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明細書 :酸化亜鉛薄膜の製造方法及び製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5396579号 (P5396579)
登録日 平成25年11月1日(2013.11.1)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明の名称または考案の名称 酸化亜鉛薄膜の製造方法及び製造装置
国際特許分類 C23C  14/08        (2006.01)
C23C  14/48        (2006.01)
C23C  14/24        (2006.01)
C23C  14/22        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
FI C23C 14/08 C
C23C 14/48 D
C23C 14/24 M
C23C 14/24 S
C23C 14/22 A
H01B 13/00 503B
請求項の数または発明の数 14
全頁数 17
出願番号 特願2007-530913 (P2007-530913)
出願日 平成18年3月16日(2006.3.16)
国際出願番号 PCT/JP2006/305244
国際公開番号 WO2007/020729
国際公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
優先権出願番号 2005237141
優先日 平成17年8月18日(2005.8.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年2月4日(2009.2.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
【識別番号】391017849
【氏名又は名称】山梨県
【識別番号】594109347
【氏名又は名称】株式会社中家製作所
発明者または考案者 【氏名】松本 俊
【氏名】今津 千竹
【氏名】萩原 茂
【氏名】木島 一広
【氏名】阿部 治
【氏名】平木 哲
【氏名】藤川 雄一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100119297、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 正男
審査官 【審査官】鮎沢 輝万
参考文献・文献 特開昭61-132902(JP,A)
特開2003-264201(JP,A)
特開2004-221352(JP,A)
特開2002-050229(JP,A)
特開2003-316276(JP,A)
特開2002-020884(JP,A)
調査した分野 C23C 14/00-14/58
H01B 13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
真空に減圧された成膜室内に配置された基材表面で酸素ラジカルと亜鉛原子とを反応させて酸化亜鉛薄膜を製造する方法において、
少なくとも前記基材の温度を制御し、
酸化亜鉛薄膜の原子配列の規則性を意図的に乱しキャリア発生源とし、前記原子配列の欠陥たる結晶欠陥密度を1×1018個/ cm3から5×1021個/ cm3の範囲とすることで、酸化亜鉛薄膜の抵抗率と、可視光領域での光透過率とが所望の範囲となるように成膜することを特徴とする酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項2】
真空に減圧された成膜室内に配置された基材表面で酸素ラジカルと亜鉛原子とを反応させて酸化亜鉛薄膜を製造する方法において、
前記酸素ラジカル及び/又は前記亜鉛原子の基材表面への供給量を制御し、
酸化亜鉛薄膜の原子配列の規則性を意図的に乱しキャリア発生源とし、前記原子配列の欠陥たる結晶欠陥密度を1×1018個/ cm3から5×1021個/ cm3の範囲とすることで、酸化亜鉛薄膜の抵抗率と、可視光領域での透過率とが所望の範囲となるように成膜することを特徴とする酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記基材表面で酸素ラジカルと亜鉛原子とを反応させて酸化亜鉛薄膜を成膜する際に、前記基材表面にドーパントを供給し酸化亜鉛薄膜を成膜することを特徴とする請求項2に記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項4】
酸化亜鉛薄膜中のドーパントと亜鉛原子との比率が1対10~1対1000の範囲となるように前記ドーパントの供給量を制御することを特徴とする請求項3に記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記基材の温度を400℃以下に保持し成膜することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項6】
酸素ラジカル発生源及び/又は亜鉛原子発生源と基材との距離を調節することにより基材の温度を400℃以下に制御することを特徴とする請求項5に記載の酸化亜鉛薄膜の成膜方法。
【請求項7】
