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明細書 :ワイヤレス電力伝送コイルユニット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-047614 (P2020-047614A)
公開日 令和2年3月26日(2020.3.26)
発明の名称または考案の名称 ワイヤレス電力伝送コイルユニット
国際特許分類 H01F  38/14        (2006.01)
H01F  27/28        (2006.01)
H01F  27/30        (2006.01)
H02J  50/10        (2016.01)
H02J  50/70        (2016.01)
FI H01F 38/14
H01F 27/28 K
H01F 27/28 147
H01F 27/30 160
H02J 50/10
H02J 50/70
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2018-172049 (P2018-172049)
出願日 平成30年9月14日(2018.9.14)
発明者または考案者 【氏名】水野勉
【氏名】卜穎剛
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 5E043
Fターム 5E043AA06
5E043AB04
5E043BA01
5E043FA01
5E043FA03
要約 【課題】安価な平板スパイラルコイルを使いしかも表皮効果や近接効果による電力ロスの少ないワイヤレス電力伝送コイルユニットを提供する。
【解決手段】本発明は、スパイラル状に巻回された平板状のコイル2とコイル2に対向して設けられた磁気シールド1とを備えたワイヤレス電力伝送コイルユニットであって、コイル2の中周部に位置する任意の巻線のコイル導体とこれに隣接する巻線のコイル導体との間隙が、コイル内周側または外周側に位置する任意の巻線のコイル導体とこれに隣接する巻線のコイル導体との間隙よりも狭い。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
スパイラル状に巻回された平板状のコイルと前記コイルに対向して設けられた磁気シールドとを備えたワイヤレス電力伝送コイルユニットであって、
前記コイルの中周部に位置する任意の巻線のコイル導体とこれに隣接する巻線のコイル導体との間隙が、コイル内周側または外周側に位置する任意の巻線のコイル導体とこれに隣接する巻線のコイル導体との間隙よりも狭いことを特徴とするワイヤレス電力伝送コイルユニット。
【請求項2】
少なくともコイル内周部および外周部に位置する任意の巻線のコイル導体とこれらにそれぞれ隣接する巻線のコイル導体との間隙に磁性体が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス電力伝送コイルユニット。
【請求項3】
前記コイルの前記磁気シールドと対向する側の面の全面に磁性体が設けられたことを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス電力伝送コイルユニット。
【請求項4】
前記コイルの間隙部の磁性体は前記磁気シールドと対向するのと反対の側に前記コイルより突出して設けられたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のワイヤレス電力伝送コイルユニット。
【請求項5】
前記コイルの前記磁気シールドと対向するのと反対の側の面の一部に磁性体が設けられたことを特徴とする請求項4に記載のワイヤレス電力伝送コイルユニット。
【請求項6】
前記コイル内周部の任意の巻線のコイルにおいては内周側に、スパイラル外周部の任意の巻線のコイルにおいては外周側に、それぞれ偏在させて磁性体が設けられたことを特徴とする、請求項5に記載のワイヤレス電力伝送コイルユニット。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触で電力を伝送できる非接触給電用のワイヤレス電力伝送コイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド型自動車などの車両のバッテリーの充電に対して、電磁誘導方式のワイヤレス給電装置の使用が検討されている。ワイヤレス給電装置では、送電コイルに高周波の交流電流(概ね数10kHz~200kHz)を通電し、送電コイルから発生する高周波磁界を受電コイルが受け取ることで、非接触で電力送電する。
【0003】
このような非接触給電装置において、装置の薄型化に対応してスパイラル状(らせん状)の断面矩形の平面コイルが用いることが従来検討されている。また高周波磁界によって周囲の金属製部品に渦電流が発生し異常発熱が起きることを回避するため、フェライト等からなる磁気シールドをコイル近傍に配置している(例えば、特許文献1)。このように伝送コイルユニットは、平面コイルと磁気シールドの組合せで構成される。
【0004】
