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明細書 :セラミックス体の強度向上方法、人工歯の加工方法、及びセラミックス造形体加工装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-013756 (P2019-013756A)
公開日 平成31年1月31日(2019.1.31)
発明の名称または考案の名称 セラミックス体の強度向上方法、人工歯の加工方法、及びセラミックス造形体加工装置
国際特許分類 A61C  13/08        (2006.01)
A61C  13/083       (2006.01)
FI A61C 13/08 A
A61C 13/083
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2018-127028 (P2018-127028)
出願日 平成30年7月3日(2018.7.3)
優先権出願番号 2017131500
優先日 平成29年7月4日(2017.7.4)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】中西 義孝
【氏名】馬場 貴司
【氏名】イン リン
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
【識別番号】511011791
【氏名又は名称】株式会社パルメソ
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
【識別番号】100149205、【弁理士】、【氏名又は名称】市川 泰央
審査請求 未請求
テーマコード 4C159
Fターム 4C159GG02
4C159GG06
要約 【課題】セラミックス体の強度を向上させる方法を提供する。
【解決手段】肉眼で目視不可能な脆弱性惹起部を表層部に有する初期状態のセラミックス体に対して粒子含有液を噴射し、前記脆弱性惹起部の脆弱性を進展させてより脆弱な脆弱部と成し、同脆弱部に対して更に粒子含有液を噴射することで前記脆弱部の応力集中性を緩和して前記セラミックス体を前記初期状態よりも強度の高い状態とすることとした。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
肉眼で目視不可能な脆弱性惹起部を表層部に有する初期状態のセラミックス体に対して粒子含有液を噴射し、前記脆弱性惹起部の脆弱性を進展させてより脆弱な脆弱部と成し、同脆弱部に対して更に粒子含有液を噴射することで前記脆弱部の応力集中性を緩和して前記セラミックス体を前記初期状態よりも強度の高い状態とするセラミックス体の強度向上方法。
【請求項2】
前記脆弱性惹起部は、前記セラミックス体の母材組成と異質又は同質で粒界を伴う粒体の母材埋入部や、前記セラミックス体の成形加工に伴って生じた母材組成とは異質の熱変性部、前記セラミックス体の表層に存在する剥片部のいずれか又はこれらの組合せ部分であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス体の強度向上方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のセラミックス体の強度向上方法により加工する人工歯の加工方法であって、前記初期状態のセラミックス体は人工歯素材の切削により目的とする歯牙形状とした人工歯であり、同人工歯の少なくとも歯肉縁上領域を前記粒子含有液に含まれた粒子による複数の衝突痕で表面粗さSa0.7~0.8の粗面とする人工歯の加工方法。
【請求項4】
セラミックス造形体を保持可能とした保持部と、
粒子含有液を噴射する噴射ノズルと、
前後方向であるX軸方向と左右方向であるY軸方向と上下方向であるZ軸方向との三軸方向と、当該三軸のうち少なくともX軸とY軸との軸回り方向との5方向について、前記噴射ノズルと前記保持部との位置関係を相対的に変位させる姿勢変位機構と、
前記セラミックス造形体の外形データが格納された記憶部と、
制御部と、を備え、
同制御部は、前記記憶部に格納された外形データを参照しつつ前記セラミックス造形体の表面標的領域が前記噴射ノズルより噴射される粒子含有液の噴流に満遍なく対向するよう前記姿勢変位機構を制御する粗面形成実行手段を備えることを特徴とするセラミックス造形体加工装置。
【請求項5】
前記保持部に保持させたセラミックス造形素材を切削する切削部を更に備え、
前記姿勢変位機構は、前記5方向について前記切削部と前記保持部との位置関係を相対的に変位可能であり、
前記制御部は、前記記憶部に格納された外形データを参照しつつ前記セラミックス造形素材が目的とするセラミックス造形体形状に切削されセラミックス造形体が形成されるよう前記姿勢変位機構を制御する切削実行手段を備えることを特徴とする請求項4に記載のセラミックス造形体加工装置。
【請求項6】
前記粗面形成実行手段は、前記切削実行手段の実行後に実行することを特徴とする請求項5に記載のセラミックス造形体加工装置。
【請求項7】
前記セラミックス造形体は人工歯であり、前記表面標的領域は人工歯の少なくとも歯肉縁上領域であることを特徴とする請求項4~6いずれか1項に記載のセラミックス造形体加工装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス体の強度向上方法、人工歯の加工方法、及びセラミックス造形体加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自然発生的に口腔内に存在する天然歯は、口へ運んだ食物の栄養分をヒトが吸収するにあたり最初に機能する消化器官でもあり、食物を咀嚼する上で非常に重要な役割を有している。
【0003】
それ故、う蝕や事故により天然歯が失われると、その失われた歯牙を代替すべく口腔内に人工歯の配置が必要となる。
【0004】
人工歯は物理的強度や審美性、価格等の観点を踏まえ、これまでに様々な素材が提案されており、歯科治療を受ける患者は治療目的に反しない限り必要に応じた素材を選択して人工歯を形成することができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平10-218721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では人工歯の素材としてセラミックス製の素材が広く使用されており、また、より天然歯に近い色合いを有するものが提案されている。
【0007】
しかしながら、これまでの人工歯は、審美性について一応の考慮はなされているものの、実際に口腔内に装着された人工歯を第三者的に観察すると、若干ながらも天然歯とは異なる違和感を覚える場合があった。
【0008】
また、人工歯の多くは人工歯素材を切削して形成するが、その切削過程で生じた微細な欠陥が欠損事故の原因となる場合も多く、未だ改善の余地が残されていた。
【0009】
またこの問題は、セラミックス製人工歯に限られるものではなく、様々な分野において使用されているセラミックス製の素材や造形体(以下、単にセラミックス体ともいう。)においても、主に強度的な観点から改善が望まれている。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、セラミックス体の強度を向上させる方法を提供する。
【0011】
また、本発明では、天然歯に近い外観を有し、セラミックス体の強度向上が図られており、しかも欠損事故が抑制された人工歯の加工方法を提供する。
【0012】
