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明細書 :スパイラル熱交換器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-168192 (P2019-168192A)
公開日 令和元年10月3日(2019.10.3)
発明の名称または考案の名称 スパイラル熱交換器
国際特許分類 F28D   9/04        (2006.01)
FI F28D 9/04
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2018-057850 (P2018-057850)
出願日 平成30年3月26日(2018.3.26)
発明者または考案者 【氏名】酒井 清吾
【氏名】加藤 大貴
出願人 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100103894、【弁理士】、【氏名又は名称】家入 健
審査請求 未請求
テーマコード 3L103
Fターム 3L103AA05
3L103AA23
3L103AA35
3L103AA39
3L103BB26
3L103CC01
3L103CC05
3L103DD14
3L103DD92
要約 【課題】装置サイズが大型化するのを抑制しつつ、自浄作用を保持したまま熱交換性能を向上させることができるスパイラル熱交換器を提供する。
【解決手段】スパイラル熱交換器1は、渦巻き状の第1伝熱壁4を介して隣接する第1流路21と第2流路22を有する第1スパイラル部2と、渦巻き状の第2伝熱壁5を介して隣接する第3流路23と第4流路24を有し、第3伝熱壁6を介して第1スパイラル部2と隣接する第2スパイラル部3と、を備え、第3伝熱壁6には、中心部において、第1流路21と第3流路23とを連通する第1連通穴11と、第2流路22と第4流路24とを連通する第2連通穴12が形成されている。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
中心部から外縁部へと渦巻き状に延在し第1伝熱壁を介して隣接する第1流路と第2流路を有する第1スパイラル部と、
前記中心部から前記外縁部へと渦巻き状に延在し第2伝熱壁を介して隣接する第3流路と第4流路を有し、前記第3流路及び第4流路が前記第1流路及び第2流路と同軸の渦巻き状になるように、第3伝熱壁を介して前記第1スパイラル部と隣接する第2スパイラル部と、を備え、
前記第3伝熱壁には、前記中心部において、前記第1流路と前記第3流路とを連通する第1連通穴と、前記第2流路と前記第4流路とを連通する第2連通穴が形成され、
前記第1流路は、前記外縁部において第1流体の流入口を有し、前記第3流路は、前記外縁部において前記第1流体の流出口を有し、
前記第4流路は、前記外縁部において第2流体の流入口を有し、前記第2流路は、前記外縁部において前記第2流体の流出口を有する、スパイラル熱交換器。
【請求項2】
前記第1流路、前記第2流路、前記第3流路及び前記第4流路の渦巻きの形状は、アルキメデスの螺旋である、請求項1に記載のスパイラル熱交換器。
【請求項3】
前記第1流路、前記第2流路、前記第3流路及び前記第4流路の、渦巻きの径方向における流路幅は等しく、
前記第1流路と前記第4流路とは、第3伝熱壁を介して隣接しており、前記第2流路と前記第3流路とは、第3伝熱壁を介して隣接している、請求項2に記載のスパイラル熱交換器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、工場排水からの熱エネルギー回収や下水処理施設の温調に最適な、スパイラル熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
スパイラル熱交換器は他種の熱交換器にはない自浄作用を持っている。自浄作用とは、流路内に汚れが付着した際に自己で汚れを剥離させる機能である。スパイラル熱交換器は、低温流体を流入させる流路、及び、高温流体を流入させる流路が、それぞれ単一の流路で構成されている。このため、流路内壁に汚れが付着すると、当該汚れが付着した箇所において、流路が狭くなり流速が速くなるので、流体により当該汚れに及ぼされる剥離力が大きくなる。これによって自浄作用が生じる。
【0003】
このように、スパイラル熱交換器は、自浄作用を持っているので、汚泥や繊維物を含む媒体の熱交換のために適用することができる。そのため、スパイラル熱交換器は、下水処理施設やバイオガスプラントにおける温調目的や工場における工場排水からの排熱回収目的で使用されている。しかしながら、既存のスパイラル熱交換器は、フィンプレート型などの他種の熱交換器と比べて、熱交換性能が相対的に低くなる傾向にある。このため、近年、スパイラル熱交換器に関して、熱交換性能を向上させるための様々な研究がなされてきた。
【0004】
特許文献1には、スパイラル中心部にて燃焼させたガスを作動流体として外縁の壁を熱してその熱エネルギーを熱ふく射で放射するスパイラル熱交換器が開示されている。特許文献1には、さらに、上記スパイラル熱交換器の外周表面を覆うように配置され、上記スパイラル熱交換器外周表面から放射される熱輻射を一定方向に放射するための円筒形の反射板を設置する構成の輻射変換及び放射装置が開示されている。特許文献2には、流路内にスペーサーとして円柱を配置することで作動流体の乱流エネルギーを増加させることで伝熱を促進させたスパイラル熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平8-219553号公報
