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明細書 :小腸上皮細胞特異的な尿酸トランスポーター及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-031450 (P2019-031450A)
公開日 平成31年2月28日(2019.2.28)
発明の名称または考案の名称 小腸上皮細胞特異的な尿酸トランスポーター及びその利用
国際特許分類 C07K  14/47        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/00        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C07K 14/47
G01N 33/15 Z
C12N 15/00 A
C12N 15/00 ZNA
C12Q 1/02
C12N 5/10
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 35
出願番号 特願2017-152034 (P2017-152034)
出願日 平成29年8月4日(2017.8.4)
発明者または考案者 【氏名】湯浅 博昭
【氏名】保嶋 智也
【氏名】井上 勝央
【氏名】山本 俊輔
出願人 【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
【識別番号】592068200
【氏名又は名称】学校法人東京薬科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4B065
4H045
Fターム 4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ61
4B063QQ89
4B063QR50
4B063QR77
4B063QR80
4B063QS14
4B063QX07
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
要約 【課題】小腸上皮細胞で特異的に発現・機能する尿酸トランスポーターを同定し、その利用を図ることを課題とする。
【解決手段】小腸上皮細胞特異的な尿酸トランスポーターの同定に成功した。当該トランスポーターは尿酸排泄促進剤のスクリーニングに有用である。例えば、当該トランスポーターを強制発現させた細胞への尿酸の取り込み又は当該細胞からの尿酸の排出を被験物質が阻害するか否かを指標として尿酸排泄促進剤をスクリーニングする。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
SLC52A1タンパク質からなる、小腸上皮細胞特異的な尿酸トランスポーター。
【請求項2】
前記SLC52A1タンパク質が配列番号1のアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の尿酸トランスポーター。
【請求項3】
尿酸排泄促進剤のスクリーニングに利用される、請求項1又は2に記載の尿酸トランスポーター。
【請求項4】
SLC52A1を強制発現させた細胞への尿酸の取り込み又は該細胞からの尿酸の排出を被験物質が阻害するか否かを指標とした、尿酸排泄促進剤のスクリーニング方法。
【請求項5】
以下のステップ(1)~(3)を含む、請求項4に記載のスクリーニング方法:
(1)SLC52A1を強制発現させた哺乳動物細胞を用意するステップ;
(2)尿酸と被験物質を含有する試験液内で前記細胞を所定時間インキュベートするステップ;
(3)前記細胞内へ取り込まれた尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
【請求項6】
以下のステップ(1)~(3)を含む、請求項4に記載のスクリーニング方法:
(1)SLC52A1とSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞を用意するステップ;
(2)尿酸と被験物質を含有する試験液内で前記細胞を所定時間インキュベートするステップ;
(3)前記細胞内及び/又は試験液中の尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
【請求項7】
以下のステップ(i)~(iii)を含む、請求項4に記載のスクリーニング方法:
(i)SLC52A1とSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞で構成された細胞層を、多孔性の培養面上に形成させるステップ;
(ii)尿酸を含有する第1試験液が前記細胞層の上面側に接触し、被験物質を含有する第2試験液が前記培養面の孔を介して前記細胞層の下面側に接触した条件の下、前記細胞層を所定時間インキュベートするステップ;
(iii)前記細胞層を介して前記第1試験液から前記第2試験液へと移行した尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
【請求項8】
以下のステップ(i)~(iii)を含む、請求項4に記載のスクリーニング方法:
(i)SLC52A1とBCRPを強制発現させた哺乳動物細胞で構成された細胞層を、多孔性の培養面上に形成させるステップ;
(ii)第1試験液が前記細胞層の上面側に接触し、尿酸と被験物質を含有する第2試験液が前記培養面の孔を介して前記細胞層の下面側に接触した条件の下、前記細胞層を所定時間インキュベートするステップ;
(iii)前記細胞層を介して前記第2試験液から前記第1試験液へと移行した尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
【請求項9】
アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いることを特徴とする、請求項4に記載のスクリーニング方法。
【請求項10】
以下のステップ(1)~(3)を含む、請求項9に記載のスクリーニング方法:
(1)SLC52A1をコードするRNAの導入によってSLC52A1を強制発現させたアフリカツメガエル卵母細胞を用意するステップ;
(2)尿酸と被験物質を含有する試験液内で前記卵母細胞を所定時間インキュベートするステップ;
(3)前記卵母細胞内へ取り込まれた尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
【請求項11】
以下のステップ(1)~(3)を含む、請求項9に記載のスクリーニング方法:
(1)SLC52A1をコードするRNAの導入によってSLC52A1を強制発現させたアフリカツメガエル卵母細胞を用意するステップ;
(2)前記卵母細胞に尿酸を導入した後、被験物質を含有する試験液内で所定時間インキュベートするステップ;
(3)前記卵母細胞から排出された尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
【請求項12】
以下のステップ(I)~(VI)を含む、尿酸排泄促進剤のスクリーニング方法:
(I)SLC52A1を発現するトランスジェニック齧歯類動物を用意するステップ;
(II)前記トランスジェニック齧歯類動物の小腸の一部の両端を結紮し、小腸ループを作成するステップ;
(III)前記小腸ループ内を洗浄した後、試験液で充たすステップ;
(IV)前記トランスジェニック齧歯類動物に対して静脈より尿酸を投与するとともに、被験物質を投与するステップ;
(V)所定時間経過後又は経時的に、前記トランスジェニック齧歯類動物の血液及び/又は前記小腸ループの内液を採取するステップ;
(VI)採取した血液及び/又は小腸ループ内液中の尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
【請求項13】
齧歯類動物がマウスである、請求項12に記載のスクリーニング方法。
【請求項14】
尿酸排泄促進剤のスクリーニングに用いられる、SLC52A1を強制発現させた細胞。
【請求項15】
SNBT1又はBCRPも強制発現されている、請求項14に記載の細胞。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は尿酸トランスポーターに関する。詳しくは、小腸上皮細胞特異的な尿酸トランスポーター及びその用途(スクリーニング方法等)に関する。
【背景技術】
【0002】
尿酸はプリン体の最終代謝産物であり、生体内において還元剤・ラジカルスカベンジャーとして重要な役割を果たしている。そのため、血中尿酸濃度は産生酵素と分布及び排泄の動態に関わるトランスポーターの働きにより厳密に制御されているが、その恒常性の破綻は痛風や高血圧などの種々の疾患の発症につながることから、尿酸の体内動態の制御機構に対する関心は高い。これに関わる主要臓器としては、腎臓、肝臓、小腸が知られているが、特に小腸上皮細胞は、食物成分として大量に供給される核酸類からの尿酸の産生に働き、その血中への供給源となると同時に、腸管腔への尿酸排泄にも働くという特徴を持っている点が注目される。また、小腸上皮細胞における細胞膜を介した尿酸の移行(流入及び流出)に際しては、その高水溶性のために、細胞膜への分配を経ての単純拡散の寄与はほとんどなく、主にトランスポーターが関与するものと考えられている。このような背景から、尿酸の動態における小腸上皮細胞膜トランスポーターの役割は重要であると考えられるが、その実態はほとんど未解明のままとなっている。尚、本願発明に直接関連するものではないが、以下の非特許文献1~4にはSLC52A1がリボフラビントランスポーターであることが報告されている。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Molecular Aspects of Medicine 34 (2013) 95-107
【非特許文献2】Front. Physiol. doi: 10.3389/fphys.2014.00091
【非特許文献3】Am J Phys Cell Physiol 295; C632-C641 2008
【非特許文献4】ビタミン 84 (10), 480-486, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液中に尿酸が高濃度で存在する状態(高尿酸血症)は、痛風、高血圧、腎機能障害、動脈硬化等、様々な疾患を引き起こす。高尿酸血症及び痛風等に対する治療薬として、尿酸合成酵素阻害剤の他、腎臓におけるトランスポーターURAT1に対する阻害薬が開発されている。
【0005】
高尿酸血症患者の約9割は、尿酸トランスポーターが関与すると考えられる尿酸排泄能の低下を伴う。従って、尿酸トランスポーターを標的として治療薬の開発が切望される。しかしながら現状では、肝臓と並び、尿酸の体内動態において重要な臓器である小腸の上皮細胞側底膜(血管側膜)における血中への尿酸輸送に働く尿酸トランスポーターは見つかっていない。小腸上皮では尿酸が合成されることから、その小腸の尿酸トランスポーターを阻害することは血中尿酸レベルの低下に極めて有効であると期待される。
【0006】
そこで本発明は、小腸上皮細胞の側底膜(血管側膜)で特異的に発現・機能する尿酸トランスポーターを同定し、その利用を図ること(例えば、治療薬の開発に有用な手段の提供)を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく研究を進める中で、小腸上皮細胞の側底膜(血管側膜)で働く尿酸トランスポーター(機能特性に基づきequilibrative urate transporter(EUT)と呼ぶ)を新たに同定することに成功した。EUTはヒトを含む高等霊長類にのみあり、実験動物として汎用されるラットやマウス等のげっ歯類では欠損していることから、これまで見逃されていたと推察され、尿酸関連疾病治療薬の新たな分子標的としての可能性が注目される。後述の実施例に示すように、ヒトEUT遺伝子導入発現系哺乳類細胞、ヒトEUTを小腸特異的に導入したトランスジェニックマウスを用いた検討等から、EUTが小腸上皮細胞内で産生された尿酸の血中への供給経路として働いていることを示唆する知見が得られた。EUT阻害剤は、血中への尿酸供給阻害を機序とする血中尿酸濃度低下を惹起する可能性が期待される。即ち、EUT阻害剤は新たな高尿酸血症・痛風治療薬として有望である。また、EUTはそのようなEUT阻害剤医薬品を想定した新たな創薬標的として有用である。
以下の発明は、主として上記の成果及び考察に基づく。
[1]SLC52A1タンパク質からなる、小腸上皮細胞特異的な尿酸トランスポーター。
[2]前記SLC52A1タンパク質が配列番号1のアミノ酸配列からなる、[1]に記載の尿酸トランスポーター。
[3]尿酸排泄促進剤のスクリーニングに利用される、[1]又は[2]に記載の尿酸トランスポーター。
[4]SLC52A1を強制発現させた細胞への尿酸の取り込み又は該細胞からの尿酸の排出を被験物質が阻害するか否かを指標とした、尿酸排泄促進剤のスクリーニング方法。
[5]以下のステップ(1)~(3)を含む、[4]に記載のスクリーニング方法:
(1)SLC52A1を強制発現させた哺乳動物細胞を用意するステップ;
(2)尿酸と被験物質を含有する試験液内で前記細胞を所定時間インキュベートするステップ;
(3)前記細胞内へ取り込まれた尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
[6]以下のステップ(1)~(3)を含む、[4]に記載のスクリーニング方法:
(1)SLC52A1とSNBT1(SLC23A4)を強制発現させた哺乳動物細胞を用意するステップ;
(2)尿酸と被験物質を含有する試験液内で前記細胞を所定時間インキュベートするステップ;
(3)前記細胞内及び/又は試験液中の尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
[7]以下のステップ(i)~(iii)を含む、[4]に記載のスクリーニング方法:
(i)SLC52A1とSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞で構成された細胞層を、多孔性の培養面上に形成させるステップ;
(ii)尿酸を含有する第1試験液が前記細胞層の上面側に接触し、被験物質を含有する第2試験液が前記培養面の孔を介して前記細胞層の下面側に接触した条件の下、前記細胞層を所定時間インキュベートするステップ;
(iii)前記細胞層を介して前記第1試験液から前記第2試験液へと移行した尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
[8]以下のステップ(i)~(iii)を含む、[4]に記載のスクリーニング方法:
(i)SLC52A1とBCRP(ABCG2)を強制発現させた哺乳動物細胞で構成された細胞層を、多孔性の培養面上に形成させるステップ;
(ii)第1試験液が前記細胞層の上面側に接触し、尿酸と被験物質を含有する第2試験液が前記培養面の孔を介して前記細胞層の下面側に接触した条件の下、前記細胞層を所定時間インキュベートするステップ;
(iii)前記細胞層を介して前記第2試験液から前記第1試験液へと移行した尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
[9]アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いることを特徴とする、[4]に記載のスクリーニング方法。
[10]以下のステップ(1)~(3)を含む、[9]に記載のスクリーニング方法:
(1)SLC52A1をコードするRNAの導入によってSLC52A1を強制発現させたアフリカツメガエル卵母細胞を用意するステップ;
(2)尿酸と被験物質を含有する試験液内で前記卵母細胞を所定時間インキュベートするステップ;
(3)前記卵母細胞内へ取り込まれた尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
[11]以下のステップ(1)~(3)を含む、[9]に記載のスクリーニング方法:
(1)SLC52A1をコードするRNAの導入によってSLC52A1を強制発現させたアフリカツメガエル卵母細胞を用意するステップ;
(2)前記卵母細胞に尿酸を導入した後、被験物質を含有する試験液内で所定時間インキュベートするステップ;
(3)前記卵母細胞から排出された尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
[12]以下のステップ(I)~(VI)を含む、尿酸排泄促進剤のスクリーニング方法:
(I)SLC52A1を発現するトランスジェニック齧歯類動物を用意するステップ;
(II)前記トランスジェニック齧歯類動物の小腸の一部の両端を結紮し、小腸ループを作成するステップ;
(III)前記小腸ループ内を洗浄した後、試験液で充たすステップ;
(IV)前記トランスジェニック齧歯類動物に対して静脈より尿酸を投与するとともに、被験物質を投与するステップ;
(V)所定時間経過後又は経時的に、前記トランスジェニック齧歯類動物の血液及び/又は前記小腸ループの内液を採取するステップ;
(VI)採取した血液及び/又は小腸ループ内液中の尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。
[13]齧歯類動物がマウスである、[12]に記載のスクリーニング方法。
[14]尿酸排泄促進剤のスクリーニングに用いられる、SLC52A1を強制発現させた細胞。
[15]SNBT1又はBCRPも強制発現されている、[14]に記載の細胞。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】EUT発現MDCKII細胞(○)及びmock細胞(●)での尿酸の取り込み。データは平均±S.E. (n = 4)で示した。37℃、pH 5.5の条件で[14C]尿酸 (4 μM)の取り込みを評価した。
【図2】MDCKII細胞でのEUT特異的尿酸取り込みの濃度依存性。データは平均±S.E. (n = 4)で示した。37℃、pH 5.5、1分間の条件で[14C]尿酸 (4 μM)の取り込みを評価した。遺伝子導入細胞の取り込み量からmock細胞の取り込み量を差し引くことでEUT特異的な尿酸取り込み量を算出した。Km 及びVmax はそれぞれ、0.532±0.096 mM及び2.50±0.16 nmol/min/mg タンパク質であった。
【図3】EUT発現MDCKII細胞(○)及びmock細胞(●)における尿酸取り込みのpH依存性。データは平均±S.E. (n = 4)で示した。37℃、1分間の条件で[14C]尿酸 (4 μM)の取り込みを評価した。
【図4】EUT発現MDCKII細胞(□)及びmock細胞(■)における尿酸取り込みのイオン依存性。データは平均±S.E. (n = 4)で示した。37℃、pH 5.5、1分間の条件で[14C]尿酸 (4 μM)の取り込みを評価した。試験液中のNaClを各種化合物に置換した。
【図5】MDCKII細胞でのEUT特異的尿酸取り込みのリボフラビン(●)及びFMN(○)による濃度依存的阻害。37℃、pH 5.5、1分間の条件で[14C]尿酸 (4 μM)のEUT特異的取り込みを評価した。データは平均±S.E. (n = 4)で示した。コントロール値(12.8±0.38 pmol/min/mg タンパク質)に対する比率(%)としてを取り込み速度を示した。
【図6】安定発現MDCKII細胞におけるGFP-EUTの細胞内局在。GFP-EUT(緑)及び核(白)が観察される。
【図7】EUT発現アフリカツメガエル卵母細胞(□)及びmock卵母細胞(■)での尿酸の取り込み。データは平均±S.E. (n = 5)で示した。25℃、30分間の条件で[14C]尿酸 (4 μM)の取り込みを評価した。
【図8】SNBT1及びEUTを一過性に強制発現させたHEK293細胞での尿酸の取り込み。リボフラビンによる影響を調べた。データは平均±S.E. (n = 3)で示した。37℃、pH 5.5、30分間の条件で[14C]尿酸 (4 μM)の取り込みを評価した。*はmock細胞との間で有意差あり(p < 0.05)。
【図9】EUT/BCRP共発現MDCKII細胞(極性化)、EUT単独発現MDCKII細胞、及びBCRP単独発現MDCKII細胞における尿酸輸送。データは平均±S.E. (n = 3)で示した。37℃、pH7.4の条件で[14C]尿酸 (4 μM)のbasal側(側底膜側)からapical側(頂端膜側)への経細胞輸送を評価した。*はmock細胞との間で有意差あり(p < 0.05)。
【図10】ヒト空腸におけるEUTの局在。EUT(赤)、BCRP(緑)、核(青)。
【図11】ヒトEUT(SLC52A1)の染色体上の位置。
【図12】ヒトRFT3及びそのオーソログ(各種動物のRFT1)の染色体上の位置。
【図13】HEK293細胞でのhEUT、hRFT3及び各種動物のRFT1による尿酸の取り込み。37℃、pH 5.0、1分間の条件で[14C]尿酸 (4 μM)の特異的取り込みを評価した。データは平均±S.E. (n = 4)で示した。h、r、p及びbはそれぞれヒト(human)、ラット(rat)、ブタ(pig)及びウシ(bovine)を表す。
【図14】HEK293細胞でのhEUT、hRFT3、各種動物のRFT1及びRFT2によるリボフラビンの取り込み。37℃、pH 5.0、1分間の条件で[3H]リボフラビン(5 nM)の特異的取り込みを評価した。データは平均±S.E. (n = 4)で示した。h、r、p及びbはそれぞれヒト(human)、ラット(rat)、ブタ(pig)及びウシ(bovine)を表す。
【図15】Tg(EUT)マウス及び野生型マウスの1,3-15N2尿酸血漿中濃度プロファイル。データは、コントロール(野生型マウス)については1例での値(n = 1)、Tgマウスについては平均±S.E. (n = 3)で示した。尿酸の投与量は80 mg/h/kgとした。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の局面は新規尿酸トランスポーター(EUT)に関する。後述の実施例に示す通り、本発明者らの詳細な検討によって、SLC52A1として知られるタンパク質が小腸上皮細胞の測底膜(血管側膜)で働く尿酸トランスポーターとして機能することが判明した。この驚くべき成果に基づき、SLC52A1(solute carrier family 52 member 1)タンパク質からなる、小腸上皮細胞特異的な尿酸トランスポーターが提供される。SLC52A1タンパク質はRFT1、RFVT1又はGPR172Bとも呼ばれている。SLC52A1タンパク質のアミノ酸配列を配列番号1に示す。当該配列は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベースにACCESSION: NP_060456.3 NP_001098047.1、DEFINITION: solute carrier family 52, riboflavin transporter, member 1 precursor [Homo sapiens]で登録されている。本発明の尿酸トランスポーターは治療標的として特に有用であり、例えば、後述のスクリーニング方法に利用される。尚、その機能に注目し、本明細書では、SLC52A1からなる新規尿酸トランスポーターのことをEUT(equilibrative urate transporter)と呼ぶ。