酸素ラジカル発生源及び/又は亜鉛原子発生源と基材との距離は、酸素ラジカルおよび/又は亜鉛原子の平均自由行程以下であり、かつ酸素ラジカル発生源及び亜鉛原子発生源からの輻射熱による影響を所望の温度以下に保持可能な距離であることを特徴とする請求項6に記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記基材はフレキシブル基材であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記フレキシブル基材がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロライト(PVC)、ポリプロピレン(PP)のいずれかであることを特徴とする請求項8に記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項10】
成膜後の熱処理プロセスで修復される前記結晶欠陥密度を加味して成膜の際の結晶欠陥密度を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項11】
真空に減圧された成膜室と、該成膜室内に配置され酸素ラジカルを噴出する微細な孔と容量結合型のリング状電極とを備えた酸素プラズマセルと、前記成膜室内に配置され蒸気の亜鉛原子を生成する亜鉛るつぼと、前記成膜室内に配置され前記酸素ラジカルと前記亜鉛原子との反応により表面に酸化亜鉛薄膜が形成される基材を保持する基材ホルダーとを備えた酸化亜鉛薄膜製造装置において、
前記基材と酸素ラジカル発生源及び/又は亜鉛原子発生源との距離を酸素ラジカルおよび/又は亜鉛原子の平均自由行程以下とし、かつ酸素ラジカル発生源及び/又は亜鉛原子発生源からの輻射熱による影響を400℃以下に保持可能な手段を備えたことを特徴とする酸化亜鉛薄膜製造装置。
【請求項12】
前記基材を400℃以下に制御可能な基材温度制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項11に記載の酸化亜鉛薄膜製造装置。
【請求項13】
ドーパントをドープする手段を更に備えたことを特徴とする請求項11又は12に記載の酸化亜鉛薄膜製造装置。
【請求項14】
前記酸素プラズマセル及び/又は前記亜鉛るつぼは、該酸素プラズマセル又は該亜鉛るつぼからの輻射熱の前記基材への影響を制御するための温度制御板を備えたことを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の酸化亜鉛薄膜製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低温で酸化亜鉛薄膜の製造方法、および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、DVDビデオ、プラズマ表示パネル、有機ELパネルなどの電子部品には透明電極膜が不可欠であるが、この透明電極膜には酸化インジウムスズ膜(Indium Tin Oxide)が広く用いられている。しかし、インジウムは高価のみならず資源枯渇の問題もかかえており、他の材料への転換が急務である。
【0003】
酸化亜鉛は化学的に安定な物質であり古くから使われている無害な物質でもあり、環境負荷が小さいという利点がある。酸化亜鉛の薄膜の主な製造方法としては、スパッタリング法、有機金属化学気相法、スプレー加熱法があげられる。スパッタリング法は最も広く用いられているが、膜の電気抵抗率に不均一がみられ、特に低温成膜時に不均一が著しいという問題がある。
【0004】
有機金属化学気相法は大量の廃ガスが発生し、環境負荷が大きいという問題がある。また、スプレー熱分解法では高品質の膜を得るには550℃程度が必要であり、低温成膜ができないとう問題がある。
【0005】
上記以外の方法で酸化亜鉛薄膜を形成する技術とし、分子ビームエピタキシャル成長法((Molecular Beam Epitaxy, MBE)がある(非特許文献1、非特許文献2参照)。しかし、これらの非特許文献が開示する酸化亜鉛薄膜の形成は、いずれも400℃以上という高温で成膜するものであり、プラスチック等の耐熱性のない材料を基材とする場合には適用できないとう問題がある。また、透明電極膜の電気抵抗率を低減するためには不純物をドープして成膜しなければならないという問題点もある。
【0006】
また、大気圧グロー放電プラズマを利用し酸化亜鉛薄膜を形成する技術が特許文献1、特許文献2により開示されている。しかし、いずれも不活性ガスを用いてプラズマを発生させていること、酸化亜鉛薄膜の抵抗が3MΩ以上であるという問題がある。
【0007】
更に、これらの文献等により開示されている酸化亜鉛薄膜の成膜方法は、真空に減圧された成膜室に設置した基材の温度を400℃以上に加熱し、酸化亜鉛反応を促進させ、成膜しするものである。また、これらの方法では十分な導電率が確保できないことから、不純物を成膜中にドープする必要がある。

【非特許文献1】Plasma assisted MBE growth and characterization of hexagonal ZnO on GaAs(1111), Proceeding of 1stAsia-Pacific Workshop on Widegap Semiconductors,153-156 (2003)
【非特許文献2】MBE growth and optical properties of ZnO on GaAs(1111) substrates, phys. Stat.sol. (b),241,591-594(2004)
【特許文献1】特願2003-89875
【特許文献2】特願2001-271167
