測値のスペクトルである。(1)ZnOのEPRスペクトル(真空、77K)。(2)CuOのEPRスペクトル(真空、77K)。(3)ZnO/CuOメソ結晶のEPRスペクトル(真空、77K)。
【図14】試験例9の結果を示す図面(時間分解拡散反射分光)である。太線及び細線はそれぞれ実験データ及びフィッティング曲線を示す。(a)ZnO/CuOメソ結晶の過渡吸収スペクトル。(b)1100nmで測定した時間トレース。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、「金属酸化物メソ結晶」とは、金属酸化物ナノ結晶が規則的に配列したメソサイズ(具体的には0.01~1000μm程度、特に100nm~10μm程度)の結晶性超構造体を意味する。なお、超構造体とは、ナノ粒子又はナノ結晶が無秩序に凝集しているのではなく、規則的に配列した構造を意味する(図1、L. Zhou et al., Small 2008, 4, 1566-1574のFigure 1参照)。図1において、N-I、N-II及びN-IIIは、金属酸化物ナノ粒子が規則的に配列した様々な金属酸化物ナノ結晶を表している。そして、M-I、M-II及びM-IIIが、これらが規則的に配列した金属酸化物メソ結晶を表している。この際、金属酸化物メソ結晶において、金属酸化物ナノ粒子1つ1つも、規則的に配列している。このように、本発明の金属酸化物メソ結晶は、金属酸化物ナノ結晶が無秩序に凝集せず、規則的に配列した大きなサイズの結晶であるため、無秩序な凝集を抑制することができる。

【0012】
なお、図1において、左下に示されているAmorphous Solid及びPolycrystalは、金属酸化物ナノ粒子又は金属酸化物ナノ結晶が無秩序に凝集した状態を表している。

【0013】
また、図2にも示されるように、従来の無秩序な凝集体では、金属酸化物ナノ結晶同士の接点が少なく(図2では点でのみ接しており)、太陽光により発生した電子が伝導しにくかったが、本発明の金属酸化物メソ結晶においては、金属酸化物ナノ結晶が規則的に配列しており、金属酸化物ナノ結晶同士の接点が多く(図2では線で接しており)、電子が伝導しやすくなり、高い電気伝導度が得られる。また、本発明の金属酸化物メソ結晶では凝集を抑制することができることから、同程度の比表面積を有する金属酸化物ナノ粒子を使用した場合と比較しても、高い比表面積を維持することができ、光触媒活性を飛躍的に向上させることもできる。

【0014】
1.金属酸化物メソ結晶の製造方法
本発明の金属酸化物メソ結晶は、1種又は2種以上の金属酸化物前駆体、アンモニア塩、界面活性剤、及び水を含む前駆体水溶液を、300~600℃の条件下に焼成する工程を備える方法により、製造することができる。これにより、酸化チタンメソ結晶だけでなく、様々な金属酸化物メソ結晶を製造することができる。

【0015】
本発明の金属酸化物メソ結晶の製造方法では、前駆体水溶液を、300~600℃の条件下に焼成する。

【0016】
具体的には、前駆体水溶液からなる液層を基板上に形成し、300~600℃の条件下に焼成すればよい。

【0017】
基板としては、特に制限はなく、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。使用できる基板の具体例としては、例えば、シリコン、各種ガラス、透明樹脂等が挙げられる。400℃以上で焼成する場合には特に、シリコン、ガラス等を用いるのが好ましい。

【0018】
液層の膜厚は、特に制限されないが、通常2mm以下程度が好ましい。

【0019】
液層の形成法は特に限定されるものではなく、用いる基板の種類により公知の方法を適宜採用することができる。例えば、基板上にディープコート、スピンコート等を施したり、基板材料と前駆体水溶液の混合溶液をシリコン、ガラス等に滴下したりすればよい。

【0020】
なお、基板としては、上記の他、機能性材料を用いて、後述の本発明のメソ結晶のいずれかとの複合材料を容易に製造することができる。機能性材料としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等が挙げられる。

【0021】
前駆体水溶液に含まれる金属酸化物前駆体としては、特に制限されないが、金属塩化物、金属硫酸塩等を使用した場合には、金属酸化物ナノ結晶が規則的に配列しにくく、つまり、金属酸化物メソ結晶が得られにくいことから、金属硝酸塩及び/又は金属フッ化物塩が好ましい。特に、金属硝酸塩が存在する場合は金属硝酸塩を、存在しない場合は金属フッ化物塩を使用することが好ましい。具体的には、酸化チタン前駆体としてTiF、酸化亜鉛前駆体としてZn(NO、酸化ニッケル前駆体としてNi(NO、酸化銅前駆体としてCu(NO、酸化鉄前駆体としてFe(NO、酸化コバルト前駆体としてCo(NO、酸化ジルコニウム前駆体としてZr(NO、酸化セリウム前駆体としてCe(NOを使用することが好ましい。特に酸化チタン前駆体としてTiFを使用した場合には、Fイオンが酸化チタンナノ結晶の{001}面に強く吸着し、{001}面を主な結晶面として有する、つまり、サイズが大きい酸化チタンメソ結晶が得られる。

【0022】
なお、金属酸化物前駆体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。特に、複数の金属酸化物の前駆体(つまり、金属酸化物Aの前駆体とそれとは異なる金属酸化物Bの前駆体)を使用すると、複数の金属酸化物や、合金酸化物からなる複合型メソ結晶を得ることもできる。

