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明細書 :挙動予測システム及び挙動予測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-045905 (P2019-045905A)
公開日 平成31年3月22日(2019.3.22)
発明の名称または考案の名称 挙動予測システム及び挙動予測方法
国際特許分類 G06N   3/08        (2006.01)
G06N   3/04        (2006.01)
G05B  23/02        (2006.01)
FI G06N 3/08
G06N 3/04 145
G05B 23/02 R
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2017-164726 (P2017-164726)
出願日 平成29年8月29日(2017.8.29)
発明者または考案者 【氏名】藤村 茂
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100137800、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 正義
【識別番号】100148253、【弁理士】、【氏名又は名称】今枝 弘充
【識別番号】100148079、【弁理士】、【氏名又は名称】梅村 裕明
【識別番号】100188581、【弁理士】、【氏名又は名称】堀切 康平
【識別番号】100158241、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 安子
審査請求 未請求
テーマコード 3C223
Fターム 3C223AA05
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223FF05
3C223FF13
3C223FF16
3C223FF22
3C223FF26
3C223GG01
3C223HH03
要約 【課題】製造プロセスにおける将来の挙動を予測できる挙動予測システム及び挙動予測方法を提供する。
【解決手段】挙動予測システムでは、学習済みの挙動予測モデル31に予測算出用データを入力することで、現在時刻から将来に亘る予測変数の挙動を示した予測時系列データを算出する。これにより挙動予測システムでは、現在時刻から将来に亘る予測変数の挙動を示した予測時系列データに基づいて、製造プロセスにおける将来の挙動を予測する。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
製造プロセスで正常動作時に機器から得られる複数種類のプロセス変数の時系列データを取得するプロセス変数取得部と、
前記複数種類のプロセス変数のうち、将来挙動を予測したい前記プロセス変数を予測変数とし、前記予測変数の挙動に影響を与える前記プロセス変数を要因変数とする変数特定部と、
前記予測変数の過去の所定時間の時系列データと、前記要因変数の過去の前記所定時間の時系列データと、を学習用入力データとして取得する学習用入力データ取得部と、
前記学習用入力データとした前記予測変数の前記時系列データに時系列に続く、前記予測変数の過去の時系列データを学習用出力データとして取得する学習用出力データ取得部と、
学習時に、前記学習用入力データおよび前記学習用出力データを学習データとし、複数の前記学習データを用いて畳み込みニューラルネットワークで学習を行い、挙動予測モデルを作成する学習部と、
学習済み後に、現在時刻から所定時間過去に遡った過去時刻までの前記予測変数の時系列データと、前記現在時刻から前記過去時刻までの前記要因変数の時系列データと、を予測算出用データとして、動作中の前記機器から取得する予測算出用データ取得部と、
学習済みの前記挙動予測モデルに前記予測算出用データを入力して、前記現在時刻から将来に亘る前記予測変数の挙動を示した予測時系列データを算出する予測部と、を備える、挙動予測システム。
【請求項2】
前記予測時系列データと、前記機器から得られる実際の前記予測変数の前記時系列データとを同時に表示し、実際に得られた実測値である前記予測変数について、前記予測時系列データとの乖離の程度を通知する表示部を備える、請求項1に記載の挙動予測システム。
【請求項3】
前記機器から時系列に得られる実際の前記予測変数の前記時系列データが、前記予測時系列データから所定量乖離したときに、将来の異常を示唆する異常予測部を備える、請求項1または2に記載の挙動予測システム。
【請求項4】
前記予測変数は、オペレータにより操作機器が操作されることにより測定結果に影響が生じる測定機器での測定値であり、
前記要因変数は、前記操作機器の操作値である、請求項1~3のいずれか1項に記載の挙動予測システム。
【請求項5】
前記予測変数は、オペレータにより操作される操作機器の操作値であり、
前記要因変数は、前記操作機器が操作されることにより測定結果に影響が生じる測定機器での測定値である、請求項1~3のいずれか1項に記載の挙動予測システム。
【請求項6】
前記学習部は、
前記学習データの前記予測変数および前記要因変数に対し、前記時系列データが並んだ方向に対してだけ畳み込み演算処理を実行し、前記学習データの前記予測変数および前記要因変数が並んだ方向に対しては畳み込み演算処理を実行しない、畳み込み層を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の挙動予測システム。
【請求項7】
前記畳み込み層は、前記学習用入力データの行列と同じ大きさの行列でなる特徴マップを生成する、請求項6に記載の挙動予測システム。
【請求項8】
前記学習部は、
前記学習データの前記予測変数および前記要因変数に対し、前記時系列データが並んだ方向に対してだけプーリング処理を実行し、前記学習データの前記予測変数および前記要因変数が並んだ方向に対しては前記プーリング処理を実行しない、プーリング層を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の挙動予測システム。
【請求項9】
製造プロセスで正常動作時に機器から得られる複数種類のプロセス変数の時系列データを取得するプロセス変数取得ステップと、
前記複数種類のプロセス変数のうち、将来挙動を予測したい前記プロセス変数を予測変数とし、前記予測変数の挙動に影響を与える前記プロセス変数を要因変数とする変数特定ステップと、
前記予測変数の過去の所定時間の時系列データと、前記要因変数の過去の前記所定時間の時系列データと、を学習用入力データとして取得する学習用入力データ取得ステップと、
前記学習用入力データとした前記予測変数の前記時系列データに時系列に続く、前記予測変数の過去の時系列データを学習用出力データとして取得する学習用出力データ取得ステップと、
