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明細書 :実質的に面心立方構造を有するルテニウム微粒子およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5657805号 (P5657805)
登録日 平成26年12月5日(2014.12.5)
発行日 平成27年1月21日(2015.1.21)
発明の名称または考案の名称 実質的に面心立方構造を有するルテニウム微粒子およびその製造方法
国際特許分類 B22F   1/00        (2006.01)
B01J  23/46        (2006.01)
B01J  37/16        (2006.01)
B22F   9/24        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI B22F 1/00 K
B01J 23/46 301M
B01J 37/16
B22F 9/24 E
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2013-533507 (P2013-533507)
出願日 平成24年9月13日(2012.9.13)
国際出願番号 PCT/JP2012/005838
国際公開番号 WO2013/038674
国際公開日 平成25年3月21日(2013.3.21)
優先権出願番号 2011202735
優先日 平成23年9月16日(2011.9.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2014-010978(P2014-010978/J1)
審査請求日 平成25年11月1日(2013.11.1)
審判請求日 平成26年6月11日(2014.6.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】北川 宏
【氏名】草田 康平
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審理対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100107641、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 耕一
参考文献・文献 特開2012-182053(JP,A)
特開2007-308754(JP,A)
特開2003-178764(JP,A)
特開2007-213890(JP,A)
特許請求の範囲 【請求項1】
実質的に面心立方構造を有するルテニウム微粒子群。
【請求項2】
前記ルテニウム微粒子の平均粒径が2nm以上である、請求項1に記載のルテニウム微粒子群。
【請求項3】
前記ルテニウム微粒子の平均粒径が2.6nm以上である、請求項に記載のルテニウム微粒子群。
【請求項4】
請求項1に記載のルテニウム微粒子群を用いた一酸化炭素の酸化触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に面心立方構造を有するルテニウム微粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶液中で金属化合物を還元して金属微粒子を製造する方法が提案されている。そして、ルテニウムの微粒子を製造する方法も提案されている(非特許文献1)。
【0003】
非特許文献1では、粒径が2.1~6.0nmのルテニウム微粒子が製造されている。非特許文献1では、還元剤を兼ねる溶媒として、エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールが用いられている。2.1~3.1nmの微粒子は、エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールを用いた1段階の還元工程で調製されている。一方、3.8~6.0nmの微粒子は、3.1nmのルテニウム微粒子を核とした2段階の工程で調製されている。その3.8~6.0nmの微粒子は、1,4-ブタンジオールを用いて調製されている。非特許文献1には、ルテニウム微粒子の粒径が小さいときにはhcp構造(六方最密充填構造)をとり、粒径が大きくなるとfcc構造(面心立方構造)とhcp構造との混合相となることが記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Nano Letters(ナノレターズ), vol. 10, pp.2709-2713, 2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、実質的にfcc構造のみからなるルテニウム微粒子は報告されていない。本発明は、実質的にfcc構造のみからなるルテニウム微粒子、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のルテニウム微粒子は、実質的に面心立方構造を有するルテニウム微粒子である。このルテニウム微粒子は、一酸化炭素の酸化触媒として用いることができる。
【0007】
また、本発明の製造方法は、実質的に面心立方構造を有するルテニウム微粒子の製造方法であって、ルテニウム(III)アセチルアセトナートとポリビニルピロリドンとトリエチレングリコールとを含む溶液を180℃以上の温度に保持する工程(i)を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実質的にfcc構造からなるルテニウム微粒子が得られる。特に、本発明の好ましい一例によれば、実質的にfcc構造からなるルテニウム微粒子を1段階の還元工程で得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1におけるルテニウム微粒子の製造工程を模式的に示す。
【図2】図2Aは、実施例1のルテニウム微粒子のX線回折パターンを示す。図2Bは、実施例1のルテニウム微粒子の電子顕微鏡像を示す。
【図3】図3は、実施例1のルテニウム微粒子のX線回折パターンと、fcc成分のX線回折パターンの計算結果とを示す。
【図4】図4Aは、実施例2のルテニウム微粒子のX線回折パターンと、fcc成分のX線回折パターンの計算結果とを示す。図4Bは、実施例2のルテニウム微粒子の電子顕微鏡像を示す。
【図5】図5Aは、実施例3のルテニウム微粒子のX線回折パターンと、fcc成分のX線回折パターンの計算結果とを示す。図5Bは、実施例3のルテニウム微粒子の電子顕微鏡像を示す図である。
【図6】図6Aは、実施例4のルテニウム微粒子のX線回折パターンと、fcc成分のX線回折パターンの計算結果とを示す。図6Bは、実施例4のルテニウム微粒子の電子顕微鏡像を示す図である。
【図7】図7Aは、実施例5のルテニウム微粒子のX線回折パターンと、fcc成分のX線回折パターンの計算結果とを示す。図7Bは、実施例5のルテニウム微粒子の電子顕微鏡像を示す図である。
【図8】図8Aは、実施例6のルテニウム微粒子のX線回折パターンと、fcc成分のX線回折パターンの計算結果とを示す。図8Bは、実施例6のルテニウム微粒子の電子顕微鏡像を示す図である。
【図9】図9Aは、比較例1のルテニウム微粒子のX線回折パターンを示す。図9Bは、比較例1のルテニウム微粒子の電子顕微鏡像を示す。
【図10】図10は、実施例7および比較例2のルテニウム微粒子のX線回折パターンを示す。
【図11】図11は、hcp構造を有するルテニウム微粒子のX線回折パターンおよびその計算結果を示す。
【図12】図12は、実施例4のルテニウム微粒子およびhcp構造を有するルテニウム微粒子について、CO酸化活性と温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。

