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明細書 :セレノプロテインPの発現抑制剤及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-006773 (P2019-006773A)
公開日 平成31年1月17日(2019.1.17)
発明の名称または考案の名称 セレノプロテインPの発現抑制剤及びその利用
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61K  31/353       (2006.01)
A61K  31/12        (2006.01)
A23L  33/105       (2016.01)
C12N  15/113       (2010.01)
FI A61K 45/00 ZNA
A61P 43/00 111
A61P 9/12
A61P 9/00
A61K 31/353
A61K 31/12
A23L 33/105
C12N 15/113 130Z
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2018-118975 (P2018-118975)
出願日 平成30年6月22日(2018.6.22)
優先権出願番号 2017123077
優先日 平成29年6月23日(2017.6.23)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】斎藤 芳郎
【氏名】三田 雄一郎
【氏名】野口 範子
【氏名】内田 理沙
【氏名】安原 小百合
【氏名】横大路 将
【氏名】白川 静乃
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B018
4C084
4C086
4C206
Fターム 4B018LB00
4B018LE00
4B018MD60
4B018ME04
4B018ME14
4C084AA17
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA421
4C084ZC021
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZC02
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZC02
要約 【課題】本発明は、セレノプロテインPの発現を抑制する成分、特に天然に存在する植物に由来する成分を含む、新規セレノプロテインPの発現抑制剤を提供することを課題とする。また、セレノプロテインPの発現上昇に関連する疾患である肺動脈性肺高血圧症又は血管合併症の予防及び/又は治療剤を提供することも課題とする。そして、上記疾患の症状を改善するために用いられる飲食品組成物又は運動抵抗性を防止する飲食品組成物を提供することも課題とする。
【解決手段】CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とするセレノプロテインPの発現抑制剤。前記化合物が、カテキン化合物、クルクミン化合物及び過酸化水素からなる群より選択される少なくとも一種である。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とする、セレノプロテインPの発現抑制剤。
【請求項2】
前記CCDC遺伝子の発現を促す化合物が、カテキン化合物、クルクミン化合物及び過酸化水素からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の発現抑制剤。
【請求項3】
前記カテキン化合物が、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、及びエピガロカテキンガレートからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2に記載するセレノプロテインPの発現抑制剤。
【請求項4】
前記クルクミン化合物が、クルクミン、デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2に記載するセレノプロテインPの発現抑制剤。
【請求項5】
前記クルクミン化合物が、クルクミンである、請求項4に記載するセレノプロテインPの発現抑制剤。
【請求項6】
CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とする、肺動脈性肺高血圧症又は血管合併症の予防及び/又は治療剤。
【請求項7】
CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とする、肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症の症状を改善するために又は運動抵抗性を防止するために用いられる飲食品組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セレノプロテインPの発現抑制剤に関する。また、本発明は肺動脈性肺高血圧症又は血管合併症の治療剤に関する。そして、本発明は肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症の上昇を改善するために又は運動抵抗性を防止するために用いられる飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セレノプロテインPは、種々の疾患に関与することが知られている。例えば、肺動脈性肺高血圧症又は血管合併症の患者の体内には、セレノプロテインPの著量が蓄積していることが知られている。また、過剰なセレノプロテインPは血管内皮増殖因子(VEGF)による血管新生を抑制することも知られている(非特許文献1又は2)。また、セレノプロテインPの発現量が上昇することによって、運動による代謝が抑制される(これを「運動抵抗性」と呼ぶことがある。)という報告もされている(非特許文献3)。
【0003】
3-オキシフラバンのポリオキシ誘導体の総称であるカテキン化合物は、茶等の天然に存在する成分であり、ヒトの健康の維持に有用な抗酸化作用を始めとする多数の作用を発揮することが報告されている。具体的には、抗ピロリ菌作用、LDLコレステロール若しくは中性脂肪の上昇を抑制する作用又は脂肪蓄積を防止する作用等である。また、ジフェニルヘプタノイド骨格を有するポリフェノール誘導体の総称であるクルクミン化合物は、例えばカレーのスパイスとして用いられるウコン等の天然に存在する成分であり、こちらも人の健康の維持に有用な抗酸化作用等を発揮することが報告されている。
【0004】
このような食経験のある天然由来の植物に含まれる成分は、一般的に安全とされ、上記のような特定の効果を発揮する医薬品又は飲食品等の有効成分として用いることができる点で着目を浴びている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】第4回日本肺循環学会・第3回日本肺高血圧学会合同集会 プログラム・抄録集 2015年10月3日 OR4-6
【非特許文献2】K. Ishikuraら、Diabetologia(2014)57:1968-1976
【非特許文献3】H. Misuら、NATURE MEDICINE(2017)23:508-516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記するように、セレノプロテインPは、種々の疾患に関与することが知られているので、セレノプロテインPの発現を抑制することによって、特定の疾患を予防または治療したり、またその症状を緩和ないし改善することができると考えられる。また、セレノプロテインPの発現を抑制することにより、セレノプロテインPの発現量上昇に起因する、運動による代謝の抑制(すなわち、運動抵抗性)が防止できると考えられる。
【0007】
本発明は、特に天然に存在する植物等に由来する成分を有効成分とした、新規セレノプロテインPの発現抑制剤を提供することを課題とする。また、セレノプロテインPの発現上昇に関連する疾患である、肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症の予防及び/又は治療剤を提供することも課題とする。そして、上記疾患の症状を改善するために用いられる飲食品組成物又は運動抵抗性を防止する飲食品組成物を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題に鑑みて発明者らが鋭意研究した結果、CCDC遺伝子の発現を促す化合物が、セレノプロテインPの発現を抑制する効果を有することを見出した。また、このようなCCDC遺伝子の発現を促す化合物のなかでも、特にカテキン化合物、クルクミン化合物、及び過酸化水素、生体内でのセレノプロテインPの発現を抑制する効果に優れていることを見出した。
【0009】
また、発明者らは、更なる研究によって、CCDC遺伝子の発現を促す化合物が、セレノプロテインPの発現上昇に関連して生じる肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症を予防または改善する作用があることを見出し、これらの疾患の予防及び/又は治療剤として用いることができること、またこれらの症状を緩和または改善する飲食品組成物として用いることができることを見出した。またCCDC遺伝子の発現を促す化合物によれば、セレノプロテインPの発現上昇による運動代謝の抑制(運動抵抗性)を抑え、骨格筋を作用させる運動を行うことにより得られる効果を減衰させない効果を発揮する、飲食品組成物として用いることができることも見出した。
【0010】
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、下記に示す態様の発明を包含するものである。
【0011】
項1 CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とする、セレノプロテインP(以下、「SeP」とも称する)の発現抑制剤。
【0012】
項2 前記CCDC遺伝子の発現を促す化合物が、カテキン化合物、クルクミン化合物及び過酸化水素からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載するSeP発現抑制剤。