学習時に、前記学習用入力データおよび前記学習用出力データを学習データとし、複数の前記学習データを用いて畳み込みニューラルネットワークで学習を行い、挙動予測モデルを作成する学習ステップと、
学習済み後に、現在時刻から所定時間過去に遡った過去時刻までの前記予測変数の時系列データと、前記現在時刻から前記過去時刻までの前記要因変数の時系列データと、を予測算出用データとして、動作中の前記機器から取得する予測算出用データ取得ステップと、
学習済みの前記挙動予測モデルに前記予測算出用データを入力して、前記現在時刻から将来に亘る前記予測変数の挙動を示した予測時系列データを算出する予測ステップと、を備える、挙動予測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習の一種であるディープラーニングを用いた挙動予測システム及び挙動予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造プロセスに対して情報システムの導入が盛んに行われており、システムには、膨大な過去の操業データが蓄積されている。そして、昨今の人工知能技術の進展に伴い、これらのデータを有効に利用した操業支援システムの実現に大きな期待が寄せられている。例えば、機械学習の一種であるディープラーニングを用いた時系列データの予測手法が注目を浴びている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】N.D Lewis: “DEEP TIME SERIES FORECASTING with PYTHON, An Intuitive Introduction to Deep Learning for Applied Time Series Modeling”, www.AusCov.com (2017)
【非特許文献2】R.J.Frank, N.Davey, S.P.Hunt: “Time Series Prediction and Neural Networks”, Journal of Intelligent and Robotic Systems (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる予測手法については、例えば、製造プロセスの分野において自動運転や、操業支援、故障診断等での応用が期待されている。
【0005】
そこで、本発明は以上の点を考慮してなされたもので、製造プロセスにおける将来の挙動を予測できる挙動予測システム及び挙動予測方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の挙動予測システムでは、製造プロセスで正常動作時に機器から得られる複数種類のプロセス変数の時系列データを取得するプロセス変数取得部と、前記複数種類のプロセス変数のうち、将来挙動を予測したい前記プロセス変数を予測変数とし、前記予測変数の挙動に影響を与える前記プロセス変数を要因変数とする変数特定部と、前記予測変数の過去の所定時間の時系列データと、前記要因変数の過去の前記所定時間の時系列データと、を学習用入力データとして取得する学習用入力データ取得部と、前記学習用入力データとした前記予測変数の前記時系列データに時系列に続く、前記予測変数の過去の時系列データを学習用出力データとして取得する学習用出力データ取得部と、学習時に、前記学習用入力データおよび前記学習用出力データを学習データとし、複数の前記学習データを用いて畳み込みニューラルネットワークで学習を行い、挙動予測モデルを作成する学習部と、学習済み後に、現在時刻から所定時間過去に遡った過去時刻までの前記予測変数の時系列データと、前記現在時刻から前記過去時刻までの前記要因変数の時系列データと、を予測算出用データとして、動作中の前記機器から取得する予測算出用データ取得部と、学習済みの前記挙動予測モデルに前記予測算出用データを入力して、前記現在時刻から将来に亘る前記予測変数の挙動を示した予測時系列データを算出する予測部と、を備えるものである。
【0007】
また、本発明の挙動予測方法では、製造プロセスで正常動作時に機器から得られる複数種類のプロセス変数の時系列データを取得するプロセス変数取得ステップと、前記複数種類のプロセス変数のうち、将来挙動を予測したい前記プロセス変数を予測変数とし、前記予測変数の挙動に影響を与える前記プロセス変数を要因変数とする変数特定ステップと、前記予測変数の過去の所定時間の時系列データと、前記要因変数の過去の前記所定時間の時系列データと、を学習用入力データとして取得する学習用入力データ取得ステップと、前記学習用入力データとした前記予測変数の前記時系列データに時系列に続く、前記予測変数の過去の時系列データを学習用出力データとして取得する学習用出力データ取得ステップと、学習時に、前記学習用入力データおよび前記学習用出力データを学習データとし、複数の前記学習データを用いて畳み込みニューラルネットワークで学習を行い、挙動予測モデルを作成する学習ステップと、学習済み後に、現在時刻から所定時間過去に遡った過去時刻までの前記予測変数の時系列データと、前記現在時刻から前記過去時刻までの前記要因変数の時系列データと、を予測算出用データとして、動作中の前記機器から取得する予測算出用データ取得ステップと、学習済みの前記挙動予測モデルに前記予測算出用データを入力して、前記現在時刻から将来に亘る前記予測変数の挙動を示した予測時系列データを算出する予測ステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現在時刻から将来に亘る予測変数の挙動を示した予測時系列データを算出することができるため、当該予測時系列データに基づいて、製造プロセスにおける将来の挙動を予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による挙動予測システムを用いた製造プロセスの説明(1)に供する概略図である。
【図2】本発明の挙動予測システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】畳み込みニューラルネットワークを用いた挙動予測モデルの構成を示した概略図である。
【図4】本発明による挙動予測システムを用いた製造プロセスの説明(2)に供する概略図である。
【図5】本発明による挙動予測システムを用いた製造プロセスの説明(3)に供する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいて本発明の実施の形態を詳述する。
(1)本発明の概略
図1は、製造プロセスでの、ある所定の設備21を示す。本発明による挙動予測システムを適用可能な製造プロセスとしては、例えば、石油精製プラントの他、エチレンやプロピレン等の石油化学プラント、重合プラント等がある。この種の製造プロセスでは、各工程で用いる設備から流量や、液位、温度、圧力等を示すプロセス変数が得られ、これらプロセス変数の挙動を作業員(オペレータとも称する)が監視・制御することによって製品を製造する。

