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明細書 :高圧加工米および該高圧加工米を含む食品用または医薬用組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-030294 (P2019-030294A)
公開日 平成31年2月28日(2019.2.28)
発明の名称または考案の名称 高圧加工米および該高圧加工米を含む食品用または医薬用組成物
国際特許分類 A23L  33/00        (2016.01)
A23L   7/10        (2016.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61K  36/899       (2006.01)
FI A23L 33/00
A23L 7/10 A
A61P 29/00
A61P 3/10
A61K 36/899
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2018-150558 (P2018-150558)
出願日 平成30年8月9日(2018.8.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 「Effects of the high pressure processed rice intake during interval walking training on glycemic control and NFKB2 gene methylation in lifestyle-related disease patients(インターバル速歩トレーニング中の高圧加工米摂取が生活習慣病患者における血糖コントロールおよびNFKB2遺伝子のメチル化に及ぼす影響)」(プログラム番号:724.2)、Experimental Biology 2018、サンディエゴ コンベンション センター(アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92101、ウエスト ハーバー ドライブ 111)、平成30年(2018年)4月23日発表
優先権出願番号 2017154690
優先日 平成29年8月9日(2017.8.9)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】藤田 智之
【氏名】能勢 博
【氏名】増木 静江
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100102842、【弁理士】、【氏名又は名称】葛和 清司
審査請求 未請求
テーマコード 4B018
4B023
4C088
Fターム 4B018MD07
4B018MD15
4B018MD19
4B018MD23
4B018ME01
4B023LC09
4B023LE02
4B023LG01
4B023LG04
4B023LP05
4B023LQ01
4B023LT51
4C088AB74
4C088AC04
4C088CA02
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZB11
4C088ZC35
要約 【課題】本発明の課題は、汎用性を備えながら、血糖値の調節機能を有する食品素材を提供することにある。
【解決手段】本発明は、高圧加工米を原料として含む、慢性炎症を抑制するため、および/または、生活習慣病を治療、予防または改善するための、食品用または医薬用組成物であって、高圧加工米が、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である、前記組成物などに関する。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
高圧加工米を原料として含む、慢性炎症を抑制するため、および/または、生活習慣病を治療、予防または改善するための、食品用または医薬用組成物であって、
高圧加工米が、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である、前記組成物。
【請求項2】
水に浸漬された籾または玄米を加温する工程をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
高圧加工米を製粉した米粉を原料として含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
糠成分が、ポリフェノール類、チアミン、ナイアシン、遊離アミノ酸、γ-アミノ酪酸およびフィチン酸を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
生活習慣病が、糖尿病、高血圧または肥満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
中強度または高強度の負荷の運動と併用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
高圧加工米を原料として含む、慢性炎症を抑制し、中強度または高強度の負荷の運動による血糖値上昇抑制効果を増強するための、食品用または医薬用組成物であって、
高圧加工米が、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である、前記組成物。
【請求項8】
中強度または高強度の負荷の運動が、インターバル速歩トレーニングである、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である高圧加工米であって、慢性炎症を抑制するため、および/または、生活習慣病を治療、予防または改善するための、前記高圧加工米。
【請求項10】
請求項9に記載の高圧加工米を炊飯してなる、慢性炎症を抑制するため、および/または、生活習慣病を治療、予防または改善するための、米飯。
【請求項11】
慢性炎症を抑制し、中強度または高強度の負荷の運動による血糖値上昇抑制効果を増強するための高圧加工米であって、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である、前記高圧加工米。
【請求項12】
中強度または高強度の負荷の運動が、インターバル速歩トレーニングである、請求項11に記載の高圧加工米。
【請求項13】
請求項11または12に記載の高圧加工米を炊飯してなる、慢性炎症を抑制し、中強度または高強度の負荷の運動による血糖値上昇抑制効果を増強するための、米飯。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧加工技術により糠成分を糠から胚乳に浸透移行させた高圧加工米の新たな用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米に由来する材料や成分を用いて、血糖上昇の抑制や、糖尿病の予防や改善を試みた例が知られている。具体的には、例えば、発芽玄米に含有されるステロール配糖体に着目し、発芽玄米糠由来のステロール配糖体を有効成分とする血糖値上昇抑制剤(特許文献1)や、大豆タンパク質と米糠を発酵させた発酵物をプロテアーゼで処理したものを抗糖尿病組成物として利用すること(特許文献2)が検討されている。
【0003】
また、米を味噌懸濁液に浸漬し、次いで1000気圧以上の高圧処理を施し、その後に炊飯することにより、食後血糖上昇抑制効果の期待できる米飯を提供することが試みられている(特許文献3)。
しかし、これらの文献に記載の技術は、米に由来する成分を抽出、発酵するものであるか、白米としては利用できない加工米とするものであって、いずれも食品素材としては汎用性に欠けるものであった。
【0004】
一方、本発明者らは、これまで、外皮付き穀物を加圧下などで水に浸漬することにより、ポリフェノール成分を増加させると共に外皮から内側に浸透移行させ、内側の可食部分にポリフェノール成分を富化することに成功した(特許文献4)。さらにこれを応用し、玄米を水に浸漬した状態で加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化することにより、成分富化玄米を製造し、さらに精米した成分富化精白米を提供している(特許文献5および6)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2011-57597号公報
【特許文献2】特開2013-32334号公報
【特許文献3】特開2017-42089号公報
【特許文献4】特開2010-63454号公報
【特許文献5】特開2015-84658号公報
【特許文献6】特開2017-217015号公報
【0006】