一般的に、伝送コイルユニットにおいて、コイルに通電した際、コイル断面を囲むように磁力線が発生する。また磁力線は、磁気シールドの透磁率が高いため、磁気シールドの表面から垂直に流れるよう分布する。またコイルは複数の導体(コイル導体)が回巻されており、コイル導体同士が互いに近接している。このため、コイルには、自身を流れる電流による表皮効果と近接するコイル導体に生じる渦電流による近接効果の両方が存在する。したがって、各コイル導体を流れる電流は導体内部で偏ったものとなっており、特にコイルの内周部でコイル導体内の内周側に、外周部でコイル導体内の外周側に偏ったものとなって、それらの部分で電流が集中し磁力線も集中する。
【0005】
特に特許文献1に示されたコイルは、断面矩形が平面であるため高周波表皮厚さが薄く、その薄い部分に上記の電流が集中して流れる。このため銅損が発生して交流抵抗が高くなり、その結果電力伝送効率が低下する。磁束を外に出さない単体のコイルあるいはインダクタでは、鎖交する渡り磁束密度に応じて、コイル内周と外周のコイル導体の幅を細く、中周の導体の幅を太くすることで、銅損の発生を極力抑えているものがある(特許文献3)。しかし、このような構成のコイルをワイヤレス電力伝送に用いる場合、対面して置かれる磁気シールドの影響を考慮する必要がある。
【0006】
このような問題に対して、コイルの巻線として多数の絶縁素線をより合わせたリッツ線を使用することが知られている(例えば、特許文献3)。リッツ線は、細い素線(例えば線径0.1mm以下のエナメル線)を数多く(例えば500本以上)より合わせた線であり、上記表皮効果や近接効果による高周波損失を抑制することができる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013-201296号公報
【特許文献2】特開平11-40438号公報
【特許文献3】特開2016-219252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、リッツ線は素線が細くしかも本数が多いため、製造コストが高いという問題があった。そこで、本発明は、上記事情に鑑み、平面スパイラルコイルの表皮効果や近接効果による高周波損失(銅損)を低減し、交流抵抗の増大を抑制して、低コストで製造可能な非接触給電用の伝送コイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る非接触給電用伝送コイルユニットは、スパイラル状に巻回された平板状のコイルと前記コイルに対向して設けられた磁気シールドとを備えたワイヤレス電力伝送コイルユニットであって、前記コイルの中周部に位置する任意の巻線のコイル導体とこれに隣接する巻線のコイル導体との間隙が、コイル内周側または外周側に位置する任意の巻線のコイル導体とこれに隣接する巻線のコイル導体との間隙よりも狭いことを特徴とする。
【0010】
少なくともコイル内周部および外周部に位置する任意の巻線のコイル導体とこれらにそれぞれ隣接する巻線のコイル導体との間隙に磁性体が設けられてもよい。
【0011】
前記コイルの前記磁気シールドと対向する側の面の全面に磁性体が設けられてもよい。
【0012】
前記コイルの間隙部の磁性体は前記磁気シールドと対向するのと反対の側に前記コイルより突出して設けられてもよい。
【0013】
前記コイルの前記磁気シールドと対向するのと反対の側の面の一部に磁性体が設けられてもよい。
【0014】
前記コイル内周部の任意の巻線のコイルにおいては内周側に、スパイラル外周部の任意の巻線のコイルにおいては外周側に、それぞれ偏在させて磁性体が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、平板上のスパイラルコイル導体の表面および側面に集中していた磁束線を磁性層に誘導してコイル導体を貫通する磁力線の数を減少でき、これによりコイル導体内の渦電流を抑えてコイルの交流抵抗(銅損)を低減することが可能となり、リッツ線を使った場合とほぼ同等もしくはそれ以上の伝送効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一般的なスパイラルコイルユニットの平面図と断面図
【図2】本開示の第1の実施の形態のワイヤレス伝送コイルユニットの断面図
【図3】本開示の第2の実施の形態のワイヤレス伝送コイルユニットの断面図
【図4】本開示の第2の実施の形態のワイヤレス伝送コイルユニットの拡大断面図
【図5】ワイヤレス伝送コイルユニットにおける磁性体の効果を示す説明図
【図6】本開示の実施例1のワイヤレス伝送コイルユニットの断面図
【図7】受電側リッツ線コイルユニットの構成図
【図8】送電側リッツ線コイルユニットの構成図
【図9】本開示の実施例2におけるワイヤレス伝送コイルユニットの解析モデル図
【図10】本開示の実施例2における銅板コイルの磁束と電流分布図
【図11】本開示の実施例2におけるMPCコイルの磁束と電流分布図
【図12】本開示の実施例2におけるMPCコイルの形状寸法図
【図13】本開示の実施例3における各種コイルの電気特性
【図14】本開示の実施例4における各種コイルユニットの伝送効率
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。

