TOP > 国内特許検索 > ジチオカルバミン酸基を有する金属吸着材とその製造方法及び金属抽出方法 > 明細書

明細書 :ジチオカルバミン酸基を有する金属吸着材とその製造方法及び金属抽出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-082003 (P2020-082003A)
公開日 令和2年6月4日(2020.6.4)
発明の名称または考案の名称 ジチオカルバミン酸基を有する金属吸着材とその製造方法及び金属抽出方法
国際特許分類 B01J  20/26        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
C02F   1/42        (2006.01)
B01J  45/00        (2006.01)
C08F 255/02        (2006.01)
C22B   3/24        (2006.01)
FI B01J 20/26 E
B01J 20/30
C02F 1/28 B
C02F 1/42 H
B01J 45/00
C08F 255/02
C22B 3/24 101
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2018-223025 (P2018-223025)
出願日 平成30年11月29日(2018.11.29)
発明者または考案者 【氏名】植木 悠二
【氏名】瀬古 典明
出願人 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110002826、【氏名又は名称】特許業務法人雄渾
審査請求 未請求
テーマコード 4D025
4D624
4G066
4J026
4K001
Fターム 4D025AA01
4D025AA09
4D025AB19
4D025AB21
4D025AB22
4D025AB23
4D025AB28
4D025BA17
4D624AA04
4D624AA05
4D624AB15
4D624AB16
4D624BA18
4D624BC01
4G066AA13D
4G066AA45A
4G066AB05D
4G066AB06D
4G066AB10D
4G066AB12B
4G066AB12D
4G066AB15B
4G066AC14B
4G066AC17B
4G066AC31B
4G066AC33B
4G066AC37B
4G066BA36
4G066CA45
4G066CA46
4G066CA49
4G066CA50
4G066DA01
4G066DA07
4G066DA08
4G066FA03
4G066FA07
4G066FA11
4G066FA21
4G066FA31
4G066FA38
4J026AA02
4J026AA03
4J026AA04
4J026AA11
4J026AA12
4J026AA13
4J026AA17
4J026AA43
4J026AA68
4J026AA69
4J026AB07
4J026AB17
4J026AB22
4J026AB26
4J026AB28
4J026AB34
4J026AB41
4J026BA08
4J026BA30
4J026BB01
4J026DB06
4J026DB07
4J026EA03
4J026EA09
4J026FA08
4J026GA08
4K001AA01
4K001AA03
4K001AA04
4K001AA06
4K001AA07
4K001AA08
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA16
4K001AA17
4K001AA19
4K001AA20
4K001AA22
4K001AA27
4K001AA29
4K001AA30
4K001AA31
4K001AA32
4K001AA33
4K001AA36
4K001AA38
4K001AA41
4K001AA42
4K001DB36
要約 【課題】本発明の課題は、重金属等の金属の吸着性能に優れ、かつ特別な分離工程を必要とせずに回収可能な金属吸着材を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、高分子基材にジチオカルバミン酸基が導入されている金属吸着材であって、前記ジチオカルバミン酸基はグラフト重合体及びジチオカルバミン酸基導入基を介して導入されていることを特徴とする、金属吸着材を提供する。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子基材にジチオカルバミン酸基が導入されている金属吸着材であって、前記ジチオカルバミン酸基は、グラフト重合体及びジチオカルバミン酸基導入基を介して導入されていることを特徴とする、金属吸着材。
【請求項2】
前記ジチオカルバミン酸基導入基とジチオカルバミン酸基部分の構造は、下記式(1)で表される構造であることを特徴とする、請求項1に記載の金属吸着材。
【化1】
JP2020082003A_000010t.gif
(式(1)中、Xは、酸素原子又は窒素原子であり、n及びmは、アルキレン鎖の炭素原子数を表し、nは2以上の整数であり、mは0以上の整数である。Xが酸素原子である場合は、mは0である。また、mが0の場合は、窒素原子には水素原子が1つ置換されている。)
【請求項3】
前記グラフト重合体は、(メタ)アクリル重合体、スチレン重合体、(メタ)アクリル-スチレン共重合体から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属吸着材。
【請求項4】
下記の工程を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属吸着材を製造する方法。
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-1)前記高分子基材に対して、モノマーをグラフト重合させる工程
(iii-1)グラフト重合体に保護基を有するジチオカルバミン酸基導入化合物を反応させ、グラフト重合体に保護基を有するジチオカルバミン酸基導入基を結合させる工程
(iv)グラフト重合体に結合したジチオカルバミン酸基導入基から保護基を脱保護する工程
(v)ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程
【請求項5】
下記の工程を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属吸着材を製造する方法。
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-1)前記高分子基材に対して、モノマーをグラフト重合させる工程
(iii-2)グラフト重合体にジチオカルバミン酸基導入化合物を反応させ、グラフト重合体にジチオカルバミン酸基導入基を結合させる工程
(v)ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程
【請求項6】
下記の工程を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属吸着材を製造する方法。
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-2)前記高分子基材に対して、ジチオカルバミン酸基導入基を有するモノマーをグラフト重合させる工程
(v)ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程
【請求項7】
前記活性化した高分子基材は、放射線を照射して活性化した高分子基材であることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の金属吸着材を製造する方法。
【請求項8】
金属を含む被処理体から、前記金属を抽出する金属抽出方法において、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属吸着材と前記被処理体を接触させる工程を含むことを特徴とする、金属抽出方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ジチオカルバミン酸基を有する金属吸着材とその製造方法に関する。更に、本発明は、ジチオカルバミン酸基を有する金属吸着材を用いた金属抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場排水等の溶液には、多数の重金属が含まれることがあり、それらの重金属が体内に蓄積されると、その毒性により中毒症状を引き起こすことが知られている。それら重金属を河川等の環境中に放出しないために、前記工場排水等の溶液はイオン交換樹脂に代表される吸着剤により処理されている。