【非特許文献1】Handschin C et al. "The role of exercise and PGC1α in inflammation and chronic disease", Nature 454(7203): 463-469, 2008.
【非特許文献2】Zhang Y et al. “NFκB2 Gene as a Novel Candidate that Epigenetically Responds to Interval Walking Training.”, Int J Sports Med 36(9): 769-75, 2015.
【非特許文献3】Morikawa M et al. “The effects of interval walking training for 10 years on physical fitness in elderly people; comparison with the results in dropouts during the period.”, J Physical Fit Sports Med 6(6): 532, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、汎用性を備えながら、血糖値の調節機能を有する食品素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究する中で、意外にも、本発明者らが提供する成分富化玄米およびそれを精米した成分富化精白米が、血糖値の調節機能を有し、さらに慢性炎症を抑制すること、さらには成分富化籾が成分富化玄米と同様の成分を有することを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 高圧加工米を原料として含む、慢性炎症を抑制するため、および/または、生活習慣病を治療、予防または改善するための、食品用または医薬用組成物であって、
高圧加工米が、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である、前記組成物。
[2] 水に浸漬された籾または玄米を加温する工程をさらに含む、前記[1]に記載の組成物。
[3] 高圧加工米を製粉した米粉を原料として含む、前記[1]または[2]に記載の組成物。
[4] 糠成分が、ポリフェノール類、チアミン、ナイアシン、遊離アミノ酸、γ-アミノ酪酸およびフィチン酸を含む、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5] 生活習慣病が、糖尿病、高血圧または肥満である、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6] 中強度または高強度の負荷の運動と併用するための、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7] 高圧加工米を原料として含む、慢性炎症を抑制し、中強度または高強度の負荷の運動による血糖値上昇抑制効果を増強するための、食品用または医薬用組成物であって、
高圧加工米が、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である、前記組成物。
[8] 中強度または高強度の負荷の運動が、インターバル速歩トレーニングである、前記[6]または[7]に記載の組成物。
【0010】
[9] 籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である高圧加工米であって、慢性炎症を抑制するため、および/または、生活習慣病を治療、予防または改善するための、前記高圧加工米。
[10] 前記[9]に記載の高圧加工米を炊飯してなる、慢性炎症を抑制するため、および/または、生活習慣病を治療、予防または改善するための、米飯。
[11] 慢性炎症を抑制し、中強度または高強度の負荷の運動による血糖値上昇抑制効果を増強するための高圧加工米であって、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である、前記高圧加工米。
[12] 中強度または高強度の負荷の運動が、インターバル速歩トレーニングである、前記[11]に記載の高圧加工米。
[13] 前記[11]または[12]に記載の高圧加工米を炊飯してなる、慢性炎症を抑制し、中強度または高強度の負荷の運動による血糖値上昇抑制効果を増強するための、米飯。
【0011】
また本発明は、一態様として、以下の発明に関する。
[A] 玄米を、該玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化玄米を精米してなる高圧加工米であって、生活習慣病を予防または改善するための、前記高圧加工米。
[B] 糠成分が、ポリフェノール類、チアミン、ナイアシン、遊離アミノ酸、γ-アミノ酪酸およびフィチン酸を含む、前記[A]に記載の高圧加工米。
[C] 生活習慣病が、糖尿病、高血圧または肥満である、前記[A]または[B]に記載の高圧加工米。
[D] 前記[A]~[C]のいずれか一項に記載の高圧加工米を炊飯してなる、米飯。
[E] 保存用容器に収容された、前記[D]に記載の米飯。
[F] インターバル速歩トレーニングと併用するための、前記[D]または[E]に記載の米飯。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る高圧加工米によれば、生活習慣病の治療、予防または改善効果が得られる。とくに、運動処方を実施してもなお、生活習慣病の改善効果が頭打ちになっている対象者に対し、生活習慣病の改善効果が得られる。本発明に係る高圧加工米は、持続的に摂取することにより、生活習慣病の改善の中でも、食事後の血糖上昇が抑制され、血糖調節機能の改善において、とくに優れている。
【0013】
さらに本発明に係る高圧加工米は、炎症促進性遺伝子であるNFκB2遺伝子のメチル化を亢進し、慢性炎症を抑制することができる。慢性炎症は、種々の疾患と関連しており、例えば、脂肪細胞への影響がインシュリン抵抗性およびII型糖尿病に、免疫細胞への影響が動脈硬化に、脳細胞への影響が認知症に、全身性サイトカインの上昇を介して癌に関連することが知られている(非特許文献1)。本発明に係る高圧加工米は、生活習慣病の改善に止まらず、他の慢性炎症に関連する疾患に対しても改善効果が期待できる。
【0014】
本発明に係る高圧加工米の奏する生活習慣病の改善効果は、中強度または高強度の負荷の運動、とくに緩急運動の1種であるインターバル速歩トレーニングと並行して行うことにより、さらに優れている。5ヵ月間のインターバル速歩トレーニングによって、体力(筋力)が向上し、高血圧、高血糖、肥満の症状が改善し、炎症促進性遺伝子であるNFκB2遺伝子のメチル化がおき、体内の炎症反応が抑制されるところ(非特許文献2)、これらの改善効果は、約6ヵ月以降頭打ちになることが課題であったが(非特許文献3)、本発明に係る高圧加工米を摂取することにより、インターバル速歩トレーニングの改善効果をさらに促進することができる。
【0015】
玄米や発芽玄米は、炊飯準備の困難さ、食味や食感の低下、消化性の悪さにより持続的な摂取が容易ではない場合があるが、本発明に係る高圧加工米のうち成分富化精白米は、これらの問題を生じることなく、炊飯により良食味の白米として摂取が容易であることから、生活習慣病の治療、予防または改善に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る成分富化玄米の、水の量ごとの精米歩留まりを示すグラフである。
【図2】本発明に係る成分富化精白米およびコントロール精白米のチアミンの含有量を示すグラフである。
【図3】本発明に係る成分富化精白米およびコントロール精白米のナイアシンの含有量を示すグラフである。
【図4】持続血糖測定・自己血糖測定のプロトコールの概要を示す図である。
【図5】血糖調節機能(SMBG)の測定結果を示すグラフである。
【図6】血糖調節機能(SMBG)の測定結果を示すグラフである。
【図7】持続血糖測定の典型例を示すグラフである。
【図8】血糖調節機能(持続血糖測定)の測定結果を示すグラフである。
【図9】血糖調節機能(持続血糖測定)の測定結果を示すグラフである。
【図10】パイロシークエンス法により測定したNFκB2遺伝子のメチル化率を示すグラフである。
【図11】本発明に係る成分富化籾から精米した成分富化精白米の(a)総ポリフェノール量および(b)GABA量の含有量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る高圧加工米は、成分富化籾、成分富化玄米、および、成分富化籾または成分富化玄米から精米した成分富化精白米を含む。
以下、成分富化精白米の精白前の成分富化玄米を中心に説明するが、成分富化籾についても同様である。

