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明細書 :一括情報収集システムおよび信号分離方法および信号分離装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-102805 (P2020-102805A)
公開日 令和2年7月2日(2020.7.2)
発明の名称または考案の名称 一括情報収集システムおよび信号分離方法および信号分離装置
国際特許分類 H04L   5/06        (2006.01)
G08C  15/04        (2006.01)
G08C  15/00        (2006.01)
G08C  17/00        (2006.01)
H04W   4/38        (2018.01)
FI H04L 5/06
G08C 15/04
G08C 15/00 E
G08C 17/00 Z
H04W 4/38
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2018-240708 (P2018-240708)
出願日 平成30年12月25日(2018.12.25)
発明者または考案者 【氏名】田久 修
【氏名】白井 啓一郎
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 2F073
5K067
Fターム 2F073AA02
2F073AB01
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC11
2F073CD11
2F073DD06
2F073DE08
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG08
2F073GG09
5K067AA03
5K067DD02
5K067EE02
5K067EE16
要約 【課題】センサとその計測値が分離可能な一括情報収集システムと信号分離方法を提供する。
【解決手段】計測値に応じ離散的な周波数変位を搬送波に施した信号を送信する複数のセンサと、複数のセンサが送信した信号を受信する情報集約局とを含む一括情報収集システムであって、複数のセンサのうち各センサは、離散的な周波数変位の最小周波数間隔未満の固有の周波数オフセットを搬送波に加える変調部を有する。また、情報収集局は、受信スペクトルにおける副搬送波成分の位相回転速度から任意のセンサにおける周波数オフセットを推定する。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
計測値に応じて離散的な周波数変位を搬送波に施した信号を送信する複数のセンサと、前記複数のセンサが送信した信号を受信する情報集約局とを含む一括情報収集システムであって、前記複数のセンサのうち各センサは、前記離散的な周波数変位の最小周波数間隔未満の固有の周波数オフセットを前記搬送波に加える変調部を有する、一括情報収集システム。
【請求項2】
前記周波数変位は、前記計測値に応じて量子化されたマルチレベル情報であることを特徴とする請求項1記載の一括情報システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の一括情報収集システムの情報集約局における信号分離方法であって、
受信スペクトルにおける最大電力の副搬送波成分の位相回転速度から任意のセンサにおける周波数オフセットを推定するステップと、
前記受信スペクトルと前記周波数オフセットから、前記任意のセンサと情報集約局の間の通信路状態情報を推定するステップと、
前記周波数オフセットと前記通信路状態情報から前記任意のセンサによるキャリア間干渉レプリカを再現するステップと、
前記受信スペクトルから前記キャリア干渉レプリカを差し引くステップを有し、
前記ステップを繰り返すことにより、前記複数のセンサによるキャリア間干渉を除去することを特徴とする、信号分離方法。
【請求項4】
前記キャリア間干渉レプリカを差し引いた残留スペクトルと閾値を比較するステップと、
前記残留スペクトルが前記閾値以下になるまでの繰り返しの回数と前記複数のセンサの数が等しいときはセンサ情報の重複が生じていないと判断し、前記繰り返しの回数が前記複数のセンサの数よりも少ないときはセンサ情報の重複が生じていると判断するステップをさらに含む、請求項3に記載の信号分離方法。
【請求項5】
センサ情報の重複が生じていないと判断された場合、
前記各センサに係る周波数変位と通信路状態情報と周波数オフセットをデータセットとし、隣接する計測時刻間の前記データセットの各要素の差分の二乗重み付け加算値が最小になるように、前記データセットと各センサとを関連付けするステップをさらに含む、請求項4に記載の信号分離方法。
【請求項6】
センサ情報の重複が生じていると判断された場合、
前記各センサに係る周波数変位と受信スペクトルをデータセットとし、
隣接する計測時刻間の前記データセットの各要素の差分の二乗重み付け加算値が最小になるように隣接する計測時刻間でのデータセットの接続関係を決定して前記データセットと各センサとを関連付けをするステップと、
前記関連付けの確定後、重複したデータセットの周波数オフセットと通信路状態情報を前段の計測時刻での推定値に置き換えるステップを含む、請求項4に記載の信号分離方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の一括情報収集システムの情報集約局における信号分離装置であって、
受信スペクトルにおける最大電力の副搬送波成分の位相回転速度から任意のセンサにおける周波数オフセットを推定するユニットと、
前記受信スペクトルと前記周波数オフセットから、前記任意のセンサと情報集約局の間の通信路状態情報を推定するユニットと、
前記周波数オフセットと前記通信路状態情報から前記任意のセンサによるキャリア間干渉レプリカを再現するユニットと、
前記受信スペクトルから前記キャリア干渉レプリカを差し引くユニットを有し、
前記ユニットを繰り返し動作させることにより、前記複数のセンサによるキャリア間干渉を除去するユニットを備えたことを特徴とする、信号分離装置。
【請求項8】
前記キャリア間干渉レプリカを差し引いた残留スペクトルと閾値を比較するユニットと、
前記残留スペクトルが前記閾値以下になるまでの繰り返しの回数と前記複数のセンサの数が等しいときはセンサ情報の重複が生じていないと判断し、前記繰り返しの回数が前記複数のセンサの数よりも少ないときはセンサ情報の重複が生じていると判断するユニットをさらに含む、請求項7に記載の信号分離装置。
【請求項9】
センサ情報の重複が生じていないと判断された場合、
前記各センサに係る周波数変位と通信路状態情報と周波数オフセットをデータセットとし、隣接する計測時刻間の前記データセットの各要素の差分の二乗重み付け加算値が最小になるように、前記データセットと各センサとを関連付けするユニットをさらに含む、請求項8に記載の信号分離装置。