【0010】
本発明の第2の局面は、新規尿酸トランスポーターの用途に関し、尿酸排泄剤促進剤をスクリーニングする方法が提供される。本発明のスクリーニング方法では、尿酸トランスポーターEUTに対する阻害作用を指標として被験物質の有効性を判定する。尿酸トランスポーターEUTを阻害する物質は、小腸上皮細胞から血中への尿酸供給を阻害することで小腸での尿酸の排泄を促進することを期待でき、尿酸関連疾病(高尿酸血症や痛風等)の治療薬又は予防薬の有効成分、或いはそのリード化合物として有望である。「治療薬」とは、標的疾患(尿酸関連疾病)に対する治療的又は予防的効果を示す医薬のことをいう。治療的効果には、標的疾患に特徴的な症状(病態)又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。予防的効果の典型的なものは、標的疾患に特徴的な症状の再発を阻止ないし遅延することである。尚、標的疾患に対して何らかの治療的効果又は予防的効果、或いはこの両者を示す限り、標的疾患に対する治療薬に該当する。

【0011】
本発明は大別して3種類のスクリーニング方法、即ち1.哺乳動物細胞を用いたin vitroスクリーニング方法、2.アフリカツメガエル卵母細胞発現系を利用したin vitroスクリーニング方法、3.トランスジェニック動物を用いたin vivoスクリーニング方法を提供する。以下、各スクリーニング方法の詳細を説明する。

【0012】
1.哺乳動物細胞を用いたin vitroスクリーニング
本発明の第1のスクリーニング方法は、SLC52A1(EUT)を強制発現させた哺乳動物細胞を用い、当該細胞への尿酸の取り込み又は該細胞からの尿酸の排出を被験物質が阻害するか否かを指標として被験物質の有効性を判定する。

【0013】
1-1.EUTを強制発現させた哺乳動物細胞を用いたスクリーニング
第1のスクリーニング方法の第1態様では、有効な物質を選択ないし選抜するために、以下のステップ(1)~(3)を行う。
(1)SLC52A1(EUT)を強制発現させた哺乳動物細胞を用意するステップ
(2)尿酸と被験物質を含有する試験液内で前記細胞を所定時間インキュベートするステップ
(3)前記細胞内へ取り込まれた尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ

【0014】
ステップ(1)では、SLC52A1、即ち尿酸トランスポーターEUTを強制発現させた哺乳動物細胞(以下、「EUT発現細胞」)を用意する。哺乳動物細胞は特に限定されず、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ等の各種細胞を用いることができる。哺乳動物細胞の例を挙げると、MDCKII細胞、CHO細胞、BHK細胞、COS-7細胞、HeLa細胞、ナマルバ細胞、HEK293細胞、HCT116細胞、Jurkat細胞、HL-60細胞、PC-12細胞、A431細胞、U2OS細胞、K-562細胞、Expi293FTM細胞である。哺乳動物細胞に対して、SLC52A1遺伝子を導入し、一過性又は安定発現させることにより、当該ステップに用いる細胞を調製することができる。SLC52A1(EUT)遺伝子の配列は公知であり、常法(例えばPCR等の核酸増幅反応を利用した方法)で取得(クローニング)することができる。公共のデータベースに登録されているSLC52A1遺伝子の配列を配列番号2(ACCESSION: NM_017986、DEFINITION: Homo sapiens solute carrier family 52 member 1 (SLC52A1), transcript variant 2, mRNA)に示す。SLC52A1遺伝子の哺乳動物細胞への導入には各種遺伝子導入法、例えば、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413-7417(1987))、エレクトロポレーション(Potter,H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161-7165(1984))、感染(ウイルスベクターを使用する場合)等を採用することができる。MDCKII細胞は、内在的な尿酸輸送活性が低い点から、SLC52A1(EUT)を強制発現させる哺乳動物細胞として特に好ましい。MDCKII細胞は例えば、American Type Culture Collection(ATCC)から入手することができる。

【0015】
ステップ(2)では、尿酸と被験物質を含有する試験液内でEUT発現細胞をインキュベート(所定温度、例えば37℃~38℃で維持)する。例えば、EUT発現細胞を培養容器に播種した後、直ちに、又は所定時間(例えば1分~24時間)経過した段階で、培養液を、尿酸と被験物質を含有する試験液に交換する。一旦、尿酸が添加された試験液に交換した後、試験液に被験物質を添加することにしてもよい。また、被験物質が添加された試験液に交換した後、試験液に尿酸を添加することにしてもよい。

【0016】
試験液の組成(尿酸及び被験物質以外)は特に限定されないが、意図しない影響を回避するために、可能な限り不要な成分を含まないことが好ましい。そこで、例えば、Hanks’ Balanced Salt Solution(HBSS)等を試験液(但し、尿酸及び被験物質が添加されることになる)として採用することができる。一方、培養液を試験液に用いることも可能である。この場合には、例えば、細胞を培養している培養液の中に尿酸と被験物質を添加するか、培養液を、尿酸と被験物質を含有する培養液に交換すればよい。

【0017】
尿酸としては、検出の容易性、精度、感度の観点から、標識された尿酸(標識化尿酸)を使用するとよい。標識には例えば14C、11C等の放射性同位体や、1,3-15N2 尿酸に代表される安定同位体等を利用すればよい。標識化尿酸を用いることで、内在性の尿酸の影響を排除することができる。[14C]尿酸は例えばAmerican Radiolabeled Chemicals, Inc.から、1,3-15N2 尿酸は例えば和光純薬工業株式会社から入手することができる。安定同位体で標識した尿酸は、LC-MS/MS、LC-MS等で検出、測定することができる。一方、放射性同位体で標識した尿酸は、液体シンチレーションカウンター等で検出、測定することができる。

【0018】
尿酸の添加量、即ち、試験液中の尿酸濃度は特に限定されないが、例えば1μM~1mMとする。被験物質の添加量も特に限定されない。例えば、試験液中の濃度として1nM~1mMの範囲で添加量を設定することができる。添加量の異なる複数の試験群を設ければ、濃度依存性も評価可能である。

