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明細書 :分解性高分子材料、ハイブリッド材料及び無機成型材料、これらを用いたハイブリッド成型物、無機成型物、並びに高分子除去又は回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-015789 (P2020-015789A)
公開日 令和2年1月30日(2020.1.30)
発明の名称または考案の名称 分解性高分子材料、ハイブリッド材料及び無機成型材料、これらを用いたハイブリッド成型物、無機成型物、並びに高分子除去又は回収方法
国際特許分類 C08L 101/00        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  23/10        (2006.01)
B01J  23/26        (2006.01)
C08K   3/22        (2006.01)
C08K   9/04        (2006.01)
C08K   9/02        (2006.01)
C08K   3/08        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C08L 101/00
B01J 35/02 H
B01J 23/10 M
B01J 23/26 M
C08K 3/22
C08K 9/04
C08K 9/02
C08K 3/08
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 24
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2018-138068 (P2018-138068)
出願日 平成30年7月23日(2018.7.23)
発明者または考案者 【氏名】阿尻 雅文
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
4J002
Fターム 4G169AA02
4G169AA04
4G169BA02B
4G169BA13A
4G169BA17
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BA22C
4G169BA29B
4G169BA29C
4G169BA32A
4G169BA32C
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC29A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC58B
4G169BE01B
4G169BE06B
4G169BE07B
4G169BE38B
4G169CB35
4G169DA06
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EB19
4G169EC22Y
4G169FB29
4G169FB30
4G169FB66
4G169FC08
4J002BB021
4J002BB031
4J002BB111
4J002BB121
4J002BE021
4J002BE061
4J002CD001
4J002DA037
4J002DA068
4J002DA078
4J002DA088
4J002DA118
4J002DE046
4J002DE096
4J002DE147
4J002DE237
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ047
4J002DM008
4J002FB076
4J002FB086
4J002FD017
4J002FD018
4J002FD206
4J002GN01
4J002GT00
要約 【課題】高分子の分解効率が高く、高分子や無機材料のリサイクル技術、金属やセラミクスの成型加工等に適用できる分解性高分子材料、また前記分解性高分子材料を用いたハイブリッド材料及び無機成型材料、これらを用いたハイブリッド成型物、無機成型物、並びに高分子除去又は回収方法の提供。
【解決手段】高分子に、当該高分子の分解反応に対する触媒活性を有するナノ触媒が分散されている、分解性高分子材料。前記分解性高分子材料と、無機フィラーとを含有する、リサイクル可能なハイブリッド材料、及びそれを用いたハイブリッド成型物。無機材料と、バインダーとを含有する、無機成型物の成型に用いる成型材料であって、前記バインダーが前記分解性高分子材料である無機成型材料、及びそれを用いた無機成型物。高分子の分解反応に対する触媒活性を有するナノ触媒を用いた高分子除去又は回収方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子に、当該高分子の分解反応に対する触媒活性を有するナノ触媒が分散されている、分解性高分子材料。
【請求項2】
前記ナノ触媒の含有量が、前記分解性高分子材料の総質量に対して15質量%以下である、請求項1に記載の分解性高分子材料。
【請求項3】
前記ナノ触媒が金属酸化物ナノ粒子を含む、請求項1又は2に記載の分解性高分子材料。
【請求項4】
前記金属酸化物ナノ粒子は、反応温度における酸素吸蔵放出能(OSC)が10μmol/g以上、平均粒子径が100nm以下である、請求項3に記載の分解性高分子材料。
【請求項5】
前記金属酸化物ナノ粒子の表面の30%以上に活性面が露出している、請求項3又は4に記載の分解性高分子材料。
【請求項6】
前記ナノ触媒は、前記金属酸化物ナノ粒子の表面に有機分子が結合された有機修飾ナノ粒子である、請求項3~5のいずれか一項に記載の分解性高分子材料。
【請求項7】
前記有機修飾ナノ粒子の熱重量分析において、有機分子が脱離する温度が150~400℃である、請求項6に記載の分解性高分子材料。
【請求項8】
前記金属酸化物ナノ粒子がCeOナノ粒子である、請求項3~7のいずれか一項に記載の分解性高分子材料。
【請求項9】
前記CeOナノ粒子に遷移元素がドープされている、請求項8に記載の分解性高分子材料。
【請求項10】
無機フィラーとバインダーとを含有するハイブリッド材料であって、前記バインダーが請求項1~9のいずれか一項に記載の分解性高分子材料である、ハイブリッド材料。
【請求項11】
請求項10に記載のハイブリッド材料を加熱及び成型して得られるハイブリッド成型物。
【請求項12】
無機材料とバインダーとを含有する成型材料であって、前記バインダーが請求項1~9のいずれか一項に記載の分解性高分子材料である、無機成型材料。
【請求項13】
前記無機材料が、セラミクス粉末、金属粉末、又は、セラミクス粉末及び金属粉末の混合物である、請求項12に記載の無機成型材料。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の無機成型材料を成型及び焼成して得られる無機成型物。
【請求項15】
高分子と、当該高分子の分解反応に対する触媒活性を有するナノ触媒とを含有する成型物を、水熱分解処理する、高分子除去又は回収方法。
【請求項16】
前記高分子100質量部に対して前記ナノ触媒を15質量部以下添加する、請求項15に記載の高分子除去又は回収方法。
【請求項17】
前記ナノ触媒が金属酸化物ナノ粒子を含む、請求項15又は16に記載の高分子除去又は回収方法。
【請求項18】
前記金属酸化物ナノ粒子は、反応温度における酸素吸蔵放出能(OSC)が10μmol/g以上、平均粒子径が100nm以下である、請求項17に記載の高分子除去又は回収方法。
【請求項19】
前記金属酸化物ナノ粒子の表面の30%以上に活性面が露出している、請求項17又は18に記載の高分子除去又は回収方法。
【請求項20】
前記ナノ触媒は、前記金属酸化物ナノ粒子の表面に有機分子が結合された有機修飾ナノ粒子である、請求項17~19のいずれか一項に記載の高分子除去又は回収方法。
【請求項21】
前記金属酸化物ナノ粒子がCeOナノ粒子である、請求項17~20のいずれか一項に記載の高分子除去又は回収方法。
【請求項22】
前記CeOナノ粒子に遷移元素がドープされている、請求項21に記載の高分子除去又は回収方法。
【請求項23】
前記ナノ触媒を分散させた前記高分子を150~400℃で水熱分解処理する、請求項15~22のいずれか一項に記載の高分子除去又は回収方法。