【0011】
[ルテニウム微粒子の製造方法]
本発明の製造方法は、実質的に面心立方構造を有するルテニウム微粒子の製造方法である。ここで、「実質的に面心立方構造を有する」とは、X線回折測定で得られたX線回折パターンが、空間群Fm-3mを有する面心立方格子のみによってフィッティングできることを意味する。別の観点では、本発明のルテニウム微粒子は、X線回折測定で、面心立方構造以外の構造が実質的に観測されない微粒子である。本発明のルテニウム微粒子の好ましい一例は、面心立方構造のみからなる。以下では、面心立方構造を「fcc構造」という場合があり、六方最密充填構造を「hcp構造」という場合がある。

【0012】
本発明の製造方法は、ルテニウム(III)アセチルアセトナート(Ru(CHCOCHCOCH)とポリビニルピロリドンとトリエチレングリコールとを含む溶液を180℃以上の温度に保持する工程(工程(i))を含む。工程(i)において、ルテニウム化合物中のルテニウムが還元され、ルテニウム微粒子が生成する。以下では、ルテニウム(III)アセチルアセトナートとポリビニルピロリドンとトリエチレングリコールとを含む溶液を「有機溶液(S)」という場合がある。また、ルテニウム(III)アセチルアセトナートを「Ru(acac)」と略記する場合がある。

【0013】
工程(i)において、有機溶液(S)は180℃以上の温度に保持される。「180℃以上の温度」の例には、180℃~220℃の範囲の温度や、190℃~220℃の範囲の温度や、200℃~220℃の範囲の温度が含まれる。たとえば、工程(i)において、有機溶液(S)を180℃~220℃の範囲の温度に保持してもよい。

【0014】
工程(i)において、有機溶液(S)を180℃以上の温度に保持する時間は、温度にもよるが、1分~6時間の範囲としてもよく、たとえば5分~3時間の範囲としてもよい。

【0015】
ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」と記載する場合がある)を用いることによって、ルテニウム微粒子の凝集を防止できる。

【0016】
工程(i)における有機溶液(S)の温度や、当該温度を保持する時間、有機溶液(S)に含まれるPVPおよびRu(acac)の濃度は、後述する実施例1~7に示される範囲から選択してもよい。

【0017】
工程(i)の例として、第1の例および第2の例を以下に説明する。

【0018】
第1の例の工程(i)は、工程(a)および(b)を含む。工程(a)では、ポリビニルピロリドンとトリエチレングリコールとを含む第1の有機溶液と、ルテニウム(III)アセチルアセトナートを含む第2の有機溶液とを準備する。工程(b)では、180℃以上の温度(たとえば200℃~220℃の範囲の温度)に加熱した第1の有機溶液に、第2の有機溶液を噴霧する。通常、噴霧される第2の有機溶液の量は第1の有機溶液の量よりも少ないため、第2の有機溶液の温度を考慮する必要はない。しかし、必要に応じて、第2の有機溶液を加熱した状態で第1の有機溶液に噴霧してもよい。