発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、一括情報収集システムおよび信号分離方法および信号分離装置に関する。具体的には、センサからの情報を一括収集する無線通信システムと、この無線通信システムにおいて、端末識別信号が混信した場合にでも、情報収集局が各送信機を識別することができる信号分離方法および信号分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の状態を認識するセンサに無線機能を取り付けることで、インターネット上でセンサ情報を記録し、状態モニタや機器制御、課金情報の収集などを行う技術は、近年、Machine to Machine (M2M) Communications やInternet of Things (IoT)と呼ばれ、幅広い方面への応用が検討されている。特にセンサ情報収集用の無線通信は、無線センサネットワーク(WSN)と呼ばれている。
【0003】
無線通信の用途が広がる一方で、無線通信資源である周波数は現在深刻な枯渇状態であるため、限られた周波数資源において、多数の情報を並列に伝送する多重化や多元接続化の検討が進められている。例えば、複数アンテナを用いたMIMO伝送では、無線伝播路の固有性を利用して、伝播路の直交化を確立して信号の同時送信と分離を可能にしている(非特許文献1)。しかし、無線伝播路において直交通信路が確立できない場合、特に情報源が近接したときには、各センサが伝搬する通信路に相関があり、多重伝送が維持できなくなるという問題がある。
【0004】
また、無線センサネットワークに特化した手法として、無線信号の周波数および位相や継続時間などを無線物理量と定義し、センサ情報を無線物理量に比例して変化させることで、一度に多数のセンサの情報を通知する方法が提案されている(特許文献1)。このような方法は(無線通信パラメタ変換型)一括情報収集法(PhyC-SN)と称される。この方法は、情報源が近接した場合でも情報の分離が可能であり、しかも少ないステップですべてのセンサから情報を収集することができる。しかし一方で、センサ情報の偶発的な重複が生じた際に、センサ情報の発信源が特定できず、センサ別に情報を識別できないといった課題がある。
【0005】
また、無線の発信源を特定する手法として、無線RF回路の不安定性から各端末の固有の信号の揺らぎを特徴量として識別する方法(非特許文献2)や、情報発信源と受信源との伝播路が異なることを利用して無線機の位置を特定する方法(特許文献2)なども検討されている。しかし、いずれの方法も、無線通信の1つの特徴量を用いて識別を実施しているため、特徴量が少なく識別できる端末の数が制限される。
【0006】
そこで、信号発信源の数や位置が多様な場合であっても、任意の時刻に情報集約局で受信された信号のノード集合と、隣接する時刻のノード集合とを用いてエネルギー式を作成し、このエネルギー式が最小となるようにトラッキングを行い、各端末を決定することで正確に信号分離が行える端末識別方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013-187552号公報
【特許文献2】特表2006-515727号公報
【特許文献3】特開2017-046027号公報
【0008】