【請求項24】
前記成型物は、前記高分子をバインダーとする無機フィラー又は無機成型材料を含有する、請求項15~23のいずれか一項に記載の高分子除去又は回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分解性高分子材料、ハイブリッド材料及び無機成型材料、これらを用いたハイブリッド成型物、無機成型物、並びに高分子除去又は回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子のリサイクル技術は、幅広い分野で展開されている。また、炭素繊維を用いた軽量航空機材料、カーボンブラックやシリカを充填したエコタイヤ、ガラス強化プラスチックス、金属強化プラスチックス等の高分子と無機材料の両方の機能発現を目的としたハイブリッド材料(高分子無機複合材料)から、高分子や無機材料をリサイクルすることも検討されている。
【0003】
リサイクル技術としては、燃焼等によるサーマルリサイクルだけでなく、マテリアルリサイクル技術、素原料回収をめざすケミカルリサイクルの可能性も検討されている。すでに高分子の熱分解技術や水蒸気分解技術が開発されつつある。これらの技術は高分子のリサイクルを目的とする場合もあるが、多くの場合は無機材料、特にフィラーのリサイクルを目的としている。
【0004】
高分子や無機材料のリサイクルでは、触媒を利用した高分子分解プロセスも提案されている。例えば、固体触媒充填層反応プロセスによる高分子分解技術がある(特許文献1、2)。しかし、高分子は溶融温度以上でも粘性が高く、リサイクル時に添加した触媒との接触効率を充分に高くすることは難しく、充分な分解が進まない場合もある。
【0005】
また、金属やセラミクスの成型加工においては、バインダーとして高分子が用いられる。具体的には、バインダーを用いて金属やセラミクスの素材粉末を成型した後、焼成によりバインダーを熱分解あるいは酸化分解させて粉体成型物とし、さらに高温での焼成により無機成型物とする。バインダーの分解が不充分であると、その後の焼成で炭化物が生じ、無機成型物の物性や機能が低下する。しかし、金属やセラミクスの成型加工では、バインダーの分解効率を高めるために固体触媒充填層反応プロセスを利用することはできない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2015-131892号公報
【特許文献2】国際公開第2015/025941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高分子の分解効率が高く、高分子や無機材料のリサイクル技術、金属やセラミクスの成型加工等に適用できる分解性高分子材料、また物性や機能の低下を抑制しつつ、高分子の分解効率を高められるハイブリッド材料及び無機成型材料、これらを用いたハイブリッド成型物、無機成型物、並びに高分子除去又は回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明及びその実施形態は、以下の構成を有する。
[1]高分子に、当該高分子の分解反応に対する触媒活性を有するナノ触媒が分散されている、分解性高分子材料。
[2]前記ナノ触媒の含有量が、前記分解性高分子材料の総質量に対して15質量%以下である、[1]に記載の分解性高分子材料。
[3]前記ナノ触媒が金属酸化物ナノ粒子を含む、[1]又は[2]に記載の分解性高分子材料。
[4]前記金属酸化物ナノ粒子は、反応温度における酸素吸蔵放出能(OSC)が10μmol/g以上、平均粒子径が100nm以下である、[3]に記載の分解性高分子材料。
[5]前記金属酸化物ナノ粒子の表面の30%以上に活性面が露出している、[3]又は[4]に記載の分解性高分子材料。
[6]前記ナノ触媒は、前記金属酸化物ナノ粒子の表面に有機分子が結合された有機修飾ナノ粒子である、[3]~[5]のいずれかに記載の分解性高分子材料。
[7]前記有機修飾ナノ粒子の熱重量分析において、有機分子が脱離する温度が150~400℃である、[6]に記載の分解性高分子材料。
[8]前記金属酸化物ナノ粒子がCeOナノ粒子である、[3]~[7]のいずれかに記載の分解性高分子材料。
[9]前記CeOナノ粒子に遷移元素がドープされている、[8]に記載の分解性高分子材料。
[10]無機フィラーとバインダーとを含有するハイブリッド材料であって、前記バインダーが[1]~[9]のいずれかに記載の分解性高分子材料である、ハイブリッド材料。
[11][10]に記載のハイブリッド材料を加熱及び成型して得られるハイブリッド成型物。
[12]無機材料とバインダーとを含有する成型材料であって、前記バインダーが[1]~[9]のいずれかに記載の分解性高分子材料である、無機成型材料。
[13]前記無機材料が、セラミクス粉末、金属粉末、又は、セラミクス粉末及び金属粉末の混合物である、[12]に記載の無機成型材料。
[14][12]又は[13]に記載の無機成型材料を成型及び焼成して得られる無機成型物。
[15]高分子と、当該高分子の分解反応に対する触媒活性を有するナノ触媒とを含有する成型物を、水熱分解(水蒸気分解)処理する、高分子除去又は回収方法。
[16]前記高分子100質量部に対して前記ナノ触媒を15質量部以下添加する、[15]に記載の高分子除去又は回収方法。
[17]前記ナノ触媒が金属酸化物ナノ粒子を含む、[15]又は[16]に記載の高分子除去又は回収方法。
[18]前記金属酸化物ナノ粒子は、反応温度における酸素吸蔵放出能(OSC)が10μmol/g以上、平均粒子径が100nm以下である、[17]に記載の高分子除去又は回収方法。
[19]前記金属酸化物ナノ粒子の表面の30%以上に活性面が露出している、[17]又は[18]に記載の高分子除去又は回収方法。
[20]前記ナノ触媒は、前記金属酸化物ナノ粒子の表面に有機分子が結合された有機修飾ナノ粒子である、[17]~[19]のいずれかに記載の高分子除去又は回収方法。
[21]前記金属酸化物ナノ粒子がCeOナノ粒子である、[17]~[20]のいずれかに記載の高分子除去又は回収方法。
[22]前記CeOナノ粒子に遷移元素がドープされている、[21]に記載の高分子除去又は回収方法。
[23]前記ナノ触媒を分散させた前記高分子を150~400℃で水熱分解処理する、[15]~[22]のいずれかに記載の高分子除去又は回収方法。
[24]前記成型物は、前記高分子をバインダーとする無機フィラー又は無機成型材料を含有する、[15]~[23]のいずれかに記載の高分子除去又は回収方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高分子の分解効率が高く、高分子や無機材料のリサイクル技術、金属やセラミクスの成型加工等に適用できる分解性高分子材料を提供できる。また、本発明のハイブリッド材料及び無機成型材料は、ハイブリッド成型物や無機成型物の物性や機能の低下を抑制しつつ、高分子の分解効率を高めることができる。本発明の高分子除去又は回収方法は、高分子の分解効率が高く、高分子を効率良く除去又は回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】例7のオレイン酸修飾CeOナノ粒子の熱重量分析結果を示したグラフである。
【図2】例8のデカン酸修飾CeOナノ粒子の溶媒中の分散性を評価した結果を示した写真である。
【図3】例9のCeOナノ粒子を用いる場合と用いない場合のアスファルテンの転化率を示したグラフである。
【図4】例9のCrドープCeOナノ粒子のCrドープ量とアスファルテンの転化率の関係を示したグラフである。
【図5】例9の各Crドープ量のCrドープCeOナノ粒子を用いたアスファルテンの分解反応後の反応液の写真である。
【図6】例10のCeOナノ粒子を用いる場合と用いない場合のリグニンの分解反応後の生成物の分析結果を示したグラフである。
【図7】例10のCeOナノ粒子を用いる場合と用いない場合のリグニンの分解反応後の芳香族生成量の分析結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[分解性高分子材料]
本発明の分解性高分子材料は、高分子に、当該高分子の分解反応に対する触媒活性を有するナノ触媒が分散されている材料である。