【0018】
まず図1に一般的な平面スパイラルコイル型のワイヤレス伝送コイルユニットの構成を示す。スパイラル状に形成されたコイル導体部(Copper)と磁気シールド(Ferrite)とが対向して設けられていることが特徴である。図1において破線四角で囲った部分は半径方向の断面図であり、以降本実施の形態ではこのような半径方向の断面図でもってワイヤレス伝送コイルユニットの構造的特徴を説明する。

【0019】
図2は本開示の第1の実施の形態のワイヤレス伝送コイルユニットの断面図である。図2において1は磁気シールドであり、フェライト等の磁性体により構成されている。2はコイルであり、銅またはアルミ等のコイル導体(2a)をスパイラル状にしかも平板状に製造したものである。製造方法としては、一枚の金属版をプレスやエッチングなどの方法でスパイラル状に切り取るものでもよいし、鋳造するものでもよいし、また帯状の導体を平面上で巻いて作成したものであってもよい。磁気シールド1とコイル2は直には接触していないが、間に非磁性の絶縁材(樹脂、セラミック、等)を挟んでもよい(図示せず)。

【0020】
図2において、スパイラルコイルの中周部に位置する任意の巻線のコイル2cとこれに隣接する巻線のコイルとの間隙2dは、コイル内周側および外周側の任意の巻線のコイル導体(2a、2e)と各々に隣接する巻線のコイル導体との間隙(2b、2f)よりも狭いことを特徴とする。なお、本実施の形態において、内周とはコイル2の巻き数をN(N>8)として最内から外側にN/4~N/2巻きまでの領域を言い、外周とは最外から内側に1~N/3巻きまでの領域を言う。中周とは、前記内周および外周で囲まれた領域を言うものとする。

【0021】
以上のようにコイル2を構成することにより、銅損を低減させるように磁力線の通る経路を制御することができる。一般に、背面に磁気シールド1を有したコイルユニットにおいては、コイル2からは、内周から外周にかけて円弧状の磁力線が発生する。すなわち図5(a)に示されるように、磁気シールド(Ferrite)内を通りつつ、内周では上向きに、中周では水平(コイルと平行)に、外周では下向きに、磁力線が発生する。

【0022】
そこで、磁力線が水平となる中周付近では互いに隣接するコイル導体の間隙(2b)をできるだけ狭めたほうが、磁束は磁気シールド1側に(上下方向に)方向を変えずにそのままコイル2と平行になりやすい。一方、磁力線が上下性成分を含むコイルの内周および外周側では、できるだけコイル導体に磁力線を交差させないように、前記中周部とは逆に間隙(2bおよび2f)の間隙を拡げて、なるべく多くの磁束を磁気シールド1の側に逃がす方がよい。

【0023】
以上のように、本実施の形態においては中周部に位置する任意の巻線のコイル2cとこれに隣接する巻線のコイルとの間隙2dを、内周側および外周側の任意の巻線のコイル導体(2a、2e)と各々に隣接する巻線のコイル導体との間隙(2b、2f)よりも狭くすることにより、コイル内周から外周にかけて円弧状に発生する磁力線を効率よく磁気シールド1に誘導することができ、その結果、コイル導体に鎖交する磁束を低減することができ、さらにその結果、渦電流による銅損を低減することができる。

【0024】
なお、間隙2b、2d、2fを調整するにあたり、図2にはコイル導体2a、2c、2eの幅を変える方法を採っているが、本実施の形態はこの方法には限定されない。コイル導体の幅を均一にして、巻回のピッチを変えるようにしてもよい。

【0025】
以下、本開示の第2の実施の形態について説明する。図3は本開示の第2の実施の形態のワイヤレス伝送コイルユニットの断面図である。図3において磁気シールド1とコイル2は図2に示したものと同様の機能を有するものである。本実施の形態においては、コイル2の少なくとも内周側および外周側の間隙2b、2d、2fとその周辺に磁性体3(3a、3b、3c)が設けられている。なお、磁性体3は絶縁体である樹脂の中に磁性紛が練り込まれたコンポジット磁性材であってもよい。

【0026】
図4は図3の部分拡大図である。まず、少なくとも内周側および外周側の任意の巻線のコイル導体2aとこれに隣接する巻線のコイル導体との間隙2bに磁性体3bが設けられている。この磁性体3bがコイル2を鎖交する磁束を磁性体の壁で左右に誘導することで鎖交磁束を減らしている。

【0027】
また、コイル2の記磁気シールド1と対向する側(以降、コイル下面ともいう)の面の全面に磁性体3aが設けられている。この磁性体により磁気シールドに引き寄せられる磁束を磁性体に誘導し、コイル上部やコイル端部に鎖交する磁束を低減している。