【非特許文献1】Gold Smith,Wireless Communications、Cambridge University Press,2005
【非特許文献2】北川尚紀,川村正一郎,樋口利光,柿沼裕幸,石井寛之,“FM検波を用いた無線局識別装置の試作”,電子情報通信学会ソフトウェア無線研究会,SR2005-39,pp.125-129,2005年7月29日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献3の技術を用いても、複数の送信機から偶然同じ物理量(例えば周波数、電力)が情報集約局に届いた場合、信号が分離できないだけでなく、混信により異なる情報源のデータを追尾する、いわゆるエラートラッキングが発生することがある。また、そもそも当技術においては情報源を示すIDが通知されないため、分離した情報系列の情報源を特定するためには定期的にID情報とセンサ情報との関連を示した副情報の通知が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る一括情報収集システムは、計測値に応じて離散的な周波数変位を搬送波に施した信号を送信する複数のセンサと、前記複数のセンサが送信した信号を受信する情報集約局とを含む一括情報収集システムであって、前記複数のセンサのうち各センサは、前記離散的な周波数変位の最小周波数間隔未満の固有の周波数オフセットを前記搬送波に加える変調部を有する。
【0011】
前記周波数変位は、前前記周波数変位は、前記計測値に応じて量子化されたマルチレベル情報であってもよい。
【0012】
前記一括情報収集システムの情報集約局における信号分離方法は、受信スペクトルにおける最大電力の副搬送波成分の位相回転速度から任意のセンサにおける周波数オフセットを推定するステップと、前記受信スペクトルと前記周波数オフセットから、前記任意のセンサと情報集約局の間の通信路状態情報を推定するステップと、前記周波数オフセットと前記通信路状態情報から前記任意のセンサによるキャリア間干渉レプリカを再現するステップと、前記受信スペクトルから前記キャリア干渉レプリカを差し引くステップを有し、前記ステップを繰り返すことにより、前記複数のセンサによるキャリア間干渉を除去するものであってもよい。
【0013】
前記キャリア間干渉レプリカを差し引いた残留スペクトルと閾値を比較するステップと、前記残留スペクトルが前記閾値以下になるまでの繰り返しの回数と前記複数のセンサの数が等しいときはセンサ情報の重複が生じていないと判断し、前記繰り返しの回数が前記複数のセンサの数よりも少ないときはセンサ情報の重複が生じていると判断するステップをさらに含んでもよい。
【0014】
センサ情報の重複が生じていないと判断された場合、前記各センサに係る周波数変位と通信路状態情報と周波数オフセットをデータセットとし、隣接する計測時刻間の前記データセットの各要素の差分の二乗重み付け加算値が最小になるように、前記データセットと各センサとを関連付けするステップをさらに含んでもよい。
【0015】
センサ情報の重複が生じていると判断された場合、前記各センサに係る周波数変位と受信スペクトルをデータセットとし、隣接する計測時刻間の前記データセットの各要素の差分の二乗重み付け加算値が最小になるように隣接する計測時刻間でのデータセットの接続関係を決定して前記データセットと各センサとを関連付けをするステップと、前記関連付けの確定後、重複したデータセットの周波数オフセットと通信路状態情報を前段の計測時刻での推定値に置き換えるステップを含んでもよい。
【0016】
前記一括情報収集システムの情報集約局における信号分離装置は、受信スペクトルにおける最大電力の副搬送波成分の位相回転速度から任意のセンサにおける周波数オフセットを推定するユニットと、前記受信スペクトルと前記周波数オフセットから、前記任意のセンサと情報集約局の間の通信路状態情報を推定するユニットと、前記周波数オフセットと前記通信路状態情報から前記任意のセンサによるキャリア間干渉レプリカを再現するユニットと、前記受信スペクトルから前記キャリア干渉レプリカを差し引くユニットを有し、前記ユニットを繰り返し動作させることにより、前記複数のセンサによるキャリア間干渉を除去するユニットを備えてもよい。
【0017】
前記キャリア間干渉レプリカを差し引いた残留スペクトルと閾値を比較するユニットと、前記残留スペクトルが前記閾値以下になるまでの繰り返しの回数と前記複数のセンサの数が等しいときはセンサ情報の重複が生じていないと判断し、前記繰り返しの回数が前記複数のセンサの数よりも少ないときはセンサ情報の重複が生じていると判断するユニットをさらに含んでもよい。
【0018】
センサ情報の重複が生じていないと判断された場合、前記各センサに係る周波数変位と通信路状態情報と周波数オフセットをデータセットとし、隣接する計測時刻間の前記データセットの各要素の差分の二乗重み付け加算値が最小になるように、前記データセットと各センサとを関連付けするユニットをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一態様によれば、各センサが離散化周波数間隔未満となるそれぞれ固有の周波数オフセットを搬送波に加えることで、前記周波数オフセットを各センサのIDとして機能させることができる。このときキャリア間干渉が発生しても前記信号分離方法を用いることで完全に除去することができる。さらに前記信号分離方法により、一部のセンサからの受信データが重複しても、センサを的確に見分けて計測値を正確に分離検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一括情報収集システムの一例を示す概念図
【図2】図1の各センサの計測値信号の例を示すグラフ
【図3】図1の各センサの計測値信号の交差の例を示すグラフ
【図4】本開示の実施の形態におけるキャリア間干渉の原理を示すグラフ
【図5】本開示の実施の形態におけるデータ分離方法のフローチャート
【図6】本開示の実施の形態におけるデータセット割当の説明図
【図7】本開示の実施の形態におけるデータ重複の説明図
【図8】本開示の実施の形態におけるデータ分離方法の説明図
【図9】本開示の実施例1におけるセンサ情報モデルを示すグラフ
【図10】本開示の実施例1における信号分離方法の効果を示すグラフ
【図11】本開示の実施例1における信号分離方法の効果を示すグラフ
【図12】本開示の実施例1における信号分離方法の効果を示すグラフ
【図13】本開示の実施例2における実験とシミュレーションの結果を示すグラフ
【図14】本開示の実施例3における累積分布関数評価結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態(以下、本実施形態)における信号分離方法について図面を参照して詳細に説明する。

【0022】
まず、図1に典型的な無線通信パラメタ変換型の一括情報収集法(PhyC-SN)モデルを例示する。図1において1、2、3はそれぞれ送信機能を持つセンサ(#1、#2、#3)であり、4は各センサ(1、2、3)から送信された信号をすべて受信する情報集約局である。各センサはキャリア(搬送波)周波数fに対し、それぞれ観測した温度に応じた周波数だけキャリア周波数を変位させて、送信する場合を挙げる。例えば、センサ1が19℃を観測したら、19+f(Hz)の周波数の信号を送信し、同様にセンサ2、3はそれぞれ24+f(Hz)、15+f(Hz)の信号を送信する(図2)。

【0023】
情報集約局4はセンサ1、2、3からの信号を同時に受信し、情報源の特定と情報の分離を実行する。上記センサの送信周波数が十分離れていれば、受信された信号の周波数スペクトルを検出することにより、19Hz、24Hz、15Hzの周波数成分をそれぞれ検出することができる。ところが、各センサが検出する温度が変動し、図3に示すように、センサ間(#1と#2)でクロスオーバーが生じたとき、センサと検出値が入れ替わって認識されてしまうことがある。

【0024】
このような一括情報収集法特有の課題を解決するために、クロスオーバー前のセンサ情報(この場合周波数)から次のセンサ情報を予測し、予測値と近い方をクロスオーバー後のセンサおよびセンサ情報として判断する、いわゆるトラッキング技術が必要となる。本実施の形態はこの一括情報収集法におけるトラッキング技術に係るものである。

