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明細書 :抗肝腫瘍ウイルス剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年1月31日(2019.1.31)
発明の名称または考案の名称 抗肝腫瘍ウイルス剤
国際特許分類 A61K  31/7076      (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P  31/20        (2006.01)
A61P  31/14        (2006.01)
FI A61K 31/7076
A61P 1/16
A61P 31/20
A61P 31/14
国際予備審査の請求
全頁数 21
出願番号 特願2018-504607 (P2018-504607)
国際出願番号 PCT/JP2017/009674
国際公開番号 WO2017/155082
国際出願日 平成29年3月10日(2017.3.10)
国際公開日 平成29年9月14日(2017.9.14)
優先権出願番号 2016048664
優先日 平成28年3月11日(2016.3.11)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】池田 正徳
【氏名】武田 緑
【氏名】馬場 昌範
【氏名】加藤 宣之
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB26
4C086ZB33
要約 本発明は、肝腫瘍ウイルスに対する新規治療剤を提供することを目的とし、具体的には、以下の一般式(I):
[化1]
JP2017155082A1_000007t.gif
(式中、R1は、フッ素又は水素である)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、抗肝腫瘍ウイルス剤に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式(I):
[化1]
JP2017155082A1_000006t.gif(式中、R1は、フッ素又は水素である)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、抗肝腫瘍ウイルス剤。
【請求項2】
一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【請求項3】
一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがB型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【請求項4】
一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがB型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【請求項5】
一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがC型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【請求項6】
一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがC型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【請求項7】
請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤を含有する肝腫瘍ウイルス関連疾患予防又は治療剤であって、前記関連疾患が慢性肝炎、肝硬変及び肝癌から成る群より選択される、前記予防又は治療剤。
【請求項8】
2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。
【請求項9】
2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がB型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。
【請求項10】
2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がB型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。
【請求項11】
2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がC型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。
【請求項12】