【特許文献2】実開昭63-017971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の輻射変換及び放射装置では、放射による熱損失を低減するためにスパイラル熱交換器の外周表面に反射板を配置するので、スパイラル熱交換器だけの構成に対して装置が大型化してしまうという問題があった。特許文献2のスパイラル熱交換器では、流路形状の工夫により、熱交換性能については向上するものの、自浄作用については低下してしまうという問題があった。そのため、装置サイズを大型化することなく、自浄作用を保持したまま熱交換性能を向上させることが求められている。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、装置サイズが大型化するのを抑制しつつ、自浄作用を保持したまま熱交換性能を向上させることができるスパイラル熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スパイラル熱交換器であって、中心部から外縁部へと渦巻き状に延在し第1伝熱壁を介して隣接する第1流路と第2流路を有する第1スパイラル部と、前記中心部から前記外縁部へと渦巻き状に延在し第2伝熱壁を介して隣接する第3流路と第4流路を有し、前記第3流路及び第4流路が前記第1流路及び第2流路と同軸の渦巻き状になるように、第3伝熱壁を介して前記第1スパイラル部と隣接する第2スパイラル部と、を備え、前記第3伝熱壁には、前記中心部において、前記第1流路と前記第3流路とを連通する第1連通穴と、前記第2流路と前記第4流路とを連通する第2連通穴が形成され、前記第1流路は、前記外縁部において第1流体の流入口を有し、前記第3流路は、前記外縁部において前記第1流体の流出口を有し、前記第4流路は、前記外縁部において第2流体の流入口を有し、前記第2流路は、前記外縁部において前記第2流体の流出口を有するものである。
【0009】
好ましくは、前記第1流路、前記第2流路、前記第3流路及び前記第4流路の渦巻きの形状は、アルキメデスの螺旋である。
【0010】
好ましくは、前記第1流路、前記第2流路、前記第3流路及び前記第4流路の、渦巻きの径方向における流路幅は等しく、前記第1流路と前記第4流路とは、第3伝熱壁を介して隣接しており、前記第2流路と前記第3流路とは、第3伝熱壁を介して隣接している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置サイズが大型化するのを抑制しつつ、自浄作用を保持したまま熱交換性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態にかかるスパイラル熱交換器の外概を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるスパイラル熱交換器の構成を示す六面図である。
【図3】本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器の解析モデルを示す図である。
【図4】比較例にかかるスパイラル熱交換器の解析モデルを示す図である。
【図5】本数値解析により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器と比較例にかかるスパイラル熱交換器のそれぞれにおける、流量と高温側交換熱量との関係を示すグラフである。
【図6】本数値解析により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器と比較例にかかるスパイラル熱交換器のそれぞれにおける、流量と総括伝熱係数との関係を示すグラフである。
【図7】本数値解析により得られた、本数値解析により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器と比較例にかかるスパイラル熱交換器のそれぞれにおける、流量と圧力損失との関係を示すグラフである。
【図8】本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器を含む実験装置本体の組み立て方法について説明する模式図である。
【図9】本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器を含む実験装置本体の組み立て方法について説明する模式図である。
【図10】本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器を含む実験装置本体の組み立て方法について説明する模式図である。
【図11】実験装置の概略構成を示す模式図である。
【図12】本実験により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器における、流量と高温側交換熱量との関係を示すグラフである。
【図13】本実験により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器における、流量と総括伝熱係数との関係を示すグラフである。
【図14】本実験により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器における、流量と圧力損失との関係を示すグラフである。
【図15】図14における流量が0~20L/minの範囲を拡大し、さらに、市販されているスパイラル熱交換器の仕様値のラインを追加したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。