【0019】
インキュベート時間は、例えば1分~1時間、好ましくは5分~30分、更に好ましくは5分~10分である。尚、最適なインキュベート時間は予備実験によって決定することができる。

【0020】
被験物質としては様々な分子サイズの有機化合物又は無機化合物を用いることができる。有機化合物の例として、核酸、ペプチド、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド、ポリフェノール、カテキン、ビタミン(B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、A、D、E等)を例示できる。医薬や栄養食品等の既存成分或いは候補成分も好ましい被験物質の一つである。植物抽出液、細胞抽出液、培養上清などを被験物質として用いてもよい。既存の薬剤(例えば、米国食品医薬品局(FDA)承認薬のライブラリー)を被験物質として用いることもできる。また、様々な化合物ライブラリー(例えばLigand Box)が提供されており(例えばAsinex社やナミキ商事株式会社から入手することができる)、当該化合物ライブラリーを用いることにしてもよい。被験物質は天然物由来であっても、或いは合成によるものであってもよい。後者の場合には例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なスクリーニング系を構築することができる。尚、2種類以上の被験物質を同時に添加することにより、被験物質間の相互作用、相乗作用などを調べることにしてもよい。

【0021】
ステップ(3)では、細胞内に取り込まれた尿酸の量を測定し、測定結果を基に被験物質の有効性を評価する。まず、細胞内及び/又は試験液中の尿酸を測定し、測定結果から細胞内へ取り込まれた尿酸の量を求める。例えば、放射性同位体で標識した尿酸を用いた場合、放射線量が測定されることになる。EUT発現細胞では、EUTが濃度勾配に従い、試験液中の尿酸を細胞内へ輸送する。即ち、試験液中の尿酸が細胞内へ取り込まれる。被験物質がEUTに対して阻害活性を示せば、細胞内へ取り込まれる尿酸の量が減少する。即ち、細胞内への尿酸の取り込み量が減少することは、被験物質がEUTを阻害する活性を示すこと(有効な物質であること)の指標となる。一方、細胞内への尿酸の取り込み量の減少率は被験物質の阻害活性の強さを反映する。従って、細胞内への尿酸の取り込み量を測定すれば、被験物質が阻害活性を示すか否かの判定に加え、被験物質の阻害活性の強さも評価できる。

【0022】
細胞内の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした細胞(対照群)に比較して細胞内の尿酸レベルが低いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。同様に、試験液中の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした細胞(対照群)に比較して試験液中の尿酸レベルが高いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。好ましくは、評価の信頼性向上のために、細胞内の尿酸と試験液中の尿酸の両方を測定して評価する。

【0023】
尚、複数の被験物質を用いた場合には、各被験物質の測定結果に基づき、被験物質間で有効性を比較評価することができる。

【0024】
1-2.EUT及びSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞を用いたスクリーニング
第1のスクリーニング方法の第2態様として、EUT及びSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞を用いたスクリーニング方法が提供される。当該スクリーニング方法では、以下のステップ(1)~(3)を行う。尚、特に言及しない事項については、上記の第1態様と同様であるため、その説明を省略する。
(1)SLC52A1(EUT)とSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞を用意するステップ;
(2)尿酸と被験物質を含有する試験液内で前記細胞を所定時間インキュベートするステップ;
(3)前記細胞内及び/又は前記試験液中の尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。

【0025】
この態様のステップ(1)では、SLC52A1(EUT)とSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞を用意する。即ち、遺伝子導入によってSLC52A1(EUT)とSNBT1が共発現する細胞(「EUT/SNBT1共発現細胞」と呼ぶ)を用いる。EUT/SNBT1共発現細胞は、SLC52A1(EUT)遺伝子とSNTB1遺伝子を宿主哺乳動物細胞に共導入することにより調製することがきできる。EUT安定発現細胞に対してSNBT1遺伝子を導入して一過性又は安定発現させることによって、或いは、また、SNBT1安定発現細胞に対してEUT遺伝子を導入して一過性又は安定発現させることよってEUT/SNBT1共発現細胞を得ることにしてもよい。好ましくは、SLC52A1(EUT)とSNBT1の両方が安定発現しているEUT/SNBT1共発現細胞を用いる。

【0026】
SNBT1は、ナトリウム依存性のトランスポーターであり、細胞外の尿酸を濃縮的に細胞内に蓄積させる。好ましくは、ラットSNBT1が採用されるが、本発明において必要な機能(即ち、細胞内への尿酸取り込み)を発揮する限りにおいて他の動物種のSNBT1を用いることもできる。公共のデータベース(NCBI)に登録されているSNBT1タンパク質のアミノ酸配列を配列番号3(ACCESSION: NP_001256967、DEFINITION: solute carrier family 23 member 2-like [Rattus norvegicus].)に示す。また、SNBT1遺伝子の配列を配列番号4(ACCESSION: NM_001270038.1、DEFINITION: Rattus norvegicus similar to Solute carrier family 23, member 2 (Sodium-dependent vitamin C transporter 2) (RGD1565367), mRNA)に示す。

【0027】
ステップ(2)は上記第1態様のステップ(2)と同様であるため、上記の説明を援用する。

【0028】
ステップ(2)に続くステップ(3)では、EUT/SNBT1共発現細胞内及び/又は試験液中の尿酸の量を測定し、測定結果を基に被験物質の有効性を評価する。EUT/SNBT1共発現細胞では、SNBT1によって試験液中の尿酸が細胞内へと輸送・蓄積される。EUTは濃度勾配に従い、細胞内に蓄積された尿酸を細胞外へと排出する。被験物質がEUTに対する阻害活性を示せば、細胞外へ排出される尿酸の量が減少する。即ち、細胞外への尿酸の排出量が減少することは、被験物質がEUTを阻害する活性を示すこと(有効な物質であること)の指標となる。一方、細胞外への尿酸の排出量の減少率は被験物質の阻害活性の強さを反映する。従って、細胞内及び/又は試験液中の尿酸の量を測定し、細胞外への尿酸の排出量を求めれば、被験物質が阻害活性を示すか否かの判定に加え、被験物質の阻害活性の強さも評価できる。

【0029】
細胞内の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした細胞(対照群)に比較して細胞内の尿酸レベルが高いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。同様に、試験液中の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした細胞(対照群)に比較して試験液中の尿酸レベルが低いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。好ましくは、評価の信頼性向上のために、細胞内の尿酸と試験液中の尿酸の両方を測定して評価する。

【0030】
1-3.EUT/SNBT1共発現細胞から構成された細胞層を用いたスクリーニング
第1のスクリーニング方法の第3態様として、SLC52A1(EUT)とSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞で構成された細胞層を用いたスクリーニング方法が提供される。当該スクリーニング方法では、以下のステップ(i)~(iii)を行う。尚、特に言及しない事項については、上記の第1態様と同様であるため、その説明を省略する。
(i)SLC52A1(EUT)とSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞で構成された細胞層を、多孔性の培養面上に形成させるステップ
(ii)尿酸を含有する第1試験液が前記細胞層の上面側に接触し、被験物質を含有する第2試験液が前記培養面の孔を介して前記細胞層の下面側に接触した条件の下、前記細胞層を所定時間インキュベートするステップ
(iii)前記細胞層を介して前記第1試験液から前記第2試験液へと移行した尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ

【0031】
ステップ(i)では、典型的には、SLC52A1(EUT)とSNBT1を強制発現させた哺乳動物細胞(EUT/SNBT1共発現細胞)を多孔性の培養面の上で培養し、細胞層を形成させる。具体的には例えば、培養面(底面)が半透過性膜(多孔性膜)の内側容器(一般にインサートと呼ばれる)がウェルに装着されることで、内側容器内の培養区画(上部区画)と、内側容器とウェルとの間の培養区画(下部区画)が形成される培養容器(例えば、コーニング社が提供するTranswell(登録商標)、Merck社が提供するMillicellセルカルチャーインサート)を使用し、インサート内にEUT/SNBT1共発現細胞を播種して培養することにより、EUT/SNBT1共発現細胞で構成された細胞層を形成させる。インサートの培養面の材質は例えばポリエステル(PET)、ポリカーボネートであり、培養面に形成された孔のサイズ(ポアサイズ)は例えば0.4~8.0μm(直径)であり、孔の密度(ポア密度)は例えば1×105~4×106/cm2である。

【0032】
ステップ(ii)では、尿酸を含有する第1試験液が細胞層の上面側に接触する状態と、被験物質を含有する第2試験液が培養面の孔を介して細胞層の下面側に接触した状態を形成し、培養する。上記の如き、インサートを備えた培養容器を用いた場合、典型的には、細胞層が形成された後、直ちに、又は所定時間(例えば1分~24時間)経過した段階で、インサート内(上部区画)の培養液を第1試験液に交換するとともに、ウェル内(下部区画)の培養液を第2試験液に交換する。第1試験液に尿酸を、第2試験液には被験物質を予め添加しておけば、培養液を試験液に交換することによって、ステップ(ii)のインキュベートに必要な条件が形成される。インサート内の培養液を、尿酸を含まない試験液に交換し、その後、尿酸を添加することにしてもよい。同様にウェル内の培養液を、被験物質を含まない試験液に交換し、その後、被験物質を添加することにしてもよい。尚、尿酸を含有する第1試験液が細胞層の上面側に接触する状態と、被験物質を含有する第2試験液が培養面の孔を介して細胞層の下面側に接触した状態は、いずれを先に形成してもよく、また、実質的に時間差のないように両者を形成してもよい。

【0033】
尿酸の添加量、即ち、試験液中の尿酸濃度は第1態様に準ずる。被験物質の添加量、即ち試験液中の被験物質濃度も同様である。

【0034】
インキュベート時間は、例えば1分~3時間、好ましくは10分~3時間、更に好ましくは10分~2時間である。尚、最適なインキュベート時間は予備実験によって決定することができる。

【0035】
ステップ(iii)では、細胞層を介して第1試験液から第2試験液へと移行した尿酸の量を測定し、測定結果を基に被験物質の有効性を評価する。EUT/SNBT1共発現細胞で構成された細胞層では、細胞層の上面側に発現するSNBT1によって、第1試験液中の尿酸が細胞層の上面側から細胞内へと輸送される。一方、細胞層の下面側に発現するEUTが濃度勾配に従い、細胞内に輸送された尿酸を細胞外、即ち、第2試験液中へと排出する。このように、細胞層及び培養面の孔を介して、第1試験液から第2試験液へと尿酸が移行する。被験物質がEUTに対して阻害活性を示せば、細胞外へ排出される尿酸の量、即ち、細胞層を介して第1試験液から第2試験液へと移行する尿酸の量が減少する。即ち、第1試験液から第2試験液への尿酸の移行量が減少することは、被験物質がEUTを阻害する活性を示すこと(有効な物質であること)の指標となる。一方、第1試験液から第2試験液へと移行する尿酸の量の減少率は被験物質の阻害活性の強さを反映する。従って、尿酸の移行量を測定すれば、被験物質が阻害活性を示すか否かに加え、被験物質の阻害活性の強さも評価できる。

【0036】
尿酸の移行量は即ち、第2試験液中に存在する尿酸量であることから、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした細胞層(対照群)に比較して第2試験液中の尿酸レベルが低いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。

【0037】
1-4.EUT/BCRP共発現細胞から構成された細胞層を用いたスクリーニング
第1のスクリーニング方法の第4態様として、SLC52A1(EUT)とBCRPを強制発現させた哺乳動物細胞、即ち、遺伝子導入によってSLC52A1(EUT)とBCRPが共発現する細胞(「EUT/BCRP共発現細胞」と呼ぶ)で構成された細胞層を用いたスクリーニング方法が提供される。当該スクリーニング方法では、以下のステップ(i)~(iii)を行う。尚、特に言及しない事項については、上記の第1態様と同様であるため、その説明を省略する。
(i)SLC52A1(EUT)とBCRPを強制発現させた哺乳動物細胞で構成された細胞層を多孔性の培養面上に形成させるステップ;
(ii)第1試験液が前記細胞層の上面側に接触し、尿酸と被験物質を含有する第2試験液が前記培養面の孔を介して前記細胞層の下面側に接触した条件の下、前記細胞層を所定時間インキュベートするステップ;
(iii)前記細胞層を介して前記第2試験液から前記第1試験液へと移行した尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ。

