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明細書 :保護膜作製装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-034323 (P2020-034323A)
公開日 令和2年3月5日(2020.3.5)
発明の名称または考案の名称 保護膜作製装置
国際特許分類 G01N   1/28        (2006.01)
FI G01N 1/28 N
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2018-159025 (P2018-159025)
出願日 平成30年8月28日(2018.8.28)
発明者または考案者 【氏名】井上 淳期
【氏名】堀田 将臣
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 2G052
Fターム 2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052CA03
2G052CA08
2G052CA18
2G052CA29
2G052CA46
2G052FD06
2G052JA07
2G052JA08
2G052JA10
2G052JA13
2G052JA18
要約 【課題】サンプルの狙った微小領域にダメージを発生させることなく保護膜を作製することを可能にする保護膜作製装置を提供する。
【解決手段】保護膜作製装置は、保護膜を作製する対象物であるサンプル10をセットするサンプルステージ12と、サンプルステージ12に支持されたサンプル10の表面を観察する観察機構(光学顕微鏡14とモニター17)と、サンプルステージ12と光学顕微鏡14との相対位置を調節する調節機構と、サンプルステージ12に支持されたサンプル10に供給する保護材が収容されるプローブ20と、プローブ20を支持し、サンプル10の所要位置にプローブ20の先端の射出口を位置決めするロボットアーム16と、プローブ20に接続され、プローブ20に供給された保護材を射出する射出機構22、24とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
保護膜を作製する対象物であるサンプルをセットするサンプルステージと、
該サンプルステージにセットされたサンプルの表面を観察する観察機構と、
前記サンプルステージと前記観察機構との相対位置を調節する調節機構と、
前記サンプルステージに支持されたサンプルに供給する保護材が収容されるプローブと、
該プローブを支持し、前記サンプルの所要位置に前記プローブの先端の射出口を位置決めするロボットアームと、
前記プローブに接続され、該プローブに供給された保護材を射出する射出機構とを備えることを特徴とする保護膜作製装置。
【請求項2】
前記射出機構は、前記プローブの基端側に一端が接続されるチューブと、該チューブの他端側に接続され、前記プローブの内圧を上昇させプローブから保護材を射出させるブロワーとを備えることを特徴とする請求項1記載の保護膜作製装置。
【請求項3】
前記観察機構は、前記サンプルを視認する光学顕微鏡と、光学顕微鏡像を表示するモニターとを備えることを特徴とする請求項1または2記載の保護膜作製装置。
【請求項4】
前記調節機構は、前記サンプルステージをx軸、y軸、z軸方向に移動させる駆動機構と該駆動機構を制御するパソコンとを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の保護膜作製装置。
【請求項5】
前記ロボットアームは、x軸、y軸、z軸方向に移動させる移動機構と、該移動機構を制御するパソコンとを備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の保護膜作製装置
【請求項6】
前記プローブは、中空かつ先端径が数μm~1mmのガラスプローブであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の保護膜作製装置。
【請求項7】
前記保護材は、導電性カーボンを水で溶解させたペースト状のカーボンであることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の保護膜作製装置。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、FIB装置のサンプル作製等に利用する保護膜作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の微細な内部構造の観察のために、FIBを用いてサンプルを切削し、SEMにて断面を観察することが行われている。FIBで切削する際にイオンビームの広がりにより、狙っ所だけでなくその近辺がダメージを受けてしまう。そこで断面観察のためのFIB加工においては、加工する前に保護膜を作製し、保護膜の上から切削することにより、観察断面がイオンビームによるダメージを受けることを防止する手法が用いられている。
【0003】
保護膜の作製方法として、蒸着やスパッタリングによって、材料表面にカーボンや金属の薄膜を作製する手法がある(非特許文献1)。また、FIBの装置に搭載されているデポジションガンを用いて保護膜を作製する方法がある(特許文献1)。この方法はデポジションガンを用いてサンプル表面に保護膜の原料となる化合物ガスを吹き付けながらイオンビームを照射することで、化合物ガスを分解し、分解された固体成分をサンプル表面に付着させることで保護膜を作製する方法である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2000-146781号公報
【0005】

