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明細書 :絨毛膜羊膜炎関連微生物同定ならびに検出方法、絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用プライマーセットならびにアッセイキット、および絨毛膜羊膜炎検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-209063 (P2017-209063A)
公開日 平成29年11月30日(2017.11.30)
発明の名称または考案の名称 絨毛膜羊膜炎関連微生物同定ならびに検出方法、絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用プライマーセットならびにアッセイキット、および絨毛膜羊膜炎検出方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAZ
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2016-105177 (P2016-105177)
出願日 平成28年5月26日(2016.5.26)
発明者または考案者 【氏名】宮本 新吾
【氏名】秦 健一郎
出願人 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
【識別番号】510136312
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立成育医療研究センター
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
【識別番号】100149205、【弁理士】、【氏名又は名称】市川 泰央
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
Fターム 4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QQ54
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS40
4B063QX01
要約 【課題】絨毛膜羊膜炎関連微生物の菌種を簡便に、定量的にかつ高精度に検出し、また、妊娠中に絨毛膜羊膜炎や起炎菌を高精度に検出する。
【解決手段】羊水などの被験試料中に含まれる細菌から抽出した全ゲノムDNAを、細菌共通の16SrRNA遺伝子のユニバーサルプライマーを利用して16SrRNA遺伝子を特異的にPCR増幅し、網羅的解析とOperational Taxonomic Unit解析(OTU解析)によって絨毛膜羊膜炎関連微生物を同定することとした。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
羊水などの被験試料中に含まれる細菌から抽出した全ゲノムDNAを、細菌共通の16SrRNA遺伝子のユニバーサルプライマーを利用して16SrRNA遺伝子を特異的にPCR増幅し、UniFrac距離に基づく主座標分析とOperational Taxonomic Unit解析(OTU解析)によって絨毛膜羊膜炎関連微生物を同定することを特徴とする絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法であって、前記OTU解析によるOTUが16SrRNA遺伝子のユニバーサルプライマーの97%以上の類似度を有する菌種からなることを特徴とする絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法であって、前記絨毛膜羊膜炎関連微生物が、下記絨毛膜羊膜炎関連微生物の少なくとも1種から選ばれる菌種であることを特徴とする絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法。
ウレアプラズマ・パルブム(Ureaplasma parvum)、
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、
ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、
ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、
スネシア・サンギネジェンス(Sneathia sanguinegens)、
カプノサイトファガ・スプチゲン(Capnocytophaga sputigene)、
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ならびに
ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法にて同定された各菌種に特異的な下記フォワードプライマーとリバースプライマーからなる1対のプライマーから構成されるプライマーセットからなることを特徴とする絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用プライマーセット。
ウレアプラズマ・パルブム(Ureaplasma parvum)のプライマーセット(プライマー名:U_p)(アンプリコンサイズ:652 bp);
フォワードプライマー:ATGTAGAAAGTCGCTCTTTGTG (22 mer)(SEQ ID NO:1)
リバースプライマー:GGCCGACATTTAATGATGATCG (22 mer)(SEQ ID NO:2);
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)のプライマーセット(プライマー名:M_p); (アンプリコンサイズ:543 bp);
フォワードプライマー:TTGGAATACCCATTGGAAACAA (22 mer) (SEQ ID NO:3) リバースプライマー:CTCTATCTAACTCTAGTTTGCT (22 mer)(SEQ ID NO:4);
ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)のプライマーセット(プライマー名:G_p)(アンプリコンサイズ:464 bp);
フォワードプライマー:CTTGGAAACGGGTGGTAATGCT (22 mer)(SEQ ID NO:5) リバースプライマー:AGACGCGACGAACCGCCTACAA (22 mer) (SEQ ID NO:6);
ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)のプライマーセット(プライマー名:L_p)(アンプリコンサイズ:331 bp);
フォワードプライマー:TAATACCGGATAAAAGCTACTT (22 mer)(SEQ ID NO:7)
リバースプライマー:GTCAAATAAAGGCCAGTTACTA (22 mer)(SEQ ID NO:8);
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)のプライマーセット(プライマー名:H_p)(アンプリコンサイズ:662 bp);
フォワードプライマー:GCATTTCAGACTGGGTAACTA (21 mer)(SEQ ID NO:9)
リバースプライマー:TGAGATTCGCTCCACCTCGCA (21 mer)(SEQ ID NO:10);
スネシア・サンギネジェンス(Sneathia sanguinegens)のプライマーセット(プライマー名:Sn_p)(アンプリコンサイズ:308 bp);
フォワードプライマー:AGGGGACTGAGATACGGCCCTT (22 mer)(SEQ ID NO:11) リバースプライマー:GAGCCACAGGTTTTCACCTTC (21 mer)(SEQ ID NO:12);
カプノサイトファガ・スプチゲン(Capnocytophaga sputigene)のプライマーセット(プライマー名:C_p)(アンプリコンサイズ:441 bp);
フォワードプライマー:GAGCGGCATCGTTTTTATATT (20 mer)(SEQ ID NO:13)
リバースプライマー:AGGCAGTTGCTTAGTTGAGCTA (22 mer)(SEQ ID NO:14);
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)のプライマーセット(プライマー名:B_p)(アンプリコンサイズ:382 bp);
フォワードプライマー:TATCCAACCTGCCCTTTACTCG (22 mer)(SEQ ID NO:15)
リバースプライマー:AATACATACAAAACAGTATACA (22 mer)(SEQ ID NO:16);およびストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)のプライマーセット(プライマー名:St_p)(アンプリコンサイズ:275 bp);
フォワードプライマー:AGAAGTGACAGGTGGTGCATGG (22 mer)(SEQ ID NO:17)
リバースプライマー:AATCCGAACTGAGATTGGCTTTA (23 mer)(SEQ ID NO:18)。
【請求項5】
請求項4に記載の絨毛膜羊膜炎関連微生物検査用プライマーセットを用いて羊水などの被験試料から請求項4に記載の絨毛膜羊膜炎関連微生物の下記菌種の少なくとも1種を検査することを特徴とする絨毛膜羊膜炎関連微生物検査方法。
ウレアプラズマ・パルブム(Ureaplasma parvum)、
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、
ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、
ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、
