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明細書 :抗がん剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-014685 (P2019-014685A)
公開日 平成31年1月31日(2019.1.31)
発明の名称または考案の名称 抗がん剤
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
A61K  31/5377      (2006.01)
A61K  31/519       (2006.01)
A61K  31/53        (2006.01)
A61K  31/397       (2006.01)
A61P  11/00        (2006.01)
A61K  31/155       (2006.01)
C07K  14/435       (2006.01)
FI A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61K 31/5377
A61K 31/519
A61K 31/53
A61K 31/397
A61P 11/00
A61K 31/155
C07K 14/435
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2017-134106 (P2017-134106)
出願日 平成29年7月7日(2017.7.7)
発明者または考案者 【氏名】野口 雅之
【氏名】柴 綾
【氏名】広川 貴次
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
【識別番号】100137729、【弁理士】、【氏名又は名称】赤井 厚子
【識別番号】100151301、【弁理士】、【氏名又は名称】戸崎 富哉
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4C086
4C206
4H045
Fターム 4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC03
4C086BC73
4C086CB06
4C086CB08
4C086GA07
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB26
4C086ZB27
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB26
4C206ZB27
4H045AA50
4H045CA40
4H045EA50
要約 【課題】低分子化合物を用いた、がん、特に初期がんに有効な抗がん剤の提供。
【解決手段】(i)Stratifinと、(ii)SKP1及びUSP8の少なくともいずれかとの結合を阻害する化合物、特にアプレピタント等を有効成分として含む抗がん剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
(i)Stratifinと、(ii)SKP1及びUSP8の少なくともいずれかとの結合を阻害する化合物を有効成分として含む抗がん剤。
【請求項2】
該化合物が、下記式で表される化合物またはその類縁体である、請求項1記載の抗がん剤。
【化1】
JP2019014685A_000018t.gif

【請求項3】
がんが、乳がん、前立腺がん、膵がん、胃がん、肺がん、大腸がん、食道がん、十二指腸がん、頭頚部がん、脳腫瘍、神経鞘腫、非小細胞肺がん、肺小細胞がん、肝臓がん、腎臓がん、胆管がん、子宮がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺がん、骨腫瘍、血管腫、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎がん、小児固形がん、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、および白血病から選択される少なくとも1種である、請求項1または2記載の抗がん剤。
【請求項4】
がんが、初期の肺腺がんである、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗がん剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子化合物を用いた抗がん剤、特に、初期の肺腺がんに対し有効な抗がん剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本におけるがん死の原因として最も多いがん種が肺がんであり、その5年生存率は40%以下と極めて低い。その中でも肺腺がんは発生頻度が最も高く近年増加傾向にある。進行腺がんではEGFR変異、ELM4-ALK融合等の異常に対して分子標的治療が行われるようになり、EGFR変異肺腺がんに対するゲフィニチブやEML4-ALK融合を持つ肺腺がんに対するクリゾチニブ等が知られている。
しかしながら、既存薬はそれぞれが標的とする遺伝子変異を有することが治療適応の絶対条件となるためコンパニオン診断が必須である。また、それらの治療薬全ては進行肺腺がんに対するものであり、初期の肺腺がんに対する治療薬はまだない。
Stratifin(SFN)は、14-3-3ファミリーに属するアンカータンパク質であり、ほぼすべての肺腺がん症例において発現亢進が見られる腫瘍悪性化因子である(非特許文献1、2)。従って、SFNの発現亢進を抑制/遅延させることができる化合物やその機能を阻害できる化合物は、コンパニオン診断をせずに全ての肺腺がん、ひいては肺腺がんを含む種々のがんに対して効果を示すことが期待できる。
本発明者らはSFNの結合因子としてSKP1を同定した。SKP1は、E3ユビキチンリガーゼであるSCFのアダプター部分でありSFNはSKP1タンパク質に結合することでがんの悪性化を引き起こすと考えられている。従って、SFNとSKP1との結合を阻害できる化合物は、抗がん剤として有望である。
一方、脱ユビキチン化酵素の1つであるUSP8は、14-3-3タンパク質との結合モチーフを有し、SFNと結合することで上皮細胞増殖因子EGFにより活性化されたEGF受容体を脱ユビキチン化することにより、そのリソソームへの輸送・分解を負に調節することが知られている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Shiba-Ishii A, et al., Int J Cancer 129, 2445-2453 (2011)
【非特許文献2】Shiba-Ishii A, et al., Molecular Cancer 14:142 (2015)
【非特許文献3】Noguchi M, et al., IASLC2015(the 16th IASLC World Conference on Lung Cancer)P1.04-071 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、SFNの発現亢進を抑制/遅延させることができる化合物やその機能を阻害できる化合物を見出し、当該化合物を用いた、がん一般、特に初期がんに有効な抗がん剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、がんにおけるSFNの発現亢進を抑制/遅延させることができる化合物やその機能を阻害できる化合物を(i)SFNと、(ii)SKP1及びUSP8の少なくともいずれかとの結合抑制を指標にスクリーニングを行い、既存薬ライブラリーから複数同定し、それらの化合物が実際に肺腺がんを含む複数のがん細胞の増殖を抑制することを確認して本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1](i)Stratifinと、(ii)SKP1及びUSP8の少なくともいずれかとの結合を阻害する化合物を有効成分として含む抗がん剤。
[2]該化合物が、下記式で表される化合物またはその類縁体である、上記[1]記載の抗がん剤。
【0006】
【化1】
JP2019014685A_000002t.gif