一方、河川や海水等の水中には、レアメタル等の金属資源が溶解しており、資源の少ない我が国としては、より選択的に、又は、より効率的にそれらから金属資源を回収することができる金属吸着材等を必要としている。
【0003】
代表的な金属吸着材として、ジチオカルバミン酸又はその塩は、硫黄原子を金属配位原子として有していることから、重金属に対するキレート能力が高く、窒素原子や酸素原子を金属配位原子とする官能基と比べて重金属に対する選択性に優れていることが知られている。例えば、特許文献1~2には、ジチオカルバミン酸基含有化合物からなる重金属固定化剤が開示されている。しかしながら、これらの重金属固定化剤は、低分子化合物であり、溶液に溶解して金属を吸着させるものであるため、吸着後に系中から分離を行うためには複雑な分離工程が必要であること、重金属を回収して再資源化することが困難である等の問題を有していた。
【0004】
一方、上記問題を解決するために、高分子化合物に金属吸着能を付与させて金属吸着材とすることが知られており、例えば、特許文献3には、有機高分子繊維基材にイオン交換基及び/又はキレート基が導入されているフィルターカートリッジが開示されている。さらに、特許文献4には、セルロース系基材に、キレート形成基及び/又はイオン交換基が導入された吸着材が開示されている。そして、両者には、キレート基又はキレート形成基としてジチオカルバミン酸基が例示されているが、実際に合成されたこと、又は、どのように合成できるのか等、その具体的な化合物については何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平8-224560号公報
【特許文献2】特開2004-352964号公報
【特許文献3】特開2003-251118号公報
【特許文献4】特開2009-13204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ジチオカルバミン酸又はその塩は、重金属に対して優れた金属吸着能を有しているところ、これまで低分子化合物としての金属吸着剤は得られているものの、分離、回収が簡便である高分子化合物に導入したものは実際得られていなかった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、重金属等の金属の吸着性能に優れ、かつ特別な分離工程を必要とせずに回収可能な金属吸着材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、高分子基材にジチオカルバミン酸基を導入するにあたり、グラフト重合体及びジチオカルバミン酸基導入基を介して導入することにより、高分子基材にジチオカルバミン酸基を導入した金属吸着材が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の金属吸着材、金属吸着材を製造する方法及び金属抽出方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の金属吸着材は、高分子基材にジチオカルバミン酸基が導入されている金属吸着材であって、前記ジチオカルバミン酸基はグラフト重合体及びジチオカルバミン酸基導入基を介して導入されていることを特徴とする。
この特徴によれば、ジチオカルバミン酸基を含有し、重金属等の金属の吸着性能に優れ、かつ特別な分離工程を必要とせずに回収可能な金属吸着材を提供することができる。
【0010】
また、本発明の金属吸着材の一実施態様としては、前記ジチオカルバミン酸基導入基とジチオカルバミン酸基部分の構造は、下記式(1)で表される構造であることを特徴とする。
【化1】
JP2020082003A_000003t.gif
(式(1)中、Xは、酸素原子又は窒素原子であり、n及びmは、アルキレン鎖の炭素原子数を表し、nは2以上の整数であり、mは0以上の整数である。Xが酸素原子である場合は、mは0である。また、mが0の場合は、窒素原子には水素原子が1つ置換されている。)
この特徴によれば、吸着対象の金属に合わせて、ジチオカルバミン酸基導入基の長さ等を設定することができる。
【0011】
また、本発明の金属吸着材の一実施態様としては、前記グラフト重合体は、(メタ)アクリル重合体、スチレン重合体、(メタ)アクリル-スチレン共重合体から選択される1種以上であることを特徴とする。
この特徴によれば、重合体のグラフト率によって、ジチオカルバミン酸基の導入量(ジチオカルバミン酸基密度)を制御することができる。
【0012】
本発明の金属吸着材を製造する方法は、下記の工程を備えることを特徴とする。
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-1)前記高分子基材に対して、モノマーをグラフト重合させる工程
(iii-1)グラフト重合体に保護基を有するジチオカルバミン酸基導入化合物を反応させ、グラフト重合体に保護基を有するジチオカルバミン酸基導入基を結合させる工程
(iv)グラフト重合体に結合したジチオカルバミン酸基導入基から保護基を脱保護する工程
(v)ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程
この特徴によれば、高分子基材にジチオカルバミン酸基を効率的に導入することができる。さらに、ジチオカルバミン酸基の導入量を向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明の金属吸着材を製造する方法は、下記の工程を備えることを特徴とする。
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-1)前記高分子基材に対して、モノマーをグラフト重合させる工程
(iii-2)グラフト重合体にジチオカルバミン酸基導入化合物を反応させ、グラフト重合体にジチオカルバミン酸基導入基を結合させる工程
(v)ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程
この特徴によれば、高分子基材にジチオカルバミン酸基を導入することができる。
【0014】
さらに、本発明の金属吸着材を製造する方法は、下記の工程を備えることを特徴とする。
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-2)前記高分子基材に対して、ジチオカルバミン酸基導入基を有するモノマーをグラフト重合させる工程
(v)ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程
この特徴によれば、高分子基材にジチオカルバミン酸基を簡単かつ効率的に導入することができる。
【0015】
また、本発明の金属吸着材を製造する方法の一実施態様としては、前記活性化した高分子基材は、放射線を照射して活性化した高分子基材であることを特徴とする。
この特徴によれば、高分子基材の形態が限定されず、繊維、織布、不織布、シート、フィルム等の高分子基材に対して、ジチオカルバミン酸基を導入することができる。
【0016】
本発明の金属を含む被処理体から、前記金属を抽出する金属抽出方法は、金属吸着材と前記被処理体を接触させる工程を含むことを特徴とする。
この特徴によれば、吸着後に系中から金属を吸着した金属吸着材の分離を行うための複雑な分離工程を必要としない金属抽出方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、重金属等の金属の吸着性能に優れ、かつ特別な分離工程を必要とせずに回収可能な金属吸着材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の金属吸着材を表す概略図である。
【図2】本発明の実施例で得られた金属吸着材を表す概略図である。
【図3】本発明における金属吸着材の製造方法(1)、(2)を表す概略図である。
【図4】本発明における金属吸着材の製造方法(3)、(4)を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[金属吸着材]
本発明の金属吸着材は、図1に示すように、高分子基材にジチオカルバミン酸基が導入されている金属吸着材であって、前記ジチオカルバミン酸基はグラフト重合体及びジチオカルバミン酸基導入基を介して導入されていることを特徴としている。
金属吸着材とは、液体中又は気体中に溶解又は分散している金属を吸着できる材料であり、吸着できる金属としては、例えば、鉄、鉛、ヒ素、セレン、ベリリウム、金、銀、銅、白金、亜鉛、パラジウム、コバルト、クロム、ニッケル、マンガン、カドミウム、モリブデン、タングステン、セシウム、ウラン、プルトニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられ、より好ましくは、鉛、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムである。