【0012】
本発明において、高分子とは、ポリマー、オリゴマー他、分子量が100以上の有機化合物を意味する。
高分子としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。具体的には、ヘキサデカン等の炭化水素、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂等を例示できる。分解性高分子材料に含有される高分子は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。

【0013】
本発明の好ましい実施形態においては、ナノ触媒は、高分子の分解反応に対する触媒活性を有する、平均粒子径が1μm未満のナノ粒子を含む触媒である。ナノ触媒の触媒活性によって反応を促進する高分子の分解反応は、特に限定されず、例えば、熱分解、部分酸化分解、水熱分解(水蒸気分解)、加水分解を例示できる。分解性高分子材料に含有されるナノ触媒は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。

【0014】
ナノ触媒は平均粒子径が1μm以上の触媒粒子に比べて高分子との接触効率が高くなるため、少量でも高い触媒効率が得られやすい。例えば、高分子中に5nmのナノ粒子を0.1体積%で均一に分散している場合、ナノ粒子間の平均距離は50nmであり、高分子の大きさと同程度となるため、高分子との接触効率が極めて高くなる。そのため、高分子にナノ触媒を分散させることで、ナノ触媒の含有量を低くして製品の物性や機能の低下を抑制しつつ、高い触媒機能を発現させることができる。

【0015】
ナノ触媒を構成するナノ粒子としては、金属酸化物ナノ粒子を例示できる。
金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属としては、ナノ粒子を製造できるものであればよく、長周期型周期表で第IIIB族のホウ素(B)-第IVB族のケイ素(Si)-第VB族のヒ素(As)-第VIB族のテルル(Te)の線を境界としてその線上にある元素並びにその境界より、長周期型周期表において左側ないし下側にあるものを例示できる。具体的には、第VIII族の元素ではFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等、第IB族の元素ではCu、Ag、Au等、第IIB族の元素ではZn、Cd、Hg等、第IIIB族の元素ではB、Al、Ga、In、Tl等、第IVB族の元素ではSi、Ge、Sn、Pb等、第VB族の元素ではAs、Sb、Bi等、第VIB族の元素ではTe、Po等、そして第IA~VIIA族の元素等を例示できる。

