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明細書 :ポリプロピレン樹脂成形体の改質方法および、改質ポリプロピレン樹脂成形体ならびにその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-137779 (P2019-137779A)
公開日 令和元年8月22日(2019.8.22)
発明の名称または考案の名称 ポリプロピレン樹脂成形体の改質方法および、改質ポリプロピレン樹脂成形体ならびにその製造方法
国際特許分類 C08J   7/04        (2006.01)
C08F 293/00        (2006.01)
FI C08J 7/04 CESA
C08F 293/00
請求項の数または発明の数 17
出願形態 OL
全頁数 30
出願番号 特願2018-022250 (P2018-022250)
出願日 平成30年2月9日(2018.2.9)
発明者または考案者 【氏名】八尾 滋
【氏名】平井 翔
【氏名】小渕 秀明
【氏名】中野 涼子
【氏名】内野 智仁
出願人 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
【識別番号】100197642、【弁理士】、【氏名又は名称】南瀬 透
審査請求 未請求
テーマコード 4F006
4J026
Fターム 4F006AA12
4F006AB24
4F006AB52
4F006BA01
4F006BA07
4F006EA01
4J026HA11
4J026HA32
4J026HA39
4J026HB11
4J026HB32
4J026HB39
4J026HB48
4J026HE01
要約 【課題】
側鎖に長鎖アルカン鎖を有し、ポリプロピレン樹脂成形体と良好な相互作用力を持ち、表面特性を改質できる機能を有する側鎖結晶性ブロック共重合体によって、ポリプロピレン樹脂成形体を改質する方法を提供する。また、改質ポリプロピレン樹脂成形体を提供する。
【解決手段】
側鎖結晶性ブロック共重合体を含む共重合体溶液と、ポリプロピレン樹脂成形体とを、前記共重体溶液の温度を40~120℃で接触させる工程を有するポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。ポリプロピレン樹脂成形体の基材と、前記基材の少なくとも一部に側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位を持つ改質ポリプロピレン樹脂成形体。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
側鎖結晶性ブロック共重合体を含む共重合体溶液と、ポリプロピレン樹脂成形体とを、
前記共重体溶液の温度を40~120℃で接触させる工程を有するポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項2】
前記側鎖結晶性ブロック共重合体が、第1のモノマー(A)と、第2のモノマー(B)との共重合体であり、
前記モノマー(A)が、その側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーであり、
前記モノマー(B)が、機能性基を有するモノマーであり、
前記モノマー(A)が重合した部分であるモノマー(A)由来重合ブロックと、前記モノマー(B)が重合した部分であるモノマー(B)由来重合ブロックとを有するブロック共重合体である請求項1記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項3】
前記共重合体溶液の溶媒が、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシド、およびイオン性液体からなる群から選択される少なくとも1以上の溶媒である請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項4】
前記共重合体溶液の前記共重合体濃度が、0.01~2.0質量%である請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項5】
前記ポリプロピレン樹脂成形体と前記共重合体溶液とを、前記共重合体溶液の温度で接触させる時間が、1秒~60分である請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項6】
前記モノマー(B)の機能性基が、極性基および/または金属吸着能を有する機能性基である請求項2記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項7】
前記モノマー(B)が、極性基を有する機能性基として、オキシアルキレン基、アミノ基、アミド基、及びスルホ基からなる群から選択されるいずれかの基を有するモノマーである請求項6記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項8】
前記モノマー(B)が、金属吸着能を有する機能性基として、その側鎖にアミンを有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーである請求項6記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項9】
前記モノマー(B)が、その側鎖にオキシラニル基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーである請求項6記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項10】
前記側鎖結晶性ブロック共重合体の前記モノマー(B)由来のオキシラニル基に、3級アミンを有する化合物を反応させることで、オキシラニル基の一部を、金属吸着能を有する機能性基となる3級アミンの側鎖とする請求項9記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項11】
前記モノマー(B)が、金属吸着能を有する機能性基として、その側鎖にオキシアルキレン基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーである請求項6記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法により改質されたポリプロピレン樹脂成形体を、ナノ金属分散液に接触させて前記ポリプロピレン樹脂成形体にナノ金属層を設ける表層触媒化工程と、
前記ナノ金属層が設けられたポリプロピレン樹脂成形体を、無電解メッキ処理することで、前記ナノ金属層を介してポリプロピレン樹脂成形体にメッキ処理層を設けるメッキ処理工程とを有するポリプロピレン樹脂成形体のメッキ処理方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法により改質されたポリプロピレン樹脂成形体を、染料と接触させることで、前記ポリプロピレン樹脂成形体に染料接着部位を設ける染色工程を有するポリプロピレン樹脂成形体の染色方法。
【請求項14】
側鎖結晶性ブロック共重合体を含む共重合体溶液と、ポリプロピレン樹脂成形体とを、前記共重体溶液の温度を40~120℃で接触させる工程を有する改質ポリプロピレン樹脂成形体の製造方法。
【請求項15】
ポリプロピレン樹脂成形体の基材と、前記基材の少なくとも一部に側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位を持つ改質ポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項16】
前記側鎖結晶性ブロック共重合体の良溶媒接触後に、前記基材の少なくとも一部に前記側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位が残存する請求項15記載の改質ポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項17】
前記側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位が、前記側鎖結晶性ブロック共重合体の良溶媒を含有する請求項15または16記載の改質ポリプロピレン樹脂成形体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂成形体の改質方法および、改質ポリプロピレン樹脂成形体ならびにその製造方法に関する。また、改質されたポリプロピレン樹脂成形体を用いる、ポリプロピレン樹脂成形体のメッキ処理方法や、染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンは廉価で疎水性や耐薬品性、機械特性に優れていることなどから容器や包装材等に広く利用されている樹脂である。一方で、これらの樹脂は表面特性の改質が難しく、疎水性等の樹脂自体が本来備えている性質の範囲にその用途が制限されていた。
【0003】
本発明者らは、ポリエチレンの表面特性を改質し、例えば親水性や接着性を付与することができる側鎖結晶性ブロック共重合体(Side Chain Crystalline Block Copolymer:SCCBC)を利用する技術を提供してきた。例えば、本発明者らは、長鎖アルカン基を保有し側鎖結晶性を示すモノマーと溶媒親和性を示すモノマーを用いたブロック共重合体である側鎖結晶性ブロック共重合体を用いた表面修飾剤等を開示している(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-229725号公報
【特許文献2】特開2016-209879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
側鎖に長鎖アルカン鎖を有する側鎖結晶性ブロック共重合体は、ポリエチレンと良好な相互作用力を持ち、表面特性を改質できる機能を有する。この機能により、特許文献1等にポリエチレンを化学的に親水化したり、接着剤との吸着性を持つように改質できることが開示されている。これらのポリエチレンの改質は、側鎖結晶性ブロック共重合体の希薄溶液中にポリエチレン基材を浸漬したり、ポリエチレン基材に溶液を塗布することで達成されている。
【0006】
しかしながら、ポリプロピレンに対しては、側鎖結晶性ブロック共重合体を用いた改質は不可能であった。ポリエチレンとポリプロピレンとはいずれもポリオレフィンであるが、側鎖結晶性ブロック共重合体を接触させることで接着させるにあたっては、そのポリオレフィンとしての構造の違いの影響が大きいと考えられる。一方、ポリプロピレン樹脂成形体も工業上有用な樹脂であり、その表面特性等を改質することも求められている。
【0007】
係る状況下、本発明は、側鎖結晶性ブロック共重合体によるポリプロピレン樹脂成形体の改質方法および改質ポリプロピレン樹脂成形体ならびにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 側鎖結晶性ブロック共重合体を含む共重合体溶液と、ポリプロピレン樹脂成形体とを、前記共重体溶液の温度を40~120℃で接触させる工程を有するポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
<2> 前記側鎖結晶性ブロック共重合体が、第1のモノマー(A)と、第2のモノマー(B)との共重合体であり、
前記モノマー(A)が、その側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーであり、
前記モノマー(B)が、機能性基を有するモノマーであり、
前記モノマー(A)が重合した部分であるモノマー(A)由来重合ブロックと、前記モノマー(B)が重合した部分であるモノマー(B)由来重合ブロックとを有するブロック共重合体である前記<1>記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
<3> 前記共重合体溶液の溶媒が、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシド、およびイオン性液体からなる群から選択される少なくとも1以上の溶媒である前記<1>または<2>に記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
<4> 前記共重合体溶液の前記共重合体濃度が、0.01~2.0質量%である前記<1>~<3>のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
<5> 前記ポリプロピレン樹脂成形体と前記共重合体溶液とを、前記共重合体溶液の温度で接触させる時間が、1秒~60分である前記<1>~<4>のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
<6> 前記モノマー(B)の機能性基が、極性基および/または金属吸着能を有する機能性基である前記<2>記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
<7> 前記モノマー(B)が、極性基を有する機能性基として、オキシアルキレン基、アミノ基、アミド基、及びスルホ基からなる群から選択されるいずれかの基を有するモノマーである前記<6>記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
<8> 前記モノマー(B)が、金属吸着能を有する機能性基として、その側鎖にアミンを有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーである前記<6>記載の共重合体の製造方法。
<9> 前記モノマー(B)が、その側鎖にオキシラニル基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーである前記<6>記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
<10> 前記側鎖結晶性ブロック共重合の体前記モノマー(B)由来のオキシラニル基に、3級アミンを有する化合物を反応させることで、オキシラニル基の一部を、金属吸着能を有する機能性基となる3級アミンの側鎖とする前記<9>記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
<11> 前記モノマー(B)が、金属吸着能を有する機能性基として、その側鎖にオキシアルキレン基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーである前記<6>記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法。
【0010】
<12> 前記<8>~<11>のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法により改質されたポリプロピレン樹脂成形体を、ナノ金属分散液に接触させて前記ポリプロピレン樹脂成形体にナノ金属層を設ける表層触媒化工程と、
前記ナノ金属層が設けられたポリプロピレン樹脂成形体を、無電解メッキ処理することで、前記ナノ金属層を介してポリプロピレン樹脂成形体にメッキ処理層を設けるメッキ処理工程とを有するポリプロピレン樹脂成形体のメッキ処理方法。
<13> 前記<1>~<11>のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法により改質されたポリプロピレン樹脂成形体を、染料と接触させることで、前記ポリプロピレン樹脂成形体に染料接着部位を設ける染色工程を有するポリプロピレン樹脂成形体の染色方法。
【0011】
<14> 側鎖結晶性ブロック共重合体を含む共重合体溶液と、ポリプロピレン樹脂成形体とを、前記共重体溶液の温度を40~120℃で接触させる工程を有する改質ポリプロピレン樹脂成形体の製造方法。
【0012】
<15> ポリプロピレン樹脂成形体の基材と、前記基材の少なくとも一部に側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位を持つ改質ポリプロピレン樹脂成形体。
<16> 前記側鎖結晶性ブロック共重合体の良溶媒接触後に、前記基材の少なくとも一部に前記側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位が残存する前記<15>記載の改質ポリプロピレン樹脂成形体。
<17> 前記側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位が、前記側鎖結晶性ブロック共重合体の良溶媒を含有する前記<15>または<16>記載の改質ポリプロピレン樹脂成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリプロピレン樹脂成形体を側鎖結晶性ブロック共重合体により改質することができる。これにより、例えば、親水性や、接着剤への吸着性などの種々の表面特性を付与することができる。また、さらに、ポリプロピレン樹脂成形体をメッキ処理したり、染色したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る改質PPフィルムのTEM観察像である。
【図2】本発明の実施例に係る改質PPフィルムのIR分析結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例に係る改質PP繊維を用いた染色結果の像である。
【図4】本発明の実施例に係る改質PPフィルムのメッキ結果の像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。