また本発明では更に、セラミックス造形体の強度を向上させることが可能な加工装置についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係るセラミックス体の強度向上方法では、(1)肉眼で目視不可能な脆弱性惹起部を表層部に有する初期状態のセラミックス体に対して粒子含有液を噴射し、前記脆弱性惹起部の脆弱性を進展させてより脆弱な脆弱部と成し、同脆弱部に対して更に粒子含有液を噴射することで前記脆弱部の応力集中性を緩和して前記セラミックス体を前記初期状態よりも強度の高い状態とすることとした。
【0014】
また本発明に係るセラミックス体の強度向上方法では、(2)前記脆弱性惹起部は、前記セラミックス体の母材組成と異質又は同質で粒界を伴う粒体の母材埋入部や、前記セラミックス体の成形加工に伴って生じた母材組成とは異質の熱変性部、前記セラミックス体の表層に存在する剥片部のいずれか又はこれらの組合せ部分であることにも特徴を有する。
【0015】
また、本発明に係る人工歯の加工方法では、(3)上記(1)又は(2)に記載のセラミックス体の強度向上方法により加工する人工歯の加工方法であって、前記初期状態のセラミックス体は人工歯素材の切削により目的とする歯牙形状とした人工歯であり、同人工歯の少なくとも歯肉縁上領域を前記粒子含有液に含まれた粒子による複数の衝突痕で表面粗さSa0.7~0.8の粗面とすることとした。
【0016】
また、本発明に係るセラミックス造形体加工装置では、(4)セラミックス造形体を保持可能とした保持部と、粒子含有液を噴射する噴射ノズルと、前後方向であるX軸方向と左右方向であるY軸方向と上下方向であるZ軸方向との三軸方向と、当該三軸のうち少なくともX軸とY軸との軸回り方向との5方向について、前記噴射ノズルと前記保持部との位置関係を相対的に変位させる姿勢変位機構と、前記セラミックス造形体の外形データが格納された記憶部と、制御部と、を備え、同制御部は、前記記憶部に格納された外形データを参照しつつ前記セラミックス造形体の表面標的領域が前記噴射ノズルより噴射される粒子含有液の噴流に満遍なく対向するよう前記姿勢変位機構を制御する粗面形成実行手段を備えることとした。
【0017】
また、本発明に係るセラミックス造形体加工装置では、以下の点にも特徴を有する。
(5)前記保持部に保持させたセラミックス造形素材を切削する切削部を更に備え、前記姿勢変位機構は、前記5方向について前記切削部と前記保持部との位置関係を相対的に変位可能であり、前記制御部は、前記記憶部に格納された外形データを参照しつつ前記セラミックス造形素材が目的とするセラミックス造形体形状に切削されセラミックス造形体が形成されるよう前記姿勢変位機構を制御する切削実行手段を備えること。
(6)前記粗面形成実行手段は、前記切削実行手段の実行後に実行すること。
(7)前記セラミックス造形体は人工歯であり、前記表面標的領域は人工歯の少なくとも歯肉縁上領域であること。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るセラミックス体の強度向上方法によれば、肉眼で目視不可能な脆弱性惹起部を表層部に有する初期状態のセラミックス体に対して粒子含有液を噴射し、前記脆弱性惹起部の脆弱性を進展させてより脆弱な脆弱部と成し、同脆弱部に対して更に粒子含有液を噴射することで前記脆弱部の応力集中性を緩和して前記セラミックス体を前記初期状態よりも強度の高い状態とすることとしたため、セラミックス体の強度を向上させることができる。
【0019】
また、前記脆弱性惹起部は、前記セラミックス体の母材組成と異質又は同質で粒界を伴う粒体の母材埋入部や、前記セラミックス体の成形加工に伴って生じた母材組成とは異質の熱変性部、前記セラミックス体の表層に存在する剥片部のいずれか又はこれらの組合せ部分であることとすれば、粒体の母材埋入部や熱変性部、剥片部に起因する強度低下を効果的に抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係る人工歯の加工方法によれば、上記(1)又は(2)に記載のセラミックス体の強度向上方法により加工する人工歯の加工方法であって、前記初期状態のセラミックス体は人工歯素材の切削により目的とする歯牙形状とした人工歯であり、同人工歯の少なくとも歯肉縁上領域を前記粒子含有液に含まれた粒子による複数の衝突痕で表面粗さSa0.7~0.8の粗面とすることとしたため、人工歯に対し、天然歯に近い外観で、欠損事故が抑制される加工を施すことができる。
【0021】
また、本発明に係るセラミックス造形体加工装置によれば、セラミックス造形体を保持可能とした保持部と、粒子含有液を噴射する噴射ノズルと、前後方向であるX軸方向と左右方向であるY軸方向と上下方向であるZ軸方向との三軸方向と、当該三軸のうち少なくともX軸とY軸との軸回り方向との5方向について、前記噴射ノズルと前記保持部との位置関係を相対的に変位させる姿勢変位機構と、前記セラミックス造形体の外形データが格納された記憶部と、制御部と、を備え、同制御部は、前記記憶部に格納された外形データを参照しつつ前記セラミックス造形体の表面標的領域が前記噴射ノズルより噴射される粒子含有液の噴流に満遍なく対向するよう前記姿勢変位機構を制御する粗面形成実行手段を備えることとしたため、セラミックス造形体の表面標的領域に存在する脆弱性惹起部に由来した強度低下を抑制し、セラミックス造形体の強度向上を図ることができる。
【0022】
また、前記保持部に保持させたセラミックス造形素材を切削する切削部を更に備え、前記姿勢変位機構は、前記5方向について前記切削部と前記保持部との位置関係を相対的に変位可能であり、前記制御部は、前記記憶部に格納された外形データを参照しつつ前記セラミックス造形素材が目的とするセラミックス造形体形状に切削されセラミックス造形体が形成されるよう前記姿勢変位機構を制御する切削実行手段を備えることとすれば、セラミックス造形体も強度向上加工を施すことが可能であるのは勿論のこと、セラミックス造形素材からのセラミックス造形体の切削も可能な加工装置を提供することができる。
【0023】
また、前記粗面形成実行手段は、前記切削実行手段の実行後に実行することとすれば、セラミックス造形素材の切削により形成したセラミックス造形体に対し、引き続きセラミックス造形体の表面標的領域に存在する脆弱性惹起部に由来した強度低下を抑制する加工を施すことができる。
【0024】
また、前記セラミックス造形体は人工歯であり、前記表面標的領域は人工歯の少なくとも歯肉縁上領域であることとすれば、天然歯に近い外観を有し、セラミックス体の強度向上が図られており、しかも欠損事故が抑制された人工歯の加工が可能な装置を提供することができる。特に、大きな力が加わり強度を必要とする歯肉縁上領域について、上述のような効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】脆弱性惹起部の状態を示した説明図である。
【図2】表面標的領域に対する加工の過程を示した説明図である。
【図3】表面標的領域に対する加工の過程を示した説明図である。
【図4】表面標的領域に対する加工の過程を示した説明図である。
【図5】セラミックス造形体の表面状態の変化を示した説明図である。
【図6】セラミックス造形体の表面状態の変化を示した説明図である。
【図7】強度確認試験の結果を示した説明図である。
【図8】本実施形態に係る人工歯加工装置の構成を示した説明図である。
【図9】人工歯加工装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図10】人工歯加工装置にて行われる工程を示したフローである。
【図11】人工歯加工装置の動作を示した説明図である。
【図12】人工歯や比較用人工歯の表面状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、セラミックス体の強度を向上させる方法を提供するものであり、特に、肉眼で目視不可能な脆弱性惹起部を表層部に有するセラミックス体(以下、初期状態のセラミックス体とも称する。)の強度を向上させる方法を提供するものである。