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の主な目的は、プラスチック等のフレキシブルな基材表面に透明性が高く、かつ不純物をドープを必須の要件とせずに高導電率の酸化亜鉛薄膜の形成、及びこの薄膜を用いたディスプレイ等を提供することにある。
【0009】
また、この発明の目的は複雑な装置を使わず、高速に上記特性を備えた酸化亜鉛薄膜が成膜可能な酸化亜鉛薄膜製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、長年の研究結果、酸酸素ラジカルと亜鉛原子との反応を低温で行うと、酸化亜鉛の原子配列の規則性が損なわれ、この結果、可視光が格子欠陥部で散乱し、透明性が低下するが、酸化亜鉛の原子配列の規則性が乱れてもその結晶欠陥密度を所定の密度以下に制御することで、可視光領域での透明性を確保できるという、新たな知見を見出した。
【0011】
また、酸化亜鉛薄膜の原子配列の規則性を意図的に乱すことにより、結晶欠陥をキャリア発生源とすることができ、このキャリア発生源から多数のキャリアを発生させることが可能となる。これにより、透明性を確保しつつ、かつ不純物をドーピングせずに高導電率の酸化亜鉛薄膜を成膜することができるという、新たな知見を見出した。
【0012】
本発明は、真空に減圧された成膜室内に配置された基材表面で酸素ラジカルと亜鉛原子とを反応させて酸化亜鉛薄膜を形成する方法において、酸化亜鉛薄膜の原子配列の欠陥たる結晶欠陥密度を基材の温度により制御し、これにより酸化亜鉛薄膜を成膜することを特徴とするものである。ここで結晶欠陥は主に酸素空孔である。結晶欠陥をキャリアの発生源とすることに加え、ドーパントをドープすることで更に酸化亜鉛薄膜の抵抗を下げることができ、ドーパントのドープ量を、酸化亜鉛薄膜中のドーパントと亜鉛原子との比率が1対10~1対1000の範囲となるように制御することが好適である。ドーパントとしてはアルミニウム、ガリウム、インジウム、塩素が好適である。
【0013】
酸化亜鉛薄膜の原子配列の規則性を意図的に乱すには、前記基材の温度を400℃以下で成膜することが好適である。Zn+O*→ZnOで表される酸化亜鉛の成膜反応は後述するとおり発熱反応であることから、事実上は0℃~400℃の範囲で基材の温度を制御することが好適であり、これにより透明性を確保しつつ、かつ導電率の高い酸化亜鉛薄膜を成膜することができる。
【0014】
前記基材の温度制御は、酸素ラジカル発生源と基材との距離、及び/又は亜鉛原子発生源と基材との距離により調節することは好ましい。酸素ラジカル発生源、亜鉛原子発生源からの輻射熱の影響を抑制し、基材温度を制御できる。
【0015】
酸素ラジカル発生源として、酸素を充填した石英管内でプラズマを発生させ、酸素プラズマセルから酸素ラジカルを生成し、かかる酸素ラジカルを基材に供給する酸素プラズマセル方式を用いた場合、石英管の温度は最低でも約350℃以上であり、酸素供給量を増加させるには400℃以上とする必要がある。この結果、輻射熱により基材が条件によっては400℃以上に加熱されてしまう。しかし、酸素プラズマセルと基材との距離を一定距離以上とすれば、酸素プラズマセルからの輻射熱の影響を抑制することができ、基材の温度の上昇を防止することができる。
【0016】
また、基材への亜鉛原子の供給を固体の亜鉛を蒸発させて供給する方式を用いた場合、固体亜鉛を蒸発させる亜鉛るつぼの温度は少なくとも300℃以上に加熱する必要があり、亜鉛原子の供給量を増加させるには400℃以上にする必要がある。この結果、亜鉛るつぼからの輻射熱により基材が条件によっては400℃以上に加熱されてしまう。そこで亜鉛るつぼと基材との離隔を制御することで、亜鉛るつぼからの輻射熱の影響を制御することができる。即ち、酸素プラズマセル及び亜鉛るつぼからの輻射熱による基材への影響を、基材との距離を調整することにより制御することは好適である。
【0017】
基材と酸素ラジカル発生源および亜鉛原子発生源との距離は、酸素ラジカル、亜鉛原子の平均自由行程以下であることは好適である。基材への酸素ラジカル発生源および亜鉛原子発生源からの輻射熱の影響を所望の温度以下に調節できる距離に設定しても、その距離が平均自由行程より長いと、一部の酸素ラジカル及び/又は亜鉛原子が基材に到達する以前にエネルギーを喪失してしまい、基材表面に到着できない。また、到着したとしても基板表面での反応を低下させることとなる。そこで、輻射熱の影響を所望の温度範囲に調節できる距離であり、かつ平均自由行程以下の距離に設定することが好ましい。
【0018】
強制冷却手段により所望の温度に基材の温度を制御することは好適である。例えば基材ホルダーの周囲にパイプを配置し、かかるパイプに水を循環させて基材を冷却し、基材の温度を制御することは好ましい。
【0019】
酸化亜鉛薄膜の原子配列の規則性を意図的に乱すもう一つの方法として、前記酸素ラジカル及び/又は前記亜鉛原子を基材に供給する量を制御し、酸化亜鉛薄膜の原子配列の欠陥たる結晶欠陥密度を制御することが好ましい。基材表面において亜鉛原子の供給量を酸素ラジカルよりも多く供給する、又は酸素ラジカルの供給量を少なく供給することにより、酸素不足の反応となる。これにより、結晶欠陥の濃度を制御することができる。
【0020】
結晶欠陥を1×1018個/ cm3から5×1021個/ cm3に制御することにより、不純物をドープすることなく電気抵抗率は1×10-4Ωcm以下、可視光透過率を80%以上に確保できる。