【0028】
また、コイル2の中周部を除く間隙部の磁性体3は磁気シールド1と対向するのと反対の側にコイル導体2aの上面より突出して設けられている。さらにコイル導体の磁気シールド1と対向するのと反対の側の面(以降、コイル上面ともいう)の一部に磁性体3cが設けられている。この磁性体は、内周においてはコイル導体2aの内周側のみを覆うように、外周においてはコイル導体の外周側のみを覆うように、偏在して設けられている。

【0029】
以上の構成により、コイルに鎖交する磁束を極力低減することができるようになり、近接効果によるコイル導体内の電流の偏りを軽減できるようになり、その結果第1の実施の形態の構成のものよりもさらに損失を低減することができる。

【0030】
上記第1および第2の実施の形態におけるワイヤレス伝送コイルユニットの構成例ならびに解析およびシミュレーションの結果について、以下の実施例において説明する。
【実施例】
【0031】
まず、一般的な構造を有するワイヤレス伝送コイルユニット(図1)の断面およびそこを流れる電流と、そこから発生する磁力性の模式図を図5(a)に示す。図5において、磁気シールド1としてフェライト(Ferrite)を、コイル導体2aとして銅板(Copper)を用いている。図5(a)に示されるように、磁力線は磁気シールドを通ってコイル内周側から外周側に円弧上に形成される。コイル導体(Copper)断面中、〇囲い×印の記号は導体中を紙面上から下方向に流れる電流を意味する。この電流はコイル導体を貫通する磁力線に応じて片寄りが生じる。すなわち、磁力線が斜めに交差する導体(内周部の外周寄り、外周部の内周寄り)では角部に電流が集中する。また磁束はフェライトに引き寄せられることにより、コイル上部に電流が片寄る傾向にもある。
【実施例】
【0032】
ここで、コイル導体に挟まれた間隙に磁性体の壁を設けると(図5(b))、磁力線の流れが変わり、これに応じて電流分布も変化する。つまり、コイルのより内周側とより外周側の巻線において、電流がコイル端部と上部に片寄る。また、コイル中周部の巻線に流れる電流はコイル上部に片寄る傾向にある。
【実施例】
【0033】
そこで、さらに実施の形態2で示したように、コイル上面偏在位置に磁性体を設けると(図5(c))、端部の片寄りを低減することができる。さらにコイル下面(磁気シールド1と対向する側)全面に磁性体を設けて、磁気シールド1(フェライト)に引き寄せられる磁束をこの磁性材料に通すことにより、コイルの内側と外側の巻線における電流が上部だけではなく側面にも流れるようになる。このように磁束の流れを、磁性体を用いて制御することで銅損を低減し、電流の片寄りを抑えることができる。
【実施例】
【0034】
(実施例1)ワイヤレス伝送用コイルユニットの構造
図6は第2の実施形態のワイヤレス伝送用コイルユニット(以下、MPC(Magnetic Path Control)コイルユニット)の受電側の具体的構造を示したものである。図6において(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は構造図をそれぞれ示す。コイル2(Coil)はスパイラル形状で巻数N=10である。また、放射電磁界低減のためにコイル背面にフェライト(磁気シールド1)を設けている。銅板(コイル導体2a)は厚さ1.5 mmで、コイル巻線間と電流密度の片寄りが生じる部分に磁性体(3b、3c)が設けられてある。また、コイル下部にも磁性体(3a)を用いた。コイル下部の磁性体とフェライトの間隙は3mmで、フェライトの厚さは5mmである。
【実施例】
【0035】
(比較例1)リッツ線コイルを用いたワイヤレス伝送用コイルユニットの構造
図7はコイルとしてリッツ線を用いた受電側のコイルユニット(以下、LCWコイル)の構造を示したものである。図7(a)に平面図、(b)に断面図、(c)に構造図を示した。実施例1のMPCコイルユニットと同じ巻数N=10である。また放射電磁界低減のため、フェライトとアルミニウム板を用いている。LCWコイル線は導体径0.05mmの銅線を段階的に4200本撚っている(図7(c))。仕上がり外径は5mmである。
【実施例】
【0036】
図8は送電側のLCWコイルの構造であり、図8(a)に平面図、(b)に断面図を示した。全体形状は受電側よりも横長であるが、使用しているリッツ線は受電側コイルと同じものである。
【実施例】
【0037】
(実施例2)コイルユニットの磁場解析
本実施例においては、ワイヤレス伝送用コイルユニットの解析にあたり、二次元交流磁場解析(Ansys Maxwell)を用いた。さらに磁場解析結果から、受電コイルの抵抗R、インダクタンスL、Q値を算出した。また三次元交流磁場解析から相互インダクタンスMを算出し、これらの値から下記式(1)~(4)を用いて伝送効率ηを算出した。なお、解析条件を表1に示した。コイルに用いる磁性体3はアモルファス粉末を用いた磁性コンポジット材料を適用するとした。

