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明細書 :複合材料からなるカーボン系触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年4月18日(2019.4.18)
発明の名称または考案の名称 複合材料からなるカーボン系触媒
国際特許分類 B01J  27/24        (2006.01)
B01J  35/06        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   8/10        (2016.01)
FI B01J 27/24 M
B01J 35/06 L
B01J 35/02 H
H01M 4/90 X
H01M 8/10 101
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 20
出願番号 特願2017-565633 (P2017-565633)
国際出願番号 PCT/JP2017/003857
国際公開番号 WO2017/135386
国際出願日 平成29年2月2日(2017.2.2)
国際公開日 平成29年8月10日(2017.8.10)
優先権出願番号 2016019615
優先日 平成28年2月4日(2016.2.4)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】石崎 貴裕
【氏名】木口 崇彦
出願人 【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100129632、【弁理士】、【氏名又は名称】仲 晃一
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
5H018
5H126
Fターム 4G169AA02
4G169AA09
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA21C
4G169BD03A
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BE02C
4G169BE13C
4G169BE16C
4G169BE18C
4G169BE38C
4G169BE43C
4G169CC32
4G169DA05
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EB19
4G169EC27
4G169FA01
4G169FB29
4G169FB57
4G169FB58
4G169FC02
5H018AA06
5H018AS03
5H018DD05
5H018EE05
5H018EE11
5H018EE16
5H126BB06
要約 耐久性を有するとともに、十分な酸素還元反応活性を発揮する、燃料電池のカソードに好適なカーボン材料からなる触媒を提供することにある。炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物からなるカーボン粒子、及び、カーボンナノファイバー、を含み、前記炭素化合物から生成されるカーボン粒子が前記カーボンナノファイバーに凝集していること、を特徴とする複合材料からなるカーボン系触媒、を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物からなるカーボン粒子、及び、
カーボンナノファイバー、を含み、
前記カーボン粒子が前記カーボンナノファイバーに凝集していること、
を特徴とする複合材料からなるカーボン系触媒。
【請求項2】
前記異種元素がホウ素及び/又はチッ素であること、を特徴とする請求項1に記載の複合材料からなるカーボン系触媒。
【請求項3】
前記環構造が、5員環及び/又は6員環を含む環構造であること、を特徴とする請求項1又は2に記載の複合材料からなるカーボン系触媒。
【請求項4】
前記環式炭素化合物が、アニリン、ピリジン、ピラジン、トリアジン及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種であること、を特徴とする請求項1~3のうちのいずれかに記載の複合材料からなるカーボン系触媒。
【請求項5】
前記環式炭素化合物が2-シアノピリジンであること、と特徴とする請求項1に記載の複合材料からなるカーボン系触媒。
【請求項6】
前記不飽和結合を有する炭素化合物がエチレン性不飽和モノマーであること、を特徴とする請求項1又は2に記載の複合材料からなるカーボン系触媒。
【請求項7】
前記不飽和結合を有する炭素化合物がアクリロニトリルであること、を特徴とする請求項1に記載の複合材料からなるカーボン系触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒活性サイトを豊富に有し、燃料電池に好適に用いられるカーボン系触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の排気ガスによる大都市の大気汚染の緩和、石油代替エネルギーの利用促進、地球温暖化防止に資する二酸化炭素の排出量低減等の観点から、燃料電池の研究開発及び実用化が盛んである。
【0003】
燃料電池は、比較的高効率で起電力を得られ、排ガスもクリーンであることから、環境負荷の少ない新しい電源として注目を集めており、なかでも、プロトン導電性の高分子電解質膜を使用する固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)が注目されている。
【0004】
このPEFCは、一般的にアノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配される高分子電解質膜とを含む、膜電極接合体によって構成されており、小型軽量化が可能で、100℃以下という低い温度で動作する。
【0005】
そして、PEFCは、アノードには、水素を酸化する水素酸化反応(HOR:Hydrogen Oxidation Reaction)を促進させる触媒が備えられ、カソードには、酸化剤を還元する酸素還元反応(ORR:Oxygen Reduction Reaction)を促進させる触媒が備えられている。