【0011】
製造プロセスにおいて、オペレータが扱うプロセス変数の数は数百から数千にもおよぶ。これらのプロセス変数は、例えば、物理量ID(流量:F、液位:L、温度:T、圧力:P等)と、計測・制御を行う場所に対応するユニークな(重複しない)識別IDと、属性ID(測定値:PV、設定値:SV、操作値:MV等)とによって表わされるタグとして識別される。

【0012】
ここでは、説明を簡単にするため、製造プロセスで用いられる、流量計22、制御弁23および貯留部24が設けられた設備21を一例に以下説明する。例えば、102という場所の流量計22における流量の測定値は、流量の物理量ID「F」と、場所の識別ID「102」と、測定値を示す属性ID「PV」を用いて、「F102PV」というタグで表される。

【0013】
同様に、例えば、102という場所で液体の流量を制御する制御弁23による流量操作値は、流量の物理量ID「F」と、場所の識別ID「102」と、操作値を示す属性ID「MV」を用いて、「F102MV」というタグで表される。なお、流量計22および制御弁23は、「102」という同じ場所に配置されている。また、例えば、103という場所で液体を貯留する貯留部24内における液位の測定量は、液位の物理量ID「L」と、場所の識別ID「103」と、測定値を示す属性ID「PV」を用いて、「L103PV」というタグで表される。

【0014】
製造プロセスで各機器から得られる測定値や設定値等の時系列データは、各機器固有のタグにより識別することができ、挙動予測システムは、タグの時系列データをプロセス変数の時系列データとして取得する。

【0015】
オペレータは、製造プロセスの基本的な知識と、成功事例および失敗事例等の経験とを基に、製造プロセスで用いる各機器が正常に動作するように、設備21等から取得したプロセス変数の時系列データを監視・制御している。本発明による挙動予測システムは、製造プロセスで得られるプロセス変数のうち、オペレータが所望するプロセス変数の時系列データについて、将来の挙動を予測するものである。この際、予測対象とするプロセス変数(以下、予測変数とも称する)の過去の時系列データを利用するだけではなく、予測変数の数値変動に影響を与えるプロセス変数(以下、要因変数とも称する)の過去の時系列データをも利用し、その予測精度を高めるものである。

【0016】
以下、図1に示した設備21の構成を一例に、挙動予測システム(図1では図示せず)の概略について説明する。ここでは、流量計22および制御弁23が配管に配置され、これら流量計22および制御弁23を経由した液体25が貯留部24に貯留される設備21とする。なお、26は液位計であり、貯留部24内の液位を検出して、その結果を呈示し得る。

【0017】
この場合、流量計22は、配管を流れる液体の流量を検出し、その測定値の時系列データを、プロセス変数の時系列データとして挙動予測システムに送出する。制御弁23では、流量操作値によって弁の開閉度合が調整され、通過する液体の流量が調整される。制御弁23は、流量操作値の時系列データを、プロセス変数の時系列データとして挙動予測システムに送出する。液位計26は、貯留部24内の液位を検出し、その測定値の時系列データを、プロセス変数の時系列データとして挙動予測システムに送出する。

【0018】
このような設備21では、制御弁23における流量操作値と、流量計22における流量の測定値と、液位計26における液位の測定値と、は互いに影響を与えており、相関関係がある。例えば、制御弁23における流量操作値が大きくなったときには、配管内に流れる液体の流量が変化することから、流量計22および液位計26から得られるプロセス変数の数値にも影響を与える。具体的には、流量計22を通過する液体の流量が増え、貯留部24内の液位が上昇するため、流量計22および液位計26での測定値も大きくなる。

【0019】
例えば、本発明の挙動予測システムでは、液位計26における液位の測定値を予測変数(タグ「L103PV」)とすると、当該予測変数は、流量計22における流量の測定値の影響を受けるため、流量計22の測定値は要因変数(タグ「F102PV」)となる。挙動予測システムでは、このような予測変数の時系列データ、および、複数種類の要因変数の時系列データを用いて、後述するニューラルネットワークによるディープラーニングを行い、得られた挙動予測モデルを利用して、予測変数の将来の挙動を予測できるものである。

【0020】
ここで、図1におけるエリアERには、流量計22における流量の測定値の時系列データDを示し、エリアERには、液位計26における液位の測定値の時系列データDを示す。エリアERにおけるDは、本発明の挙動予測システムを利用して求めた、予測変数の将来の予測挙動を示す予測時系列データである。