【0018】
本発明に係る成分富化玄米は、ポリフェノール、ビタミン類等任意の糠成分を通常の米と比較して高濃度に含有していることに加えて、浸漬等によって成分が富化された穀類と比較して、粒割れの割合が低く、精米歩留まりが向上している。また、炊飯した際の食感が従来の成分富化玄米と比較して改良されており、これによって、炊飯した際の食感が改良されている。

【0019】
本発明において、その加工過程において、所定量の水に浸漬することによって、製造された成分富化玄米の精米歩留まりを向上させることが可能になる。水の量は、玄米の場合、一般的な玄米の吸水量である30重量%以上が望ましく、50重量%以上であると更に望ましい。籾の場合は、50重量%以上であることが望ましい。

【0020】
本発明において、浸漬に使用する水には、所望の成分を添加することが可能である。これにより、前記所望の成分が製造された成分富化玄米に移行し、富化させることが可能になる。ここで、「所望の成分」の用語は、本来種皮に含まれる成分(例えば、ビタミンB、ビタミンB、γ—オリザノール等)と、本来種皮には含まれず、加工時に添加することにより富化される成分、例えば、コチニールやアントシアニン等の色素とのいずれも含む意味で使用する。従って、本発明の製造方法においては、種皮に含有されている成分のみでなく、加工処理の段階で適宜添加された成分も富化された成分富化玄米を製造することが可能である。

【0021】
本発明において、その加工過程において、浸漬は、密閉容器に封入した状態で行われることが望ましい。これにより、浸漬に使用する水の量を正確に制御することが可能となり、かつ、加工時に玄米全体に均一に静水圧を加えることが可能になる。

【0022】
本発明において、その加工過程において、所定の圧力で加圧することによって、成分富化玄米のでんぷん損傷率を0~15%に抑えることが可能となる。これにより、炊飯した際のでんぷんの糊化、流出が抑えられ、食感を向上させることが可能となる。また同時に、精米時の精米歩留まりを向上させることが可能となる。この際の圧力は、0.2MPa以上が望ましく、100MPa以上であるとさらに望ましい。

【0023】
本発明において、その加工過程において、所定の時間加圧することが望ましい。これにより、精米歩留まりを向上させ、同時により多くの成分を富化させることが可能になる。この時間の長さは、3時間以上であることが望ましく、作業効率等を勘案すると、12時間程度が望ましい。