【0006】
ここで、反応速度の遅いカソードには、高いORR活性を示す白金触媒が広く一般に使用されているが、白金触媒は価格が高いことや、PEFCに使用した場合の耐久性が低いこと等から、白金触媒に代わる新たな触媒が求められている。
【0007】
例えば、特許文献1~4においては、白金代替触媒の一つとして、異種元素含有カーボン材料等に代表されるカーボン系触媒が提案されている。異なる混成軌道を有する炭素は異なる成分系で構成されると捉えられ、それらの間に物理的・化学的な相互作用を見出すことができ、特にカーボン材料の結晶格子点に異種原子を置換した異種元素含有カーボン材料は、ORR活性を発現する。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2004-362802号公報
【特許文献2】特開2010-270107号公報
【特許文献3】特開2012-54157号公報
【特許文献4】特開平08-165111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1~4において提案されている異種元素含有カーボン材料では、十分な酸素還元反応活性が得られているとは言えず、触媒として用いるには未だ改善の余地があった。そこで、本発明の目的は、耐久性を有するとともに、十分な酸素還元反応活性を発揮する、燃料電池のカソードに好適なカーボン材料からなる触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記目的を達成すべく、従来の異種元素含有カーボン材料について、その酸素還元反応活性を向上させる方法を鋭意検討した結果、カーボンナノファイバーと組み合わせることが極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、
炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物からなるカーボン粒子、及び、
カーボンナノファイバー、を含み、
前記カーボン粒子が前記カーボンナノファイバーに凝集していること、
を特徴とする複合材料からなるカーボン系触媒、
を提供するものである。
【0012】
このような構成を有する本発明のカーボン系触媒においては、前記炭素化合物を原料として生成されるカーボン粒子が、多孔質で比表面積が大きいため、酸素還元反応の触媒活性に寄与する活性サイトを数多く有し、また、カーボンナノファイバーが、高度に黒鉛化されており、網目状に構築されたコンポジット材料の導電パスとなり、電子の移動を促進させる。これらの相乗効果により、本発明のカーボン系触媒は、酸素還元反応に対する優れた触媒活性を発揮するのである。
【0013】
上記本発明の複合材料からなるカーボン系触媒においては、前記異種元素がホウ素及び/又はチッ素であること、が好ましい。
【0014】
また、前記環構造が、5員環及び/又は6員環を含む環構造であること、が好ましい。
【0015】
また、前記環式炭素化合物が、アニリン、ピリジン、ピラジン、トリアジン及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種であること、が好ましい。更に、前記環式炭素化合物が2-シアノピリジンであること、が好ましい。
【0016】
また、前記不飽和結合を有する炭素化合物はエチレン性不飽和モノマーであること、が好ましい。更に、不飽和結合を有する炭素化合物がアクリロニトリルであること、が好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐久性を有するとともに、十分な酸素還元反応活性を発揮する、燃料電池のカソードに好適なカーボン材料からなる触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の複合材料からなるカーボン系触媒を製造するためソリューションプラズマ処理を実施するために用いるソリューションプラズマ発生装置1の一例の構造を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例におけるSEM像及びTEM像である。
【図3】本発明の実施例におけるX線光電子分光測定の結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例における触媒活性1(サイクリックボルタンメトリー)の測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例における触媒活性2(リニアスイープボルタンメトリー)の測定結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例における触媒活性の劣化試験1の測定結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例における触媒活性の劣化試験2の測定結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例における触媒活性1(サイクリックボルタンメトリー)及び触媒活性2(リニアスイープボルタンメトリー)の測定結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例における触媒活性1(サイクリックボルタンメトリー)及び触媒活性2(リニアスイープボルタンメトリー)の測定結果を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例における触媒活性1(サイクリックボルタンメトリー)及び触媒活性2(リニアスイープボルタンメトリー)の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物からなるカーボン粒子、及び、カーボンナノファイバー、を含み、前記カーボン粒子が前記カーボンナノファイバーに凝集していること、を特徴とする複合材料からなるカーボン系触媒の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。