【0027】
ここで、セラミックス体を構成するセラミックスは特に限定されるものではなく、例えば、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア、チタン酸バリウム(BaO3Ti)などの如き酸化物系セラミックスや、ハイドロキシアパタイトの如き水酸化物系のセラミックス、炭化ケイ素(SiC)の如き炭化物系セラミックス、炭酸塩系セラミックス、窒化ケイ素 (Si3N4)の如き窒化物系セラミックス、蛍石の如きハロゲン化物系セラミックス、リン酸塩系セラミックス、又はこれらの複合的なセラミックスなどを挙げることができる。

【0028】
また、本明細書において脆弱性惹起部は、肉眼で目視できない程度(概ね10~300μm四方程度)の小さな部位であり、例えばセラミックス成形体の使用前の状態おいては必ずしも脆弱性を示す部分ではないが、使用時に応力が付与されたり温度変化をトリガーとして将来的に脆弱部に変化して脆弱性を惹起しうる部位である。

【0029】
このような脆弱性惹起部は、上述のような部位であれば特に限定されるものではないが、本発明の理解に供すべく具体例を示すならば、例えばマイクロクラックや熱変性部、剥片部、粒子の母材埋入部等を挙げることができる。

【0030】
図1(a)に示すように、マイクロクラック52は、母体材料50の表層部51に形成されたごく小さな亀裂よりなる脆弱性惹起部53である。このようなマイクロクラック52は、セラミックス体の焼成やその後の冷却過程等で発生する場合がある。

【0031】
マイクロクラック52が母体材料50の表面に存在している場合、セラミックス体の使用等により母体材料50に対して例えば応力が付与されると、図1(a)の左図に示すように、亀裂が母体材料50の内部にまで進展してクラック54となり脆弱部55が形成され、母体材料50の破断、すなわち、セラミックス体の破断に至ることとなる。

【0032】
また熱変性部は、追って説明するが、例えば加工時の熱などにより母体材料50とは異なる性状に変化した部分などを含む脆弱性惹起部である。

【0033】
一例としては、本来所定の強度を有している母体材料に切削加工を施した場合に摩擦熱が付与され、母体材料とは異なる分子結合状態に変化して本来の強度が発揮できなくなった部位が挙げられる。

【0034】
このような熱変性部は、分子構造変化であるため肉眼での目視確認は困難であり、また、加工後のセラミックス成形体に対して応力が付与された場合、熱変性部の強度低下や、熱変性部と母体材料との強度差により熱変性部の破壊が起こり、セラミックス体の破断等に至ることとなる。

【0035】
剥片部56は、図1(b)に示すように、例えばマイクロクラック52が母体材料表層部において略水平方向へ進展したことで形成されたささくれ状(オーバーハング状)の脆弱性惹起部53である。

【0036】
剥片部56が表層部51に存在している場合、母体材料50に対して反りなどによる応力が付与されると、マイクロクラック52の先端(剥片部56の付け根部分近傍)に応力が集中し、マイクロクラック52が更に進展して脆弱部55となり、左図に示すような剥離片57を生じ、セラミックス成形体からの小片の剥落やセラミックス成形体の欠損に至ることとなる。

【0037】
母材埋入部58は、図1(c)に示すように母体材料50の表層部51において、母体材料50と異質又は同質で粒界60を伴う粒体59が母体材料50に埋入された状態の脆弱性惹起部53である。このような粒体59は、例えばセラミックス体の焼成時に本来一体的に焼結すべきであった一部が温度ムラなど何らかの原因により焼結せず粒界60が形成されたり、本来均一であるべきセラミックス粉体原料に一部偏りがあった場合などに出現する場合がある。なお、粒界60は、例えば異質界面であったり、同質であっても焼結状態が連続的ではなく不均一で機械的強度の連続性が失われている境界であったり、内部の残留応力のムラにより亀裂が発生する可能性のあるような境界、また、クラックなどを含む概念であって、母材から粒体が脱落しうる性状の境目程度の意味である。

【0038】
母材埋入部58が表層部51に存在している場合、セラミックス成形体の使用等により母体材料50に所定の応力が付与されると、粒体59が母体材料50から脱落して表層部51には脱落痕61が形成されて脆弱部55となり、脱落痕61に応力が集中するなどしてセラミックス成形体の折損等を招くこととなる。

【0039】
セラミックス材料は表面に欠陥などによる応力集中部が存在するともともとの強さを弱くしてしまうことが知られている。上述した具体例に代表される脆弱部55の如き表面欠陥部位は、いずれも応力集中が起こることを示している。この欠陥部を適切に取り除くことで応力集中部がなくなりセラミックス成形体や部品の全体強度が処理前より向上することにつながる。

【0040】
すなわち、本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法では、これらのような脆弱性惹起部を有する初期状態のセラミックス体に対し、まず弱い部分である脆弱性惹起部をその表面から優先的に除去し、次いで応力集中を起こさない形状として滑らかな表面形状に仕上げる加工を施すこととしている。

【0041】
脆弱性惹起部の優先的除去の工程(以下、第1の工程と称する。)は、初期状態のセラミックス体に対し、粒子含有液を噴射し、脆弱性惹起部を脆弱部に変換することで行う。

【0042】
また、応力集中を起こさない滑らかな表見形状に仕上げる工程(以下、第2の工程と称する。)は、第1の工程により敢えて形成した脆弱部に対して更に粒子含有液を噴射することで、この脆弱部が有する応力集中性を緩和して、前述した初期状態よりも強度の高い状態のセラミックス体とすることで行う。

【0043】
具体的には、例えばマイクロクラック52を表層部51に有するセラミックス体の場合、図2(a)に示すように、セラミックス造形体表層部51の脆弱性惹起部53を含む表面標的領域に対して粒子含有液Wを噴射ノズル18から噴射しつつ、表面標的領域上を粒子含有液W(噴射ノズル18)で走査する。

【0044】
すると、マイクロクラック52は、同マイクロクラック52内に圧入される粒子含有液Wによって開口が広がり、脆弱部55の態様に一度変化させられ、同じく粒子含有液Wによって同脆弱部55が破壊されたり、元々の表層部51全体が除去されることで図2(b)に示すように応力集中が緩和された概ね平滑な状態となったり、図2(c)に示すようにマイクロクラック52に由来する残存凹部でありながらもその亀裂先端が丸められ応力集中が緩和された瘢痕部62となる。

【0045】
従って、脆弱性惹起部に由来して後発的に脆弱部が発現し破損や破断を来す初期状態のセラミックス体に比して、セラミックス体を強度の高い状態とすることができる。

【0046】
なお、脆弱性惹起部に対する粒子含有液の噴射は、前述の第1の工程と第2の工程とを分けて行っても良く、また、第1の工程と第2の工程とを連続して行っても良い。

【0047】
すなわち、脆弱性惹起部を粒子含有液W(噴射ノズル18)で一度走査して脆弱部に変化させた後、二度目の走査で脆弱部の応力集中性を緩和させても良いし、一度の走査のみで脆弱部に変化させつつその生じた脆弱部に対して応力集中性の緩和を行うようにしても良い。

【0048】
また、第1の工程及び第2の工程を実施する回数は特に限定されるものではなく、例えば1回のみ行っても良く、また、いずれか一方又は双方について複数回行っても良い。