【0020】
本発明の金属吸着材は、下記試験手順における鉛吸着容量が、好ましくは0.001mmol/g以上である。下限値としては、より好ましくは、0.01mmol/g以上であり、さらに好ましくは0.1mmol/g以上であり、特に好ましくは0.25mmol/g以上であり、より特に好ましくは0.50mmol/g以上であり、さらに特に好ましくは1mmol/g以上である。ここで、鉛吸着容量とは、本発明の金属吸着材1gあたりの、鉛イオンの吸着量である。
試験手順としては、本発明の金属吸着材50mgを100ppm鉛含有水溶液(硝酸鉛を水に溶解させた水溶液)50mLに室温(25℃)にて24時間浸漬し、浸漬後、前記金属吸着材を取り出し、水溶液中に残存する鉛濃度について誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-OES)を用いて測定する。金属吸着材の鉛吸着容量は金属吸着材の浸漬前後における鉛濃度の変化量から算出する。

【0021】
(高分子基材)
本発明の金属吸着材において、高分子基材としては、高分子化合物から成形された材料であれば、形態等は限定されない。具体的には、例えば、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布、フィルム、多孔質体等の形態が挙げられ、材料の表面積が大きくなるほど、溶液との接触面積も大きくでき、効率的に金属吸着を行えるという理由から、好ましくは繊維、繊維の集合体である織布、又は不織布である。
繊維の平均繊維径としては、特に限定されないが、好ましく0.1~200μmである。下限値としては、より好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは2.0μm以上である。上限値としては、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。
繊維の平均繊維径を上記範囲内とすることで、より金属吸着能に優れた金属吸着材とすることができる。

【0022】
高分子基材に用いられる高分子化合物としては、特に限定されず、上記形態に成形できるものであればよい。例えば、石油系高分子、天然高分子などの種々の高分子化合物を採用し得る。具体的には、石油系高分子化合物として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスリフィド、ポリアミド、ポリイミド、環状オレフィン系樹脂、等が挙げられる。或いはまた、キチン、キトサン、セルロース、デンプン等の天然高分子等が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。

【0023】
(グラフト重合体)
本発明の金属吸着材において、グラフト重合体は、特に限定されないが、好ましくは前記高分子基材に対してグラフト重合、具体的には放射線グラフト重合により重合体を形成することができるモノマーからなる重合体である。前記モノマーとしては、好ましくはグラフト重合可能な基(以下、グラフト重合性基という。)を有し、かつ、ジチオカルバミン酸基導入化合物と反応することが可能な基(以下、導入化合物反応基という。)を有するモノマーである。
前記グラフト重合性基としては、好ましくは不飽和基であり、より好ましくはアリル基、ビニル基、(メタ)アクリル基等である。
また、導入化合物反応基としては、特に限定されないが、好ましくはエポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル含有基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなるハロゲン基、水酸基、アルコキシ基等の基であり、より好ましくはグリシジル基である。
前記モノマーとしては、具体的には、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
前記グラフト重合体を介することで、高分子基材にジチオカルバミン酸基を簡単かつ効率的に導入することができる。

【0024】
・グラフト重合体のグラフト率
本発明の金属吸着材において、前記グラフト重合体の含有量(グラフト率)については、特に限定されないが、好ましくは50~400質量%である。下限値としては、より好ましくは100質量%以上であり、さらに好ましくは150質量%以上である。上限値としては、より好ましくは300質量%以下であり、さらに好ましくは250質量%である。
グラフト率を上記範囲内とすることで、基材の形態、形状を保持をしつつ、ジチオカルバミン酸基の導入率を大きくすることができる。よって、金属吸着材の金属吸着性能を向上させることができる。
ここで、グラフト率とは、高分子基材にグラフト重合した前記モノマーの質量増加分(%)をいい、下記算出式により求めることができる。
式;グラフト率:Dg(%)={(W-W)/W}×100
:グラフト重合前の高分子基材の質量[mg]
:グラフト重合後の高分子基材の質量[mg]

【0025】
(ジチオカルバミン酸基導入基)
本発明の金属吸着材において、ジチオカルバミン酸基導入基は、前記グラフト重合体にジチオカルバミン酸基を導入するための基であり、ジチオカルバミン酸基導入化合物からなる基である。
前記ジチオカルバミン酸基導入化合物は、特に限定されないが、好ましくは前記グラフト重合体の導入化合物反応基と反応可能な基を有し、かつ、ジチオカルバミン酸基の前駆体化合物である二硫化炭素と反応可能でかつジチオカルバミン酸基を形成可能な基を有している化合物である。好ましくは、前記ジチオカルバミン酸基導入化合物は、前記グラフト重合体の導入化合物反応基と反応可能な基を有し、かつ、1級又は2級アミノ基を有する。
導入化合物反応基と反応可能な基としては、好ましくはアミノ基、水酸基、アルコキシ基、ホルミル基、カルボニル基等の置換基であり、より好ましくはアミノ基又は水酸基である。
本発明の金属吸着材がジチオカルバミン酸基導入基を備えることで、より簡単かつ効率的にジチオカルバミン酸基を導入することができる。さらに、吸着対象の金属に合わせて、ジチオカルバミン酸基導入基の長さ等を設定することができる。

【0026】
前記ジチオカルバミン酸基導入基の具体例としては、好ましくはジアミノエチレン基、ジアミノプロピレン基、ジアミノヘキサメチレン基、N,N’-ジメチルジアミノエチレン基、トリアミノジエチレン基、テトラアミノトリエチレン基、ピペラジル基から選択される1種以上の基であり、より好ましくはピペラジル基である。特に、ピペラジル基のような環状ジアミン基をジチオカルバミン酸基導入基とすることで、耐熱性、耐酸性に優れた金属吸着材とすることができるためより好ましい。

【0027】
さらに、本発明の金属吸着材における、ジチオカルバミン酸基導入基とジチオカルバミン酸基部分の構造は、好ましくは下記式(1)で表される構造である。
【化2】
JP2020082003A_000004t.gif

【0028】
上記式(1)中、Xは、酸素原子又は窒素原子である。
上記式中n及びmは、アルキレン鎖の炭素原子数を表し、好ましくはnは2以上の整数であり、mは0以上の整数である。Xが酸素原子である場合は、mは0である。また、mが0の場合は、窒素原子には水素原子が1つ置換されている。
nの上限値としては、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは20以下であり、特に好ましくは10以下である。
mの下限値としては、より好ましくは1以上であり、さらに好ましくは2以上である。上限値としては、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは20以下であり、特に好ましくは10以下である。

【0029】
また、上記式(1)で表される基において、Xと窒素原子Nに挟まれたアルキレン鎖は、窒素原子、酸素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい。