【0013】
項3 前記カテキン化合物が、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなる群より選択される少なくとも1種である、項2に記載するSeP発現抑制剤。
【0014】
項4 前記カテキン化合物が、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなる群より選択される少なくとも1種である、項2に記載するSeP発現抑制剤。
【0015】
項5 前記カテキン化合物が、エピガロカテキンガレートである、項2に記載するSeP発現抑制剤。
【0016】
項6 クルクミン化合物がクルクミン、デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンからなる群より選択される少なくとも1種である、項2に記載するSeP発現抑制剤。
【0017】
項7 クルクミン化合物がクルクミンである、項2に記載するSeP発現抑制剤。
【0018】
項8 CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とする、肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症の予防及び/又は治療剤。
【0019】
項9 前記CCDC遺伝子の発現を促す化合物が、カテキン化合物、クルクミン化合物及び過酸化水素からなる群より選択される少なくとも一種である、項8に記載する予防及び/又は治療剤。
【0020】
項10 前記カテキン化合物が、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなる群より選択される少なくとも1種である、項9に記載する予防及び/又は治療剤。
【0021】
項11 前記カテキン化合物が、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなる群より選択される少なくとも1種である、項9に記載する予防及び/又は治療剤。
【0022】
項12 前記カテキン化合物が、エピガロカテキンガレートである、項9に記載する予防及び/又は治療剤。
【0023】
項13 クルクミン化合物がクルクミン、デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンからなる群より選択される少なくとも1種である、項9に記載する予防及び/又は治療剤。
【0024】
項14 クルクミン化合物がクルクミンである、項9に記載する予防及び/又は治療剤。
【0025】
項15 CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とする、肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症の症状を改善するために又は運動抵抗性を防止するために用いられる飲食品組成物。
【0026】
項16 前記CCDC遺伝子の発現を促す化合物が、カテキン化合物及びクルクミン化合物からなる群より選択される少なくとも一種である、項15に記載する飲食品組成物。
【0027】
項17 前記カテキン化合物が、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなる群より選択される少なくとも1種である、項16に記載する飲食品組成物。
【0028】
項18 前記カテキン化合物が、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなる群より選択される少なくとも1種である、項16に記載する飲食品組成物。
【0029】
項19 前記カテキン化合物が、エピガロカテキンガレートである、項16に記載する飲食品組成物。
【0030】
項20 クルクミン化合物がクルクミン、デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンからなる群より選択される少なくとも1種である、項16に記載する飲食品組成物。
【0031】
項21 クルクミン化合物がクルクミンである、項16に記載する飲食品組成物。
【発明の効果】
【0032】
CCDC遺伝子の発現を促す化合物、特にカテキン化合物、クルクミン化合物又は過酸化水素によれば、セレノプロテインPの発現を抑制することができ、セレノプロテインPの発現上昇が原因とされる肺動脈性肺高血圧症又は血管合併症の発症を予防したり、またそれを改善(症状の緩和を含む)することができる。つまり、本発明によれば、CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とするセレノプロテインP発現抑制剤、肺動脈性肺高血圧症又は血管合併症の予防、治療または改善用の組成物(医薬組成物、及び飲食物組成物を含む)を提供することができる。CCDC遺伝子の発現を促す化合物のなかでもカテキン化合物又はクルクミン化合物は、食経験のある植物に含まれる天然に由来する成分であるため、これをヒトに投与(またはヒトが摂取)したとしても副作用を引き起こす可能性が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、CCDC遺伝子によるセレノプロテインP発現量の影響を確認した、実施例1の実験結果を示す図である。図中の画像は、CCDC遺伝子導入後のHEPG2細胞内におけるセレノプロテインP及びアクチンに対するウェスタンブロット解析の結果を示す。また、図中のグラフは、上記の画像を基に、デンシトメトリー解析に供して得られた結果を示す。なお、図中の「ug」との表記は、「μg」を意味する。
【図2】図2は、カテキン化合物によるCCDC遺伝子の発現を確認した、実施例2の実験結果を示す。図中のグラフの縦軸は、内部標準のRPL32に対するCCDC遺伝子の発現量の相対値である。
【図3】図3は、カテキン化合物による処理後のHEPG2細胞における、定量PCR法を用いてセレノプロテインP(mRNA)の発現量を確認した、実施例3の実験結果を示す。図中のグラフの縦軸は、内部標準のRPL32に対するセレノプロテインPのmRNAの発現量の相対値である。
【図4】図4は、カテキン化合物による処理後のHEPG2細胞における、ウエスタンブロット法を用いてセレノプロテインP(タンパク質)の発現量を確認した、実施例4の実験結果を示す。図中のAは、ウエスタンブロット像である。Aの上清中における矢印は、セレノプロテインP(SeP)のバンドである。図中のBに示すグラフの縦軸(SeP/GAPDH)は、Aにて示す細胞内のウエスタンブロット像の、デンシトメトリーによって算出した内部標準(GAPDH)量に対する、セレノプロテインPの量の相対値である。
【図5】図5は、レスベラトロール、クルクミン及びビタミンEによるCCDC遺伝子(L-IST)の発現を確認した、実施例5の実験結果を示す。図中のグラフの縦軸は、内部標準のRPL32に対するCCDC遺伝子(L-IST)の発現量の相対値である。
【図6】図6は、レスベラトロール、クルクミン及びビタミンEによる処理後のHEPG2細胞における、定量PCR法を用いてセレノプロテインPのmRNAの発現量を確認した、実施例6の実験結果を示す。図中のグラフの縦軸は、内部標準のRPL32に対するセレノプロテインPのmRNAの発現量の相対値である。
【図7】図7は、レスベラトロール、クルクミン及びビタミンEによる処理後のHEPG2細胞における、ウエスタンブロット法を用いたセレノプロテインPのタンパク質の発現量を確認した、実施例6の実験結果を示す。図中のAは、ウエスタンブロット像である。図中のBに示すグラフの縦軸は、Aにて示すウエスタンブロット像の、デンシトメトリーによって算出した内部標準(β-アクチン)量に対する、セレノプロテインPの量の相対値である。
【図8】図8は、カテキン化合物を腹腔内投与したマウスから採取した血中のセレノプロテインPを確認した、実施例7の実験結果を示す。Aの上段(SeP)は、ウエスタンブロット像、下段(CBB)は、総タンパク質量を示すCBB染色像を示す。図中のBに示すグラフの縦軸は、Aにて示すウエスタンブロット像及びCBB染色像からデンシトメトリー解析した、総タンパク質量に対するセレノプロテインPの量の相対値である。
【図9】図9は、カテキン化合物を腹腔内投与したマウスから採取した肝臓で発現するセレノプロテインP(SeP)及びCCDC遺伝子(L-IST)のmRNAを確認した、実施例7の実験結果を示す。図中のグラフの縦軸は、内部標準のRPL32に対する、セレノプロテインPのmRNA又はCCDC遺伝子の相対値を、ネガティブコントロール(PBS)に対する相対値にしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
セレノプロテインPの発現抑制剤
本発明のセレノプロテインPの発現抑制剤は、CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とする。上記するCCDC遺伝子は、いわゆるNon-coding RNA(ncRNA)である。当該ncRNAの領域は、これが過剰発現することにより、セレノプロテインPの発現が抑制される効果を奏する領域であればよく、それを限度として特に限定されないものの、例えば、NCBIのACCESSION No. NM_001134848; VERSION No. NM_001134848.1に記載される塩基配列(配列番号1)を有する遺伝子、特に当該塩基配列からなる遺伝子を挙げることができる。また、セレノプロテインPの発現を抑制する効果を奏する範囲に限って、上記する配列番号1に示す塩基配列の変異体も、上記するCCDC遺伝子に包含される。このような変異体とは特に限定されない。例えば、配列番号1に示す塩基配列に対して、1個または複数の塩基が、挿入、付加又は欠失等の変異が施された変異体を挙げることができる。このような変異の程度は、上記効果を奏する範囲であれば、特に限定されない。例えば、変異前後の塩基配列の相同性を、通常は80%程度以上とすることを挙げることができ、好ましくは85%程度以上、より好ましくは90%程度以上、より好ましくは95%程度以上、より好ましくは96%程度以上、より好ましくは97%程度以上、より好ましくは98%程度以上であり、99%程度以上が最も好ましい。