【0020】
[複合材料からなるカーボン系触媒]
本発明は、炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物からなるカーボン粒子(CNP:Carbon Nanoparticle)、及び、カーボンナノファイバー(CNF:Carbon Nanofiber)、を含み、前記カーボン粒子が前記カーボンナノファイバーに凝集していること、を特徴とする複合材料からなるカーボン系触媒、に関する。

【0021】
(カーボン粒子)
まず、本発明の複合材料からなるカーボン系触媒を構成するカーボン粒子について説明する。本発明におけるカーボン粒子は、「炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物」を原料として生成されるカーボン粒子であり、換言すると、カーボン材料に異種元素を適切に導入し、電子軌道および結晶空間等を制御することで、酸素還元(ORR)触媒としての機能を発現させたものである。

【0022】
代表的なカーボン材料であるグラファイトは、炭素原子がsp2結合してなる六員環構造を有するグラフェンシートが多数積層された構造を有している。このようなカーボン材料は、その結晶構造に特殊な「乱れ」が生じることで、酸素還元(ORR)反応に対する触媒作用を示すことが知られている。

【0023】
このような結晶構造の乱れは、例えば、カーボン材料を製造する際に鉄(Fe)やコバルト(Co)等の異種金属を添加してナノシェル化することや、グラフェン構造における炭素(C)サイトにチッ素(N)やホウ素(B)、ハロゲン原子等の異種原子を置換してドープカーボンとすること等で、導入することができる

【0024】
本発明におけるカーボン粒子は、上記の特殊な「乱れ」を備えるカーボン材料の製造の場として、液中で発生するプラズマ(液中プラズマ)を利用し、原料化合物としての炭素化合物の重合反応を伴う炭素化を進行させることにより生成できる。

【0025】
ここで、上記カーボン粒子に含まれる上記異種元素としては、ホウ素(B)及び/又はチッ素(N)であるのが好ましい。 炭素(C)は原子番号6の元素であり、例えばグラフェンシートにおける炭素サイトには、元素周期律表で炭素の両側に位置するホウ素(原子番号5)又はチッ素(原子番号7)が比較的安定して存在し、グラフェンの活性化に効果的に寄与する。したがって、異種元素としてホウ素やチッ素等を含む炭素化合物が重合された形態のカーボン材料を形成することで、活性を高めることができる。

【0026】
また、上記カーボン粒子は、5員環及び/又は6員環を化学構造に有することを特徴としている。上記カーボン粒子は、原料化合物である環式炭素化合物及び/又は不飽和結合を有する炭素化合物の構造を基本として、これがいくつか重合された化学構造を有している。チッ素等の異種元素は、例えば、一例として、グラフェンシートの端部において、6員環のピリジン型の構造や、5員環のピロール型の構造を形成しつつ存在するため、原料化合物も5員環や6員環の環構造を有するものが好ましい。

【0027】
原料化合物としての環式炭素化合物としては、アニリン、ピリジン、ピラジン、トリアジン及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。より好ましくは、ピリジン又はその誘導体がよい。また、本発明における、炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含み、少なくとも一の環構造を有する環式炭素化合物としては、2-シアノピリジンが好ましい。

【0028】
ただし、上記カーボン粒子の原料化合物は、必ずしも5員環又は6員環を化学構造に有する必要はなく、例えば不飽和結合を有する炭素化合物等、重合した後に5員環及び/又は6員環を形成する炭素化合物でも良い。

【0029】
また、上記不飽和結合を有する炭素化合物は、エチレン性不飽和モノマーであることが好ましい。本発明における、炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含み、少なくとも一の不飽和結合を有する炭素化合物としては、アクリロニトリルが好ましい。

【0030】
かかる本発明の、炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物を原料として生成されるカーボン粒子は、上記のとおり、原料化合物たる炭素化合物を含む液中でプラズマを発生させる、いわゆる「ソリューションプラズマ処理」を施すことで生成できる(例えば特開2014-100617号公報)。この方法によれば、原料化合物を重合させたカーボン材料を、異種元素を導入しつつ、生成することができる。

【0031】
原料化合物としては、(1)炭素と、(2)炭素、水素および酸素以外の異種元素とを含み、少なくとも一部に環構造又は不飽和結合あるいはその両方を有する炭素化合物を特に制限なく用いることができる。即ち、かかる異種元素と構造とを備える有機質の原料化合物を用いることができる。

【0032】
異種元素としては、炭素、水素及び酸素以外の各種の元素を考慮することができ、例えば、カーボン系触媒をナノシェル化したり、カーボン系触媒にドープ可能で、カーボン系触媒の結晶構造に特殊な「乱れ」を生じさせ得るものを特に制限なく採用することができる。

【0033】
異種元素の具体例としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)等に代表される遷移金属、ホウ素(B)やケイ素(Si)、リン(P)に代表される半金属、窒素(N)や硫黄(S)に代表される非金属等を挙げることができる。より高い触媒活性を実現するためには、異種元素として、ホウ素及び/又はチッ素を含む炭素化合物を用いるのが好ましい。