【0023】
金属酸化物前駆体の使用量は、金属酸化物前駆体と界面活性剤との含有比率が1~1000:1(モル比)が好ましく、20~150:1(モル比)がより好ましく、25~130:1(モル比)がさらに好ましい。なお、金属酸化物前駆体の使用量は、得ようとするメソ結晶中の金属酸化物の種類により異なり、酸化チタンメソ結晶においては1~1000:1(モル比)、特に70~120:1(モル比)が好ましく、酸化亜鉛メソ結晶においては1~1000:1(モル比)、特に100~150:1(モル比)が好ましく、酸化ニッケルメソ結晶においては1~1000:1(モル比)、特に30~70:1(モル比)が好ましく、酸化銅メソ結晶においては1~1000:1(モル比)、特に20~40:1(モル比)が好ましい。複合型メソ結晶においても、含有する金属酸化物の種類により好ましい含有比率は異なり、亜鉛及び銅を含有する複合型酸化物メソ結晶においては酸化亜鉛前駆体:酸化銅前駆体:界面活性剤が1~1000:1~1000:1(モル比)、特に30~50:15~25:1(モル比)が好ましく、亜鉛及びニッケルを含有する複合型酸化物メソ結晶においては酸化亜鉛前駆体:酸化ニッケル前駆体:界面活性剤が1~1000:1~1000:1(モル比)、特に20~30:30~60:1(モル比)が好ましい。金属酸化物前駆体の使用量を上記範囲内とすることにより、各酸化物ナノ結晶が配列したメソ結晶をより効率的に得ることができる。

【0024】
アンモニア塩としては、特に制限されないが、NHNO、NHCl、NHClO、(NHSO、(NHCO等が挙げられ、金属酸化物メソ結晶の均質性の観点から、NHNOが好ましい。これらのアンモニア塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。

【0025】
アンモニア塩の使用量は、アンモニア塩と界面活性剤との含有比率が1~1000:1(モル比)が好ましく、300~600:1(モル比)がより好ましく、400~500:1(モル比)がさらに好ましい。なお、アンモニア塩の使用量は、得ようとするメソ結晶中の金属酸化物の種類がいずれの場合でも同様である。アンモニア塩の使用量を上記範囲内とすることにより、金属酸化物ナノ結晶の凝集をより抑制し、より結晶性の高い金属酸化物メソ結晶が得られる。

【0026】
本発明の製造方法においては、金属酸化物ナノ結晶を規則的に配列させ、より効率的に金属酸化物メソ結晶を得るために、界面活性剤を使用する。界面活性剤としては、特に制限されず、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のいずれでもよい。

【0027】
陰イオン系界面活性剤としては、特に制限されないが、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基等を親水性基として有することが好ましく、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等のカルボン酸型;1-ドデカンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸型;ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル型;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル型等が挙げられる。

【0028】
陽イオン系界面活性剤としては、特に制限されないが、アミン残基、アンモニウム塩基を親水性基として有することが好ましく、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム等のアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩;塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩等が挙げられる。

【0029】
両性界面活性剤としては、特に制限されないが、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン型;コカミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドベタイン型;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルイミダゾール型;ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル-β—アラニン等のアミノ酸型;ラウリルジメチルアミンN-オキシド、オレイルジメチルアミンN-オキシド等のアルキルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型等が挙げられる。

【0030】
非イオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、ポリオキシエチレン骨格を親水性基として有することが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレン骨格を有するポリエーテルが好ましく、トリブロックコポリマーがより好ましい。このようなポリエーテルとしては、一般式(1):
HO(CHCHO)(CHCH(CH)O)(CHCHO)
[式中、a~cは同じか又は異なり、aは10~140、bは10~90、cは10~140である。]
で示される化合物が好ましい。

【0031】
上記の界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。

【0032】
これらの界面活性剤のなかでも、金属酸化物ナノ結晶同士を結合し、規則的に配列させるため、両末端が水酸基及び/又はカルボキシル基であることが好ましい。つまり、カルボン酸型の陰イオン系界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤が好ましい。このなかでも、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン骨格を有する非イオン性界面活性剤がより好ましく、ポリオキシエチレン骨格を有するポリエーテルがさらに好ましく、ポリオキシエチレン骨格を有するトリブロックコポリマーからなるポリエーテルが特に好ましい。なかでも、上記一般式(1)で示される化合物が好ましい。

【0033】
このような一般式(1)で示されるポリエーテルとしては、aは10~30が特に好ましく、bは60~80が特に好ましく、cは10~30が特に好ましい。なかでも、
HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20
が特に好ましい。

【0034】
本発明の製造方法においては、溶媒としては水を使用する。原料が有機材料の場合には有機溶媒を使用できるが、本発明では金属酸化物前駆体として無機系材料を使用するため、水性溶媒、特に水が好ましい。水の使用量は、他の成分に対して過剰量とすればよいが、製膜のためには多すぎないほうがよい。具体的には、水と界面活性剤との含有比率を1000~100000:1(モル比)程度とすればよい。

【0035】
本発明の製造方法においては、上記説明した前駆体水溶液を、300~600℃、好ましくは400~500℃の条件下に焼成する。この焼成温度は、作製しようとするメソ結晶に含まれる金属によって大差はないが、酸化ニッケルメソ結晶を作製する場合には320℃程度以上とするのが好ましい。これにより、金属酸化物ナノ結晶を規則的に配列させるとともに、トポタクティック反応(L. Zhou et al., J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 1309-1320)及びポリエーテルの熱分解を起こさせ、本発明の金属酸化物メソ結晶が得られる。1種の金属酸化物前駆体を使用した場合には、得られる金属酸化物メソ結晶は単結晶であるし、2種以上の金属酸化物前駆体を使用した場合にも組合せによっては単結晶のメソ結晶が得られ得る。なお、焼成温度が低すぎると金属酸化物前駆体が残存するとともに、比表面積を大きくすることができない。また、焼成温度が高すぎると比表面積が低下し、光触媒活性等が悪化する。なお、金属酸化物メソ結晶として酸化チタンメソ結晶を製造する場合、通常は高温で焼成すると酸化チタンは活性の高いアナターゼ型を維持できず、ルチル型に構造変化するが、本発明においては、高温(上記温度範囲の上限近く)で焼成しても、アナターゼ型を維持することができる。