【0038】
ステップ(i)は、使用する細胞が異なること以外、第3態様と同様である。この態様では、EUT/BCRP共発現細胞を用い、細胞層を形成させる。BCRPは小腸上皮細胞の管腔側膜に局在し、尿酸を管腔に排出するトランスポーターとして知られている。好ましくは、ヒトBCRPが採用されるが、本発明において必要な機能(即ち、細胞内に輸送された尿酸の細胞外の排出)を発揮する限りにおいて、他の動物種のBCRPを用いることもできる。公共のデータベース(NCBI)に登録されているヒトBCRPタンパク質のアミノ酸配列を配列番号5(ACCESSION: NP_004818.2 NP_001335918.1 NP_001335917.1 NP_001335915.1 NP_001335914.1、DEFINITION: ATP-binding cassette sub-family G member 2 isoform 1 [Homo sapiens])に示す。また、ヒトBCRP遺伝子の配列を配列番号6(ACCESSION: NM_004827.2、DEFINITION: Homo sapiens ATP binding cassette subfamily G member 2 (Junior blood group) (ABCG2), transcript variant 1, mRNA)に示す。

【0039】
ステップ(ii)では、第1試験液が細胞層の上面側に接触する状態と、尿酸と被験物質を含有する第2試験液が培養面の孔を介して細胞層の下面側に接触した状態を形成し、培養する。即ち、この態様では、細胞層の下面側に接触する試験液(第2試験液)に尿酸と被験物質の両者が添加される。例えば、インサートを備えた培養容器を用いた場合、細胞層が形成された後、直ちに、又は所定時間(例えば1分~24時間)経過した段階で、インサート内(上部区画)の培養液を第1試験液に交換するとともに、ウェル内(下部区画)の培養液を第2試験液に交換する。第2試験液に尿酸と被験物質を予め添加しておけば、培養液を試験液に交換することによって、ステップ(ii)のインキュベートに必要な条件が形成される。ウェル内の培養液を、尿酸も被験物質も含まない試験液に交換し、その後、尿酸と被験物質を添加することにしてもよい。尿酸のみを含む試験液に交換し、その後、被験物質を添加するといった手順、或いは、被験物質のみを含む試験液に交換し、その後、尿酸を添加するといった手順によって、ステップ(ii)のインキュベートに必要な条件が形成されることにしてもよい。尚、第1試験液が細胞層の上面側に接触する状態と、尿酸と被験物質を含有する第2試験液が培養面の孔を介して細胞層の下面側に接触した状態は、いずれを先に形成してもよく、また、実質的に時間差のないように両者を形成してもよい。

【0040】
尿酸の添加量、即ち、試験中の尿酸濃度は第1態様に準ずる。被験物質の添加量、即ち試験液中の被験物質濃度も同様である。

【0041】
インキュベート時間は、例えば1分~3時間、好ましくは10分~3時間、更に好ましくは10分~2時間である。尚、最適なインキュベート時間は予備実験によって決定することができる。

【0042】
ステップ(iii)では、細胞層を介して第2試験液から第1試験液へと移行した尿酸の量を測定し、測定結果を基に被験物質の有効性を評価する。EUT/BCRP共発現細胞からなる細胞層では、細胞層の下面側に発現するEUTによって、第2試験液中の尿酸が培養面の孔を介して細胞層の下面側から細胞内へと輸送される。一方、細胞層の上面側に発現するBCRPが、細胞内に輸送された尿酸を細胞外、即ち、第1試験液中へと排出する。このように、培養面の孔及び細胞層を介して、第2試験液から第1試験液へと尿酸が移行する。被験物質がEUTに対して阻害活性を示せば、細胞内への尿酸の輸送量が減少し、それに伴い、BCRPによる細胞外への尿酸の排出量も減少する。その結果、細胞層を介して第2試験液から第1試験液へと移行する尿酸の量が減少する。即ち、尿酸の移行量が減少することは、被験物質がEUTを阻害する活性を示すこと(有効な物質であること)の指標となる。一方、尿酸の移行量の減少率は被験物質の阻害活性の強さを反映する。従って、尿酸の移行量を測定すれば、被験物質が阻害活性を示すか否かに加え、被験物質の阻害活性の強さも評価できる。

【0043】
尿酸の移行量は即ち、第1試験液中に存在する尿酸量であることから、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした細胞層(対照群)に比較して第1試験液中の尿酸レベルが低いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。

【0044】
2.アフリカツメガエル卵母細胞発現系を利用したin vitroスクリーニング
第2のスクリーニング方法は、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いることを特徴とする。当該発現系によれば、尿酸の細胞内への取り込み(第1態様)と排出(第2態様)の両方を評価可能である。尚、特に言及しない事項については、上記の第1のスクリーニング方法と同様であるため、その説明を省略する。

【0045】
2-1.卵母細胞内への尿酸の取り込みに対する阻害活性の評価
第1態様は、尿酸が細胞内へと取り込まれる状態のアフリカツメガエル卵母細胞を調製し、尿酸の取り込みに対する被験物質の阻害活性を調べる。具体的には以下のステップを行う。
(1)SLC52A1(EUT)をコードするRNAの導入によってSLC52A1(EUT)を強制発現させたアフリカツメガエル卵母細胞を用意するステップ
(2)尿酸と被験物質を含有する試験液内で前記卵母細胞を所定時間インキュベートするステップ
(3)前記卵母細胞内へ取り込まれた尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ

【0046】
ステップ(1)では、SLC52A1(EUT)を強制発現させたアフリカツメガエル卵母細胞(以下、「EUT発現卵母細胞」)を用意する。EUT発現卵母細胞は常法で調製すればよい。即ち、典型的には、SLC52A1(EUT)のcDNAを鋳型としたRT-PCR等の方法によって、SLC52A1(EUT)をコードするRNAとしてのcRNAを得た後、当該cRNAを、別途用意したアフリカツメガエル卵母細胞にマイクロインジェクションで導入し、適切な条件(例えば17℃~19℃)でインキュベートする。SLC52A1(EUT)をコードするcRNAの配列の具体例を配列番号7に示す。

【0047】
ステップ(2)では、尿酸と被験物質を含有する試験液内でEUT発現卵母細胞をインキュベート(所定温度、例えば24℃~26℃で維持)する。具体的には、EUT発現卵母細胞を試験液に浸漬し、インキュベートする。試験液に予め尿酸(例えば[14C]尿酸)及び被験物質を添加しておいても、或いは、EUT発現卵母細胞の浸漬後に尿酸若しくは被験物質又はこれら両方を試験液に添加することにしてもよい。

【0048】
ステップ(3)では、卵母細胞内に取り込まれた尿酸の量を測定し、測定結果を基に被験物質の有効性を評価する。まず、卵母細胞内及び/又は試験液内の尿酸を測定し、測定結果から、卵母細胞内へ取り込まれた尿酸の量を求める。EUT発現卵母細胞では、EUTが濃度勾配に従い、試験液中の尿酸を卵母細胞内へ輸送する。即ち、試験液中の尿酸が卵母細胞内へ取り込まれる。被験物質がEUTに対して阻害活性を示せば、卵母細胞内へ取り込まれる尿酸の量が減少する。即ち、卵母細胞内への尿酸の取り込み量が減少することは、被験物質がEUTを阻害する活性を示すこと(有効な物質であること)の指標となる。一方、尿酸の取り込み量の減少率は被験物質の阻害活性の強さを反映する。従って、尿酸の取り込み量を測定すれば、被験物質が阻害活性を示すか否かの判定に加え、被験物質の阻害活性の強さも評価できる。

【0049】
卵母細胞内の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした卵母細胞(対照群)に比較して卵母細胞内の尿酸レベルが低いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。同様に、試験液中の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした卵母細胞(対照群)に比較して試験液中の尿酸レベルが高いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。好ましくは、評価の信頼性向上のために、卵母細胞内の尿酸と試験液中の尿酸の両方を測定して評価する。

【0050】
2-2.卵母細胞からの尿酸の排出に対する阻害活性の評価
第2態様は、尿酸が細胞内から排出される状態のアフリカツメガエル卵母細胞を調製し、尿酸の排出に対する被験物質の阻害活性を調べる。具体的には以下のステップを行う。尚、特に言及しない事項については、上記の第1態様と同様であるため、その説明を省略する。
(1)SLC52A1(EUT)をコードするRNAの導入によってSLC52A1(EUT)を強制発現させたアフリカツメガエル卵母細胞を用意するステップ
(2)前記卵母細胞に尿酸を導入した後、被験物質を含有する試験液内で所定時間インキュベートするステップ
(3)卵母細胞から排出された尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ

【0051】
ステップ(1)は上記第1態様と同様である。続くステップ(2)では、まず、ステップ(1)で用意したEUT発現卵母細胞に尿酸を導入する。例えば、尿酸(例えば[14C]尿酸)を含む溶液をマイクロインジェクションでEUT発現卵母細胞に注入する。尿酸が導入されたEUT発現卵母細胞を、被験物質を含有する試験液内でインキュベート(所定温度、例えば24℃~26℃で維持)する。具体的には、EUT発現卵母細胞を試験液に浸漬し、インキュベートする。試験液に予め被験物質を添加しておいても、或いは、EUT発現卵母細胞の浸漬後に被験物質を試験液に添加することにしてもよい。

【0052】
ステップ(3)では、卵母細胞から排出された尿酸の量を測定し、測定結果を基に被験物質の有効性を評価する。まず、卵母細胞内及び/又は試験液内の尿酸を測定し、測定結果から、卵母細胞から排出された尿酸の量を求める。EUTを発現する卵母細胞では、EUTが濃度勾配に従い、卵母細胞中の尿酸を細胞外へ輸送する。即ち、卵母細胞中の尿酸が試験液へと排出される。被験物質がEUTに対して阻害活性を示せば、卵母細胞から排出される尿酸の量が減少する。即ち、卵母細胞からの尿酸の排出量が減少することは、被験物質がEUTを阻害する活性を示すこと(有効な物質であること)の指標となる。一方、尿酸の排出量の減少率は被験物質の阻害活性の強さを反映する。従って、尿酸の排出量を測定すれば、被験物質が阻害活性を示すか否かの判定に加え、被験物質の阻害活性の強さも評価できる。

【0053】
卵母細胞内の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした卵母細胞(対照群)に比較して卵母細胞内の尿酸レベルが高いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。同様に、試験液中の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件とした卵母細胞(対照群)に比較して試験液中の尿酸レベルが低いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。好ましくは、評価の信頼性向上のために、卵母細胞内の尿酸と試験液中の尿酸の両方を測定して評価する。

【0054】
3.トランスジェニック動物を用いたin vivoスクリーニング
本発明の第3のスクリーニング方法はトランスジェニック動物を用いたin vivoスクリーニング系である。第3のスクリーニング方法は単独でも、EUT阻害作用を示す物質を選抜/選択する手段として有用であるが、in vitroスクリーニング系(第1のスクリーニング方法、第2のスクリーニング方法)と併用すれば、より効率的なスクリーニングを実現できる。

【0055】
このスクリーニング方法では、以下のステップ(I)~(VI)を行い、尿酸排泄促進剤として有効ないし有望な物質を特定する。尚、特に言及しない事項は、第1のスクリーニング方法と同様である。
(I)SLC52A1(EUT)を発現するトランスジェニック齧歯類動物を用意するステップ
(II)前記トランスジェニック齧歯類動物の小腸の一部の両端を結紮し、小腸ループを作成するステップ
(III)前記小腸ループ内を洗浄した後、試験液で充たすステップ
(IV)前記トランスジェニック齧歯類動物に対して静脈より尿酸を投与するとともに、被験物質を投与するステップ
(V)所定時間経過後又は経時的に、前記トランスジェニック齧歯類動物の血液及び/又は小腸ループの内液を採取するステップ
(VI)採取した血液及び/又は小腸ループ内液中の尿酸の量を測定し、被験物質の有効性を評価するステップ

【0056】
ステップ(I)では、SLC52A1(EUT)を発現するトランスジェニック齧歯類動物(以下、「EUT発現TG動物」)を用意する。特定の遺伝子が導入されたトランスジェニック齧歯類動物の作出方法は確立されている。本発明で使用するトランスジェニック齧歯類動物は標準的な方法(受精卵の前核に直接DNAの注入を行うマイクロインジェクション法、レトロウイルスベクターを利用する方法、ES細胞を利用する方法など)によって作出すればよい。齧歯類動物の例は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギである。好ましい齧歯類はマウスである。即ち、好ましい態様では、EUTを発現するトランスジェニックマウスを用意する。以下、トランスジェニックマウスの作出方法の一例として、マイクロインジェクション法を利用したものについて説明する。

【0057】
マイクロインジェクション法では、まず交尾が確認された雌マウスの卵管より受精卵を採取し、そして培養した後にその前核に所望のDNAコンストラクト(外来性DNA)の注入を行う。DNAコンストラクトの形態は特に限定されないが、導入効率の点から直鎖状又は環状であることが好ましい。特に好ましくは、直鎖状に調製したDNAコンストラクトを使用する。導入目的の遺伝子が効率的に染色体に組み込まれ、且つその良好な発現が確保できるようにDNAコンストラクトを調製する。