【0034】
(カーボンナノファイバー)
本発明におけるカーボンナノファイバーは、特に制限なく種々のものを用いることができる。なかでも、反応に対する活性点となるエッジや欠陥の多いカーボンナノファイバー、具体的には、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)や、stacked cupと呼ばれるカーボンナノファイバー等が、特に優れた触媒活性の向上が期待できる。

【0035】
[複合材料からなるカーボン系触媒の製造方法]
本発明の複合材料からなるカーボン系触媒は、上記の「炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物」と「カーボンナノファイバー」とを、混合し、ソリューションプラズマ処理を施すことにより、得られる。即ち、ソリューションプラズマ処理により、「炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物からなるカーボン粒子」を「カーボンナノファイバー」に凝集させて、本発明の複合材料からなるカーボン系触媒が得られる。

【0036】
より具体的には、まず、「炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物」と「カーボンナノファイバー」とを、液相で混合して混合物とし(原料混合工程)、超音波バス内で撹拌した後、更にマグネティックスターラを用いて撹拌する(撹拌工程)。

【0037】
ついで、上記の混合物にソリューションプラズマ処理を施す(ソリューションプラズマ処理工程)。このソリューションプラズマ処理は、例えば図1に示す装置により実施することができる。図1は、本発明の複合材料からなるカーボン系触媒を製造するためソリューションプラズマ処理を実施するために用いるソリューションプラズマ発生装置10の一例の模式図である。

【0038】
ソリューションプラズマ発生装置10は、撹拌装置7を備え、液(液相)2中でソリューションプラズマ4を発生させるためのものであり、原料化合物を含む液2が、ガラス製のビーカーなどの容器5に入れられる。また、プラズマを発生させるための一対の電極6は所定の間隔を以て液2中に配設され、絶縁部材9を介して容器5に保持されている。

【0039】
電極6は外部電源8に接続されており、この外部電源8から所定の条件のパルス電圧が印加される。これによって、一対の電極6間に、定常的にソリューションプラズマ4を発生させることができる。

【0040】
ここで、電極6としては、例えば、平板状電極や棒状電極及びその組合せ等の様々な形態であってよく、その材質についても特に制限はないが、なかでも、電界を局所的に集中させることが可能なタングステンからなる線状電極(針状電極)6を用いるのが好ましい。その他、鉄や白金等の他の金属材料からなる電極を用いるようにしてもよい

【0041】
かかる電極6は、電界集中を妨げる余分な電流を抑えるために、先端部(例えば、数mm程度)のみを露出させ、後の部分は絶縁部材9等で絶縁しておくことが望ましい。絶縁部材9は、例えばセラミック製、ゴム製又は樹脂(例えば、フッ素樹脂)製であればよい。図1においては、絶縁部材9は電極6を容器5に固定し、電極6と容器5との水密を保つための栓をも兼ねている。

【0042】
かかる装置10において、ソリューションプラズマを発生させるためのパルス電圧の印加条件は、液2中に含まれる原料化合物の種類やその濃度等の条件、さらには装置10の構成条件等によって調整すればよく、例えば、電圧(二次電圧):約1.0~2.0kV、周波数:約10~30kHz、パルス幅:約0.5~3.0μsの範囲とすればよい。

【0043】
詳細にはわからないが、このようなソリューションプラズマ処理により、「カーボンナノファイバー」の表面に何らかの欠陥を作ることができ、この欠陥に、「炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物からなるカーボン粒子」が担持されて凝集し、かつ異種元素を「カーボンナノファイバー」にドープできるものと考えられる。

【0044】
より具体的には、発生したソリューションプラズマは「カーボンナノファイバー」に対して、エッジや欠陥部分の結合を分解、活性化させ、様々な活性種による化学修飾を可能とする。その一方、ソリューションプラズマは「炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物」に対しては、化合物を細かく分解し、水素ラジカルや炭素ラジカルを始めとした活性種を発生させる。これらの活性種が再結合することで、異種元素を含むカーボン粒子が形成される。

【0045】
そして、「カーボンナノファイバー」と「炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物」を混合してソリューションプラズマ処理を行うことで、「カーボンナノファイバー」の活性化したエッジ及び欠陥部分と「炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物」由来の活性種が反応を起こし、異種元素を含むカーボン粒子が形成、担持されると考えられる。