2-クロロ-9-(2-デオキシ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がC型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば肝腫瘍ウイルスに対する新規治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染症に対して、ジェンナーによる痘瘡のワクチン療法が発見されてから、感染予防が可能となった。しかし、ワクチンの存在しないウイルスについては、ウイルスが感染してしまうと個体の免疫による排除と、対症療法のみが選択肢となる。ウイルスに対する抗ウイルス剤開発の歴史は1977年のエリオンらによる単純ヘルペスウイルスの治療剤であるアシクロビルに始まる。1985年には満屋らによりヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)の治療剤であるアジドチミジンが発見された。抗ウイルス剤の開発は、HIV-1、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス等一部のウイルスでは進展しているが、ほとんどのウイルスでは未だ存在しないのが現状である。
【0003】
HCV及びHBVは慢性肝炎、肝硬変、肝癌の原因となる肝腫瘍ウイルスである。HCV感染者は国内に約200万人、世界で約2億人と推定されている。HBV感染者は国内に約150万人、世界で約3.5億人と推定されている。HCVとHBVの感染者は世界人口の約8%に及び、克服すべき最も重要な感染症の1つとなっている。
【0004】
HCVはフラビウイルス科へパシウイルス属に属する1本鎖のプラス鎖RNAをゲノムとするウイルスである。ウイルスゲノムは約9600ヌクレオチドであり、ウイルスの複製増殖は全て細胞質で行われる。ウイルスが細胞に侵入すると初めに、約3000アミノ酸残基から成る前駆体タンパク質が産生される。次に、宿主のタンパク質分解酵素とウイルスのタンパク質分解酵素により10種類の成熟したウイルスタンパク質が産生される。10種類のタンパク質のうち、E1、E2、Core、p7はウイルス粒子産生に必要な構造タンパク質である。NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、NS5Bはウイルスの複製に必要な非構造タンパク質である。図1にHCVの生活環を示す。
【0005】
HCVの生活環は、以下の通りである:
1)感染
感染のステップではウイルスは受容体と接触して細胞内に侵入する。現在、HCVの受容体として、CD81、SR-B1、Claudin1及びOccludin等が知られている。
【0006】
2)翻訳
宿主のタンパク質のほとんどが、翻訳に際してmRNAの5'末端にあるCap構造を必要とする。一方、HCVではCap構造を必要としない。HCVの5'側に存在するInternal Ribosomal Entry Site(IRES)と呼ばれる領域の2次構造にRibosomeが直接結合して、Cap非依存的な翻訳によりウイルスの前駆タンパク質(約3000アミノ酸)が翻訳される。前駆タンパク質から10種類のウイルスタンパク質が宿主のタンパク質分解酵素とウイルス自身のタンパク質分解酵素(NS3-4A)により産生される。
【0007】
3)複製
HCVの複製は非構造タンパク質から成る複製複合体により行なわれる。初めに、ウイルスのプラス鎖を鋳型にしてRNA依存性RNAポリメラーゼ(NS5B)の働きにより複製中間体であるマイナス鎖RNAが合成される。次に、マイナス鎖RNAを鋳型にしてNS5Bによりプラス鎖RNAのウイルスゲノムが複製される。
【0008】
4)粒子形成
ウイルス粒子の形成はEndoplasmic ReticulumとLipid Dropletを足場として、構造タンパク質であるCore、E1、E2とウイルスゲノムが集合することで完成する。この際、NS5Aが重要な役割を果すことがわかっている。
【0009】
5)放出
ウイルス粒子は細胞外に放出されるが、このときapolipoproteinが必要であることがわかっている。
【0010】
以上のHCVの増殖は細胞質でのみ起こる。
【0011】
臨床応用されているウイルスに直接作用するDirect-Acting Antivirals (DAAs)はウイルスのタンパク質分解酵素であるNS3-4A、ウイルスの複製・粒子形成に必要なNS5Aと、RNA依存性RNAポリメラーゼであるNS5Bを標的としている。C型慢性肝炎ではインターフェロン(IFN)単独療法が最初に実施されていたが、この時の有効性は約10%であった。2015年にはNS5Bの阻害剤とNS5Aの阻害剤を組み合わせた治療法が承認され、90%以上の有効性が報告されている。
【0012】
一方、図2にHBVの生活環を示す。HBVはヘパドナウイルス科オルソヘパドナウイルス属に属する不完全2本鎖のDNAウイルスである。HBVは細胞内に侵入すると核で完全2本鎖DNAを形成し、cccDNAとなる。DNAを鋳型として3.6、2.4、2.1、0.7 kbのmRNAが転写されて、polymerase、HBcAg (Core)、HBsAg、Xタンパク質に翻訳される。3.6kbのpregenomic RNA(pgRNA)はCore、polymeraseと共にパッケージングされる。pgRNAがDNAに逆転写された後ウイルス粒子は細胞外に放出される。HBVはレトロウイルスではないがpolymeraseに逆転写活性があるために、その治療にはHIV-1に対する逆転写酵素阻害剤が使われている。
【0013】
また、例えば、特許文献1は、2'-フルオロ-6'-メチレン炭素環ヌクレオシド類をHBV及びHCVの感染症の治療に使用することを開示する。しかしながら、特許文献1は、実際に行った抗ウイルス試験として抗HBV試験のみを開示し、2'-フルオロ-6'-メチレン炭素環ヌクレオシド類を使用して、HBV及びHCVの双方の感染症を治療できたことを示していない。
【先行技術文献】
【0014】