【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1の外観を示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1の構成を示す六面図である。図1及び図2に示すように、スパイラル熱交換器1は、第1スパイラル部2と、第2スパイラル部3と、を備えている。

【0015】
図2に示すように、第1スパイラル部2は、中心部1a(図1参照)から外縁部1b(図1参照)へと渦巻き状に延在し第1伝熱壁4を介して隣接する第1流路21と第2流路22を有する。第2スパイラル部3は、中心部1a(図1参照)から外縁部1b(図1参照)へと渦巻き状に延在し第2伝熱壁5を介して隣接する第3流路23と第4流路24を有する。また、第2スパイラル部3は、第3流路23及び第4流路24が第1流路21及び第2流路22と同軸の渦巻き状になるように、第3伝熱壁6を介して第1スパイラル部2と隣接する。

【0016】
第1流路21、第2流路22、第3流路23及び第4流路24の渦巻きの形状は、アルキメデスの螺旋である。アルキメデスの螺旋は、r=a+b・θと表される。ここで、rは渦巻きの旋回中心からの距離、θは渦巻きの旋回角度、a、bは定数である。bを変えることによって渦巻きの間隔、すなわち、渦巻きの径方向における流路の幅(流路幅)を調整することができる。伝熱面積を増加させるため、螺旋の渦巻き数はなるべく多くすることが好ましい。各流路の流路断面はいずれも矩形である。

【0017】
第3伝熱壁6には、中心部1aにおいて、第1流路21と第3流路23とを連通する第1連通穴11と、第2流路22と第4流路24とを連通する第2連通穴12が形成されている。第1流路21は、外縁部1bにおいて第1流体としての低温流体の流入口7を有し、第3流路23は、外縁部1bにおいて第1流体としての低温流体の流出口10を有している。また、第4流路24は、外縁部1bにおいて第2流体としての高温流体の流入口9を有し、第2流路22は、外縁部1bにおいて第2流体としての高温流体の流出口8を有する。

【0018】
第1スパイラル部2において、低温流体の流入口7と高温流体の流出口8とは、渦巻きの旋回中心を基準として位相が180°ずれた位置に配置されている。第2スパイラル部3において、高温流体の流入口9と低温流体の流出口10とは、渦巻きの旋回中心を基準として位相が180°ずれた位置に配置されている。また、第1スパイラル部2における低温流体の流入口7と第2スパイラル部3における高温流体の流入口9とが、渦巻きの旋回中心を基準として位相が90°ずれた位置になるよう、第1スパイラル部2と第2スパイラル部3を配置させている。つまり、スパイラル熱交換器1の外縁部1bにおいて、各流出入口は、第1スパイラル部2側からの上面視で、渦巻きの旋回中心を基準として反時計回りに、低温流体の流入口7、高温流体の流入口9、高温流体の流出口8、低温流体の流出口10の順に90°間隔で配置されている。

【0019】
本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1では、渦巻き状の流路を有するスパイラル部を、第3伝熱壁6を挟んで第1スパイラル部2と第2スパイラル部3の2段構成にした。このため、スパイラル部が1段構成の既存のスパイラル熱交換器に対し、装置を大型化することなく、流路の長さを長くすることができる。これにより、スパイラル熱交換器1に流入させる、低温流体及び高温流体の滞留時間を長くすることができるので、スパイラル熱交換器1の熱交換性能を向上させることができる。