【0016】
金属酸化物の具体例としては、SiO、TiO、ZnO、SnO、Al、MnO、NiO、Eu、Y、Nb、InO、ZnO、Fe、Fe、Co、ZrO、CeO、BaO・6Fe、Al(Y+Tb)12、BaTiO、LiCoO、LiMn、KO・6TiO、AlOOHを例示できる。
特に、固体電解質燃料電池で使用される、V、CoO、LSM-35、LSF、LSCF、Gd-CeO、LaGaO、Co、Fe、In、Mn、SCZ、MoO等や、ペロブスカイト構造の物質は良い。これは、高分子分解に用いられるHOとの分解反応が、燃料電池の反応の逆反応であり、固体上で生じる反応としては同じであるためである。
本反応の一例:MO( )+HO = MO(O)+H
燃料電池:H+MO(O) = MO( )+H
その他、酸素移動を伴う触媒反応は同様に有効である。

【0017】
本発明の好ましい実施形態においては、ナノ触媒として、金属酸化物ナノ粒子のなかでも、CeOナノ粒子が用いられる。CeOナノ粒子は、(111)面を主な露出面として有する八面体、又は(100)面を主な露出面として有する立方体の形態をとる。CeOの(100)面は不安定であり、それによってより高い触媒活性が得られる。

【0018】
金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましく、10nm以下が特に好ましい。金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径の下限は特に限定されず、実質的には2nm以上である。
なお、金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)により測定される値である。

【0019】
金属酸化物ナノ粒子の酸素吸蔵放出能(OSC)は、反応温度において、10μmol/g以上が好ましく、15μmol/g以上がより好ましく、20μmol/g以上がさらに好ましい。金属酸化物ナノ粒子のOSCが前記下限値以上であれば、触媒としての活性化機能の発現をより期待できる。

【0020】
なお、金属酸化物ナノ粒子のOSCは、金属酸化物ナノ粒子1gあたりの酸素モル数であり、以下の方法1又は方法2で測定される。
(方法1)
ガス吸着装置を用い、試料を測定セルにセットし、次いで所定の2次圧(常圧、あるいは1気圧以上3気圧以下程度)でHeガスを導入しながら試料を反応温度、すなわち250℃~500℃の温度まで昇温する。次に、HeガスにOガス5%を混合したO5%ガス/He95%混合ガス(キャリアガス)を導入し、このキャリアガス中にCO4%ガス/He96%混合ガスをパルスで導入し、MS(Mass Spectrometry:質量分析法)で分析する。試料がOを吸収するとキャリアガス中のO量は減少する。減少が無くなるまでパルス導入を繰り返し行い、Oガスの減少量の総和から試料1gあたりの酸素モル数を求めてOSCとする。

【0021】
(方法2)
(1)500℃にて測定系内にHeガスを流す。
(2)500℃にて測定系内にOガスを流し、試料に十分量吸着させる。
(3)500℃にて測定系内にHeガスを流す。
(4)500℃にて測定系内にHガスを流し、試料を還元し吸着Oを取り除く。
(5)500℃にて測定系内にHeガスを流す。
(6)反応温度すなわち検出温度、例えば350℃にて測定系内にHeガスを流す(ここまでが前処理である。)
(7)検出温度(350℃)にて、Heガスをキャリアガスとして、Oガスをパルスで測定系内に流す。
(8)流したパルスのOガスが検出器によって検出されなくなるまで、Oガスをパルスで測定系内に流す。
(9)Oガスの全流出量から全検出量を引いた値が、Oガスの全吸着量(cm)として見積もられる。
(10)上記(9)で求めたOガスの全吸着量(cm)と試料の仕込み量(g)からOガスの単位吸着量(cm/g)を算出し、試料1gあたりの酸素モル数を求めてOSCとする。

【0022】
金属酸化物ナノ粒子としては、粒子表面の30%以上に活性面が露出している金属酸化物ナノ粒子が好ましい。なお、活性面とは、エネルギー的に最も不安定な面であり、CeOでは(100)面である。
金属酸化物ナノ粒子としては、粒子表面の30%以上に(100)面が露出しているCeOナノ粒子がより好ましい。触媒を用いた高分子の熱分解や水蒸気分解は、一般に600℃以上の高温場で反応させるため、炭化物が生じたり、フィラーが損傷したりすることが多い。しかし、表面の30%以上に(100)面が露出したCeOナノ粒子を用いることで、400℃以下でも速やかに高分子を分解できるため、炭化物が生じたり、フィラーが損傷したりすることを抑制できる。

【0023】
CeOナノ粒子の表面における(100)面が露出している割合は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
なお、CeOナノ粒子の表面における(100)面が露出している割合は、TEMにより測定される。

【0024】
CeOナノ粒子には、触媒活性に優れる点から、遷移元素がドープされていることが好ましい。CeOナノ粒子にドープされる遷移元素としては、Cr、Gd、Zr等を例示できる。なかでも、Cr、Gdが好ましい。
CeOナノ粒子における遷移元素のドープ量は、CeOの総質量に対して、0.1mol%以上が好ましく、4mol%以上がより好ましい。遷移元素のドープ量は、多ければ多いほどよいが、ドープであるには50mol%までである。

【0025】
本発明の好ましい実施形態においては、ナノ触媒として、金属酸化物ナノ粒子の表面に有機分子が結合された有機修飾ナノ粒子が用いられる。かかる有機修飾ナノ粒子としては、CeOナノ粒子の表面に有機分子が結合された有機修飾ナノ粒子がより好ましい。ナノ粒子は一般的に表面エネルギーが高く、高分子中で凝集しやすいが、ナノ触媒を有機修飾ナノ粒子とすることで高分子中に均一に分散させることが容易になり、高分子の分解効率がより高くなる。