【0007】
[3]がんが、乳がん、前立腺がん、膵がん、胃がん、肺がん、大腸がん、食道がん、十二指腸がん、頭頚部がん、脳腫瘍、神経鞘腫、非小細胞肺がん、肺小細胞がん、肝臓がん、腎臓がん、胆管がん、子宮がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺がん、骨腫瘍、血管腫、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎がん、小児固形がん、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、および白血病から選択される少なくとも1種である、上記[1]または[2]記載の抗がん剤。
[4]がんが、初期の肺腺がんである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の抗がん剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンパニオン診断を必要とすることなく、がんを効果的に治療することが可能となる。また、肺腺がんの場合、SFNは初期浸潤性肺腺がんの段階から発現亢進していることから、これまでに外科切除以外の治療方法が確立されていなかった初期肺腺がんに対する効果的な化学的治療を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】SFNとSKP1との結合、あるいはSFNとUSP8との結合に対する、アプレピタントの結合阻害能を調べた結果を示すウェスタンブロット像である。
【図2】アプレピタントの細胞増殖抑制能を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味を有する。

【0011】
本発明の抗がん剤は、SFNの発現亢進を抑制/遅延させることができる化合物、あるいはその機能を阻害できる化合物を有効成分として含有する。該化合物としては、(i)SFNと、(ii)SKP1及びUSP8の少なくともいずれかとの結合を抑制し、且つ、細胞増殖抑制作用を有する化合物であれば特に限定されないが、具体的には下記式で表される化合物またはその類縁体が挙げられる。

【0012】
【化2】
JP2019014685A_000003t.gif

【0013】
アプレピタントおよびその類縁体
下式

【0014】
【化3】
JP2019014685A_000004t.gif

【0015】
で表される化合物は、一般名アプレピタントと称され制吐剤として市販されている。当該化合物の類縁体として例えばWO95/16679に開示される下記化合物およびその医薬上許容される塩が挙げられる。

【0016】
【化4】
JP2019014685A_000005t.gif

【0017】
(式中、各記号の定義は、WO95/16679に記載の通りである)
好ましくは、
及びRが独立して水素原子、低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等のC1-6アルキル基等)、低級アルケニル(例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル等のC2-6アルケニル基等)及びフェニルからなる群より選択され;
、R及びRが独立して水素原子、低級アルキル基(上述と同義)、ハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)及び-CFからなる群より選択され;
11、R12及びR13が独立して水素原子、低級アルキル基(上述と同義)、ハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード、好ましくはフルオロ)及び-CFからなる群より選択され;
Yが-O-であり;
ZがC1-4アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等、好ましくはメチル)であり;
が下記式から選択される、化合物およびその医薬上許容される塩である。

【0018】
【化5】
JP2019014685A_000006t.gif

【0019】
【化6】
JP2019014685A_000007t.gif

【0020】
【化7】
JP2019014685A_000008t.gif

【0021】
チカグレロルおよびその類縁体
下式

【0022】
【化8】
JP2019014685A_000009t.gif

【0023】
で表される化合物は、一般名チカグレロルと称され抗血小板剤として市販されている。当該化合物の類縁体として例えばWO99/05143に開示される下記化合物およびその医薬上許容される塩が挙げられる。