【0046】
上記のソリューションプラズマ処理により、カーボンナノファイバー」と、炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物を原料として生成されるカーボン粒子と、の凝集体が得られ、当該凝集体をろ過・洗浄、乾燥、粉砕及び熱処理することにより、本発明の複合材料からなるカーボン系触媒が得られる。

【0047】
ついで、凝集体(凝集した炭素材料)を粉砕、微細化することによって比表面積を向上させるとともに、粉末状にすることで秤量などの取り扱いを容易にすることができる。また、粉砕後の熱処理には、炭素材料中での異種元素の再配列を促し、触媒活性を向上させる効果がある。

【0048】
以上、本発明の複合材料からなるカーボン系触媒の代表的な例について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるわけではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更も全て本発明に含まれるものである。以下、実施例を用いて本発明の複合材料をより具体的に説明するが、本発明がかかる実施例に限定されないものであることは言うまでもない。
【実施例】
【0049】
図1に示すソリューションプラズマ発生装置10を用い、まず、(株)Sigma-Aldrich製のカーボンナノファイバー100mgを、(株)Sigma-Aldrich製の2-シアノピリジン100mL(濃度:99.9重量% (混合溶液中の2-シアノピリジン濃度、ここで2-シアノピリジンは希釈せずに使用))又は関東化学(株)製のアクリロニトリル100mL(濃度:99.9重量% (混合溶液中のアクリロニトリル濃度、ここでアクリロニトリルは希釈せずに使用))に混合し、撹拌装置7で撹拌した。ついで、表1に示す条件でソリューションプラズマ処理を行った。
【実施例】
【0050】
【表1】
JP2017135386A1_000002t.gif
【実施例】
【0051】
その後、保留粒子1μmのろ紙(桐山ろ紙No.5C)を用いて吸引ろ過を行い、ろ液が透明になるまでろ過物(残渣)の上から数mLのエタノールを数回加えることで、未反応の2-0シアノピリジン又はアクリロニトリルを洗い流した。得られたろ過物を、空気雰囲気下、60℃及び12時間の条件で乾燥した。乾燥後のろ過物は固まっていたため、目視で均一に粉砕されたことが確認できるまで、乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。
【実施例】
【0052】
そして、得られた粉砕物は、800~900℃の高温で熱処理することによって、上記のように炭素材料中で窒素の再配列が起こり触媒活性を向上させることができるため、0.5L/minのアルゴンが循環する雰囲気で、室温から900℃まで5℃/minの昇温速度で加熱し、1時間かけて、熱処理を施した。このようにして、本発明の複合材料からなるカーボン系触媒(NCNP-CNF)を得た。
【実施例】
【0053】
[評価]
上記のようにして得た本発明の複合材料からなるカーボン系触媒(NCNP-CNF:実施例1)と、対照試料である「炭素と炭素、水素及び酸素以外の異種元素とを含みかつ環構造及び不飽和結合のうちの少なくとも一つを有する炭素化合物を原料として生成されるカーボン粒子(NCNP:Nitrogen-doped Carbon Nanoparticle、比較例1)」及び「カーボンナノファイバー(CNF:Carbon Nanofiber、比較例2)」と、について、以下の評価を行った。なお、特別の断りがない限り、実施例1及び比較例1の原料化合物には2-シアノピリジンを用いた。
【実施例】
【0054】
(1)FE-SEM及びTEM観察
日立ハイテクノロジーズ(株)製のfield-emission SEM「S-4800」を用い、 加速電圧10kVで、SEM像を観察した。また、日本電子(株)製のTEM「JEM-2010」を用い、加速電圧120 kVで、TEM像を観察した。結果を図2に示した。図2から、実施例1においては、CNFの周りにNCNPが凝集し、複合材料を形成していることがわかる。また、比較例1では、結晶性が低く、アモルファス構造が形成されているのがわかる。粒子はほぼ球状で、大きさは約20~40nmであった。比較例2では、高い結晶性が認められ、内径30-40nm、外径70-80nmのCNFが確認できた。
【実施例】
【0055】
(2)組成