【0020】
また、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1は、既存のスパイラル熱交換器に対し、各流路における流路断面積を半分程度にしている。これにより、流入させる流体の流量が同一であれば流速が速くなり汚れの剥離力を向上させることができるので、自浄作用がより向上する。

【0021】
第1スパイラル部2及び第2スパイラル部3は、熱伝導率が相対的に大きい材質、例えば、アルミニウム、銅、しんちゅうなどで形成するのが好ましい。また、伝熱を促進させるため、第1伝熱壁4、第2伝熱壁5及び第3伝熱壁6の厚みは、必要強度を維持できる限りにおいて、できるだけ薄くするのが好ましい。流路幅は、大きくなるほど本発明の効果が期待されるが、流路の高さや流入流量などとの関係で決定する必要がある。

【0022】
第1流路21、第2流路22、第3流路23及び第4流路24の流路幅は等しくするのが好ましい。また、第1流路21と第4流路24とを、第3伝熱壁6を介して隣接させ、第2流路22と第3流路23とを、第3伝熱壁6を介して隣接させるのが好ましい。このように構成することで、第1流路を流れる低温流体と第4流路24を流れる高温流体とが第3伝熱壁6を介して熱交換し、第2流路を流れる高温流体と第3流路23を流れる低温流体とが第3伝熱壁6を介して熱交換する。これにより、熱交換量が増加するので、熱交換性能をより向上させることができる。

【0023】
次に、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1の熱交換性能を数値解析により検討した結果について以下で説明する。
図3は、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1の解析モデルを示す図である。図4は、比較例にかかるスパイラル熱交換器901の解析モデルを示す図である。図3及び図4に示すように、スパイラル熱交換器1とスパイラル熱交換器901は、簡単のため、円筒形状としている。スパイラル熱交換器1とスパイラル熱交換器901とでは、スパイラル部最大直径とスパイラル部高さを等しくし、外形寸法、すなわち、専有体積を等しくしている。ここで、スパイラル部最大直径は124mm、スパイラル部高さは60mmとしている。流路の高さについては、スパイラル熱交換器1はスパイラル熱交換器901に対して半分(30mm)になっている。また、流路幅はいずれも7mm、各伝熱壁の厚さはいずれも2mmである。

【0024】
上述したように、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1の外縁部1bにおいて、各流出入口は、渦巻きの旋回中心を基準として90°間隔で配置されている。一方、比較例にかかるスパイラル熱交換器901は、低温流体を外縁部から流入させて中心部から流出させ、高温流体を中心部から流入させて外縁部から流出させる構造としている。このように、スパイラル熱交換器1とスパイラル熱交換器901では流入出口の位置が異なるため、スパイラル熱交換器1ではスパイラル熱交換器901よりも流路の渦巻きの数が少なくなっている。伝熱面積については、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1は、比較例にかかるスパイラル熱交換器901に対して約0.9倍になっている。

【0025】
本数値解析においては、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1と、比較例にかかるスパイラル熱交換器901と、の高温側交換熱量、総括伝熱係数及び圧力損失の値を比較した。

【0026】
高温側交換熱量は、熱交換器において高温流体が渡した熱量である。高温側交換熱量Q[W]は以下の式で表される。ここで、Mは質量流量[kg/s]、Cは比熱[J/(kg・K]、Thiは高温側入口温度[K]、Thoは高温側出口温度[K]である。
Q=MC(Thi-Tho) ・・・(1)