【特許文献1】特表2013-510904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
難治性のウイルス感染症は持続性のものが多い。ウイルスのなかで薬剤の開発が進んでいるHIV-1、HBV、HCVの課題として、1)ウイルスの変異による薬剤耐性の獲得、2)非常に薬価が高いこと、3)開発に時間がかかること等が挙げられる。
【0016】
宿主由来の生理活性物質であるIFNは様々なウイルスを排除することができる。一方、DAAsは特定のウイルスだけに作用するか、似たようなウイルスの酵素(例えば逆転写酵素)を持つグループのウイルスを標的とする。前者の例としては、DNAウイルスであるHBVとRNAウイルスであるHCVではウイルスの生活環が異なるため、異なる抗ウイルス剤が使用されている。後者の例としては、HBVとHIV-1ではDNAウイルスとRNAウイルスの違いはあるが、2つのウイルスはRNAからDNAを合成する逆転写酵素をもつために同じ逆転写酵素阻害剤が有効となる場合がある。
【0017】
このように、DAAsでは共通の酵素を持つようなウイルスグループを除くとウイルス特異的な薬剤が使用されており、生活環の異なるDNAウイルスとRNAウイルスの境界を超えて作用しないというのが従来技術の常識であった。
【0018】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、異なる生活環をもつウイルスの境界を超えた、multifunctional DAAs(mDAA)の開発である。生活環の境界を越えられない従来のDAAを第1世代とすると、本発明のように多機能な抗ウイルス活性を有するmDAAは第2世代の抗ウイルス剤といえる。
【0019】
本発明は、上述した実情に鑑み、5種類の肝炎ウイルス(A、B、C、D及びE型)の中で、肝発癌の原因となる肝腫瘍ウイルスであるHBVとHCVを標的とした抗ウイルス剤を提供し、肝発癌を予防することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、抗ウイルス剤のスクリーングでは通常1種類のウイルスに対して実施されるが、本発明に際しては肝発癌の原因ウイルスであるHBVとHCVに対して平行してスクリーニングを実施したところ、HBVとHCVのいずれの増殖も抑制する薬剤としてクロファラビン(Clofarabine)を見出した。また、HCVの増殖を抑制する薬剤としてクラドリビン(Cladribine)を見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
【0022】
(1)以下の一般式(I):
【化1】
JP2017155082A1_000003t.gif
(式中、R1は、フッ素又は水素である)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、抗肝腫瘍ウイルス剤。
【0023】
(2)一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン(「Clofarabine」に相当する)又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがHBV及び/又はHCVである、(1)記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【0024】
(3)一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがHBV又はHCVである、(1)記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【0025】
(4)一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがHBVである、(1)記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【0026】
(5)一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがHCVである、(1)記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【0027】
(6)一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン(「Cladribine」に相当する)又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがHCVである、(1)記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。
【0028】
(7)(1)記載の抗肝腫瘍ウイルス剤を含有する肝腫瘍ウイルス関連疾患予防又は治療剤であって、前記関連疾患が慢性肝炎、肝硬変及び肝癌から成る群より選択される、前記予防又は治療剤。
【0029】
(8)2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がHBV及び/又はHCV関連疾患である、(7)記載の予防又は治療剤。
【0030】
(9)2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がHBV又はHCV関連疾患である、(7)記載の予防又は治療剤。
【0031】
(10)2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がHBV関連疾患である、(7)記載の予防又は治療剤。
【0032】
(11)2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がHCV関連疾患である、(7)記載の予防又は治療剤。
【0033】
(12)2-クロロ-9-(2-デオキシ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がHCV関連疾患である、(7)記載の予防又は治療剤。
【0034】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2016-048664号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、肝腫瘍ウイルスであるHBVとHCVを標的とした抗ウイルス剤、及び肝癌等のHBVとHCVに関連する疾患の予防又は治療剤を提供することができる。また、本発明によれば、HCVを標的とした抗ウイルス剤、及び肝癌等のHCVに関連する疾患の予防又は治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】HCVの生活環を示す模式図である。
【図2】HBVの生活環を示す模式図である。
【図3】プリン代謝拮抗剤の抗HBV活性を示すグラフである。HepG2.2.15細胞を1x105 cell/wellになるように播種した。24時間後にプリン代謝拮抗剤(Clofarabine、Cladribine、Fludarabine)及びETV(entecavir)を最終濃度1μMになるように希釈して細胞に添加した。7日間培養した後、細胞質分画を回収し、フェノール・クロロホルム抽出にてDNAを精製した。精製されたDNA 20ngを使用して、細胞内HBV DNA量を定量的PCR法にて評価した。
【図4】プリン代謝拮抗剤の抗HCV活性を示すグラフである。OR6細胞を1.5x104 cell/wellになるように播種した。24時間後にプリン代謝拮抗剤を最終濃度1μMになるように希釈して細胞に添加した。3日間培養した後、細胞を回収し、Renilla Luciferase活性を測定した。
【図5】Clofarabineの抗HBV活性を示すグラフである。HepG2.2.15細胞を1x105 cell/wellになるように播種した。24時間後にClofarabineを0、0.97、1.95、3.90、7.81、15.6、31.3、62.5、125、250、500、1000nMになるように希釈して細胞に添加した。7日間培養した後、細胞質分画を回収し、フェノール・クロロホルム抽出にてDNAを精製した。精製されたDNA 20ngを使用して、細胞内HBV DNA量を定量的PCR法にて評価した。
【図6】Clofarabineの細胞毒性(HepG2)を示すグラフである。HepG2 NTCP-myc細胞を2x104 cell/wellになるように播種した。24時間後にClofarabineを0、0.49、0.98、1.95、3.90、7.81、15.6、31.3、62.5、125、250、500、1000μMになるように希釈して細胞に添加した。7日間培養した後、Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System (TaKaRa)を10μl添加して37℃ 2時間培養後、450nmでマイクロプレートリーダーを用いて吸光度を測定した。
【図7】Clofarabineの抗HCV活性を示すグラフである。OR6細胞を1.5x104 cell/wellになるように播種した。24時間後にClofarabineを0、15.6、31.3、62.5、125、250、500、1000nMになるように希釈して細胞に添加した。3日間培養した後、細胞を回収し、Renilla Luciferase活性を測定した。
【図8】Clofarabineの細胞毒性(OR6)を示すグラフである。OR6細胞を3x103 cell/wellになるように播種した。24時間後にClofarabineを0、15.6、31.3、62.5、125、250、500、1000μMになるように希釈して細胞に添加した。3日間培養した後、Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System (TaKaRa)を10μl添加して37℃ 2時間培養後、450nmでマイクロプレートリーダーを用いて吸光度を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0038】
本発明に係る抗肝腫瘍ウイルス剤は、以下の一般式(I):
【化2】
JP2017155082A1_000004t.gif
(式中、R1は、フッ素又は水素である)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有するものである。本発明に係る抗肝腫瘍ウイルス剤によれば、肝腫瘍ウイルス(HBV及び/又はHCV)感染症を予防又は治療することができる。