【0035】
後記する実施例1にて示すように、生体内にてCCDC遺伝子を強制発現させると、セレノプロテインPの発現が抑制される現象が生じる。このため、CCDC遺伝子の発現を促す化合物は、生体内のセレノプロテインPの発現を抑制する効果を奏することが期待される。また、当業者であれば、例えば、下記の実施例2に示す方法を採用することによって、CCDC遺伝子の発現を促す物質か否かを容易に確認することができる。このようなCCDC遺伝子の発現を促す化合物は、特に限定されないものの、例えば、下記の実施例にて示すようにカテキン化合物、クルクミン化合物、及び過酸化水素等を挙げることができる。

【0036】
上記するカテキン化合物は、3-オキシフラバンのポリオキシ誘導体である限り、特に限定されない。例えば、遊離型カテキンであるカテキン(C)、エピカテキン(EC)、ガロカテキン(GC)若しくはエピガロカテキン(EGC)又はエステル型(ガレート型)カテキンであるカテキンガレート(CG)、エピカテキンガレート(ECG)、ガロカテキンガレート(GCG)若しくはエピガロカテキンガレート(EGCG)等を挙げることができる。これらのカテキン化合物の中でも、エピカテキン化合物であるエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート又はエピガロカテキンガレート等が好ましく、エピガロカテキンガレートが最も好ましい。なおガレート型カテキンの略称表記に関して、エピガロカテキンガレート(EGEg)のように、ガレートに相当する部位のみを、小文字で表記する場合もある。