日本電子(株)製のX線光電子分光装置「JPS-9010MC」を用い、炭素原子(C)、酸素原子(O)及びチッ素原子(N)の含有量を測定した。結果を以下の表2に示す。表2から、実施例1においては、ソリューションプラズマ処理により、環式炭素化合物の構造中にチッ素原子を含有させることに成功したことがわかる(NCNPで1.33原子%、NCNP-CNFで1.35原子%)。即ち、ソリューションプラズマ処理によって2-シアノピリジンから炭素材料(複合材料)が合成される際、チッ素が構造中に取り込まれたことがわかる(ソリューションプラズマによってチッ素を含む活性種が生成)。
【実施例】
【0056】
【表2】
JP2017135386A1_000003t.gif
【実施例】
【0057】
また、スケールを変更して、実施例1と比較例1について、X線光電子分光測定を行った結果を図3に示した。図3より、NCNPに含まれるチッ素原子の化学結合と、NCNP-CNFに含まれるチッ素原子の化学結合に、ほとんど違いはなく、触媒性能に寄与する結合である「Graphitic N」と「Pyridinic N」が多く形成されていることが示された。
【実施例】
【0058】
(3)触媒活性1(サイクリックボルタンメトリー)
CH Instruments社製の「ALS-CHI832A」を用い、以下の条件でサイクリックボルタンメトリーを評価した。結果を図4(a及びb)に示した。図4aは原料化合物に2-シアノピリジンを、図4bは原料化合物にアクリロニトリルを用いて得られた結果である。図4から、-0.28 V で酸素還元反応に由来するピークが観察された。図4aから、NCNP-CNFは他の2つに比べて大きく鋭いピークであった。図4bから、NCNP-CNFはNCNPに比べて大きく鋭いピークであった。これにより、酸素還元反応に対し、NCNP-CNFが最も優れた触媒活性を示したことがわかる。
【実施例】
【0059】
・作用極 :NCNP-CNF、NCNP又はCNF
・参照極 :Ag/AgCl(飽和KCl)
・対極 :Pt
・支持電解質 :0.1M KOH
・走査速度 :50mV・s-1
・走査範囲 :0.2~-1.0V
・ガス :N飽和(点線)、O飽和(実線)
・触媒担持量 :0.4mg・cm-2
【実施例】
【0060】
(4)触媒活性2(リニアスイープボルタンメトリー)
CH Instruments社製の「ALS-CHI832A」を用い、以下の条件でリニアスイープボルタンメトリーを評価した。結果を図5(a及びb)に示した。図5aは原料化合物に2-シアノピリジンを、図5bは原料化合物にアクリロニトリルを用いて得られた結果である。図5aから、CNFでは、オンセット電位が2箇所(-0.21V及び-0.64V)で観測されたことから、酸素還元反応の活性が低く、2電子反応が生じたことがわかる。また、図5a及び図5bから、CNFやNCNPと比べ、NCNP-CNFは最も貴なオンセット電位であり、限界電流密度も大きな値であったため、4電子反応が支配的であることが推測された。更に、NCNPとNCNP-CNFは広い範囲で電流密度が一定になり、反応が一段階で進んだことがわかる。即ち、オンセット電池及び電流密度ともにNCNP-CNFが最も優れた触媒活性を有することが示された。
【実施例】
【0061】
・作用極 :NCNP-CNF、NCNP、CNF又はPt/C
・参照極 :Ag/AgCl(飽和KCl)
・対極 :Pt
・支持電解質 :0.1M KOH
・走査速度 :10mV・s-1
・電極回転速度:1600rpm
・ガス :O飽和
・触媒担持量 :0.4mg・cm-2(NCNP-CNF、NCNP、CNF使用時)
40μg・cm-2(Pt/C使用時、Pt/Cに含まれるPtの量)
【実施例】
【0062】
(5)劣化試験1
実施例1のNCNP-CNFについてのみ、CH Instruments社製の「ALS-CHI832A」を用い、以下の条件で触媒活性の劣化試験1を行った。結果を図6(a及びb)に示した。図6から、測定開始から40,000sで、Pt/Cの電流密度が64%まで低下したのに対し、NCNP-CNFでは85%までの低下に留まったことがわかる。測定中にメタノールを添加したところ、Pt/Cの場合は瞬時に電流密度が減少したのに対し、NCNP-CNFではほとんど変化がなかった。
【実施例】
【0063】
・作用極 :NCNP-CNF又はPt/C
・参照極 :Ag/AgCl(飽和KCl)
・対極 :Pt
・支持電解質 :0.1M KOH
・電位 :-0.35V
・電極回転速度:1600rpm
・ガス :O飽和
・触媒担持量 :0.4mg・cm-2(NCNP-CNF使用時)