【0039】
また、本発明に係る抗肝腫瘍ウイルス剤によれば、肝腫瘍ウイルス感染症を予防又は治療することで、さらに肝腫瘍ウイルス関連疾患を予防又は治療することもできる。従って、本発明に係る抗肝腫瘍ウイルス剤は、肝腫瘍ウイルス関連疾患予防又は治療剤ということもできる。ここで、肝腫瘍ウイルス関連疾患は、肝腫瘍ウイルスの感染に起因して発症する疾患を意味し、慢性肝炎、肝硬変及び肝癌が挙げられる。

【0040】
さらに、本発明は、上記一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩をヒトや動物等の被験体(患者)に投与することを含む、肝腫瘍ウイルス感染の予防又は治療方法、あるいは肝腫瘍ウイルス関連疾患の予防又は治療方法に関する。

【0041】
本発明の第一実施形態として、本発明に係るHBV及びHCVの双方に対する抗肝腫瘍ウイルス剤(以下、「本発明の第一実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤」と称する)は、Clofarabineと称される2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン(上記一般式(I)の化合物において、R1がフッ素である)又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有するものである。

【0042】
Clofarabine、並びに下記の実施例で使用したCladribine及びFludarabineの化学構造式を以下に示す:

【0043】
【化3】
JP2017155082A1_000005t.gif

【0044】
下記の実施例に示すように、本願発明者は、Clofarabineのriboseの2位にあるFがHに置換されたCladribineは抗HBV活性を有しないことから、Clofarabineの抗HBV活性にはClofarabineのriboseの2位にあるFが重要であることを見出した。また、Cladribineは抗HBV活性を有しないが、抗HCV活性を有することから、ClofarabineとCladribineに共通する塩基である2-Chloroadenineが抗HCV活性に重要であることを見出した。

【0045】
また、本発明の第一実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤によれば、HBV及びHCVの双方の感染症を予防又は治療することで、さらにHBV及び/又はHCV関連疾患を予防又は治療することもできる。従って、本発明の第一実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤は、HBV及び/又はHCV関連疾患予防又は治療剤ということもできる。ここで、HBV及び/又はHCV関連疾患は、HBV及び/又はHCVの感染に起因して発症する疾患を意味し、慢性肝炎、肝硬変及び肝癌が挙げられる。

【0046】
本発明において使用するClofarabineは、例えばBauta W.E. et al., Organic Process Research & Development 2004, Vol. 8, No. 6, pp. 889-896に記載の方法に準じて製造することができる。また、Clofarabine (C2500) (東京化成工業株式会社製)等の市販のものを使用してもよい。

【0047】
また、Clofarabineの薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸との塩、クエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。