【0026】
有機修飾ナノ粒子としては、分解性高分子材料中で有機分子が容易に脱離して金属酸化物ナノ粒子が凝集したり、分解性高分子材料を用いた製品が劣化したりすることを抑制するため、高分子を熱分解させる前までは有機分子が強固に結合し、金属酸化物ナノ粒子の表面全体が被覆されて触媒機能が発現しないことが好ましい。また、高分子を分解させるときには、有機分子が金属酸化物ナノ粒子の表面から速やかに脱離して触媒機能が発現することが好ましい。

【0027】
有機修飾ナノ粒子からの有機分子の脱離は、熱重量分析における重量減少によって観測できる。有機修飾ナノ粒子は、熱重量分析において、150℃未満では有機分子の脱離による重量減少が見られないことが好ましい。これにより、分解性高分子材料中で有機分子が容易に脱離してナノ粒子が凝集したり、分解性高分子材料を用いた製品の使用時に予期せず触媒機能が発現して製品が劣化したりすることを抑制しやすい。

【0028】
有機修飾ナノ粒子の熱重量分析における有機分子が脱離する温度は、150~400℃が好ましく、150~350℃がより好ましく、200~350℃がさらに好ましい。有機分子が脱離する温度が前記範囲の下限値以上であれば、分解性高分子材料中のナノ粒子の凝集や、分解性高分子材料を用いた製品の劣化を抑制しやすい。有機分子が脱離する温度が前記範囲の上限値以下であれば、リサイクル時やバインダーの除去時等の高分子の分解のタイミングで有機分子を脱離させ、触媒機能を発現させることが容易になる。
なお、有機分子が脱離する温度は、熱重量分析により測定される熱重量曲線における、有機分子の脱離による重量減少の開始温度とする。

【0029】
有機修飾ナノ粒子における有機分子(有機修飾剤)としては、金属酸化物ナノ粒子の表面に炭化水素を結合できるものであればよく、高分子の種類に応じて選択できる。
有機分子としては、例えば、エーテル結合、エステル結合、N原子を介した結合、S原子を介した結合、金属-C-の結合、金属-C=の結合、及び金属-(C=O)-の結合等を形成できるものを例示できる。

【0030】
ナノ粒子表面に結合させる炭化水素の炭素数は、特に限定されないが、3~20が好ましい。炭化水素は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。また、炭化水素は、カルボキシ基、シアノ基等の置換基を1個以上有してもよい。

【0031】
有機分子としては、例えば、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、エステル類、アミン類、チオール類、アミド類、オキシム類、ホスゲン、エナミン類、アミノ酸類、ペプチド類、糖類を例示できる。
具体的には、例えば、ペンタノール、ペンタナール、ペンタン酸、ペンタンアミド、ペンタンチオール、ヘキサノール、ヘキサナール、ヘキサン酸、ヘキサンアミド、ヘキサンチオール、ヘプタノール、ヘプタナール、ヘプタン酸、ヘプタンアミド、ヘプタンチオール、オクタノール、オクタナール、オクタン酸、オクタンアミド、オクタンチオール、デカノール、デカナール、デカン酸、デカンアミド、デカンチオールを例示できる。
有機修飾ナノ粒子における有機分子は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。

【0032】
高分子の溶解度パラメータと、有機修飾ナノ粒子における有機分子(有機修飾剤)の溶解度パラメータの差は、0~10[J/cm1/2が好ましく、0~5[J/cm1/2がより好ましい。溶解度パラメータの差が前記上限値以下であれば、有機修飾ナノ粒子が高分子中に均一に分散しやすく、高分子の分解効率がより高くなる。
なお、溶解度パラメータは、下記式で表されるように、凝集エネルギー密度の平方根で定義される値である。
σ=(△E/V)1/2
前記式中、Vは溶媒のモル分子容、△Eは凝集エネルギー(蒸発潜熱エネルギー)である。

【0033】
有機修飾ナノ粒子の製造方法としては、公知の方法を採用でき、超臨界水・亜臨界水を反応場として金属酸化物ナノ粒子の表面に有機分子を結合する超臨界水中有機修飾法が好ましい。超(亜)臨界水は、温度条件が250~500℃、圧力条件が10~30MPaであることが好ましい。

【0034】
有機分子をナノ粒子に物理吸着させた場合、有機分子が容易に脱離しやすく、ナノ粒子が凝集したり、分解性高分子材料を用いた製品が劣化したりする問題が生じやすい。一方、シランカップリング剤を用いて有機分子をナノ粒子の表面に結合させると、ナノ粒子表面にシリカ層が形成されるため、有機分子を分解除去できたとしても触媒機能が発現しない。
超臨界水中有機修飾法によれば、150℃未満では有機分子が容易に脱離せずに触媒機能の発現が抑制され、400℃までの加熱で有機分子が脱離して触媒機能が発現する有機修飾ナノ粒子が得られる。ナノ触媒としてこの有機修飾ナノ粒子を用いた分解性高分子材料をハイブリッド材料や無機成型材料に用いれば、リサイクルあるいはバインダー除去のプロセスにおいて、昇温中に有機分子を脱離させて触媒機能を発現させることができる。

【0035】
分解性高分子材料中のナノ触媒の含有量は、分解性高分子材料の総質量に対して、15質量%以下が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、5~12質量%がさらに好ましい。ナノ触媒の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、高分子の分解効率、即ち、高分子のリサイクル効率が高くなり、また上限値以下であれば、余剰のナノ触媒がリサイクルされる高分子に混入するなどの問題を抑制しやすい。