【0021】
従来の製造プロセスでは、流量計22における流量の時系列データDや、液位計26における液位の時系列データDについて、過去の挙動のみをオペレータに通知している。そのため、熟練オペレータは、流量計22における流量の時系列データDや、液位計26における液位の時系列データDの過去の挙動のみに基づいて、経験側から、現在のプロセスの状況を正確に把握する必要があった。例えば、液位計26における液位の時系列データDの将来の挙動を暗に予測し、オペレータの経験則から制御弁23等の適切な操作を行うようにしていた。

【0022】
しかしながら、新人オペレータの場合には、重要なタグの時系列データに対する挙動監視は可能であるが、経験が浅いために、従来のように、時系列データD,Dの個別的な状況把握のみでは、今までに経験したことがない異常(流量計22における流量の時系列データDや、液位計26における液位の時系列データDの異常な挙動)を予測することは難しい。

【0023】
これに対して、本発明の挙動予測システムでは、流量計22における流量の時系列データDや、液位計26における液位の時系列データDについての現在の状況だけではなく、上述したように、予測変数とした、液位計26にて測定される液位の将来の予測時系列データDについてもオペレータに呈示することができる。

【0024】
本発明の挙動予測システムでは、現在から将来に亘る、液位計26での測定値の挙動変化を示した予測時系列データDを呈示できるため、経験の浅い新人オペレータに対しても、製造プロセスにおける異変に気づかせることができる。そして、このような気づきによって、製造プロセスにおいて、液位計26にて測定される液位の挙動の本質を、新人オペレータが自ら習得していくことも可能となる。

【0025】
また、液位計26にて測定される液位の将来における予測時系列データDの挙動を基に、オペレータに対して事前に将来の状況に応じた処置を促すこともできる。本発明の挙動予測システムは、例えば、過去の操業データや、熟練オペレータの経験則から、液位計26にて測定される液位について所定の上限値Lを予め設定することもできる。これにより、挙動予測システムでは、例えば、上限値Lを基に、製造プロセスで異常状態が生じる目安を呈示し得、液位計26にて測定される液位の将来の予測時系列データDと、上限値Lとの乖離の程度を呈示することで、将来生じる恐れのある異常に対する対処をオペレータに促すこともできる。

【0026】
(2)挙動予測システムの概略
次に、上述した挙動予測システムについて詳細に説明する。図2に示すように、挙動予測システム1は、プロセス変数取得部4、変数特定部5、学習用入力データ取得部6、学習用出力データ取得部7、学習部8、予測部9、異常予測部10、および表示部11を備えている。

【0027】
プロセス変数取得部4は、製造プロセスの各設備21に設けられた機器(例えば、流量計22、制御弁23、液位計26の他、温度計や圧力計等その他の機器)に接続されている。これにより、プロセス変数取得部4は、製造プロセスの各設備2から、それぞれタグに対応付けられた時系列な数値を、プロセス変数の時系列データとして受け取る。

【0028】
なお、上述したように、プロセス変数とは、タグのことであり、流量:F、液位:L、温度:T、圧力:P等の物理量IDと、計測・制御を行う場所に対応するユニークな識別IDと、測定値:PV、設定値:SV、操作値:MV等の属性IDと、からなる。例えば、プロセス変数取得部4は、図1に示した液位計26からは、液位の測定値を示すタグ「L102PV」と、これに対応付けられた液位の時系列な測定値とを、プロセス変数の時系列データとして受け取る。

【0029】
変数特定部5は、製造プロセスで得られた複数種類のプロセス変数の時系列データを、プロセス変数取得部4から受け取り、これらプロセス変数の中から後述する予測変数と要因変数とを特定する。予測変数は、複数種類のプロセス変数のうちからオペレータにより選択されたものであり、オペレータが将来の挙動を予測したいプロセス変数である。要因変数は、複数種類のプロセス変数のうちから選択された、予測変数の時系列データの挙動に影響を与えるプロセス変数である。

【0030】
例えば、製造プロセスの設備21において、オペレータが、貯留部24内の液位について将来的な変動を予測したい場合には、変数特定部5によって、液位計26から得られるプロセス変数(タグ(L103PV)に対応付けられた変数)を予測変数として特定する。また、変数特定部5は、流量計22から得られるプロセス変数(タグ(F102PV)に対応付けられた変数)等、予測変数の挙動に影響を与える複数種類のプロセス変数を、要因変数として選択する。

【0031】
因みに、この実施形態の場合、変数特定部5による要因変数の特定は、オペレータ自身で選択する。この際、過去の操業データや、後述する学習部8で実行するディープラーニングの結果を基に、プロセス変数間の相関関係を特定し、複数種類のプロセス変数の中から要因変数を特定する。

【0032】
学習用入力データ取得部6は、予測変数の一定長の時系列データと、複数の要因変数の一定長の時系列データとを、学習用入力データとして、変数特定部5から取得してゆく。また、学習用出力データ取得部7は、学習用入力データ取得部6により取得した予測変数の時系列データに時系列に続く、予測変数の所定長の時系列データを、学習用出力データとして変数特定部5から取得してゆく。

【0033】
学習用入力データおよび学習用出力データは、後述する学習部8においてディープラーニングに使用される。ここで、図3は、学習部8によるディープラーニングにより作成される挙動予測モデル31の例を示す。学習済みとなった挙動予測モデル31は、予測変数の一定長の時系列データと、複数の要因変数の一定長の時系列データとが学習用入力データとして入力されると、当該予測変数の将来の挙動を示す一定長の時系列データが予測時系列データとして出力されるモデルである。