スネシア・サンギネジェンス(Sneathia sanguinegens)、
カプノサイトファガ・スプチゲン(Capnocytophaga sputigene)、
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ならびに
ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)。
【請求項6】
請求項4に記載の絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットを含むことを特徴とする絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用アッセイキット。
【請求項7】
請求項6に記載の絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用アッセイキットを用いて羊水などの被験試料から絨毛膜羊膜炎関連微生物を検出することを特徴とする絨毛膜羊膜炎関連微生物検出方法。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法を用いて羊水などの被験試料中の絨毛膜羊膜炎関連微生物を同定することによって、または請求項4に記載の絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットもしくは請求項6に記載のアッセイキットを用いて前記絨毛膜羊膜炎関連微生物の菌種を同定もしくは検出することによって絨毛膜羊膜炎を検出することを特徴とする絨毛膜羊膜炎検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、絨毛膜羊膜炎関連微生物同定ならびに検出方法、絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用プライマーセットならびにアッセイキット、および絨毛膜羊膜炎検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
早産は妊娠22週から37週未満に出産することをいう。早産は、感染と炎症が関与していることが多く(非特許文献1)、大半は腟からの上行性感染によって子宮内感染を来し、絨毛膜羊膜炎などの炎症反応を伴って発生すると考えられている(非特許文献2)。
【0003】
このように、絨毛膜羊膜炎は、早産を引き起こす病態であり、早産の40%~70%、正期産の1%~13%に発症しているとみられ(非特許文献3)、早産や児の予後と強固に関連するが(非特許文献3)、絨毛膜羊膜炎を分娩前に有効に診断することは不可能である。
【0004】
さらに、絨毛膜羊膜炎の発見治療が遅れれば、胎児感染をきたし、過剰な炎症に伴って種々の臓器障害を来す場合があり、児に重篤な障害を起こすことが問題視されている(非特許文献3-6)。
【0005】
現在、絨毛膜羊膜炎の存在を予測する手法としては、1994年にLenckiらが提唱した基準(非特許文献7)が、日本産婦人科学会等が刊行する診療ガイドラインにも記載されている(非特許文献8)。しかし、この方法では、絨毛膜羊膜炎に対する感度が低いため早期発見が困難な症例が存在し、また起因菌が同定できず適切な治療ができないという大きな問題点がある。
【0006】
また、子宮内感染は、妊娠週数が早いほど感染菌の検出率は高く(非特許文献9)、これまでの主な報告では(非特許文献10-13)、早産での検出率は、破水例では50%程度、さらに未破水例でも10%~22%と高く、羊水中で検出された菌種は属レベルで40種類に及ぶ多様な菌種が定性的に検出されている。
【0007】
一部の施設で実施されている羊水検査でもその診断精度は低く(非特許文献1、2)、本発明者らが知る限りでは、従来法はいずれも定量的でかつ網羅的とはいえず、現在まで細菌検査で絨毛膜羊膜炎を高精度に予測しうる病原菌検査法を開発したという報告はない。
【0008】
もし羊水中の絨毛膜羊膜炎起因細菌を定量的かつ網羅的に把握できれば、早産の予防・治療戦略を早期に選定でき、児の治療方針決定に有用と期待できる。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】Romero,R., et al., Science, 2014;345(6198):760-765
【非特許文献2】Goldenberg,R.L., et al., Lancet, 2008;371(9606):75-84
【非特許文献3】Tita,A.T.A., et al., Clin Perinatol, 2010;37(2):339-354
【非特許文献4】Martinelli,P., et al. J Matern Fetal Neonatal Med. 2012; 25(S4):29-31
【非特許文献5】Buhimschi,I.A., et al., Expert opinion on medical diagnosis, 2013;7(1)5-16
【非特許文献6】Buhimschi,C.S., et al., PLoS medicine, 2007;4(1), e18
【非特許文献7】Lencki, S.G., et al., Am J Obstet Gynecol 1994; 170(5):1345-1351
【非特許文献8】日本産婦人科学会、日本産婦人科医会編.産婦人科診療ガイドライン-産科編2014.東京:日本産婦人科学会事務局、2014.
【非特許文献9】Yoon,B.H., et al., Am J Obstet Gynecol. 2001;185(5):1130-1136
【非特許文献10】Digiulio,D.B., et al., PLoS One. 2008; 3(8):e3056
【非特許文献11】Digiulio,D.B., et al., American journal of reproductive immunology. 2010; 64(1), 38-57
【非特許文献12】Combs,C.A., et al. Am J Obstet Gynecol.2014; 210(2):125e1-15
【非特許文献13】Han,Y.W., et al., Journal of clinical microbiology. 2009; 47(1):38-47
【非特許文献14】Kim, S. W., et al. DNA Res. 2013; 20(3):241-253
【非特許文献15】須田亙ら, 実験医学増刊 Vol.30 No.20
【非特許文献16】Romeo, R., et al. Am J Obstet Gynecol. 1993;
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、少量の羊水から特定の絨毛膜羊膜炎関連微生物を簡便に、定量的かつ網羅的に同定することができれば、絨毛膜羊膜炎の存在を早期に予測でき、それにより児の早産予防・治療についての方針を早期に決定できる可能性があることに着目して、羊水中の絨毛膜羊膜炎関連微生物を定量的かつ網羅的に解析する絨毛膜羊膜炎関連微生物同定・検出方法を検討した。
【0011】
その結果、本発明者らは、すべての細菌が共通して有する16SリボソームRNA(16SrRNA)遺伝子のユニバーサルプライマーを利用し、羊水から抽出したDNAの16SrRNA遺伝子を特異的にPCR増幅し(非特許文献14)、UniFrac距離に基づく主座標分析とOperational Taxonomic Unit解析(以下、「OTU解析」ともいう)により絨毛膜羊膜炎と相関する菌種を同定することができた。
【0012】
さらに、本発明者らは、それぞれの菌種に特異的なPCRプライマーセットを作製し、これらのPCRプライマーセットを使用すれば、絨毛膜羊膜炎関連微生物を迅速かつ簡便に検出できることを見出して、本発明を完成した。
【0013】
したがって、本発明は、絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法ならびに検出方法、絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用プライマーセットならびにアッセイキット、および絨毛膜羊膜炎検出方法を提供することを課題とする。
【0014】
更に詳細には、本発明は、第1の形態として、羊水などの被験試料から細菌由来の全ゲノムDNAを抽出し、抽出した全ゲノムDNAを細菌共通の16SrRNA遺伝子のユニバーサルプライマーを利用して16SrRNA遺伝子を特異的にPCR増幅し、UniFrac距離に基づく主座標分析とOperational Taxonomic Unit解析により絨毛膜羊膜炎関連微生物を同定することからなる絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法を提供することを課題としている。
【0015】
本発明は、第2の形態として、上記絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法により同定した絨毛膜羊膜炎関連微生物のそれぞれの菌種に特異的なPCRプライマーセットを提供することを課題としている。
【0016】
本発明は、第3の形態として、上記絨毛膜羊膜関連微生物検出用プライマーセットを使用して、絨毛膜羊膜炎関連微生物を検出することからなる絨毛膜羊膜炎関連微生物検出方法を提供することを課題としている。
【0017】
本発明は、第4の形態として、上記PCRプライマーセットを上記絨毛膜羊膜炎関連微生物検出方法に使用するためのアッセイキットを提供することを課題とする。
【0018】