尚、電磁波シールド材等の高透過率が求められないものは、結晶欠陥密度を5×1021個/ cm3以上とすることにより高導電率の酸化亜鉛薄膜を成膜してもよい。
【0021】
前記酸素ラジカル発生源から供給される酸素ラジカルと前記亜鉛原子発生源から供給される亜鉛原子との前記基材表面で反応する比率を制御することは好適である。基材表面において、Zn(亜鉛原子)+O*(酸素ラジカル)→ZnOの反応が起こる際に、未反応の亜鉛原子が基材に付着すると結晶欠陥(格子欠陥)を引き起こす。亜鉛原子の供給量と酸素ラジカルの供給量との比率を調節することにより、結晶欠陥密度を制御することができる。これにより、不純物をドープしなくても高導電率の酸化亜鉛薄膜を成膜できる。亜鉛原子と酸素ラジカルの供給量の制御は、亜鉛るつぼの温度、酸素プラズマセルの電力制御、あるいは亜鉛るつぼ容量、酸素プラズマセルの容量調整で可能である。
【0022】
酸化亜鉛薄膜の成膜後の熱処理プロセスで修復される結晶欠陥密度を加味して成膜時の結晶欠陥密度を制御することは好適である。
電気・電子機器に使用される透明電極膜は、成膜後、様々な熱処理プロセスを経なければならない場合がある。例えば、プラズマディスプレイに使用される透明電極膜は、銀ペーストを使ったハブ電極の形成過程で、約3時間、500℃の熱処理に晒される。このため、かかる熱処理プロセスにおいて、酸化亜鉛薄膜の結晶欠陥密度が変化(酸素空孔が修復される)してしまう。このため、キャリア発生源が減少し、導電率が低下することになる。そこで、後の熱処理プロセスで修復される結晶欠陥密度(酸素空孔密度)をあらかじめ加味して、酸化亜鉛薄膜を成膜することにより、最終的に所望の導電率と透過率とを備えた酸化亜鉛薄膜を形成することができる。
【0023】
本発明は、真空に減圧された成膜室と、該成膜室内に配置され酸素ラジカルを噴出する微細な孔を備えた酸素プラズマセルと、前記成膜室内に配置され蒸気の亜鉛原子を生成する亜鉛るつぼと、前記成膜室内に配置され前記酸素ラジカルと前記亜鉛原子との反応により表面に酸化亜鉛薄膜が形成される基材を保持する基材ホルダーとを備えた酸化亜鉛薄膜製造装置において、
前記基材と酸素ラジカル発生源及び/又は亜鉛原子発生源との距離を酸素ラジカルおよび/又は亜鉛原子の平均自由行程以下とし、かつ酸素ラジカル発生源及び/又は亜鉛原子発生源からの輻射熱による影響を400℃以下に保持可能な手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
前記基材ホルダーの温度を400℃以下に制御する温度制御手段を備えたことを特徴とする。基材ホルダーに温度制御手段を備えさせることにより、基材の温度を自由かつ容易に制御でき、これにより酸化亜鉛薄膜の反応速度を調整することができる。この結果、供給される酸素ラジカル及び亜鉛原子と、未反応のまま残る亜鉛原子に起因する格子欠陥を生成せしめ、格子欠陥の密度を制御することができる。
【0025】
上記酸化亜鉛薄膜製造装置は、ドーピング物質をドープする手段を備えることは好適である。酸化亜鉛薄膜を成膜しているときに不純物、例えばアルミニウム、ガリウム、インジウム、塩素等をドープすることにより電気抵抗率を更に低下させることができる。
【0026】
前記酸素プラズマセル及び/又は前記亜鉛るつぼは、該酸素プラズマセル又は該亜鉛るつぼからの輻射熱の前記基材への影響を制御するための輻射板を備えることは好ましい。
前記酸素プラズマセルは、容量結合型のリング状電極であることは好ましい。容量結合型のリング状電極を用いれば、ICP(Inductive coupling plasma)よりもプラズマの発生を容易にすることができる。また、例えば、酸素プラズマセルの外側にリング状の電極を設ければ、プラズマの発生強度の調整、およびメンテナンスが容易となり好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、プラスチック等のフレキシブルな基材表面に透明かつ、不純物のドープを必須の要件とせずに透過率が高く、かつ高導電率の酸化亜鉛薄膜を形成することができる。また、複雑な装置を使わず、高速に酸化亜鉛薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】酸化亜鉛薄膜の製造装置の全体的な構成を示した図である。
【図2】酸素プラズマセルの詳細図である
【図3】成膜室を中心とした酸化亜鉛薄膜製造装置の詳細図である。
【図4】実施例1で試作した酸素プラズマセルの外観図である。
【図5】リング状放電電極間の距離を変化させたときの電位分布状況をシミュレーションした図である。
【図6】酸素プラズマセルの容量結合型放電電極に高周波電力(13.56MHz、上部電極に+500V、下部電極に-500V)を供給して発生したプラズマの発光スペクトルの特性を示したグラフである。
【図7】透明基材として広く用いられているガラス基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。
【図8】成膜温度と抵抗率、及びキャリア密度の関係を示した図である。
【図9】縦軸に抵抗率、キャリア密度と、X線励起光電子分光装置で測定した酸素と結合していない亜鉛原子同士の結合数(単位は無名数)との関係を示した図である。
【図10】PET(ポリエチレンテレフタレート)基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。
【図11】PC(ポリカーボネート)基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。