【0034】
(2-1)挙動予測モデル31の学習について
ここで、後述する予測部9で使用する学習済み挙動予測モデル31を作成するために、学習部8にて行われるディープラーニングについて説明する。図3に示すように、挙動予測モデル31は入力層と畳み込み層とプーリング層と全結合層38とを有しており、全結合層38は中間層と出力層とを有している。学習時には、学習用入力データが入力層に入力されてゆき、学習済み後には、後述する予測算出用データが入力層に入力される。先ずは、ディープラーニングを行うために、挙動予測モデル31に入力させてゆく、学習用入力データと学習用出力データとについて具体的に説明する。

【0035】
この場合、学習用入力データ取得部6は、予測変数1個と要因変数N個(Nは、1以上の整数)との合計N+1個について、それぞれ過去の所定時間で得られる、T個のデータ値が並んだ時系列データを取得してゆき、これを1単位の学習用入力データとして学習部8に送出する。過去の所定時間とは、例えば、過去のある時刻Tから所定時間経過した過去のある時刻までの時間幅をいう。

【0036】
図3中の32は、所定時間で得られた、時系列に並んだT個の予測変換の時系列データを示し、33は、同じく所定時間で得られた、時系列に並んだT個の要因変数の時系列データを示す。図3に示す学習用入力データは、予測変数および要因変数がそれぞれ時系列に並ぶ方向(所定時間で得られるT個のデータが時系列に並ぶ時間軸方向)を行方向に示し、1個の予測変数およびN個の要因変数が並ぶ方向を列方向に示しており、予測変数および要因変数の各時系列データが行列状に配置された構成としている。

【0037】
挙動予測モデル31の学習をする際、図3に示すように、得られた(N+1)×Tでなる、予測変数および要因変数の時系列データは、学習用入力データとして、挙動予測モデル31の入力層に入力される。挙動予測モデル31の学習をする際、学習用出力データ取得部7は、学習用入力データとした予測変数の時系列データに時系列に続き、かつT個のデータ毎に得られるN個の過去の予測変数の時系列データを、学習用出力データとして取得し、これを挙動予測モデル31の出力として学習部8に与える。

【0038】
そして、挙動予測モデル31の学習をする際には、これら学習用入力データおよび学習用出力データを1つの学習データとして用いる。複数の学習データを用いて挙動予測モデル31の学習をするため、1単位時間ずつずらして複数の学習データを取得してゆき、挙動予測モデル31に与えてゆく。例えば、蓄積されているプロセス変数のデータ長をLとしたとき、挙動予測モデル31の学習には、過去のデータ(データ長L)に対して1単位時間ずつずらした「L-{T+(N×T)}+1」個の学習データを利用する。

【0039】
なお、1単位時間ずつずらした複数の学習データを用いて学習を行った、学習済みの挙動予測モデル31に対しては、その後、予測変数1個と要因変数N個との合計N+1個について、現在時刻CTから所定時間過去に遡った過去時刻から、現在時刻CTまでの時系列データを、予測算出用データとして入力することとなる。

【0040】
具体的には、上述したようにTは、単位時間毎にデータを取得していったときの合計のデータ個数を示すことから、これに合わせて、過去時刻として(-T+1)から順次(-T+2),(-T+3),…,0(ここで0は現在時刻を示す)までの、予測変数1個と要因変数N個のそれぞれ時系列データを、予測算出用データとして入力する。

【0041】
これにより、学習済みの挙動予測モデル31からは、現在時刻CTから将来に向けてT個のデータ毎の、N個の予測変数の時系列データ(以下、予測時系列データとも称する)を算出することができる。なお、学習済みの挙動予測モデル31に入力される予測算出用データや、これにより得られる予測時系列データについては、後の「(2-2)学習済みの挙動予測モデル31を用いた異常予知について」にて、さらに説明する。

【0042】
次に、挙動予測モデル31における畳み込み層や、特徴マップ35、プーリング層、全結合層38について説明する。挙動予測モデル31は、畳み込み層を備える畳み込みニューラルネットワークを使用して学習が行われる。

【0043】
畳み込みニューラルネットワークは、一般的には高い精度で画像を分類するために用いられている手法であり、例えば、インターネットURL(http://en.wikipedia.org/wiki/convolutional neural network)等に詳細に記載されている。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、脳の神経回路網を模したニューラルネットワークを多層にして学習するディープラーニング(ディープニューラルネットワーク;Deep Neural Network)の一種である。

【0044】
入力層に入力された学習用入力データは、N個のフィルタ34で構成される畳み込み層で時系列データの特徴を抽出する。畳み込み層のフィルタ34は、1×Tの行列とし、Tは特徴を抽出するために十分な時系列データの長さとし、T>Tである。

【0045】
畳み込み層の各フィルタ34内の重みは、合計が1になるように設定されている。入力層に入力された、(N+1)×Tの行列でなる学習用入力データに対して、時間軸方向である行方向に隣接するT個の値を一つずつずらしながら、畳み込み層のフィルタ34が重ねられてゆく。学習用入力データの行方向(時間軸方向)に並ぶT個の各値に、畳み込み層のフィルタ34の重みを乗じた値の合計を、個々の値とする。