【0019】
工程(b)において、第1の有機溶液と第2の有機溶液とを混合することによって、有機溶液(S)が調製される。上述したように、有機溶液(S)は、180℃以上の温度(たとえば200℃~220℃の範囲の温度)に一定時間保持される。

【0020】
工程(i)は、加熱された第1の溶液に第2の溶液を滴下する工程を含んでもよい。たとえば、工程(i)は、180℃以上の温度に加熱した第1の有機溶液に第2の有機溶液を滴下する工程を含んでもよい。

【0021】
第2の例の工程(i)は、ルテニウム(III)アセチルアセトナートとポリビニルピロリドンとトリエチレングリコールとを含む溶液(有機溶液(S))を準備する工程と、その有機溶液(S)を180℃以上の温度に加熱し、一定時間その温度に保持する工程とを含む。

【0022】
[ルテニウム微粒子]
本発明のルテニウム微粒子は、実質的にfcc構造を有する。本発明のルテニウム微粒子は、本発明の製造方法によって製造できる。

【0023】
本発明のルテニウム微粒子の平均粒径は、7nm以下や6nm以下や5nm以下であってもよく、たとえば、2nm~7nmの範囲や2nm~6nmの範囲や2.6nm~5.1nmの範囲にあってもよい。ここで、平均粒径は、透過型電子顕微鏡によって得られた粒子像から少なくとも100個以上の微粒子の粒径を計測し、その平均を求めることによって算出した値である。