【0048】
本発明の第一実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤は、その剤形に応じてそれ自体公知の種々の方法で投与することが可能であり、その投与量、投与部位、投与する間隔、期間等は、患者の年齢や体重、病状あるいは他の薬剤や治療法と併用した場合等を考慮して適宜決定することができる。投与方法としては、特に制限されないが、例えば、経口投与、注射や点滴静注等が挙げられる。

【0049】
本発明の第一実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤の投与量は、その剤形、投与方法、又は治療しようとする症状により異なるが、例えば、体表面積 (m2)当たりの投与量として有効成分(Clofarabine又はその薬学的に許容される塩)換算で3mg~5.2mg、好ましくは30~52mgとすることができ、1日1回又は数回、あるいは持続点滴等、さらには数日毎に1回というような、適当な投与頻度によって投与することが可能である。

【0050】
本発明の第一実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤の剤形としては、例えば、点滴、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、坐剤、注射剤等が挙げられるが、特に制限されない。また、本発明の第一実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤は、例えば製剤担体、賦形剤、安定剤等の成分を含有することもできる。

【0051】
また、本発明は、Clofarabine又はその薬学的に許容される塩をヒトや動物等の被験体(患者)に投与することを含む、HBV及び/又はHCV感染の予防又は治療方法、あるいはHBV及び/又はHCV関連疾患の予防又は治療方法に関する。Clofarabine又はその薬学的に許容される塩の剤形、投与様式、投与量等は、上述の本発明の第一実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤に準じて決定することができる。

【0052】
一方、本発明の効果として以下の点が挙げられる。
1)HCVとHBVの感染者が対象となる
本願では、Clofarabineが抗HBV活性と抗HCV活性を有することを見出した。従来の抗HBV剤はHCVに対しては無効なため、薬剤の対象はHBV感染者(世界で約3.5億人)となる。また、従来の抗HCV剤はHBVに対しては無効なため、薬剤の対象はHCV感染者(世界で約2億人)となる。これに対して、ClofarabineはHCVとHBVの両ウイルスに対して有効なため、対象は世界で計約5.5億人と拡大する。薬剤の開発には莫大な開発費がかかるが、1つの薬剤で2つの感染症をカバーできるため、開発費を軽減する効果が期待できる。さらに、Clofarabineは現在、臨床で白血病に使用されている薬剤であるため、開発費の軽減効果が期待できる。

【0053】
2)安全性に対するリスクの軽減
Clofarabineは現在、臨床で白血病に使用されている薬剤であるために、安全性に対する評価が保証されている。さらに、Clofarabineは白血病に対する血中有効濃度(約2μM)の100分の1の濃度(約20nM)で抗HBV活性を示すので、肝炎に対して使用する際は白血病の治療に対するよりも大幅な副作用の軽減が期待できる。

【0054】
3)他のウイルスへの使用
生理活性物質以外では、Clofarabineは生活環の異なるDNAウイルスとRNAウイルスに有効な初めての抗ウイルス剤である。このことは、Clofarabineが広域のスペクトラムを有する抗ウイルス剤であることを示唆している。現在、ウイルス感染症に対して抗ウイルス剤が開発されているものは非常に少なく、現状では、ほとんどのウイルスに対して抗ウイルス剤は存在しない。Clofarabineは抗ウイルス剤が存在しない病原ウイルスに対しても使用できることが期待できる。また、Clofarabineは初めてのmDAAであるため、人類にとって脅威となる未知のウイルスのアウトブレークに有効な抗ウイルス剤となる潜在能力を有しているものと考えられる。非常に病原性の高いウイルスが出現して、新規の抗ウイルス剤を開発する時間的余裕のない状況下では、mDAAの存在は人類の存続にとって非常に重要となることが予想される。また、テロの脅威に晒されている現在、未知のウイルスを使用したバイオテロに対してもmDAAは有用と考えられる。

【0055】
一方、本発明の第二実施形態として、本発明に係るHCVに対する抗肝腫瘍ウイルス剤(以下、「本発明の第二実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤」と称する)は、Cladribineと称される2-クロロ-9-(2-デオキシ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン(上記一般式(I)の化合物において、R1が水素である)又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有するものである。