【0037】
これらのカテキン化合物は、茶に代表される天然に存在する植物体に含有される化合物であり、このような植物体から公知の方法にて抽出して得ることができる。また、市場から購入して得ることもできる。

【0038】
上記するカテキン化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて、セレノプロテインPの発現抑制剤の有効成分として用いることができる。

【0039】
上記するクルクミン化合物とはクルクミノイドとも呼ばれ、ジフェニルヘプタノイド骨格を有するポリフェノール誘導体である限り、特に限定されない。例えば、クルクミン、デメトキシクルクミン又はビスデメトキシクルクミン等を挙げることができる。これらのクルクミン化合物の中でも、クルクミンが好ましい。

【0040】
上記するカテキン化合物は、ウコン(ターメリック)に代表される、天然に存在する植物体に含有される化合物であり、このような植物体から公知の方法にて抽出して得ることができる。また、市場から購入して得ることもできる。

【0041】
上記するカテキン化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて、セレノプロテインPの発現抑制剤の有効成分として用いることができる。

【0042】
本発明のセレノプロテインPの発現抑制剤の、CCDC遺伝子の発現を促す化合物の配合量は、セレノプロテインPの発現抑制効果を奏することを限度として、特に限定されない。例えば、セレノプロテインPの発現抑制剤100質量%中に、通常、0.00001~100質量%程度の量の、CCDC遺伝子の発現を促す化合物を配合することができる。

【0043】
上記するセレノプロテインPの発現抑制効果は、その有効成分であるCCDC遺伝子の発現を促す化合物の作用によるものである。肺動脈性肺高血圧症又は血管合併症の患者の体内にはセレノプロテインPが蓄積していることが知られているので、セレノプロテインPの蓄積を抑制すること、すなわちセレノプロテインPの発現を抑制することができれば、肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症の予防、治療に用いることができると考えられる。よって、セレノプロテインPの発現を抑制する作用を有するCCDC遺伝子の発現を促す化合物は、肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症を予防及び/又は治療剤とすることが期待できる。

【0044】
これと同様に、セレノプロテインPの発現を抑制する作用を有するCCDC遺伝子の発現を促す化合物は、肺動脈性肺高血圧症又は血管合併症の症状を改善若しくは緩和するための飲食品組成物として用いることができるものと期待できる。そして、セレノプロテインPの発現を抑制する効果を奏するCCDC遺伝子の発現を促す化合物は、運動抵抗性を防止するための飲食品組成物として用いることも期待できる。運動抵抗性とは、例えば、骨格筋を作用させる運動を行っても、その効果を減衰させること、すなわち運動による代謝が抑制されることを意味する。