【非特許文献1】FIB・イオンミリング技法Q&A 2002 P54 平板雅男 渡辺武彦
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した蒸着やスパッタリングによって、材料表面にカーボンや金属の薄膜を作製する手法では、蒸着の際に発生する熱によるダメージが生じたり、薄膜を形成する場所の制御が難しく、狙った領域にだけ保護膜を作製することが難しい。一方、デポジションガンを用いて保護膜を作製する方法では、狙った微小領域にカーボンやタングステンや白金などの薄膜を作製することが可能であるが、保護膜形成の初期段階でサンプル表面にイオンビームが直接照射されるために、サンプルの表層部にダメージが生じたり、作製条件によっては長時間を要する場合がある。
また、導電性ペーストをサンプル表面に塗布する方法では、短時間かつ安価に保護膜を作製することが可能であるが、保護膜を塗布する範囲が広くなりすぎてしまう場合があり、微小領域を狙いたい場合には向かない。また、塗布する際に物理的にサンプル表面に触れてしまう場合があり、サンプル表面に薄膜などが形成されている場合、薄膜の状態を壊してしまうことになりかねない。
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は材料の狙った微小領域にダメージを発生させることなく保護膜を作製する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る保護膜作製装置は、保護膜を作製する対象物であるサンプルをセットするサンプルステージと、該サンプルステージにセットされたサンプルの表面を観察する観察機構と、前記サンプルステージと前記観察機構との相対位置を調節する調節機構と、前記サンプルステージに支持されたサンプルに供給する保護材が収容されるプローブと、該プローブを支持し、前記サンプルの所要位置に前記プローブの先端の射出口を位置決めするロボットアームと、前記プローブに接続され、該プローブに供給された保護材を射出する射出機構とを備えることを特徴とする。
本発明に係る保護膜作製装置は、保護膜を塗布する方法として微細なプローブから保護膜の材料となる保護材を射出することにより、サンプル表面の微小な領域に保護膜を形成することができる。保護膜の塗布は、保護材を充填したプローブの内圧を上昇させ、保護材を射出することにより行う。
【0008】
また、前記射出機構が前記プローブの基端側に一端が接続されるチューブと、該チューブの他端側に接続され、前記プローブの内圧を上昇させプローブから保護材を射出させるブロワーとを備えることにより、簡易な構成とした射出機構を使用して保護材を容易にかつ的確に射出させることができる。
また、前記観察機構は前記サンプルを視認する光学顕微鏡と、光学顕微鏡像を表示するモニターとを備えることにより、保護材を射出する部位を正確に検知して保護材を射出することを可能にし、光学顕微鏡にて観察することにより、肉眼で見た場合と同様にサンプル表面のカラー情報を得ることができ、サンプル表面の微小領域の色の変化を観察しながら所要位置に正確に保護材を射出することが可能になる。
また、前記調節機構は、前記サンプルステージをx軸、y軸、z軸方向に移動させる駆動機構と該駆動機構を制御するパソコンとを備えることにより、サンプルの保護材を射出する位置を正確にかつ容易に位置決めすることができる。
また、前記ロボットアームは、x軸、y軸、z軸方向に移動させる移動機構と、該移動機構を制御するパソコンとを備えることにより、サンプルに保護材を射出する位置を正確に位置決めすることができる。
また、前記プローブとしては、中空かつ先端径が数μm~1mmのガラスプローブを用いることで、容易に保護材を射出して保護膜を形成することができ、また、前記保護材として、導電性カーボンを水で溶解させたペースト状のカーボンが有効にに使用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、FIB加工での保護膜等を作製する際に、サンプル表面に触れることなく狙った微小領域にのみ保護膜を作製することができる。そのためサンプル表面が熱や物理的接触により変形してしまうような構造を持ったサンプルにおいても、表面を損傷させることなく保護膜を作製することができ、例として、FIB加工後の電子顕微鏡による断面観察では、損傷の少ないサンプルの断面を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】保護膜作製装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
本発明に係る保護膜作製装置は、図1に示すように光学顕微鏡14で観察しながら保護材の射出機構を備えたロボットアーム16を操作し、狙った微小領域にて保護材を射出することで、保護膜を形成することを特徴とするものである。

【0012】
(装置の形態)
図1は本発明に用いる微小領域への保護膜作製装置の実施形態であるマイクロマニピュレーターシステムの概略構成図である。このマイクロマニピュレーターシステムは保護膜作製の対象物であるサンプル10を設置するサンプルステージ12を有するとともに、設置したサンプル10の観察機構である光学顕微鏡14とモニター17、さらにロボットアーム16を備えている。これら機構を備えることにより、光学顕微鏡14でサンプル10を観察している画像をモニター17にて観察を行いながらコンピューターによる操作でロボットアーム16を動かすことが可能である。

【0013】
サンプルステージ12は前後上下左右の移動に加え、回転する機構を備えている。ロボットアーム16は前後上下左右の移動に加え、アームの角度を変える機構を備えている。また、ロボットアーム16はアームに装着する冶具20の選択により様々な形態のものを取り付けることができる機構を備えており、本装置においては、プローブ18を装着することができる冶具20を取り付ける。ロボットアーム16に取り付けられたプローブ18に弾性体のチューブ22を装着し、プローブ18が装着された側の反対側に加圧する際に必要なブロワー24を取り付ける。加圧するための方法はチューブ22とブロワー24を装着する形でなくても、プローブ18の内圧を上昇させることができるものであればよい。また、マイクロマニピュレーターシステムのように光学顕微鏡14とロボットアーム16が一体型になったものでなく、それぞれが分離したものでも良い。

