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明細書 :睡眠段階判定装置、睡眠段階判定方法及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-149260 (P2018-149260A)
公開日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 睡眠段階判定装置、睡眠段階判定方法及びプログラム
国際特許分類 A61B   5/16        (2006.01)
A61B   5/11        (2006.01)
FI A61B 5/16
A61B 5/10 310A
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-173563 (P2017-173563)
出願日 平成29年9月8日(2017.9.8)
優先権出願番号 2017066199
優先日 平成29年3月10日(2017.3.10)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】▲高▼玉 圭樹
【氏名】原田 智広
【氏名】上原 知里
出願人 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C038
Fターム 4C038PP05
4C038PS00
4C038VA15
4C038VB31
4C038VC20
要約 【課題】被測定者に負担をかけずに、被測定者のレム睡眠を精度良く判定できるようにする。
【解決手段】被測定者の第1の期間毎の心拍の中央値の増加率が、所定の閾値以上であるとき、第1のレム睡眠期間の開始と判定し、第1の期間毎の心拍の中央値の減少率が減少したとき、第1のレム睡眠期間の終了を判定する。また、被測定者の体動を第2の期間毎に周波数解析し、その周波数解析したデータの分析で、レム睡眠の判定を得る決定木を機械学習により複数生成し、生成した複数の決定木で得られたレム睡眠か否かの判定の多数決から、第2の期間が第2のレム睡眠期間であると判定する。そして、これらの第1及び第2のレム睡眠期間の判定を行った結果から、レム睡眠期間の確定処理を行う。
【選択図】図9
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定者の第1の期間毎の心拍の中央値の増加率が、所定の閾値以上であるとき、第1のレム睡眠期間の開始と判定し、前記第1の期間毎の心拍の中央値の減少率が減少したとき、前記第1のレム睡眠期間の終了を判定すると共に、
前記被測定者の体動を第2の期間毎に周波数解析し、その周波数解析したデータの分析で、レム睡眠の判定を得る決定木を機械学習により複数生成し、生成した複数の決定木で得られたレム睡眠か否かの判定の多数決から、前記第2の期間が第2のレム睡眠期間であると判定するデータ処理部と、
前記第1のレム睡眠期間と判定した期間と前記第2のレム睡眠期間と判定した期間とが重なる期間を含み、かつ一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間が存在する場合に、その一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間を、レム睡眠期間と確定する睡眠段階判定部と、を備える
睡眠段階判定装置。
【請求項2】
さらに、前記睡眠段階判定部は、前記第2のレム睡眠期間と重なっていない前記第1のレム睡眠期間についても、真のレム睡眠期間と判定する
請求項1に記載の睡眠段階判定装置。
【請求項3】
前記被測定者の体動を検出する圧力センサの出力データを取得する生体データ取得部を備え、
前記心拍は、前記生体データ取得部が取得した前記圧力センサの出力データから得ると共に、前記第2のレム睡眠期間を判定する体動についても、前記生体データ取得部が取得した前記圧力センサの出力データから得るようにした
請求項1又は2に記載の睡眠段階判定装置。
【請求項4】
被測定者の第1の期間毎の心拍の中央値の増加率が、所定の閾値以上であるとき、第1のレム睡眠期間の開始と判定し、前記第1の期間毎の心拍の中央値の減少率が減少したとき、前記第1のレム睡眠期間の終了を判定する第1のレム睡眠期間判定処理と、
前記被測定者の体動を第2の期間毎に周波数解析したデータの分析で、レム睡眠の判定を得る決定木を機械学習により複数生成し、生成した複数の決定木で得られたレム睡眠か否かの判定の多数決から、前記第2の期間が第2のレム睡眠期間であると判定する第2のレム睡眠期間判定処理と、
前記第1のレム睡眠期間と判定した期間と前記第2のレム睡眠期間と判定した期間とが重なる期間を含み、かつ一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間が存在する場合に、その一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間を、レム睡眠期間と確定する睡眠段階判定処理と、を含む
睡眠段階判定方法。
【請求項5】
被測定者の第1の期間毎の心拍の中央値の増加率が、所定の閾値以上であるとき、第1のレム睡眠期間の開始と判定し、前記第1の期間毎の心拍の中央値の減少率が減少したとき、前記第1のレム睡眠期間の終了を判定する第1のレム睡眠期間判定手順と、
前記被測定者の体動を第2の期間毎に周波数解析し、その周波数解析したデータの分析で、レム睡眠の判定を得る決定木を機械学習により複数生成し、生成した複数の決定木で得られたレム睡眠か否かの判定の多数決から、前記第2の期間が第2のレム睡眠期間であると判定する第2のレム睡眠期間判定手順と、