本発明は、第5の形態として、上記絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用プライマーセットまたはアッセイキットを利用し、羊水などの被験試料から上記絨毛膜羊膜炎関連微生物を同定し、絨毛膜羊膜炎関連微生物を検出することからなる絨毛膜羊膜炎検出方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の形態は、羊水などの被験試料中に含まれる細菌から抽出した全ゲノムDNAを、細菌共通の16SrRNA遺伝子のユニバーサルプライマーを利用して16SrRNA遺伝子を特異的にPCR増幅し、UniFrac距離に基づく主座標分析とOperational Taxonomic Unit解析によって絨毛膜羊膜炎関連微生物を同定することからなる絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法を提供する。
【0020】
なお、本明細書で使用する用語「Operational Taxonomic Unit解析(OTU解析)」とは、一般に、16SrRNA遺伝子などの細菌に必須の遺伝子の塩基配列をコンピュータ上でその類似度を指標として分類したときに得られる単位を解析することを意味する。例えば、細菌叢からの16S遺伝子配列データをある類似度(例えば、97%)閾値でOTU解析すると、その閾値以上の類似度を持つ16S遺伝子配列群からなる多数のOTUが形成される。つまり、類似度97%の場合、各OTUは進化時には同一の菌種から構成されていることになる(非特許文献15)。
【0021】
本発明は、その1具体的態様として、上記絨毛膜羊膜炎関連微生物が、下記絨毛膜羊膜炎関連微生物の少なくとも1種から選ばれる菌種を同定することからなる絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法を提供する。
【0022】
ウレアプラズマ・パルブム(Ureaplasma parvum)、
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、
ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、
ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、
スネシア・サンギネジェンス(Sneathia sanguinegens)、
カプノサイトファガ・スプチゲン(Capnocytophaga sputigene)、
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ならびに
ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)。
【0023】
本発明の第2の形態は、上記絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法にて同定した各菌種に特異的な下記フォワードプライマーとリバースプライマーからなる1対のプライマーから構成されるプライマーセットからなる絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用プライマーセットを提供する:
【0024】
ウレアプラズマ・パルブム(Ureaplasma parvum)のプライマーセット(プライマー名:U_p)(アンプリコンサイズ:652 bp);
フォワードプライマー:ATGTAGAAAGTCGCTCTTTGTG (22 mer)(SEQ ID NO:1)
リバースプライマー:GGCCGACATTTAATGATGATCG (22 mer)(SEQ ID NO:2 )
【0025】
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)のプライマーセット(プライマー名:M_p); (アンプリコンサイズ:543 bp);
フォワードプライマー:TTGGAATACCCATTGGAAACAA (22 mer) (SEQ ID NO:3) リバースプライマー:CTCTATCTAACTCTAGTTTGCT (22 mer)(SEQ ID NO:4)
【0026】
ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)のプライマーセット(プライマー名:G_p)(アンプリコンサイズ:464 bp);
フォワードプライマー:CTTGGAAACGGGTGGTAATGCT (22 mer)(SEQ ID NO:5) リバースプライマー:AGACGCGACGAACCGCCTACAA (22 mer) (SEQ ID NO:6)
【0027】
ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)のプライマーセット(プライマー名:L_p)(アンプリコンサイズ:331 bp);
フォワードプライマー:TAATACCGGATAAAAGCTACTT (22 mer)(SEQ ID NO:7)
リバースプライマー:GTCAAATAAAGGCCAGTTACTA (22 mer)(SEQ ID NO:8)
【0028】
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)のプライマーセット(プライマー名:H_p)(アンプリコンサイズ:662 bp);
フォワードプライマー:GCATTTCAGACTGGGTAACTA (21 mer)(SEQ ID NO:9)
リバースプライマー:TGAGATTCGCTCCACCTCGCA (21 mer)(SEQ ID NO:10)
【0029】
スネシア・サンギネジェンス(Sneathia sanguinegens)のプライマーセット(プライマー名:Sn_p)(アンプリコンサイズ:308 bp);
フォワードプライマー:AGGGGACTGAGATACGGCCCTT (22 mer)(SEQ ID NO:11) リバースプライマー:GAGCCACAGGTTTTCACCTTC (21 mer)(SEQ ID NO:12)
【0030】
カプノサイトファガ・スプチゲン(Capnocytophaga sputigene)のプライマーセット(プライマー名:C_p)(アンプリコンサイズ:441 bp);
フォワードプライマー:GAGCGGCATCGTTTTTATATT (20 mer)(SEQ ID NO:13)
リバースプライマー:AGGCAGTTGCTTAGTTGAGCTA (22 mer)(SEQ ID NO:14)
【0031】
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)のプライマーセット(プライマー名:B_p)(アンプリコンサイズ:382 bp);
フォワードプライマー:TATCCAACCTGCCCTTTACTCG (22 mer)(SEQ ID NO:15)
リバースプライマー:AATACATACAAAACAGTATACA (22 mer)(SEQ ID NO:16)
【0032】
ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)のプライマーセット(プライマー名: St_p)(アンプリコンサイズ:275 bp);
フォワードプライマー:AGAAGTGACAGGTGGTGCATGG (22 mer)(SEQ ID NO:17)
リバースプライマー:AATCCGAACTGAGATTGGCTTTA (23 mer)(SEQ ID NO:18)
【0033】
また、本発明の第3の形態は、上記絨毛膜羊膜炎関連微生物に特異的な絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットを使用して、羊水などの被験試料中の絨毛膜羊膜炎関連微生物を検出することからなる絨毛膜羊膜炎関連微生物検出方法を提供する。
【0034】
本発明は、その1具体的な態様として、羊水中の絨毛膜羊膜炎関連微生物を検出することからなる絨毛膜羊膜炎関連微生物検出方法を提供する。
【0035】
さらに、本発明の第4の形態は、上記絨毛膜羊膜炎関連微生物検出方法に使用するための上記絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットを含むアッセイキットを提供する。
【0036】
また、本発明の第5の形態は、上記絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法を用いて羊水中の絨毛膜羊膜炎関連微生物を同定することによって、または上記絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットを用いて上記絨毛膜羊膜炎関連微生物を検出することによって上記絨毛膜羊膜炎を検出することからなる絨毛膜羊膜炎検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、羊水検査などにより得られた羊水などの被験試料から抽出したDNAを、絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットを用いてPCR増幅判定することによって、簡便に、迅速かつ高い精度で絨毛膜羊膜炎の有無と、その起炎菌を予測できる可能性があり、新たな早産の予防・治療戦略の確立に向けて応用できることが大いに期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】UniFrac距離に基づく主座標分析(PCoA)結果を示す図。
【図2】羊水感染群に特異的な菌種の特異的プライマーセットを用いて感染羊水において想定したサイズの増幅産物の確認を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の第1の形態に係る絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法は、羊水などの被験試料中の細菌から全ゲノムDNAを抽出し、抽出した全ゲノムDNAを、細菌共通の16SrRNA遺伝子を増幅できるのユニバーサルプライマーを利用して16SrRNA遺伝子を特異的にPCR増幅し、UniFrac距離に基づく主座標分析とOperational Taxonomic Unit解析(以下、「OTU解析」ともいう)によって絨毛膜羊膜炎関連微生物を同定することから構成されている。