【0045】
肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症の予防及び/又は治療剤
本発明の肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症の予防及び/又は治療剤は、CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分とするものである。CCDC遺伝子の発現を促す化合物とは特に限定されない。例えば、カテキン化合物、クルクミン化合物又は過酸化水素等を挙げることができる。具体的なCCDC遺伝子の発現を促す化合物は、上記と同様とすることができる。

【0046】
用語「治療」とは、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。この効果には、疾病及び/若しくは疾病に起因する病態又は症状等(以後、これを悪影響とする)を、部分的又は完全に治癒することが包含される。また、上記する効果には、疾病及び/若しくは疾病に起因する悪影響の進行を、阻止若しくは遅延する効果、悪影響を緩和する(悪影響の後退又は進行の逆転を引き起こす)効果も包含される。従って、本発明において使用する「治療」との用語には、「緩解」の意味も含まれる。

【0047】
用語「予防」には、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響の素因を持ち得るが、まだ持っていると診断されていない個体において、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響が起こることを、部分的又は完全に防止する効果も包含される。従って、本発明において使用する「予防」との用語には「再発防止」の意味も含まれる。

【0048】
本発明の予防及び/又は治療剤の、CCDC遺伝子の発現を促す化合物の配合量は、特に限定されない。例えば、予防及び/又は治療薬100重量%中に、通常、0.001~100質量%程度の量の、CCDC遺伝子の発現を促す化合物を配合することができる。

【0049】
本発明の予防及び/又は治療剤には、薬学分野の組成物を製造する際に使用される、薬学的に許容可能な公知の担体又は添加物を配合することができる。このような担体又は添加物は、特に限定されない。例えば、任意の担体、希釈剤、賦形剤、懸濁剤、潤滑剤、アジュバント、媒体、送達システム、乳化剤、錠剤分解物質、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香料又は甘味料等を挙げることができる。

【0050】
本発明の予防及び/又は治療剤は、上記する担体又は配合物を適宜組み合わせて、あらゆる剤形とすることができる。具体的には、輸液剤、埋め込み注射剤又は持続性注射剤等の注射剤;腹膜透析用剤又は血液透析用剤等の透析用剤;口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠又は溶解錠等の錠剤;硬カプセル錠又は軟カプセル錠等のカプセル剤;発泡顆粒剤、徐放性顆粒剤又は腸溶性顆粒剤等を含む顆粒剤;散剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤又はリモナーデ剤等の経口液剤;シロップ剤、経口ゼリー剤、トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠又はガム剤等の口腔用錠剤;口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含嗽剤、吸入粉末剤、吸入液剤又は吸入エアゾール剤等の吸入剤;眼軟膏剤等の点眼剤;点耳剤;点鼻粉末剤又は点鼻液剤等の点鼻剤;坐剤、直腸用半固形剤、注腸剤、膣錠、膣用坐剤又は外用散剤等の外用固形剤;リニメント剤又はローション剤等の外用液剤;外用エアゾール剤又はポンプスプレー剤等のスプレー剤;軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤又はパップ剤等の貼付剤等が挙げられる。これらの剤形は、第16改正日本薬局方解説書等の公知の文献に基づいて製造することができる。

【0051】
本発明の予防及び/又は治療剤の投与対象は、これらの疾患に罹患した患者、罹患する可能性のあるヒト又は予防が必要と判断されるヒト等を挙げることができる。本発明の予防及び/又は治療剤の投与方法は、特に限定されない。例えば、上記する投与対象又は剤形等に適宜留意して、公知の投与方法を採用することができる。具体的には、経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、皮内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、肺内投与、眼内投与、腟内投与、頸部内投与、直腸内投与又は皮下投与等を挙げることができる。

【0052】
本発明の予防及び/又は治療剤の投与量は、特に限定されない。例えば、投与対象がヒトであれば、通常は1~10mg/kg程度とすればよい。その他の投与対象動物であれば、上述のヒトにおける投与量を基に、適宜設定することができる。また、肺動脈性肺高血圧症若しくは血管合併症に対する予防及び/又は治療効果を発揮することができる範囲において、上記の量を一日に一度に投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。本発明の予防及び/又は治療剤の投与間隔は、特に限定されない。例えば毎日、隔日、毎週、隔週、2~3週毎、毎月、隔月又は2~3ヶ月毎等とすることができる。

【0053】
本発明の飲食品組成物
本発明の飲食品組成物は、CCDC遺伝子の発現を促す化合物を有効成分として含有するものであり、肺動脈性肺高血圧症又は血管合併症の症状を改善するために用いることができる。また、本発明の飲食品組成物は、運動抵抗性を防止するために用いることもできる。CCDC遺伝子の発現を促す化合物とは、特に限定されない。例えば、カテキン化合物、クルクミン化合物等を挙げることができる。具体的なCCDC遺伝子の発現を促す化合物は、上記と同様とすることができる。