【0024】
fcc構造を有する本発明のルテニウム微粒子は、様々な用途、たとえば、有機合成や燃料電池の電極などに用いられる触媒や、メモリ材料などに利用できる。fcc構造を有するルテニウム微粒子は、一酸化炭素(CO)の酸化活性が高い。一酸化炭素は、燃料電池の電極触媒の被毒を起こす原因となるため、一酸化炭素の酸化触媒は燃料電池の分野で特に重要である。
【実施例】
【0025】
以下では、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例で用いたRu(acac)は、和光純薬工業株式会社から入手した。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
実施例1では、本発明の製造方法でルテニウム微粒子を製造した一例について説明する。まず、トリエチレングリコール100mlにPVP1.0mmolを溶解することによって、第1の有機溶液を調製した。また、エタノール40mlにRu(acac)を溶解することによって、第2の有機溶液を調製した。第2の有機溶液中のRu(acac)の濃度は、2.5mM(mmol/l)とした。
【実施例】
【0027】
次に、第1の有機溶液を220℃に加熱した。そして、図1に示すように、その第1の有機溶液11に、第2の有機溶液12を霧吹きで噴霧した。得られた混合液を220℃で5分間保持した。その結果、平均粒径が4.6±1.1nmのルテニウム微粒子のコロイド溶液が得られた。ここで、「4.6nm」は平均粒径を示し、「±1.1nm」は標準偏差を示す(以下の平均粒径の表示についても同様である)。なお、平均粒径は上述した方法で測定した(以下も同様である)。
【実施例】
【0028】
得られたルテニウム微粒子について、X線回折測定および電子顕微鏡による観察を行った。X線回折測定は、ブルカーAXS社の装置(Bruker AXS、D8 ADVANCE)を用いて、室温で、λ=CuKαで行った。
【実施例】
【0029】
測定されたX線回折パターンを図2Aに示し、電子顕微鏡像を図2Bに示す。なお、参考のため、hcp構造を有するルテニウム微粒子のX線回折パターンも図2Aに示す。また、実施例1のルテニウム微粒子のX線回折パターンと、fcc成分のX線回折パターンの計算結果とを図3に示す。このX線回折パターンの計算結果は、ル・ベール法(Le Bail法)によって求めた(以下の計算結果も同様である)。図2Aおよび図3から、実施例1のルテニウム微粒子は、hcp構造ではなくfcc構造を有することが分かった。実施例1のルテニウム微粒子のX線回折パターンは、hcp構造の空間群P6/mmcでは適切なフィッティングが行えず、fcc構造の空間群であるFm-3mでのみ適切なフィッティングが行えた。
【実施例】
【0030】
(実施例2)
実施例2では、本発明の製造方法でルテニウム微粒子を製造した他の一例について説明する。まず、トリエチレングリコール100mlにPVP0.25mmolを溶解することによって、第1の有機溶液を調製した。また、エタノール10mlにRu(acac)を溶解することによって、第2の有機溶液を調製した。第2の有機溶液中のRu(acac)の濃度は、2.5mM(mmol/l)とした。
【実施例】
【0031】
次に、第1の有機溶液を200℃に加熱した。そして、図1に示すように、その第1の有機溶液11に、第2の有機溶液12を霧吹きで噴霧した。得られた混合液を200℃で10分間保持した。その結果、平均粒径が4.4±0.9nmのルテニウム微粒子のコロイド溶液が得られた。得られたルテニウム微粒子について、実施例1と同様の測定を行った。
【実施例】
【0032】
測定されたX線回折パターンを図4Aに示し、電子顕微鏡像を図4Bに示す。図4Aには、fcc成分のX線回折パターンの計算結果も示す。図4Aから、実施例2のルテニウム微粒子は、hcp構造ではなくfcc構造を有することが分かった。
【実施例】
【0033】
(実施例3)
実施例3では、本発明の製造方法でルテニウム微粒子を製造した他の一例について説明する。まず、トリエチレングリコール20ml、PVP0.05mmol、エタノール2ml、およびRu(acac)を混合することによって、有機溶液を調製した。有機溶液中のRu(acac)の濃度は、2.3mM(mmol/l)とした。
【実施例】
【0034】
次に、上記有機溶液を190℃に加熱し、190℃で3時間保持した。その結果、平均粒径が3.0±0.6nmのルテニウム微粒子のコロイド溶液が得られた。得られたルテニウム微粒子について、実施例1と同様の測定を行った。
【実施例】
【0035】
測定されたX線回折パターンを図5Aに示し、電子顕微鏡像を図5Bに示す。図5Aには、fcc成分のX線回折パターンの計算結果も示す。図5Aから、実施例3のルテニウム微粒子は、hcp構造ではなくfcc構造を有することが分かった。
【実施例】
【0036】
(実施例4)
実施例4では、本発明の製造方法でルテニウム微粒子を製造した他の一例について説明する。まず、トリエチレングリコール200mlと、PVP10.0mmolと、Ru(acac)のエタノール溶液とを混合することによって、有機溶液を調製した。Ru(acac)のエタノール溶液は、エタノール5mlに、2.0mmolのRu(acac)を溶解することによって調製した。