【0016】
本発明のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法は、側鎖結晶性ブロック共重合体を含む共重合体溶液と、ポリプロピレン樹脂成形体とを、前記共重体溶液の温度を40~120℃で接触させる工程を有する。本発明のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法によれば、ポリプロピレン樹脂成形体を、側鎖結晶性ブロック共重合体により改質することができる。本願において、「本発明のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法」を、単に「本発明の改質方法」と記載する場合がある。

【0017】
本発明は、側鎖結晶性ブロック共重合体を含む共重合体溶液と、ポリプロピレン樹脂成形体とを、前記共重体溶液の温度を40~120℃で接触させる工程を有する改質ポリプロピレン樹脂成形体の製造方法とすることもできる。この本発明の改質ポリプロピレン樹脂成形体の製造方法により改質されたポリプロピレン樹脂成形体が得られる。本願において、「本発明の改質ポリプロピレン樹脂成形体の製造方法」を、単に「本発明の製造方法」と記載する場合がある。

【0018】
本発明の改質ポリプロピレン樹脂成形体は、ポリプロピレン樹脂成形体の基材と、前記基材の少なくとも一部に側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位を有する。この側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位は、溶媒に接触時に前記基材に形成される。本発明の改質ポリプロピレン樹脂成形体は側鎖結晶性ブロック共重合体により改質され、その側鎖結晶性ブロック共重合体により機能性が付与されている。本願において、本発明の改質ポリプロピレン樹脂成形体を、単に「本発明の成形体」と記載する場合がある。
なお、本願において本発明の改質方法により本発明の製造方法を行うこともでき、これらにより改質されることで本発明の成形体を得ることもでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。

【0019】
従来、ポリプロピレンは側鎖結晶性ブロック共重合体により改質することが不可能であった。一方で、ポリエチレンとポリプロピレンとが混練や積層された混合樹脂は広く利用されている。本発明者らは、ポリエチレンとポリプロピレンの物性を詳細に調べた結果、これらの混合樹脂はその成形工程等の溶融状態で相溶し、界面接着性を持つ分散混合された混合樹脂となっていることを見出した。本発明者らは、ポリプロピレンの改質にあたってこの溶融状態での相溶現象に着目した。
そして、ポリプロピレン樹脂成形体を側鎖結晶性ブロック共重合体の溶液に浸漬し、さらにその溶液を40~120℃程度に昇温させた状態で接触させた。これによりポリプロピレン樹脂成形体の表層に側鎖結晶性ブロック共重合体を含む部位がある改質成形体を得ることができた。昇温された溶媒中で表層のポリプロピレン結晶はわずかに融解する可能性がある。この融解が顕著になる温度よりも低い温度の溶媒中で側鎖結晶性ブロック共重合体と接触させることで、ポリエチレンとポリプロピレンとの溶融状態での相溶現象に相似する現象が起き、接着性に優れた部位が形成されたものと考えられる。本発明は、このような知見に基づくものである。

【0020】
[側鎖結晶性ブロック共重合体]
本発明は、側鎖結晶性ブロック共重合体を用いる。本発明における側鎖結晶性ブロック共重合体は、側鎖に結晶性を示す重合体と改質効果を示す重合体とのブロック共重合体であり、ポリプロピレン樹脂成形体の基材の表層に、このブロック共重合体の一部が相溶した部位を形成することができる共重合体である。本願において、「本発明における側鎖結晶性ブロック共重合体」を、単に「本発明の共重合体」と記載する場合がある。

【0021】
本発明の共重合体は、第1のモノマー(A)と、第2のモノマー(B)との共重合体であり、前記モノマー(A)が、その側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーであり、前記モノマー(B)が、その側鎖に改質目的に対応する機能性基を有するモノマーとすることができる。

【0022】
[第1のモノマー(A)]
本発明の共重合体は、ポリプロピレンとの接着性を発揮する側鎖結晶性ブロック共重合体を得るために第1のモノマー(A)を選択して用いる。そして本発明の共重合体は、このモノマー(A)由来の構造単位を有する。このモノマー(A)は、共重合体としたときにその側鎖がポリプロピレンに相溶して接着性を示すユニットを形成する結晶性を示すモノマーである。

【0023】
この第1のモノマー(A)として、その側鎖に炭素数8以上の長さのアルカン鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーを用いることが好ましい。この側鎖の炭素数や構造に応じて、ポリプロピレン樹脂成形体との接着性を調整することができる。なお、ここで、本願において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタアクリレートの両者を意味する。同様に、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミド及びメタアクリルアミドの両者を意味する。

【0024】
その側鎖として、アルカン鎖を有するものを用いるとき、その炭素数は8以上であることが好ましい。炭素数は、10以上や12以上、14以上としてもよい。なお、このアルカン鎖は直鎖状のアルカン鎖であることが好ましい。一方、その上限は、共重合体として重合することができ、ポリプロピレンとの接着性を維持することができる範囲で適宜設定することができる。具体的な上限としては、現実的には50以下や、40以下、30以下としてもよい。アルカン鎖が大きすぎると共重合体として適当な立体構造がとれなかったり、重合条件の設定が難しくなったりする場合がある。

【0025】
このような側鎖を有する具体的なモノマーとしては、側鎖が、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基、ドコシル基及びベヘニル基からなる群から選択されるいずれかのアルキル基を有する(メタ)アクリレートがあげられる。これらのモノマーは、本発明の共重合体の重合反応条件の設定が行いやすく、また、これらのモノマーを用いた共重合体はポリプロピレン樹脂に相溶して接着性を示すユニットを形成しやすい。

【0026】
本発明の共重合体に用いられるモノマー(A)は、前述したアルカン鎖の側鎖を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン、置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーである。これらの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン、置換スチレンといった構造が、共重合体としてのモノマー(A)由来の構造の主鎖を形成する。

【0027】
[第2のモノマー(B)]
本発明の共重合体に用いられる前記モノマー(B)は、機能性基を有するモノマー(B)であることを特徴とする。ここで、機能性基とは、モノマー(B)由来の基として重合後も共重合体内に多数存在することで、本発明の共重合体として用いたときポリプロピレン樹脂を改質する機能を有するものである。ポリプロピレン樹脂が改質されるときに付与される機能としては、主に、親水性や、イオン伝導性、接着性、染色性、金属吸着能、重金属担持性、有機溶媒親和性などが挙げられる。モノマー(B)が有する機能性基とは、これらに対応する構造をいう。