【0054】
用語「改善」には、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響の症状を改善するのみならず、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響の素因を持ち得るが、まだ持っていると診断されていない個体において、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響が起こることを、部分的又は完全に防止する効果も包含される。従って、本発明において使用する「改善」との用語には、「予防」又は「再発防止」の意味も含まれる。

【0055】
本発明の飲食品組成物の、CCDC遺伝子の発現を促す化合物の配合量は、本発明の効果を奏する範囲であればよく、その限りにおいて特に限定されない。例えば、飲食品組成物100質量%中に、通常、0.000001~100質量%程度のCCDC遺伝子の発現を促す化合物を配合することができる。

【0056】
本発明の飲食品組成物には、特定保健用食品、機能性表示食品及び栄養機能食品等の保健機能食品(飲料を含む)並びに栄養補助食品、健康補助食品及び栄養調整食品等の一般食品(飲料を含む)のいずれもが包含されるものとすることができる。これらの飲食品組成物は、慣用の飲食物の形状を有していればよく、例えば一般の食品や飲料の形態(明らか食品)のほか、肺動脈性高血圧症若しくは血管合併症の症状を改善する効果を発揮すること又は運動抵抗性を防止することを、飲食品組成物の機能として謳うことのできる、特定保健用食品又は機能性表示食品等を挙げることができる。

【0057】
本発明の飲食品組成物の形状は、特に限定されることは無い。例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料又は乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム又はかき氷等の冷菓;ガム、チョコレート、飴、錠菓、スナック菓子、ゼリー、ジャム、クリーム又はグミ等の菓子;そば、うどん、即席麺又は中華麺等の麺;かまぼこ、ハム又はソーセージ等の水産又は畜産加工食品;加工乳又は発酵乳等の乳製品;サラダ油、マヨネーズ、ホイップクリーム又はドレッシング等の油脂又は油脂加工食品;ソース又はたれ等の調味料;スープ、サラダ、惣菜、漬物、パン又はシリアル等を挙げることができる。本発明の飲食品組成物は、例えば、粉末、顆粒、カプセル、トローチ又は錠剤(タブレット)等の固形製剤;シロップやドリンク等の液体製剤等の、一般にサプリメントとして提供される製剤形態とすることもできる。