【0027】
総括伝熱係数は、熱交換器全体の熱の交換しやすさを示す指標である。総括伝熱係数K[W/(m・K)]は以下の式で表される。ここで、高温側入口温度[K]をThi、高温側出口温度[K]をTho、低温側入口温度[K]をTci、低温側出口温度[K]をTco、としたときに、ΔT=Thi-Tco、ΔT=Tho-Tciとする。ΔTlmは対数平均温度差[K]、Aは熱交換面積[m]である。

【0028】
【数1】
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【0029】
本数値解析では、作動流体として水を用い、低温流体の流入温度、すなわち低温側入口温度を293K、高温流体の流入温度、すなわち高温側入口温度を323Kに設定した。作動流体の流入流量は、1.8~36[L/min]の間で変化させた。また、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1と比較例にかかるスパイラル熱交換器901のいずれにおいても、材質をアルミニウム合金(A5052)に設定した。

【0030】
本数値解析では、乱流モデルとして一般的であるk-εモデルを用いた。k-εモデルの支配方程式は以下の通りである。式中において、kは乱流エネルギー、εはエネルギー散逸率、μは右図粘性係数、Gは平均速度勾配による乱流運動エネルギー生成、Gは浮力による乱流運動エネルギー生成である。また、式中において、C1ε=1.44、C2ε=1.92、σ=1.0、σε=1.3である。

【0031】
【数2】
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【0032】
また、熱流体場の支配方程式は以下の通りである。式中において、Eは全エネルギー、keffは有効熱伝導率、(τijeffは応力偏差テンソルである。

【0033】
【数3】
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【0034】
図5は、本数値解析により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1と比較例にかかるスパイラル熱交換器901のそれぞれにおける、流量と高温側交換熱量との関係を示すグラフである。また、図6は、本数値解析により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1と比較例にかかるスパイラル熱交換器901のそれぞれにおける、流量と総括伝熱係数との関係を示すグラフである。図5及び図6において、バツ印でプロットしたものが本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1(図中ではProposalと表記)の結果で、丸印でプロットしたものが比較例にかかるスパイラル熱交換器901(図中ではconventionalと表記)の結果である。また、図6のグラフ中において長方形の囲みで示した数字は、各プロット点におけるレイノルズ数を表す。

【0035】
図5に示すように、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1では、比較例にかかるスパイラル熱交換器901に対し、高温側交換熱量が約1.3~1.8倍になった。また、図6に示すように、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1では、比較例にかかるスパイラル熱交換器901に対し、総括伝熱係数が約1.6~2.3倍になった。流路形状が異なることにより、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1では、比較例にかかるスパイラル熱交換器901に対し、レイノルズ数が約1.86倍になっていることが、同じ流量の条件においても総括伝熱係数が増加した大きな要因と考えられる。また、第1スパイラル部2の流路と第2スパイラル部3の流路との繋ぎ目(図2に示す第1連通穴11及び第2連通穴12)における流路形状の急激な変化によって流体の乱流エネルギーが増加して伝熱が促進されたことも、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1が比較例にかかるスパイラル熱交換器901に対し総括伝熱係数が増加した一因であると考えられる。

【0036】
図7は、本数値解析により得られた、本数値解析により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1と比較例にかかるスパイラル熱交換器901のそれぞれにおける、流量と圧力損失との関係を示すグラフである。図7に示すように、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1では、比較例にかかるスパイラル熱交換器901に対し、高温側、低温側のいずれについても、圧力損失が約1.5~11倍になった。すなわち、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1では、比較例にかかるスパイラル熱交換器901に対し、圧力損失が増加した。この要因として、上述したレイノルズ数の増加の影響が考えられる。また、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1では、第1スパイラル部2の流路と第2スパイラル部3の流路との繋ぎ目において流路形状が変化することも圧力損失が増加した一因と考えられる。

【0037】
次に、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1の熱交換性能を実験により検討した結果について以下で説明する。