【図12】PVC(ポリビニルクロライト)基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。
【図13】PP(ポロプロピレン)基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。
【図14】ガリウムをドーパントとし形成した酸化亜鉛薄膜のガリウム/亜鉛の供給比と抵抗率等の関係を示したグラフである。
【図15】ガリウム/亜鉛供給比とキャリア密度等との関係を示したグラフである。
【図16】ガラスおよびポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)を基板とし用い、基板の温度を低温(90℃)にし、ガリウムをドーパントとし形成した酸化亜鉛薄膜のガリウム/亜鉛の供給比と抵抗率等の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0029】
1 酸化亜鉛成膜装置
1A 成膜室基材
10 基材ホルダー
11 酸素プラズマセル
12 亜鉛るつぼ
13 ドーパント用るつぼ
14 冷却機構
15 基材上下機構
16 基材回転機構
111 石英管
112 リング状放電電極
113 細孔
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。図1は、酸化亜鉛薄膜の製造装置の全体的な構成を示した図である。
酸化亜鉛薄膜製造装置1は、基本的には成膜室1A、基材ホルダー10、酸素プラズマセル11、亜鉛るつぼ12から構成される。酸化亜鉛薄膜の導電性をより向上させたい場合は、ドーパント(不純物)、例えばアルミニウム、ガリウム、インジウム、塩素等をドーパント用るつぼ13に入れて、酸化亜鉛薄膜を成膜する際に蒸発させドープする。
【0031】
成膜室1Aは真空ポンプにより真空状態に保持する。成膜室の真空度は、理想的には超真空(10-10トール)であるが、真空度を高くするに比例して装置のコストが高くなるという問題がある。このため真空度は酸素ラジカルおよび亜鉛原子の平均自由行程と、酸素プラズマセル11および亜鉛るつぼ12と基材101との距離との関係で決定すればよい。本実施の形態では10-5トール以下とした。詳細については後述する。
【0032】
酸素プラズマセル11に酸素ガスを酸素ガスボンベ20から200トール前後の圧力で流量制御器を介して送る。酸素プラズマセル11内のプラズマ空間1A内は、高周波電源から供給されるエネルギーによりグロー放電状態となる。プラズマ空間1Aでは、酸素ガスボンベ20から供給される酸素ガスが酸素プラズマ中で生成された酸素ラジカル(O*)や酸素イオン(O+)となり、噴出口に設けられた細孔を通過するときに、酸素イオン(O+)は酸素ラジカル(O*)、酸素ラジカル(O*)は酸素ラジカルのまま基材101方向に噴出する。なお、プラズマ空間1A内の真空度は、基本的にはパッシェンの法則に従い決定すれば良いが、10-2~10-3トール程度が適当である。
【0033】
図2は酸素プラズマセル11の詳細図である。酸素ラジカルを発生させるには、酸素プラズマセル11内を1mm~100mmトール程度の真空度に保持し、ここに酸素ガスを酸素ガスボンベ20から送り込み、酸素を充填する。高周波電源によりリング状電極112間に高電圧を印加し、プラズマ空間1Aに酸素プラズマを発生させる。そこで発生した酸素プラズマを酸素プラズマセル11の上部に設けた微細な孔から酸素ラジカルとして噴出させる。酸素プラズマセル11が石英管であることは好ましいが、プラズマの発生により不純物が溶出しない材料であればこれに限定されるものではない。
【0034】
図2(a)において、酸素プラズマセル11の外周にはリング状電極112が配置されている。ここに例えば13.56MHz、電位差1000Vを印加することにより石英管内111にグロー放電を発生させプラズマ状態つくる。グロー放電電極を石英管111の外周にリング形状に設置することにより、電極間に高電圧を容易に印加することができるとともに、プラズマ空間内の電界が均一にできるという特徴がある。更に、外部に放電電極を取り付けることから、その操作やメンテナンスが容易であるという特徴もある。
【0035】
従来、プラズマを発生させるための電極としてはICP(Induction Coupling Plasma)が一般的に用いられているが、リング状電極を用いることにより、ICPよりも少ない酸素ガスでプラズマを容易に発生させることができる。
【0036】
リング状電極112間に13.56MHzで1000V程度の高電圧を印加するとグロー放電が開始する。リング状放電極112間はグロー放電により、プラズマ空間内の酸素ガスは、酸素イオン、基底状態の酸素原子、励起状態の酸素原子、電子等(O+,O++,O,O*,e-等)のプラズマ状態となり、プラズマ空間内から真空度の高い成膜室1Aに向かって細孔113から酸素ラジカルが噴出する。
【0037】
図2(b)は酸素プラズマセル11の酸素ラジカル噴出面を図示したものである。酸素イオン(O+,O++)は細孔113を通過するときにイオン状態からラジカル状態に遷移するエネルギーを放出し、酸素ラジカル(O*)となり成膜室内に噴出する。細孔113は酸素プラズマセルから成膜室に均等の酸素ラジカルが放出されるように複数設けることが好ましく、細孔の直径は0.2mm程度が好ましい。
【0038】