【0025】
本実施の形態では、より一般化するために、送信機能を持つセンサに数はK個であるとする(図1はK=3)。また送信機であるセンサ1、2、3が単一の情報集約局(FC)4へセンサ情報を通知するスター型のトポロジーを仮定する。ここで、センサ情報は量子化されたマルチレベル情報とする。

【0026】
まず、K個のセンサ(送信機)1、2、3はセンサ情報に応じて搬送波に対し離散的な周波数変位を施した信号を送信する機能を有する。例えば1Hz間隔でマルチレベル化された副搬送波番号の副搬送波を伝送する変調部を有している。例えばセンサ情報の量子番号が5番のとき、5番目の周波数番号の副搬送波を選択して伝送する。それゆえ、送信方法は周波数シフトキーと等価である。ここで、副搬送波番号の選択は直交周波数分割多重(OFDM)と同じく、逆離散フーリエ変換(IDFT)を用いる。すなわち伝送可能なセンサ情報の最大量子化数は副搬送波数と等しい。

【0027】
さらに、センサ(送信機)1、2、3それぞれに組み込まれた変調部は、それぞれ固有の周波数オフセットε(ε≠ε≠ε)を搬送波に加える機能を有する。この周波数オフセットは、後述のように、離散的な周波数変位の最小周波数間隔未満である。本実施の形態における変調部はアナログ又はデジタルLSI等のハードウェアで実現されるものであってもよいし、一部もしくは全部をマイクロコードやソフトウェアで実装されたものであってもよい。

【0028】
以下、数式を用いながら無線通信パラメタ変換型一括情報収集法(PhyC-SN)モデルの動作を説明する。k番目のセンサ(k=1,2,...,K)がn(∈1,2,...,N,Nは副搬送波数)番目の副搬送波番号を選択した場合の、m(∈1,2,...,N)番目の時刻における離散時間送信信号は逆離散フーリエ変換(IDFT)より次式となる。

【数1】
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ここで、無線伝送路はLパスで構成される各パスが独立で各センサが独立なフェージング通信路と仮定する。k番目のユーザにおけるl(エル)番目のインパルス応答をhk,l、遅延時間をτk,lとし、受信側の検出タイミング誤差に起因する時間差も含めている。

【0029】
情報集約局(FC)4では、センサ1、2、3のIDFTと同じ検出時間区間で、すなわちセンサ群の送信と同じサンプリングレートで信号を検出し、離散時間フーリエ変換(DFT)を適用する。一括収集法では全ユーザが単一搬送波を繰り返し送信しているため、検出タイミングの前後のシンボルがガードインターバルと同じ役割を果たすと考えられる。その結果、タイミング誤差に起因する副搬送波直交性の崩れは回避できる。また、マルチパスの相対遅延時間はOFDMシンボル長の半分よりも短く、全ての遅延波がDFTの検出時間範囲内であると仮定する。

【0030】
以上より、m番目の時刻における情報集約局4の受信信号は次式のように表せる。

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ここで,n(m)は雑音成分である。また、ε(-1.0<ε<1.0)は任意のk番目のセンサの搬送波と情報集約局4が受信のために設定している搬送波との周波数オフセット量を表す。すなわち、各センサは離散的な周波数変位の最小周波数間隔(例えば1Hz間隔)未満に固有の周波数オフセットを前記搬送波に加える変調部を有する。εはこの周波数オフセットを前記最小周波数間隔で正規化した値である。以降、周波数オフセット量εは正規化値を示しているとする。

【0031】
情報集約局(FC)4が検出した第v番目の副搬送波成分は、(2)式をフーリエ変換することにより、次式のように得られる。

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ここで,γは次式で定義されるk番目のユーザの通信路状態情報(CSI)である。

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【0032】
式(3)において、雑音の成分である第2項を無視すると、周波数オフセットの発生によりn≠vにも周波数スペクトルが現れ、これがキャリア間干渉(ICI)となる。説明のため,v=nの周波数成分をメインローブ、v≠nをサイドローブと定義する。

【0033】
一括収集法では、全センサが同時にアクセスした副搬送波を情報集約局4が一括受信する。図4に全センサ情報を認識する様子を示す。周波数オフセットが無い状態(図4(a))では、周波数スペクトルのヌル点が各副搬送波周波数と一致するため、受信周波数成分から全ユーザの情報の広がりや中央値(本図の結果では,正規化周波数で8となる)を認識できる。しかし、周波数オフセットが加わると(図4(b))、キャリア間干渉(ICI)が発生し、他センサが送信した副搬送波成分のサイドローブと干渉し合い、信号成分がマスク化される。その結果、ICI成分は他センサが送信した副搬送波と混同を生じさせる虞がある。

【0034】
これを回避する方法として、例えば、センサ情報の特徴量を利用したデータトラッキングを実施する方法(特許文献3)がある。しかし、複数のセンサが同じ量子レベルの情報を送信したとき、混信により却って異なる情報源のデータを追尾する、いわゆるエラートラッキングが生じるといった課題がある。そこで、本実施の形態では、特徴量の時間的な連続性を利用したデータトラッキングにより情報源であるセンサ別にセンサ情報を分類し信号分離する方法を用いることでこの課題を解決している。