【0058】
注入操作を終了した受精卵を偽妊娠マウスの卵管に移植し、移植後のマウスを所定期間飼育して仔マウス(F0)を得る。仔マウスの染色体に導入遺伝子が適切に組込まれていることを確認するために、仔マウスの尾などからDNAを抽出し、サザンハイブリダイゼ-ション分析、スロットブロット(ドットブロット)分析、PCR分析等を実施する。

【0059】
次に、同定されたトランスジェニック個体を他のマウスとの交配に供する。得られたオスのヘテロ型トランスジェニックマウス(外来性DNAをヘテロ型に保有する)とメスのヘテロ型トランスジェニックマウス(外来性DNAをヘテロ型に保有する)を交配すれば、ホモ型トランスジェニックマウス(外来性DNAをホモ型に保有する)を得ることができる。

【0060】
ステップ(II)では、EUT発現TG動物の小腸の一部(空腸~回腸の一部分。例えば十二指腸空腸曲より約2 cm下部から下へ10 cmの空腸領域、盲腸より約2 cm上部から上へ10 cmの回腸領域)の両端を結紮し、小腸ループを作成する。尚、通常は、小腸ループの作成に先立って、uricase阻害剤(例えばsodium oxonate)をEUT発現TG動物に投与し、内因性の尿酸分解酵素uricaseの活性を阻害しておく。

【0061】
作成した小腸ループ内は、洗浄後、試験液で充たされる(ステップ(III))。洗浄には生理食塩水等を用いればよい。また、試験液には、リン酸緩衝液等を用いることができる。

【0062】
以上の処置を施したEUT発現TG動物に対して静脈(例えば頸静脈)より尿酸を投与するとともに、被験物質を投与する(ステップ(IV))。尿酸としては、安定同位体(例えば1,3-15N2 尿酸)を採用するとよい。尿酸の投与は単回、連続的、又は間欠的(所定の間隔で複数回投与)に行われる。尿酸の投与量は例えば10 mg/kgとする。

【0063】
典型的には、被験物質の投与は、尿酸と同様に経静脈的に行われるが、経口投与(例えば餌又は飲用水に被験物質を混合する)、腹腔内投与等を採用することにしてもよい。尿酸の投与と被験物質の投与のタイミング、順序などは特に問わない。尿酸及び被験物質を経静脈投与する場合には、例えば、(i)尿酸の投与開始後、所定時間経過したときに被験物質の投与を開始する、(ii)被験物質の投与開始後、所定時間経過したときに尿酸の投与を開始する、(iii)尿酸の投与と被験物質の投与を同時に開始する、等の投与スケジュールを採用できる。

【0064】
ステップ(IV)から所定時間経過後又は経時的に、血液又は小腸ループの内液、或いはこれらの両者を採取する(ステップ(V))。血液は例えば尾静脈、頸静脈、下大静脈等から採取すればよい。通常は、次のステップ(尿酸量の測定)のために、採取した血液から血漿又は血清を調製しておく。小腸ループの内液は定量的な分析が容易となるように全量を回収するとよい。

【0065】
ステップ(VI)では、採取した血液及び/又は小腸ループ内液中の尿酸の量を測定し、測定結果を基に被験物質の有効性を評価する。血液中の尿酸量の測定には、採取した血液から調製した血漿又は血清を用いるとよい。まず、血液及び/又は小腸ループ内液中の尿酸を測定し、測定結果から、小腸内へ排泄された尿酸の量を求める。EUT発現TG動物の小腸では、EUTが濃度勾配に従い、小腸上皮細胞内の尿酸を血液中へと輸送する。被験物質がEUTに対して阻害活性を示せば、小腸上皮細胞内の尿酸量が増大し、それに応じて腸管内へと排泄される尿酸の量が増大する。即ち、尿酸の排泄量が増大することは、被験物質がEUTを阻害する活性を示すこと(有効な物質であること)の指標となる。一方、尿酸の排泄量の増大率は被験物質の阻害活性の強さを反映する。従って、尿酸の排泄量を測定すれば、被験物質が阻害活性を示すか否かの判定に加え、被験物質の阻害活性の強さも評価できる。

【0066】
血液中の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件としたEUT発現TG動物(対照群)に比較して血液中の尿酸レベルが低いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。同様に、小腸ループ内の尿酸を測定する場合は、被験物質の非存在下であること以外は同一の条件としたEUT発現TG動物(対照群)に比較して小腸ループ内の尿酸レベルが高いときに被験物質の有効性が認められることになる。また、対照群との尿酸レベルの差(相違)に基づき被験物質の阻害活性の強さを評価できる。好ましくは、評価の信頼性向上のために、血液中の尿酸と小腸ループ内の尿酸の両方を測定して評価する。

【0067】
本発明のスクリーニング方法(第1~第3のスクリーニング方法)によって選択された化合物が十分な活性を有する場合には、当該化合物をそのまま治療薬の有効成分として使用することができる。一方で十分な活性を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で、治療薬の有効成分として当該化合物を使用することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。