【0024】
本発明において、その加工過程において、所定の温度で加温することが望ましい。これにより、製造された成分富化玄米に富化する成分の量を増加させることが可能になる。加温時の温度は、所望の効果を得るために20℃以上が望ましく、40℃以上であると更に望ましい。温度の上限は、一般的に玄米のでんぷんが糊化する65℃以下である必要があり、60℃以下であると更に望ましい。加温は、浸漬と同時にあるいは順次行われ、浸漬時に加温する場合、加工される玄米に上記温度が加温される程度となるよう、水温を調整する必要がある。

【0025】
本発明において、濃度が向上している糠成分としては、ポリフェノール類が挙げられる。向上する程度は、処理の際の圧力、温度等の条件によって異なり、通常は、総ポリフェノール量として2倍から4倍程度であるが、成分や条件によっては、10倍程度まで向上する。例えば、フェルラ酸は未処理時の5倍から6倍まで向上し、p-クマル酸では、未処理時の10倍まで向上する。また、γ-アミノ酪酸については、未処理の精白米からは検出されない成分であって、本発明に係る成分富化玄米を製造する過程において、はじめて定量される成分である。また、本発明に係る成分富化玄米では、上記に示す成分以外のビタミン類等の成分が富化されていても良く、これらの成分には、種皮に含有されている成分のみでなく、加工処理の段階で適宜添加された成分も含まれる。つまり、本発明に係る成分富化玄米では、加工時に浸漬する水に所望の成分を添加することで、種皮由来ではない成分を胚乳部分に浸透移行することが可能である。

【0026】
本発明において、成分富化玄米の表面や内部のでんぷんは、電子顕微鏡で観察すると、その外形から角がとれており、角丸の状態、あるいは形状が略球状または略偏球状となっている。このため、本発明に係る成分富化玄米は、口に入れた際の食感が良く、また、製粉して米粉として使用した際にも、手触りや食感が良好である。

【0027】
本発明の高圧加工米(成分富化籾、成分富化玄米および成分富化精白米)の原料として使用する米は、とくに限定はされず、日本および外国で食用として用いられる米であれば、いずれも適用可能である。本発明により製造された高圧加工米は、食用米として好適に使用することが可能である。また、本発明により製造された成分富化精白米を製粉することにより、成分富化米粉として、好適に使用することが可能である。さらに、本発明により製造された成分富化米粉は、その用途として、成分が富化された加工食品として、好適に使用することが可能である。

【0028】
本発明の高圧加工米は、生活習慣病を治療、予防または改善するための、食品用または医薬用組成物の原料として用いることができる。また本発明の高圧加工米は、生活習慣病を治療、予防または改善するための食材として、とくに主食として摂取することができる。
ここで生活習慣病とは、生活習慣が発症原因に深く関与していると考えられている疾患の総称であり、糖尿病、高血圧または肥満などを包含するものである。本発明の高圧加工米は、とくに血糖調節機能に優れ、とくに、糖尿病や肥満の治療、予防または改善に優れている。

【0029】
本発明の高圧加工米は、慢性炎症を抑制するための、食品用または医薬用組成物の原料として用いることができる。また本発明の高圧加工米は、慢性炎症を抑制するための食材として、とくに主食として摂取することができる。

【0030】
さらに本発明の高圧加工米は、慢性炎症を抑制し、中強度または高強度の負荷の運動による血糖値上昇抑制効果を増強するために用いることができる。
ここで中強度または高強度の負荷の運動とは、最大体力の70%以上のややきつい運動のことで、血糖値上昇抑制効果が期待できる運動などが含まれ、例えば、速い歩行、ジョギング、水泳、エアロビクスなどの他、ウェイト・トレーニングや水中歩行など運動療法に取り入れられている各種の運動を含み得る。本発明の高圧加工米を併用する中強度または高強度の負荷の運動とは、前記の各種の運動の他、ゆっくり歩きと速歩を交互に繰り返す緩急ウォーキングなどの緩急運動が含まれ、とくにインターバル速歩トレーニングとの併用が好ましい。

【0031】
本発明の高圧加工米は、慢性炎症を抑制することができることから、例えば、インシュリン抵抗性およびII型糖尿病、動脈硬化、認知症、癌に対して、改善効果が期待できる。

【0032】
本発明の高圧加工米は、一般の精白米と同様に製品化が可能である。例えば、精白米を袋詰めした製品や、精白米を炊飯し、米飯として製品とすることができる。とくに米飯とする場合は、レトルトパックなどの保存容器に収容されていてもよい。