【0030】
・ジチオカルバミン酸基導入基の導入率
本発明の金属吸着材において、前記ジチオカルバミン酸基導入基の導入率は特に限定されないが、好ましくは1%以上である。下限値としては、より好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、特に好ましくは50%以上であり、より特に好ましくは70%以上であり、さらに特に好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。
ジチオカルバミン酸基導入基の導入率が前記範囲以上であると、ジチオカルバミン酸基の導入量を向上させることができ、金属吸着材の金属吸着性能を向上させることができる。
ここで、ジチオカルバミン酸基導入基の導入率とは、前記グラフト重合体の導入化合物反応基の数量に対する、ジチオカルバミン酸基導入化合物の反応数量の割合によって、算出される値であり、下記算出式により求めることができる。

【0031】
式;ジチオカルバミン酸基導入率[%]=
[(W-W)/Mw,spacer]/[(W-W)/Mw,monomer]×100
:グラフト重合前における高分子基材の質量[mg]
:グラフト重合後の高分子基材の質量[mg]
:ジチオカルバミン酸基導入基導入後の高分子基材の質量[mg]
Mw,monomer:グラフト重合に用いるモノマーの分子量(例えば、メタクリル酸グリシジル(GMA)を用いた場合の分子量は142.15g/molである。)
Mw,spacer:ジチオカルバミン酸基導入化合物の分子量(例えば、ピペラジン(PIP)を用いた場合の分子量は86.14g/molである。)
なお、保護基を有するジチオカルバミン酸基導入化合物を用いる場合は、上記式において、Mw,spacerの代わりに、下記で示すMw,protectを用いる。

【0032】
・ジチオカルバミン酸基導入基密度
本発明の金属吸着材において、ジチオカルバミン酸基導入基密度は特に限定されないが、好ましくは0.1mmol/g以上である。下限値としては、より好ましくは1.0mmol/g以上であり、さらに好ましくは1.5mmol/g以上である。
ここで、ジチオカルバミン酸基導入基密度とは、金属吸着材1g中に含まれるジチオカルバミン酸基導入基の数量を表す値であり、下記算出式により求めることができる。
ジチオカルバミン酸基導入基密度を前記範囲内とすることで、ジチオカルバミン酸基の導入量を向上させることができ、金属吸着材の金属吸着性能を向上させることができる。

【0033】
式;ジチオカルバミン酸基導入基密度[mmol/g]
=[(W-W)/Mw,spacer]/W×1000
:グラフト重合後の高分子基材の質量[mg]
:ジチオカルバミン酸基導入基導入後の高分子基材の質量[mg]
:二硫化炭素処理後の高分子基材の質量[mg]
Mw,spacer:ジチオカルバミン酸基導入化合物の分子量(例えば、ピペラジン(PIP)を用いた場合の分子量は86.14g/molである。)
なお、保護基を有するジチオカルバミン酸基導入化合物を用いる場合は、上記式において、Mw,spacerの代わりに、下記で示すMw,protectを用いる。

【0034】
・グラフト重合体の自己架橋率
本発明の金属吸着材において、グラフト重合体の自己架橋率は特に限定されないが、好ましくは20%以下である。上限値としては、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下である。
グラフト重合体の自己架橋率を前記範囲以下とすることで、ジチオカルバミン酸基の導入量を向上させることができ、金属吸着材の金属吸着性能を向上させることができる。
ここで、グラフト重合体の自己架橋率とは、ジチオカルバミン酸基導入基を介したグラフト重合体同士の自己架橋の割合を表すものである。自己架橋率が「100%」であれば、導入されたジチオカルバミン酸基導入基の100%が自己架橋に関与しているといえ、ジチオカルバミン酸基が導入されていないこととなる。グラフト重合体の自己架橋率は、下記の算出式により求めることができる。

【0035】
式;グラフト重合体の自己架橋率[%]=
{1-[(W-W)/Mw,CS2-Na]/[(W-W)/Mw,spacer]}×100
:グラフト重合後の高分子基材の質量[mg]
:ジチオカルバミン酸基導入基導入後の高分子基材の質量[mg]
:二硫化炭素処理後の高分子基材の質量[mg]
Mw,spacer:ジチオカルバミン酸基導入化合物の分子量
Mw,CS2-Na:二硫化炭素-ナトリウム(CS-Na)の分子量(99.13g/mol)(Mw,CS2-Naは、二硫化炭素処理の際、ナトリウム存在条件で処理を行うため、最終生成物であるジチオカルバミン酸基の対イオンがナトリウムとなっているものとして計算する。)

【0036】
(ジチオカルバミン酸基)
本発明の金属吸着材において、ジチオカルバミン酸基とは、1つの炭素原子に対して、硫黄原子が2個、窒素原子が1個結合した構造の基である。また、本発明において、ジチオカルバミン酸基とは、ジチオカルバミン酸及び/又はその金属塩を含むものであり、好ましくは金属塩を形成する金属としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩である。

【0037】
・ジチオカルバミン酸基密度
本発明の金属吸着材において、ジチオカルバミン酸基密度は特に限定されないが、好ましくは0.001mmol/g以上である。下限値としては、より好ましくは0.05mmol/g以上であり、さらに好ましくは0.1mmol/g以上であり、特に好ましくは0.2mmol/g以上である。
ジチオカルバミン酸基密度を前記範囲内とすることで、金属吸着材の金属吸着性能を向上させることができる。
ここで、ジチオカルバミン酸基密度とは、金属吸着材1g中に含まれるジチオカルバミン酸基の数量を表す値であり、下記算出式により求めることができる。

【0038】
式;ジチオカルバミン酸(NCS)密度[mmol/g]=
[(W-W)/Mw,CS2-Na]/W×1000
:ジチオカルバミン酸基導入基導入工程後の高分子基材の質量[mg]
:二硫化炭素処理後の高分子基材の質量[mg]
Mw,spacer:ジチオカルバミン酸基導入化合物の分子量である(例えば、ピペラジン(PIP)を用いた場合の分子量は86.14g/molである。)
Mw,CS2-Na:二硫化炭素-ナトリウム(CS-Na)の分子量(99.13g/mol)

【0039】
・窒素含有量
本発明の金属吸着材において、窒素含有量は特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以上である。下限値としては、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上である。
この窒素含有量は、全自動元素分析装置(パーキンエルマー社製 2400II)等により、測定することができる。

【0040】
・硫黄含有量
本発明の金属吸着材において、硫黄含有量は特に限定されないが、好ましくは0.01質量%以上である。下限値としては、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、特に好ましくは1質量%以上である。
この硫黄含有量は、全自動元素分析装置(パーキンエルマー社製 2400II)等により、測定することができる。

【0041】
・窒素含有量/硫黄含有量比(N/S比)
本発明の金属吸着材において、窒素含有量/硫黄含有量比(N/S比)は特に限定されないが、好ましくは1000以下である。上限値としては、より好ましくは500以下であり、さらに好ましくは10以下であり、特に好ましくは5以下である。
窒素含有量/硫黄含有量比(N/S比)を上記範囲内とすることで、より金属吸着能に優れた金属吸着材とすることができる。