図3は図1の酸化亜鉛薄膜製造装置のドーパンとるつぼ13がなく、酸素プラズマセル11と亜鉛るつぼ12とを左右に配置した酸化亜鉛薄膜製造装置である。亜鉛るつぼ12の固体亜鉛は高温(300℃~350℃)に加熱され、蒸気亜鉛(亜鉛原子)となり基材ホルダー10に保持された基材101(例えばプラスチック基材)に向かって蒸発していく。亜鉛るつぼの材質は高温で溶融しないものであれば特に材質は限定されないが、熱伝導性がよいこと等を考慮すると、石英ガラスやセラミックスで内面を覆ったモリブデン製の円筒形のものは好ましい。
【0039】
亜鉛るつぼ12から蒸発した亜鉛原子(Zn)と酸素プラズマセル11から噴出する酸素ラジカル(O*)は基材101上において、Zn+O*→ZnOの反応を起こすが、この反応は発熱反応である。これは亜鉛原子と酸素原子から酸化亜鉛を作るときの生成エンタルピーは、-3.16eV/ZnOであるから、2Zn+O2→2Zn+6.32eVの化学反応式が成立する。酸素分子1個を酸素原子2個に分解するのに必要な解離エネルギー1.4eVであるから、O2+1.4eV→2Oとなる。
【0040】
亜鉛原子と酸素原子を反応させてZnOを作るには上記2式をたしあわせて、2Zn+2O→2ZnO+7.72eVとなり、この結果、Zn+O→ZnO+3.86eVの発熱反応式が成立するためである。これにより、従来、基材を400℃以上に加熱し酸化亜鉛薄膜を成膜してきたが、原理的には基材の加熱がなくても酸化亜鉛薄膜は成膜できることをはじめて実証した。プラスチックのようなフレキシブルな基材に酸化亜鉛薄膜を成膜しようとした場合には、基材の温度をその材料の軟化点温度以下に保持すればよい。
【0041】
基材の温度を所望の温度以下に保持するには次の点について考慮する必要がある。1つは、亜鉛原子を蒸発させるため、亜鉛るつぼ12を350℃以上に加熱する必要があり、ここからの輻射熱による基材の温度上昇を制御することである。もう1つは、酸素プラズマセル11からの輻射熱により基材101の温度上昇を制御することである。これらを制御するには、輻射熱により基材が所望の温度以上にならないように、酸素プラズマセル11と基材との距離(X)及び亜鉛るつぼ12と基材との距離(Y)を基材上下機構15により調整すればよい。
【0042】
一方において、酸素ラジカルと亜鉛原子とが基材に到達するまえに成膜室内の不純物と衝突しないようにする必要がある。このためには、距離(X)及び距離(Y)がともに、酸素ラジカル、亜鉛原子の平均自由行程以下である必要がある。
【0043】
平均自由行程は成膜室の真空度との関係において決定されるものであるから、成膜装置のコストや一回の処理により成膜しようとする面積等を勘案する必要がある。上記の2つの条件を満たすように距離(X)及び距離(Y)を決定することにより、基材の温度を制御することができる。かかる制御手段か基材ホルダーの上下をおこなう機構が、基材上下機構15である。
【0044】
なお、亜鉛るつぼ12の輻射熱の影響を少なくするには輻射熱の影響を制御する温度制御板を取り付けてもよく、この場合、温度制御板の材料はステンレスであってもよい。また、輻射熱による基材温度の上昇防止手段として、基材ホルダー10を強制的に冷却する冷却機構14を設けることは好適である。
【0045】
基材101に到達した亜鉛原子と酸素ラジカルとは、基材101の表面において二次元的に拡散するなかで、上述した亜鉛原子と酸素ラジカルとの反応により酸化亜鉛薄膜を形成する。酸化亜鉛薄膜の形成プロセスは、先ず酸化亜鉛の結晶が小さなアイランドをつくり、このアイランドを核にして結晶が徐々に成長し、酸化亜鉛薄膜を形成していくものと考えられる。
【0046】
基材が単結晶、例えばガリウム砒素(GaAs)の場合は、基材の原子配列に酸化亜鉛の結晶方向が影響を受け、その結果基材の結晶方向にそって酸化亜鉛の結晶が成長する。しかし、基材がプラスチック等の場合は、基材上に点在して発生したアイランドの結晶方向がそれぞれ異なるため、多結晶の酸化亜鉛膜が形成されると考えられる。なお、できるだけ均一な酸化亜鉛薄膜を形成するには、基材回転機構16により基材101を回転させながら成膜することが好ましい。
【実施例1】
【0047】
(酸素プラズマセル)
図4は試作した酸素プラズマセルの外観図である。この酸素プラズマセルは、高さが300mm、内径26mm、外径30mm、肉厚2mmの石英管からなり、上部には酸素プラズマを噴出する直径0.2mmの21ヶの細孔を設けた酸素ラジカル噴出用細孔113が備えられている。
【0048】
図5はリング状放電電極間の距離を変化させたときの電界強度分布及び電位分布状況のシミュレーション図である。なお、シミュレーションに用いた物性値は酸素の比誘電率=1.0005、石英の比誘電率=3.8、損失正接=0.0001、銅の電気抵抗率=1.55×10-8Ωcmであり、リング状電極112間には735Vの電位差がある。
【0049】
セルの中心軸に沿った電位と電界強度は図5(a)、(b)に示す通りであり、電極間の距離30mmのとき、最大電界強度241V/cmに達する。この結果、上述したサイズの酸素プラズマセルではリング状電極112間の距離は30mm程度が好ましいことが判明したことから、試作機の放電電極間距離を30mmとした。
【0050】
図6は図4に示す酸素プラズマセルの容量結合型グロー放電電極に高周波電力(13.56MHz、上部電極と下部電極の電位差が1500V(50W))を供給して発生したプラズマの発光スペクトルの特性を示したグラフである。このときの成膜室の真空度は10-6トールである。図6に示すように777nmと844 nmに強いスペクトルが観察され、酸素ラジカルの発生が確認できた。