【0036】
以上説明した本発明の分解性高分子材料は、ナノ触媒を高分子に分散させるため、触媒量が少量でも高分子を効率良く分解することができる。
本発明の分解性高分子材料は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、高分子及びナノ触媒以外の他の成分を含んでもよい。

【0037】
[ハイブリッド材料]
本発明の分解性高分子材料は、無機フィラーと組み合わせることで、リサイクル可能なハイブリッド材料とすることができる。すなわち、本発明のハイブリッド材料は、無機フィラーとバインダーとを含有するハイブリッド材料であって、バインダーが本発明の分解性高分子材料である。ハイブリッド材料の用途としては、特に限定されず、例えば、軽量航空機材料、エコタイヤ等を例示できる。
本発明のハイブリッド材料を公知の方法で加熱及び成型することでハイブリッド成型物が得られる。

【0038】
ハイブリッド材料における無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、炭化珪素等の無機粉末や、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維を例示できる。

【0039】
ハイブリッド材料中の無機フィラーの含有量は、用途に応じて適宜設定でき、例えば、ハイブリッド材料の総質量に対して、70~90質量%とすることができる。
ハイブリッド材料中の高分子の含有量は、用途に応じて適宜設定でき、例えば、ハイブリッド材料の総質量に対して、20~80質量%とすることができる。

【0040】
ハイブリッド材料中のナノ触媒の含有量は、高分子100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、1~15質量部がより好ましく、5~12質量部がさらに好ましい。ナノ触媒の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、高分子の分解効率、即ち、高分子のリサイクル効率が高くなり、また上限値以下であれば、ハイブリッド材料を用いた製品の物性や機能の低下を抑制しやすい。

【0041】
本発明のハイブリッド材料は、ナノ触媒を含むため、新たに触媒を添加しなくても、効率良く高分子を分解して高分子又は無機フィラーをリサイクルできる。また、触媒量が少量でも高分子の分解効率が高いナノ触媒を用いるため、触媒量が過度にならずハイブリッド材料の物性や機能の低下を抑制することができる。また、無機フィラーの大きさは一般的には数μmであるため、高分子の分解後に無機フィラーを触媒から分離して回収することが容易である。

【0042】
[無機成型材料]
本発明の分解性高分子材料は、無機成型材料のバインダーとしても使用できる。本発明の無機成型材料は、無機材料と、バインダーとを含有し、バインダーが本発明の分解性高分子材料である無機成型材料である。本発明の無機成型材料を成型した無機成型物は、セラミクス成型物であってもよく、金属粉末成型物であってもよく、或いは、金属セラミクス複合成型物であってもよい。

【0043】
無機成型材料における無機材料としては、セラミクス粉末、金属粉末、又は、セラミクス粉末及び金属粉末の混合物が挙げられる。
セラミクス粉末としては、例えば、ガラス、アルミナ、シリカ、タルク、カオリン、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミナ、ジルコニア、チタニア、VO、V、YSZ、YAG、LSM、LSR、ITO、SCZ、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ランタンガレート、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、サイアロン等の粉末を例示できる。
金属粉末としては、例えば、ニッケル、銅、鉄、ネオジウム鉄ボロン等の粉末を例示できる。

【0044】
無機成型材料中の高分子の含有量は、適宜設定でき、例えば、無機材料100質量部に対して、5~10質量部とすることができる。

【0045】
無機成型材料中のナノ触媒の含有量は、高分子100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、1~15質量部がより好ましく、5~12質量部がさらに好ましい。ナノ触媒の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、高分子の分解効率が充分に高くなり、無機成型物中にバインダーが残存することを抑制しやすく、また上限値以下であれば、無機成型物の物性や機能の低下を抑制しやすい。

【0046】
本発明の無機成型材料を用いて無機成型物を製造する方法は、例えば、以下の工程(a)~(c)を有する方法が挙げられる。
(a)本発明の無機成型材料を成型して粉体成型物を得る。
(b)前記粉体成型物を焼成し、高分子を熱分解して除去する。
(c)高分子を除去した粉体成型物を焼成し、無機成型物を得る。

【0047】
工程(a)では、公知のプレス機械、ドクターブレード、リバースコーター等を用いて、無機成型材料を所望の形状に成型して粉体成型物を得る。粉体成型物の形状は、無機成型物の用途に応じて決定すればよい。

【0048】
工程(b)では、粉体成型物を焼成し、ナノ触媒による触媒機能を利用して高分子を熱分解(熱、水熱、水蒸気、(部分)酸化、加水分解等)する。ナノ触媒が有機修飾ナノ粒子の場合、工程(b)の焼成時の加熱によって有機修飾ナノ粒子の有機分子を脱離させて触媒機能を発現させる。

【0049】
工程(b)の焼成は、高分子分解と紛体焼成の多段階焼成から成り、あるいは昇温中に高分子を分解させる過程と紛体焼成から成る。高分子分解温度は、ナノ触媒の種類に応じて設定でき、200~400℃が好ましく、250~350℃がより好ましい。
ナノ触媒として、(100)面が露出したCeOナノ粒子を用いれば、400℃以下でも高分子を効率良く分解して除去できる。そのため、高分子の炭化物が無機成型物に残留しにくくなるため、無機成型物の物性及び機能の低下を抑制する効果がより高くなる。

【0050】
工程(b)の後、高分子を除去した粉体成型物を焼成して無機成型物とする。

【0051】
本発明の無機成型材料は、少量でも高分子の分解効率が高いナノ触媒を含むため、高分子の炭化物が無機成型物に残留しにくく、無機成型物の物性及び機能の低下を抑制できる。