【表1】
JP2020047614A_000003t.gif

【数1】
JP2020047614A_000004t.gif
【数2】
JP2020047614A_000005t.gif
【数3】
JP2020047614A_000006t.gif
【数4】
JP2020047614A_000007t.gif
ここで、Q:送電コイルのQ値、Q:受電コイルのQ値、U:性能指標、η:伝送効率(%)とする。
【実施例】
【0038】
図9に二次元円筒座標系での解析モデルを示した。コイルの実際の形状は正方形状であるが、解析では円筒座標系であるため、コイルの線長とピッチを同じにして、円形にして解析を行った。図10、図11に二次元円筒座標系での解析を示す。なお、図10はコイル中周部の間隙を狭くした実施の形態1のタイプ(以下、銅板コイル)について、図11は銅板コイルの間隙とその周辺に磁性体を設けた実施の形態2のタイプ(MPCコイル)についてそれぞれシミュレーションしたものである。
【実施例】
【0039】
磁場解析に用いたコイルの形状寸法について以下説明する。総巻き数N=10、コイル導体間のピッチは7mmとした。内周部(最内周から外側に5巻きまで)におけるコイル導体間の間隙は2.2mmとした。外周部(最外周から内側に2巻きまで)については、最外周(1巻目)と2巻目のコイル導体間の間隙を2.2mm、2巻目と3巻目(中周部との境)を1.2mmとした。
【実施例】
【0040】
さらに図10(銅板コイルモデル)に磁力線と電流分布のシミュレーション結果を示す。コイル中周部では磁力線は綺麗に平行状態となっているが、コイルの内周側と外周側ではコイル平面に対して垂直に磁束が鎖交する。そのため、左右に電流の片寄りが生じる。なお、電流分布は図中濃淡で示されている。例えば、コイル導体中白っぽい部分が電流の多く流れている部分である。コイル中周部でも磁力線は平行ではあるもののコイル導体と平行に鎖交するため、コイル導体上部と端部に電流の片寄りが生じる。
【実施例】
【0041】
図10のコイルの間隙とその周辺に磁性体を設けたMPCコイルのシミュレーション結果を図11に示す。なお、本実施例では、磁性体がコイル上面より突出している高さは1mm、コイル下面全面を覆う磁性体の厚さは0.5mmとした。コイル上面を一部覆う磁性体の長さは0.4mm~0.6mmとした。磁性体の形状寸法の詳細については図12に示す。
【実施例】
【0042】
MPCコイル(図11)では、コイル巻線の内側と外側においてコイル平面に対して垂直に鎖交する磁束を磁性体の壁で左右に誘導することで、コイル導体との鎖交を極力抑えている。また、コイル端部などの電流の片寄りが大きい場所に磁性体を用いるので、鎖交磁束も低減している。ただ、コイル巻線の中央では磁束がコイル平面に対して平行に鎖交するため、コイル上部に電流の片寄りが生じている。しかし、コイル下面に磁性体を用いることで、フェライトに引き寄せられる磁束を磁性体に誘導し、コイル上部やコイル端部に鎖交する磁束を低減させている。
【実施例】
【0043】
(実施例3)コイルユニットのインピーダンス特性
本実施例では、図10(銅板)および図11(MPC)のコイルユニットのインピーダンス特性を、電磁界解析を用いて算出した。なお比較のため、LCWコイルと送電コイルのインピーダンスもインピーダンスアナライザインピーダンスアナライザ(Agilent Technologies 4294A)を用いて測定した。また結合係数kは伝送距離l=150mmの条件で測定した。コイルの同相直列接続でのインダクタンスLa、逆相接続でのインダクタンスLbを測定し、相互インダクタンスMを算出した。また、送電コイルのインダクタンスL1と受電コイルのインダクタンスL2、相互インダクタンスMからコイルの結合係数kを算出した。測定した結合係数kおよびコイルのQ値を用いてコイルの性能指標Uを算出した。最後に性能指標Uから伝送効率ηを算出した。図13にそれぞれのコイルユニットのインピーダンス特性を示す。
【実施例】
【0044】
図13(a)において、銅板コイル、MPCコイル、LCWコイル、送電コイルの85kHzにおける抵抗はそれぞれ187.4mΩ、80.2mΩ、32.6mΩ、29.5mΩと示される。一般的な銅板のコイルユニットに対し、第2の実施の形態の磁束経路制御技術を適用することにより、抵抗値は187.4mΩから80.2mΩまで低減した(図13(b))。このとき、銅板コイルユニット、第2の実施形態のコイルユニット、LCWコイルユニット、送電コイルユニットの85kHzにおけるインダクタンスはそれぞれ40.1μH、43.6μH、37.7μH、40.3μHであった。なお、送電コイルは受電コイルと比べて巻数は少ないが、外径が大きいためインダクタンスは受電用のLCWよりも大きい。第2の実施形態のコイルユニットは、電流密度の片寄りを抑える効果があるため、銅板コイルに比べてインダクタンスがわずかに増加している。
【実施例】
【0045】
図13(c)に銅板コイルユニット、MPCコイルユニット、LCWコイルユニット、送電コイルユニットの85kHzにおけるQ値を示す。それぞれ、114、290、610、724であった。MPCコイルは銅板コイルに比べて抵抗が半減しインダクタンスが向上したため、Q値が2.5倍増加した。
【実施例】
【0046】
表2に図13に示されたインピーダンス特性と結合係数k、伝送効率ηをまとめて示す。結合係数と効率についてより詳細に説明する。図14に性能指数U((3)式)を横軸にプロットしたコイルの伝送効率を示す。まずは電磁界解析ソフト(Maxwell 3D)を用いて銅板コイルとMPCコイルの相互インダクタンスを算出し、(2)式から結合係数を計算した。またLCWコイルと送電コイルは同相直列接続でのインダクタンスLa、逆相接続でのインダクタンスLbを測定し、(1)式を用いて相互インダクタンスMを算出した。