【0056】
また、本発明の第二実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤によれば、HCV感染症を予防又は治療することで、さらにHCV関連疾患を予防又は治療することもできる。従って、本発明の第二実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤は、HCV関連疾患予防又は治療剤ということもできる。ここで、HCV関連疾患は、HCVの感染に起因して発症する疾患を意味し、慢性肝炎、肝硬変及び肝癌が挙げられる。さらに、本発明は、Cladribine又はその薬学的に許容される塩をヒトや動物等の被験体(患者)に投与することを含む、HCV感染の予防又は治療方法、あるいはHCV関連疾患の予防又は治療方法に関する。

【0057】
本発明において使用するCladribineは、例えばLioux T. et al., Eur. J. Org. Chem., 2003, Vol. 2003, Issue 20, pp. 3997-4002に記載の方法に準じて製造することができる。また、Cladribine (C2499) (東京化成工業株式会社製)等の市販のものを使用してもよい。

【0058】
また、Cladribineの薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸との塩、クエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。

【0059】
Cladribine又はその薬学的に許容される塩の剤形、投与様式、投与量等は、上述の本発明の第一実施形態に係る抗肝腫瘍ウイルス剤におけるClofarabine又はその薬学的に許容される塩の剤形、投与様式、投与量等に準じたものにすることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
Clofarabineの抗HBV活性及び抗HCV活性、並びにCladribineの抗HCV活性
1.材料及び方法
1-1.抗HBV活性の測定
抗HBV活性の評価は、ヒト肝癌細胞株HepG2にHBVゲノムの2倍長の遺伝子を導入したHBV産生細胞であるHepG2.2.15細胞株を用いて、薬剤添加後7日目の細胞内HBV DNA量あるいは培養上清中のHBV DNA量を定量的PCR法にて評価した。HBV DNAのPCRではForward primer(HBV-S190F; 5'-GCT CGT GTT ACA GGC GGG-3’:配列番号1)とReverse primer (HBV-S703R; 5'-GAA CCA CTG AAC AAA TGG CAC TAG TA-3':配列番号2)を用いた。PCRは95℃10sec to 62℃ 10sec to 72℃30secを1反応として35 Cycle実施した。
【実施例】
【0061】
1-2.抗HCV活性の評価
抗HCV活性の評価はヒト肝癌細胞株HuH-7由来のOR6細胞とヒト肝癌細胞株Li23由来のORL8細胞を用いて実施した。OR6細胞及びORL8細胞では、遺伝子型1b型のO株のゲノムにRenilla Luciferase遺伝子を組み込んでいるため、HCV RNA複製のレベルをRenilla Luciferase活性を測定することで簡便且つ正確に評価することができる。OR6細胞あるいはORL8細胞に薬剤を添加して3日目に細胞を回収し、Renilla Luciferase活性を測定した。
【実施例】
【0062】
1-3.細胞毒性の測定
OR6細胞は3x103 cell/well、HepG2 NTCP-myc細胞は2x104 cell/wellになるように播種した。24時間後に薬剤を添加し、OR6細胞は3日間、HepG2 NTCP-myc細胞は7日間培養した。培養後、Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System (TaKaRa)を10μl添加して37℃2時間培養後、450nmでマイクロプレートリーダーを用いて吸光度を測定した。
【実施例】
【0063】
2.結果及び考察
抗HBV剤のスクリーニングには、ヒト癌細胞株であるHepG2細胞にHBV遺伝子を導入したHepG2.2.15細胞株を使用した(Production of hepatitis B virus particles in HepG2 cells transfected with cloned hepatitis B virus DNA. Sells MA, Chen ML, and Acs G., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 1005-1009 (1987))。抗HCV剤のスクリーニングには、世界標準のヒト肝癌細胞株であるHuH-7細胞にHCV遺伝子を導入したOR6細胞を使用した(Efficient replication of a full-length hepatitis C virus genome, strain O, in cell culture, and development of a luciferase reporter system. Ikeda M, Abe K, Dansako H, Nakamura T, Naka K, Kato N., Biochem. Biophys. Res. Commun., 329(4):1350-9 (2005))。