【0024】
【化9】
JP2019014685A_000010t.gif

【0025】
(式中、各記号の定義は、WO99/05143に記載の通りである)
好ましくは、
がそれぞれトリフルオロメチルにより置換されていてもよいC1-4アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等、好ましくはプロピル)又はフェニルであり;
がフェニルにより置換されるブチル又はシクロプロピルであり、該フェニル基はそれ自体1個以上(好ましくは2個)のハロゲン(好ましくはフルオロ)、C3-8アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等)、アルコキシ(例えば、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ等のC1-6アルコキシ基等)、フェノキシ又はフェニルにより置換され;
及びRが共にヒドロキシであり;
RがOH、CHOH、CHCHOH、OCHCHOH、CHOCHC(CHOH又はOCHC(CHOHである
化合物およびその医薬上許容される塩である。

【0026】
ZM241385およびその類縁体
下式

【0027】
【化10】
JP2019014685A_000011t.gif

【0028】
で表される化合物(CAS番号. 139180-30-6)は、アデノシン受容体拮抗薬として知られ、試薬としても販売されている。当該化合物の類縁体として例えば特開平5-97855号公報に開示される下記化合物およびその医薬上許容される塩が挙げられる。

【0029】
【化11】
JP2019014685A_000012t.gif

【0030】
(式中、各記号の定義は、特開平5-97855号公報に記載の通りである)
好ましくは、
Qがフリルであり;Rが水素又はアセチルであり;Rがシクロペンチル、シクロヘキシル、テトラフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ピリジル、チアジアゾリル、C~Cアルキル(例えば、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等)、任意に置換したフェニル(C~C)アルキル(例えば、フェニルメチル、フェニルエチル、好ましくはフェニルエチル)、任意に置換したフェニル、フリルメチル又はピリジルメチルであり、前記任意に置換したフェニルが非置換であるか、又はメチレンジオキシによってもしくはフルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、メトキシカルボニル、ヒドロキシ、ピバロイルオキシ、ニトロ、メチル、メトキシ、t-ブトキシカルボニルエチル及びスルファモイルのいずれかによって置換したフェニルであり;Xがオキシ又はイミノであり;AはN又はCT(Tは水素である)である
化合物およびその医薬上許容される塩である。
特に好ましくは、
がシクロヘキシル、テトラフルオロフェニル、2-メチルプロピル、フェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、2-シアノフェニル、3-シアノフェニル、2-ニトロフェニル、2-メトキシカルボニルフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、3-トリフルオロメチルフェニル、ベンジル、2-フルオロベンジル、3-メトキシベンジル、2-フリルメチル、2-フェニルエチル、2-(4-クロロフェニル)エチル、2-(2-メチルフェニル)エチル、2-(4-t-ブトキシカルボニルフェニル)エチル、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチル、2-(4-スルファモイルフェニル)エチル及び2-(4-ピバロイルオキシフェニル)エチルである
化合物又はその医薬上許容される塩である。

【0031】
エゼチミブおよびその類縁体
下式

【0032】
【化12】
JP2019014685A_000013t.gif

【0033】
で表される化合物は、一般名エゼチミブと称され高コレステロール治療薬として市販されている。当該化合物の類縁体として例えば特表平8-509989号公報に開示される下記化合物およびその医薬上許容される塩が挙げられる。

【0034】
【化13】
JP2019014685A_000014t.gif

【0035】
(式中、各記号の定義は、特表平8-509989号公報に記載の通りである)
好ましくは、
X、Y及びZが同一で-CH-であり;
及びRが同一で水素原子であり;
R及びRが独立して、-OR、又は容易にヒドロキシに代謝される基(例えば-O(CO)R、-O(CO)OR及び-O(CO)NRであり;
、R及びRは水素、低級アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等のC1-6アルキル基等)、アリール(例えば、フェニル、ナフチル等のC6-10アリール基等)及びアリール(上述と同義)置換低級アルキル(上述と同義)からなる群より独立して選択され;
は低級アルキル(上述と同義)、アリール(上述と同義)又はアリール置換低級アルキル(上述と同義)であり;
m、n、p、q及びrの合計は、好ましくは2、3又は4、より好ましくは3である(より好ましくは、m、n及びrがそれぞれ0であり、qが1でありpが2であるか、p、q及びnがそれぞれ0であり、rが1でありmが2又は3である)
化合物又はその医薬上許容される塩である。
m、n及びrがそれぞれ0であり、qが1であり、pが2であり、Zが-CH-であり、Rが-OR(上述と同義、好ましくは水素原子)である化合物又はその医薬上許容される塩も好ましい。
p、q及びnがそれぞれ0であり、rが1であり、mが2であり、Xが-CH-であり、Rが-OR(上述と同義、好ましくは水素原子)である化合物又はその医薬上許容される塩も好ましい。