【0042】
本発明の金属吸着材は、上記高分子基材に対して、好ましくは下記式(2)で表される構造が結合しているものである。
【化3】
JP2020082003A_000005t.gif
ここで、上記式(2)における繰り返し数aは、1以上の整数である。

【0043】
[金属吸着材の製造方法]
本発明の金属吸着材は、下記の(1)~(4)のいずれかの方法を用いて製造することができるが、製造方法としてはこれらに限定されるものではない。図3に製造方法(1)、(2)を表す概略図を、図4に製造方法(3)、(4)を表す概略図を示す。

【0044】
(製造方法(1))
本発明の金属吸着材の製造方法は、下記の工程を備えることが好ましい。
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-1)前記高分子基材に対して、モノマーをグラフト重合させる工程
(iii-1)グラフト重合体に保護基を有するジチオカルバミン酸基導入化合物を反応させ、グラフト重合体に保護基を有するジチオカルバミン酸基導入基を結合させる工程
(iv)グラフト重合体に結合したジチオカルバミン酸基導入基から保護基を脱保護する工程
(v)前記ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程

【0045】
(製造方法2)
さらに、本発明の金属吸着材を製造する方法は、下記の製造方法を用いて製造することが好ましい。
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-1)前記高分子基材に対して、モノマーをグラフト重合させる工程
(iii-2)グラフト重合体にジチオカルバミン酸基導入化合物を反応させ、グラフト重合体にジチオカルバミン酸基導入基を結合させる工程
(v)ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程

【0046】
工程(i)において、活性化した高分子基材とは、上記高分子基材にグラフト重合が可能なラジカル等の活性化点を生成させた高分子基材のことをいう。ここで、前記高分子基材は、上記で説明したものと同様のものであるため、説明を省略する。
活性化点を生成させる方法としては、特に限定されないが、好ましくは放射線を照射する方法であり、放射線としてはα線、β線、γ線、電子線、紫外線等が挙げられ、好ましくは電子線又はγ線である。
照射線量としては、活性化点を生成させるのに十分な線量であればよく、好ましくは1~200kGyであり、より好ましくは20~100kGyである。照射線量を大きくすることで、グラフト率を向上させることができる。
また、照射の条件としては、例えば、予め窒素置換した空間で照射することが好ましく、室温又は冷却下で照射を行うことが好ましい。

【0047】
工程(ii-1)において、前記高分子基材に対して、モノマーをグラフト重合させる方法としては、特に限定されないが、前記活性化した高分子基材を上記モノマーと接触させてグラフト重合を開始させればよい。ここで、前記モノマーは、上記で説明したものと同様のものであるため、説明を省略する。モノマーは、直接又は溶媒に溶解させて接触させてもよく、またモノマー溶液のエマルションを形成させて接触させることが好ましい。モノマー溶液のエマルションを形成させることで、高分子基材の活性点付近のモノマー濃度が高まり、グラフト重合体のグラフト率を向上させることができる。
溶液中のモノマー濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1~30質量%であり、より好ましくは1~10質量%である。溶液中のモノマー濃度を高くすることで、グラフト率を向上させることができる。

【0048】
前記溶媒としては、特に限定されないが、好ましくは上記モノマーを溶解することができる有機溶媒である。具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、ヘキサクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メチルエチルケトン、フェニルメチルケトン等の溶媒が挙げられる。
エマルションを形成させるためには、好ましくは水であり、より好ましくは蒸留水、イオン交換水、純水、超純水である。

【0049】
さらに、エマルションを形成させる場合は、界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、好ましくは陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤が挙げられる。陰イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、好ましくはアルキルベンゼン系、アルコール系、オレフィン系、リン酸系、アミド系の界面活性剤等であり、より好ましくはドデシル硫酸ナトリウムである。陽イオン系界面活性剤は、特に限定はされないが、好ましくはオクタデシルアミン酢酸塩、トリメチルアンモニウムクロライド等である。非イオン系界面活性剤は、特に限定されないが、好ましくはエトキシル化脂肪アルコール、脂肪酸エステル等であり、より好ましくはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリレート(Tween20、登録商標)である。両性イオン系界面活性剤は、特に限定されないが、好ましくはベタイン系両性界面活性剤を主成分とするアンヒトール(登録商標)である。上記界面活性剤の中でも、より好ましくはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリレートである。

【0050】
界面活性剤の濃度は、特に限定されないが、上記モノマーの種類、濃度に依存して適宜決定することができる。界面活性剤の濃度は、溶媒の全質量を基準として、好ましくは通常0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%である。

【0051】
グラフト重合反応温度は、上記モノマーの反応性によって設定すればよく、好ましくは10~60℃であり、より好ましくは30~45℃である。またグラフト重合反応時間は好ましくは5分~6時間であり、より好ましくは30分~2時間である。反応時間は、反応温度と求めるグラフト率に合わせて適宜設定することができる。
また、グラフト重合反応において、系中の酸素は少ない方がよく、脱気、窒素置換してから反応させることが好ましい。

【0052】
工程(iii-2)において、ジチオカルバミン酸基導入化合物は、上記(ジチオカルバミン酸基導入基)の項で説明したものである。
ジチオカルバミン酸基導入化合物として、具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピペラジンから選択される1種以上の化合物が好ましく、より好ましくはピペラジンである。

【0053】
更に、工程(iii-1)の如く、前記ジチオカルバミン酸基導入化合物は、ジチオカルバミン酸基の前駆体化合物である二硫化炭素と反応可能なアミノ基の1個以上が保護基により保護されていることが好ましい。
保護基としては、特に限定されないが、好ましくはメチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基等であり、より好ましくはtert-ブトキシカルボニル基(Boc基)である。
保護基を有するジチオカルバミン酸基導入化合物として、具体的には、N-Boc-ピペラジン基、N-Boc-エタノールアミン等が挙げられる。
保護基を有するジチオカルバミン酸基導入化合物を反応させることで、ジチオカルバミン酸基導入化合物を介して、前記グラフト重合体同士が架橋することを防ぐことができ、ジチオカルバミン酸の導入率を向上させることができる。

【0054】
前記ジチオカルバミン酸基導入化合物は、前記高分子基材にグラフトされたグラフト重合体の導入化合物反応基と反応させることができる。反応方法としては特に限定されないが、例えば前記グラフト重合体を、導入化合物ジチオカルバミン酸基導入化合物と接触させることにより反応させることができる。接触の方法は無溶媒もしくは溶媒に溶解させて接触させることもできる。
溶媒としては前記ジチオカルバミン酸基導入化合物が溶解する溶媒であれば、特に限定されず、好ましくは、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、ヘキサクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メチルエチルケトン、フェニルメチルケトン等、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶媒であり、より好ましくはメタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール等のアルコール溶媒である。