【0028】
(極性基を有する機能性基)
この機能性基は、極性基を有する機能性基であることが好ましい。極性基を有する機能性基を有するモノマー(B)を用いることで得られる共重合体をポリプロピレン樹脂の改質剤として使用するとき、その改質剤により改質されたポリプロピレン樹脂の特性が通常のポリプロピレン樹脂と著しく異なるものとなる点から優れている。

【0029】
ここで、極性基とは、極性のある原子団であり、その基を有するモノマーを用いた共重合体に存在することで、共重合体のポリマー内に極性を示す構造を形成するものを指す。代表的な極性基としては、アミノ基、カルボキシ基(-COOH)、ヒロドキシ基(-OH)、カルボニル基(-CO-)、エーテル基(-O-)、スルホ基(-SO3H)、エステル基(-COO-)、アミド基(-CON-)などが挙げられる。

【0030】
モノマー(B)において、機能性基、特に極性を有する機能性基は、モノマーの主鎖構造として存在しても良いし、側鎖として存在してもよく、付与したい機能や、共重合体の重合しやすさを鑑み適宜選択される。このモノマー(B)はモノマー(A)と共重合されることで、所定の機能を発揮するものである。モノマー(B)が重合されたユニットは、通常、ポリプロピレン樹脂が有さない機能を発揮するためのものである。例えば、親水性を付与するために、高い親水性を示すポリビニルアルコールのような主鎖にエーテル基を有する構造を設けることができる。

【0031】
また、主鎖自体に機能性基をほとんど有さないものであっても、共重合体としたときに、その側鎖にあたる部分に機能性基を有するモノマーを用いても良い。側鎖に機能性基を有する構造とする場合、主鎖となる構造は共重合体を形成することができるものであればその構造は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン、置換スチレンなどを採用してもよい。

【0032】
本発明の共重合体に用いられる前記モノマー(B)は、オキシアルキレン基、アミノ基、アミド基、及びスルホ基からなる群から選択されるいずれかの基を有するモノマーであることが好ましい。これらの置換基が、適宜、炭素数1~5程度や、炭素数1~3のアルキレンを介して、または直接、主鎖となる構造と結合しているモノマー等を用いることができる。これらの構造は、特に、ポリプロピレン樹脂に付与したい機能に対応した構造を有するものであり、ポリマーの共重合体の基として存在することでそれぞれの機能を発揮しやすいものである。

【0033】
(金属吸着能を有する機能性基)
本発明の共重合体は、メッキを行ったとき側鎖結晶性ブロック共重合体を介してメッキ層が形成されやすいように第2のモノマー(B)を選択して用いることができる。本発明に用いる共重合体をメッキに適したものにする場合、前記モノマー(B)は、その側鎖に金属吸着能を付与するための機能性基を有するモノマーとする。ここで「金属吸着能」とは、分子構造に極性基を有するために金属や金属イオンと吸着特性を示したり、金属や金属イオンと化学結合したり、錯形成しやすい分子構造が共重合体内に設けられ、その構造が被処理物(ポリプロピレン樹脂の成形体等)の表層に配置されることで金属や金属イオンが担持され吸着・保持される性質を有することをいう。

【0034】
具体的な金属吸着能を示す分子構造としては、アミンや、キレート等があげられ、これらの構造が側鎖になるような共重合体の主鎖構造を有する化合物が、モノマー(B)として使用することができる。または、モノマー(A)と、モノマー(B)との共重合体を形成させた後、そのモノマー(B)の側鎖を金属吸着構造(前述したアミンやキレート等)に改質することができるものを用いることもできる。

【0035】
この改質は、重合直後のモノマー(B)由来の側鎖としては反応性基となり、その反応性基と反応して金属吸着能を有する側鎖となる化合物を反応させて、金属吸着能を有することもできる。また、キレートを側鎖とするとき、いわゆるキレート樹脂の側鎖構造を利用できる。キレート樹脂は官能基の構造により金属元素との錯形成能が調整でき、この錯形成により金属吸着することができる。たとえば、イミノ二酢酸(IDA)基、低分子ポリアミン基、アミノリン酸基、イソチオニウム基、ジチオカルバミン酸基、グルカミン基等の種々の官能基をもつキレート樹脂の構造となるように、モノマー(B)を選択して利用することができる。

【0036】
(オキシアルキレン基)
モノマー(B)はオキシアルキレン基を有するものであっても良い。ここで、オキシアルキレン基とは、一般式(Cn2nO)で表される基である。この一般式において、nは1~10までの整数であることが好ましい。例えば、nが1のとき、オキシメチレン(CH2O)、nが2のジオキシエチレン(CH2CH2O)と呼ばれる。これらのオキシアルキレン基が複数つながることで、ポリオキシアルキレン基(一般式、(Cn2nO)m)と呼ばれる。代表的な直鎖状のポリオキシアルキレン基(((CH2nO)m)としては、ポリオキシエチレン((CH2CH2O)m)等があげられる。これらのオキシアルキレン基やポリオキシアルキレン基を主鎖や、側鎖として有するモノマーを第2のモノマー(B)として用いて共重合体を作成しポリプロピレン樹脂改質剤として利用することで、ポリプロピレン樹脂に親水性や、Li等のイオン伝導性、接着性、染色性、金属吸着能、重金属担持性、有機溶媒親和性等を付与することができる。

【0037】
オキシアルキレン基を有するモノマー(B)として、その側鎖にオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーである共重合体の製造方法とすることができる。このモノマーを用いた共重合体により、ポリプロピレン樹脂に親水性や、イオン伝導性、接着性、染色性、金属吸着能、重金属担持性、有機溶媒親和性等を付与することができる。また、このような共重合体を用いることで、樹脂成形体に対する優れたメッキ接着性を奏することができる。

【0038】
ポリオキシアルキレン基を側鎖に有するモノマーとしては、例えば、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2—CH2—O—)225)、ポリエチレングリコール-モノアクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2—CH2—O—)nH)(好ましくは、nは2~10)、メトキシ-ポリエチレングリコール-アクリレート(CH2=CH(CO)O(CH2—CH2—O—)nCH3)(好ましくは、nは2~9)などが挙げられる。

【0039】
(アミノ基)
また、モノマー(B)はアミノ基を有するものであってもよい。このアミノ基は、アミンとして重合後の本発明の共重合体の構造内に存在する。ここで、アミンとは、アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物の総称である。置換した数が1つのものを第一級アミン、2つのものを第二級アミン、3つのものを第三級アミン、アルキル基が第三級アミンに結合したものを第四級アンモニウムイオンと呼ぶ。これらの各種アミンが、モノマー(B)由来の構造として本発明の共重合体に存在することで、親水性や、イオン伝導性、接着性、染色性、金属吸着能、重金属担持性、有機溶媒親和性などの機能を発揮することができる。また、このような各種アミンを有する共重合体を用いることで、樹脂成形体に対する優れたメッキ接着性を奏することができる。メッキ用等に用いるとき、特に3級アミンを有するモノマーを用いることが好ましい。

【0040】
この前記モノマー(B)を具体的に例示すると、第2級または第3級アミンを有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーが好ましいモノマーとしてあげられる。このモノマーは、アミンが共重合体の側鎖となり親水性や、イオン伝導性、接着性、染色性、金属吸着能、重金属担持性、有機溶媒親和性等を発揮する。さらに、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかは、共重合体の主鎖を形成する。

【0041】
特に、これらの機能を発揮させるためには、モノマー(B)の側鎖に、第2級、第3級あるいは、第4級のアミンを有するモノマーを用いることが好ましい。より具体的には、「-N(R1)(R2)」で表される構造を持つ置換基であって、R1及びR2は、それぞれ独立に、H又は炭化水素である。この炭化水素における炭素数は、例えば、1~4とすることができる。また、これらの置換基が、適宜、炭素数1~5程度や、炭素数1~3程度のアルキレンを介して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンのいずれかに結合したものを用いることができる。例えば、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(Dimethylamino) ethyl Methacrylate、DMAEMA)、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(2-(Dimethylamino) ethyl Acrylate、DMAEA)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(Diethylamino) ethyl Methacrylate、DEAEMA)、2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート(2-(Diethylamino) ethyl Acrylate、DEAEA)、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(tert- Butylamino) ethyl Methacrylate、TBAEMA)があげられる。

【0042】
(アミド基)
また、モノマー(B)はアミド基を有するものであってもよい。また、アミド基が、適宜、炭素数1~5程度や、炭素数1~3のアルキレンを介して、または直接、主鎖となる構造と結合しているモノマー等を用いることができる。このモノマーを用いた共重合体により、ポリプロピレン樹脂に親水性や、イオン伝導性、接着性、染色性、金属吸着能、重金属担持性、有機溶媒親和性等を付与することができる。具体的な、アミド基を側鎖に有するモノマーとしては、N,N-ジメチルアクリルアミド(N、N-Dimethylacrylamide、DMAA)、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(N、N-Dimethylaminopropyl Acrylamide、DMAPAA)、及びN,N-ジエチルアクリルアミド(N、N-Diethylacrylamide、DEAA)などが挙げられる。