【0035】
より具体的には、まずは、各センサが付加する前記最小周波数間隔(IDFTの周波数)未満の周波数オフセットをIDとして用いる。このIDは情報集約局(FC)4がセンサごとに割り当てるとする。ここで周波数オフセットの増加あるいは減少を区別するため周波数オフセットに極性を含める。その結果、情報集約局4はセンサ固有の周波数オフセットを受信成分から推定することができ、その結果情報源の特定が可能になる。さらに、周波数オフセットの大きさが副搬送波の周波数間隔未満であるため、情報源を特定するIDの付加に要する周波数資源の消費は限定的である。

【0036】
しかし、その一方で、先述のように、周波数オフセットによるキャリア間干渉(ICI)が発生するため、その対策が必要になる。そこで本実施形の形態においては、各センサが送信するセンサ情報にデータ重複が発生した場合と、データ重複が発生しなかった場合とで処理を選択的に切り替える。さらに、データ重複の発生を認識する方法も提案する。

【0037】
本実施の形態における信号分離方法のフローチャートを図5に示す。図5において、情報集約局(FC)4はまず受信スペクトルを検出する(ステップ401、以下符号のみ表示)。具体的には受信信号(式(2))をフーリエ変換し、式(3)に相当する量を数値的に求める。次にR(検出センサ数)を初期設定(402)した後、電力検出とチャネル・周波数オフセット推定、キャリア間干渉(ICI)レプリカ生成とキャンセラの処理を繰り返し(403~407)、全センサの信号を検出する。以下、数式を用いながら詳細に説明する。

【0038】
各センサが異なる副搬送波番号を選択して送信した場合、各服搬送波番号には2つ以上の副搬送波のメインローブは存在しない。そこで受信信号の解析においては、任意の第k番目のセンサに注目する。前記式(3)より、情報集約局4におけるFFT後のv番目の副搬送波成分は次式となる。

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なお、上式において、説明を簡易にするため雑音成分を無視している。

【0039】
さらに副搬送波成分から位相回転速度を推定することで周波数オフセットを推定する。まずDFTによる副搬送波成分の検出を時間連続で2回以上実施する。(説明の簡易化のため、本実施の形態では2回とする)。式(5)を1番目にDFTで検出した副搬送波成分とすると,1番目の直後にDFTで検出したv番目の副搬送波成分は次式のように書ける。

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ここで、γとεは,二つのDFT検出の間で一定であると仮定する。nとvは整数であるため、式(6)は以下のように変形できる。

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【0040】
ここで注目すべき点として、γは周波数方向に一定であるため,周波数オフセットが|ε|<0.5の範囲において、最大電力基準で選択した副搬送波番号はメインローブと等しくなる。それゆえ、v=nの周波数成分に注目するとの二つの副搬送波成分の関係は次式のようになる。

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よって周波数オフセットは次式のように推定できる。

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周波数オフセットεが確定すれば、通信路状態情報(CSI)は次のように推定できる。

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【0041】
ここで、再度、式(5)に着目すると、Y(v≠n)がキャリア間干渉(ICI)成分となる。注目すべき点として、γは,キャリア間干渉の周波数番号vによらず一定であることである。よって、ICIレプリカの生成において、メインローブで推定したCSIを用いることができる。つまり、式(9)と式(10)より推定された周波数オフセットとCSIを用いることで、ICIレプリカを式(5)で再現することができる。さらに、式(3)で与えられる副搬送波成分から、式(5)で再現されたICIレプリカを差し引くことにより、k番目のセンサによるキャリア間干渉をほぼ取り除くことができる。

【0042】
このように1回キャリア間干渉(ICI)をキャンセルした(403→404→405)後、残留スペクトルから最大電力のスペクトルを検出する(403)。さらに、周波数オフセット推定とCSI推定(404)、ICIキャンセラ(405)を繰り返す。本実施の形態のような一括情報収集法では、全センサが情報集約局(FC)4を同時にアクセスするため、センサノード数に等しい副搬送波成分が検出されるまで、前記ステップ(403~405)を繰り返す。このような返し処理により、キャリア間干渉成分がほぼ完全に除去できるため、誤って信号を検出する誤判定を回避できる。

【0043】
(データトラッキングについて)
前記処理(403~405)より、各センサ1~3が選択した周波数番号(計測値)、通信路状態情報(CSI)、周波数オフセットのデータセットが得られる。このデータセットは情報源を特定する固有情報として利用できる。本実施の形態において、情報集約局4はデータセットに情報源を示すラベルを割り当てることで信号分離をする。すなわち、t番目の時刻(t=1,2,...)に全センサが情報を通知したとき、情報集約局4が推定した各データセットに番号i(∈1,2,...,K)を割り当てる。i番目のデータセットの計測値、通信路状態情報、周波数オフセットをそれぞれn、γ、εとする。このラベル割り当てを図6に示す。

【0044】
ここで、時刻t+1番目にセンサが情報を通知したときの各データセットの番号をj(∈1,2,...,K)とする。そして、j番目のデータセットの計測値、通信路状態情報、周波数オフセットをそれぞれn、γ、εとする。さらに、各データの時間連続性を評価するコスト関数を次式のように定義する。

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ここで,A,B,Cは,正規化係数である。

【0045】
次に、情報集約局4は、時刻tにおけるデータセット番号iと時刻t+1におけるデータセット番号jとの接続関係を決定する。三変数より成る前記データセット(計測値(センサ情報)、通信路状態情報、周波数オフセット)に時間連続性があるとき、式(11)に示すコスト関数をできる限り小さくする接続関係が最も有力と考えられる。時刻t及び時刻t+1の各データセットが未接続とならないことを考慮すると、接続関係を示す組み合わせはK!通りである。ここで、第s(∈1,2,...,S=K!)番目の有効な接続関係を示す組み合わせの集合をuとすると、接続関係の決定は次式の最適化問題として定式化できる。