【実施例】
【0037】
次に、上記有機溶液を220℃で3時間還流した。すなわち、上記有機溶液を220℃で3時間保持した。その結果、平均粒径が2.6±0.8nmのルテニウム微粒子のコロイド溶液が得られた。得られたルテニウム微粒子について、実施例1と同様の測定を行った。
【実施例】
【0038】
測定されたX線回折パターンを図6Aに示し、電子顕微鏡像を図6Bに示す。図6Aには、fcc成分のX線回折パターンの計算結果も示す。図6Aから、実施例4のルテニウム微粒子は、hcp構造ではなくfcc構造を有することが分かった。
【実施例】
【0039】
(実施例5)
実施例5では、本発明の製造方法でルテニウム微粒子を製造した他の一例について説明する。まず、トリエチレングリコール50mlと、PVP1.0mmolと、Ru(acac)のエタノール溶液とを混合することによって、有機溶液を調製した。Ru(acac)のエタノール溶液は、エタノール5mlに、2.0mmolのRu(acac)を溶解することによって調製した。
【実施例】
【0040】
次に、上記有機溶液を220℃で3時間還流した。すなわち、上記有機溶液を220℃で3時間保持した。その結果、平均粒径が3.9±0.8nmのルテニウム微粒子のコロイド溶液が得られた。得られたルテニウム微粒子について、実施例1と同様の測定を行った。
【実施例】
【0041】
測定されたX線回折パターンを図7Aに示し、電子顕微鏡像を図7Bに示す。図7Aには、fcc成分のX線回折パターンの計算結果も示す。図7Aから、実施例5のルテニウム微粒子は、hcp構造ではなくfcc構造を有することが分かった。
【実施例】
【0042】
(実施例6)
実施例6では、本発明の製造方法でルテニウム微粒子を製造した他の一例について説明する。まず、PVP3.0mmolをトリエチレングリコール100mlに溶解することによって第1の有機溶液を調製した。また、エタノール80mlに、3.0mmolのRu(acac)を溶解することによって、第2の有機溶液を調製した。次に、220℃に加熱した第1の有機溶液に第2の有機溶液を添加し、得られた混合液を220℃で15分間保持した。その結果、平均粒径が5.1±1.4nmのルテニウム微粒子のコロイド溶液が得られた。得られたルテニウム微粒子について、実施例1と同様の測定を行った。
【実施例】
【0043】
測定されたX線回折パターンを図8Aに示し、電子顕微鏡像を図8Bに示す。図8Aには、fcc成分のX線回折パターンの計算結果も示す。図8Aから、実施例6のルテニウム微粒子は、hcp構造ではなくfcc構造を有することが分かった。
【実施例】
【0044】
(比較例1)
比較例1では、ルテニウム微粒子を製造した他の一例について説明する。まず、トリエチレングリコール100mlにPVP10.0mmolを溶解することによって、有機溶液を調製した。また、水40mlに塩化ルテニウム(III)水和物(RuCl・nHO)を溶解することによって、水溶液を調製した。水溶液中の塩化ルテニウム(III)水和物の濃度は、2.5mM(mmol/l)とした。
【実施例】
【0045】
次に、有機溶液を220℃に加熱した。そして、図1と同様に、有機溶液に、上記水溶液を霧吹きで噴霧した。得られた混合液を220℃で5分間保持した。その結果、平均粒径が5.6±1.6nmのルテニウム微粒子のコロイド溶液が得られた。得られたルテニウム微粒子について、実施例1と同様の測定を行った。
【実施例】
【0046】
測定されたX線回折パターンを図9Aに示し、電子顕微鏡像を図9Bに示す。図9Aには、ル・ベール法によって計算した、hcp成分のX線回折パターンの計算結果も示す。図9Aから、比較例1のルテニウム微粒子は、hcp構造を有することが分かった。
【実施例】
【0047】
(実施例7)
実施例7では、本発明の製造方法でルテニウム微粒子を製造した他の一例について説明する。まず、トリエチレングリコール20mlと、PVP1.0mmolと、Ru(acac)0.1mmolとを混合することによって、有機溶液を調製した。この有機溶液を、真空下において、80℃で20分間加熱した。この有機溶液を、次に、アルゴン雰囲気下において、180℃で2時間加熱した。このようにして、ルテニウム微粒子のコロイド溶液を得た。
【実施例】
【0048】
得られたルテニウム微粒子について、実施例1と同様にX線回折パターンを測定した。測定されたX線回折パターンを図10に示す。このX線回折パターンから、実施例7のルテニウム微粒子は、hcp構造ではなくfcc構造を有することが分かった。
【実施例】
【0049】
(比較例2)
比較例2では、ルテニウム微粒子を製造した他の一例について説明する。まず、エチレングリコール25mlにPVP5.0mmolを溶解することによって、第1の有機溶液を調製した。また、エチレングリコール40mlに1.0mmolのRu(acac)を溶解することによって、第2の有機溶液を調製した。
【実施例】
【0050】
次に、第1の有機溶液を190℃に加熱した。そして、加熱された第1の有機溶液に第2に有機溶液を滴下した。得られた混合液を、190℃で10分間保持した。このようにして、ルテニウム微粒子のコロイド溶液を得た。