【0043】
(スルホ基)
また、モノマー(B)は、スルホ基を有するものであってもよい。また、スルホ基が、適宜、炭素数1~5程度や、炭素数1~3のアルキレンを介して、または直接、主鎖となる構造と結合しているモノマー等を用いることができる。このモノマーを用いた共重合体により、ポリプロピレン樹脂に親水性や、プロトン伝導性、イオン伝導性、接着性、染色性、金属吸着能、重金属担持性、有機溶媒親和性等を付与することができる。スルホ基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、2—(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、ATBS(Acrylamide Tertiary Butyl Sulfonic Acid)や、そのナトリウム塩であるATBSNaなどが挙げられる。

【0044】
(オキシラニル基)
または、この前記モノマー(B)として、オキシラニル基を有する、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、シロキサン、αオレフィン及び置換スチレンからなる群から選択されるいずれかのモノマーが好ましいモノマーとしてあげられる。
これらのモノマーを用いて得られる共重合体は、側鎖にオキシラニル基を有するものとなる。この側鎖のオキシラニル基を反応性基として、イミノ二酢酸等の3級アミンを有する化合物を反応させると、側鎖に、イミノ二酢酸由来の3級アミンの構造を有するものとなり、金属吸着能を有するものとなる。より具体的なメッキ方法については後述する。

【0045】
[ブロック共重合体]
本発明の共重合体は、前述したモノマー(A)と、モノマー(B)との共重合体である。本発明の共重合体は、ブロック共重合体であり、このブロック共重合体は、ジブロック共重合体やトリブロック共重合体等のいずれであってもよい。また、本発明の共重合体を製造する方法においても、前記共重合体が、前記モノマー(A)が重合した部分であるモノマー(A)由来重合ブロックと、前記モノマー(B)が重合した部分であるモノマー(B)由来重合ブロックとが、それぞれのブロックを形成しながら結合しているブロック共重合体となるように製造することが好ましい。ブロック共重合体とすることで、モノマー(A)の構造ユニットと、モノマー(B)の構造ユニットとのそれぞれの機能が十分に発揮されやすくなる。モノマー(A)とモノマー(B)との共重合体は、各種リビング重合法(ラジカル、アニオン、カチオン)等の公知の技術により重合することが可能である。リビングラジカル重合法としては、NMP法やATRP法、RAFT法などを用いることができる。

【0046】
例えば、ポリプロピレン樹脂製成形体に親水性を付与する場合、改質対象となるポリプロピレン樹脂製成形体と接着性を示す側鎖を有するモノマー(A)を選択する工程でモノマー(A)を選択する。また、親水性を付与するために第2のモノマー(B)を選択する工程でモノマー(B)を選択する。そして、ここで選択されたモノマー(A)を重合溶媒に開始剤と共に混合してモノマー(A)混合溶液を調製するモノマー(A)混合溶液調製工程を行う。次に、この混合溶液調製工程で調製されたモノマー(A)混合溶液を、適当な重合温度(例えば約90~120℃)で、リアクター内で適宜撹拌しながら、窒素雰囲気等の下でリビングラジカル重合等の開始剤の重合機構に基づくモノマー(A)重合工程を行い、モノマー(A)ブロック重合体を得る。さらに、このモノマー(A)ブロック重合体を混合させている溶液に、別途選択されているモノマー(B)を混合して、溶液中のラジカル等によってさらにモノマー(B)を重合させるモノマー(B)重合工程を行う。これにより、モノマー(A)由来ブロックとモノマー(B)由来ブロックを有するブロック共重合体を得ることができる。モノマー(A)とモノマー(B)との重合を行う順序は、重合させようとするモノマー種や分子量、それぞれの重合条件等に応じて変更してもよい。

【0047】
本発明の共重合体において、第1のモノマー(A)由来の構造に対応する分子量(g/mol)と、第2のモノマー(B)由来の構造に対応する分子量(g/mol)とは、それぞれ500以上であることが好ましい。第1のモノマー(A)由来の構造に対応する分子量が500以上であることで、基材となるポリプロピレン樹脂成形体に、より強固に接着性を示すことができる。第1のモノマー(A)由来の構造に対応する分子量は、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。

【0048】
また、第2のモノマー(B)由来の構造に対応する分子量が500以上であることで、より機能性を付与するための構造を十分に有する共重合体とすることができる。第2のモノマー(B)由来の構造に対応する分子量は、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。共重合体は、第1のモノマー(A)及び第2のモノマー(B)からなるものであってもよいし、本発明の目的を損なわない範囲でさらにその他のモノマーを含んでいてもよい。なお、これらの分子量は、GPCにより得られる結果から、ポリスチレン換算で求めることができる値「Mw:重量平均分子量」である。また、モノマー(A)由来の構造は溶媒に溶けにくいことから分子量を測定しにくい場合がある。そのような場合には、元素分析、IR、NMRなどの手法により各々の分子量を算出することができる。

【0049】
本発明の共重合体の一例として、下記化学式(I)で表されるポリマーが挙げられる。これは、モノマー(A)として、ベヘニルアクリレート(BHA:側鎖のアルカン鎖が、炭素数22の直鎖状のアルキル基である。)を重合させ、その後、モノマー(B)としてメタクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル(2-(tert-Butylamino)ethyl methacrylate:TBAEMA)を用いて共重合させたブロック共重合体である。これは、いわゆるAB型のブロック共重合体である。この共重合体は、モノマー(A)であるBHA由来の構造によりポリプロピレン樹脂成形体への接着性を示すブロック共重合体部を有し、一方で、モノマー(B)であるTBAEMA由来のアミノ基構造により、ポリプロピレン樹脂成形体等の基材(被処理物)に金属吸着能等を付与することができる。なお、化学式(I)において、nは2~1,000であることが好ましく、mは2~1,000程度であることが好ましい。このnは、より安定してポリプロピレン樹脂成形体と結合させるためには5以上や、10以上とすることがより好ましい。一方、このmは金属吸着能の程度に応じて選択され、より安定した改質効果を得るためには5以上や、10以上とすることがより好ましい。これらのn及びmは、それぞれの効果が十分に得られる範囲で、それぞれ800以下や、500以下としてもよい。

【0050】
【化1】
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【0051】
[ポリプロピレン樹脂成形体]
本発明は、ポリプロピレン樹脂成形体(成形品)全般に適用できる。ここで、ポリプロピレン樹脂成形体とは、プロピレンを重合することで得られる樹脂(ポリマー)を含有する成形体を指す。ポリプロピレン樹脂成形体としては、ポリプロピレン樹脂の濃度が高い成形体から、ポリプロピレンに他の構造を共重合させたポリプロピレン系樹脂を用いた成形体を用いることができる。このポリプロピレンは、ポリプロピレンのホモポリマーや、エチレンが共重合されたブロックコポリマーやランダムコポリマーも用いることができる。また、これらの樹脂に、適宜、ポリプロピレン以外のポリオレフィン等の樹脂や成形助剤、顔料、紫外線吸収剤等の機能性付与剤を含有させ、一部不純物等が含まれた状態の混合物を用いた成形体等を用いることができる。

【0052】
本発明においては、本発明により改質することができる範囲で、これらのポリプロピレン樹脂製成形体を改質対象となる基材として選択することができる。また、適宜その状態や構造等に応じて、モノマー(A)やモノマー(B)、本発明に係る共重合体を塗工するための溶剤等を選択して、様々なポリプロピレン樹脂成形体に適した改質を行うことができる。

【0053】
また、成形体の成形形態としては、特に限定されず、例えば、シート、板、繊維、多孔質材料などの成形体が挙げられる。成形体の表層にあたる表面のみではなく、さらに孔内など、その内部にも浸透させて多孔質材料の全体を改質することができる。このポリプロピレン樹脂成形体としては、特にポリプロピレンを主とする(例えば、50質量%以上含有)ものを用いることで、非常にメッキの安定性に優れたものを製造することができる。

【0054】
本発明により得られる改質ポリプロピレン樹脂成形体は、側鎖結晶性ブロック共重合体の特性を有するものとなる。これは、樹脂成形体の従来の用途にも利用できるし、その改質された特性を利用した用途の拡大も期待される。また、このとき、そのポリプロピレン樹脂成形体の形状等は、各種構造物から、シート、フィルム、繊維状と、ポリプロピレン樹脂成形体であることからも、その成形体としての多様性を利用した種々の形状とすることができる。

【0055】
[改質]
本発明の改質方法および製造方法は、溶媒に側鎖結晶性ブロック共重合体を含有する共重合体溶液と、ポリプロピレン樹脂成形体とを、共重体溶液の温度を40~120℃で接触させる工程を有する。この所定の温度に加熱した接触によってポリプロピレン表面と本発明の共重合体のモノマー(A)由来の結晶性を示す側鎖が相溶して接着性を示す部位を形成することでポリプロピレンの改質ができる。