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ここで、sは,コスト関数を最小にする最も有力な接続関係を示す組み合わせ集合の番号である。本最適化問題の解決は全ての組み合わせにより達成されるコストを評価し、最小となるコストを選択するbrute-force的な方法が用いられる。しかし、ノード数の拡大により組み合わせ数が膨大となる恐れがある。そこでコスト空間上の距離が一定以上を超えるとき、候補対象から除外するいわゆるスピア復号処理を適用することで組み合わせ数を限定することができる。

【0046】
(センサ情報(計測値)に重複が生じた場合のデータ分離)
全センサで一部あるいはすべてのセンサが同じデータを選択した場合(同じ周波数を送信した場合)を考える。図7にtとt+1の時刻の受信データセットの様子を示す。t+1番目の時刻におけるj番目のデータセットを選択したセンサグループをp∈IDjとし、Iは整数空間、Dはt番目の時刻にj番目のデータセットに接続されるセンサの総数を表す。ここで、n番目の副搬送波を選択したセンサグループをp∈IDjとする。そのとき情報集約局4が受信する副搬送波成分のメインローブは次式のように書ける。

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ここでも雑音成分は無視している。

【0047】
このように一部のセンサによる情報が重複する場合、各センサ情報が相互に干渉するため、情報集約局4がセンサ別にすべてのデータセットを推定することは非常に困難である。そこで、本実施の形態では、情報集約局4はデータセットのうち、まず通信路状態情報と周波数オフセットを推定する。この推定方法について以下説明する。

【0048】
ここで、合成されたサイドローブがメインローブのスペクトル成分よりも小さくなる程度に各ユーザの周波数オフセットが限定されるとき、情報集約局4が副搬送波成分から最大電力基準で選択した副搬送波成分番号は各センサが選択した副搬送波番号(計測値)と一致するはずである。そこでj番目の副搬送波成分から式(9)に従い周波数オフセット^εを推定する。注意点として、推定した^εは相互干渉が大きいため、センサに割り当てた周波数オフセットとの平均推定誤差は大きく、推定が困難となる。また、j番目の通信路状態情報は次式のように推定される.

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その結果、再生されるキャリア間干渉のレプリカ(以降、ICIレプリカ)は次式のように表せる。

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【0049】
このICIレプリカは式(3)に示された実際の副搬送波成分のキャリア間干渉とは異なる。それゆえ、ICIキャンセラによるキャリア間干渉抑圧効果は低い。しかし、メインローブの干渉レプリカ(^Y(n))は検出した周波数スペクトルY(n)と等価であるため、干渉キャンセルによりメインローブは除去される。この原理を利用し、全センサ(1~3)が選択した副搬送波番号(計測値)の種類(検出されたセンサ)を数えることができる。

【0050】
まず、衝突が生じていない場合と同じように、受信した周波数スペクトルから最大電力基準で選択し、周波数オフセットとCSIを推定、干渉レプリカによるキャンセル処理をする(以上401~405)。次にキャンセルした後の受信周波数スペクトルの電力と閾値を比較し(406)、閾値を超えるスペクトルが存在する場合は選択副搬送波の種類の数(検出センサ数)Rに1を加えて(407)、前記ループを繰り返す。その結果、周波数スペクトルのすべてが閾値を下回ったとき、キャンセルしたスペクトルの総数が選択副搬送波の種類とみなされる。

【0051】
ここで、もし選択副搬送波の種類Rが実際のセンサ数Kと等しい場合は(408)、選択副搬送波に重複が発生していないと判断できる。一方、ループが終了しても選択副搬送波の種類がセンサ数よりも少ない場合(R<K)には重複が生じていると判断できる。選択副搬送波の種類数の数え上げでは、周波数オフセットの拡大によりICIが大きくなると、ICIキャンセル後の残留キャリア間干渉(ICI)電力が閾値を上回り、誤った副搬送波の種類の数えあげとなる。その結果センサ情報の重複の識別に誤りが生じる。そこで、以下示すように、周波数オフセットの割り当ての最大量を一定以下に抑えることで衝突発生の誤りを抑制する。

【0052】
式(13)に示されるように、j番目に検出した副搬送波成分は同じ副搬送波番号を選択したすべてのセンサ(1~3)の副搬送波成分の線形合成で与えられる。また、周波数オフセット及びキャリア間干渉に時間的連続性がある場合には、各センサの受信周波数成分は重複以前のセンサの受信周波数スペクトルと近似的に等しいと仮定できる。今、副搬送波成分の重複が生じていない時刻をtとし、次の時刻(t+1)において重複が生じたとする。時刻tのときに各データセットを示すラベルをi∈{1,2,...K}、時刻t+1の各データセットを示すラベルをj∈{1,2,...,K′}、K′<Kとすると、センサ情報が重複しないときと同じようにt番目の時刻とt+1番目の時刻のデータセットとの接続問題となる。ただし、t+1番目の複数のデータセットがt番目のデータセットに接続することを許容するという点において異なる。その結果,データセットの接続総数S′は次式のように表せる。