【0040】
本発明においては、まず、羊水などの被験試料から細菌の全ゲノムDNAを抽出する。DNA抽出法としては、当該技術分野で慣用されている手法に従って実施することができ、例えば、被験試料中に含まれる細菌をガラスビーズなどのビーズを用いた物理的細胞壁破壊法によって溶菌し、DNA抽出用キットなどを使用して全ゲノムDNAを抽出することができる。

【0041】
本発明に使用できる被験試料としては、理論上は妊婦からの周産期の検体であればいずれも使用することができ、例えば、早産や正常例の羊水、腟スワブ、血液、臍帯血、胎盤、唾液、便などがいずれも使用できると考えられるが、発明の性質上羊水が特に好ましい。

【0042】
つぎに、各被験試料から抽出した全ゲノムDNAは、それを鋳型として、すべての細菌が共通して有する16SrRNA遺伝子の16Sユニバーサルプライマーを利用して、16SrRNA遺伝子の対象領域のゲノムDNAを網羅的かつ特異的にPCR増幅するのがよい。

【0043】
なお、本発明において16SrRNA遺伝子は、羊水などの被験試料中に含まれる未知の絨毛膜羊膜炎関連微生物を含む全ての絨毛膜羊膜炎関連微生物をできる限り網羅的にかつ同一効率でPCR増幅できるように被験試料を調製する必要がある。また、16SrRNA遺伝子断片のPCR増幅において、使用するシーケンサーによって得られる1リードの塩基数が異なることから、16SrRNA遺伝子中から系統分類情報が有効に得られる可変領域をPCR増幅の対象にするのがよい。そのために、本発明においては、16Sユニバーサルプライマーとして使用する16SrRNA遺伝子の対象領域は、16SrRNA遺伝子のV1からV9のすべての可変領域のいずれも使用することができるが、例えば、V1領域とV2領域を挟む保存領域を標的とするのがよい。このように調製した各被験試料のユニバーサルプライマーは、その被験試料の由来を特定することができるように、その5'末端に数ベースのバーコード配列を付与するのがよい。好ましい場合には、かかるバーコード配列を3'末端にも付加してもよい。

【0044】
上記のようにして得られたPCR増幅断片(アンプリコン)は、例えば、次世代シーケンサーによるMiSeq(登録商標)システム、IonPGMTMシステムなどのシーケンスシステムを用いてシーケンスすることができる。

【0045】
本発明において、例えば、MiSeq(登録商標)システムの次世代シーケンサーによるアンプリコンシーケンシングは、メーカー推奨プロトコールに従って解析することができる。この次世代シーケンサーによるシーケンス解析ではデータはFastqファイル形式で得られる。得られたFastqファイルには、アダプター配列などのクオリティの低いリードが含まれているので、クオリティコントロールにより、かかる低クオリティリードなどを削除し、例えば、1,000~5,000リードをランダムに選出し、それらをクラスタリングすることができる。