【0038】
まず、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1を含む実験装置本体の製作方法について説明する。なお、以下の説明では図1について適宜参照する。
本実験では、図1に示すスパイラル熱交換器1を、アルミニウム合金(A5052)のブロック材をNC(Numerical Control Machining)加工による削り出しで製作した。すなわち、スパイラル熱交換器1は、第1スパイラル部2及び第2スパイラル部3を含め、一体物として製作した。

【0039】
図8~図10は、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1を含む実験装置本体30の組み立て方法について説明する模式図である。まず、図8に示すように、スパイラル熱交換器1における第1スパイラル部2及び第2スパイラル部3のそれぞれに、薄板パーツ31を嵌め込む。薄板パーツ31は、各流路の気密性を保持するための部品で、アルミニウム合金(A5052)の板材に、第1スパイラル部2の第1伝熱壁4、または第2スパイラル部3の第2伝熱壁5(図2参照)と嵌め合う溝31aが形成されている。溝31aは、ワイヤカット放電加工で製作した。

【0040】
次に、図9に示すように、スパイラル熱交換器1における第1スパイラル部2及び第2スパイラル部3のそれぞれに、厚板33を嵌め込む。厚板33は、第1スパイラル部2、第2スパイラル部3をそれぞれ密閉する密閉蓋としての部品で、第1スパイラル部2、または第2スパイラル部3の最外周と嵌め合う凹み部33aが形成されている。厚板33は、アルミニウム合金(A5052)のブロック材をNC(Numerical Control Machining)加工による削り出しで製作した。

【0041】
次に、図10に示すように、スパイラル熱交換器1の各流入出口(低温流体の流入口7、低温流体の流出口10、高温流体の流入口9、高温流体の流出口8)に変換アダプタ35を取り付けする。上述したように、スパイラル熱交換器1において、各流路の流路断面形状は矩形である。一方、低温流体及び高温流体を供給する配管類の流路断面形状は円形である。変換アダプタ35は、流路断面形状の異なる、各流路と配管類とを接続するため、矩形ポート35aと円形ポート35bとを有する。このように組み立てすることで実験装置本体を製作した。

【0042】
図11は、実験装置の概略構成を示す模式図である。図11に示すように、実験装置において、高温流体は、高温タンク51と実験装置本体30との間で循環させる構成とした。すなわち、高温タンク51と実験装置本体30とは、送り配管52及び戻り配管53を介して接続されている。すなわち、送り配管52は、高温タンク51から実験装置本体30に高温流体を送る配管で、一端が高温タンク51に、他端が高温流体の流入口9に接続されている。戻り配管53は、実験装置本体30から高温タンク51へと高温流体を戻す配管で、一端が高温流体の流出口8に、他端が高温タンク51に接続されている。本実験では高温流体として水道水を使用した。高温タンク51における水温調整は、槽内に差し込まれたヒーター54のON/OFFにより行った。送り配管52の途中には、流体ポンプ55が取り付けられている。

【0043】
送り配管52における、高温流体の流入口9に流入する直前の位置には圧力を測定するマノメータ56と温度を測定する熱電対57が取り付けられている。また、戻り配管53における、高温流体の流出口8から流出した直後の位置には圧力を測定するマノメータ56と温度を測定する熱電対57が取り付けられている。送り配管52において、流体ポンプ55の流れ方向下流側には流量計58が取り付けられている。

【0044】
一方、低温流体は、低温タンク59と実験装置本体30との間で循環させる構成とした。すなわち、低温タンク59と実験装置本体30とは、供給配管62及びドレーン配管63を介して接続されている。すなわち、供給配管62は、低温タンク59から実験装置本体30に低温流体を供給する配管で、一端が低温タンク59に、他端が低温流体の流入口7に接続されている。ドレーン配管63は、実験装置本体30から低温流体を排出させる配管で、一端が低温流体の流出口10に接続され、他端は開放されている。本実験では低温流体として水道水を使用した。低温タンク59には水道蛇口から常温の水道水が供給される。供給配管62の途中には、流体ポンプ55が取り付けられている。