【実施例】
【0051】
得られたルテニウム微粒子について、実施例1と同様にX線回折パターンを測定した。測定されたX線回折パターンを図10に示す。このX線回折パターンから、比較例2のルテニウム微粒子は、hcp構造を有することが分かった。
【実施例】
【0052】
以上のように、本発明の製造方法によって、実質的にfcc構造からなるルテニウム微粒子が得られた。本発明の製造方法では、1段階の還元工程で、実質的にfcc構造からなるルテニウム微粒子を得ることができる。この製造方法によれば、粒子全体が実質的にfcc構造を有するルテニウム微粒子を得ることが可能である。
【実施例】
【0053】
(CO酸化反応に対する触媒活性の評価)
実施例4で作製したfcc構造を有するルテニウム微粒子(平均粒径2.6±0.8nm)を、γ-アルミナ微粒子(担体)に担持させることによって、ルテニウムの担持量が1wt%である触媒微粒子を作製した。この触媒微粒子が分散された水分散液(1)の一部をピペットで採取し、これを精製水に投入して超音波処理した。このようにして、触媒微粒子の水分散液(2)を得た。
【実施例】
【0054】
次に、800℃で5時間予備焼成したγ-アルミナの粉体(触媒学会参照触媒JRC-ALO8)を上記水分散液(2)に添加し、得られた水分散液を、マグネットスターラーを用いて12時間撹拌した。次に、撹拌後の分散液をロータリーエバポレータに移し、減圧下で60℃に加熱することによって、粉体状になるまで乾燥させた。その後、得られた粉体を120℃の乾燥機内に8時間静置することによって、粉体から水分を除去した。次に、乾燥された粉体(触媒)を、乳鉢で充分に粉砕した後、1.2MPa、5分間の条件で一軸成形機によって円盤状に成形した。得られた成形体を破砕したのち篩にかけることによって、直径が180~250μmの触媒微粒子を得た。
【実施例】
【0055】
CO酸化活性の測定は、固定床流通式の反応装置を用いて行った。まず、ペレット状にした触媒150mgを石英製反応管(内径7mm)に充填することによって、触媒層を形成した。この反応管に、室温でHe/CO/Oの混合ガス(流量:He/CO/O=49/0.5/0.5ml・min-1)の供給を開始した後、触媒層を150℃に加熱した。触媒層の温度が150℃に到達してから30分後に反応管出口から排出ガスを採取し、排出ガスを、熱伝導型検出器付きのガスクロマトグラフを用いて分析した。分析終了後、触媒層の温度を5℃上昇させ、温度上昇から30分後に再度排出ガスの分析を行った。この操作を繰り返しながら、COの変換率(酸化率)が100%になるまで触媒層の温度を上昇させた。このようにして、CO酸化活性と温度との関係を測定した。
【実施例】
【0056】
また、hcp構造を有するルテニウム微粒子(平均粒径2.5±0.6nm)を準備し、上記と同様の方法で、CO酸化活性と温度との関係を測定した。hcp構造を有するルテニウム微粒子は、以下の方法で作製した。まず、トリエチレングリコール200ml、PVP10.0mmol、水5ml、およびRuCl・nHOを混合することによって、RuCl・nHOの溶液を調製した。この溶液中のRuCl・nHOの濃度は、9.5mM(mmol/l)とした。次に、上記溶液を180℃に加熱し、180℃で1時間保持した。その結果、平均粒径が2.5±0.6nmのルテニウム微粒子のコロイド溶液が得られた。このルテニウム微粒子について、実施例1と同様にX線回折パターンを測定した。測定されたX線回折パターンを図11に示す。図11には、hcp構造のみからなるルテニウム微粒子のX線回折パターンの計算結果も示す。図11に示すように、このルテニウム微粒子のX線回折パターンは、hcp構造のみによってフィッティングすることができた。
【実施例】
【0057】
CO酸化活性の評価結果を図12に示す。図12の縦軸は、COが酸化されてCOに変換された割合を示す。図12に示すように、hcp構造を有するルテニウム微粒子に比べて、fcc構造を有する実施例4のルテニウム微粒子はCO酸化活性が高かった。たとえば、COの酸化率が50%となる温度は、hcp構造を有するルテニウム微粒子では約195℃であったのに対し、実施例4のルテニウム微粒子では180℃以下(約175℃)であった。
【実施例】
【0058】
本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、クレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、fcc構造を有するルテニウム微粒子(ルテニウムナノ粒子)およびその製造方法に利用できる。fcc構造を有するルテニウム微粒子は、様々な用途、たとえば、有機合成や燃料電池の電極などに用いられる触媒や、メモリ材料などに利用できる。fcc構造を有するルテニウム微粒子は、hcp構造を有する既存のルテニウム微粒子に比べて、格段に高い特性を示す可能性がある。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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