【0036】
焼成雰囲気は特に制限はなく、空気雰囲気でもよいし、酸素雰囲気でもよい。なお、本発明において、酸素雰囲気とは、100%の酸素ガスもしくは酸素濃度が90%以上の酸素と空気の混合ガス雰囲気が好ましい。

【0037】
なお、本発明の製造方法の概念図の一例を図3に示す。

【0038】
2.遷移金属(ただしチタンを除く)の酸化物からなるメソ結晶
本発明の遷移金属(ただしチタンを除く)の酸化物からなるメソ結晶(以下、「メソ結晶A」とも言う)は、特に制限されないが、例えば、上記の製造方法により得られる。つまり、上記の製造方法において、金属酸化物前駆体として、チタン酸化物以外の金属酸化物の前駆体を用いることにより得られる。

【0039】
本発明のメソ結晶Aは、構成する金属酸化物の種類にもよるが、比表面積が0.5m/g以上である。メソ結晶Aの比表面積が小さすぎると、光触媒活性及び光電流寿命に劣る。なお、メソ結晶Aの比表面積は、構成する金属酸化物によっても異なるが、酸化亜鉛メソ結晶においては0.5~2m/g程度、酸化ニッケルメソ結晶においては10~20m/g程度、酸化銅メソ結晶においては1~5m/g程度が好ましい。これらの比表面積は、それぞれの酸化物のナノ粒子と比較すると高くすることが可能である。また、本発明のメソ結晶Aの比表面積は、例えば、BET法等により測定することができる。

【0040】
このようなメソ結晶Aを構成する金属酸化物としては、特に制限されないが、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化銅、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等が挙げられ、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化銅等が好ましい。

【0041】
また、本発明のメソ結晶Aにおいては、上記のように、金属酸化物ナノ結晶が規則的に配列していることから、全体として単結晶とすることも可能である。

【0042】
本発明のメソ結晶Aにおいては、形状は特に制限されない。また、金属酸化物の種類によっても得られる形状は異なるが、平均幅が0.01~1000μm程度が好ましく、0.1~5μm程度がより好ましい。なお、本発明のメソ結晶Aでは、平均幅とは、表面が正方形又は長方形である板状結晶と見立てた場合において、見立てた正方形又は長方形の辺の平均値を意味する。酸化亜鉛メソ結晶においては幅が0.5~1.5μm程度、長さが1~5μm程度の柱状の結晶が得られやすく、酸化ニッケルメソ結晶においては直径100~300nm程度の略球状の結晶が得られやすく、酸化銅メソ結晶においては直径500~1000nm程度の略球状の結晶が得られやすい。本発明のメソ結晶Aの形状は、電子顕微鏡観察(SEM、TEM等)により測定されるものとする。

【0043】
また、本発明のメソ結晶Aを構成する金属酸化物ナノ結晶の平均粒子径は、光触媒活性により優れる観点から、5~60nm程度が好ましく、10~50nm程度がより好ましい。金属酸化物ナノ結晶の平均粒子径は、粉末X線回折(シェラーの式を用いて)等により測定するものとする。

【0044】
本発明のメソ結晶Aにおける細孔径は、より比表面積を向上させる観点から大きいほうが好ましい。具体的には、平均細孔径は、2~60nm程度が好ましい。平均細孔径は、BJHモデルによる吸着等温線等から測定するものとする。

【0045】
3.酸化チタンメソ結晶
本発明の酸化チタンメソ結晶(以下、「メソ結晶B」とも言う)は、特に制限されないが、例えば、上記の製造方法により得られる。つまり、上記の製造方法において、金属酸化物前駆体として、酸化チタン前駆体を用いることにより得られる。

【0046】
本発明のメソ結晶Bは、平均幅が0.01~1000μm、好ましくは400~1000nmであり、比表面積が10m/g以上である。

【0047】
また、本発明のメソ結晶Bにおいては、上記のように、酸化チタンナノ結晶が規則的に配列していることから、全体として単結晶とすることも可能である。

【0048】
本発明のメソ結晶Bにおいては、厚みと比較して幅が充分大きいことが好ましい。具体的には、平均幅の平均厚みに対する比(平均幅/平均厚み)が5~50程度が好ましく、10~20程度がより好ましい。平均幅の平均厚みに対する比を上記範囲内とすることで、結晶の崩壊をより抑制するとともに凝集をより抑制することができる。本発明のメソ結晶Bの形状は、電子顕微鏡観察(SEM、TEM等)により測定されるものとする。

【0049】
また、本発明のメソ結晶Bは、上記のとおり、平均幅の平均厚みに対する比が大きい場合、表面エネルギーの高い{001}面を主な結晶面として有することができる。{001}面は、高活性な結晶面として注目されているため(G. Liu et al., Chem. Commun. 2011, 47, 6763-6783)、{001}面を主な結晶面として有することにより、光触媒活性等をより向上させることができる。

【0050】
このように、平均幅の平均厚みに対する比を大きくすることが好ましいため、平均幅は大きいほうが好ましい。また、平均厚みは小さいほうが好ましい。具体的には、平均幅は、400~1000nm、好ましくは500~800nm程度であり、平均厚みは、20~500nm程度が好ましく、50~200nm程度がより好ましい。本発明のメソ結晶Bの形状は、電子顕微鏡観察(SEM、TEM等)により測定されるものとする。