【0056】
[溶液調製]
本発明においては、側鎖結晶性ブロック共重合体を溶媒に溶解させた共重合体溶液を用いる。なお、本願において共重合体溶液は、共重合体のブロックによっては完全な溶解が難しい場合があるため、溶解に加えて分散・懸濁も含む概念として溶解させた溶液として説明し、溶液には懸濁液・分散液も含む。

【0057】
共重合体溶液の溶媒は、共重合体を溶解・分散可能な共重合体の良溶媒を利用することができる。前述のように、本発明においては、所定の温度の共重合体溶液とポリプロピレン樹脂成形体とを接触させる。この接触によって、本発明の共重合体とポリプロピレン樹脂成形体とが相溶するために、共重合体が十分に溶解・分散状態にあって、ポリプロピレンが一部浸食し得るような溶媒を用いると相溶が十分に起こる。また、接触させる温度で揮発しすぎないことが好ましい。

【0058】
このような溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシド、およびイオン性液体からなる群から選択される1以上の溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は1種のみ、あるいは適宜混合して用いることができる。より具体的には、以下の溶媒があげられる。

【0059】
芳香族炭化水素系溶媒は、その炭素原子数は、好ましくは6~20であり、より好ましくは、6~10である。例えば、トルエン、キシレン(o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、及び、これらの混合物)、メシチレン、エチルベンゼン及びシクロへキシルベンゼン等があげられる。

【0060】
ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒は、その炭素原子数は、好ましくは6~20であり、より好ましくは、6~10である。例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン及びフルオロベンゼン等があげられる。

【0061】
アルコール系溶媒は、例えば、エチレングリコール、グリセリン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール等があげられる。

【0062】
エーテル系溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、ジグリム、アニソール、メチルアニソール及びジメトキシベンゼン等があげられる。

【0063】
ケトン系溶媒は、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びアセトフェノン等があげられる。

【0064】
アミド系溶媒は、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチル-2-ピロリドン等があげられる。

【0065】
エステル系溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル及び安息香酸メチル等があげられる。

【0066】
脂肪族炭化水素系溶媒は、その炭素原子数は、好ましくは5~30であり、より好ましくは、6~15である。例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン及びデカリン等があげられる。

【0067】
ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒は、その炭素原子数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは、1~5である。例えば、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロブタン及びブロモホルム等があげられる。

【0068】
イオン性液体は、アンモニウム塩系やイミダゾリウム塩系等があげられる。アンモニウム塩系のイオン性液体は、例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド等があげられる。イミダゾリウム塩系のイオン性液体は、例えば、1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムクロリド、1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムメチルスルファート、1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムヨージド等があげられる。

【0069】
溶媒は、より好ましくは、トルエンや、キシレン、酢酸ブチル、オクタン、デカリンを用いることができる。

【0070】
溶媒は、1atm及び25℃において、液体であることが好ましい。溶媒としては、1atmにおける沸点が40℃以上の溶媒が好ましく、85℃以上の溶媒がより好ましい。接触させる工程で加熱するため溶媒が揮発する場合がある。この揮発により共重合体溶液の液量変化や濃度変化を抑制するために還流する場合がある。溶媒の沸点が低いとより還流機能を向上させる必要が生じ操作性が低下する場合がある。このため沸点は、上述したような範囲としてより高くするほうがよい。一方、沸点の上限は特に設ける必要はない。

【0071】
共重合体溶液の溶媒は、いずれか単独の溶媒でもよいし、混合溶媒を用いてもよい。混合溶媒とするときトルエンや、キシレン、酢酸ブチル、オクタン、デカリンのいずれかを主たる溶媒とすることが好ましい。主たる溶媒として用いる溶媒は、溶媒の全体積において50体積%以上を占めることが好ましく、70体積%以上、90体積%以上、95体積%を占めるものとしてもよい。

【0072】
共重合体溶液の共重合体濃度は、共重合体の種類やポリプロピレン樹脂成形体と接触させるときの温度、共重合体の接着量や接着膜厚、改質目的等に応じて適宜設定することができる。共重合体溶液の共重合体濃度は、0.01~2.0質量%であることが好ましい。共重合体溶液濃度の下限は、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。濃度が薄すぎる場合、基材に共重合体を含む部位が十分に形成されずに改質効果が不足する場合がある。共重合体溶液濃度の上限は、1.5%質量以下が好ましく、1.0%質量以下がより好ましい。0.9%質量以下や0.8%質量以下とすることもできる。濃度を高くしても改質効果は飽和する場合がある。また濃度が高すぎると、共重合体自体の自己集合によるミセル化が生じてしまい改質できない場合がある。ポリエチレンを改質する場合、SCCBCがポリエチレンに吸着しやすく相当量吸着するため濃度が高くても改質しやすいが、ポリプロピレンを改質対象とする場合、ポリプロピレンの吸着量は乏しいため、より上限を低く設定することが好ましい。

【0073】
共重合体溶液とポリプロピレン樹脂成形体との接触は、改質しようとする部分を共重合体溶液に浸漬したり、液を循環させながら接触(かけ流し等)したり、液を塗布する(コーティング)などの手法で行うことできる。

【0074】
ポリプロピレン樹脂成形体を、所定の加熱温度の共重合体溶液に接触させる時間は、共重合体により改質できる範囲で適宜設定することができる。この接触させる時間は、1秒~60分であることが好ましい。この時間の下限は2秒以上や5秒以上、10秒以上、30秒以上、1分以上としてもよい。接触させる時間が短すぎる場合、共重合体の層が十分に得られず改質効果が不足する場合がある。この接触させる時間の上限は、50分以下や40分以下、30分以下、20分以下としてもよい。接触時間を長くしても効果は飽和する。また接触時間が長すぎる場合、ポリプロピレン樹脂成形体に対して浸食性を有する溶媒を用いる場合があることから、長時間接触させるとポリプロピレン樹脂成形体が溶解したり変形する恐れがある。

【0075】
本発明は、共重合体溶液とポリプロピレン樹脂成形体とを、共重体溶液の温度40~120℃の加熱温度で接触させる工程を有する。加熱温度は50~100℃とすることが好ましい。このような温度で接触させることで、本発明の共重合体によりポリプロピレン樹脂成形体を改質することができる。
この接触させる工程の加熱温度の下限は、40℃を超える温度とすることが好ましい。また、45℃以上や、50℃以上、60℃以上、65℃以上としてもよい。共重合体溶液の温度が低い場合、ポリプロピレン樹脂成形体に共重合体溶液の層を設けることができなかったり、層が形成されても接着性が低く剥離する。
また、接触させる工程の加熱温度の上限は115℃以下や、110℃以下、100℃以下、95℃以下、90℃以下としてもよい。共重合体溶液の温度が高い場合、溶液中でポリプロピレン樹脂製成形体の耐熱性が不足して変形したり、その溶媒に溶解するおそれがある。一方、接触時間を短時間化することで、それらの影響を限定的にし、十分改質することもできる。
本発明はこのような所定の温度の共重合体溶液にポリプロピレン樹脂成形体を接触させる工程を有していればよく、その下限よりも低い温度で接触させる工程を有していてもよい。

【0076】
前述したような所定の温度により接触させる工程を行うにあたっては、予め共重合体溶液を所定の温度としておいてもよい。または、常温程度等の共重合体溶液にポリプロピレン樹脂成形体を接触させてから加熱し、所定の温度に昇温してもよい。また、所定の温度による接触させる工程に後に速やかに共重合体溶液から取り出してもよいし、接触させたまま冷却や徐冷してもよい。
この接触は、共重合体溶液中にポリプロピレン樹脂成形体を浸漬させたり、任意の位置に刷毛やスプレー、コーター等の塗工手段で塗工したりといった方法で接触させる。共重合体溶液を所定の温度で管理しやすいように、共重合体溶液への浸漬によることが好ましい。

【0077】
また、接触させる工程を終えたのち、そのまま改質ポリプロピレン樹脂成形体として利用してもよいし、さらに処理(例えばメッキ処理など)して利用してもよい。接触させる工程の後は、その改質ポリプロピレン樹脂成形体に応じて、ポリプロピレン樹脂成形体に設けられた共重合体溶液の塗膜の溶媒を除去してもよいし、そのまま更なる処理を施してもよい。溶媒を除去する場合、通気性のよい環境で常温付近で乾燥してもよいし、適宜減圧乾燥等を行ってもよい。

【0078】
[改質ポリプロピレン樹脂成形体]
本発明の成形体は、その表面の少なくとも一部に側鎖結晶性ブロック共重合体の部位を有し、溶媒に接触時に前記側鎖結晶性ブロック共重合体の層が残存する改質ポリプロピレン樹脂成形体に関する。本発明の成形体は、前述した本発明の製造方法により得られることからも、ポリプロピレン樹脂成形体に、共重合体の部位が設けられた構成となる。この成形体に設けられる共重合体の部位は、成形体の表層に層状や斑状、縞状、多孔膜等の孔内などの適宜調整される範囲とすることができる。ポリプロピレン樹脂成形体の表層全体を改質する部位としてもよい。