【0068】
本明細書で特に言及しない事項(条件、操作方法など)については常法に従えばよく、例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)、Current protocols in Immunology, John Wiley& Sons Inc等を参考にすることができる。
【実施例】
【0069】
<新規尿酸トランスポーター(EUT)の探索・同定>
ヒトゲノム配列の解析より、ヒトが保有する遺伝子の数は約2万2千個であることが報告され、そのうち膜タンパク質が占める割合は25%程度と考えられている。そこから、レセプターや酵素に関わる遺伝子群を除外すると、トランスポーターをコードする遺伝子数は、千個程度と考えられる。しかし、現在までに機能が同定されているトランスポーター遺伝子は300個程度であることから、機能未知のトランスポーターをコードする遺伝子はその半数以上も存在すると推定される。
【実施例】
【0070】
トランスポーターの多くは細胞膜を貫通する領域(膜貫通領域)を4~24箇所保有している。そこで、まず、ヒトの染色体DNA配列情報から機能未知の膜貫通型(4回以上の貫通型)と推定されるタンパク質をコードする遺伝子を抽出した。それらについて、遺伝子の発現情報を集積したexpressed sequence tag(EST)データベースの情報との照合を行い、小腸において高い発現が予測された遺伝子を候補遺伝子として選別した。そして、選別された候補遺伝子をクローニングし、そのオープンリーディングフレーム(ORF)を哺乳類発現ベクターに組み込み、遺伝子導入用プラスミドを作製した。各遺伝子(プラスミド)をヒト胎児腎由来HEK293細胞に一過性に導入・発現させ、[14C]尿酸の細胞内取り込み評価を行った(実験方法については、<尿酸トランスポーター(EUT)の特性・機能の評価>、1.方法の欄を参照)。その結果、[14C]尿酸の取り込み輸送活性を持つEUTを新たな尿酸トランスポーターとし同定するとこに成功した。
【実施例】
【0071】
<尿酸トランスポーター(EUT)の特性・機能の評価>
1.方法
1-1.EUTの哺乳類細胞発現系
(1)ヒトEUTのクローニング
ヒトEUTのcDNAは、ヒト小腸総RNA試料(Clontech, U.S.A.)よりRT-PCR法によってクローニングした。3μgの総RNAを用い、オリゴdTプライマーと逆転写酵素ReverTra Ace(TOYOBO, Japan)を用いてRT反応を行うことによってcDNA試料を得た。続いてのPCR反応によるEUTのクローニングには、KOD plus polymerase (TOYOBO, Japan)を用い、GenBankに登録されている配列(gene No. NM_017986.3)より設計した以下のプライマーを用いた。
5’ GTC GCT GTA CCC AAA CGC ACA 3’ (フォワードプライマー)(配列番号8)
5’ GGT GGG GTG GAG TTG GGT C 3’ (リバースプライマー)(配列番号9)
【実施例】
【0072】
これによってできたPCR産物を鋳型として、制限酵素サイト(下線部)をデザインしたプライマーを用い、再びPCRを行った。プライマーとしては以下のものを使用した。
5’ GAG AAT TCC GGA ATG GCA GCA CCC AC 3’ (フォワードプライマー, +EcoRIサイト)(配列番号10)
5’ GGT CTA GAG GTG GGG TGG AGT TGG G 3’ (リバースプライマー, +XbaIサイト)(配列番号11)
【実施例】
【0073】
増幅されたPCR産物をEcoRIとXbaIで処理し、哺乳類発現ベクターであるpCI-neo vector、pEGFP-C1 vector、pcDNA3.1-Hygro vectorにライゲーションし、目的のクローン化EUT cDNAを組み込んだプラスミドを得た。また、mKate2付加体も作製した。得られたEUTのcDNA配列は、自動シークエンサー(ABI PRISM 3100, Applied Biosysytems, U.S.A.)にて確認した。
【実施例】
【0074】
(2)HEK293細胞を用いたEUT一過性発現系の作成
24ウェルプレートにHEK293細胞(ヒト胎児腎臓由来細胞)を播種後、約24時間培養し、細胞の集密度が80%程度であることを確認したうえで、リポフェクション法を用いてpCI-neo vectorに組み込んだEUTプラスミドを導入し、24~36時間の培養によって、一過性にEUTを発現させた。24ウェルプレートは、HEK293細胞の特性を考慮し、あらかじめpoly-L-lysine (M.W. 70000~150000, Sigma, MO, U.S.A.) によりコーティングしたものを用いた。なお、細胞培養メディウムとして10% FBS、1% penicillin/streptomycinを含むDMEMを使用し、37℃、95% air-5% CO2インキュベーター内で培養した。また、対照としてpCI-neo vectorのみを導入したmock細胞を作成した。
【実施例】
【0075】
(3)MDCKII細胞を用いたEUT安定発現系の作成
リポフェクション法を用いてpCI-neo vectorに組み込んだEUTプラスミドもしくはpEGFP-C1 vectorに組み込んだEUTプラスミドをMDCKII細胞(イヌ腎由来細胞)に導入し、96ウェルプレートにて培養した。細胞培養メディウムとして10% FBS、800 μg/mlのgeneticinを含むDMEMを使用し、37℃、95% air-5% CO2インキュベーター内で3週間培養した。抗生物質耐性のクローンを選択し、EUT、GFP-EUTの発現を[14C]尿酸の取り込み活性により確認した。また、対照としてpCI-neo、pEGFP-C1 vectorのみを導入したmock細胞を作成した。
【実施例】
【0076】
(4)細胞内局在の評価
GFP-EUT安定発現系MDCKII細胞はTranswell(登録商標)インサート(ポリカーボネート膜、3.0 μm ポアサイズ, 1 cm2)に1×105 cells/cm2(0.5 ml)となるように播種した。インサートを12ウェルプレートのウェル(メディウムは1.5 ml)に設置し、5日間の培養によって細胞を分化させた。このとき、培地交換を2日に一度行った。その細胞を氷冷したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて2回洗浄した後、3%パラホルムアルデヒドを用いて固定した。0.1% TritonX-100を含むPBSにて室温30分間の浸透化処理を行った後、PBSにて2回洗浄し、10 μMのDAPIを含むPBSにて室温で30分間処理した。その後、プレパラートで封入し、GFP-EUTを蛍光観察した。蛍光の観察には、共焦点レーザー顕微鏡(LMS510 Zeiss Jena, Germany)を用いた。
【実施例】
【0077】
(5)取り込み実験
各トランスポーターを発現させたHEK293細胞(一過性発現系)、MDCKII細胞(安定発現系)は、24ウェルプレートで培養したものを用いた。まず、ウェル中のメディウムを吸い取り、1.5 mlのHanks’ solutionを加えて37℃にて5分間プレインキュベーションした。続いて、プレインキュベーション液を除き、取り込み試験液([14C]尿酸含有)を0.25 ml加え、取り込みを開始させた。所定の時間経過後、氷冷したstop solution (Hanks’ solution) を1 ml加え反応を停止させ、2 mlのstop solutionにて細胞を2回洗浄した。続いて、0.5% SDSを含む0.2 M NaOHを500 μl加え、細胞を可溶化させた。なお、pH調整の目的で、Hanks’ solutionには、10 mM MES(pH 5.0からpH 6.0)または10 mM HEPES (pH 6.5以上)を添加した。
【実施例】
【0078】
可溶化した細胞懸濁液を入れたカウンティングバイアルに液体シンチレーションカクテル3 mlを加え、ボルテックスにより撹拌した。液体シンチレーションカウンター (LSC-5100, Aloka Co., Tokyo, Japan) により放射能を測定した。Lowry法により、タンパク定量を行い、ウェル中のタンパク量を求めた。
【実施例】
【0079】
1-2.EUTのアフリカツメガエル卵母細胞発現系
(1)EUT/pGHプラスミドからのcRNAの作製
EUT(cDNA)をpGHプラスミドに組み込み、制限酵素XhoIを用いて切断することで、直線状に開裂させた。その後、フェノール-クロロホルム抽出、エタノール沈殿を行い、0.2 μg/μlになるようにRNaseを含まない水で溶解し、EUTのcDNAテンプレートを作製した。
【実施例】
【0080】
作製したcDNAテンプレート (1 μg) をもとに、AmpliCap-Max T7 High Yield Message Marker Kit (Epicentre Biotechnologies, Madison, WI, USA) を用い、RT-PCRを行うことにより、EUTのcRNAを合成した。合成したcRNAは、エタノール沈殿を行った後、RNaseを含まない水により溶解させ (0.5 μg/μl)、EUTのcRNA試料とした。
【実施例】
【0081】
(2)EUTのアフリカツメガエル卵母細胞発現系の作製
アフリカツメガエルを氷水中で30分間放置し、氷冷麻酔した。氷冷麻酔後、下腹部を切開して数葉の卵胞を引き出し、一部を切除してOocyte Ringer 2 Solution (OR2: 82.5 mM NaCl, 2 mM KCl, 1 mM MgCl2, 5 mM HEPES/NaOH, pH 7.4) 中に移した。卵胞をピンセットで5 mm程度の大きさまでほぐし、液が濁らなくなるまでOR2により数回洗浄した。洗浄後、卵胞にOR2を加えて、全量が5 mlになるようにした。コラゲナーゼ (10 mg/1 ml)を加え、室温にてロータリーミキサー (NRC-20D, Nissin, Tokyo, Japan) で30 - 40分間回すことでコラゲナーゼ処理を行った。コラゲナーゼ処理は、大半の細胞が分散し、濾胞が細胞から剥がれていることを実体顕微鏡により確認できるまで行った。処理後、OR2でよく洗浄し、Modified Barth Solution (MBS: 88 mM NaCl, 1 mM KCl, 0.33 mM Ca(NO3)2, 0.41 mM CaCl2, 0.82 mM MgSO4, 2.4 mM NaHCO3, 10 mM HEPES/NaOH, pH 7.4) でさらに数回洗浄した。死細胞及び濾胞が残っている細胞を取り除き、penicillin(1000 units/ml)/streptomycin(100 μg/ml)を含むMBS中で、18℃にて一晩静置した。翌日、卵母細胞にEUTのcRNA (5 ng/50 nl) をマイクロインジェクションにより導入した。penicillin/streptomycinを含むMBS中で、12時間毎に死細胞や形の悪い卵母細胞の除去とMBSの交換を行いながら、18℃にて2日間インキュベーションし、EUTを発現させた。
【実施例】
【0082】
(3)アフリカツメガエル卵母細胞発現系における取り込み実験
取り込み試験液として、ND96 buffer(96 mM NaCl, 2 mM KCl, 1.8 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 5 mM HEPES/NaOH, pH 7.4)に[14C]尿酸を添加したものを用いた。取り込み実験は25℃で行った。卵母細胞を取り込み試験液 (250 μl) 中に入れることにより取り込みを開始させた。所定の時間経過後、氷冷したND96 buffer (pH 7.4, 2 ml) に卵母細胞を浸すことで取り込みを停止させ、さらに氷冷ND96 bufferで2回洗浄した。この卵母細胞を放射能測定用検体としてカウンティングバイアルに入れ、0.5 % SDSを含む0.2 M NaOH (300 μl) を加え、ボルテックスによりよく撹拌し、細胞を可溶化した。その後、Clear-sol I (3 ml) を加え、ボルテックスにより攪拌した後、液体シンチレーションカウンター (LSC-5100) により放射能を測定した。
【実施例】
【0083】
(4)アフリカツメガエル卵母細胞発現系におけるefflux実験
efflux試験液には、ND96 bufferを用いた。200 mM Mannitol水溶液にトレーサー量の[14C]尿酸と[3H]inulin(非透過性マーカー)を添加した。efflux試験液中で、卵母細胞に[14C]尿酸インジェクション溶液をマイクロインジェクション(50 nl) により導入した。efflux試験液(2 ml) に浸すことで卵母細胞に付着したイオン類を取り除き、別に用意したefflux試験液(250 μl) に卵母細胞を移すことでeffluxを開始させた。所定の時間経過後、氷冷したND96 buffer(pH 7.4, 2 ml) に卵母細胞を浸すことでeffluxを停止させ、さらに氷冷ND96 bufferで2回洗浄した。この卵母細胞を放射能測定用検体としてカウンティングバイアルに入れ、0.5 % SDSを含む0.2 M NaOH(300 μl) を加え、ボルテックスによりよく撹拌し、細胞を可溶化した。その後、液体シンチレーションカクテル(3 ml) を加え、ボルテックスにより攪拌した後、液体シンチレーションカウンター(LSC-5100) により放射能を測定した。また、実験終了後のefflux試験液から50 μlを採取してカウンティングバイアルに入れ、検体とした。可溶化細胞サンプルと同様に、液体シンチレーションカクテルを加えて放射能測定を行った。
【実施例】
【0084】
1-3.EUTとsodium-dependent nucleobase transporter 1(SNBT1)/Slc23a4の哺乳類細胞共発現系
(1)ラットSNBT1のクローニング
ラットSNBT1のcDNAは、Wistar系雄性ラットの小腸より抽出した総RNA試料より、RT-PCR法によってクローニングした。3 μgの総RNAを用い、オリゴdTプライマーと逆転写酵素ReverTra Ace (TOYOBO, Japan)を用いてRT反応を行うことによってcDNA試料を得た。続いてのPCR反応によるSNBT1のクローニングには、KOD plus polymerase (TOYOBO, Japan)を用い、GenBankに登録されている配列(gene No. NM_006236264.3)より設計した以下のプライマーを用いた。
5’ TCC AGT TGC CAT GAA CTC TG 3’ (フォワードプライマー)(配列番号12)
5’ CAC TGT GTG TTC ACC ACG GTA 3’ (リバースプライマー)(配列番号13)
【実施例】
【0085】
これによってできたPCR産物を鋳型として、制限酵素サイト(下線部)をデザインしたプライマーを用い、再びPCRを行った。プライマーとしては以下のものを使用した。
5’ ATT CTC GAG CTA TGA ACT CTG CAG TCT GCA 3’ (フォワードプライマー, +XhoIサイト)(配列番号14)
5’ GGT CTA GAG TTT TGC ATT TTG CAG GC 3’ (リバースプライマー, +XbaIサイト)(配列番号15)
【実施例】
【0086】
増幅されたPCR産物をXhoIとXbaIで処理し、哺乳類発現ベクターであるpCI-neo vectorにライゲーションし、目的のクローン化SNBT1 cDNAを組み込んだプラスミドを得た。得られたSNBT1のcDNA配列は、自動シークエンサー(ABI PRISM 3100, Applied Biosysytems, U.S.A.)にて確認した。
【実施例】
【0087】
(2)HEK293細胞を用いたEUT/SNBT1一過性共発現系の作製
24ウェルプレートにHEK293細胞(ヒト胎児腎臓由来細胞)を播種後、約24時間培養し、細胞の集密度が80%程度であることを確認したうえで、リポフェクション法を用いてpCI-neo vectorに組み込んだEUTプラスミドとpCI-neo vectorに組み込んだSNBT1を同時に導入し、24 - 36時間の培養によって、一過性にEUTとSNBT1を共発現させた。24ウェル プレートは、HEK293細胞の特性を考慮し、あらかじめpoly-L-lysine(M.W. 70000 - 150000, Sigma, MO, U.S.A.)によりコーティングしたものを用いた。なお、細胞培養メディウムとして10% FBS、1% penicillin/streptomycinを含むDMEMを使用し、37℃、95% air-5% CO2インキュベーター内で培養した。また、対照としてEUT/pCI-neo vector、SNBT1/pCI-neo vector、pCI-neo vectorのそれぞれを導入した細胞を作成した。