【0036】
クロルヘキシジンおよびその類縁体
下式

【0037】
【化14】
JP2019014685A_000015t.gif

【0038】
で表される化合物は、一般名クロルヘキシジンと称され殺菌薬、消毒薬として市販されている。当該化合物の類縁体として例えば特開昭49-66838に開示される下記ビス-ジグアニド化合物およびその医薬上許容される塩が挙げられる。

【0039】
【化15】
JP2019014685A_000016t.gif

【0040】
(式中、各記号の定義は、特開昭49-66838に記載の通りである)
好ましくは、
A及びA’がそれぞれp-クロロフェニル基であり;
z及びz’が0であり;
nが6である
化合物およびその医薬上許容される塩である。

【0041】
本明細書中、医薬上許容される塩としては、例えば、トリフルオロ酢酸、酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ホスホン酸、塩酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、硫酸等の酸との酸付加塩;例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等との金属塩;例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン等の有機塩基との塩等が挙げられる。

【0042】
本発明において有効成分として用いられる上記化合物に例示される(i)SFNと、(ii)SKP1及びUSP8の少なくともいずれかとの結合を阻害する化合物を、本明細書中、本発明化合物とも称する。

【0043】
本発明化合物は、商業的に入手可能なものであるか、あるいはその基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知(既報)の合成法を適用し、さらに所望に応じて適宜修飾して製造することができる。例えば、アプレピタント及びその類縁体はWO95/16679に記載の方法により、チカグレロルおよびその類縁体はWO99/05143に記載の方法により、ZM241385およびその類縁体は特開平5-97855号公報に記載の方法により、エゼチミブおよびその類縁体は特表平8-509989号公報に記載の方法により、そしてクロルヘキシジンは、特開昭49-66838号公報及びそこで参照される米国特許第2,684,924号、第2,990,425号、第2,830,006号及び第2,863,019号明細書あるいはそれらに準じて調製することができる。

【0044】
本発明化合物は、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体等の異性体を有するが、いずれか一方の異性体も、異性体の混合物も本発明において用いることができる。これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)によりそれぞれを単品として得ることができる。

【0045】
本発明化合物は、結晶であっても無晶形であってもよい。フェニル水酸化体が結晶である場合、結晶形が単一であっても結晶形混合物であってもフェニル水酸化体に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。

【0046】
本発明化合物は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、いずれも本発明のフェニル水酸化体に包含される。

【0047】
本発明化合物は、同位元素(例、H,14C,35S,125I等)等で標識されていてもよい。

【0048】
本発明化合物は、がん細胞に対して選択的な増殖抑制作用を有し、哺乳動物(例、ヒト、サル、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ウサギ等)、好ましくはヒトに対するがんの予防及び/又は治療薬として有用である。ここで、「選択的」とは、がん細胞に対しては増殖抑制作用を示すのに正常細胞には示さないか、あるいは示しても有意にその程度が低いことを意味する。