【0051】
なお、本発明のメソ結晶Bでは、平均幅とは、表面が正方形又は長方形である板状結晶と見立てた場合において、見立てた正方形又は長方形の辺の平均値を意味する。また、本発明のメソ結晶Bの平均厚みとは、板状結晶の場合にはその厚みの平均値、板状でない場合には板状結晶と見立てた場合の厚みの平均値である。これらの幅及び厚みは、電子顕微鏡観察(SEM等)等により測定するものとする。

【0052】
また、本発明のメソ結晶Bの比表面積は、10m/g以上である。メソ結晶Bの比表面積が小さすぎると、光触媒活性及び光電流寿命に劣る。本発明では、メソ結晶Bの比表面積は、代表的な光触媒である酸化チタンナノ粒子P25の50m/gより大きくすることも可能である。なお、メソ結晶Bの比表面積は、10~150m/g程度が好ましく、50~110m/g程度がより好ましく、80~100m/g程度がさらに好ましい。また、本発明のメソ結晶Bの比表面積は、BET法等により測定するものとする。

【0053】
本発明のメソ結晶Bを構成する酸化チタンナノ結晶としては、アナターゼ型であってもルチル型であってもよい。なかでも、触媒活性が高いことから、本発明のメソ結晶Bは、アナターゼ型酸化チタンナノ結晶の集合体とすることが好ましい。なお、酸化チタンナノ結晶の結晶構造は、粉末X線回折等により測定するものとする。

【0054】
また、本発明のメソ結晶Bを構成する酸化チタンナノ結晶の平均粒子径は、光触媒活性により優れる観点から、10~70nm程度が好ましく、20~30nm程度がより好ましい。酸化チタンナノ粒子の平均粒子径は、粉末X線回折(シェラーの式を用いて)等により測定するものとする。

【0055】
本発明のメソ結晶Bにおける細孔径は、より比表面積を向上させる観点から大きいほうが好ましい。具体的には、平均細孔径は、5~15nm程度が好ましく、9~13nm程度がより好ましい。平均細孔径は、BJHモデルによる吸着等温線等から測定するものとする。

【0056】
本発明のメソ結晶Bの形状は、板状であっても、他の形状であってもよい。なかでも、表面エネルギーの高い{001}面を主な結晶面として有するためには平均幅の平均厚みに対する比が大きいことが好ましいことから、板状が好ましい。

【0057】
4.2種以上の金属を含むメソ結晶
本発明の2種以上の金属を含むメソ結晶(以下、「メソ結晶C」とも言う)は、特に制限されないが、例えば、上記の製造方法により得られる。つまり、上記の製造方法において、金属酸化物前駆体として、2種以上の金属酸化物の前駆体を用いる(例えば、金属酸化物Aの前駆体と金属酸化物Bの前駆体を使用)ことにより得られる。これにより、2種以上の金属酸化物ナノ粒子からなるメソ結晶を得ることもできるし、合金酸化物ナノ粒子からなるメソ結晶を得ることもできる。

【0058】
本発明のメソ結晶Cは、構成する金属酸化物の種類にもよるが、比表面積が0.5m/g以上が好ましく、1m/g以上がより好ましい。上限値は特に制限はない。メソ結晶Cの比表面積を大きくすることで、光触媒活性及び光電流寿命をより向上させることができる。なお、メソ結晶Cの比表面積は、構成する金属酸化物によっても異なるが、酸化亜鉛と酸化銅からなるメソ結晶においては1~10m/g程度、亜鉛とニッケルとの合金の酸化物からなるメソ結晶においては10~20m/g程度が好ましい。また、本発明のメソ結晶Cの比表面積は、BET法等により測定するものとする。

【0059】
このようなメソ結晶Cを構成する金属としては、特に制限されないが、チタン、亜鉛、ニッケル、銅、鉄、コバルト、ジルコニウム、セリウム等の2種以上が挙げられ、チタン、亜鉛、ニッケル、銅等の2種以上が好ましい。つまり、メソ結晶Cは、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化銅等の2種以上のナノ粒子からなるか、チタン、亜鉛、ニッケル、銅等の2種以上の合金の酸化物ナノ粒子からなることが好ましい。

【0060】
また、本発明のメソ結晶Cにおいては、上記のように、金属酸化物ナノ結晶又は合金酸化物ナノ結晶が規則的に配列することでメソ結晶を形成する。

【0061】
この本発明のメソ結晶Cは、例えば、2種以上の金属酸化物ナノ粒子からなるメソ結晶の場合は、構成する2種以上の金属酸化物からなる単結晶上に、各金属酸化物ナノ粒子が分布していてもよい。

【0062】
本発明のメソ結晶Cにおいては、形状は特に制限されない。また、構成する金属の種類によっても得られる形状は異なるが、直径500~1500nm程度の略球状の結晶が得られやすい。本発明のメソ結晶Cの形状は、電子顕微鏡観察(SEM、TEM等)により測定されるものとする。

【0063】
また、本発明のメソ結晶Cを構成する金属酸化物ナノ結晶又は合金ナノ結晶の平均粒子径は、光触媒活性により優れる観点から、5~60nm程度が好ましく、10~50nm程度がより好ましい。金属酸化物ナノ結晶又は合金ナノ結晶の平均粒子径は、粉末X線回折(シェラーの式を用いて)等により測定するものとする。

【0064】
本発明のメソ結晶Cにおける細孔径は、より比表面積を向上させる観点から大きいほうが好ましい。具体的には、平均細孔径は、20~60nm程度が好ましい。平均細孔径は、BJHモデルによる吸着等温線等から測定するものとする。