【実施例】
【0088】
(3)取り込み実験
各トランスポーターを発現させたHEK293細胞は、24ウェルプレートで培養したものを用いた。まず、ウェル中のメディウムを吸い取り、1.5 mlのHanks’ solutionを加えて37℃にて5分間プレインキュベーションした。続いて、プレインキュベーション液を除き、取り込み試験液([14C]尿酸含有)を0.25 ml加え、取り込みを開始させた。所定の時間経過後、氷冷したstop solution (Hanks’ solution) を1 ml加えて反応を停止させ、2 mlのstop solutionにて細胞を2回洗浄した。続いて、0.5% SDSを含む0.2 M NaOHを500 μl加え細胞を可溶化させた。なお、pH調整の目的で、Hanks’ solutionには、10 mM HEPESを添加した。
【実施例】
【0089】
可溶化した細胞懸濁液を入れたカウンティングバイアルに液体シンチレーションカクテル3 mlを加え、ボルテックスにより撹拌した。液体シンチレーションカウンター (LSC-5100, Aloka Co., Tokyo, Japan) により放射能を測定した。Lowry法により、タンパク定量を行い、ウェル中のタンパク量を求めた。
【実施例】
【0090】
1-4.EUTとbreast cancer resistant protein(BCRP)/ABCG2の哺乳類細胞共発現系
(1)ヒトBCRPのクローニング
ヒトBCRPのcDNAは、ヒト小腸総RNA試料(Clontech, U.S.A.) よりRT-PCR法によってクローニングした。3 μgの総RNAを用い、オリゴdTプライマーと逆転写酵素ReverTra Ace (TOYOBO, Japan)を用いて反応を行うことによってcDNA試料を得た。続いてのPCR反応によるBCRPのクローニングには、KOD plus polymerase (TOYOBO, Japan)を用い、GenBankに登録されている配列(gene No. NM_001348985.1)より設計した以下に示す2組のプライマーを用いた。
5’ TCC TGA GCC TTT GGT TAA GAC CGA 3’ (フォワードプライマー1)(配列番号16)
5’ TTT AGC CCA AAG TAA ATG GCA CCT 3’ (リバースプライマー1)(配列番号17)
5’ CCA TTC ATC AGC CTC GAT ATT CCA 3’ (フォワードプライマー2)(配列番号18)
5’ AGA CCA GAT TTC TTC CCC ATG GTT 3’ (リバースプライマー2)(配列番号19)
【実施例】
【0091】
これによってできたPCR産物を混合し鋳型として、制限酵素サイト(下線部)をデザインしたプライマーを用い、再びPCRを行った。プライマーとしては以下のものを使用した。
5’ GTA GAA TTC CCA GAT GTC TTC CAG TAA TG 3’ (フォワードプライマー, +XhoIサイト)(配列番号20)
5’ GAC TCT AGA GGA TAA ATC ATA CTG A 3’ (リバースプライマー, +XbaIサイト)(配列番号21)
【実施例】
【0092】
増幅されたPCR産物をXhoIとXbaIで処理し、哺乳類発現ベクターであるpCI-neo vectorにライゲーションし、目的のクローン化BCRP cDNAを組み込んだプラスミドを得た。得られたBCRPのcDNA配列は、自動シークエンサー(ABI PRISM 3100, Applied Biosysytems, U.S.A.)にて確認した。
【実施例】
【0093】
(2)MDCKII細胞を用いたEUT/BCRP安定共発現系の作製
MDCKII細胞は継代に際し、ビュルケルチュルク盤を用いて細胞数を計測した後、4.0 × 105 cells/mlとなるように調製し、24ウェルプレート(底面積1.91 cm2/well)に400 μl/wellずつ播種した。その直後、リポフェクション法を用いてBCRP/pCI-neoまたはmKate2-EUT/pcDNA3.1-HygroのcDNA(プラスミド)を導入し、発現させた。プラスミド導入の6時間後、培地交換し、さらにその24時間後、96ウェルプレートに播種した。さらにその24時間後、抗生物質が含まれた選択培地に交換し、遺伝子導入細胞のセレクションを2-3週間行った。その間、選択培地は2日毎に交換した。
【実施例】
【0094】
EUT/BCRP安定共発現細胞の作製に際しては、BCRP安定発現細胞にmKate2-EUT/pcDNA3.1-HygroのcDNA(プラスミド)を導入し、上記の手順でセレクション作業を行った。
【実施例】
【0095】
また、遺伝子を導入しないmock細胞として、pCI-neo vector及びpcDNA3.1-Hygroを導入し、上記の手順で作製したものを用いた。
【実施例】
【0096】
(3)Transwell(登録商標)を用いた経細胞輸送評価
取り込み実験用緩衝液として、Hanks’ buffer (136.7 mM NaCl, 5.36 mM KCl, 0.952 mM CaCl2, 0.812 mM MgSO4, 0.441 mM KH2PO4, 0.385 mM Na2HPO4, 25 mM D-glucose)に10 mM HEPES (pH 7.4)を加えたものを用いた。pHの調整には、2 M NaOHを用いた。この緩衝液中に[14C]尿酸を加え、取り込み試験液とした。
【実施例】
【0097】
EUT、BCRPまたはEUT/BCRPを安定発現させたMDCKII細胞を12 well Transwell(登録商標)(ポリカーボネート膜、4.0 μm ポアサイズ、1.12 cm2)に4.0×105 cells/cm2(0.5 ml)となるように播種した。その後、培地交換を4日に一度行い、1カ月間の培養によって細胞を分化させた。経細胞輸送実験では、まずインサート及びウェル中のメディウムを吸い取り、Hanks’ solution(apical側0.5ml、basal側1.5ml)を加えて37℃にて5分間プレインキュベーションした。プレインキュベーション液を除き、apical側またはbasal側の一方に4 μMの[14C]尿酸を含む取り込み試験液を加え、他方にHanks’ solutionを加えた。所定の時間経過後、取り込み試験液を加えていない方の溶液を100 μl取り、代わりにHanks’ solution 100 μlを加えた。サンプル(100 μl)に液体シンチレーションカクテル(2 ml)を加え、液体シンチレーションカウンターで放射能を測定した。なお、ここで用いたEUTはmKate2付加体(mKate2-EUT)である。
【実施例】
【0098】
1-5.ヒト空腸組織を用いたEUTの免疫染色
ホルマリン固定パラフィン包埋ヒト空腸は、Asterand Bioscience(MI、USA)から購入した。組織試料を3~4 μmの切片にし、抗原賦活液(Dako、pH6.0)で前処理した。 流水で洗浄した後、非特異的結合をブロッキング緩衝液(Dako、タンパク質ブロック血清を含まない)でブロックキングした。マウスモノクローナルBCRP抗体(Abcam、BXP-21)およびウサギ精製EUT抗体(KITAYAMA LABES)を、抗体希釈用緩衝液(Dako、S3022; 1:1000)で希釈し、4℃で一晩インキュベートした。ウサギ精製EUT抗体の作製のための抗原ペプチド(EKEEEEALPLQEPPSQAAGTI(配列番号22))はGENE WORLDより購入した。PBSで洗浄した後、AlexaFluor 488結合ヤギ抗ウサギIgG(H + L)およびAlexaFlour 568結合ヤギ抗マウスIgG(H + L)(Invitrogen; 1:1000)を含んだ抗体希釈用緩衝液(Dako、 S3022; 1:1000)でインキュベーションを1時間行った(室温)。続いて、DAPI(Roch Diagnostic GmgH)で核を染色し、切片を蛍光染色用マウンティングメディウム(Dako、S3023)で覆い、共焦点顕微鏡(Carl Zeiss Japan、LSM700)で観察した。
【実施例】
【0099】
1-6.小腸上皮細胞にヒトEUTを発現するEUTトランスジェニックマウス
(1)EUT遺伝子の発現カセットの作製
腸管での特異的な発現が認められるラットfatty acid-binding protein 2 (FABP2, NM_013068)に着目し、そのプロモータ配列を利用したヒトEUT遺伝子発現カセットを以下の手順により作製した。
【実施例】
【0100】
Wistar系雄性ラットの肝臓より粗抽出した染色体DNAを鋳型とし、FABP2遺伝子のプロモータ領域のDNA配列(スタートコドンの上流-1383 bp~+51 bpの領域)を以下のプライマーとKOD-plus DNA polymerase (Toyobo, Tokyo, Japan)を用いたPCR反応により増幅した。
フォワードプライマー: 5’- GGGTTATTTCTATAAAACGCTGCT -3’(配列番号23)
リバースプライマー: 5’- CTTTTCATAGTTCTCATTCCGGTCT -3’(配列番号24)
【実施例】
【0101】
サイクル条件としては、まず94℃で2分加熱した。その後、98℃で10秒、55℃で30秒、68℃で1分の条件で33サイクル繰り返した後、25℃で5分冷却した。
【実施例】
【0102】
次に、上述のPCR産物を鋳型として、FABP2遺伝子のプロモータ領域のDNA配列(スタートコドンの上流-1215 bp~-66 bpの領域)を以下の制限酵素認識部位を含むプライマーを用いて同様に増幅した。
フォワードプライマー: 5’- GGGGAGATCTAATTCCTTAATTTGCATAATTTAC -3’(配列番号25)
(下線部:BglII認識配列)
リバースプライマー: 5’- GCCGAATTCTATTTCTTATCTTCGAACC -3’(配列番号26)
(下線部:EcoRI認識配列)
【実施例】
【0103】
得られたPCR産物(FABP2プロモータDNA断片)およびEUT/pCI-neo vectorを制限酵素BglII (Toyobo)とEcoRI (Toyobo)で処理し、PCR産物をEUT/pCI-neo vector のCMVプロモータの部分に組み込んだFABP2プロモータ-EUT/pCI-neo vectorを作製した。
【実施例】
【0104】
(2)EUT遺伝子改変マウスの作製
受精卵インジェクションに用いる遺伝子カセットの調製(FABP2プロモータ-EUT遺伝子を含むDNA断片の精製)、その前核期受精卵へのインジェクションおよび受容雌マウスへの移植は、株式会社トランスジェニックに委託した。
【実施例】
【0105】
(3)実験動物
6~10週齢のC57BL/6系マウス(東京実験動物株式会社)及びそのEUT遺伝子改変マウス(株式会社トランスジェニック)を用いた。飼料と水は自由に与え、恒温(23 ± 1℃)、恒湿(55 ± 5%)、定時照明(明 7:00~19:00/暗 19:00~7:00)のSPF環境下で飼育した。動物の飼育、実験操作は「動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)」、「実験動物の飼養及び保管等に関する基準(昭和55年3月 総理府公示第6号)」及び「東京薬科大学動物実験規程(平成22年 東京薬科大学学長)」に則って行った。
【実施例】
【0106】
(4)EUT遺伝子改変マウスに対するジェノタイピング
マウス尾端から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、PCR反応による遺伝子増幅を指標にEUT遺伝子の有無を判定した。マウス尾端の断片(約3 mm)を50 mM NaOH (180 μL)を含むPCRチューブに移し、95℃で10分間インキュベーションした。反応終了後、1 M Tris-HCl (pH 8.0)を20 μL加え、溶液pHを中和し、遠心分離(15,000 rpm, 5分)後、上清を採取した。この溶液をゲノムDNAの鋳型とし、FABP2プロモータとEUTの連結領域を増幅する以下のプライマーとKOD-FX DNA polymerase (TOYOBO)を用いてPCR反応を行った。
フォワードプライマー: 5’- TTTCTTTTGGGGATAATGACACT -3’(配列番号27)
リバースプライマー: 5’- TACACTCAGCACCTGTACCAC -3’(配列番号28)
【実施例】
【0107】
サイクル条件としては、まず94℃で2分加熱した。その後、98℃で10秒、68℃で1分の条件で33サイクル繰り返した後、25℃で5分冷却した。得られたPCR産物を電気泳動し、PCR産物の長さ(992 bp)を確認した。
【実施例】
【0108】
(5)マウス腸管における尿酸排泄の検討
内因性の尿酸分解酵素であるuricaseの活性を阻害するため、尿酸投与の1時間前にuricase阻害剤であるsodium oxonate (25 mg/ mL saline/kg, i.p.) をマウスに腹腔内投与した。oxonate投与マウスをペントバルビタール(50 mg/mL/kg, i.p.)によって麻酔した後、開腹し、十二指腸空腸曲より約2 cm下部から盲腸より約2 cm上部までの腸管を確保し、空腸および回腸部それぞれの両端に2.5 mL注射筒シリンジと接続したカニューレを施すことで小腸(空腸・回腸部)ループを作成した。小腸ループ内を生理食塩水で洗浄した後、0.3 mM sodium oxonateを含む生理食塩水で充たし、頸静脈より1,3-15N2 尿酸 (1N NaOH : 60% meglumine : 1N HCl = 3 : 2 : 3 )を急速投与した (10 mg/0.2 mL/kg, i. v.)。また、定速静注実験では、100 U/mlのヘパリン生理食塩水を満たしたポリエチレンチューブを用いて、マウス頸静脈にカニュレーションを施し、インフージョンポンプを用いて1,3-15N2 尿酸 (10 mg/ mL) を200 μL/h/個体で投与した。
【実施例】
【0109】
各所定の時間(5分、10分、15分、 30分、60分、120分)にマウス尾静脈にカッターで切れ目を入れ、ヘパリン処理したヘマトクリット管を用いて血液を約40 μL採取した。得られた血液をPCR用マイクロチューブヘ移し、遠心分離(13,000 rpm、1分、4℃)後、血漿を5 μL採取した。また、120分後における小腸ループ内の残存液を約2 mLの0.3 mM sodium oxonateを含む生理食塩水で洗い出す作業を2回行い、全量を回収した。血漿および小腸内液はLC-MS/MSによる測定サンプルとして-80℃に保存した。
【実施例】
【0110】
各血漿試料 (5 μL) にメタノール5 μLおよび60 μLのIS含有メタノール(0.2 μg/mL theophylline in MeOH)、もしくは、各小腸内液試料 (50 μL) にメタノール5 μLおよび50 μLのIS含有メタノールを加えて穏やかに攪拌後、遠心分離(3,000 rpm、10分)した。上清50 μLを150 μLの5 mM CH3COONH4/0.1% CH3COOH(水系HPLC移動相)と混和し、遠心分離(3,000 rpm、5分)し、その上清をLC/MS/MSに注入して分析した。
【実施例】
【0111】
2.結果
(1)MDCKII細胞安定発現系での尿酸輸送機能解析:時間及び濃度依存性
ヒトEUTを一過性に発現させたHEK293細胞においては、mock細胞と比べ、高い尿酸輸送活性が観察された。しかし、mock細胞においても、EUT由来と思われる尿酸輸送活性が認められたため、HEK293細胞発現系はEUTの輸送解析に不適であった。そこで、MDCKII細胞安定発現系において尿酸輸送機能解析を行うことにした。
【実施例】
【0112】
MDCKII細胞安定発現系においても、mock細胞と比べ、高い尿酸輸送活性が観察された。時間依存性について検討したところ、尿酸輸送は2分までほぼ時間に比例して増加した(図1)。したがって、この時間範囲内において尿酸の取り込み初速度の評価が可能であると考え、以降の実験での取り込み時間を1分間とした。
【実施例】
【0113】
EUTによる尿酸輸送は顕著な濃度依存性を示し(図2)、トランスポーターとして機能していることが示唆された。そこで、ミカエリスーメンテン型の担体輸送を仮定して、モデル解析を行った。尿酸に対するミカエリス定数(Km)は0.53 mMであった。このKm値はヒトにおける尿酸の血中濃度(0.2~0.5 mM程度)と同程度であり、生体内においてEUTは尿酸輸送系として機能している可能性が強く示唆された。
【実施例】
【0114】
(2)MDCKII細胞安定発現系での尿酸輸送機能解析:pH及びイオン依存性
EUTによる尿酸輸送の駆動力を調べるために、pHとイオン類の影響について検討した。まず、pHの影響について検討した結果、尿酸輸送活性はpH低下に伴って上昇し、pH 4.0 - 5.5の範囲において最高となった(図3)。反応溶液の緩衝能、および極端な低pHでの細胞障害の危険性を勘案し、以降の検討はpH 5.5 にて行うこととした。