【0055】
前記ジチオカルバミン酸基導入化合物を反応させる温度としては、特に限定されないが、好ましくは10~100℃である。温度の下限値としては、より好ましくは20℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。上限値としては、より好ましくは90℃以下であり、さらに好ましくは80℃以下である。
反応時間としては、特に限定されないが、好ましくは1~48時間である。反応時間の下限値としては、より好ましくは2時間以上であり、さらに好ましくは4時間以上である。上限値としては、より好ましくは36時間以下であり、さらに好ましくは24時間以下である。
さらに、ジチオカルバミン酸基導入化合物の溶液濃度としては、特に限定されないが、好ましくは0.1~5.0mol/Lである。溶液濃度の下限値としては、より好ましくは0.2mol/L以上であり、さらに好ましくは0.25mol/L以上である。上限値としては、より好ましくは2.5mol/L以下であり、さらに好ましくは1.0mol/L以下である。

【0056】
さらに工程(iv)において、前記ジチオカルバミン酸基導入基から保護基を脱保護する方法としては特に限定されないが、好ましくは酸又は塩基で処理することで脱保護することができる。酸又は塩基としては、好ましくは、塩酸、硫酸、硫酸等の無機酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸等の有機酸、又はアンモニア等である。脱保護の手順としては、前記酸又は塩基が溶解した溶液に、前記ジチオカルバミン酸基導入化合物を反応した高分子基材を浸漬することで、脱保護を行うことができる。

【0057】
脱保護温度としては、特に限定されないが、好ましくは0~100℃である。温度の下限値としては、より好ましくは20℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。上限値としては、より好ましくは80℃以下であり、さらに好ましくは70℃以下である。
脱保護時間としては、特に限定されないが、好ましくは10分~24時間である。脱保護時間の下限値としては、より好ましくは30分以上であり、さらに好ましくは1時間以上である。上限値としては、より好ましくは12時間以下であり、さらに好ましくは6時間以下である。
さらに、酸又は塩基の濃度としては、特に限定されないが0.1~5.0mol/Lである。濃度の下限値としては、より好ましくは0.3mol/L以上であり、さらに好ましくは0.5mol/L以上である。上限値としては、より好ましくは2.5mol/L以下であり、さらに好ましくは1.5mol/L以下である。

【0058】
・脱保護率
前記工程(iv)における脱保護の割合は、脱保護率という値で算出することができる。
本発明の金属吸着材において、脱保護率とは、保護基を備えたジチオカルバミン酸基導入基から保護基を取り除き、ジチオカルバミン酸基導入基の末端がどの程度NH化したかを表す数値である。
脱保護率とは、前記グラフト重合体に導入された保護基を備えたジチオカルバミン酸基導入化合物の反応数量に対する、保護基が取り除かれたジチオカルバミン酸基導入化合物の反応数量の割合によって、算出される値であり、下記算出式により求めることができる。

【0059】
脱保護率は特に限定されないが、好ましくは1%以上である。下限値としては、より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、特に好ましくは90%以上であり、より特に好ましくは95%以上である。
脱保護率が前記範囲以上であると、ジチオカルバミン酸基の導入量を向上させることができ、金属吸着材の金属吸着性能を向上させることができる。

【0060】
式;脱保護率[%]=
[(W-W)/(Mw,protect-Mw,spacer)]/[(W-W)/Mw,protect]}×100
:グラフト重合後の高分子基材の質量[mg]
:保護基を備えたジチオカルバミン酸基導入基導入後の高分子基材の質量[mg]
:保護基を備えたジチオカルバミン酸基導入基から保護基を脱保護した後の高分子基材の質量[mg]
Mw,protect:保護基を備えたジチオカルバミン酸基導入化合物の分子量(例えば、N-Boc-ピペラジン(NBP)を用いた場合の分子量は186.26g/molである。)Mw,spacer:保護基を備えたジチオカルバミン酸基導入基から保護基を脱保護した後のジチオカルバミン酸基導入化合物(例えば、NBPから保護基を脱保護するとジチオカルバミン酸基導入化合物はピペラジン(PIP)となる。PIPの分子量は86.14g/molである。

【0061】
また本発明の二硫化炭素を反応させる工程(v)としては、特に限定されないが、二硫化炭素を溶媒に溶解させて、前記ジチオカルバミン酸基導入基を有するグラフト重合体と接触させることにより、グラフト重合体のジチオカルバミン酸基導入基部分と反応させることができる。溶媒としては二硫化炭素が溶解する溶媒であれば、特に限定されないが、好ましくは、水、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒である。
また、系中に塩基を加えて反応させることが好ましく、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア等の無機塩基が好ましい。

【0062】
前記二硫化炭素を反応させる工程における反応温度としては、特に限定されないが、好ましくは0~50℃である。温度の下限値としては、より好ましくは20℃以上であり、さらに好ましくは30℃以上である。上限値としては、より好ましくは45℃以下であり、さらに好ましくは40℃以下である。
反応時間としては、特に限定されないが、好ましくは1~72時間である。反応時間の下限値としては、より好ましくは6時間以上であり、さらに好ましくは12時間以上である。上限値としては、より好ましくは36時間以下であり、さらに好ましくは24時間以下である。
二硫化炭素の濃度としては、特に限定されないが、好ましくは0.1~30質量%である。濃度の下限値としては、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。上限値としては、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
二硫化炭素と塩基のモル比を、1:10~1:0.5の範囲で反応させることが好ましい。
また、反応溶液の具体例としては、二硫化炭素/メタノール/水酸化ナトリウム=10g/22.5g/7.5gの溶液として、反応させることが好ましい。

【0063】
反応終了後は、未反応の二硫化炭素を除去するために金属吸着材を洗浄することが好ましい。洗浄方法としては、水及び/又はアルコールを用いて、洗浄することが好ましい。

【0064】
さらに、本発明の金属吸着材を製造する方法は、下記の製造方法を用いて製造することが好ましい。
(製造方法3)
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-2)前記高分子基材に対して、ジチオカルバミン酸基導入基を有するモノマーをグラフト重合させる工程
(v)前記ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程

【0065】
工程(ii-2)における、ジチオカルバミン酸基導入基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、好ましくはグラフト重合性基を有し、前記ジチオカルバミン酸基導入基が結合した構造のモノマーである。具体的には、1-アリルピペラジンや1-(2-メチル-2-プロペン-1-イル)ピペラジン等が挙げられる。また、グラフト重合や、二硫化炭素の反応方法としては、上記製造方法1と同様の条件で反応させることができる。