【実施例2】
【0051】
(ガラス基材上への酸化亜鉛薄膜の成膜)
図7は透明基材として広く用いられているガラス基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。基材の温度を420℃、300℃、150℃、100℃、80℃、60℃、40℃に変化させて成膜した。図7(a)は各温度毎の成膜状況の写真である。図中の右上部の数値が成膜温度と膜厚を示す。いずれの温度で成膜しても十分な透過性を示していることが確認された。
【0052】
図7(b)は成膜温度毎の光透過スペクトルを示したグラフである。可視光領域(380nm~770nm)において、いずれの温度で成膜しても80~90%以上の透過率であることが確認できた。
【0053】
図7(c)は酸化亜鉛薄膜のX線回折スペクトルを示したグラフであるが、図7(c)に示す通り、形成された薄膜は2θ=34.5度付近においてZnO(0002)回折ピークが認められ、薄膜が酸化亜鉛であることが確認できた。
【0054】
図8は成膜温度と抵抗率、及びキャリア密度の関係を示した図である。図8(a)から、成膜温度が低下すると抵抗率は減少すること、図8(b)から成膜温度が低下するとキャリア密度が増加することが分かる。以上のことから100℃以下の成膜温度で1×10-3Ωcm以下の低効率を得るには1×1020個/cm3 ~5×1021個/cm3のキャリア濃度が必要であるとの結果を得た。
【0055】
酸化亜鉛の結晶中で亜鉛原子と酸素原子は1対1の割合で結合する。この割合がずれると欠陥が発生する。亜鉛過剰(酸素不足)状態で発生する欠陥はキャリアの供給源として働くので、導電膜にとってはむしろ好ましいものである。
【0056】
図9は縦軸に抵抗率、キャリア密度と、横軸のX線励起光電子分光装置で測定した酸素と結合していない亜鉛原子同士の結合数(単位は無名数)との関係を示した図である。図9(b)から格子欠陥が増加するとキャリア密度が増大することが分かる。また、図9(a)から格子欠陥が多くなると抵抗率が減少することがわかる。
【0057】
以上のことから低温で成膜されたZnO結晶には酸素不足に起因する欠陥が多数存在し、その欠陥がキャリアを供給し、ZnO膜の抵抗を下げていると考えられる。一方において、ここで例示した成膜条件で発生する欠陥の密度は可視光の透過率を悪化させるほど多くはなく、成膜時に基材表面に供給する亜鉛原子と酸素ラジカルの比を調整することで、可視光の透過率を高く保持したままで抵抗率をさらに低下させることが可能であることがわかった。
【実施例3】
【0058】
(PET基材上への酸化亜鉛薄膜の成膜)
図10はPET(ポリエチレンテレフタレート)基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。基材の温度を50℃に設定し成膜し膜厚550nmの酸化亜鉛薄膜を形成した。図10(a)は成膜後の写真であり、図に示すとおり十分な透過性を示している。
【0059】
図10(b)は光透過スペクトルを示したグラフであり、可視光領域において、80%以上であることが確認できた。図10(c)は酸化亜鉛薄膜のX線回折スペクトルを示したグラフであるが、図10(c)に示す通り、形成された薄膜は2θ=34.5度付近においてZnO(0002)回折ピークが認められ、薄膜が酸化亜鉛であることが確認できた。
【実施例4】
【0060】
(PC基材上への酸化亜鉛薄膜の成膜)
図11はPC(ポリカーボネート)基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。基材の温度を60℃に設定し成膜し膜厚910nmの酸化亜鉛薄膜を形成した。図11(a)は成膜後の写真であり、図に示すとおり十分な透過性を示している。
【0061】
図11(b)は光透過スペクトルを示したグラフであり、可視光領域において、60%~80%以上であることが確認できた。400nm前後で透過率の低いのは膜厚に一因であると考えられ、これの半分程度により80%以上の透過率が確保できるものと思われる。図11(c)は酸化亜鉛薄膜のX線回折スペクトルを示したグラフであるが、図11(c)に示す通り、形成された薄膜は2θ=34.5度付近においてZnO(0002)回折ピークが認められ、薄膜が酸化亜鉛であることが確認できた。
【実施例5】
【0062】
(PVC基材上への酸化亜鉛薄膜の成膜)
図12はPVC(ポリビニルクロライト)基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。基材の温度を50℃、60℃、70℃に設定し成膜した。図12(a)に示すとおり、いずれも温度で成膜しても良好な透過性を確保することができた。
【0063】
また、図12(b)は酸化亜鉛薄膜のX線回折スペクトルを示したグラフであるが、図12(b)に示す通り、形成された薄膜は2θ=34.5度付近においてZnO(0002)回折ピークが認められ、薄膜が酸化亜鉛であることが確認できた。
【実施例6】
【0064】
(PP基材上への酸化亜鉛薄膜の成膜)
図13はPP(ポロプロピレン)基材上に成膜した酸化亜鉛薄膜の特性を示した図である。基材の温度を50℃に設定し成膜した。図13(a)に示すとおり、酸化亜鉛薄膜を成膜したPP基材(上方写真)をPP単体(下方写真)と比べてみても、透過性に大差が無いことがわかる。したがって、基材の温度を50℃に設定して成膜しても良好な透過性を確保することが確認できた。
【0065】