【0049】
がん細胞とは、体細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞である。がん細胞の由来となるがんとしては、例えば、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫等)、乳がん(例えば、浸潤性乳管がん、非浸潤性乳管がん、炎症性乳がん等)、前立腺がん(例えば、ホルモン依存性前立腺がん、ホルモン非依存性前立腺がん等)、膵がん(例えば、膵管がん等)、胃がん(例えば、乳頭腺がん、粘液性腺がん、腺扁平上皮がん等)、結腸がん(例えば、消化管間質腫瘍等)、直腸がん(例えば、消化管間質腫瘍等)、大腸がん(例えば、家族性大腸がん、遺伝性非ポリポーシス大腸がん、消化管間質腫瘍等)、食道がん、十二指腸がん、舌がん、咽頭がん(例えば、上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん等)、頭頚部がん、唾液腺がん、脳腫瘍(例えば、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫等)、肝臓がん(例えば、原発性肝がん、肝外胆管がん等)、腎臓がん(例えば、腎細胞がん、腎盂と尿管の移行上皮がん等)、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、卵巣がん(例、上皮性卵巣がん、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍等)、膀胱がん、尿道がん、皮膚がん(例えば、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞がん等)、血管腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病等)、メラノーマ(悪性黒色腫)、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん等)、副甲状腺がん、鼻腔がん、副鼻腔がん、陰茎がん、精巣腫瘍、小児固形がん(例えば、ウィルムス腫瘍、小児腎腫瘍等)、上顎洞腫瘍、等が挙げられ、これらに限定されない。
好ましくは、がんが、肺がん、乳がん、前立腺がん、膵がん、胃がん、大腸がん、食道がん、十二指腸がん、頭頚部がん、脳腫瘍、肝臓がん、腎臓がん、胆管がん、子宮がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺がん、骨腫瘍、陰茎がん、小児固形がん、上顎洞腫瘍、から選択される少なくとも1種である。
より好ましくは、がんは、肺腺癌、乳癌又は大腸癌である。
がん細胞の増殖抑制作用は、当分野で通常実施されている方法に準じて、あるいは当該方法を必要に応じて改変することによってインビトロ及び/又はインビボにおいて測定することができる。例えば、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。

【0050】
本発明化合物を有効成分として含有する抗がん剤中における本発明化合物の含有量は製剤全体に対して通常、約0.01~約99.9重量%、好ましくは約0.1~約50重量%である。

【0051】
本発明化合物の投与量は、用いる化合物によって異なるが、既に上市されている化合物であれば、その臨床上の用量に基づいて適宜設定され、年令、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行なっている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。
例えば、本発明化合物を、1日量約0.01~10mg/Kg(体重)程度、好ましくは約0.5~5mg/Kg(体重)程度、更に好ましくは約0.1~1mg/Kg(体重)程度を1回又は2ないし3回に分けて投与するのが好ましい。

【0052】
本発明化合物は、対象となる疾患に応じて、他の薬剤と組み合せて用いることができる。これらの併用薬剤は低分子化合物であっても良く、また高分子の蛋白、ポリペプチド、抗体あるいはワクチンなどでも良い。この場合、本発明化合物と併用薬剤の投与時期は限定されず、投与時に本発明化合物と併用薬剤とが組み合わされていればよい。例えば、シスプラチン、ゲムシタビン、カルボプラチン、タキソール、タキソテール、メトトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン等、本発明化合物とは異なる作用機序によって抗がん作用を示す他の抗がん剤と併用が可能である。

【0053】
本発明化合物は、薬学的に許容される担体と配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の固形製剤;シロップ剤、注射剤等の液状製剤;貼付剤、軟膏剤、硬膏剤等の経皮吸収剤;吸入剤;坐剤として、適宜製剤化することができる。
本発明化合物を含有する医薬は、経口又は非経口投与され、上記した化合物を1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用して用いてもよい。

【0054】
薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用されている各種有機あるいは無機担体物質を用いることができる。具体的には、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等を配合することができる。又、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることもできる。

【0055】
賦形剤の例としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、でんぷん、蔗糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。

【0056】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、精製タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。

【0057】
結合剤の例としては、結晶セルロース、白糖、マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。

【0058】
崩壊剤の例としては、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。

【0059】
溶剤の好適な例としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油等が挙げられる。

【0060】
溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。

【0061】
懸濁化剤の例としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。

【0062】
等張化剤の好適な例として、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられる。

【0063】
緩衝剤の好適な例として、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
無痛化剤の好適な例として、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。