【0046】
このようにして得られた各被験試料のシークエンスデータは定量的かつ網羅的な16SrRNA遺伝子解析を常法に従って行うことができる。本発明では、例えば、UniFrac距離に基づく主座標分析(PCoA:Principal Component Analysis)ならびにOTU(Operational Taxonomic Units)解析によって16SrRNA遺伝子解析を行うことができる。

【0047】
本発明によれば、主座標分析(PCoA)による16SrRNA遺伝子解析は、定量性を考慮したWeighted UniFrac距離に基づいて実施することで、シーケンスデータが有する定量性を保った状態で各被験試料の細菌組成の類似性を検証することができる。本発明による主座標分析(PCoA)による16SrRNA遺伝子解析に当たっては、羊水検査と胎盤病理検査を施行した症例からの被験試料を対象とするのがよい。また、対象とする被験試料は、症例の症状別に分類するのが便利である。

【0048】
本発明において主座標分析(PCoA)による16SrRNA遺伝子解析をするにあたって、解析対象となる被験試料を絨毛膜羊膜炎の重症度分類(Blanc分類)によってグループ分けするのがよい。被験試料は、胎盤の組織学的診断でStage III(Chorioamnionitis:炎症が羊膜まで波及している段階)に属するグループ(CA群)、Stage II (Chorionitis:炎症が絨毛膜まで波及している段階)に属するグループ(C群)、ならびにStage II未満(炎症が絨毛膜下に留まっている段階、もしくは胎盤に炎症細胞の浸潤が認められなかったもの)に属するグループ(Non-CA群)とグループ分けした。その他に、合併症のない妊娠15週から17週の羊水を羊水コントロール(Control AF群)とし、実験コントロールとして羊水でなく無菌の精製水を使用した(Blank群)。

【0049】
上記Weighted UniFrac距離に基づく主座標分析により、点が近い症例は菌叢組成が類似していることが示されることから、近い点にプロットされる症例は同一クラスターとして分類することができる。本発明では、羊水コントロール検体と実験ネガティブコントロール検体のシークエンスデータを含めて、2回のシークエンスでえたデータを同一に解析することで、胎盤に重度の炎症を伴う症例の多く(CA群のすべてとC群の4割弱)が再現性良く同一クラスターを形成しているのが観察された(図1)。以下、このクラスターを形成した検体を便宜的に「羊水感染群」と称する。なお、図中、「1stSeq」は1回目のシークエンス、「2ndSeq」は2回目のシークエンスを意味し、また「アーチファクト」は人工産物・人工的な要因で生じたデータの乱れなど、を意味する。

【0050】
本発明においては、上記OTU解析のOTUを、ある一定以上の類似性、例えば96%~97%の類似性を持つ配列同士を1つの菌種として扱う分類単位とし、OTU数を菌叢を構成する菌種の数を表している。また同一のOTUに属するリードの数はその菌種の相対的な存在量を表していると考えられる。各OTUに属するリード数から代表的な配列を選び、データベースに相同性検索することにより、そのOTUに属する菌種の属名・種名を同定することが可能である。

【0051】
本発明によるOTU解析の結果、羊水感染群で10%以上、コントロール群(Non-C群、Control-AF群、Blank群)では0.5%未満のOTU(菌種に相当)を同定することができ、その菌種を羊水感染群で特異的な細菌組成を引き起こす菌種と同定できる。本発明によって同定された菌種は次のとおりである。

【0052】
ウレアプラズマ・パルブム(Ureaplasma parvum)、
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、
ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、
ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、
スネシア・サンギネジェンス(Sneathia sanguinegens)、
カプノサイトファガ・スプチゲン(Capnocytophaga sputigene)、
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ならびに
ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)。

【0053】
前述の結果は、網羅的かつ定量的解析により、羊水などの検体から、高い精度で絨毛膜羊膜炎を予測できる可能性を示唆している。したがって、本発明は、絨毛膜羊膜炎関連微生物である上記菌種を同定することができることから、絨毛膜羊膜炎の検出に有用である。

【0054】
前述のように、本発明は、羊水などの検体中に含まれる絨毛膜羊膜炎関連微生物である菌種を絞り込むことができることから、かかる菌種を簡便かつ迅速に検出できるように、かかる菌種に特異的な絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットを作製する。

【0055】
16SrRNA遺伝子の標準配列をダウンロードできるRDP(Ribosomal Database Project, http://rdp.cme.msu.edu)より絨毛膜羊膜炎関連微生物と同じ種の16SrRNA遺伝子配列情報を全てFASTA形式でダウンロードした。また、RDPとNCBI (National Center for Biotechnology Information,
1464222211192_0.nlm
.nih.gov) から、絨毛膜羊膜炎関連微生物と同じ種の16SrRNA遺伝子配列情報を10菌種20株を上限にFASTA形式でダウンロードした。これらをMEGA(Molecular Evolutionary Genetics Analysis, http://www.megasoftware.net)でマルチプルアライメントし、16SrRNA遺伝子中に種内で共通かつ種間で異なる配列を同定し、絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットを作製した。作製したPCRは、in-silico PCR (http://insilico.ehu.es/PCR/)で確認した。

【0056】
本発明の絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用プライマーセットは、上記絨毛膜羊膜炎関連微生物同定方法にて同定した各菌種に特異的な下記フォワードプライマーとリバースプライマーからなる1対のプライマーから構成されるプライマーセットからなる:

【0057】
ウレアプラズマ・パルブム(Ureaplasma parvum)のプライマーセット(プライマー名:U_p)(アンプリコンサイズ:652 bp):
フォワードプライマー:ATGTAGAAAGTCGCTCTTTGTG (22 mer)(SEQ ID NO:1);
リバースプライマー:GGCCGACATTTAATGATGATCG (22 mer)(SEQ ID NO:2)