【0052】
[高分子除去又は回収方法]
本発明の高分子除去又は回収方法は、高分子と、当該高分子の分解反応に対する触媒活性を有するナノ触媒とを含有する成型物を、水熱分解処理する、高分子除去又は回収方法である。

【0053】
本発明の高分子除去又は回収方法の好ましい実施形態においては、用いるナノ触媒としては、先に述べた製造法により得られる、先に述べた特性を有するナノ触媒が適する。

【0054】
本発明の高分子除去又は回収方法の好ましい実施形態においては、高分子100質量部に対してナノ触媒を15質量部以下添加する。また、前記ナノ触媒を分散させた前記高分子を150~400℃で水熱分解処理する。

【0055】
本発明の高分子除去又は回収方法によれば、高分子の分解効率が高められる結果、高分子除去率又は回収率が向上し、且つ比較的低温での処理で済むため、炭化物の生成を抑制できる。

【0056】
以上説明したように、本発明では、高分子の分解反応に対する触媒活性を有するナノ触媒が高分子に分散された分解性高分子材料を用いる。少量の触媒量でも効率良く高分子を分解できるナノ触媒を分散させることで、触媒量が多くなりすぎることによる製品の物性や機能の低下を抑制できる。
また、ナノ触媒として、(100)面が露出したCeOナノ粒子を用いることで、400℃以下でも高分子を効率良く分解できる。400℃以下で高分子を熱分解して高分子や無機フィラーをリサイクルできれば、リサイクル時に、回収するモノマーやオリゴマー、無機フィラー等に多大なダメージが加わることを抑制できる。また廃熱を利用したプロセスも可能となり省エネルギーの点でも有利である。

【0057】
さらに、ナノ触媒として有機修飾ナノ粒子を用いれば、高分子中にナノ触媒を均一に分散させやすく、高分子の分解効率がさらに高くなるうえ、高分子を熱分解したいときまでは触媒機能の発現を抑制できるため、製品の劣化を容易に抑制できる。また、有機修飾ナノ粒子の有機分子が脱離する温度が前記した特定の温度範囲に制御されていれば、リサイクル時やバインダー除去時等の所望のタイミングで触媒機能を発現させることができる。