【0079】
本発明の成形体であることは、各層をFT-IRなどで成分分析したり、切断面の成分分析を行うなどの手法で確認することができる。そして、本発明の共重合体とポリプロピレン樹脂成形体とが接着していることから、溶媒を接触させて処理しても、側鎖結晶性ブロック共重合体が残存する。

【0080】
このような接着した側鎖結晶性ブロック共重合体が少なくとも一部に存在することから、その側鎖結晶性ブロック共重合体により、ポリプロピレン樹脂成形体を改質することができる。その改質は、側鎖結晶性ブロック共重合体の機能性基によって制御することができる。
本発明の共重合体が接着していることを確認するにあたり、接触させる溶媒は、例えば、酢酸ブチルを用いることができる。この溶媒に、本発明の成形体を浸漬したり、被検査部分に溶媒を塗布して、5分程度経過した後、側鎖結晶性ブロック共重合体の残存の有無をFT-IR分析するといった評価を行うことができる。

【0081】
または、ポリプロピレン樹脂成形体の表面付近の断面をTEM観察することで、基材となるポリプロピレンとそのポリプロピレンに密着し部分的に入り込み、他方に襞を伸ばした形状となる側鎖結晶性ブロック共重合体の層を確認することもできる。

【0082】
本発明の成形体は、側鎖結晶性ブロック共重合体が、前記側鎖結晶性ブロック共重合体の良溶媒を含有するものとすることができる。本発明の成形体を製造するにあたって、本発明の成形体の製造方法とすれば、好適に使用される溶媒が良溶媒のため製造後の完全に除去されず残存する場合がある。この良溶媒は密着性に寄与する場合がありこの良溶媒を含有していることを確認することで優れた密着性を示す本発明の成形体であることの評価を行ってもよい。

【0083】
[メッキ工程]
本発明により改質されたポリプロピレン樹脂成形体にメッキ処理を行うことができる。ここで本発明により改質されたポリプロピレン樹脂成形体のメッキは、本発明に用いる共重合体のモノマー(A)由来の構造が安定して接着することと、モノマー(B)由来の構造がメッキのための金属が接着することを利用する。一般的にポリプロピレン樹脂成形体はメッキが難しいとされており、ポリプロピレン樹脂成形体は非導電性素材である。

【0084】
非導電性素材に対してメッキすることから、自己触媒型の無電解メッキが代表的な手法であり、場合によってはさらに電気メッキを行ってもよい。本発明のメッキに利用できる無電解メッキで行われる典型的なメッキとしてはニッケルメッキや、銅メッキがあげられる。

【0085】
本発明により改質されたポリプロピレン樹脂成形体にメッキ処理を行うことができる。この具体的な工程としては、本発明のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法により改質されたポリプロピレン樹脂成形体に次のような工程を行うものがあげられる。
(メッキ工程1)ナノ金属分散液や金属触媒液に接触させて本発明により改質されたポリプロピレン樹脂成形体にナノ金属層を設ける表層触媒化工程
(メッキ工程2)前記ナノ金属層が設けられたポリプロピレン樹脂成形体を、無電解メッキ処理することで、前記ナノ金属層を介してポリプロピレン樹脂成形体にメッキ処理層を設けるメッキ処理工程

【0086】
本発明に用いる側鎖結晶性ブロック共重合体をメッキ助剤として設計して用いることができる。このメッキ助剤とは、ポリプロピレン系樹脂成形体のメッキ場所となる任意の場所に、本発明の共重合体の層を設けやすいように調製されたものである。例えば、適宜本発明の共重合体が分散や溶解可能な溶媒等に混合させ、メッキ助剤液とする。この溶媒としては、共重合体の具体的な構造にもよるが、本発明の改質方法により処理することから、その溶媒として用いるものが好適に使用される。また、そのときの濃度も、同様に調製される。

【0087】
本発明により改質され共重合体の部位が設けられた樹脂成形体の共重合体の層を利用して、無電解メッキ等の技術を適用してメッキ層を得ることができる。代表的な工程としては、まず、前述した(メッキ工程1)を行い、そのあと、さらに、(メッキ工程2)を行う。これにより、ポリプロピレン樹脂成形体の表層に安定したメッキ層を設けることができる。

【0088】
このような本発明の共重合体やメッキ助剤等を用いて、本発明は、共重合体の部位と、メッキ層とを有するポリプロピレン樹脂成形体とすることもできる。このメッキ層を有する成形体は、前述した製造方法により得られることからも、ポリプロピレン樹脂成形体、共重合体の部位、メッキ層の順に配置された構成となる。また、この成形体であることは、各層を剥離しながら分析したり、切断面の成分分析を行うなどの手法で確認することができる。

【0089】
[染色工程]
本発明により改質されたポリプロピレン樹脂成形体に染色を行うことができる。より具体的には、本発明のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法により改質されたポリプロピレン樹脂成形体を、染料と接触させることで、前記ポリプロピレン樹脂成形体に染料層を設ける染色工程を有するポリプロピレン樹脂成形体の染色方法とすることができる。

【0090】
ポリプロピレンは、一般に染料による染色ができないと考えられている。しかし、本発明により改質されたポリプロピレン樹脂成形体は、本発明に用いる共重合体のモノマー(A)由来の構造が安定して接着することと、モノマー(B)由来の構造が染料結合に寄与することを利用して染色することができる。

【0091】
染料とは、水に溶解または分散する有機色素である。水溶性や親水性であることから、染料の分子はスルホ基やカチオン基を導入した塩構造のものなどが染料として用いられている。

【0092】
染料は、染色手法により、直接染料や建染染料、硫化染料、反応染料、酸性染料、金属錯塩酸性染料、分散染料、塩基性染料、蛍光増白剤などに分類され、本発明はこれらの染料を適宜用いることができる。

【0093】
染料は、化学構造により、アゾ系染料、キノリン系染料、スチルベン系染料、ポリメチン系染料、トリアリールメタン系染料、アントラキノン系染料、アクリジン系染料、インディゴ系染料などに分類され、本発明はこれらの染料を適宜用いることができる。

【0094】
染色手法や化学構造により分類される各染料に応じて、結合様式が異なる場合があるが、本発明の改質方法によれば、モノマー(B)の設計により各染料に適した結合様式に寄与する構造をポリプロピレン樹脂成形体に設けることができる。

【0095】
これらの染料を用いて、本発明のポリプロピレン樹脂成形体の改質方法により改質されたポリプロピレン樹脂成形体を、染料と接触させることで、前記ポリプロピレン樹脂成形体に染料層を設ける染色工程を行う。この染料との接触は、直接染料の場合、染料に直接接触させ、適宜堅牢度を向上させるために硫酸銅などで後処理したり、各染料に適した溶液調製を行ったり、前処理や後処理を行うなど、各染料の染色手法に応じた染色を行うことができる。