【0046】
畳み込み層では、1×Tの行列でなるフィルタ34を用いることで、1個の予測変数とN個の要因変数の合計N+1個が並んだ方向に対しては畳み込み演算処理が実行されない。よって、予測変数の挙動に影響を与えるN個の要因変数全てを残しつつ、これら予測変数および要因変数の時間軸方向に並ぶ時系列データについてのみ畳み込み演算処理を実行し得る。

【0047】
次にプーリング層について説明する。プーリング層では、1×T(Tは2以上の整数である)の行列でなるフィルタ36を用いたプーリング処理を実行する。特徴マップ35は、フィルタ36で指定された大きさの行列の範囲(1×T)が、1つの値に集約される。1×Tの行列を1つの範囲とする際の集約は、1×Tの行列でなるフィルタ36の範囲に含まれる、特徴マップ35内の値の平均値とする。

【0048】
フィルタ36を用いたプーリング処理によって、(N+1)×Tの大きさの行列でなる特徴マップ35は、(N+1)×T/(1×T)に圧縮された特徴マップ37となる。このように、(1×T)の行列でなるフィルタ36を用いることで、1個の予測変数とN個の要因変数の合計N+1個が並んだ方向に対しては圧縮されない。よって、予測変数の挙動に影響を与えるN個の要因変数全てを残しつつ、これら予測変数および要因変数の時間軸方向に並ぶ時系列データについてのみ圧縮し得る。

【0049】
この圧縮された特徴マップ37の行列に含まれる値の数と、畳み込みフィルタ34のフィルタ数Nとを掛け合わせた数が、次段の全結合層38における入力層のノード数となる。全結合層38の中間層は、N個のノードを介して、N個のノードを持つ出力層に算出結果を出力する。なお、上述した変数N~N、T~Tの値は、過去の操業データやオペレータの経験則から予め設定しておく。

【0050】
出力層から出力されるN個のデータは、時系列順にN個並んだ予測変数の将来の挙動のデータ列である。すなわち、入力層に入力した学習用入力データの予測変数の時系列データに対して、時系列順にN個並んだ予測変数の将来(学習用入力データの予測変数から見て)の挙動のデータ列となる。

【0051】
そこで、学習用入力データを基に出力層から出力された算出データと、学習用出力データとした、当該学習用入力データの予測変数の時系列データに時系列に続く実際の予測変数の時系列データと、を用い、例えば、誤差逆転伝搬法により、挙動予測モデル31の畳み込み層や全結合層38等の各層の重みを更新する。このような処理を、1単位時間ずつずらした複数の学習データ毎に実行してゆき、学習済みの挙動予測モデル31を生成する。

【0052】
学習によって生成された挙動予測モデル31は予測部9で利用される。本発明の挙動予測システム1では、稼働中の製造プロセスの設備21から逐次新しいプロセス変数が入力され、学習済みの挙動予測モデル31が予測部9においてリアルタイムに利用される。また、挙動予測システム1では、製造プロセスの設備21から新しいプロセス変数が入力される度に、学習部8において、当該プロセス変数を利用してリアルタイムに挙動予測モデル31の更新を行う。

【0053】
(2-2)学習済みの挙動予測モデル31を用いた異常予知について
次に、学習済みの挙動予測モデル31を用いた異常予知について説明する。学習済みの挙動予測モデル31は、予測変数の将来の挙動予測のために利用される。予測部9には、現在時刻から所定時間過去に遡った過去時刻から、現在時刻までの、予測変数および要因変数の各時系列データが、予測算出用データとして変数特定部5から入力される。ここでは、変数特定部5は予測算出用データ取得部として機能する。

【0054】
なお、図3では、入力層に、時刻tでの予測算出用データを「Xi(t)」と表記している。過去時刻として(-T+1)から順次(-T+2),(-T+3),…,0(ここで0は現在時刻を示す)までの、予測変数1個と要因変数N個のそれぞれ時系列データを、予測算出用データとして入力する。この場合、「X(0)」は、時刻t=0、すなわち、現在時刻CTでの予測変数を示し、「X(-T+1)」は、時刻t=-T+1、すなわち、現在時刻を0としたとき、過去に-T+1遡った過去時刻での予測変数を示す。「X(0)」は、現在時刻CTでの1個目の要因変数を示し、「XN1(0)」は、現在時刻CTでのN個目の要因変数を示す。

【0055】
予測部9は、学習済みの挙動予測モデル31に予測算出用データを入力し、図1に示すように、現在時刻CTから(T×N)時間後までの将来に亘る予測変数の挙動を示した時系列データ(予測時系列データ)Dを算出して、これを異常予測部10および表示部11に出力する。

【0056】
表示部11には、例えば、図1のエリアERに示すように、過去から現在までの予測変数の挙動を示した時系列データDの波形に連続して、予測部9で算出した予測変数の予測時系列データDの波形を表示させる。この際、表示部11には、実測値である時系列データDと、算出値である予測時系列データDとが、区別できるように表示態様を変え、オペレータに呈示する。これによりオペレータは、過去から現在までの予測変数の挙動から、将来どのような挙動を示すかを瞬時に認識し得る。

【0057】
また、予測変数の予測時系列データDは、要因変数の異常な挙動により引き起こされる。そのため、オペレータは、予測変数の将来の挙動を示す予測時系列データDが異常な挙動を示したことを認識することで、間接的に、要因変数の異常な挙動が生じている可能性が高いことをも認識することができる。