【0058】
なお、本発明の分解性高分子材料を用いる態様は、前記したハイブリッド材料や無機成型材料に用いる態様には限定されず、分解性高分子材料単独で樹脂成型物を製造するためのリサイクル可能な材料として用いてもよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[水熱分解後の分析]
各例の水熱分解後の生成物の分析は、ガスクロマトグラフィーを用い、必要に応じてMSによる成分の同定を組み合わせて行った。
高分子の水熱分解の転化率は、水熱分解前後の高分子の質量から算出した。
【実施例】
【0060】
[例1]
高分子であるポリビニルブチラール((C14:142g/mol per n)0.142gに、ナノ触媒として粒子表面の80%に(100)面が露出した立方体のCeOナノ粒子(ITEC製、後焼成:300℃、2時間、平均粒子径:5nm)10mgを分散させ、これをバインダーとしてシリカ(関東試薬製、粒子径:40~60μm)1gと混合して試験材料とした。この場合のポリビニルブチラール100質量部に対するCeOナノ粒子の量は約7.0質量部である。得られた試験材料に対し、400℃、30MPaの条件で30分間水蒸気熱分解を行った。水蒸気熱分解においては、0.5gの水蒸気を供給した。また、反応時間を60分間とした場合についても、同様に水蒸気熱分解を行った。
また、ナノ触媒を配合しない以外は、同様にして比較材料を製造し、水蒸気熱分解を行った。
水蒸気熱分解の転化率、及び生成物の分析結果を表1に示す。
【実施例】
【0061】
【表1】
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【実施例】
【0062】
[例2]
高分子としてポリビニルアルコール((CO):44g/mol per n)0.176gを用いた以外は、例1と同様にして試験材料を製造し、水蒸気熱分解を行った。この場合のポリビニルアルコール100質量部に対するCeOナノ粒子の量は約5.7質量部である。
水蒸気熱分解の転化率、及び生成物の分析結果を表2に示す。
【実施例】
【0063】
【表2】
JP2020015789A_000003t.gif
【実施例】
【0064】
[例3]
高分子としてヘキサデカン0.085gを用い、ナノ触媒としてCrを30%ドープしたCeOナノ粒子(後焼成:300℃、2時間、平均粒子径:5nm)10mgを用いる以外は、例1と同様にして試験材料を製造し、水蒸気熱分解を行った。この場合のCeOナノ粒子の量は、ヘキサデカン100質量部に対し約11.8質量部である。
水蒸気熱分解の転化率、及び生成物の分析結果を表3に示す。
【実施例】
【0065】
【表3】
JP2020015789A_000004t.gif
【実施例】
【0066】
[例4]
高分子として低密度ポリエチレン(LDPE、(C:28g/mol per n)0.168gを用いた以外は、例1と同様にして試験材料を製造し、水蒸気熱分解を行った。この場合のCeOナノ粒子の量は、低密度ポリエチレン100質量部に対し約6.0質量部である。
水蒸気熱分解の転化率、及び生成物の分析結果を表4に示す。
【実施例】
【0067】
【表4】
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【実施例】
【0068】
[例5]
高分子としてポリプロピレン((C:42g/mol per n)0.176gを用いた以外は、例1と同様にして試験材料を製造し、水蒸気熱分解を行った。この場合のCeOナノ粒子の量は、ポリプロピレン100質量部に対し約5.7質量部である。
水蒸気熱分解の転化率、及び生成物の分析結果を表5に示す。
【実施例】
【0069】
【表5】
JP2020015789A_000006t.gif
【実施例】
【0070】
表1~5に示すように、例1~5において、ナノ触媒を含む試験材料は、水蒸気熱分解によって高分子が効率良く分解された。
【実施例】
【0071】
[熱重量分析(TGA)]
有機修飾ナノ粒子の熱重量分析は、TGAを用い、窒素雰囲気中で行った。
【実施例】
【0072】
[分散性の評価]
有機修飾ナノ粒子の高分子への分散性の評価は、材料の透明性評価により行った。
【実施例】
【0073】
[例6]
有機修飾ナノ粒子として、粒子表面の80%に(100)面が露出したデカン酸修飾CeOナノ粒子(立方体、ITEC製、平均粒子径:5nm)を用いた。
得られた有機修飾ナノ粒子の熱重量分析の結果、有機分子が脱離する温度は300~400℃であった。また、得られた有機修飾ナノ粒子は、高分子への分散性に優れていた。
【実施例】
【0074】
[例7]
超臨界水熱合成法により、400℃で合成した、オレイン酸修飾CeOナノ粒子(立方体)の熱重量分析結果を図1に示す。図1に示すように290℃から460℃で重量減少が生じた。つまり、高分子中へのナノ粒子を分散する過程、300℃以下の温度では、有機分子は安定に存在し、分散状態を保つことができる。しかし、300℃以上とすることで有機分子は脱離し、最も活性な面を露出させることで、触媒機能が発現する。
【実施例】
【0075】
[例8]
図2に、その樹脂中分散性を評価するために、デカン酸修飾CeOナノ粒子の、溶媒中分散性を評価した結果を示す。
デカン酸修飾CeOナノ粒子と親和性の高いシクロヘキサンには、含有量が63質量%まで透明分散し、70質量%で、ようやく分散せず凝集するため、濁った状態となった。一方、有機修飾してないCeOナノ粒子の場合、9.9質量%であっても、分散できていなかった。この結果は、有機修飾ナノ粒子の親和性を制御すれば、樹脂中に良好な分散を達成することが可能であることを示している。
【実施例】
【0076】
[例9]
高分子の一種であるアスファルテン(超重質油)の低温(300℃又は350℃)での分解実験を行った。触媒としては、超臨界水熱合成で合成した(100)面露出CeOナノ粒子と、CrドープCeOナノ粒子を用い、0.04質量%となるように添加した。(100)面露出CeOナノ粒子を用いる場合と用いない場合のアスファルテンの転化率を図3に示す。CrドープCeOナノ粒子のCrドープ量とアスファルテンの転化率の関係をプロットした結果を図4に示す。各Crドープ量のCrドープCeOナノ粒子を用い、350℃で水蒸気中で1時間分解した後の反応液の写真を図5に示す。なお、CrドープCeOナノ粒子のCrドープ量はX線回折(XRD)のメインピークシフトから解析した。
【実施例】
【0077】
図3に示すように、300℃、350℃という低温であっても、(100)面露出CeOナノ粒子を用いた場合(Catalytic cracking)は、触媒を用いない場合(Hydrothermal cracking)に比べて高い分解率を示した。
図4に示すように、CrドープCeOナノ粒子を用いた場合、アスファルテンの転化率は、Crドープ量が多くなるほど向上した。
図5に示すように、CrドープCeOナノ粒子を用いて350℃で水蒸気中で1時間分解した結果、アスファルテンは、コーキングを発生することなく、揮発しやすい透明な軽質油に変化した。
【実施例】
【0078】
[例10]
フェノール樹脂の一種である、リグニンを350℃で10分間、分解した結果を図6及び図7に示す。
図6に示すように、触媒を用いない場合、水存在下では、加水分解とともに、生成するアルデヒドによりフェノール骨格がフリーデルクラフツ反応を介して重合するため、チャーの生成が見られた。しかし、リグニン2gに対してCeOナノ粒子を200mg加えると、チャーの生成は抑制され、ガス生成が増大した。また、図7に示すように、モノマーであるグアイアコール等の回収率も増大した。モノマーリサイクルが可能であることが示された。
【実施例】
【0079】
[例11]
高分子であるポリビニルブチラール0.142gに、(100)面露出CeOナノ粒子10mgを分散させ、これをバインダーとして、粒子径40~60μmのシリカ1gと混合して試験材料を製造した。この場合のCeOナノ粒子の量は、ポリビニルブチラール100質量部に対し約7.0質量部である。
得られた試験材料に対し、250℃、3.56MPaの条件で30分間水蒸気熱分解を行った。水蒸気熱分解においては、0.5gの水蒸気を供給した。また、反応時間を60分間とした場合についても、同様に水蒸気熱分解を行った。
また、ナノ触媒を配合しない以外は、同様にして比較材料を製造し、水蒸気熱分解を行った。
水蒸気熱分解の転化率、及び生成物の分析結果を表6に示す。
【実施例】
【0080】
【表6】
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【実施例】
【0081】
表6に示すように、例11において、ナノ触媒を含む試験材料は、低温でも高分子が効率良く分解された。
【実施例】
【0082】
例1~例5及び例11では、高分子材料はいずれもセラミクスであるシリカに対するバインダーとして使用されているものであるが、いずれの場合も、ナノ触媒の触媒機能はシリカの存在に影響を受けるものではない。これは、金属粉末等、他の無機物の存在下においても同様である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6