【0064】
防腐剤の好適な例として、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤の好適な例として、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。
着色剤の好適な例として、例えばタール色素、カラメル、三二酸化鉄、酸化チタン、リボフラビン類等が挙げられる。
甘味剤の好適な例として、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、単シロップ等が挙げられる。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0065】
実施例1:結合抑制試験
アプレピタントの、SFNとUSP8あるいはSKP1との結合阻害能を調べた。
(材料と方法)
1.細胞
細胞は高分化型肺腺癌より樹立された培養細胞株A549を用いた。A549は10%非動化ウシ胎児血清を添加したD-MEM/F12培地を用いて、直径10cmのコラーゲンコートディッシュ上で、37℃・5%CO濃度条件下のCOインキュベーター内で培養した。
2.アプレピタント処理
アプレピタントは最終濃度10μMで直径10cmの培養ディッシュにて培養した細胞に添加した。1時間後に培地を除去し、細胞をPBSでリンスした後、M-PERTM Mammalian Protein Extraction Reagent (PIERCE, Rockford, IL) 500μl、Protease inhibitor cocktail(PIERECE) 3μl、およびPhosphatase inhibitor cocktail(PIERECE) 5μlを加え、タンパク質を抽出した。抽出したタンパク質はBCA Protein Assay Reagent Kit (PIERECE)を用いて定量した。
3.免疫沈降
免疫沈降では、抽出タンパク質溶液500倍希釈で抗ヒトSFNマウスモノクローナル抗体(GeneTex, Inc., San Antonio, TX)とprotein A magnetic beadsを添加し、4℃で一晩反応させた。その後磁気ラックにてビーズを沈殿させ上清を取り除き、沈殿したビーズから溶出させた免疫沈降産物をウェスタンブロットにて解析した。
4.ウェスタンブロット
ウェスタンブロットは上記免疫沈降産物を、95℃で5分間変性させた後、10%Mini-PROTEAN TGX Precast Gels (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)を用いて電気泳動を行なった。その後、タンパク質はiBlotTM gel transfer system (Life Technologies)によりPVDF膜に転写した。一次抗体は抗ヒトSFNマウスモノクローナル抗体(GeneTex, Inc., San Antonio, TX;200倍希釈)および抗ヒトSKP1マウスモノクローナル抗体(BD Bioscience, San Jose, CA;500倍希釈)、二次抗体はHRP標識抗マウスIgG二次抗体(PIERCE;500倍希釈)を使用した。タンパク質バンドはSuperSignal West Femto(登録商標) extended duration substrate (PIERCE)を用い、ChemiDoc Touch Imaging System (Bio-Rad Laboratories)にて検出した。
【実施例】
【0066】
(結果)
結果を図1に示す。アプレピタントを添加することによりSFNに結合するUSP8やSKP1が減少し、アプレピタントがSFNとUSP8との結合や、SFNとSKP1との結合を阻害していることがわかる。
同様にチカグレロル、ZM241385、エゼチミブ及びクロルヘキシジンについてもその結合阻害能を調べた。結果を表1に示す。
【実施例】
【0067】
【表1】
JP2019014685A_000017t.gif
【実施例】
【0068】
実施例2:細胞増殖抑制試験
アプレピタントについて、そのがん細胞に対する増殖抑制効果を調べた。
(材料と方法)
1.細胞
細胞は高分化型肺腺癌より樹立された培養細胞株A549を用いた。A549は10%非動化ウシ胎児血清を添加したD-MEM/F12培地を用いて、直径10cmのコラーゲンコートディッシュ上で、37℃・5%CO濃度条件下のCOインキュベーター内で培養した。
2.阻害薬の調製
各阻害薬はDMSOを溶媒として用い、ボルテックスミキサーにて混和した。
3.WST-8による細胞増殖試験
化合物を添加する前日に96穴細胞培養プレートの各ウェルに6,000細胞/100μlを添加し、COインキュベーターにて一晩培養した。その後各阻害薬を終濃度0.1、1、10μMで添加し、再びCOインキュベーターにて48時間培養した。各インキュベート時間後にWST-8試薬を10μl添加し、1時間CO存在下でインキュベートした後、450nmにおける吸光度を測定した。コントロールにはDMSOを1μl添加した細胞を用い、この細胞のWST-8添加時の吸光度を増殖能1とした。
(結果)
結果を図2に示す。
同様にチカグレロル、ZM241385、エゼチミブ及びクロルヘキシジンについてもその細胞増殖抑制効果を調べた。
各阻害薬の濃度は、アプレピタントでいずれの経過時間でも細胞増殖抑制効果が確認された10μMとした。
アプレピタント同様にチカグレロル、ZM241385、エゼチミブ及びクロルヘキシジンについても細胞増殖抑制効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、コンパニオン診断を必要とすることなく、がんを効果的に治療することが可能となる。また、肺線がんの場合、SFNは初期浸潤性肺腺がんの段階から発現亢進していることから、これまでに外科切除以外の治療方法が確立されていなかった初期肺腺がんに対する効果的な治療を提供することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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