【0058】
例えば、オペレータが、ある要因変数の監視を行わず、当該要因変数の重要な変化を見落としてしまうこともある。このような、要因変数の変化は、他の要因変数や予測変数にも影響を与え、将来的に、製造プロセスにて大きな問題を引き起こす場合がある。このような場合、要因変数の変化の影響は、予測変数の予測時系列データDの挙動にも現れるため、当該予測時系列データDの挙動を確認することで、オペレータは、製造プロセスで生じる異常を予測することができる。

【0059】
また、異常予測部10は、予測変数の将来の挙動の異常を検知するためのルール群を保持しており、そのルールに従って異常警告を行う。予測変数の挙動異常のルールは、他の要因変数の挙動と予測変数の挙動との関連性を考慮し、予測変数の予測時系列データDのある時点での値や、予測時系列データDの変化状況等により規定される。

【0060】
異常予測部10は、異常警告として、表示部11に警告表示を行ったり、音声や警告音を出力することにより、オペレータに通知する。また、異常予測部10は、所定のルールにより規定した上限値Lを、図1のエリアERに示すように、表示させてもよい。

【0061】
(3)製造プロセスにおけるオペレータの重要情報の見落とし防止について
通常、オペレータは、製造プロセスで得られる、いくつかのプロセス変数の時系列データの監視を行っており、それらのプロセス変数の時系列データの挙動が正常か否かを確認している。この際、製造プロセスでは、監視対象とするプロセス変数の値がどのように挙動するかを、他のプロセス変数の変動を基に予測することも必要となる。また、監視対象とするプロセス変数の値が正常か否かは、単一のプロセス変数の値が、ある一定の領域値に入っているか否かだけでは判断ができない場合もある。

【0062】
そのため、熟練オペレータは、監視対象とするプロセス変数の値が正常か否かの判断を行うため、そのプロセス変数について、自身の経験則からオペレータが予測した挙動と、現在のプロセス変数の値の挙動とが一致しているか否かの判断を行っている。これらの判断は製造プロセスにて得られる多数のプロセス変数に対して行わなければならないが、オペレータが常に全てのプロセス変数をチェックすることは難しい。特に、製造プロセスのように、複数のプロセスが連続的に実行されるときには、重要なチェックを怠ることは重大な異常を引き起こす原因ともなる。

【0063】
そこで、本発明による挙動予測システム1では、複数の要因変数の挙動に影響を受ける予測変数の将来の挙動を示した予測時系列データDを利用して、予測時系列データDの挙動に、現在の予測変数の実測値が合っているかを示すようにした。具体的に、表示部11には、図1との対応部分に同一符号を付して示す図4のエリアERのように、例えば、予測部9で算出した液位計26における予測変数の予測時系列データDの波形と、液位計26にて測定している液位の、過去からの時系列データDの波形とを同時に表示させ続ける。

【0064】
これにより、予測時系列データDを算出した挙動予測時刻Sから、予測時系列データDと、液位計26による液位の実測値の時系列データDとが同時に表示されることになる。これにより、オペレータは、予測時系列データDと実測値の時系列データDとの乖離の程度を瞬時に認識できる。

【0065】
例えば、図4に示した実測値の時系列データDは、予測時系列データDに比較して一定値を保っており、早い段階で液位が変化していないと認識できる。このことから、例えば、オペレータは、液位計26の故障により液位の値が固定されていることを想定できる。この際、異常予測部10において、予測時系列データDと実測値の時系列データDとの乖離の範囲を指定しておき、この乖離の範囲を超えたときに異常検知をオペレータに知らせるアラームを発するようにしてもよい。

【0066】
従来では、このような予測時系列データDの呈示を行っていないことから、オペレータは、液位計26の実測値から液位の変化が少ないことを、先ず認識する必要があるが、多くのプロセス変数を監視する必要がある状況下では、液位の僅かな変化は認識し難い。また、液位の変化が少ないことを認識できても、流量計22での流量の変化があるかどうかを確認する必要があり、流量の変化がある場合に初めて液位計26の故障を疑うことになる。

【0067】
一方、本発明による挙動予測システム1では、予測時系列データDと、実測値の時系列データDとの乖離の程度を、オペレータに対して呈示していることから、液位の変化をオペレータに対して容易に認識させることができる。また、予測時系列データDには、流量計22での流量の変化が反映されていることから、オペレータは、流量計22での流量の変化があるかどうかを確認せずに、即座に液位計26の故障を疑うことができる。

【0068】
(4)オペレータに対する操作ガイダンスについて
上述した実施形態では、予測変数として、例えば液位計26での液位の測定値を予測変数として特定したが、図1との対応部分に同一符号を付して示す図5(エリアER)のように、制御弁23の流量操作値(すなわち弁の開閉度)を予測変数として特定し、当該流量操作値の将来の挙動を示す予測時系列データDを、挙動予測システム1により算出してもよい。

【0069】
図5は、液位計26の液位の測定値(タグはL103PV)に応じて、制御弁23の流量操作値(タグはF102MV)を制御するプロセスである。すなわち、オペレータは、液位計26の液位の測定値の挙動に応じて、制御弁23の流量操作値を所定の値に設定し、製造プロセスを操業している。