また、図13(b)は酸化亜鉛薄膜のX線回折スペクトルを示したグラフであるが、図13(b)に示す通り、形成された薄膜は2θ=34.5度付近においてZnO(0002)回折ピークが認められ、薄膜が酸化亜鉛であることが確認できた。
【実施例7】
【0066】
(ドーパント(ガリウム)をドープした酸化亜鉛薄膜の成膜)
図14はガリウムをドーパントとし成膜した酸化亜鉛薄膜のガリウム/亜鉛の供給比と抵抗率等の関係を示したグラフである。図14 (a)は酸化亜鉛薄膜の成膜の際、ドーパント用るつぼ13にドーパントとしてガリウムを入れ、ドーパント用るつぼ13の温度を制御することによりガリウム温度を730℃~800℃に調整し、これにより亜鉛とガリウム供給比を変化させたときのガリウム/亜鉛供給比と抵抗率の関係を示したグラフである。なお、このときの基板温度は290℃、亜鉛温度は385℃、高周波電力は150Wである。
【0067】
図14(a)に示すように、ガリウム/亜鉛供給比が10-1%前後のときに抵抗率の低い酸化亜鉛薄膜を形成することができた。このときの酸化亜鉛薄膜中のガリウム原子数は次のようになる。酸化亜鉛(ZnO)1cm-3あたり、亜鉛(Zn)=4×1022個でありる。ガリウム(Ga)の供給量を亜鉛の0.1%で供給すると、酸化亜鉛の密度は、5.47g/cm3であり、亜鉛原子量=65.39、酸素原子量=15.99、ガリウムの原子量=69.72であるから、65.39:15.99=Mzn:(5.47-=Mzn)となり、これから、Mzn =4.4gとなる。以上から、亜鉛の原子数=4.4×(6×1023)=4×1022個/cm3、となる。ガリウムの重さは、MGa=4.4×10-3であるから、ガリウムの原子数=(4.4×10-3)×(6×1023)/69.72=4×1019個/ cm3、となる。
【0068】
図15はガリウム/亜鉛供給比とキャリア密度等との関係を示したグラフである。図15(a)において、キャリア1個がガリウム原子1個から発生すると考えれば、移動度が最大となるガリウム/亜鉛供給比におけるキャリア密度から、酸化亜鉛薄膜中のガリウムは3×1020個/cm3となる。これは、ガリウムの基板における付着率が亜鉛に対して約10倍高いことに起因するものと考えら得る。従って、ドーパントと亜鉛の酸化薄膜中の比率が、1:100前後のときに最も抵抗率の低い酸化亜鉛薄膜が成膜できる。
【0069】
図14(b)はガリウムと亜鉛の供給比を変化させて形成した酸化亜鉛薄膜の波長と透過率の関係を示したグラフである。Ga/Znの供給比を0%~0.1%の範囲で変化させたが、どの供給比であっても、可視光領域においてほぼ同等の透過率が得られた。
【0070】
図14(c)は赤外領域の透過率を示したグラフである。図に示すとおり、ガリウムと亜鉛の供給比を0.1%の場合、1.5μm以上の波長を透過させず、0.05%の場合には1.7μm以上お波長を透過させないことがわかった。このことは、この酸化亜鉛薄膜を用いることにより、赤外線をカットする透明なシートを作成できることであり、例えば、窓ガラスにこの方法により作成した酸化亜鉛薄膜シートを貼附することにより、外部からの熱を遮断することが可能となる。
【0071】
図15は基板としてガラスおよびポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)を用い、基板温度を低温(90℃)状態とし、ガリウムをドーパントとし形成した酸化亜鉛薄膜のガリウム/亜鉛の供給比と抵抗率等の関係を示したグラフである。図15(a)に示すようにガリウムと亜鉛の供給比が10-1 %付近で、PET、PCを基板とし形成した酸化亜鉛薄膜の抵抗率が最も低くなった。また、図15(b),(c)はガラス基板上に低温(90℃)で同様にして形成した酸化亜鉛薄膜の透過率を示したグラフである。図15(b)に示すように可視光領域において良好な透過率を得ることができた。また、赤外線領域においては、2.5μm以上の領域で赤外線を遮断することがわかった。
【0072】
図16はガラスおよびポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)を基板として用い、基板の温度を低温(90℃)状態とし、ガリウムをドーパントとし形成した酸化亜鉛薄膜のガリウム/亜鉛の供給比と抵抗率の関係等を示したグラフである。ガリウムと亜鉛の供給比が10-1 %のとき最も低い抵抗率を示した(図16(a))。また、ガリウム/亜鉛(Ga/Zn)の供給比を例えば0.5%とすると、400nm以下の波長においても一定以上の透過率を確保できること、供給比を増加することにより、より低い波長領域で一定の透過率を確保できることがわかった。(図16(b))。更に、結晶欠陥密度を9×1020以上にすることにより、2μm以上の光を遮断できることがわかった。
【0073】
本明細書は、2005年8月18日出願の特願2005-237141に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、プラスチック等のフレキシブル上に抵抗率が低く、可視光領域の透明性も高い酸化亜鉛薄膜を成膜することができる。これにより、従来デジタルカメラ、DVDビデオ、プラズマ表示パネル、有機ELパネルなどの電子部品に使われている酸化インジウムスズ膜(ITO)を酸化亜鉛薄膜に代替することが可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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