【0049】
脆弱性惹起部が図3(a)に示すように剥片部56である場合も同様に、セラミックス造形体表層部51の脆弱性惹起部53を含む表面標的領域に対して粒子含有液Wを噴射ノズル18から噴射しつつ、表面標的領域上を粒子含有液W(噴射ノズル18)で走査する。

【0050】
すると、剥片部56は、粒子含有液Wによって剥離片57が剥落して剥落痕63が形成されることで脆弱部55の態様に一度変化させられる。

【0051】
次いで、第2の工程として粒子含有液Wにより剥落痕63を走査することにより、剥落痕63に由来する残存凹部でありながらも底部や隅部(角部)が丸められ応力集中が緩和された瘢痕部62となる。なお図示は割愛するが、図2(b)で示したように、元々の表層部51全体を除去して応力集中が緩和された概ね平滑な状態としても良いのは勿論である。

【0052】
また、脆弱性惹起部が図4(a)に示すように、粒子64の母材埋入部65である場合も同様に、セラミックス造形体の表層部51の脆弱性惹起部53を含む表面標的領域に対して粒子含有液Wを噴射ノズル18から噴射しつつ、表面標的領域上を粒子含有液W(噴射ノズル18)で走査する。

【0053】
すると、図4(b)に示すように、母材埋入部65からは、粒子含有液Wによって粒子64が脱落して脱落痕66が形成されることで脆弱部55の態様に一度変化させられる。

【0054】
次いで、第2の工程として粒子含有液Wにより剥落痕63を走査することで、図4(c)に示すように元々の表層部51全体を除去して応力集中が緩和された概ね平滑な状態としたり、図4(d)に示すように脱落痕66に由来する残存凹部でありながらも底部や隅部(角部)が丸められ応力集中が緩和された瘢痕部62とすることができる。

【0055】
このように、本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法では、肉眼で目視不可能な脆弱性惹起部を表層部に有する初期状態のセラミックス体に対して粒子含有液を噴射し、前記脆弱性惹起部の脆弱性を進展させてより脆弱な脆弱部と成し、同脆弱部に対して更に粒子含有液を噴射することで前記脆弱部の応力集中性を緩和して前記セラミックス体を前記初期状態よりも強度の高い状態とすることで、セラミックス体の強度を向上させることができる。なお、噴射する粒子含有液は、後述する人工歯の加工において使用する粒子含有液と同じものであり、その詳細については追って説明する。

【0056】
また換言すれば、本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法は、脆弱性惹起部に対して粒子含有液を噴射して、応力集中部が顕在化した脆弱部に一旦変化させた後に、応力集中部に粒子含有液の噴流を圧入し、同応力集中部を集中して摩耗させることで脆弱部の応力集中性を緩和させる点が特徴的であるともいえる。

【0057】
すなわち、本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法の技術思想的要部は、前述した従来技術にもある表面磨きや平坦化でなく、先に示した脆弱性惹起部53の如き欠陥や脆弱部の除去と応力集中を起こさない滑らかな表面形状創成(無方向性を含む)にある。

【0058】
本発明はまた、セラミックス成形体が例えば人工歯である場合において、天然歯に近い外観を有し、しかも欠損事故が抑制された人工歯やその加工方法を提供するものでもあり、複数の衝突痕よりなる表面粗さSa(面の算術平均粗さ)0.7~0.8の粗面が少なくとも歯肉縁上領域の全域に形成されている点で特徴を有している。

【0059】
人工歯は、アバットメントに装着されるインプラント義歯であっても良く、また、クラウンブリッジに用いられる義歯であっても良く、更には樹脂などにより形成された義歯床に配される人工歯であっても良い。

【0060】
また、人工歯に使用される素材は特に限定されるものではなく、例えば、二ケイ酸リチウムガラスセラミック(Lithium disilicate glass ceramic)や、イットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Yttria-stabilized tetragonal zirconia polycrystal)、ポリマー浸透セラミックネットワーク(Polymer-infiltrated ceramic network)、ナノセラミック樹脂複合体(Nano-ceramic resin composite)、酸化ジルコニウム+フルオロアパタイトガラスセラミックス(Zirconium oxide+A fluorapatite glass-ceramic)、白榴石強化ガラスセラミック(Leucite-reinforced glass-ceramic)、単色長石セラミックブランク(Monochromatic feldspar ceramic)などを使用することができる。

【0061】
また、本明細書において人工歯の歯肉縁上領域とは、人工歯の表面における天然歯の歯肉縁上部分に相当する領域であり、患者への施術後に患者の実際の歯肉に隠れる部分、すなわち歯肉縁下部分を有するか否かは関係しない。例えば床義歯の場合、模造された歯肉より突出させて形成した人工歯の露出部分が歯肉縁上領域と解される。

【0062】
そして、本実施形態に係る人工歯やその加工方法における特徴として、この歯肉縁上領域は複数の衝突痕よりなる表面粗さSa0.7~0.8の粗面としている。

【0063】
一般的に人工歯は、所定のセラミックス造形素材(例えば、人工歯素材)から目的とする人工歯形状を切削して形成する場合のみならず、所定の型枠と相補的な形状に形成した人工歯であっても、微調整などを施すためにその表面の切削が行われる。

【0064】
この時、切削を施す歯科医師や歯科技工士は、所謂エアタービンやエンジン等に装着された回転砥石を人工歯の表面に接触させるのであるが、これに伴い人工歯の表面は回転砥石によって強烈に摩擦され、また擦過痕が形成される。

【0065】
すると、この摩擦で生じた熱(例えば千数百℃という熱)により、人工歯の表面組成が本来目的としていた人工歯の組成、すなわち人工歯素材の組成から異質な状態へ変化してしまい、所望する強度など目的とする機能が発揮されないこととなりうる。

【0066】
また、この摩擦熱は人工歯表面のみならず、熱の伝搬により深層にまで変質を来す場合もある。

【0067】
更には、擦過痕の形成によって変質した表層が界面から剥離する場合もあり、この剥離部分からクラックが生じて欠損事故の原因ともなる。

【0068】
また、擦過痕は多くの場合その擦過方向に沿った筋状に形成されており、この擦過痕に光が当たると天然歯とは異なる反射がなされることから、第三者が人工歯を見たときに違和感を感じる場合がある。

【0069】
この点、本実施形態に係る人工歯では、擦過痕ではなく衝突痕よりなる無方向性粗面としているため、反射にムラが無く第三者に違和感を感じさせることがない。

【0070】
またSa0.7~0.8の粗面を形成し得る衝突物体は高速度の微粒子であり、一つの衝突痕を形成する個々の物体の衝突エネルギーは極めて小さいことから、人工歯素材の変質を招くおそれが無く、粗面の形成と共に実質的には前述した第1及び第2の工程を既に経ていることにより、その後の使用時における変質した表層の剥離や、人工歯の欠損事故のおそれを抑制することができる。

【0071】
特に本実施形態においては、この粗面を形成するにあたり、人工歯の加工方法として、人工歯素材の切削により目的とする歯牙形状としたセラミックス造形体としての人工歯の少なくとも歯肉縁上領域に粒子含有液を満遍なく噴射して、同粒子含有液に含まれた粒子による複数の衝突痕で前記歯肉縁上領域を表面粗さSa0.7~0.8の粗面とすることとしている。