【0045】
供給配管62における、低温流体の流入口7に流入する直前の位置には圧力を測定するマノメータ56と温度を測定する熱電対57が取り付けられている。また、ドレーン配管63における、低温流体の流出口10から流出した直後の位置には圧力を測定するマノメータ56と温度を測定する熱電対57が取り付けられている。供給配管62において、流体ポンプ55の流れ方向下流側には流量計58が取り付けられている。

【0046】
各マノメータによる圧力の測定値及び各熱電対による温度の測定値は、信号線を介してロガー60に送信される。さらに、ロガー60に蓄積されたデータはPC61に送信され、PC61において各種データ解析を行った。

【0047】
本実験では、高温流体と低温流体との温度差が、20℃、30℃、40℃になるように、高温タンク51のヒーター54を調節した。また、低温流体及び高温流体の流入流量を、1.8[L/min]から12.6[L/min]まで変化させた。

【0048】
ここで、実験手順について説明する。
(1)まず、高温タンク51内の水が目標温度になるまで温める。
(2)次に、高温流体及び低温流体をスパイラル熱交換器1に同時に流入させ、素早く流入流量を調節する。
(3)次に、流入流量が安定した後、各マノメータ56による圧力の測定値を読み取る。
(4)流入流量が安定した後、360秒間の定常待ちを行う。
(5)定常待ちの後、900秒間、温度計測を行う。なお、温度の測定値は、この900秒間で採取したデータの平均値とした。
(6)高温流体及び低温流体のスパイラル熱交換器1への流入を停止する。

【0049】
図12は、本実験により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1における、流量と高温側交換熱量との関係を示すグラフである。また、図13は、本実験により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1における、流量と総括伝熱係数との関係を示すグラフである。なお、図12及び図13には、比較のため、本実験と同条件にて数値解析を行った結果についても示す。

【0050】
図12において、スパイラル熱交換器1の実験結果は、高温流体と低温流体との温度差が20℃、30℃、40℃の場合について、それぞれ、グラフ中では、20℃ difference_experiment(黒塗り丸印)、30℃ difference_experiment(黒塗り菱形印)、40℃ difference_experiment(黒塗り四角印)と表記している。また、図12において、高温流体と低温流体との温度差が20℃、30℃、40℃ときのスパイラル熱交換器1の数値解析結果は、グラフ中では、それぞれ、20℃ difference_analysis(白抜き丸印)、30℃ difference_analysis(白抜き菱形印)、40℃ difference_analysis(白抜き四角印)と表記している。

【0051】
図13において、スパイラル熱交換器1の実験結果は、高温流体と低温流体との温度差が20℃、30℃、40℃の場合について、それぞれ、グラフ中では、20℃ difference_experiment(黒塗り丸印)、30℃ difference_experiment(黒塗り菱形印)、40℃ difference_experiment(黒塗り四角印)と表記している。また、図13において、スパイラル熱交換器1の数値解析結果は、グラフ中では、analysis(白抜き三角印)と表記している。なお、流量と総括伝熱係数との関係の理論値は、高温流体と低温流体との温度差によって変化しない。

【0052】
図12に示すように、高温側交換熱量については、高温流体と低温流体との温度差が20℃、30℃、40℃の各場合で、実験結果の方が数値解析結果よりも大きな値となった。しかしながら、プロット点を結ぶラインの傾きについては、高温流体と低温流体との温度差が20℃、30℃、40℃の各場合について、実験結果と数値解析結果でほぼ同じ傾向になった。

【0053】
図13に示すように、総括伝熱係数については、高温流体と低温流体との温度差が20℃、30℃、40℃の場合で、実験結果はいずれもほぼ近い値が得られた。しかしながら、実験結果の方が数値解析結果よりも1.3~2.4倍程度大きな値となった。