【0033】
また本発明の高圧加工米は、加工食品、機能性食品などの食材としても用いることができ、一般の精白米が利用される態様において利用することができる。
また、飼料用として用いることも可能である。
以下、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
[実験例1 成分富化玄米および成分富化精白米の製造]
原料となる米は、信州大学農学部の圃場で収穫された、2015年度または2016年度産コシヒカリ玄米を用いた。玄米は実験に使用するまで、ポリエチレン袋に入れて密封し、冷蔵庫に貯蔵した。加圧装置は、株式会社東洋高圧製の高圧処理装置「まるごとエキス(登録商標)」を使用した。加圧処理時の圧力保持と、温度調整は、前記高圧処理装置の制御装置を未補正で使用した。処理玄米の乾燥は、送風乾燥器(VTRL-1000-2Tいすゞ製作所製)を用いて実施した。
【実施例】
【0035】
玄米3kgと、所定量の蒸留水をポリエチレン袋に入れ、袋の中の空気が残らないよう減圧に保ちながら密閉し、シーラーを用いて封入した。その後、直ちに55℃に設定しておいた高圧処理装置に入れ、温度を保ちながら、100MPa下で6時間処理を行った。処理後の玄米を成分富化玄米試料とし、この玄米を乾燥後精米したものを、本実施例における成分富化精白米(高圧加工米)の試料とした。
【実施例】
【0036】
[実験例2 コントロール米の製造]
実験例1と同様のコシヒカリ玄米をコントロール玄米とした。また、これを精米して、未処理の精白米を製造し、これをコントロール精白米の試料とした。
【実施例】
【0037】
(精米歩留まりの測定)
実験例1と同様に製造した成分富化玄米について、加工時に浸漬する水量による精米歩留まりの変化を測定した。加工した玄米を乾燥後、家庭用精米機(RSKM5B 株式会社サタケ製)により精米した。図1は、添加水量と、玄米の吸水率、精米歩留まりの関係を示すグラフを示す。この結果から、添加水量が増加するに従って精米歩留まりも向上し、添加水量が50重量%以上となると、精米歩留まりが80%を超えることが認められた。
【実施例】
【0038】
(総ポリフェノール量の測定)
本発明に係る成分富化精白米の可溶性総ポリフェノール量およびフェノール酸量を定量した。米試料中の総ポリフェノール量はChandrikaらの方法を参考に、一部改変したFolin-Ciocalteu法で測定した。米に含まれるポリフェノール類の主要な成分はフェルラ酸であることから、総ポリフェノール量をフェルラ酸当量で表した。
【実施例】
【0039】
フェルラ酸100mgに50%アセトン水を加えて100mlに定容し、1mg/mlのフェルラ酸標準溶液を調製した。この標準溶液に純水を加えて適宜希釈し、複数の濃度のフェルラ酸標準溶液を調製した。各フェルラ酸標準溶液0.5mlに純水を加えた後、フォリン・チオカルト-フェノール試薬1.0ml、20%炭酸ナトリウム水溶液(w/v)1.0ml、純水4.5mlを加えて反応させた。その後、遠心分離(5,000×g,5分間)し、得られた上清の725nmにおける吸光度を分光光度計(UV-1800 UV/VIS Spectrophotometer 株式会社島津製作所製)を用いて測定し、吸光度の値とフェルラ酸濃度から検量線を作成した。
【実施例】
【0040】
成分富化精白米、およびコントロール精白米について、総ポリフェノール量を上記と同様の方法で吸光度から定量した。測定は各処理試料溶液につき2回ずつ行い、各試料溶液の測定値はフェルラ酸を標準物質として作成した検量線に代入して、可溶性の総ポリフェノール量を算出した。実験では、総ポリフェノール量は、精白米、玄米および米糠100g当たりのフェルラ酸当量(FAE mg/精白米100g)で表した。
【実施例】
【0041】
表1は、加工時に加温する温度ごとの成分富化玄米およびコントロール玄米それぞれの精米歩留まり、成分富化玄米およびコントロール玄米をそれぞれ精米した、成分富化精白米およびコントロール精白米100g中に含まれるフェルラ酸当量を表した表である。表中、成分富化玄米と書かれた項目では、付加する圧力と温度を変更してそれぞれの数値を示している。表から、加温する温度を上げるに従って、精米歩留まりと総ポリフェノール量が向上していることが認められた。特に、55℃、100MPaで処理した成分富化精白米においては、総ポリフェノール量が86.0mg/100gと、コントロール米の31.0mg/100gと比較して、約3倍の量のポリフェノールを含有することが認められた。また、本発明に係る成分富化玄米を製造する際には、付加する圧力、および温度が高いほど、ポリフェノール量が増加し、同時に、精米歩留まりが向上することが認められた。
【実施例】
【0042】
【表1】
JP2019030294A_000003t.gif
【実施例】
【0043】
(チアミンの測定)
本発明に係る成分富化精白米に富化された成分として、チアミンの定量を行った。測定は、HPLC法を用いて行い、チアミン塩酸塩として定量した。図2は、成分富化精白米およびコントロール精白米それぞれ100g中に含まれるチアミンの量を表したグラフである。グラフ中、未処理とされるデータがコントロール米を示し、水/温/圧とされるデータが成分富化精白米を示している。この結果から、成分富化精白米において、0.22mg/100gと、コントロール米の0.09mg/100gと比較して、約2.4倍の量のチアミンを含有することが認められた。