【0058】
本発明の飲食品組成物の摂取量は、適用対象者の性別や年齢、当該飲食品組成物の適用形態、所望する効果の程度等に基づいて適宜設定することができる。例えば、飲食品組成物に含有される有効成分の量に換算して、ヒト成人の一日の摂取量として、通常、1~10mg/kg程度の摂取量とすればよい。また、摂取回数、摂取間隔等も、適用対象者の性別や年齢、当該飲食品組成物の適用形態、所望する効果の程度等に基づいて適宜設定することができる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明をより詳細に説明するための実施例を示す。なお、本発明が以下に示す実施例に限定されないのは言うまでもない。
【実施例】
【0060】
<実施例1>
CCDC遺伝子によるセレノプロテインP発現量の実験
配列番号2に記載するCCDC遺伝子の塩基配列を挿入したpcDNA3.1ベクターを用いて、ヒト肝癌細胞に由来する細胞であるHEPG2細胞をトランスフェクションした。この時に導入したベクターの量は、それぞれ2μg及び4μgである。これらのトランスフェクションしたHEPG2細胞を、適切な10%非働化牛胎児血清を含むDMEM培地にて培養した。所定期間の培養後、斯かる細胞の可溶化物を調製し、これをセレノプロテインPに特異的な一次抗体を用いたウェスタンブロット解析に供し、細胞内のセレノプロテインPの発現量を測定した結果を、図1に示す。なお、内部標準としてアクチンを用いた。
【実施例】
【0061】
図1に示す結果から、CCDC遺伝子は、HEPG2細胞の内在性のセレノプロテインPタンパク質の発現量を、濃度依存的に阻害することが明らかとなった。このことから、CCDC遺伝子の発現を促す化合物は、細胞内のセレノプロテインPの発現量を抑制することが示唆された。
【実施例】
【0062】
<実施例2>
カテキン化合物によるCCDC遺伝子の発現を確認する実験
カテキン化合物がCCDC遺伝子の発現を促すことを確認する実験を行った。HEPG2細胞を、それぞれ0、10及び50μMの、EGCG、ECG及びEGCを含む適切な10%非働化牛胎児血清を含むDMEM培地で、24時間処理した。その後、各細胞から全RNAを回収し、これをCCDC遺伝子に特異的なプライマーを使用した定量PCR法に供して、処理後の細胞内におけるCCDC遺伝子の発現量を測定した結果を、図2に示す。なお、内部標準としてRPL32を採用し、ネガティブコントロール(各0μM)として、DMSO処理を採用した。
【実施例】
【0063】
図2に示す結果から、EGCG、ECG及びEGCの何れのカテキン化合物も、HEPG2細胞内のCCDC遺伝子の発現量を増加させることが明らかとなった。また、過酸化水素をHEPG2細胞に添加した場合も、同様に斯かる細胞内のCCDC遺伝子の発現量を増加させることも明らかとなった。
【実施例】
【0064】
<実施例3>
カテキン化合物によるセレノプロテインPの量を確認する実験(mRNA)
実施例2と同様に、HEPG2細胞を、それぞれ0、10及び50μMの、EGCG、ECG及びEGCを含む、適切な10%非働化牛胎児血清を含むDMEM培地で、24時間処理した。処理後のHEPG2細胞から全RNAを抽出し、得られた全RNAを逆転写PCRに供した。その後、セレノプロテインPに特異的なプライマーを使用した定量PCR法に供して、セレノプロテインPのmRNAの発現量を測定した結果を、図3に示す。なお、内部標準としてRPL32を採用し、ネガティブコントロール(各0μM)として、DMSO処理を採用した。
【実施例】
【0065】
図3に示す結果から、各カテキン化合物によって処理したHEPG2細胞内におけるセレノプロテインPのmRNAの発現量は、処理した各カテキン化合物の濃度依存的に減少する傾向であることが明らかとなった。この結果から、上記するエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンに代表されるカテキン化合物が、生体内のセレノプロテインPのタンパク質の発現を抑制することが示唆されたので、これについて確認するための実験を引き続いて行った。
【実施例】
【0066】
<実施例4>
カテキン化合物によるセレノプロテインPの量を確認する実験(タンパク質)
上記する実施例2と同様に、ヒト肝癌細胞に由来する細胞であるHEPG2細胞を、それぞれ0、10及び50μMの、EGCG、ECG及びEGCを含む適切な10%非働化牛胎児血清を含むDMEM培地で、24時間処理した。処理後の各HEPG2細胞のライセートを調整し、得られたライセートのタンパク質濃度をBCA法にて測定して、その等量をウェスタンブロット法に供した。また、処理後の培地(上清中)も同様にウエスタンブロット法に供した。両者の結果を図4Aに示す。なお、これらのウエスタンブロット法では内部標準としてGAPDHを採用した。ウエスタンブロット法にて使用した抗体は、抗ヒトSEPモノクローナル抗体及び抗GAPDH抗体(アブカム社)である。また、ネガティブコントロール(各0μM)として、DMSO処理した細胞を採用した。また、図4Aに示した処理後の細胞のライセート(細胞内)におけるウエスタンブロット像のバンドの濃さを基に、内部標準に対するセレノプロテインPの量を、ネガティブコントロールに対する相対値として、図4Bのグラフにて示す。
【実施例】
【0067】
図4Aに示す結果から、EGCG、ECG及びEGCで処理したHEPG2細胞内のセレノプロテインPタンパク質の量は、上記する実施例3に記載するmRNAの量と同様に、減少する傾向であることが明らかとなった。また、このことは図4Bに示すグラフからも明らかに読み取れる。そして、上記するカテキン化合物の中でも、エピガロカテキンガレートが、最もHEPG2細胞内のセレノプロテインPタンパク質の発現量を抑制することも明らかとなった。このことは、セレノプロテインPのmRNAの発現抑制とは関係なく、CCDC遺伝子の産生量の増加が、セレノプロテインPのタンパク質量の抑制に関連することを示唆している。そして、図4Aから、細胞内のみならず細胞外のセレノプロテインPタンパク質の量も濃度依存的に減少することが明らかとなった。これは、細胞内のセレノプロテインPの量に応じて減少するものと読み取れる。