【0072】
粒子含有液は、人工歯に衝突させるための粒子を所定の分散媒に分散させた液である。

【0073】
粒子は、分散媒と共に噴射される粒子の噴射速度と粒子自体の質量との関係で得た運動エネルギーにより、歯肉縁上領域が表面粗さSa0.7~0.8の粗面となる衝突痕を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、人工歯素材の硬さよりも硬いか軟らかいかは問わない。この粒子の一例としては、質量が1.18×10-11~5.44×10-11g程度(直径0.90~1.50μm程度)のアルミナ粒子とすることができる。

【0074】
また分散媒は人工歯を変質させるものではなく、また、安定して粒子を分散可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば水とすることができる。

【0075】
例えば、粒子として質量が1.18×10-11~5.44×10-11g程度のアルミナ粒子とし、分散媒を水とした場合には、粒子含有液は、同粒子含有液100g中に3.0g~3.5g程度のアルミナ粒子を含むものとすることができる。

【0076】
このようにして調製された粒子含有液は、前述の脆弱性惹起部を含む表面標的領域において第1及び第2の工程を実行可能な運動エネルギーや、粗面を形成可能な運動エネルギーを粒子に与えることが可能な程度で噴射できる装置によってセラミックス造形体の表面標的領域、例えば人工歯の少なくとも歯肉縁上領域に対し噴射するのであるが、この噴射は、本実施形態に係るセラミックス造形体加工装置によって行うようにしても良い。

【0077】
本実施形態に係るセラミックス造形体加工装置は、保持部と噴射ノズルと姿勢変位機構と記憶部と制御部とを備え、セラミックス造形体に対して粒子含有液を噴射することにより、セラミックス造形体の表面標的領域に存在する脆弱性惹起部に由来した強度低下を抑制し、セラミックス造形体の強度向上を図ることができ、またセラミック造形体が人工歯の場合、天然歯に近い外観で欠損事故が抑制される加工を施すことができるものである。

【0078】
ここで保持部はセラミックス造形体(例えば、人工歯)やセラミックス造形体の削り出し原料となるセラミックス造形素材(例えば、人工歯素材)を保持するための部位である。

【0079】
また噴射ノズルは、セラミックス造形体加工装置内に備えられたタンクなどから液送ポンプや圧搾空気等により粒子含有液を噴射させるノズルであり、保持部にて保持されているセラミックス造形体に対し、前述の粗面を形成可能な運動エネルギーを粒子が持つ速度で粒子含有液を噴射する。

【0080】
姿勢変位機構は、前後方向であるX軸方向と左右方向であるY軸方向と上下方向であるZ軸方向との三軸方向(XYZ軸方向)と、当該三軸のうち少なくともX軸とY軸との軸回り方向との5方向について、噴射ノズルと保持部との位置関係を相対的に変位させるための機構である。この姿勢変位機構により、保持部にて保持されているセラミックス造形体と前述の粒子含有液を噴射する噴射ノズルは、5方向へ相対位置が自在に変位可能となる。

【0081】
なお、この姿勢変位機構は、前後方向であるX軸方向と左右方向であるY軸方向と上下方向であるZ軸方向との互いに直交する三方向へ移動可能とする移動系機構と、前記三軸(XYZ軸)のうち少なくともいずれか二軸、好ましくはX軸及びY軸の軸回り方向へ相対位置を変位可能とする回転系機構と、を備えることで実現可能であるが、これら移動系機構や回転系機構の各構成要素は一つのユニットとして一体的に形成されいても良く、また必要に応じてそれぞれ別体としても良い。

【0082】
すなわち姿勢変位機構は、回転系機構の動作と移動系機構の動作との組み合わせにより、噴射ノズルから噴射される粒子含有液の噴流に当接させるセラミックス造形体の面を変化させるための機構であると言える。

【0083】
また記憶部は、セラミックス造形体の外形データが制御部により参照可能な形式で格納された部位であり、具体的にはROMやRAM(不揮発性メモリを含む)、光ディスク等の光学記録媒体やハードディスク等の磁気記録媒体等で実現される。

【0084】
そして制御部は、記憶部に格納された外形データを参照しつつ前記セラミックス造形体の所定領域、例えば人工歯の場合は少なくとも歯肉縁上領域が前記噴射ノズルより噴射される粒子含有液の噴流に満遍なく対向するよう姿勢変位機構を制御する粗面形成実行手段を備えている。

【0085】
すなわち制御部は、粗面形成実行手段によりセラミックス造形体の所定領域、例えば人工歯の場合は少なくとも歯肉縁上領域を含む略全域を噴射ノズルから噴射される粒子含有液に対向させ、より好ましくは粒子含有液の噴流方向と人工歯の加工対象面とが略垂直となるよう対向させ、粗面形成を行うこととなる。

【0086】
また、本実施形態に係るセラミックス造形体加工装置では、保持部に保持させたセラミックス造形素材を切削する切削部を更に備え、姿勢変位機構は、前記5方向について切削部と保持部との位置関係を相対的に変位可能であり、制御部は、記憶部に格納された外形データを参照しつつセラミックス造形素材が目的とするセラミックス造形体形状に切削されセラミックス造形体が形成されるよう姿勢変位機構を制御する切削実行手段を備えることとしても良い。

【0087】
このような構成を備えることにより、セラミックス造形体に対して第1の工程や第2の工程を実行したり粗面を形成可能であるのは勿論のこと、セラミックス造形体の切削加工をも実施可能なセラミックス造形体加工装置とすることができる。

【0088】
また、本実施形態に係るセラミックス造形体加工装置では、前記粗面形成実行手段は、前記切削実行手段の実行後に実行することとしても良い。

【0089】
このような構成とすることにより、セラミックス造形素材の切削により形成したセラミックス造形体に対し、引き続きセラミックス造形体の表面標的領域に存在する脆弱性惹起部に由来した強度低下を抑制する加工を施すことができる。また、セラミックス造形体が人工歯である場合は天然歯に近い外観で、欠損事故が抑制される加工を施すことができる。

【0090】
なお、本実施形態に係るセラミックス造形体加工装置は、上述した各構成が一体的に一つの筐体に収容された構造としても良く、また、駆動に関する構成を筐体に収容する一方、制御に関する構成は例えばパーソナルコンピュータなどを利用し、両者を電気的に接続することでセラミックス造形体加工装置を構築しても良い。

【0091】
次に、本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法について、実際に同方法に供したセラミックス体の面の状態変化について観察した結果等を交えながら以下に説明する。

【0092】
本試験では、所定のセラミックス造形素材をベースに形成したセラミックス造形体を本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法に供し、粒子含有液の噴射による走査回数に応じた面の状態について観察を行った。

【0093】
セラミックス造形素材は、CERASMART270(CERASMARTは登録商標)と、KZR-CAD Zr(KZR-CADは登録商標)の2種類を用い、縦14mm×横12mm×厚さ2mmの板状に成形加工することでセラミックス造形体とし、それぞれを試験に供した。なお、以下の説明においてCERASMART270製のセラミックス造形体をセラミックス造形体A1と称し、KZR-CAD Zr製のセラミックス造形体をセラミックス造形体A2と称する。