【0066】
さらに、本発明の金属吸着材を製造する方法は、下記の製造方法を用いて製造することが好ましい。
(製造方法4)
(i)活性化した高分子基材を準備する工程
(ii-3)前記高分子基材に対して、保護基を備えたジチオカルバミン酸基導入基を有するモノマーをグラフト重合させる工程
(iv)前記ジチオカルバミン酸基導入基から保護基を脱保護する工程
(v)前記ジチオカルバミン酸基導入基に二硫化炭素を反応させる工程

【0067】
工程(ii-3)における、保護基を備えたジチオカルバミン酸基導入基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、好ましくはグラフト重合性基を有し、上記保護基を備えたジチオカルバミン酸基導入基が結合した構造のモノマーである。具体的には、N-Boc-4-アリルピペラジン等のモノマーが挙げられる。また、グラフト重合や脱保護、及び二硫化炭素の反応方法としては、上記製造方法1等と同様の条件で反応させることができる。

【0068】
[金属吸着方法]
本発明の金属吸着材は、金属を含む被処理体と接触させることで、被処理媒体中の金属を吸着することができる。ここで、金属を含む被処理体は、特に制限されず、金属が溶解した水、金属が溶解した油、金属が溶解した有機溶媒等の金属を含む被処理液、金属を含有する飛灰等が挙げられる。
そして、金属吸着方法としては、本発明の金属吸着材を用いて、該金属吸着材と、金属を含む被処理体を接触させる工程を含む方法である。

【0069】
[金属抽出方法]
さらに、本発明の金属吸着材は、金属を含む被処理体と接触させることで、前記被処理体に含まれる金属を分離、抽出させることができる。本発明の金属抽出方法は、本発明の金属吸着材を用い、該金属吸着材と、金属を含む被処理体を接触させる工程を含むことを特徴とする。即ち、金属を含む被処理体を、本発明の金属吸着材と直接接触させることで、金属を吸着させて、前記被処理体から金属を分離、抽出させる方法である。金属を含む被処理体を金属吸着材と接触させる方法としては、金属を含む被処理液に金属吸着材を添加して接触させてもよく、また、金属吸着材が固定されたカラム等に被処理液を通過させて接触させる方法でもよい。

【0070】
そして、前記金属吸着方法、又は金属抽出方法によって、金属を吸着させた金属吸着材から、金属を単離、回収することができる。
金属を金属吸着材から単離、回収させる方法としては、例えば、金属を吸着した金属吸着材を硝酸、塩酸、硫酸等の溶離剤に浸漬させる方法、金属吸着材を焼却処理する方法が挙げられる。浸漬時間としては、特に限定されないが、好ましくは1~72時間である。下限値としては、好ましくは6時間以上であり、より好ましくは12時間以上である。上限値としては、好ましくは36時間以下であり、より好ましくは24時間以下である。

【0071】
本発明の金属吸着材は、その他の金属吸着能を有する成分と同時に用いてもよい。その他の金属吸着能を有する成分としては、例えば、金属吸着能を有するクラウンエーテルやカリックスアレーン等が挙げられる。