【実施例】
【0115】
次に尿酸取り込みに対する各種イオンの影響を検討した。Na+およびCl-の除去(mannitol置換)、Na+からK+への置換による膜の脱分極(KCl置換) のいずれも輸送活性には影響を及ぼさず、Cl-からgluconateへの置換(Na gluconate置換とK gluconate置換)の場合に輸送活性が増大した(図4)。Cl-のgluconate置換による輸送活性の増大の機構については現段階では不明である。
【実施例】
【0116】
EUTの弱いリボフラビン輸送活性が先に報告されているが、その輸送様式は、H+をはじめ、Na+等の各種イオンの影響を受けない促進拡散型とされている。それを考え合わせると、EUTの輸送機能にはH+の関与はない可能性が考えられる。pH変化により尿酸(pKa 5.75)のイオン化度は大きく変化するため、イオン型と非イオン型の構成比が大きく変わる。このことを考慮すると、尿酸のイオン型と非イオン型の間でEUTの輸送活性が異なるためにpH依存的な尿酸取り込み速度変化が観察されている可能性が考えられる。
【実施例】
【0117】
(3)MDCKII細胞安定発現系での尿酸輸送に対する各種薬物の影響
Yonezawaらにより、EUTの弱いリボフラビン輸送活性が報告されている(Yonezawa et al, Identification and functional characterization of a novel human and rat riboflavin transporter, RFT1, Am J Physiol Cell Physiol, 295, C632-C641, 2008)。そこで、尿酸輸送に対するリボフラビン及びその代謝物質であるFMNの影響を検討した(図5)。その結果、リボフラビンのIC50値は0.8 μM、FMNのIC50値は5.8 μMと算出された。リボフラビンやFMNの細胞内濃度(数nM程度)はこれらのIC50値より十分に低いため、リボフラビン及びその類似化合物が尿酸輸送に与える影響はほとんどないと考えられる。ただし、リボフラビンのEUT阻害活性は、下記の試験薬物に比べてはるかに強く、現時点では、最も強力なEUT阻害剤である。また、リボフラビン類似物質の中に強いEUT阻害剤が見出される可能性が考えられる。
【実施例】
【0118】
次に各種化合物の影響について検討した(表1)。有機アニオントランスポーターの代表的な阻害剤であるBSP、DIDS (1 mM)が強い阻害効果を示し、estrone sulfate (1mM)、が中程度の阻害効果を示した。しかし、他のアニオンであるbutylate、lactate、nicotinate、PAHやpyrazinateは比較的高濃度域(1~10 mM)においても阻害効果を示さないか、ごく弱い阻害効果を示す程度であった。腎尿細管刷子縁膜において尿酸の再吸収に関与しているURAT1はモノカルボン酸との交換輸送によって尿酸を細胞内に取り込むことが知られているが、EUTの輸送形態はURAT1とは異なり、モノカルボン酸類の関与はないものと考えられる。また、痛風治療薬ではbenzbromarone (0.1 mM)、sulfinpyrazone (1 mM)が中程度の阻害効果を示し、これらはBSP、DIDSと同等以上の阻害活性を有すると考えられた。しかし、allopurinol (0.5 mM)、oxypurinol (0.5 mM)、probenecid (1 mM)は尿酸輸送に大きく影響を与えないことが示唆された。
【表1】
JP2019031450A_000002t.gif
37℃、pH 5.5、1分間の条件でEUT特異的な[14C]尿酸 (4 μM)の取り込みを評価した。データは平均±S.E. (n = 4)で示した。*はコントロールとの間で有意差あり(p < 0.05)。コントロール値(14.0±0.40 pmol/min/mg タンパク質)に対する比率(%)として取り込み速度を示した。N.D.は「検出できず」を表す。
【実施例】
【0119】
(4)MDCKII細胞安定発現系での膜局在
分極化させたMDCKII細胞安定発現系を用い、GFP付加体のEUT(GFP-EUT)の細胞内局在の観察を試みた。GFPによる緑色の蛍光は側底膜に強く観察された事より、GFP-EUTはMDCKII細胞の側底膜に局在している事が明らかになった(図6)。MDCKII細胞の側底膜は小腸上皮細胞の血管側膜に相当しており、EUTは側底膜において、血管側との間の尿酸輸送を担うトランスポーターである可能性が示唆された。
【実施例】
【0120】
(5)アフリカツメガエル卵母細胞発現系での尿酸輸送機能解析
前項においてEUTが小腸上皮細胞の側底膜での尿酸輸送を担っている可能性が示唆されたことを受け、EUTによる尿酸輸送の方向性を探るため、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いて輸送解析を行った。
【実施例】
【0121】
EUTを発現させた卵母細胞での尿酸取り込みは、mock細胞での取り込みに比べて有意に大きく、EUTの尿酸輸送活性が確認された(図7)。また、その輸送活性は、低pH(酸性条件)で高く、pH上昇により低下したが、生体内環境に相当するpH 7.4でも認められた。EUTによる尿酸取り込み輸送のpH依存性の特徴は、MDCKII細胞安定発現系での結果と同様であったが、MDCKII細胞安定発現系では明確でなかった生体内環境相当のpHでの尿酸取り込み輸送活性を確認できた。一方、細胞内から外への尿酸排出輸送活性については、確認できなかった(データ省略)。
【実施例】
【0122】
(6)SNBT1/EUTの一過性共発現系細胞における尿酸の細胞内蓄積
尿酸の合成酵素であるキサンチンオキシダーゼは、肝臓の他に小腸においても多く発現していることが知られており、小腸は血中への尿酸の供給臓器としての側面も有すると考えられている。EUTが促進拡散型トランスポーターとみられることを考えると、小腸上皮細胞で合成された尿酸の血中への供給経路の役割をEUTが担っている可能性が考えられる。そこで、EUTが尿酸排出輸送活性を有する可能性について、さらに検討を行うこととした。そのための方法として、Na+依存的な尿酸の能動輸送機能を持つSNBT1を共導入したHEK293細胞を用い、SNBT1によって細胞内へ濃縮的に輸送・蓄積された尿酸に対するEUTの排出輸送活性を検討した(図8)。
【実施例】
【0123】
その結果、SNBT1単独発現細胞における細胞内尿酸蓄積に比べて、EUTとの共発現細胞での蓄積は有意に減少した。つまり、EUTが濃度勾配に従う促進拡散的な尿酸排出輸送活性も有していることが示唆され、小腸上皮細胞内で合成された尿酸の血中への供給経路の役割を担っている可能性が見出された。また、この排出輸送活性は、高濃度(100 μM)のリボフラビンによりほぼ完全に阻害されることも確認された。
【実施例】
【0124】
(7)EUT/BCRPの安定共発現系細胞における尿酸の経細胞輸送
上皮様単層細胞膜での尿酸の分泌(排出)方向輸送におけるEUTとBCRPの協働的機能を調べるため、低分子透過性の細孔を有するTranswell(登録商標)膜上にBCRP/EUT安定共発現系MDCKII細胞を単層培養し、basal側(側底膜側)からapical側(頂端膜側)への[14C]尿酸の輸送を検討した(図9)。また、比較のため、BCRPまたはEUTを単独導入した細胞での[14C]尿酸輸送も検討した。ここでのEUTは、mKate2付加体(mKate2-EUT)である。
【実施例】
【0125】
[14C]尿酸の透過は、BCRPまたはEUTの単独発現細胞においては、mock細胞における透過と同等の低レベルであったが、BCRP/EUT共発現細胞においては、有意に上昇した。これまでに、BCRPは小腸の頂端膜側に局在していることが報告されている。また、EUTは、側底膜に局在しているとみられる。したがって、この経細胞輸送試験結果は、BCRPとEUT が小腸上皮細胞の両膜において連携して機能し、小腸管腔側への尿酸排泄に働いている可能性を示唆している。
【実施例】
【0126】
(8)EUTのヒト小腸における局在
ヒト空腸の組織切片を用いて免疫染色を行った結果、上皮細胞の側底膜(血管側膜)におけるEUTの局在が明らかとなった(図10)。
【実施例】
【0127】
(9)EUTの遺伝学的解析
種々の動物種での染色体情報を元に、EUTのオーソログ及びホモログの探索を行った。チンパンジーやアカゲザルなどの一部の霊長類においては、EUTの存在が確認された。しかし、ラットやウシなどの動物種においては、染色体上に遺伝子配置の相同性を持つ領域は存在するが、EUTのオーソログは確認できなかった(図11)。また、従来ヒトEUT(SLC52A1)はラットRFT1(SLC52A1)のオーソログであると認識されており、ヒトRFT1としてラットRFT1と共に報告された。しかし、ラットRFT1のヒトオーソログは、RFT3であることが明らかとなった(図12)。
【実施例】
【0128】
次に、これらのトランスポーターの尿酸及びリボフラビンの輸送活性について検討した。その結果、ヒトEUTのみが顕著な尿酸輸送活性を有することが明らかとなった(図13)。ヒトRFT3は僅かに尿酸輸送活性を示したが、各種動物のRFT1はほとんど尿酸輸送活性を示さなかった。一方、ヒトEUTのリボフラビン輸送活性はヒトRFT3及び各種動物のRFT1と同程度であったが、ヒト及びラットのRFT2に比べ遥かに低かった(図14)。これにより、機能面からも上記の遺伝学的な解析結果が再確認された。
【実施例】
【0129】
(10)EUT遺伝子改変マウスにおける腸管での尿酸排泄の解析
腸管への尿酸排泄におけるヒトEUTの関与を明らかにするため、野生型マウスとヒトEUT遺伝子改変マウス(トランスジェニックマウス)に安定同位体標識した尿酸(標識尿酸:1,3-15N2 尿酸)を急速静注し、120分後における小腸(空腸)ループ内への尿酸排泄量を測定した。
【実施例】
【0130】
投与開始後120分における腸管内への標識尿酸の排泄量は、野生型マウス(コントロール)に比較し、EUTトランスジェニックマウスで顕著に低下していた(表2)。その排泄量及び排泄クリアランス(CLexc)の値は、共に、野生型マウスの約5%であった。
【表2】
JP2019031450A_000003t.gif
データは、コントロールについては平均±S.E. (n = 3)、Tgマウスについては平均±範囲 (n = 2)で示した。尿酸の投与量は10 mg/kgとした。尿酸排泄量を血漿濃度-時間曲線の面積(AUC)で割った値を排泄クリアランス(CLexc)とした。
【実施例】
【0131】
次に、標識尿酸を定速静注し、定常状態における血漿中濃度及び小腸(空腸及び回腸)ループ内への標識尿酸の排泄量を測定した。その結果、標識尿酸の血漿中濃度は、定速静注開始後、約30分で定常状態に達した。その時の血漿中濃度は、野生型マウス(コントロール)に比較し、EUTトランスジェニックマウスで高くなる傾向がみられた(図15)。一方、投与開始後120分における腸管内への標識尿酸の排泄量は、静脈内投与の結果と同様に、野生型マウスに比較して、EUTトランスジェニックマウスで顕著に低下していた(表3)。
【表3】
JP2019031450A_000004t.gif
データは、コントロールについては1例での値(n = 1)、Tgマウスについては平均±S.E. (n = 3)で示した。尿酸の投与量は80 mg/h/kgとした。尿酸排泄量を血漿濃度-時間曲線の面積(AUC)で割った値を排泄クリアランス(CLexc)とした。
【実施例】
【0132】
興味深いことに、野生型マウスでは、その排泄量は、空腸よりも回腸で高くなる傾向を示したが、ヒトEUTトランスジェニックマウスでは、両部位間で排泄量に有意な差は認められなかった。これらの標識尿酸の血漿中濃度と排泄量の変化を反映し、EUTトランスジェニックマウスにおけるCLexcは顕著に低下しており、特に回腸におけるCLexcの値は野生型マウスの約20%に低下していた。マウスにおけるBcrpの発現は小腸上部よりも下部で高いことから(Kitamura Y et al, J Pharmacol Exp Ther, 332, 659-666, 2010)、野生型マウスにおける尿酸排泄の腸管部位差は、BCRPの発現量の違いによるものと推察される。その仮定に基づけば、マウス腸管における尿酸排泄の律速段階は、血液側から小腸上皮細胞内への取り込みではなく、その細胞内から腸管腔側への排出と考えられる。一方、EUTトランスジェニックマウスにおける尿酸排泄には腸管部位差がほとんど認められず、その程度は野生型マウスに比べて顕著に低下していることから、BCRPの発現様式が野生型と同等であれば、その律速段階は血液側から小腸上皮細胞内への取り込みであり、その過程においてヒトEUTが抑制的に働いている可能性が考えられる。すなわち、導入されたヒトEUTが小腸上皮細胞内から血液側への尿酸輸送に働いている可能性が考えられる。
【実施例】
【0133】
以上を総合すると、EUTは、促進拡散的な輸送様式を有するトランスポーターと考えられるが、生理的条件下では細胞内から血液側への尿酸輸送に関与している可能性が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のEUTは小腸上皮細胞の血管側膜で細胞内から血液側への尿酸輸送に働く、初の尿酸トランスポーターである。尿酸の小腸経由での体外排泄及び血中レベル制御への関与が主要な生理的機能と考えられる。また、その基質認識における尿酸特異性が高いとみられ、その機能変化が尿酸以外の物質の輸送・動態に影響する懸念は小さい。このため、EUT阻害剤は小腸経路での尿酸排泄の特異的促進効果を持つ尿酸関連疾患(高尿酸血症や痛風)治療薬となることが期待される。EUTを標的とする本発明のスクリーニング方法は当該治療薬の開発に多大な貢献をする。
【0135】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【配列表フリ-テキスト】
【0136】
配列番号7:人工配列の説明:SLC52A1(EUT)をコードするcRNA
配列番号8:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号9:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号10:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号11:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号12:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号13:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号14:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号15:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号16:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号17:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号18:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号19:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号20:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号21:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号22:人工配列の説明:抗原ペプチド
配列番号23:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号24:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号25:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号26:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号27:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号28:人工配列の説明:リバースプライマー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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