【0096】
本発明によれば、例えば、表層が親水性を示すポリプロピレン樹脂成形体や、メッキ処理されたポリプロピレン樹脂成形体、接着性に優れたポリプロピレン樹脂成形体、染色されたポリプロピレン樹脂成形体などの種々の特性を有する成形体が提供される。これらの特性により従来よりも広範な用途に利用できる成形体となる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0098】
1.接着試験
基材のポリプロピレン樹脂成形体として以下のフィルムを成形して、接着剤による接着試験を行った。
[基材]
基材は以下の樹脂を用いて成形した。なお、いずれのフィルムも、それぞれの樹脂を厚み0.5mmのスペーサー内にPP樹脂を適量配置し、210℃、25MPaでプレス成形することで、スペーサー厚みのフィルムを得た。HDPEのみ180℃、25MPaで2分でプレス成形した。
[ホモPPフィルム]
PP樹脂:プライムポリマー(株)製、プライムポリプロJ137G(MI=30g/10分)
[ランダムPPフィルム]
PP樹脂:プライムポリマー(株)製、プライムポリプロB241、(MI=0.5g/10分)
[ブロックPPフィルム]
PP樹脂:プライムポリマー(株)製、プライムポリプロB-150、(MI=0.5g/10分)
[HDPEフィルム]
高密度PE樹脂:京葉ポリエチレン(株)製、FX201、MI=13g/10分
【実施例】
【0099】
<評価項目>
[IRスペクトル]
Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光分析装置「Spectrum two(登録商標)」を用いて、測定した。
【実施例】
【0100】
[剥離試験]
JIS K6854-3(1999)に準じて、T型剥離試験を行い、接着性を評価した。接着剤は、シアノアクリレート系接着剤(製品名:アロンアルファ 201、東亞合成社製)を用いた。試験装置は、SHIMADZU製の小型卓上試験機EZ-LXを用いた。試験片幅は12.5mm、接着長さを75mm、非接着部を25mmとした。
(剥離試験)
試験片の非接着部をT字方向に配置し、それぞれを測定装置の把持具に把持させて10mm/minで離隔する方向に引っ張り、接着力を測定した。
(評価)
剥離試験の結果、接着面が剥離した場合、引張開始からの移動距離50~110mmにおける平均剥離力、最大剥離力、最小剥離力と、全測定範囲の最大荷重を求めた。
剥離試験の結果、強固な接着によりPPフィルムが破壊する場合、最大荷重を求めた。
【実施例】
【0101】
[引張せん断試験]
JIS K6850(1999)に準じて、引張せん断試験を行い、接着性を評価した。接着剤は、シアノアクリレート系接着剤(製品名:アロンアルファ 201、東亞合成社製)を用いた。試験装置は、SHIMADZU製の小型卓上試験機EZ-LXを用いた。試験片は25mm幅、長さ100mmとし、接着長さを12.5mmとした。
(剥離試験)
試験片の両端を測定装置の把持具に把持させて10mm/minで離隔する方向に引っ張り、接着力を測定した。
(評価)
剥離試験を5回行い、全測定範囲の最大荷重の平均値を求めた。
【実施例】
【0102】
<重合体の製造>
[原料]
[モノマー(A)]
・モノマー(A-1-1):BHA
ベヘニルアクリレートを用いた。このモノマーは、炭素数22のアルカン鎖を側鎖に有するモノマーである。
【実施例】
【0103】
[モノマー(B)]
・モノマー(B-1-1):TBAEMA
メタクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル(2-(tert-Butylamino)ethyl methacrylate:TBAEMA)を用いた。このモノマーは、側鎖にアミンを有し、メタクリレート構造が主鎖となるモノマーである。
【実施例】
【0104】
[重合開始剤] BlocBuilder(登録商標) MA(アルケマ社製)
[溶媒] 酢酸ブチル
【実施例】
【0105】
[PP樹脂の接着性改質用の共重合体の設計]
ポリプロピレン樹脂製成形体に、機能性として接着性を付与するために用いる共重合体(1)の設計を試みた。まず、ポリプロピレン樹脂成形体との接着性を得るために、炭素数22のアルカン鎖を側鎖として有するアクリレートである、BHA(モノマー(A-1-1))を選択した。次に、シアノアクリレート系の接着剤との接着性を発揮し得るモノマーとしてアミンの側鎖を有するアクリレートである前記モノマー(B-1-1)を選択した。そして、ここで選択されたモノマーを用いて、ポリプロピレン樹脂成形体に、接着性を付与するための共重合体(1)の製造を行った。
【実施例】
【0106】
[共重合体(1)の調製]
BHA5.0g、酢酸ブチル5.0g、開始剤0.38gを混合した溶液を、重合温度約110℃、リアクターの撹拌速度80rpm、窒素雰囲気下でリビングラジカル重合することにより、第1のモノマー(A)であるBHA(モノマー(A-1-1))のブロック重合体を製造した。さらに、これにより得られたBHAのブロック重合体の溶液に、第2のモノマー(B)であるTBAEMA(モノマー(B-1-1))を5.0g、酢酸ブチルを5.0g投入してモノマー(A-1-1)とモノマー(B-1-1)のブロック共重合体である共重合体(1)を得た。この共重合体(1)の構造式を式(I)として示す。
なお、得られた共重合体(1)の分子量(Mw:重量平均分子量)を、GPCにより測定し、ポリスチレン換算にて求めた。モノマー(A-1-1)由来の構造は推算値として約8,000(g/mol)、モノマー(B-1-1)由来の構造が約8,000(g/mol)の共重合体であった。共重合体(1)(SCCBC)は、IRスペクトル分析したとき、原料となるモノマーの双方由来のピークを有しており、共重合体となっていることを確認することができた。
【実施例】
【0107】
【化2】
JP2019137779A_000004t.gif
【実施例】
【0108】
[基本処理条件]
ポリプロピレン樹脂成形体の改質は、以下の溶液調製および浸漬処理を経て行った。この溶液調製や浸漬処理の基本処理条件として、以下の溶媒、共重合体濃度、浸漬温度、浸漬時間を基本条件として、溶媒、共重合体濃度、浸漬温度、浸漬時間の検討を行った。
溶媒:キシレン
共重合体:共重合体(1) (BHA・TBAEMAのSCCBC)
共重合体濃度:0.1質量%
浸漬温度:80℃
浸漬時間:10分
【実施例】
【0109】
[共重合体溶液の調製(溶液調製)]
前述の方法で入手された共重合体を、溶媒のキシレンに混合し撹拌することで溶解・分散させて、共重合体溶液を調製した。共重合体溶液における共重合体濃度は、溶液全体に占める共重合体の質量%である。
【実施例】
【0110】
[改質工程(浸漬処理)]
PPフィルムをアセトンで洗浄して表面を清浄化させた。次に、PPフィルムを浸漬温度80℃に加熱した共重合体溶液に、浸漬時間10分間浸漬させた。浸漬時間が経過した後、直ちに溶液中からPPフィルムを取り出した。その後、PPフィルムは1日風乾した。
【実施例】
【0111】
[試験例1-1(基本処理条件での実験)]
前述の基本処理条件で、ホモPPフィルムを共重合体(1)により改質した改質PPフィルム(1)を得た。
この改質PPフィルム(1)のT型剥離試験、引張せん断試験を行った。結果を表1に示す。
【実施例】
【0112】
また、改質PPフィルム(1)の製造に準じて、浸漬時間を5分として製造した改質PPフィルムをTEMで観察した結果を図1に示す。
図1に示すように、ポリプロピレン樹脂成形体の表面付近の断面をTEM観察することで、基材となるポリプロピレンとそのポリプロピレンに密着し部分的に入り込むような側鎖結晶性ブロック共重合体の層を確認することができた。
【実施例】
【0113】
試験例1-1に係る改質PPフィルムをIRスペクトル分析した結果、共重合体(1)のピークが観察された。このことからPPフィルムに共重合体(1)の層が設けられていることが確認された。
さらに、この試験例1-1に係る改質PPフィルムを、キシレンに5分間浸漬させ、乾燥後IRスペクトル分析を行った結果、共重合体(1)のピークが観察された(図2)。このことからも密着性が高い共重合体(1)の層がPPフィルム上に形成された改質PPフィルムを得たことを確認できた。
【実施例】
【0114】
[試験例ア(PPフィルムの接着性)]
改質処理を行う前のホモPPフィルムを用いて、T型剥離試験、引張せん断試験を行った。結果を表1に示す。
【実施例】
【0115】
【表1】
JP2019137779A_000005t.gif
【実施例】
【0116】
本発明により改質された試験例1-1に係るPPフィルムは、シアノアクリレート系接着剤で強固な接着が可能となった。これは、T型剥離試験、引張せん断試験の双方の結果からも明らかであり、試験例アに示すPPフィルムと比較すると顕著な差であった。試験例アに係る試験片は張力の上昇が少なく、剥離して試験が終了する。
【実施例】
【0117】
[試験例1-2~試験例1-6]
前述の基本処理条件を基に、溶媒、共重合体濃度、浸漬温度、浸漬時間といった改質処理条件の検討を行った。また、基材を変更したときの接着性の確認試験を行った。
【実施例】
【0118】
[試験例1-2]浸漬温度
前述の基本処理条件を基に、浸漬温度の検討を行った。浸漬温度と、その浸漬温度で処理したPPフィルムのT型剥離試験、引張せん断試験の結果を下表に示す。
【実施例】
【0119】
【表2】
JP2019137779A_000006t.gif
【実施例】
【0120】
[試験例1-3]浸漬時間
前述の基本処理条件を基に、浸漬時間の検討を行った。浸漬時間と、その浸漬時間で処理したPPフィルムのT型剥離試験、引張せん断試験の結果を下表に示す。
【実施例】
【0121】
【表3】
JP2019137779A_000007t.gif
【実施例】
【0122】
[試験例1-4]共重合体溶液濃度
前述の基本処理条件を基に、共重合体溶液濃度の検討を行った。なお、浸漬時間は5分に変更して試験した。共重合体溶液濃度と、その濃度で処理したPPフィルムのT型剥離試験、引張せん断試験の結果を下表に示す。
【実施例】
【0123】
【表4】
JP2019137779A_000008t.gif
【実施例】
【0124】
[試験例1-5]共重合体溶液の溶媒
前述の基本処理条件を基に、共重合体溶液の溶媒の検討を行った。なお、浸漬時間は5分に変更して試験した。用いた溶媒と、その溶媒で処理したPPフィルムのT型剥離試験、引張せん断試験の結果を下表に示す。