【0065】
5.用途
本発明の金属酸化物メソ結晶は、上記のように、比表面積が大きいとともに、金属酸化物ナノ結晶を規則的に配列したものであり、且つ、サイズも大きく凝集を抑制できることから、光触媒活性が高く、導電性も高いものである。また、従来は得られなかった、2種以上の金属を含むメソ結晶も得ることができ、光触媒能をさらに向上させることも可能である。また、本発明によれば、非常に簡便な方法で上記メソ結晶を製造することができるため、大量生産性にも優れる。そのため、環境浄化光触媒、水素発生光触媒、色素増感太陽電池、リチウムイオンバッテリー等、種々様々な用途に適用することが可能である。
【実施例】
【0066】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
[実施例及び比較例]
<酸化チタン>
実施例1:500℃焼成(Meso-TiO2-500)
まず、TiF、NHNO、界面活性剤であるP123:
HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20
を含む前駆体水溶液(組成はモル比で、TiF:NHNO:P123:HO=93:453:1:32000)からなる液層を、シリコン基板に形成した。具体的には、前駆体水溶液を基板上に滴下した。液層の厚みは、1mm程度となるようにした。シリコン基板上に形成した液層を、空気雰囲気下500℃で2時間焼成することで、シリコン基板上に実施例1の酸化チタンメソ結晶を形成した。なお、前駆体水溶液に使用した原料はいずれも市販品を使用した。
【実施例】
【0068】
実施例2:350℃焼成(Meso-TiO2-350)
焼成温度を350℃とすること以外は実施例1と同様に、実施例2の酸化チタンメソ結晶を作製した。
【実施例】
【0069】
実施例3:300℃焼成(Meso-TiO2-300)
焼成温度を300℃とすること以外は実施例1と同様に、実施例3の酸化チタンメソ結晶を作製した。
【実施例】
【0070】
比較例1:250℃焼成(TiO2-250)
焼成温度を250℃とすること以外は実施例1と同様に、比較例1の酸化チタン結晶を含む混合物を作製した。
【実施例】
【0071】
比較例2:200℃焼成(TiO2-200)
焼成温度を200℃とすること以外は実施例1と同様に、比較例2の酸化チタン結晶を含む混合物を作製した。
【実施例】
【0072】
比較例3:150℃焼成(TiO2-150)
焼成温度を150℃とすること以外は実施例1と同様に、比較例3の酸化チタン結晶を含む混合物を作製した。
【実施例】
【0073】
<酸化亜鉛>
実施例4:500℃焼成(Meso-ZnO-500)
まず、Zn(NO、NHNO、界面活性剤であるP123:
HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20
を含む前駆体水溶液(組成はモル比で、Zn(NO:NHNO:P123:HO=126:453:1:32000)からなる液層を、シリコン基板に形成した。具体的には、前駆体水溶液を基板上に滴下した。液層の厚みは、1mm程度となるようにした。シリコン基板上に形成した液層を、空気雰囲気下500℃で2時間焼成することで、シリコン基板上に実施例4の酸化亜鉛メソ結晶を形成した。なお、前駆体水溶液に使用した原料はいずれも市販品を使用した。
【実施例】
【0074】
実施例5:350℃焼成(Meso-ZnO-350)
焼成温度を350℃とすること以外は実施例4と同様に、実施例5の酸化亜鉛メソ結晶を作製した。
【実施例】
【0075】
実施例6:300℃焼成(Meso-ZnO-300)
焼成温度を300℃とすること以外は実施例4と同様に、実施例6の酸化亜鉛メソ結晶を作製した。
【実施例】
【0076】
比較例4:250℃焼成(ZnO-250)
焼成温度を250℃とすること以外は実施例4と同様に、比較例4の酸化亜鉛結晶を含む混合物を作製した。
【実施例】
【0077】
<酸化ニッケル>
実施例7:500℃焼成(Meso-NiO-500)
まず、Ni(NO、NHNO、界面活性剤であるP123:
HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20
を含む前駆体水溶液(組成はモル比で、Ni(NO:NHNO:P123:HO=55:453:1:32000)からなる液層を、シリコン基板に形成した。具体的には、前駆体水溶液を基板上に滴下した。液層の厚みは、1mm程度となるようにした。シリコン基板上に形成した液層を、空気雰囲気下500℃で2時間焼成することで、シリコン基板上に実施例7の酸化ニッケルメソ結晶を形成した。なお、前駆体水溶液に使用した原料はいずれも市販品を使用した。
【実施例】
【0078】
実施例8:350℃焼成(Meso-NiO-350)
焼成温度を350℃とすること以外は実施例7と同様に、実施例8の酸化ニッケルメソ結晶を作製した。
【実施例】
【0079】
比較例5:300℃焼成(NiO-300)
焼成温度を300℃とすること以外は実施例7と同様に、比較例5の酸化ニッケル結晶を含む混合物を作製した。
【実施例】
【0080】
比較例6:250℃焼成(NiO-250)
焼成温度を250℃とすること以外は実施例7と同様に、比較例6の酸化ニッケル結晶を含む混合物を作製した。
【実施例】
【0081】
<酸化銅>
実施例9:500℃焼成(Meso-CuO-500)
まず、Cu(NO、NHNO、界面活性剤であるP123:
HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20
を含む前駆体水溶液(組成はモル比で、Cu(NO:NHNO:P123:HO=29:453:1:32000)からなる液層を、シリコン基板に形成した。具体的には、前駆体水溶液を基板上に滴下した。液層の厚みは、1mm程度となるようにした。シリコン基板上に形成した液層を、空気雰囲気下500℃で2時間焼成することで、シリコン基板上に実施例9の酸化銅メソ結晶を形成した。なお、前駆体水溶液に使用した原料はいずれも市販品を使用した。