【実施例】
【0044】
(ナイアシンの測定)
成分富化玄米に富化された成分として、ナイアシンの定量を行った。測定は、Lactobacillus plantarum ATCC8014菌株を使用した微生物定量法を用いて行った。なお、この際、ニコチン酸相当量、トリプトファンは考慮していない。図3は、成分富化精白米およびコントロール精白米それぞれ100g中に含まれるナイアシンの量を表したグラフである。グラフ中、未処理とされるデータがコントロール精白米を示し、水/温/圧とされるデータが成分富化精白米を示している。この結果から、成分富化精白米において、4.32mg/100gと、コントロール米の1.78mg/100gと比較して、約2.4倍の量のナイアシンを含有することが認められた。
【実施例】
【0045】
(γ-アミノ酪酸の測定)
成分富化玄米に富化された成分として、γ-アミノ酪酸の定量を行った。測定は、アミノ酸自動分析法を用いて行った。その結果、コントロール精白米では、含有量が検出限界以下であったため、定量できなかったのに対し、成分富化精白米では、16mg/100g検出され、成分富化精白米では、コントロール精白米よりも多くのγ-アミノ酪酸を含有することが認められた。
【実施例】
【0046】
(フィチン酸の測定)
成分富化玄米に富化された成分として、フィチン酸の定量を行った。測定は、バナドモリブデン酸吸光光度法を用いて行い、メソイノシットヘキサリン酸として定量した。その結果、コントロール精白米では、155mg/100gであったのに対し、成分富化精白米では、183mg/100g検出され、成分富化精白米では、コントロール精白米よりも多くのフィチン酸を含有することが認められた。
【実施例】
【0047】
(米粉試料の物性の分析)
成分富化玄米および成分富化米粉の物性を評価するため、米粉の平均粒径と、でんぷん損傷率を測定した。粒度の測定には、レーザー回折・散乱式粒度分析計(MT3000LOW-DRY 日機装株式会社製)を使用し、乾式法による粒度分布計測値から、平均粒径を求めた。粒度分布の測定は、各試料3回ずつ行い、平均値(μm)を算出した。また、でんぷん損傷率の測定には、STARCH DAMAGE KIT(K-SDAM Megazyme社製)を使用した。結果を表2に示す。
【実施例】
【0048】
【表2】
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【実施例】
【0049】
表2は、成分富化米粉およびコントロール米粉の平均粒径およびでんぷん損傷率を測定した結果を示す。表から、成分富化米粉の平均粒径とでんぷん損傷率が、いずれもコントロール米粉の値よりも低いことが認められた。これは、成分富化玄米の製造を行う加工時に、加圧をする工程があるため、これにより米の密度が高まったことによる。米の密度が高いこと、およびでんぷん損傷率が低いことは、炊飯時のでんぷんの糊化、溶出を抑制し、食味を向上させるのに寄与している。
【実施例】
【0050】
[実験例3 高圧加工米摂取による生活習慣病の治療、予防または改善効果]
実験例1と同様に製造した成分富化精白米(高圧加工米)の生活習慣病の治療、予防または改善効果を検証した。
<方法>
6か月以上インターバル速歩(IWT)トレーニングを継続しているにもかかわらず、血糖と血圧が高止まりしている、すなわち、空腹時血糖値>110mg/dlまたはHbA1c>6.2%、かつ、SBP>135またはDBP>85mmHgである30人(80歳未満の男女)を被験者とした。被験者を、高圧加工米群(n=15)と通常米群(白米群;n=15)とに無作為に割り付けた。
【実施例】
【0051】
なお、インターバル速歩(IWT)とは、息があがるように“さっさか”歩く速歩き(さっさか歩き)と、呼吸を整えてリフレッシュするように“ゆっくり”歩くゆっくり歩き(ゆっくり歩き)を交互に数分間ずつ(例えば、3分間ずつ)繰り返し行うトレーニング方法をいう(NPO法人熟年体育大学リサーチセンター;URL: http://www.jtrc.or.jp/interval/)。
被験者は、週4回以上(1回速歩時間15分以上)を目標に実施した。
【実施例】
【0052】
両群ともIWTをさらに4ヶ月間(2016年12月~2017年4月)実施させた(IWT+試験米摂取期間)。その間、高圧加工米群は、朝・夕の食事にレトルトパックした高圧加工米を1食当たり175g(0.5合)摂取させ、通常米群は、朝・夕の食事にレトルトパックした通常米を1食当たり175g(0.5合)摂取させた。
介入前後に、6日間の血糖値の連続測定(酵素電極)を実施し、5日目にすべての被験者に同じ食事(統制食)を摂取させた。また、以下の測定項目についても測定を行った。
【実施例】
【0053】
測定項目
・体力測定:
身長、体重、BMI、体脂肪率、腹囲周囲長、伸展筋力、屈曲筋力、最大運動量、
・血液検査:
赤血球、白血球、ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板数、アルブミン、総コレステロール、TG、LDL-C、HDL-C、尿酸、高感度CRP
・血糖調節機能:
血液検査(空腹時血糖、HbA1c、グリコアルブミン、空腹時インスリン濃度)、CGM(持続血糖測定)6日間、SMBG(自己血糖測定)6日間
・循環調節機能:
最高血圧(SBP)、最低血圧(DBP)、PWV(脈波伝播速度)、ABI(足関節上腕血圧比)、安静時心拍数