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【0053】
ここで、第s(∈1,2,...,S′)番目の有効な接続関係を示す組み合わせ集合をu′とする。時刻t+1における計測値としてj番目の副搬送波成分番号nを選択したセンサのグループをpと定義する。このときj番目の副搬送波成分は時刻tの副搬送波成分を用いて次のように推定できる。

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この予測値をt番目の時刻の周波数スペクトルに置き換え、次式とする。

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その結果、次式のコスト関数が得られる。

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【0054】
さらにここでの受信副搬送波成分は、通信路状態情報(CSI)及び各センサ固有の周波数オフセットにより決定する複素成分である。よって、通信路状態情報及び周波数オフセットに時間連続性がある場合には、この受信副搬送波成分においても時間的に高い類似性があり、式(19)のg(i,j)で示されるコスト関数は小さくなる傾向がある。したがって、データセットの接続を決定する問題は次式のコスト最小化問題と等価になる。

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すなわち、この最適化問題を解くことにより、決定された接続関係を示す集合が決定されることで情報源の特定を実現する(410)。

【0055】
接続関係が決定されれば、t+1番目の時刻においてセンサ情報(計測値)が重複したデータセットはこのデータセット構成する時刻tの各センサの通信路状態情報及び周波数オフセットの要素に分けられる。そこでt+1の時刻においてセンサ情報が重複したデータセットを、接続元のtの時刻におけるデータセットに分離する(411)。図8に重複したデータの分離の様子を示す。ステップ409または411が終了すると情報収集局4は次のデータ送信のリクエストを発信する(412)。

【0056】
以上の実行ステップ401~412により、データ重複時においても高精度な通信路状態情報及び周波数オフセットの推定値が得られる。その結果、全センサの個別のデータセットが得られるため、以降のデータトラッキングでセンサ情報の重複が発生しなかった場合には式(11)で示すコスト関数が、重複が発生した場合には式(19)で示すコスト関数が利用できるため、持続的にトラッキングができる。これより以下の実施例で示すように、トラッキングにおいてもセンサ別に接続関係を推定することができる。

【0057】
なお、本実施の形態の信号分離方法を実行する前記ステップ401~412は情報集約局4に組み込まれたマイクロプロセッサが実行するものであってもよい。また前記ステップ401~412を実行するためのプログラムは情報集約局4内のメモリに予め実装されたものであってよく、通信チャネルを通して外部のサーバーから伝送されたものであってもよい。

【0058】
さらに、前記ステップ401~412は、これらをユニット化し、これらのユニットが実装された信号分離装置によって実行されるものであってもよい。前記ユニットは情報集約局に組み込まれたマイクロプロセッサとこれによって実行されるプログラムで構成されてもよいし、一部または全てがハードウェアで設計されたものであってもよい。
【実施例】
【0059】
以下、本開示の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では、本実施の形態の信号分離方法を適当に設定されたモデルの下でシミュレーションし、従来の方式と比較した結果を示す。本実施例においては、副搬送波数N=256として、連続30回のデータ送信を一定の周期間隔で全センサが同時に送信する場合を想定する。当シミュレーションでは、30回のデータ送信を1試行として、この試行を1000回実施して数値結果を得ている。
【実施例】
【0060】
シミュレーションに当たり、k番目のユーザにおける時刻t+1における正規化周波数オフセットを次式のようにモデル化した。

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ここでεは[-ε,ε]の一様乱数であり,各時刻及び各センサに対して独立に決定する。εは周波数オフセットの取りうる最大値である。ρεは周波数オフセットの時間軸相間値である。また、ε(1)はk番目のユーザに最初の時刻にFCが割り当てた周波数オフセットであり、-ε≦ε(1)≦εの周波数オフセットのダイナミックレンジを全センサ数で分割し、各ユーザに固有の正規化周波数オフセットを割り当てる。
【実施例】
【0061】
通信路の伝達関数は次式に従う時間相間を仮定した。

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ここでργはフェージングの時間相間係数である。また、γは,各時刻及び各ユーザに独立な乱数であり、等電力二波モデルとし、パス間隔は1サンプル、先頭パスはライス係数10dBのライス不規則変数、第2波はレイリー不規則変数とした。本実施例では、一括情報収集法における周波数オフセットの干渉キャンセル効果と、データトラッキングにおける信号分離精度の検討を主目的としている。そのため、雑音耐性に対する評価は将来の課題とし、本評価では誤警報(信号が存在しないのに存在すると判断)が発生しないくらい十分高い受信電力が確保されているとしている。具体的には、本実施例においては、周波数スペクトルの存在を判定する閾値を平均信号電力の1/10に設定した。
【実施例】
【0062】
センサ情報(離散化した計測値)は以下に示す通り、ランダムウォークでモデル化した。

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式(24)において、上開きのかぎ括弧はフロア関数を、式(25)におけるかぎ括弧は小数点第1位を四捨五入して整数化する関数を意味する。また、βは[-3,3]の一様乱数である。初期値のみ各ユーザが異なるセンサ情報を割り当てている。図9に式(24)、(25)により生成されたセンサ情報の例を示す。なお、信号分離のためのデータトラッキングにおける式(11)と式(19)で示されるコスト計算において、センサ情報と通信路状態情報と周波数オフセットで示されるデータセット、および受信信号スペクトルの正規化項は、それぞれ周波数番号の中央値、通信路状態情報の平均電力、最大周波数オフセット量ε、および受信信号スペクトルの平均電力とした。
【実施例】
【0063】
図10に最大正規化周波数オフセットεに対する平均2乗誤差平方根(AverageRMSE)の結果を示す。ここでセンサ数K=5、周波数オフセット及び通信路状態情報(CSI)の時間相間をργ=ρε=0.999とした。なお、RMSEは次式で定義する。