【実施例】
【0125】
【表5】
JP2019137779A_000009t.gif
【実施例】
【0126】
[試験例1-6]基材の変更
前述の基本処理条件を基に、ランダムPPフィルムを基材として、改質ランダムPPフィルムを得た。同様に、ブロックPPフィルムを基材として、改質ブロックPPフィルムを得た。同様に、HDPEフィルムを基材として、改質HDPEフィルムを得た。なお、基本処理条件に準じて、改質温度を以下のようにした。ホモPPフィルム:80℃、ブロックPPフィルム:65℃、ランダムPPフィルム:65℃、HDPEフィルム:100℃。
また、試験例1-1と同様に、以下の組合わせで各基材間での接着性を試験した。T型剥離試験、引張せん断試験の結果を下表に示す。
【実施例】
【0127】
【表6】
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【実施例】
【0128】
2.染色試験
ポリプロピレン樹脂成形体として、以下のPP繊維を用いて、染色試験を行った。
【実施例】
【0129】
[基材]
・PP繊維(1)
ポリプロピレンからなる繊維(製品名:農業用不織布、MonotaRO社製)
【実施例】
【0130】
[染色試験]
・染色用試験剤:カヤステインQ
染色試験用品の鑑別用染料であるカヤステインQ((株)色染社)を用いた。
・染色試験工程
カヤステインQ5gを、70℃の水500gに溶解させて染色液を調製した。基材を70℃の水で十分に湿潤させた後、前述の染色液に浸漬し5分間煮沸することで染色した。煮沸後、染色液から取り出し、水ですすぎ、常温で乾燥させた。
【実施例】
【0131】
・改質PP繊維(1)の調製
PP繊維(1)を、前述のポリプロピレン樹脂成形体の基本処理条件で処理して、共重合体(1)による改質をおこなって、改質PP繊維(1)を得た。
【実施例】
【0132】
[試験例2-1] PP繊維の染色
改質を行う前のPP繊維(1)と、改質PP繊維(1)を用いて、カヤステインQによる染色試験を行った。各繊維について2回ずつ試験を行って、得られた試験片を図3に示す。
いずれにおいても、改質を行う前のPP繊維(1)は、染色されずPP繊維の黄白色であり染色性に劣ることが明らかであった。一方、改質PP繊維(1)はカヤステインQにより染色され、青緑色に着色した。
【実施例】
【0133】
カヤステインQにより、この色に染色されるものは、カヤステインQの色相に基づくと、麻や羊毛に相当する。麻や羊毛は、直接染料や酸性染料による染色に適応しているとされ、中性塩や酸が結合を促進する結合様式と考えられる。よって、共重合体(1)を用いた処理によって、TBAEMA(モノマー(B-1-1))由来のtert-ブチルアミノ基がPP繊維(1)の周囲に配置されることで改質され、麻や羊毛に相当するような染色が可能になったと考えられる。
【実施例】
【0134】
3.メッキ試験
ポリプロピレン樹脂成形体として、ホモPPフィルムを用いて、メッキ試験を行った。
【実施例】
【0135】
[モノマー(A)]
・モノマー(A-1-1):BHA
ベヘニルアクリレート
【実施例】
【0136】
[モノマー(B)]
・モノマー(B-1-1):TBAEMA
メタクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル(2-(tert-Butylamino)ethyl methacrylate)
・モノマー(B-3-1):DEAEA
2-(Diethylamino) ethyl Acrylate
・モノマー(B-3-2):DMAEA
2-(Dimethylamino) ethyl Acrylate
・モノマー(B-3-3):PGMA
ポリ(エチレングリコール)モノアクリレート(Poly(ethylene glycol) monoacrylate)
【実施例】
【0137】
[パラジウム触媒]“エンプレートアクチベータ444”(メルテックス株式会社)
[無電解銅メッキ浴]“メルプレートCU-390”(メルテックス株式会社)
【実施例】
【0138】
[メッキ助剤用の共重合体の設計]
ポリプロピレン樹脂成形体に、メッキするための助剤に用いる共重合体(3-1)の設計を試みた。まず、ポリプロピレン樹脂成形体との接着性を得るために、炭素数22のアルカン鎖を側鎖として有するアクリレートである、BHA(モノマー(A-1-1))を選択した。次に、金属吸着能を有するモノマーとしてアミンの側鎖を有するアクリレートである前記モノマー(B-1-1)を選択した。そして、ここで選択されたモノマーを用いて、ポリプロピレン樹脂成形体に、メッキするための助剤に用いる共重合体(3-1)の製造を行った。
【実施例】
【0139】
[共重合体(3-1)の調製]
BHA6.7g、酢酸ブチル6.7g、開始剤0.385gを混合した溶液を、重合温度約105℃、リアクターの撹拌速度75rpm、窒素雰囲気下でリビングラジカル重合することにより、第1のモノマー(A)であるBHA(モノマー(A-1-1))のブロック重合体を製造した。さらに、これにより得られたBHAのブロック重合体の溶液に、第2のモノマー(B)であるTBAEMA(モノマー(B-1-1))を3.61g、酢酸ブチルを3.76g投入してモノマー(A-1-1)とモノマー(B-1-1)のブロック共重合体である共重合体(3-1)を得た。この共重合体(3-1)の構造式は、前述の式(I)である。なお、得られた共重合体(3-1)の分子量(Mw:重量平均分子量)を、GPCにより測定し、ポリスチレン換算にて求めた。モノマー(A-1-1)由来の構造は推算値として約6,000(g/mol)、モノマー(B-1-1)由来の構造が約2,000(g/mol)、Mw/Mnが1.1の共重合体であった。共重合体(3-1)(SCCBC)は、IRスペクトル分析したとき、原料となるモノマーの双方由来のピークを有しており、共重合体となっていることを確認することができた。
【実施例】
【0140】
[共重合体(3-2)の調製]
前記共重合体(3-1)の調製においてTBAEMA(モノマー(B-1-1))に代え、DEAEA(モノマー(B-3-1))を用いて、前記共重合体(3-1)の調製に準じて、共重合体(3-2)の製造を行った。モノマー(A-1-1)由来の構造は推算値として約8,000(g/mol)、モノマー(B-3-1)由来の構造が約2,000(g/mol)の共重合体であった。
【実施例】
【0141】
【化3】
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【実施例】
【0142】
[共重合体(3-3)の調製]
前記共重合体(1)の調製においてTBAEMA(モノマー(B-1-1))に代え、DMAEA(モノマー(B-3-2))を用いて、前記共重合体(3-1)の調製に準じて、モノマー仕込み量を変更し、共重合体(3-3)の製造を行った。モノマー(A-1-1)由来の構造は推算値として約7,000(g/mol)、モノマー(B-3-2)由来の構造が約1,500(g/mol)の共重合体であった。共重合体(3-3)の一般式を以下に示す。
【実施例】
【0143】
【化4】
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【実施例】
【0144】
[共重合体(3-4)の調製]
前記共重合体(1)の調製においてTBAEMA(モノマー(B-1-1))に代え、PGMA(モノマー(B-3-3))を用いて、前記共重合体(1)の調製に準じて、モノマー仕込み量を変更し、共重合体(3-4)の製造を行った。モノマー(A-1-1)由来の構造は推算値として約3,000(g/mol)、モノマー(B-3-3)由来の構造が約62,000(g/mol)の共重合体であった。また、共重合体(3-4)(SCCBC)も、IR分析の結果原料となるモノマーの双方由来のピークを有しており、共重合体となっていることを確認することができた。共重合体(3-4)の一般式を以下に示す。特に共重合体(3-4)はモノマー(B)由来の構造のブロックを、10,000以上や30,000以上のように分子量を大きいものとしやすく約6万を達成している。このモノマー(B)由来の構造がメッキ接着性に寄与しやすいと考えられ、この構造の分子量を大きいものとして製造しやすい点でもメッキ助剤用の共重合体として優れている。
【実施例】
【0145】
【化5】
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【実施例】
【0146】
[共重合体溶液(メッキ助剤溶液)の調製]
共重合体を、キシレンを溶媒として、共重合体濃度0.1質量%となるように、70℃にて混合撹拌することで溶解させて、共重合体溶液を調製した。
【実施例】
【0147】
[表面修飾工程(改質処理)]
基材(PPフィルム)をアセトンで洗浄して表面を清浄化させた後、80℃の共重合体溶液に5分間浸漬させ、その後、常温で静置し自然乾燥させることで、表面修飾した基材を得た。この表面修飾した基材には、共重合体の層が表面に設けられている。
【実施例】
【0148】
[表層触媒化工程]
前述の表面修飾工程を行って得た表面修飾した基材を、35℃に調整したエンプレートアクチベータ444に10分間浸漬させた。その後、水洗し、35℃に調整した0.1N塩酸水溶液に1分間浸漬させた。これにより、表層を触媒化させた基材を得た。
【実施例】
【0149】
[メッキ処理工程]
前述の表層触媒化工程を行い、表層を触媒化させた基材を、35℃に調整した無電解銅メッキ浴に20分間浸漬させた。これにより、基材の表面にメッキ層を得た。
【実施例】
【0150】
[試験例3-1~試験例3-4]
共重合体(3-1)-(3-4)を用いて、共重合体溶液(メッキ助剤溶液)の調製、表面修飾工程(浸漬処理)、表層触媒化工程、メッキ処理工程を行い、基材のメッキ処理品を製造した。組み合わせの一覧を、表7に示す。
【実施例】
【0151】
【表7】
JP2019137779A_000014t.gif
【実施例】
【0152】
[メッキ試験結果]
試験例3-1~試験例3-4の各工程における外観を、図4に示す。いずれの試験例においても、メッキ処理を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明によればポリプロピレン樹脂成形体を改質することができ、ポリプロピレン樹脂成形体を従来以上に広範な用途に用いることができるようになり産業上有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3