【実施例】
【0054】
(持続血糖測定・自己血糖測定のプロトコール)
持続血糖測定は、腹部にセンサーを留置し、グルコース濃度を5分間隔で測定した。また、センサーで測定するグルコース濃度の較正のため、1日4回の自己血糖測定を行った。プロトコールの概要を図4に示す。
(循環調節機能測定の方法)
仰向けになり、血圧計カフ、心電図電極、心音マイクを装着し、測定した。
【実施例】
【0055】
以下、各測定結果を示すが、IWT+試験米摂取期間の前の測定結果を「Pre」、後の測定結果を「Post」として示す。
体力測定の結果を表3に示す。
【表3】
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【実施例】
【0056】
血液検査の結果を表4に示す。
【表4】
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【実施例】
【0057】
血糖調節機能の結果を表5に示す。
【表5】
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【実施例】
【0058】
循環調節機能の結果を表6に示す。
【表6】
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【実施例】
【0059】
持続血糖測定・自己血糖測定の測定結果を図5~9に示す。
6日間の朝食前の血糖値は、高圧加工米群でのみ介入後に低下した(P=0.04)(図5、6)。また、5日目の朝食開始から3時間の血糖値の上昇も、同群でのみ介入後に低下した(P=0.02)。すべての被験者が介入の前後で同じ食事を摂取したにもかかわらず、食後血糖(BG)の増加は、介入後の高圧加工米群においてのみ抑制された(図8)。介入後の高圧加工米群においてのみJ-indexが有意に低下した(図9)。
【実施例】
【0060】
結果から、生活習慣病患者において、本発明に係る高圧加工米の摂取により血糖調節能を改善することが示された。とくに、インターバル速歩(IWT)トレーニングと並行して持続的に行うことにより、より高い効果が得られることが明らかになった。
【実施例】
【0061】
[実験例4 高圧加工米摂取によるNFκB2遺伝子のメチル化]
インターバル速歩トレーニングと並行して高圧加工米を摂取した場合において、NFκB2遺伝子のメチル化に及ぼす影響を調査した。
実験例3と同様に得た血液サンプルからPLC DNA Isol. Kit Large Volume((株)ロシュ・ダイアグノスティックス、東京)を用いてDNAを抽出し、パイロシークエンス(PyroMarkQ24ID, QIAGEN、Germany)により、介入前後におけるNFκB2遺伝子のメチル化率を測定した。PCRおよびシークエンスプライマーは、PyroMark Assay Design 2.0 software (QIAGEN、Germany)により作成され、全ての実験操作は推奨されているプロトコールに沿って行った。NFκB2遺伝子のプロモーター領域(-1281 to -1018 upstream of the transcription start site)はPCRにより増幅した。
使用したプライマーを表7に示す。
【表7】
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【実施例】
【0062】
哺乳類において、DNAメチル化はCpGアイランドに存在するシトシンにおいて、優先的に起こる。それゆえ、NFκB2のターゲット領域は、
5’- AAAGGGCGCGAGGCGTGACGCACGGAAACGTCA - 3’(配列番号4)
(-1238 to -1206 upstream of the transcription start site)
とした。
【実施例】
【0063】
EpiTect Buisulfite Kit(QIAGEN、Germany)を用いて、ゲノムDNAにバイサルファイト処理を行った。バイサルファイト処理後のDNAを精製し、Nano Dropを用いて、DNA濃度を10ng/μlに調整した。バイサルファイト処理済DNAはPyroMark PCR Master Mix kit(QIAGEN、Germany)を用いて、5’末端がビオチン化されたプライマーでPCR増幅した。ビオチン化されたPCR産物は、ストレプトアビジンビーズ(GE Healthcare、Sweden)の上に固定化し、DNA鎖はDenaturation Solution(QIAGEN、Germany)を用いて分離した。それを洗浄後、PyroMark Q24 Vacuum Workstationによって中和し、シークエンスプライマーは固定化した鎖にアニーリングした。
【実施例】
【0064】
パイロシークエンスにより得られた波形(パイログラム)から、PyroMark Q24 system (QIAGEN, Germany)のPyroMark Q24 softwareを用いて、波形のピーク(高さ)からターゲット領域におけるメチル化シトシンと非メチル化シトシンの割合を求めることでNFκB2のメチル化率を算出した。Reportタブから、「CpG analysis report」を決定し小数第二位までを有効数字として解析に使用した。本発明ではNFκB2遺伝子のプロモーター領域における6か所(sites 1~6)のメチル化変異(非メチル化シトシンからメチル化シトシンへの変異)部位を解析した。なお、この6か所のメチル化変異部位は、先行研究において、インターバル速歩によりメチル化が亢進した部位である(非特許文献2)。この際、同一被験者のトレーニング前後のサンプルは、一度にPCR・シークエンスを行い、測定条件の違いによって生じるメチル化率の誤差が介入前後の変化量に影響するリスクを極力抑えるようにした。解析は、sites 1~6のメチル化率を平均して行った。