40μg・cm-2(Pt/C使用時、Pt/Cに含まれるPtの量)
【実施例】
【0064】
(6)劣化試験2
実施例1のNCNP-CNFについてのみ、CH Instruments社製の「ALS-CHI832A」を用い、以下の条件で触媒活性の劣化試験2を行った。結果を図7(a及びb)に示した。図7から、NCNP-CNFではメタノールを添加しても、酸素還元反応を示すピークに変化は見られなかった。Pt/Cではメタノールを添加すると、-0.15~-0.08Vでメタノールの酸化によるピークが現れ、酸素還元反応のピークは見られなくなった。このことから、NCNP-CNFはPt/Cに比べ、高い長期安定性と、メタノールに対する耐久性を示したことがわかる。
【実施例】
【0065】
・作用極 :NCNP-CNF又はPt/C
・参照極 :Ag/AgCl(飽和KCl)
・対極 :Pt
・支持電解質 :0.1M KOH
・走査速度 :50mV・s-1
・走査範囲 :0.2~-1.0V
・ガス :O飽和
・触媒担持量 :0.4mg・cm-2(NCNP-CNF使用時)
40μg・cm-2(Pt/C使用時、Pt/Cに含まれるPtの量)
【実施例】
【0066】
(7)触媒活性3(サイクリックボルタンメトリー)
CH Instruments社製の「ALS-CHI832A」を用い、以下の条件でサイクリックボルタンメトリーを評価した。結果を図8~10に示した。図8aは、原料化合物にピリジン、図9aは、原料化合物にアニリン、図10aは、原料化合物に100℃で加熱したピラジンを用いて得られた結果である。各図のaから、-0.25 V~-0.30 Vの間で酸素還元反応に由来するピークが観察された。図8aから、NCNP-CNFはNCNPに比べて大きく鋭いピークであったことがわかる。図9aから、NCNP-CNFはNCNPに比べて大きく鋭いピークであったことがわかる。また、図10aから、NCNP-CNFはNCNPに比べて大きく鋭いピークであったことがわかる。これにより、酸素還元反応に対し、NCNP-CNFが最も優れた触媒活性を示したことがわかる。
【実施例】
【0067】
・作用極 :NCNP-CNF、NCNP
・参照極 :Ag/AgCl(飽和KCl)
・対極 :Pt
・支持電解質 :0.1M KOH
・走査速度 :50mV・s-1
・走査範囲 :0.2~-1.0V
・ガス :N飽和(点線)、O飽和(実線)
・触媒担持量 :0.4mg・cm-2
【実施例】
【0068】
(8)触媒活性4(リニアスイープボルタンメトリー)
CH Instruments社製の「ALS-CHI832A」を用い、以下の条件でリニアスイープボルタンメトリーを評価した。結果を図8~10に示した。図8bは、原料化合物にピリジン、図9bは、原料化合物にアニリン、図10bは、原料化合物に100℃で加熱したピラジンを用いて得られた結果である。図8b、9b及び10bから、NCNPと比べ、NCNP-CNFは最も貴なオンセット電位であり、限界電流密度も最も大きな値を示したため、4電子反応が最も支配的であることが推測された。NCNPとNCNP-CNFは広い範囲で電流密度が一定になり、反応が一段階で進んだことがわかる。即ち、オンセット電位及び電流密度ともにNCNP-CNFが最も優れた触媒活性を有することが示された。
【実施例】
【0069】
・作用極 :NCNP-CNF、NCNP
・参照極 :Ag/AgCl(飽和KCl)
・対極 :Pt
・支持電解質 :0.1M KOH
・走査速度 :10mV・s-1
・電極回転速度:1600rpm
・ガス :O飽和
・触媒担持量 :0.4mg・cm-2(NCNP-CNF、NCNP使用時)
【実施例】
【0070】
以上より、本発明の複合材料からなるカーボン系触媒(NCNP-CNF)は、市販の20%Pt/Cに比べ、高い長期安定性と、メタノールに対する耐久性を示した。また、アルカリ性溶液中でNCNP-CNFにより生じる酸素還元反応は4電子反応が支配的であったことから、NCNP-CNFが優れた触媒活性を有することがわかった。
【符号の説明】
【0071】
2・・・原料化合物を含む液、
4・・・ソリューションプラズマ、
5・・・容器、
6・・・電極、
7・・・撹拌装置、
8・・・外部電源、
9・・・絶縁材料、
10・・・ソリューションプラズマ発生装置。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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