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ここで、 ̄nは受信機で検出したセンサ情報番号を、^nは真のセンサ情報番号を表す。RMSEを平均化した結果がAverageRMSE(縦軸)となる。“Energy”はDFTにより電力検出した結果、電力が大きい順に上位K=5のスペクトラムを送信情報として判断する従来法によるシミュレーション結果を表す。“Cancel w/oAdaptation”と“Cancel w/Adaptation”はいずれもICI(キャリア間干渉)キャンセラを適用した場合のシミュレーション結果である。
【実施例】
【0064】
図10において、“Energy”(従来法)(図中×)ではデータトラッキングはセンサ情報を規範値として用い、“Cancel w/o Adaptation”(従来法)(図中〇)はセンサ情報、通信路状態情報、周波数オフセットより成るデータセットをトラッキングの規範として用いた。さらに“Cancel w/Adaptation”(本実施の形態)(図中●)のシミュレーションにおいては、センサ情報の重複がない場合には、“Cancel w/o Adaptation”と同じく、センサ情報、通信路状態情報、周波数オフセットのデータセットでトラッキングを実施し、センサ情報の重複が生じた場合にはセンサ情報とスペクトラムを規範として信号分離を行った。
【実施例】
【0065】
図10より明らかなように、本実施の形態である“Cancel w/Adaptation”(図中●)が従来法に比べて低いRMSEを達成しており、高精度な信号分離を実現していることがわかる。また、最大正規化周波数オフセットが増加することにより、提案法のRMSEが劣化することがわかる。これは,周波数オフセットの拡大によりキャリア間干渉(ICI)が増大し、しかも複数のセンサが同じセンサ情報を送信した場合、ICIキャンセラの干渉抑圧効果が小さく、他センサの情報への干渉が無視できなくなったからであると考えられる。本実施形態の信号分離方法を用いた場合は、正規化周波数オフセットが0.05以下である場合には、平均RMSEが0.01以下を達成している。
【実施例】
【0066】
図11に通信路状態情報(γ)及び周波数オフセット(ε)の時間相間係数に対する平均RMSEの特性を示す。ここで、通信路状態情報の時間相間係数ργは周波数オフセットρεと等しいものとした。センサノード数は5とし、最大周波数オフセットε=0.05とした。図10より明らかなように、従来法(Energy)(図中×)の電力検出では相間値に関係なく一定のRMSEとなる。これは、データトラッキングにおいて、通信路状態情報及び周波数オフセットを考慮していないためである。一方、本実施の形態の信号分離法(Cancel w/Adaptation)(図中●)では、相間値の拡大に伴いRMSEの改善が認められた。これは、相間係数が1に近づくことで、時間の連続性が高まりデータトラッキングによる信号の特定精度が改善したからと考えられる。
【実施例】
【0067】
図12にセンサノード数に対する平均RMSE特性を示す。最大正規化周波数オフセットε=0.05、周波数オフセット及び通信路状態情報の時間相間(ρε、ργ)はともに0.999とした。図12より明らかなように、センサ数が3、5、7である場合において、本実施の形態の信号分離法(図中●)が最も優れたRMSEを達成している。ただ、センサ数の増加に伴い、提案法のRMSEが徐々に劣化する傾向が見られる。これは、センサ数の増加に伴い、各センサが同じセンサ情報を送信する確率が高まり、残留キャリア間干渉成分が大きくなるため、推定精度の劣化が生じたと考えられる。
【実施例】
【0068】
(実施例2)
本実施例では、センサ情報を実機評価で得られたセンサ情報を用いた場合の無線通信シミュレーションとその結果について説明する。本実施例において、センサとして温度センサを用いた。センサノード数は5として30秒間隔で温度情報を取得した。図13に測定結果を示す。なお、センサ情報を伝送する無線伝送路は計算機シミュレーションで実現した。無線伝搬路のモデルは実施例1のシミュレーション評価と同じである。最大周波数オフセットεは0.05とし、周波数オフセット及び通信路状態情報の時間相間は0.99999とした。本実施の形態の信号分離法では、周波数オフセット及び通信路状態情報の時間相間が0.9999である場合も評価した。
【実施例】
【0069】
図14にRMSEに対する累積分布関数(CDF)の特性を示す。同図より明らかなように、本実施の形態の信号分離法を用いた場合(Cancel w/Adaptation)が最も優れたRMSEを達成している。本実施例、ργとρεを0.99999から0.9999に変更したとき、RMSEも劣化した。これは、各温度センサの間に類似性が高く、センサ情報が同じ情報を取得しやすい状況を意味しており、その結果、データトラッキングにおいて、周波数オフセット及び通信路状態情報の揺らぎによって誤ったセンサ情報を接続する頻度が増え、その結果,RMSEが劣化したからと考えらえる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば、屋外の温度、湿度等を観測する環境モニタリングや、店舗の空調制御、監視、POS、ビル制御、工場の監視、制御、物流監視等、幅広い分野において利用可能である。また、HEMS、BEMS等のエネルギー管理システムにおいても好適に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1、2、3 センサ
4 情報収集局
401~412 信号分離方法の実行ステップ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13