【0070】
従って、例えば、図5において、制御弁(操作機器)23の流量操作値(F102MV)を予測変数とした場合、当該予測変数の挙動に影響を与える要因変数は、流量計(測定機器)22の流量の測定値(F102PV)や、液位計26の液位の測定値(L103PV)となる。このように、制御弁23の流量操作値を予測変数とし、液位計26の液位の測定値等を要因変数とした場合、上述した挙動予測システム1は、制御弁23の流量操作値について将来の挙動を予測することができる。

【0071】
制御弁23の流量操作値を予測変数とし、現在時刻CTから当該予測変数の将来の挙動を示した予測時系列データDは、オペレータの制御弁23の制御方法を予測したものであり、このような予測時系列データDをオペレータに示すことによって、制御弁23について、これからどのように操作すべきかをオペレータに指示することが可能となる。

【0072】
従って、挙動予測システム1は、製造プロセスの異常予測について利用するだけでなく、オペレータに対して操作ガイダンスを示唆することにも利用可能である。

【0073】
(5)作用および効果
以上の構成において、挙動予測システム1では、製造プロセスで、正常動作時に、流量計22や、制御弁23、液位計26等その他複数の機器からそれぞれ得られる複数種類のプロセス変数の時系列データを取得してゆく。挙動予測システム1では、複数種類のプロセス変数のうち、将来挙動を予測したいプロセス変数を予測変数とし、この予測変数の挙動に影響を与えるプロセス変数を要因変数として特定する。

【0074】
挙動予測システム1では、挙動予測モデル31の学習を行う学習時、予測変数の過去の所定時間の時系列データと、要因変数の過去の所定時間の時系列データと、を学習用入力データとして取得する。また、この学習用入力データとした予測変数の時系列データに時系列に続く、予測変数の過去の時系列データを学習用出力データとして取得する。

【0075】
挙動予測システム1では、学習時に、学習用入力データおよび学習用出力データを学習データとし、1単位時間ずつずらして学習データを順次取得してゆき、複数の学習データを用いて畳み込みニューラルネットワークで学習を行い、学習済みの挙動予測モデル31を作成する。挙動予測システム1では、学習済み後に、現在時刻CTから所定時間過去に遡った過去時刻までの予測変数の時系列データと、現在時刻CTから過去時刻までの要因変数の時系列データと、を予測算出用データとして、動作中の機器から取得する。

【0076】
挙動予測システム1では、学習済みの挙動予測モデル31に予測算出用データを入力することで、現在時刻CTから将来に亘る予測変数の挙動を示した予測時系列データを算出することができる。これにより挙動予測システム1では、現在時刻CTから将来に亘る予測変数の挙動を示した予測時系列データに基づいて、製造プロセスにおける将来の挙動を予測できる。

【0077】
また、この挙動予測システム1では、予測時系列データと、機器から得られる実際の予測変数の時系列データとを同時に表示し、実際に得られた実測値である予測変数について、予測時系列データとの乖離の程度を通知する表示部11を設けるようにした。これにより、挙動予測システム1では、予測時系列データを算出した挙動予測時刻Sから、実測値である予測変数の挙動を重ね合わせて呈示することで、オペレータに対して、予測時系列データを基準に、実測値である予測変数の変化を瞬時に認識させることができる。

【0078】
さらに、この挙動予測システム1では、機器から時系列に得られる実際の予測変数の時系列データが、予測時系列データから所定量乖離したときに、将来の異常を示唆する異常予測部10を設けるようにした。これにより挙動予測システム1では、オペレータに対して、製造プロセスで生じる恐れのある将来の異常を確実に知らせることができる。

【0079】
(6)他の実施の形態
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態においては、製造プロセスで正常動作時に機器から得られる複数種類のプロセス変数として、流量計22による流量の測定値や、制御弁23における流量操作値、液位計26による液位の測定値を、具体的な一例として挙げたが、本発明はこれに限らない。例えば、温度計による温度の測定値や、圧力計による圧力の測定値、気圧計によるタンク内の気圧の測定値等、製造プロセスで使用する種々の機器から得られる数値をプロセス変数としてもよい。また、操作機器の操作値として、流量操作値の他、気圧調整器の気圧操作値や、圧力調整器の圧力操作値、温度調整器の温度操作値等、その他種々の操作機器の操作値を適用してもよい。

【0080】
また、上述した実施形態においては、変数特定部5による要因変数の特定は、オペレータ自身で選択するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、変数特定部5において予め設定した所定の規定を基に、プロセス変数から自動的に要因変数を特定してもよい。

【0081】
また、上述した実施形態においては、挙動予測モデルとして、1つの畳み込み層と1つのプーリング層とを設けた挙動予測モデル31について説明したが、本発明はこれに限らず、畳み込み層およびプーリング層を多層に設けた挙動予測モデルを適用してもよい。さらに、学習データは1単位時間ずつずらして取得したが、本発明はこれに限らず、任意に定めた所定単位時間ずつずらして学習データを取得していってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 挙動予測システム
4 プロセス変数取得部
5 変数特定部(変数特定部、予測算出用データ取得部)
6 学習用入力データ取得部
7 学習用出力データ取得部
8 学習部
9 予測部
10 異常予測部
11 表示部
23 制御弁(操作機器)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4