【表2】
JP2020047614A_000008t.gif

【実施例】
【0047】
銅板コイル、MPCコイル、LCWコイルの結合係数はそれぞれ0.102(測定値)、0.125(計算値)、0.175(計算値)であった。MPCコイルに用いられる磁性材料は送電コイルからの磁束を受電コイルに誘導するため、銅板コイルと比較してMPCコイルの結合係数kは高い。電流の片寄りを抑制し、コイル面に電流を流すことで、電流に鎖交する磁束が増加し、結合係数kが向上したと考えられる。
【実施例】
【0048】
図14に示されるように、銅板コイル、MPCコイル、LCWコイルにおける効率はそれぞれ94.58%(解析値)、97.54 %(解析値)、97.29 %(測定値)であった。銅板コイルに比べてMPCコイルは磁束経路制御技術を用いることで銅損が低減し、抵抗Rは減少する。また、電流密度の片寄りが抑えられたことにより、インダクタンスが増加し、その結果Q値が向上した。MPCコイルは銅板コイルに比べて受電コイルに磁束を誘導する効果があり、結合係数が高い。よって銅板コイルの効率が94.58%であるのに対してMPCコイルは97.54%と2.96ポイント向上した。またLCWコイルの97.29%(測定値)に対してMPCコイルは97.54%(解析値)であり、MPCコイルとLCWコイルはほぼ同等の伝送効率が見込まれる。
【実施例】
【0049】
以上、本開示の一態様に係る実施の形態について説明した。第1の実施形態ではコイル導体間の間隙を中周部で狭めることによりコイル導体をなるべく避けるように磁力線を制御することができ。さらに第2の実施形態では、コイル間隙に磁性体の壁を設け、またコイル端部に磁性体を偏在して配置したことにより、端部の電流の片寄りを低減した。さらに第2の実施形態では、コイル下部に磁性体を用いる事により、フェライトに引き寄せられる磁束を磁性材料に通すことで、コイル上部に流れる電流密度を低減した。これらの工夫により、リッツ線よりはるかに簡素な構造にもかかわらず、リッツ線とほぼ同等の伝送効率を有する、ワイヤレス伝送コイルユニットを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、電気自動車、携帯電話機、家電機器、医療機器その他充電池を内蔵した機器向けの、非接触給電システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 磁気シールド
2 コイル
2a、2c、2e コイル導体
2b、2d、2f 間隙
3(3a、3b、3c) 磁性体
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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