【0054】
上述したように、高温側交換熱量と総括伝熱係数のいずれについても、実験結果の方が数値解析結果よりも大きな値となった。これは、解析モデルはスパイラル部分単体のみであるのに対し、実際の実験装置は、スパイラル部分単体よりも全体サイズが大きいので、解析モデルと比べて装置内を伝わる伝熱分が大きかったためと考えられる。また、実際の実験装置では、スパイラル熱交換器1をNC加工により製作しているので、伝熱面の表面粗さの影響を無視できない。すなわち、実際の実験装置では、伝熱面の表面粗さにより流体の乱流エネルギーが増加したことにより伝熱が促進されたと考えられる。このことも、高温側交換熱量、総括伝熱係数ともに、実験結果の方が数値解析結果よりも大きな値となった要因と考えられる。

【0055】
図14は、本実験により得られた、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1における、流量と圧力損失との関係を示すグラフである。図15は、図14における流量が0~20L/minの範囲を拡大し、さらに、市販されているスパイラル熱交換器(株式会社クロセ製)の仕様値のラインを追加したグラフである。

【0056】
図14及び図15で、高温流体の流路(図1に示す第2流路22及び第4流路24)における、実験結果をHigh_temp_experiment(黒塗り丸印)、解析結果をHigh_temp_analysis(白抜き丸印)で表記している。また、図14及び図15で、低温流体の流路(図1に示す第1流路21及び第2流路22)における、実験結果をLow_temp_experiment(黒塗り三角印)、解析結果をLow_temp_analysis(白抜き三角印)で表記している。

【0057】
図14に示すように、高温側、低温側ともに、流量が10.8[L/min]以上において実験結果の方が数値解析結果よりも大きな値となった。これは、上述した、NC加工による伝熱面の表面粗さの影響によるものと考えられる。また、流量が10.8[L/min]以上において、流量が大きくなればなるほど、実験結果と数値解析結果との圧力損失の値の差が大きくなる傾向にある。このため、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1は、流量が20[L/min]以下で使用するのが好ましいと考えられる。

【0058】
図15に示すように、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1は、流量が16[L/min]以下の範囲では、市販されているスパイラル熱交換器よりも圧力損失が小さくなっている。このため、少なくとも流量が16[L/min]以下の範囲では、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1は実用化が見込まれる。今回、スパイラル熱交換器1の製作方法については十分に検討を行うことができなかったため、今後のさらなる改善により、圧力損失を低減することができれば、流量が20[L/min]を超える範囲への適用も期待できると思われる。

【0059】
以上より、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1は、自浄作用を保持していることで、汚泥や繊維物を含む媒体の熱交換においても、メンテナンス回数を抑制することができるので、装置を長期運転させることが可能になる。また、熱交換性能を向上させたことで、必要な熱エネルギーを低減でき、運用コストを抑えることができる。これにより、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1は、下水道処理場における温調システムへの適用が期待できる。さらに、本実施の形態にかかるスパイラル熱交換器1は、装置サイズを大型化することなく、熱交換性能の向上を図ったので、工場の量産ラインなど、機器の設置スペースが限られた場所における熱エネルギー回収システムに適用することもできる。

【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 スパイラル熱交換器
2 第1スパイラル部
3 第2スパイラル部
4 第1伝熱壁
5 第2伝熱壁
6 第3伝熱壁
7 低温流体の流入口
8 高温流体の流出口
9 高温流体の 流入口
10 低温流体の流出口
11 第1連通穴
12 第2連通穴
21 第1流路
22 第2流路
23 第3流路
24 第4流路
30 実験装置本体
31 薄板パーツ
31a 溝
33 厚板
33a 凹み部
35 変換アダプタ
35a 矩形ポート
35b 円形ポート
51 高温タンク
52 送り配管
53 戻り配管
54 ヒーター
55 流体ポンプ
56 マノメータ
57 熱電対
59 低温タンク
60 ロガー
62 供給配管
63 ドレーン配管
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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