【0014】
(プローブの作製)
本方法で用いるプローブ18の作製にはガラス管を用いる。ガラス管をプーラーと呼ばれる装置を使用してガラス管の側面中央部に熱をかけながら両端を引っ張ることによりガラス管を引き延ばし、最終的に分断することで先端が細いプローブ18を作製する。プーラーにて作製したプローブ18の先端をさらに裁断器具などを用いて任意の先端径となるように調節する。プローブ18の先端径を調節することにより、最終的に形成される保護膜のサイズを調整することが可能である。プローブ径が大きくなると広い範囲に保護材が射出され、プローブ径が小さくなるとより微小な領域に保護材が射出される。

【0015】
(保護材の選択)
本方法で用いる保護膜の原料となる保護材としては、技術的な観点から先端の口径がミクロンサイズのプローブ18に充填することができ、充填後に何らかの方法で射出できるものである必要がある。導電性があり水や有機溶媒などの溶剤に溶けるものであれば保護膜の原料となりうる。

【0016】
(保護膜作製の実施手順)
保護膜作製の実施手順としては、まずマイクロマニピュレーターのサンプルステージ12にサンプル10をセットし、ロボットアーム16にプローブ装着用の冶具20を取り付ける。
次に、光学顕微鏡像を観察しながらサンプル10表面の保護膜を作製する領域に焦点を合わせる。
次にブロワー24を取り付けたチューブ22をプローブ18に装着する。その後、保護材をプローブ18に充填し、プローブ18をロボットアーム16に取り付けられた冶具20に装着する。

【0017】
光学顕微鏡14で観察しながら、プローブ18を取り付けたロボットアーム16を操作して、保護膜を作製する場所にプローブ18の先端を移動させる。この時、ロボットアーム16は前後上下左右に移動させてプローブ18をサンプル10に触れない程度にサンプル10表面に近づける。
ブロワー24をプッシュしてプローブ18内の内圧を上昇させることにより、保護材をプローブ18から射出する。射出後、プローブ18をサンプル10から離す。保護材の溶剤が気化し、サンプル10表面に数百マイクロメートル径のサイズの保護膜が形成される。保護材の射出量を変えることにより、形成される膜のサイズや厚さを調整することができる。
【実施例】
【0018】
以下、実際にサンプル10表面の微小領域に保護膜の作製を行った例を説明する。
本実施例では、シリコン基材上に数百ミクロンサイズのマーキングが行われているサンプル10のマーキング部に保護膜を作製した例を示す。
【実施例】
【0019】
図1に示す構成を有する光学顕微鏡14とロボットアーム16を備えたマイクロマニピュレーターシステムを用いた。本マイクロマニピュレーターシステムは光学顕微鏡14により拡大して観察することが可能であり、サンプルステージ12とロッボットアーム16は前後上下左右の駆動が可能となっている。
保護材としては導電性カーボンを2.5倍の質量濃度となるように水で希釈したカーボンペーストを使用した。
また、カーボンペーストを塗布するためのプローブ18としてガラス製のものを使用した。ガラス管をプーラーと裁断器具を用いて加工することで作製し、先端径が約100μmのものを使用した。プローブ18に接続するチューブ22としては、内径1 mmのシリコン製チューブを用い、プローブ18内の内圧を上昇させるために、ゴム製の手動式ブロワーを用いた。
【実施例】
【0020】
まず、サンプル10をサンプルステージ12に載せ、サンプルステージ12を移動させてサンプル10表面の目的の場所に焦点を合わせた。
次いで、チューブ22にプローブ18を取り付け、反対側にゴム製のブロワー24を取り付けた。
次に、カーボンペーストを用意し、プローブ18に充填した。
次に、マイクロマニピュレーターシステムのロボットアーム16にプローブ取り付け用の冶具20を取り付け、冶具20にプローブ18を装着した。
次に、モニターにて確認しながらコンピューター操作によりプローブ18の先端をサンプル10表面の目的の場所まで移動させた。この時、プローブ18の先端がサンプル10表面に触れない程度に接近させた。
【実施例】
【0021】
その後、ブロワー24をプッシュすることによりプローブ18内の内圧を上昇させ、ガーボンペーストを射出した。射出されたカーボンペーストは数分程度経過後に溶媒が気化し保護膜が形成された。
形成された保護膜を光学顕微鏡14で観察したところ、直径約100 μmの円形に近い形をしており、狙ったマーキング部分に形成されていることが確認できた。
【実施例】
【0022】
次いで作製した保護膜の上からイオンビームによる切削を行い、断面観察を行った。本実施例ではイオンビームの切削と断面の観察については、集束イオンビーム加工装置と走査型電子顕微鏡が一体となった複合ビーム加工観察装置(製品名:JIB-4610F、日本電子製)を用いた。
はじめに、保護膜を塗布した部分に垂直方向からガリウムイオンビームを照射することにより加工を行った。
次に、断面方向より電子ビームによる観察を行うことで加工した断面の観察を行った。断面方向からの観察の結果、イオンビームによるダメージなどは観察されなかった。
【符号の説明】
【0023】
10 サンプル
12 サンプルステージ
14 光学顕微鏡
16 ロボットアーム
17 モニター
18 プローブ
20 治具
22 チューブ
24 ブロワー

図面
【図1】
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