【0094】
まず、図5にセラミックス造形体A1の走査回数に応じた面の状態を示す。なお、図5の(a)~(f)はいずれも同じサンプルの顕微鏡拡大写真及び同写真上に示す白線部の断面曲線を示しているが、粒子含有液の噴射加工装置と顕微撮像装置とにサンプルを繰り返しセットし直す関係上、概ね同一箇所ではあるものの完全に同じ視野を示すものではない。後述の図6も同様である。

【0095】
CERASMART270は10%程度のフィラーを含有するジルコニア系セラミックス素材であるが、図5(a)に示すように、走査前の状態におけるセラミックス造形体A1の表面は、フィラーによる凸部や、フィラーの脱落による凹部、研磨痕などが観察された。なお、これらの凹凸や研磨痕は、いずれも肉眼では観察困難な程度の大きさである。

【0096】
このようなセラミックス造形体A1に対し3回の噴射走査を行うと、図5(b)に示すように、更なるフィラー等の脱落が助長され、より凹凸の激しい状態が観察された。すなわち、粒子含有液を噴射による脆弱性惹起部の脆弱部への変化が観察された。

【0097】
次に、脆弱部が多く形成されたセラミックス造形体A1に対し、更に6回、9回12回、15回と噴射走査を行ったところ、図5(c)~(f)に示すように、脆弱性惹起部の変化による新たな脆弱部の形成は次第に減少する一方、先に形成されていた脆弱部は圧入された粒子含有液の噴流によって摩耗させられ応力集中性が緩和されているのが観察された。

【0098】
図6は、走査回数に応じたセラミックス造形体A2の面の状態を示す。図5(a)に示したセラミックス造形体A1の表面状態と比較すると分かるように、セラミックス造形体A2の素材であるKZR-CAD Zrは、CERASMART270に比して緻密な表面を有しており、肉眼では勿論のこと検鏡下においても一見すると脆弱性惹起領域は存在しないようにも思える。

【0099】
このようなセラミックス造形体A2に対し、3回、6回と噴射走査を行ったところ、図6(b)及び図6(c)に示すように、潜在していた脆弱性惹起部が脆弱部に変化し顕在化したのが観察された。

【0100】
また、更に9回目の噴射走査を行ったところ、図6(d)に示すように、より大きな脆弱部の形成も観察された。

【0101】
次に、脆弱部が多く形成されたセラミックス造形体A2に対し、更に12回、15回と噴射走査を行ったところ、図6(e)及び図(f)に示すように、脆弱性惹起部の変化による新たな脆弱部の形成は次第に減少する一方、先に形成されていた脆弱部は圧入された粒子含有液の噴流によって摩耗させられ応力集中性が緩和されているのが観察された。

【0102】
次に、セラミックス造形体A1を代表例として、加工前後の強度変化について3点曲げによる確認試験を行った。

【0103】
試験は、1.2cmの間隔で配した直径3mmの円筒支持体上にセラミックス造形体A1を架け渡して配置し、同セラミックス造形体A1の略中央部を上方より直径3mmの円筒押圧子により押下することで行った。また、試験は加工前のサンプルと加工後のサンプルとについてそれぞれ3回ずつ行った。その結果を図7に示す。

【0104】
図7(a)及び図7(b)は、それぞれ加工前後の応力-ひずみ曲線である。図7(a)に示すように、加工前のセラミックス造形体A1は、ひずみが概ね0.1%を越えたあたりで破断に至っているが、その際の応力は80~120MPaとばらつきが大きいことが分かる。

【0105】
一方、図7(b)に示すように、加工後のセラミックス造形体A1は、ひずみが概ね0.14%程度で破断に至っており、その際の応力は130~150MPaであった。

【0106】
これら両者の結果を踏まえると、図7(c)に示すように、本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法に供したセラミックス体は、初期状態のセラミックス体と比較して強度の向上が確認された。また、破断時の応力のばらつきが加工前の状態に比して収束している点も特徴的であり、本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法は、製品の強度の均一性向上にも寄与しうることが示された。

【0107】
次に、本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法、人工歯の加工方法、及びセラミックス造形体加工装置について図面を参照しながら詳説する。なお、以下の説明においてセラミックス造形体は人工歯であり、セラミックス造形素材は人工歯素材であり、セラミックス造形体加工装置は人工歯加工装置である場合を代表例として説明するが、本発明はこれらの代表例に限定して解釈されるべきではない。但し、出願人が本願の権利化にあたり、本実施形態の態様に限定することを妨げるものでもない。

【0108】
〔1.人工歯加工装置の構造〕
まず、本実施形態に係るセラミックス造形体加工装置としての人工歯加工装置の構造について説明する。図8は、人工歯加工装置Aの全体構造を示した説明図である。

【0109】
図8に示すように人工歯加工装置Aは、主に制御系を司るパーソナルコンピュータシステム10と、主に動作系を司る装置本体11とで構成している。

【0110】
パーソナルコンピュータシステム10には、コンピュータ本体10aのほか、表示手段としてのディスプレイ12や、入力手段としてのマウス13及びキーボード14が接続されており、パーソナルコンピュータシステム10から出力される情報を参照しながらパーソナルコンピュータシステム10に対し入力可能としている。

【0111】
装置本体11は、略矩形箱状に形成された筐体15を備え、その前部には使用者が筐体15の内部にアクセスするための開口15aが形成されてており、同開口15aには筐体15の内部を視認可能とする透明部が形成された扉体16が開閉可能に枢着されている。

【0112】
筐体15の内部上方には、後述する保持部に保持させた人工歯素材Sを切削するための切削ドリル17と、粒子含有液を噴射する噴射ノズル18とを備えた上部移動体20が配設されている。

【0113】
この上部移動体20は後述する制御部40に電気的に接続されたX軸モータ及びZ軸モータ(図示せず)を内蔵しており、筐体15内に左右方向に配設された左右レール20a及び上下方向に配設された上下レール20bに沿って上部移動体20自身を左右方向(X軸方向)及び上下方向(Z軸方向)に移動可能としている。

【0114】
また、筐体15の内部下方には、加工ステージ21が配設されている。加工ステージ21は、矩形状のステージ枠21aの内方に保持部として機能する環状の保持リング21bを配置して構成している。

【0115】
ステージ枠21aは、加工ステージ移動体22に配置されたY軸回りモータ22aにモータ軸22bを介して接続されており、加工ステージ21をY軸回り方向に回転可能としている。

【0116】
保持リング21bは、ステージ枠21aの側面に配設されたX軸回りモータ(図示せず)に、ステージ枠21aを貫通するモータ軸23bを介して接続されており、保持リング21bをX軸回り方向に回転可能としている。

【0117】
また、加工ステージ移動体22にはY軸モータ22cが備えられており、筐体15内の下部に前後方向へ配設された前後レール22dに沿って加工ステージ移動体22を前後方向(Y軸方向)に移動可能としている。