【実施例】
【0065】
図10に介入前後に採取した血液サンプルより抽出したDNAを対象に、パイロシークエンス法により測定したNFκB2遺伝子のsites 1~6のメチル化率の平均値について、通常米群、高圧加工米群それぞれ、15名の平均値と標準誤差で示した。図10中、Aは介入前(白抜き)、介入後(黒塗り)のぞれぞれのメチル化率を示し、Bは介入による変化量を示す。測定には、両群ともに介入前後のメチル化率に有意差を認めなかった(P>0.1)。しかし、各siteにおける介入前後の変化量の平均値を群間比較したところ、高圧加工米群では、通常米群と比較して、NFκB2遺伝子のメチル化が亢進した(P=0.045)。
【実施例】
【0066】
[実験例5 成分富化籾の製造]
原料となる米は、信州大学農学部の圃場で収穫された、2016年度または2017年度産コシヒカリの籾を用いた。
籾3kgと、所定量の蒸留水をポリエチレン袋に入れ、袋の中の空気が残らないよう減圧に保ちながら密閉し、シーラーを用いて封入した。その後、直ちに所定の温度(57℃、60℃または62℃)に設定しておいた高圧処理装置に入れ、温度を保ちながら、所定の圧力下(100MPa~150MPa)で所定の時間(2時間~8時間)処理を行った。処理後の籾を成分富化籾試料とした。
【実施例】
【0067】
[実験例6 成分富化籾の外観]
(a)成分富化籾の外観(1)
実験例5と同様に製造した成分富化籾(57℃、120MPa、2、4または6時間、水分添加量70%)および未処理籾について、夫々1000粒を採取し、整粒、胴割粒および砕粒を計数した。結果を表8に示す。なお、表中、「その他」は半粉状質粒などを示す。
【表8】
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【実施例】
【0068】
(b)成分富化籾の外観(2)
実験例5と同様に製造した成分富化籾(57℃または60℃、120MPa、4時間、水分添加量40%~70%)、成分富化玄米(57℃、120MPa、4時間、水分添加量56%)および未処理籾について、夫々1000粒を採取し、整粒、胴割粒および砕粒を計数した。結果を表9に示す。なお、表中、「その他」は半粉状質粒などを示す。
【表9】
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【実施例】
【0069】
表8および表9に示すとおり、成分富化籾は、未処理籾や成分富化玄米に比べて、整粒数が増加し、精白米としての利用に優れた外観品質を有することが示されるものであった。
【実施例】
【0070】
[実験例7 高圧加工籾から精米した高圧加工精白米の外観]
実験例5と同様に製造した成分富化籾(57℃、120MPa、6時間、水分添加量70%)、成分富化玄米(57℃、120MPa、6時間、水分添加量56%)および未処理籾の夫々を精米し、夫々1000粒を採取し、整粒、胴割粒および砕粒を計数した。結果を表10に示す。なお、表中、「その他」は半粉状質粒などを示す。
【表10】
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【実施例】
【0071】
表10に示すとおり、成分富化籾は、未処理籾や成分富化玄米に比べて、整粒数が増加し、精白米としての利用に優れた外観品質を有することが示されるものであった。
【実施例】
【0072】
[実験例8 高圧加工籾の機能性成分]
実験例5と同様に製造した成分富化籾から精米した高圧加工精白米(57℃、120MPa、4時間、水分添加量40%~70%)、成分富化玄米(57℃、100MPa、6時間、水分添加量56%)、未処理玄米および未処理白米について、夫々、総ポリフェノール量およびGABA量を測定した。結果を図11に示す。
なお、総ポリフェノール量およびGABA量の測定は、実験例2と同様の方法で行った。
【実施例】
【0073】
図11に示すとおり、成分富化籾から精米した高圧加工精白米は、成分富化玄米に比べて総ポリフェノール量は7割程度であるが、未処理白米に比べて1.5倍程度の増加が認められるものであり、GABA量は成分富化玄米に比べて1.1倍程度、未処理白米に比べて5倍以上の増加が認められるものであった。
【実施例】
【0074】
実験例8の結果から、成分富化籾は、成分富化玄米および成分富化精白米と同程度の成分を含んでおり、これらと同様に生活習慣病を治療、予防または改善するため、および/または、慢性炎症を抑制するための食材として摂取することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の高圧加工米は、生活習慣病を治療、予防または改善するため、および/または、慢性炎症を抑制するための食材として、とくに一般の精白米と同様に、主食として容易に持続的に摂取することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10