また、これ以外に本発明者らがこれまでに独自に開発したヒト肝癌細胞株Li23細胞にHCV遺伝子を導入したORL8細胞株も使用する(Efficient replication systems for hepatitis C virus using a new human hepatoma cell line. Kato N, Mori K, Abe K, Dansako H, Kuroki M, Ariumi Y, Wakita T, Ikeda M., Virus Res., 146(1-2):41-50 (2009))。本発明者を除くと、抗HCV剤のスクリーニングは世界的にもHuH-7細胞株のみを用いて実施されている。HuH-7細胞とLi23細胞では細胞内環境が異なるために、Li23細胞を用いることでHuH-7細胞だけを用いて行ったスクリーニングでは見落とされてしまう薬剤を救済することができる。
【実施例】
【0064】
また、本実施例では、肝腫瘍ウイルスに対する薬剤の開発期間短縮、安全性の確保、低薬価を実現するために医薬品として承認されている薬剤を再評価するDrug Repositioningを実施した。
【実施例】
【0065】
本実施例では、図3~8に示すように、抗HBV活性と抗HCV活性のスクリーニングを同時に実施し、HBVとHCVのいずれの増殖も抑制する薬剤としてClofarabineを見出した。Clofarabineは臨床で使われている最も強い抗HBV剤であるentecavirと同等の抗HBV活性を示した(図3)。また、Clofarabineは臨床で使われている最も強い抗HCV剤であるSofosbuvirと同等の抗HCV活性を示した。IFN等の生理活性物質を除くと、ClofarabineはHBVとHCVのいずれの増殖も抑制する初めての抗ウイルス剤である。
【実施例】
【0066】
Clofarabineのriboseの2位にあるFがHに置換されたCladribineが抗HBV活性を有しないことから(図3)、Clofarabineの抗HBV活性にはClofarabineのriboseの2位にあるFが重要である事がわかった。このことは、抗HBV活性を有する核酸アナログの開発にはriboseの2位がFであることが重要となることを示している。
【実施例】
【0067】
また、Cladribineは抗HBV活性を有しないが、抗HCV活性を有することから(図4)、ClofarabineとCladribineに共通する塩基である2-Chloroadenineが抗HCV活性に重要な事がわかった。このことは、抗HCV活性を有する核酸アナログの開発には塩基が2-Chloroadenineであることが重要となることを示している。
【実施例】
【0068】
Clofarabineは、サノフィ社より2013年に難治性の白血病に対する治療剤として販売された安全性の高い医薬品である。本実施例では、白血病とは全く異なる、ClofarabineのHCV及びHBVに対する抗ウイルス活性を新規の効能として見出した。抗ウイルス剤をゼロから開発するには莫大な開発費と時間を要するが、本実施例ではDrug repositioninngにより安全性の確認されている医薬品を評価しているため、高い産業上の利用可能性を有している。既に、抗HCV剤と抗HBV剤が存在する現在でも新規の抗ウイルス剤の開発が実施されている理由の1つは、HCVとHBVに対するDAAは単剤で投与すると薬剤抵抗性の変異を獲得してしまうが、複数のDAAを投与することで薬剤抵抗性の変異が出現しにくいためである。HIV-1でも同じ理由で単剤ではなく、複数の薬剤が組み合わされて投与されている。この点からも、Clofarabineが新しいDAAの選択肢に加わることは患者にとって、薬剤抵抗性による治療の失敗のリスクを減らす利益がある。
【実施例】
【0069】
抗癌剤には副作用の高いものが多いため、Clofarabineを慢性肝炎に用いることには抵抗があるかもしれない。しかしながら、抗ウイルス剤としてClofarabineを使用するとHBVでは白血病の治療の有効濃度の約100分の1の濃度で抗HBV活性を示すため、副作用は軽減できるものと思われる(図5~8)。また、抗癌剤であることは、考え方によってはメリットとなるかもしれない。すなわち、抗HBV剤、抗HCV剤の最終目的はウイルスを排除することではなく、ウイルスの排除あるいは抑制によりDNAにダメージを与える炎症を抑えることで肝発癌を抑制することである。現在、C型慢性肝炎ではHCVが排除されたにもかかわらず肝癌の発生することが、大きな問題となっている。抗癌剤であるClofarabineはウイルス排除のみでなく肝癌の種を排除することで肝発癌を予防することが期待できる。
【実施例】
【0070】
さらに、ClofarabineがDNAウイルスとRNAウイルスのいずれにも効く広域なスペクトラムを有することから、現在治療剤のないウイルスへの応用や、未知のウイルスのアウトブレークに対する備蓄等が考えられる。
【実施例】
【0071】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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