【0118】
すなわち、人工歯加工装置Aでは、上部移動体20に内蔵されたX軸モータ及びZ軸モータや、加工ステージ移動体22に備えられたY軸モータ22c、左右レール20a、上下レール20b、前後レール22d等の各レールで移動系機構を構成すると共に、加工ステージ移動体22上に配置されたY軸回りモータ22aと、ステージ枠21aの側面に配設されたX軸回りモータ23aとで回転系機構を構成し、これら移動系機構と回転系機構とで姿勢変位機構を構築しており、上部移動体20に備えられた切削ドリル17や噴射ノズル18と、保持リング21bに保持される人工歯素材や人工歯との位置関係を5方向に亘って変位可能に構成している。

【0119】
また、筐体15の内部には、スラリータンク24や洗浄液タンク25が備えられている。

【0120】
スラリータンク24は粒子含有液を収容するタンクであり、スラリータンク24に収容されている粒子含有液は図示しないスラリー供給配管を介して人工歯の粗面形成時に噴射ノズル18から圧搾空気等と共に噴射される。

【0121】
また、洗浄液タンク25は洗浄液を収容するタンクであり、洗浄液タンク25に収容されている洗浄液は図示しない洗浄液供給配管を介して人工歯の粗面形成後の洗浄工程の際に噴射ノズル18から吐出される。

【0122】
次に、人工歯加工装置Aの電気的構成について図9を参照しながら説明する。図9は人工歯加工装置Aの電気的構成を示したブロック図である。

【0123】
パーソナルコンピュータシステム10は、CPU31と、ROM32と、RAM33と、ハードディスク34とを備えており、人工歯加工装置Aの稼動に必要なプログラムを実行可能に構成している。

【0124】
ROM32やRAM33、ハードディスク34は、人工歯加工装置Aの記憶部41として機能する部位であり、CPU31によって実行されるプログラムや、ユーザが入力した人工歯のデータ、例えば人工歯作成のひな形となるデータなどが記憶されている。

【0125】
また、CPU31によりプログラムが実行されると、その処理結果がディスプレイ12に表示され、使用者はこの表示結果を参照しつつマウス13やキーボード14を用いてパーソナルコンピュータシステム10に対して入力を行うことができる。

【0126】
一方、装置本体11は、本体制御部35と、姿勢変位機構36と、液送部37と、切削部38とを備えている。

【0127】
本体制御部35は、パーソナルコンピュータシステム10のCPU31と協動して人工歯加工装置A全体としての制御部40として機能する部位であり、主にパーソナルコンピュータシステム10からの命令を受け取って、姿勢変位機構36や液送部37、切削部38等の駆動制御を行う。

【0128】
すなわち、本体制御部35は、記憶部41に格納されたプログラム等を実行することにより、同じく記憶部41に格納された人工歯等の外形データを参照しつつ人工歯の少なくとも歯肉縁上領域が噴射ノズル18より噴射される粒子含有液の噴流に満遍なく対向するよう姿勢変位機構36を制御する粗面形成実行手段として機能したり、また、記憶部41に格納された人工歯等の外形データを参照しつつ人工歯素材が目的とする歯牙形状に切削され人工歯が形成されるよう姿勢変位機構36を制御する切削実行手段として機能する。

【0129】
姿勢変位機構36は、前述した移動系機構や回転系機構により構成される部位であり、本体制御部35からの命令に基づいて各モータ等が駆動し、上部移動体20に備えられた切削ドリル17や噴射ノズル18と、保持リング21bに保持される人工歯素材や人工歯との位置関係を5方向に亘って変位させる。

【0130】
液送部37は、スラリータンク24内の粒子含有液や洗浄液タンク25内の洗浄液を、本体制御部35からの命令に基づいて噴射ノズル18へ送給したり停止するための部位である。またこの液送部37は、粒子含有液の噴射ノズル18からの噴射に用いられる圧搾空気の供給や停止も行う。

【0131】
切削部38は保持リング21bに保持されている人工歯素材の切削等を行うための部位であり、本体制御部35は切削部38が備えるモータ等を制御することにより、切削ドリル17の回転や停止が行われることとなる。

【0132】
また、パーソナルコンピュータシステム10及び装置本体11には、それぞれ入出力を行うためのI/Oポート39が備えられており、相互に通信可能としている。

【0133】
このように、本実施形態に係る人工歯加工装置Aは、人工歯を保持可能とした保持部としての保持リング21bと、粒子含有液を噴射する噴射ノズル18と、前後方向であるX軸方向と左右方向であるY軸方向と上下方向であるZ軸方向との三軸方向と、当該三軸のうち少なくともX軸とY軸との軸回り方向との5方向について、前記噴射ノズル18と前記保持リング21bとの位置関係を相対的に変位させる姿勢変位機構36と、前記人工歯の外形データが格納された記憶部41と、制御部40と、を備え、同制御部40は、前記記憶部41に格納された外形データを参照しつつ前記人工歯の少なくとも歯肉縁上領域が前記噴射ノズル18より噴射される粒子含有液の噴流に満遍なく対向するよう前記姿勢変位機構36を制御する粗面形成実行手段を備え、天然歯に近い外観で、欠損事故が抑制される加工を施すことが可能であることは勿論のこと、人工歯自体の切削も可能としている。

【0134】
〔2.人工歯加工装置による加工〕
次に、人工歯加工装置Aの動作や制御部40にて実行される処理を踏まえつつ、人工歯加工装置Aによる人工歯素材の切削や人工歯への粗面加工について図10及び図11を参照しながら説明する。

【0135】
使用者が保持リング21bに円盤状の人工歯素材S(二ケイ酸リチウムガラスセラミック製)を嵌着し、パーソナルコンピュータシステム10にて所定のソフトウェアを立ち上げて人工歯の形成を指示すると、CPU31は記憶部41に記憶されている人工歯の外形データを参照し(ステップS11)、切削工程を行うのに必要な通信等を本体制御部35との間で逐次行う。

【0136】
また本体制御部35は、CPU31からの指示に基づいて、姿勢変位機構36へ切削ドリル17と保持リング21b(又は保持リング21bに保持されている人工歯素材)との相対位置関係の調整を指示すると共に、切削部38に対し切削ドリル17の切削速度等の指示を行う(ステップS12)。このとき図11(a)に示すように切削ドリル17や保持リング21bは、姿勢変位機構36によりその相対位置が人工歯の外形データに基づいて自在に変位し、人工歯形成のための切削が実行される。

【0137】
この切削工程が終了すると、次に制御部40は、粗面形成工程を行う。粗面型性工程においてCPU31は記憶部41に記憶されている人工歯の外形データのうち少なくとも歯肉縁上領域を含んだ粗面を形成すべき領域(以下、粗面形成領域ともいう。)に相当する外形データを参照し(ステップS13)、粗面形成工程を行うのに必要な通信等を本体制御部35との間で逐次行う。