【0072】
[金属吸着装置]
本発明における金属吸着装置とは、前記金属吸着材を備えてなることを特徴とする装置である。
本発明における金属吸着装置は、河川の浄水装置やレアメタル等の回収等に用いることができる。また、前記金属吸着装置に金属が吸着したことを検出できるセンサ等を組み合わせることで、水質測定装置等に応用することも可能である。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0074】
<実施例1>製造方法2を用いた金属吸着材の合成(図3の製造方法2を参照。)
(高分子基材へのグラフト重合)
高分子基材として、ポリエチレン/ポリプロピレン(PE/PP)製繊維(平均繊維径:13μm)の不織布を使用して、窒素雰囲気下で電子線照射(照射線量:20kGy)を行った。照射後の高分子基材を、グラフト重合用モノマーとして、グリシジルメタクリレート(GMA)を含有するエマルション反応溶液(濃度:5質量%、Tween20濃度:0.5質量%)に浸漬し、反応温度40℃にてグラフト重合反応を1時間行った。エマルション反応溶液は、溶存する酸素を取り除くために予め窒素置換を行ったものを使用した。グラフト重合反応終了後には、水、メタノールの順で十分に洗浄し、グラフト率が200%であるGMAがグラフト重合した高分子基材を得た。
【実施例】
【0075】
(ジチオカルバミン酸基導入基の導入)
上記で得られたGMAがグラフト重合した高分子基材を、ジチオカルバミン酸基導入化合物であるピペラジンが溶解した溶液に反応温度80℃で24時間浸漬し、GMAがグラフト重合した高分子基材にジチオカルバミン酸基導入基であるピペラジル基を導入した。溶液の濃度、溶媒、及びピペラジル基の導入量等については、表1に示す。
【実施例】
【0076】
(ジチオカルバミン酸基導入基を介したジチオカルバミン酸基の導入)
次に、ピペラジル基が導入された高分子基材を、二硫化炭素、メタノール、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液の三成分からなる反応溶媒(二硫化炭素/メタノール/水酸化ナトリウム=10g/22.5g/7.5g)に、反応温度40℃にて24時間浸漬し、グラフト重合体末端のピペラジル基にジチオカルバミン酸基を導入し、図2で示される金属吸着材を得た。ジチオカルバミン酸基の導入量を示すジチオカルバミン酸基密度を表1に示す。
【実施例】
【0077】
<実施例2>製造方法1を用いた金属吸着材の合成(図3の製造方法1を参照。)
(保護基を有するジチオカルバミン酸基導入基の導入)
上記で得られた、GMAがグラフト重合した高分子基材を、0.25mol/LのN-Bocピペラジン水溶液に、反応温度80℃で4時間以上浸漬し、N-Bocピペラジル基を備えた高分子基材を得た。保護基を有するピペラジンを用いることで、ピペラジンを介したグラフト重合体同士の自己架橋は起こらず、自己架橋率は0%であった。N-Bocピペラジル基の導入率は95%、N-Bocピペラジル基密度は2.50mmol/gあった。
【実施例】
【0078】
(脱保護反応)
上記で得られたN-Bocピペラジル基を備えた高分子基材を、1mol/Lの塩酸水溶液に反応温度80℃で2時間以上浸漬し脱保護反応を行い、ピペラジル基末端をNH化した。前記反応における脱保護率は95%以上であった。
【実施例】
【0079】
次に、上記脱保護された高分子基材を、二硫化炭素、メタノール、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液の三成分からなる反応溶媒(二硫化炭素/メタノール/水酸化ナトリウム=10g/22.5g/7.5g)に反応温度40℃にて24時間浸漬し、グラフト重合体末端のピペラジル基にジチオカルバミン酸基を導入し、金属吸着材を得た。前記反応で得られた、金属吸着材のジチオカルバミン酸基密度は2.120mmol/gであった。実施例2で得られた金属吸着材の性質についても、表1に示す。
【実施例】
【0080】
【表1】
JP2020082003A_000006t.gif
【実施例】
【0081】
表1の結果より、反応溶媒として有機溶媒を用いた場合(実施例1-2~実施例1-10)は、反応溶媒として水を用いた場合(実施例1-1)に比べてピペラジル基の導入率が高くなることがわかった。
更に、実施例1-2と実施例1-8~1-10を比較すると、高濃度のピペラジン溶液を用いることで、ピペラジル基の導入率を向上させられることがわかった。これは、高濃度のピペラジン溶液を用いることで、ピペラジンを介したグラフト重合体同士の自己架橋が抑制された結果と考えられる。
一方、N-Bocピペラジンを用いた実施例2は、グラフト重合体が自己架橋することをより抑制することができ、最終的にジチオカルバミン酸基の導入率を大幅に向上させられることがわかった。
【実施例】
【0082】
(鉛吸着試験)
上記実施例1及び2で得られた金属吸着材を用いて、金属吸着試験を行った。
試験手順としては、金属吸着材50mgを100ppm鉛含有水溶液(硝酸鉛を水に溶解させた水溶液)50mLに室温にて24時間浸漬した。浸漬後、前記金属吸着材を取り出し、水溶液中に残存する鉛濃度について誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-OES)を用いて測定した。金属吸着材の吸着容量は金属吸着材の浸漬前後における鉛濃度の変化量から算出した。
金属吸着結果は表2に示す。
【実施例】
【0083】
【表2】
JP2020082003A_000007t.gif
【実施例】
【0084】
表2の結果より、本発明に金属吸着材は、金属吸着能を有することがわかった。さらに
保護基を用いて合成された金属吸着材は、ピペラジンを介したグラフト重合体同士の自己架橋が抑制され、結果的にジチオカルバミン酸基の導入率が大きくなることから、保護基を用いずに製造された金属吸着材に比べて、金属吸着性能がより大きいことがわかった。
そして、金属吸着性能を定量的に比較すると、保護基を用いて製造された金属吸着材は、保護基を用いずに製造された金属吸着材に比べて、21倍の鉛吸着性能を示すことがわかった。これより、ジチオカルバミン酸基を多く含む金属吸着材は、金属吸着性が向上することが実証された。
【実施例】
【0085】
(吸着した金属の単離)
上記鉛吸着試験において使用した金属吸着材から、鉛の単離を行った。手順としては、鉛が吸着した金属吸着材50mgを5mol/Lの硝酸水溶液50mLに室温にて24時間浸漬することにより、鉛が単離することが確認された。
この結果より、本発明の金属吸着材を用いることで、水等に溶解している金属を簡単に分離、抽出して、単離、回収できることがわかった。
【実施例】
【0086】
(単一成分系における金属イオンの吸着)
上記実施例2で得られた金属吸着材を用いて、各種金属に対する吸着能について評価した。吸着試験は、12種類の金属イオン(ホウ素、マグネシウム、カルシウム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ストロンチウム、カドミウム、バリウム、鉛)に対して実施した。金属濃度が100ppmの各種金属イオン水溶液100mLに吸着材25mgを室温にて24時間浸漬した後、水溶液中に残存する各種金属イオン濃度をICP-OESにより測定し、吸着材浸漬前後の金属イオン濃度の変化量から吸着材の各種金属イオン吸着容量を算出した。吸着試験結果を表3に示す。
【実施例】
【0087】
【表3】
JP2020082003A_000008t.gif
【実施例】
【0088】
表3に示すように、本発明の金属吸着材は、ホウ素以外の11種類の金属イオンに対して優れた吸着性能を有することが確認された。本発明の金属吸着材は、金属イオン吸着基として負電荷のジチオカルバミン酸基を有しているため、ホウ素イオンのような負電荷を有するイオンは吸着することができないものの、その一方で、金属イオンのような正電荷を有するイオンを良好に吸着することができることが確認された。特に銅に対しては特異的に高い吸着容量を示すことが確認された。
【実施例】
【0089】
(二成分系における金属イオンの吸着)
上記実施例2で得られた金属吸着材において、2種類の金属イオン(ナトリウム/鉛、マグネシウム/鉛、カルシウム/鉛、コバルト/鉛、カドミウム/鉛、銅/鉛、コバルト/ニッケル、コバルト/銅、コバルト/亜鉛、ニッケル/銅、ニッケル/亜鉛、銅/亜鉛)を含む水溶液を用いて、バッチ式吸着試験を実施した。各種金属濃度が100ppmの金属イオン水溶液100mLに吸着材25mgを室温にて24時間浸漬した後、水溶液中に残存する各種金属イオン濃度をICP-OESにより測定し、吸着材浸漬前後の金属イオン濃度の変化量から吸着材の各種金属イオン吸着容量を算出した。吸着試験結果を表4に示す。
【実施例】
【0090】
【表4】
JP2020082003A_000009t.gif
【実施例】
【0091】
表4に示すように、本発明の金属吸着材はナトリウム/鉛のように、ナトリウムのような軽金属イオン存在下では、選択的に重金属イオンである鉛を吸着することが確認された。本発明の金属吸着材における金属イオン選択性は、Na<Mg2+,Ca2+,Co2+,Cd2+<Pb2+<Cu2+となり、鉛や銅に対して特異的に選択性を有していることが確認された。また、表4(B)に示すように、金属特性の似ている第4周期のコバルト、ニッケル、銅、亜鉛の4種類の重金属イオンに対する金属イオン選択性を評価したところ、本発明の金属吸着材の金属イオン選択性はCo2+<Zn2+<Ni2+<Cu2+の順であることが分かった。
以上の結果より、本吸着材は、複数の金属イオンが共存する対象水溶液中から銅、もしくは、鉛などの重金属を効率的、かつ、選択的に回収することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の金属吸着材は、水等の液体に溶解した金属を分離、抽出して、単離、回収することができる。そのため、排水処理施設における水の浄化、都市鉱山からのレアメタル回収、半導体製造用薬液の高清浄化フィルター、最終処分場の土壌汚染対策用の濾材等の用途に広く利用することができる。


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3