【0058】
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)のプライマーセット(プライマー名:M_p); (アンプリコンサイズ:543 bp):
フォワードプライマー:TTGGAATACCCATTGGAAACAA (22 mer) (SEQ ID NO:3);
リバースプライマー:CTCTATCTAACTCTAGTTTGCT (22 mer)(SEQ ID NO:4)

【0059】
ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)のプライマーセット(プライマー名:G_p)(アンプリコンサイズ:464 bp):
フォワードプライマー:CTTGGAAACGGGTGGTAATGCT (22 mer)(SEQ ID NO:5); リバースプライマー:AGACGCGACGAACCGCCTACAA (22 mer) (SEQ ID NO:6)

【0060】
ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)のプライマーセット(プライマー名:L_p)(アンプリコンサイズ:331 bp):
フォワードプライマー:TAATACCGGATAAAAGCTACTT (22 mer)(SEQ ID NO:7);
リバースプライマー:GTCAAATAAAGGCCAGTTACTA (22 mer)(SEQ ID NO:8)

【0061】
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)のプライマーセット(プライマー名:H_p)(アンプリコンサイズ:662 bp):
フォワードプライマー:GCATTTCAGACTGGGTAACTA (21 mer)(SEQ ID NO:9);
リバースプライマー:TGAGATTCGCTCCACCTCGCA (21 mer)(SEQ ID NO:10)

【0062】
スネシア・サンギネジェンス(Sneathia sanguinegens)のプライマーセット(プライマー名:Sn_p)(アンプリコンサイズ:308 bp):
フォワードプライマー:AGGGGACTGAGATACGGCCCTT (22 mer)(SEQ ID NO:11); リバースプライマー:GAGCCACAGGTTTTCACCTTC (21 mer)(SEQ ID NO:12)

【0063】
カプノサイトファガ・スプチゲン(Capnocytophaga sputigene)のプライマーセット(プライマー名:C_p)(アンプリコンサイズ:441 bp):
フォワードプライマー:GAGCGGCATCGTTTTTATATT (20 mer)(SEQ ID NO:13);
リバースプライマー:AGGCAGTTGCTTAGTTGAGCTA (22 mer)(SEQ ID NO:14)

【0064】
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)のプライマーセット(プライマー名:B_p)(アンプリコンサイズ:382 bp):
フォワードプライマー:TATCCAACCTGCCCTTTACTCG (22 mer)(SEQ ID NO:15);
リバースプライマー:AATACATACAAAACAGTATACA (22 mer)(SEQ ID NO:16)

【0065】
ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)のプライマーセット(プライマー名: St_p)(アンプリコンサイズ:275 bp):
フォワードプライマー:AGAAGTGACAGGTGGTGCATGG (22 mer)(SEQ ID NO:17);
リバースプライマー:AATCCGAACTGAGATTGGCTTTA (23 mer)(SEQ ID NO:18)

【0066】
上記の絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットについて、感染羊水と非感染羊水とネガティブコントロールを用いてPCR実験を行って検証したところ、上記プライマーセットの全てで、感染羊水では想定されるサイズの増幅産物が確認された。これに対して、非感染羊水とネガティブコントロールでは確認されなかった(図2参照)。つまり、絨毛膜羊膜炎例の感染羊水で陽性、非絨毛膜羊膜炎例の非感染羊水で陰性となり、羊水で絨毛膜羊膜炎の診断ならびに絨毛膜羊膜炎関連微生物の検出が可能である。

【0067】
したがって、上記の絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用プライマーセットを使用すれば、羊水などの被験試料から上記の絨毛膜羊膜炎関連微生物を簡便かつ迅速に検出することができ、かつ絨毛膜羊膜炎の診断を行うことができ非常に有用である。