【実施例】
【0082】
実施例10:350℃焼成(Meso-CuO-350)
焼成温度を350℃とすること以外は実施例9と同様に、実施例10の酸化銅メソ結晶を作製した。
【実施例】
【0083】
実施例11:300℃焼成(Meso-CuO-300)
焼成温度を300℃とすること以外は実施例9と同様に、実施例11の酸化銅メソ結晶を作製した。
【実施例】
【0084】
比較例7:250℃焼成(CuO-250)
焼成温度を250℃とすること以外は実施例9と同様に、比較例7の酸化銅結晶を含む混合物を作製した。
【実施例】
【0085】
比較例8:200℃焼成(CuO-200)
焼成温度を200℃とすること以外は実施例9と同様に、比較例7の酸化銅結晶を含む混合物を作製した。
【実施例】
【0086】
比較例9:150℃焼成(CuO-150)
焼成温度を150℃とすること以外は実施例9と同様に、比較例7の酸化銅結晶を含む混合物を作製した。
【実施例】
【0087】
<複合型>
実施例12:酸化亜鉛ナノ粒子及び酸化銅ナノ粒子からなるメソ結晶(Meso-ZnO/CuO-500)
まず、Zn(NO、Cu(NO、NHNO、界面活性剤であるP123:
HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20
を含む前駆体水溶液(組成はモル比で、Zn(NO:Cu(NO:NHNO:P123:HO=39:20:453:1:32000)からなる液層を、シリコン基板に形成した。具体的には、前駆体水溶液を基板上に滴下した。液層の厚みは、1mm程度となるようにした。シリコン基板上に形成した液層を、空気雰囲気下500℃で2時間焼成することで、シリコン基板上に実施例12の酸化亜鉛/酸化銅複合型メソ結晶を形成した。なお、前駆体水溶液に使用した原料はいずれも市販品を使用した。
【実施例】
【0088】
実施例13:亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ粒子からなるメソ結晶(Meso-ZnNiO-500)
まず、Zn(NO、Ni(NO、NHNO、界面活性剤であるP123:
HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20
を含む前駆体水溶液(組成はモル比で、Zn(NO:Ni(NO:NHNO:P123:HO=25:44:453:1:32000)からなる液層を、シリコン基板に形成した。具体的には、前駆体水溶液を基板上に滴下した。液層の厚みは、1mm程度となるようにした。シリコン基板上に形成した液層を、空気雰囲気下500℃で2時間焼成することで、シリコン基板上に実施例13の亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ粒子からなる複合型メソ結晶を形成した。なお、前駆体水溶液に使用した原料はいずれも市販品を使用した。
【実施例】
【0089】
<評価>
試験例1:比表面積
実施例1、4、7、9、12及び13の各メソ結晶の比表面積をBET法により測定した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0090】
試験例2:細孔径
実施例1、4、7、9、12及び13のメソ結晶の細孔径をBJH法により測定した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0091】
試験例3:X線回折
実施例1、4、7、9、12及び13のメソ結晶の特性を粉末X線回折(XRD)により測定した。また、実施例1、4、7、9、12及び13のメソ結晶について、X線回折ピークから、シェラーの式を用いて、各結晶を構成する金属酸化物ナノ結晶の粒子径を評価した。結果を表1及び図4に示す。なお、図4において、aは酸化チタン(実施例1~3及び比較例1~3)、bは酸化亜鉛(実施例4~6及び比較例4)、cは酸化ニッケル(実施例7~8及び比較例5~6)、dは酸化銅(実施例9~11及び比較例7~9)、eは酸化亜鉛/酸化銅複合型メソ結晶(実施例12)、fは亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ粒子からなる複合型メソ結晶(実施例13)の結果である。
【実施例】
【0092】
【表1】
JP0006053831B2_000002t.gif
【実施例】
【0093】
試験例4:電子顕微鏡観察
実施例1、4、7、9、12及び13のメソ結晶の特性を走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。結果を図5~7に示す。
【実施例】
【0094】
図5aに示されるように、本発明の酸化チタンメソ結晶(特に実施例1)は、表面が略正方形状の板状結晶であった。また、図5aのように、酸化チタンナノ結晶が規則的に並んでいた。酸化チタン粒子の接点の高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)像より、単結晶格子が、0.189nm程度の格子間隔を有するアナターゼ(200)又は(020)結晶面の原子面を示した(図5a)。これらの結果は、本発明の酸化チタンメソ結晶は、{001}面が表面に露出していることを強く示唆している。さらに、均一格子縞が明確に得られ、完璧に配向した酸化チタンナノ結晶が確認された。ナノ結晶が規則的に並ぶことにより、表面には多数の欠陥や孔が形成されていた(図5a)。
【実施例】
【0095】
酸化チタンメソ結晶の平均厚みは、約200nm、平均幅は約500nmであった。
【実施例】
【0096】
他の実施例においても、本発明の酸化チタンメソ結晶の形状及び結晶構造は同様の結果が得られた。
【実施例】
【0097】
図5bに示されるように、本発明の酸化亜鉛メソ結晶(特に実施例4)は、端部が突出した柱状結晶であった。また、図5bのように、酸化亜鉛ナノ結晶が規則的に並んでいた。さらに、均一格子縞が明確に得られ、完璧に配向した酸化亜鉛ナノ結晶が確認された。ナノ結晶が規則的に並ぶことにより、表面には多数の欠陥や孔が形成されていた(図5b)。