【0138】
また本体制御部35は、CPU31からの指示に基づいて、姿勢変位機構36へ噴射ノズル18と保持リング21b(又は保持リング21bに保持されている人工歯素材に形成された人工歯)との相対位置関係の調整を指示すると共に、液送部37に対し粒子含有液の液送速度や圧搾空気の供給等の指示を行う(ステップS14)。このとき図11(b)に示すように噴射ノズル18や保持リング21bは、姿勢変位機構36によりその相対位置が人工歯の外形データに基づいて自在に変位し、人工歯表面のうち歯肉縁上領域を含む粗面形成領域への粗面形成が実行される。なお、本工程では、複数の衝突痕よりなる表面粗さSa0.7~0.8の粗面が形成されるよう、噴射ノズル18からの粒子含有液Wの噴射速度(粒子の運動エネルギー)に調整した。

【0139】
粗面形成工程が終了すると、次に制御部40は、洗浄工程を行う。洗浄工程においてCPU31は記憶部41に記憶されている人工歯の外形データを参照し(ステップS15)、洗浄工程を行うのに必要な通信等を本体制御部35との間で逐次行う。

【0140】
また本体制御部35は、CPU31からの指示に基づいて、姿勢変位機構36へ噴射ノズル18と保持リング21b(又は保持リング21bに保持されている人工歯素材に形成された人工歯)との相対位置関係の調整を指示すると共に、液送部37に対し洗浄液の液送速度等の指示を行う(ステップS16)。このとき噴射ノズル18や保持リング21bは、姿勢変位機構36によりその相対位置が人工歯の外形データに基づいて自在に変位し、人工歯表面の洗浄が実行される。

【0141】
洗浄工程を終えた後、人工歯が形成された人工歯素材Sを保持リング21bから取り外し、更に人工歯素材Sから人工歯を取り外して、本実施形態に係る人工歯T1とした。

【0142】
〔3.比較用人工歯サンプルの作成〕
本実施形態に係る人工歯T1と比較検討を行うべく、比較用の人工歯サンプルの作成を行った。具体的には、〔2.人工歯加工装置による加工〕と略同様の工程を経るが粗面形成工程にて形成する粗面の表面粗さがSa0.5~0.6である比較用人工歯T2と、同じく粗面の表面粗さがSa0.9~1.0である比較用人工歯T3と、人工歯加工装置Aを用い切削工程を行い、粗面形成工程を行うことなく洗浄工程に供し、その後エアタービンに装着した研磨用砥石にて粗面の表面粗さがSa0.7~0.8となるよう研磨処理を施した比較用人工歯T4との作成を行った。

【0143】
〔4.粗面の確認〕
次に、本実施形態に係る人工歯T1及び比較用人工歯T2~T4について粗面の観察及び分析を行った。その結果を図12に示す。

【0144】
図12(a)~図12(d)は、人工歯T1や比較用人工歯T2~T4の表面状態であり、それぞれ三次元解析画像と二次元(平面)画像とを示している。図12(a)に示すように、人工歯T1では、複数の衝突痕よりなる粗面が少なくとも歯肉縁上領域の全域に形成されされていることが確認された。また、オリンパス社製レーザー顕微鏡(LEXTOLS4000)にて表面粗さの計測を行ったところ、表面粗さSa0.7~0.8であることが確認された。

【0145】
また、図12(b)及び図12(c)に示すように、比較用人工歯T2及び比較用人工歯T3においても、複数の衝突痕よりなる粗面が少なくとも歯肉縁上領域の全域に形成されされていることが確認された。またレーザー顕微鏡にて表面粗さの計測を行ったところ、比較用人工歯T2における表面粗さはSa0.5~0.6であり、比較用人工歯T3における表面粗さはSa0.9~1.0であることが確認された。

【0146】
また、図12(d)に示すように比較用人工歯T4の粗面では、無数の擦過痕により形成されていることが確認された。またレーザー顕微鏡にて表面粗さの計測を行ったところ、人工歯T1と同様表面粗さSa0.7~0.8であることが確認された。

【0147】
〔4.審美性の検討〕
次に、本実施形態に係る人工歯T1及び比較用人工歯T2~T4について審美性の検討、具体的には、いずれの人工歯がより天然歯に近いかについて検討を行った。

【0148】
歯科技工士5名により人工歯T1及び比較用人工歯T2~T4について天然歯を参照しつつ見比べを行うことで評価を行った。評価は1~5の5段階であり、数値が大きいほど天然歯に近い印象であることとした。その結果を表1に示す。
【表1】
JP2019013756A_000003t.gif

【0149】
表1からも分かるように、人工歯T1及び比較用人工歯T2~T4のうち、第三者から見て最も天然歯に近い印象の人工歯は、本実施形態に係る人工歯T1であることが示された。

【0150】
また、比較用人工歯T2や比較用人工歯T3に関しても、比較的違和感の少ない人工歯であり、人工歯T1よりもやや粗い粗面とした比較用人工歯T3の方が、人工歯T1よりも細かい粗面とした比較用人工歯T2に比してより違和感が少ない結果となった。

【0151】
また、従来の人工歯の形成と同様、回転式の研磨を施した比較用人工歯T4は、これまで同様実用的な外観は備えるものの、人工歯T1や比較用人工歯T2及び比較用人工歯T3と比較すると、天然歯にはない違和感が強く感じられる結果となった。これは、回転砥石による研磨方向に沿った擦過痕に由来する微妙な光の反射の違いが原因であるものと考えられた。

【0152】
〔5.強度の検討〕
次に、本実施形態に係る人工歯T1及び比較用人工歯T2~T4に関し、強度について検討を行った。

【0153】
具体的には、対応する一対の上下顎大臼歯の形状とした本実施形態に係る人工歯T1及び比較用人工歯T2~T4を試験機に供し、上下顎大臼歯の咬合を機械的に繰り返し行って、その耐久性について検討した。

【0154】
その結果、比較用人工歯T4については、試験開始後3500時間経過した際に、欠けや薄片の脱落が確認された。

【0155】
一方、本実施形態に係る人工歯T1や比較用人工歯T2及びT3については、3500時間経過後においても、欠けや薄片の脱落は確認されなかった。

【0156】
上述してきたように、本実施形態に係るセラミックス体の強度向上方法によれば、肉眼で目視不可能な脆弱性惹起部を表層部に有する初期状態のセラミックス体に対して粒子含有液を噴射し、前記脆弱性惹起部の脆弱性を進展させてより脆弱な脆弱部と成し、同脆弱部に対して更に粒子含有液を噴射することで前記脆弱部の応力集中性を緩和して前記セラミックス体を前記初期状態よりも強度の高い状態とすることとしたため、セラミックス体の強度を向上させることができる。

【0157】
また、本実施形態に係る人工歯によれば、複数の衝突痕よりなる表面粗さSa0.7~0.8の粗面が少なくとも歯肉縁上領域の全域に形成されているため、天然歯に近い外観を有し、しかも欠損事故が抑制された人工歯とすることができる。

【0158】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0159】
17 切削ドリル
18 噴射ノズル
20 上部移動体
21 加工ステージ
21b 保持リング
24 スラリータンク
25 洗浄液タンク
36 姿勢変位機構
37 液送部
38 切削部
40 制御部
41 記憶部
A 人工歯加工装置
S 人工歯素材
T1 人工歯
W 粒子含有液
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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