【0068】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を具体的に説明するだけであって、本発明をいかなる意味においても一切限定するものではない。
【実施例1】
【0069】
本実施例では、羊水検体のDNA抽出を当該技術分野で慣用されている手法により行った。DNAは、細菌共通の16SrRNA遺伝子のユニバーサルプライマー配列を利用し(非特許文献14)、プロトコールに従ってシークエンスライブラリー作製用のニバーサルプライマーを設計し、羊水検体から抽出した。
【実施例1】
【0070】
<設計したユニバーサルプライマーの配列>
フォワードプライマー(SEQ ID NO:19):
5'-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGAGRGTTTGATYMTGGCTCAG-3'
リバースプライマー(SEQ ID NO:20):
5'-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGTGCTGCCTCCCGTAGGAGT-3'
【実施例1】
【0071】
本実施例には、当学病院で羊水検査ならび胎盤病理検査を施行した41例(早産38例ならびに正期産3例)の検体を被験試料として使用した。これらの検体は、絨毛膜羊膜炎の重症度分類(Blanc分類)に基づいて下表のようにグループ分けした。なお、コントロール羊水として、妊娠初期に得られる羊水19検体、実験ネガティブコントロールとしてDNA抽出時とライブラリー作製時に精製水(Blank)を使用した。
【実施例1】
【0072】
【表1】
JP2017209063A_000002t.gif
【実施例1】
【0073】
表中、CA群は、重症度分類(Blanc分類)のStage III (Choriamnionitis) に分類される炎症性細胞が羊膜まで浸潤している状態を呈する患者からの検体群である。C群は、Stage II (Chorionitis) に分類される炎症性細胞が絨毛膜まで浸潤している状態を呈する患者からの検体群である。また、Non-CA群は、炎症性細胞が絨毛膜に浸潤してない状態を呈する患者からの検体群である。Control-AF群は、妊娠初期に得られる羊水の検体群である。Blank群は、精製水だけの実験ネガティブコントロールとしての検体群である。
【実施例1】
【0074】
上記の各被験試料に含まれる細菌をガラスビーズで溶菌し、各被験試料から調製された全ゲノムDNAを鋳型として、16SrRNA遺伝子を網羅的に増幅するPCR反応を常法に従って行った。
【実施例1】
【0075】
PCR反応液の組成は下記のとおりである。
テンプレート 1 μL
フォワードプライマー(5μM) 2 μL
リバースプライマー(5μM) 2 μL
10× Loading Buffer (Takara) 2 μL
dNTP (Takara) 2 μL
Taqポリメラーゼ 0.2 μL
蒸留水 11.8 μL
合計 21.0 μL
【実施例1】
【0076】
PCR増幅反応条件は下記のとおりである。
1.Hold 95℃ 3分
2.サイクル 95℃、15秒;55℃、15秒;72℃、15秒
(35サイクル)
3.Hold 72℃ 3分
4℃ 保存
【実施例1】
【0077】
必要に応じて、上記のPCR増幅藩農産物(1μL)を、100 bp ladderを使用して、EtBr入り2%アガロースゲルで確認した。2%アガロースゲルは、1 g/ml EtBr溶液中において約15分間室温で振とうし、水で約10分間室温で振とうした後、Gel Doc EZ Imager (Bio-Rad) で増幅産物を確認した。
【実施例2】
【0078】
本実施例では、実施例1で得られたPCR増幅産物(リード)の71検体を同時に、次世代シークエンサー(NGS:MiSeq(登録商標)シークエンサー)を用いて16Sアンプリコン解析した。本実施例による16Sアンプリコン解析によって、PCR増幅断片のシークエンスデータをFastqファイル形式として得、これらのリードをクオリティコントロールしてアダプター配列などの低クオリティのリードを削除して約3,000リードを選出した。
【実施例3】
【0079】
本実施例では、各検体についてWeighted UniFrac距離に基づく主座標分析(PCoA)を実施した。各検体間で16SrRNA遺伝子から作製した系統樹の共有する枝の長さからUniFrac距離を求め、シークエンスデータに含まれる定量性を保ったWeighted UniFrac距離に基づいてprincipal coordinate analysis (PCoA)を行った。
【実施例3】
【0080】
上記主座標分析(PCoA)の結果、胎盤に重度の炎症を伴う症例の多く(CA群の全検体とC群の6/17検体、検体番号1~18)は、菌叢組成が近似していて再現性よく同一クラスターを形成しているのが確認された(図1)。このクラスターを、便宜的に「クラスター1」と略称する。なお、その他の検体は、シークエンスごとにクラスター(図中、1回目:クラスター2ならびに2回目:クラスター3)を形成し、コンタミネーションによるアーチファクトが考えられた。
【実施例4】
【0081】
羊水から得た60検体とネガティブコントロール11検体についてOTU解析した。具体的には、選出したリードは、96% pairwise-identity cutoff with UCLUST program version 5.2.32 (http://www.drive5.com)を使って、operational taxonomic units (OTUs)にクラスタリングされた。各OTUsの代表配列を上述のデータベースに対しBLAST検索を行い、OTUの系統分類を確かめた。
【実施例4】
【0082】
上記OTU解析の結果、上記主座標分析(PCoA)の結果クラスター1に分類したすべての18試料(CA群全12例とC群6/17例、検体1~18)は、明らかに他とは異なった細菌組成(門レベル)が観察された。以下、これら18検体を便宜的に羊水感染群と指称する。
【実施例4】
【0083】
上記羊水感染群の被験試料(18検体)と非羊水感染群の被験試料(23検体)を比較すると次の通りであった。
【実施例4】
【0084】
【表2】
JP2017209063A_000003t.gif
【実施例4】
【0085】
上記の結果から、羊水感染群は、非羊水感染群とは、羊水培養検査と臨床的絨毛膜羊膜炎では有意差はなかったが、胎盤の炎症度と羊水中の細菌量では有意差が認められた。羊水感染群では、母児ともに比較的予後不良である可能性が示唆された。
【実施例4】
【0086】
本実施例によるOTU解析による羊水感染群と非羊水感染群についての絨毛膜羊膜炎の重症度(Stage III)の予測精度は次のとおりである。
Stage III 12検体(羊水感染群:12検体;非羊水感染群:0検体)
Stage II以下 29検体(羊水感染群:6検体;非羊水感染群:23検体)
感度: 100% (12/12)
特異度: 79%(23/29)
陽性的中率:67%(12/18)
陰性的中率:100%(23/23)
【実施例4】
【0087】
さらに、従来法(非特許文献16)との比較をすると次のとおりである。
【実施例4】
【0088】
【表3】
JP2017209063A_000004t.gif
【実施例4】
【0089】
上記の本発明による網羅的かつ定量的解析により、重度の絨毛膜羊膜炎(Stage III)を高い精度で予測できる可能性が示唆された。したがって、羊水感染群において特異的に優勢に検出される菌種をマーカーとすれば、重症度の高い絨毛膜羊膜炎を簡便に検出可能性がある。そこで、羊水感染群で特異的に優勢に検出される菌種を検出することにした。
【実施例5】
【0090】
実施例4において、羊水感染群で10%(300リード)以上、コントロール群(Non-C群、Control-AF群、Blank群)では0.5%(15リード)未満のOTUを同定することができ、その菌種を羊水感染群で特異的な細菌組成を引き起こす菌種と同定した。
【実施例5】
【0091】
また、図2は、羊水感染群の18検体における各菌種のリード数を示した。各検体の総リード数は3000リードである。この9菌種が羊水感染群で優勢であることが分かる。
【実施例5】
【0092】
その結果、羊水感染群で特異的な細菌組成を引き起こす9菌種を同定した。
【実施例5】
【0093】