【実施例】
【0068】
<実施例5>
クルクミン等によるCCDC遺伝子の発現を確認する実験
実施例2と同様に、レスベラトロール、クルクミン及びビタミンEがCCDC遺伝子の発現を促すことを確認する実験を行った。HEPG2細胞を、それぞれ0、10及び50μMの、レスベラトロール、クルクミン及びビタミンEを含む適切な10%非働化牛胎児血清を含むDMEM培地で、24時間処理した。その後、各細胞から全RNAを回収し、これをCCDC遺伝子に特異的なプライマーを使用した定量PCR法に供して、処理後の細胞内におけるCCDC遺伝子のmRNAの発現量を測定した結果を、図5に示す。なお、内部標準としてRPL32を採用し、ネガティブコントロール(各0μM)として、DMSO処理を採用した。
【実施例】
【0069】
図5に示す結果から、クルクミンがHEPG2細胞内のCCDC遺伝子の発現量を増加させることが明らかとなった。その一方で、レスベラトロール及びビタミンEは、CCDC遺伝子の発現量を増加させないことが明らかとなった。
【実施例】
【0070】
<実施例6>
クルクミン等によるセレノプロテインPの量を確認する実験(mRNA)
実施例3と同様に、HEPG2細胞を、それぞれ0、10及び50μMの、レスベラトロール、クルクミン及びビタミンEを含む、適切な10%非働化牛胎児血清を含むDMEM培地で、24時間処理した。処理後のHEPG2細胞から全RNAを抽出し、得られた全RNAを逆転写PCRに供した。その後、セレノプロテインPに特異的なプライマーを使用した定量PCR法に供して、セレノプロテインPの発現量を測定した結果を、図6に示す。なお、内部標準としてRPL32を採用し、ネガティブコントロール(各0μM)として、DMSO処理を採用した。
【実施例】
【0071】
図6に示す結果から、クルクミンによって処理したHEPG2細胞内におけるセレノプロテインPのmRNAの発現量は、処理したクルクミンの濃度依存的に減少する傾向であることが明らかとなった。その一方で、レスベラトロール及びビタミンEは、セレノプロテインPのmRNAの発現量を増加させないことが明らかとなった。この結果から、クルクミンが、生体内のセレノプロテインPのタンパク質の発現を抑制することが示唆されたので、これについて確認するための実験を引き続いて行った。
【実施例】
【0072】
<実施例7>
クルクミン等によるセレノプロテインPの量を確認する実験(タンパク質)
上記する実施例4と同様に、ヒト肝癌細胞に由来する細胞であるHEPG2細胞を、それぞれ0、10及び50μMの、レスベラトロール、クルクミン及びビタミンEを含む適切な10%非働化牛胎児血清を含むDMEM培地で、24時間処理した。処理後の各HEPG2細胞のライセートを調整し、得られたライセートのタンパク質濃度をBCA法にて測定して、その等量をウェスタンブロット法に供した結果を図7Aに示す。なお、内部標準としてGAPDHを採用した。ウエスタンブロット法にて使用した抗体は、抗ヒトSEPモノクローナル抗体及び抗GAPDH抗体(アブカム社)である。また、ネガティブコントロール(各0μM)として、DMSO処理を採用した。また、図7Aに示したウエスタンブロット像のバンドの濃さを基に、内部標準に対するセレノプロテインPの量を、ネガティブコントロールに対する相対値として、図7Bのグラフにて示す。
【実施例】
【0073】
図7Aに示す結果から、クルクミンで処理したHEPG2細胞内のセレノプロテインPタンパク質の量は、上記する実施例6に記載するmRNAの発現量と同様に、減少する傾向であることが明らかとなった。また、このことは図7Bに示すグラフからも明らかに読み取れる。その一方で、レスベラトロール及びビタミンEは、上記する実施例6に記載するmRNAの発現量と同様に、HEPG2細胞内のセレノプロテインPタンパク質の発現量を抑制しないことも明らかとなった。
【実施例】
【0074】
<実施例8>
カテキン化合物を腹腔内投与したマウス体内におけるCCDC遺伝子及びセレノプロテインPのmRNAの発現の確認(in vivo実験)
通常食で飼育したC57B6Jマウス(各4匹を1群とする。)に対して、50及び100mg/kgの量のEGCgを腹腔内投与し、24時間後に各マウスから血液及び肝臓を採取した。ネガティブコントロールとしてPBS投与を採用した。
【実施例】
【0075】
採取した血液を遠心分離に供し、その上清を実施例4及び7と同様にウェスタンブロットに供して、セレノプロテインの発現量を測定した結果を、図8Aに示す(SeP)。また、同じく、図8Aに記載するCBBは、ウエスタンブロット時に使用した転写後のメンブレンをCBB染色して、採取した血清に含まれるタンパク質(総タンパク質)を示す。
【実施例】
【0076】
図8Aに示す結果から、100mg/kgのEGCgを投与した群から採取した血清中のセレノプロテインPの量は、ネガティブコントロールに比べて減少していることが見て取れる。また、血中の奏タンパク質に対するセレノプロテインPの量を算出した結果を示す図8Bからも、同様のことが明らかとなった。
【実施例】
【0077】
採取した肝臓から、上記する実施例1、2、3、5及び6と同様に、全RNAを回収し、これをCCDC遺伝子(L-IST)又はセレノプロテインPに特異的なプライマーを使用した定量PCR法に供して、処理後の細胞内におけるCCDC遺伝子又はセレノプロテインPの発現量を測定した結果を、図9に示す。なお、内部標準としてRPL32を採用し、ネガティブコントロール(各0μM)として、DMSO処理を採用した。
【実施例】
【0078】
図9に示すように、100mg/kgで投与した群の肝臓では、CCDC遺伝子(L-IST)の発現量が増大すると共に、セレノプロテインPのmRNAの発現量が減少することが明らかとなった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8