【実施例】
【0098】
酸化亜鉛メソ結晶の平均幅は約1μm、平均長さは約3μmであった。
【実施例】
【0099】
他の実施例においても、本発明の酸化亜鉛メソ結晶の形状及び結晶構造は同様の結果が得られた。
【実施例】
【0100】
図5cに示されるように、本発明の酸化ニッケル結晶(特に実施例7)は、略球状の結晶であった。また、図5cのように、酸化ニッケルナノ結晶が規則的に並んでいた。さらに、均一格子縞が明確に得られ、完璧に配向した酸化ニッケルナノ結晶が確認された。ナノ結晶が規則的に並ぶことにより、表面には多数の欠陥や孔が形成されていた(図5c)。
【実施例】
【0101】
酸化ニッケルメソ結晶の平均径は約200nmであった。
【実施例】
【0102】
他の実施例においても、本発明の酸化ニッケルメソ結晶の形状及び結晶構造は同様の結果が得られた。
【実施例】
【0103】
図5dに示されるように、本発明の酸化銅結晶(特に実施例9)は、略球状の結晶であった。また、図5dのように、酸化銅ナノ結晶が規則的に並んでいた。さらに、均一格子縞が明確に得られ、完璧に配向した酸化銅ナノ結晶が確認された。ナノ結晶が規則的に並ぶことにより、表面には多数の欠陥や孔が形成されていた(図5d)。
【実施例】
【0104】
酸化銅メソ結晶の平均径は約800nmであった。
【実施例】
【0105】
他の実施例においても、本発明の酸化銅メソ結晶の形状及び結晶構造は同様の結果が得られた。
【実施例】
【0106】
図6aに示されるように、本発明の酸化亜鉛/酸化銅複合型メソ結晶(特に実施例12)は、略球状の結晶であった。また、図6cのように、酸化亜鉛ナノ結晶及び酸化銅ナノ結晶が個別に規則的に並んでいた。高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)像より、格子面間隔は、酸化亜鉛ナノ結晶が0.247nm、酸化銅ナノ結晶が0.252nmであり、酸化亜鉛相と酸化銅相が別個に形成されていた(図6c)。つまり、酸化亜鉛ナノ粒子と、酸化銅ナノ粒子とからなるメソ結晶であった。さらに、均一格子縞が明確に得られ、完璧に配向した酸化亜鉛ナノ結晶及び酸化銅ナノ結晶が確認された。ナノ結晶が規則的に並ぶことにより、表面には多数の欠陥や孔が形成されていた。
【実施例】
【0107】
酸化亜鉛/酸化銅複合型メソ結晶の平均径は約1μmであった。
【実施例】
【0108】
図7aに示されるように、本発明の亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ粒子からなる複合型メソ結晶(特に実施例13)は、略球状の結晶であった。また、図7b及びcのように、酸化亜鉛相と酸化ニッケル相とが個別に形成されるのではなく、亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ結晶が規則的に並んでいた。つまり、亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ粒子からなるメソ結晶であった。さらに、均一格子縞が明確に得られ、完璧に配向した亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ結晶が確認された。ナノ結晶が規則的に並ぶことにより、表面には多数の欠陥や孔が形成されていた。
【実施例】
【0109】
亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ粒子からなる複合型メソ結晶の平均径は約800nmであった。
【実施例】
【0110】
試験例5:単一粒子蛍光分光
光生成した電子と正孔の再結合により、はっきりとしたフォトルミネッセンスが得られる。金属酸化物のフォトルミネッセンス特性を評価するため、単一粒子蛍光分光を行った。蛍光分光は、高い空間分解能で表面反応を観測することができる強力な手法である。
【実施例】
【0111】
単一粒子蛍光イメージ及び発光減衰曲線は、Olympus IX71倒立型蛍光顕微鏡に備えられた共焦点走査型顕微鏡システム(PicoQuant, Micro Time 200)により測定した。試料は、油浸対物レンズ(Olympus, UPLSAPO 100XO; 1.40 NA, 100×)を通して、PDL-800Bドライバー(PicoQuant)により制御された380nmの円偏光パルスレーザー(Spectra-Physics, 自動周波数ダブラー付きMAI TAI HTS-W, Inspire Blue TAST-W; 0.8 MHz repetition rate, 10μW excitation power)で励起した。実験は全て室温で行った。
【実施例】
【0112】
図8のように、実施例4の酸化亜鉛メソ結晶においては、500~800nmにおいて表面捕捉された電荷に起因するブロードな発光が得られた。一方、実施例12~13の複合型メソ結晶においては、発光がほとんど見られず、酸化亜鉛の欠陥発光が酸化銅及びニッケル(又は酸化ニッケル)によって消光されたことが示されている。このことから、複合型メソ結晶においては、異なる金属間、異なる金属酸化物間で電荷移動が起こることが示唆されている。
【実施例】
【0113】
また、発光減衰曲線を評価した結果、強度加重平均減衰寿命が、実施例4の酸化亜鉛メソ結晶においては26nsであり、実施例13の複合型メソ結晶においては5ns以下であった。このように、複合型メソ結晶においては、より早く電荷再結合が起こることが示唆されている。
【実施例】
【0114】
試験例6:光触媒活性
p-クロロフェノールの光触媒酸化を測定した。
【実施例】
【0115】