A:ウレアプラズマ・パルブム(Ureaplasma parvum)
B:マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)
C:ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)
D:バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)
F:スネシア・サンギネジェンス(Sneathia sanguinegens)
G:カプノサイトファガ・スプチゲン(Capnocytophaga sputigene)
H:ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)
I:ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)
J:ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)
【実施例6】
【0094】
本実施例では、実施例5において同定した9菌種に特異的なプライマーセットを作製した。16SrRNA遺伝子の標準配列をダウンロードできるRDP(Ribosomal Database Project, http://rdp.cme.msu.edu)より絨毛膜羊膜炎関連微生物と同じ種の16SrRNA遺伝子配列情報を全てFASTA形式でダウンロードした。また、RDPとNCBI (National Center for Biotechnology Information, http://www.ncbi.nlm.nih.gov) から、絨毛膜羊膜炎関連微生物と同じ属の16SrRNA遺伝子配列情報を10菌種20株を上限にFASTA形式でダウンロードした。これらをMEGA(Molecular Evolutionary Genetics Analysis, http://www.megasoftware.net)でマルチプルアライメントし、16SrRNA遺伝子中に種内で共通かつ種間で異なる配列を同定し、絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットを作製した。作製したPCRは、in-silico PCR(http://insilico.ehu.es/PCR/)で確認した。
【実施例6】
【0095】
本実施例で作製したプライマーセットは次のとおりである。
【実施例6】
【0096】
ウレアプラズマ・パルブム(Ureaplasma parvum)のプライマーセット(プライマー名:U_p)(アンプリコンサイズ:652 bp):
フォワードプライマー:ATGTAGAAAGTCGCTCTTTGTG (22 mer)(SEQ ID NO:1);
リバースプライマー:GGCCGACATTTAATGATGATCG (22 mer)(SEQ ID NO:2)
【実施例6】
【0097】
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)のプライマーセット(プライマー名:M_p); (アンプリコンサイズ:543 bp):
フォワードプライマー:TTGGAATACCCATTGGAAACAA (22 mer) (SEQ ID NO:3);
リバースプライマー:CTCTATCTAACTCTAGTTTGCT (22 mer)(SEQ ID NO:4)
【実施例6】
【0098】
ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)のプライマーセット(プライマー名:G_p)(アンプリコンサイズ:464 bp):
フォワードプライマー:CTTGGAAACGGGTGGTAATGCT (22 mer)(SEQ ID NO:5); リバースプライマー:AGACGCGACGAACCGCCTACAA (22 mer) (SEQ ID NO:6)
【実施例6】
【0099】
ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)のプライマーセット(プライマー名:L_p)(アンプリコンサイズ:331 bp):
フォワードプライマー:TAATACCGGATAAAAGCTACTT (22 mer)(SEQ ID NO:7);
リバースプライマー:GTCAAATAAAGGCCAGTTACTA (22 mer)(SEQ ID NO:8)
【実施例6】
【0100】
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)のプライマーセット(プライマー名:H_p)(アンプリコンサイズ:662 bp):
フォワードプライマー:GCATTTCAGACTGGGTAACTA (21 mer)(SEQ ID NO:9);
リバースプライマー:TGAGATTCGCTCCACCTCGCA (21 mer)(SEQ ID NO:10)
【実施例6】
【0101】
スネシア・サンギネジェンス(Sneathia sanguinegens)のプライマーセット(プライマー名:Sn_p)(アンプリコンサイズ:308 bp):
フォワードプライマー:AGGGGACTGAGATACGGCCCTT (22 mer)(SEQ ID NO:11); リバースプライマー:GAGCCACAGGTTTTCACCTTC (21 mer)(SEQ ID NO:12)
【実施例6】
【0102】
カプノサイトファガ・スプチゲン(Capnocytophaga sputigene)のプライマーセット(プライマー名:C_p)(アンプリコンサイズ:441 bp):
フォワードプライマー:GAGCGGCATCGTTTTTATATT (20 mer)(SEQ ID NO:13);
リバースプライマー:AGGCAGTTGCTTAGTTGAGCTA (22 mer)(SEQ ID NO:14)
【実施例6】
【0103】
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)のプライマーセット(プライマー名:B_p)(アンプリコンサイズ:382 bp):
フォワードプライマー:TATCCAACCTGCCCTTTACTCG (22 mer)(SEQ ID NO:15);
リバースプライマー:AATACATACAAAACAGTATACA (22 mer)(SEQ ID NO:16)
【実施例6】
【0104】
ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)のプライマーセット(プライマー名:St_p)(アンプリコンサイズ:275 bp):
フォワードプライマー:AGAAGTGACAGGTGGTGCATGG (22 mer)(SEQ ID NO:17);
リバースプライマー:AATCCGAACTGAGATTGGCTTTA (23 mer)(SEQ ID NO:18)
【実施例7】
【0105】
本実施例で作製した9菌種にそれぞれに特異的なプライマーセットについて、インターナルコントロール(ポジティブコントロール)として、メタ16S解析で使用したプライマー(16Sユニバーサルプライマー)を使用してPCRプライマーの検証実験を行った。PCR増幅法は、実施例1の予備実験により決定したプロトコールに従って行い、増幅産物の有無とサイズを確認した。
【実施例7】
【0106】
その結果、実施例5で同定した9菌種に特異的なプライマーすべてにおいて、感染羊水では想定されるサイズの増幅産物が確認された。一方、非感染羊水と実験ネガティブコントロールでは増幅産物は確認されなかった(図2)。この結果、絨毛膜羊膜炎症例の感染羊水では陽性、反対に非絨毛膜羊膜炎症例の非感染羊水では陰性となることから、羊水で絨毛膜羊膜炎の診断ならびに起因菌の検出できることになり、感染早期に起因菌に有効な抗生物質等の抗菌剤などを投与でき、絨毛膜羊膜炎の早期診断・治療に極めて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、羊水などの被験試料から抽出したDNAを、絨毛膜羊膜炎関連微生物検出用PCRプライマーセットを用いてPCR増幅判定し、絨毛膜羊膜炎関連微生物の細菌叢解析することによって、高い精度で絨毛膜羊膜炎の有無と、その起炎菌を予測できる可能性があり、新たな早産の予防・治療戦略の確立に向けて応用できることが大いに期待できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1