p-クロロフェノールを1.0×10-4M含む所定のメソ結晶の水分散液(0.1g/L)に、水銀光源(REX-120)により365nmの紫外光を照射した。なお、メソ結晶としては、実施例4の酸化亜鉛メソ結晶と実施例9の酸化銅メソ結晶との混合物、実施例12の酸化亜鉛/酸化銅複合型メソ結晶、実施例13の亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ粒子からなる複合型メソ結晶の3種類を用いた。紫外光の強度は、140mW/cmとした。試料を遠心分離し、パーティクルを除去した。粉末を取り除いた後、紫外分光光度計((株)島津製作所のUV-3100)を用いて紫外可視吸収分光法により、吸光度の変化からp-クロロフェノールの分解率を求めた。
【実施例】
【0116】
結果を図10及び11に示す。メソ結晶を加えなかった場合には分解はほとんど起こらないが、実施例4の酸化亜鉛メソ結晶と実施例9の酸化銅メソ結晶との混合物を用いた場合は分解が促進される。また、実施例12の酸化亜鉛/酸化銅複合型メソ結晶、実施例13の亜鉛ニッケル合金の酸化物ナノ粒子からなる複合型メソ結晶を用いた場合には、実施例4の酸化亜鉛メソ結晶と実施例9の酸化銅メソ結晶との混合物を用いた場合と比較しても、さらに約2倍程度分解が促進された。このことから、複合化による比表面積の増大と、異種金属間又は異種金属酸化物間電荷移動による電荷再結合過程の抑制により、反応効率が向上したものと考えられる。
【実施例】
【0117】
試験例7:実施例12のメソ結晶の構造分析
実施例12の複合型メソ結晶について、その構造を分析するため、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡測定(HAADF-STEM)及びエネルギー分散型X線分光測定(EDX)を行った。
【実施例】
【0118】
その結果、ZnO/CuO単結晶からなるメソ結晶球の表面に、ZnOナノ結晶及びCuOナノ結晶が分布していた(図12(a)~(c))。EDXパターン(図12(b))より、表面のZnOナノ粒子のモル含有量は、約36%であった。図12(c)からも理解できるように、亜鉛及び銅の信号強度パターンは異なっている。CuプロファイルはCuOが多く存在するためによりフラットであるのに対し、Znプロファイルは表面上のZnOナノ結晶の存在を示唆するピークを有していた。2つのプロファイルの交点は、ZnO及びCuOのナノ結晶間のインターフェースである。ZnO/CuOメソ結晶中のZnOナノ結晶及びCuOナノ結晶の内部分布を調べるため、ウルトラミクロトームで切断し、断面を明らかにした。
【実施例】
【0119】
図12(d)は断面HAADF-STEM像である。ZnO/CuOメソ結晶内には、異なるサイズの多数の細孔があり、メソ結晶は小さなナノ粒子によって組み立てられていることが推測される。
【実施例】
【0120】
さらに、ZnO/CuOメソ結晶の内部組成を、ZnO/CuOメソ結晶のナノスケール元素組成と元素分布の空間的均一性を明らかにしたHAADF-STEM-EDX元素マッピング分析により検討した(図12(e)~(g))。EDX元素マッピングの結果から、CuとOは均一にメソ結晶中に分布している(図12(e)及び(f))一方、Znはメソ結晶全体に点状のドットのように検出された(図12(g))。また、高解像度のHAADF-STEM-EDXマッピング分析により、メソ結晶中のZnOナノ結晶及びCuOナノ結晶は、互いに物理的に接触しており、互いに電子交換していることを示唆していた。
【実施例】
【0121】
試験例8:電子スピン共鳴スペクトル
実施例4、9及び12で得たメソ結晶の電子スピン共鳴スペクトル(EPRスペクトル)を、真空中77Kで測定した。結果を図13に示す。
【実施例】
【0122】
ZnOメソ結晶においては、EPRスペクトルの実測値及びシミュレートのいずれもが、UV照射しない条件でg=1.960及びg=2.005において強い共鳴信号を示した(実線)。g=1.960の共鳴信号は、ZnOの不純物や欠陥(おそらく1価イオン酸素イオンの空孔(Vo))による浅いドナー状態(SDS)を示す。g=2.005の共鳴信号は、1つのホールを有する2つの相互に近接した亜鉛空孔((V)を示す。UV光照射後には、ホールを有する亜鉛空孔を示すg=2.019の共鳴信号が観測され(破線)、4個の酸素イオンのいずれかに局在した光生成電荷Vと節間中性亜鉛原子Znとが形成された。
【実施例】
【0123】
CuOメソ結晶においては、UV光非照射化及び照射下のいずれにおいても、上記のようなEPR信号が観測されなかった(スペクトル(2))。
【実施例】
【0124】
ZnO/CuOメソ結晶においては、UV非照射下及び照射下のいずれにおいても、g=2.005のEPR共鳴信号のみが観測された(スペクトル(3))。
【実施例】
【0125】
以上の結果は、ZnO中の光生成電荷が、隣接するナノ結晶間の密接な接触により、CuOに効果的に転移したことを示唆している。
【実施例】
【0126】
試験例9:時間分解拡散反射分光
超界面電荷移動ダイナミクスを明らかにするために、実施例4、9及び12で得たメソ結晶について、フェムト秒スケールの時間分解拡散反射分光測定を行った。結果を図14に示す。
【実施例】
【0127】
ZnO/CuOメソ結晶の330nmのレーザー励起の後すぐに、近赤外(NIR)の波長領域でブロードな吸収バンドが観測された(図14(a))。
【実施例】
【0128】
測定された吸収スペクトルはZnO中のトラップされた電子と自由電子(可視領域からNIR領域へ単調に増加する)のものと重畳していると考えられる。1100nmで測定されたZnO/CuOメソ結晶の減衰時間は0.43ピコ秒(90%)及び11ピコ秒(10%)であった(図14(b))。
【実施例】
【0129】
また、ZnO/CuOメソ結晶の過渡吸収スペクトルは、100ピコ秒において、メソ結晶中にCuOの電荷の蓄積が見られた。これらの結果は、ZnO中で光生成された電荷が、メソ結晶中の隣接ナノ結晶間の密接な接触により、CuOに効率的に転移していることを示唆している。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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