前記第1のレム睡眠期間と判定した期間と前記第2のレム睡眠期間と判定した期間とが重なる期間を含み、かつ一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間が存在する場合に、その一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間を、真のレム睡眠期間と判定する睡眠段階判定手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レム睡眠状態を判定する睡眠段階判定装置及び睡眠段階判定方法、並びに睡眠段階の判定を実行するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、睡眠障害などによる睡眠の質の低下を診断するために、被測定者の睡眠段階を測定することが行われている。人間の睡眠段階は、睡眠の深さの観点で6段階に分類したものが知られており、その6つの睡眠段階は、眠りが浅い段階から順に、覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠(ステージ1~4)と呼ばれている。これらの6段階の睡眠段階の判定は、従来、例えば被計測者の顔や頭部に多数の電極を装着して、その多数の電極から脳波、眼球運動、及び顎筋電を測定し、測定結果の解析により行われていた。
【0003】
このような顔や頭部に多数の電極を装着した状態での睡眠段階の検査は、通常、医療機関に宿泊して、長時間連続して電極を身体に装着して行う検査であり、日常と異なる状況での睡眠であるため、被測定者(患者)に精神的な負担と肉体的な負担を強いることになる。また、電極を使って取得したデータは、専門知識と経験を持つ医師が解析して判定する必要があり、睡眠状態を簡単に判定できるものではないという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、専門医師による診断を不要とする睡眠段階推定手法が従来から数多く提案されている。
例えば、特許文献1には、遺伝的アルゴリズムによる学習手法を改良したDatabase-based Compact Genetic Algorithmと称される手法で、マットレス型圧力センサの検出データから睡眠段階を推定する技術が記載されている。この特許文献1に記載された技術は、マットレス型圧力センサが検出した被測定者の体動と心拍に基づいて、睡眠段階を推定するものである。このようなマットレス型圧力センサを使って睡眠段階を推定することで、被測定者に負担を強いることなく、被測定者の睡眠状態を推定することができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2014-239789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した6段階の睡眠段階を考えた場合に、眠りが浅い段階から順に、覚醒、レム睡眠、4つのノンレム睡眠(ステージ1~4)が存在するが、これら6つの段階は、検出データを6つの範囲に区切って得るような単純な処理では判定できないという問題がある。特に、レム睡眠は、ノンレム睡眠や覚醒とは全く異なる睡眠状態であり、従来、レム睡眠を精度良く判定することは非常に困難であった。
特許文献1に記載されるように、マットレス型圧力センサのような圧力センサを使って睡眠段階を判定することができれば、被測定者に負担を強いることなく睡眠状態の診断が可能になる。しかし、従来から提案されている手法では、レム睡眠の判定精度が高くなく、結果的に睡眠段階の推定の信頼性がそれほど良くないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、被測定者に負担をかけずに、被測定者のレム睡眠を精度良く判定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の睡眠段階判定装置は、データ処理部と睡眠段階判定部とを備える。
睡眠段階判定部は、被測定者の第1の期間毎の心拍の中央値の増加率が、所定の閾値以上であるとき、第1のレム睡眠期間の開始と判定し、第1の期間毎の心拍の中央値の減少率が減少したとき、第1のレム睡眠期間の終了を判定すると共に、被測定者の体動を第2の期間毎に周波数解析したデータの分析で、レム睡眠の判定を得る決定木を機械学習により複数生成し、生成した複数の決定木で得られたレム睡眠か否かの判定の多数決から、第2の期間が第2のレム睡眠期間であると判定する。
睡眠段階判定部は、第1のレム睡眠期間と判定した期間と第2のレム睡眠期間と判定した期間とが重なる期間を含み、かつ一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間が存在する場合に、その一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間を、レム睡眠期間と確定する。
【0009】
また、本発明の睡眠段階判定方法は、第1のレム睡眠期間判定処理と、第2のレム睡眠期間判定処理と、睡眠段階判定処理と、を含む。
第1のレム睡眠期間判定処理は、被測定者の第1の期間毎の心拍の中央値の増加率が、所定の閾値以上であるとき、第1のレム睡眠期間の開始と判定し、第1の期間毎の心拍の中央値の減少率が減少したとき、第1のレム睡眠期間の終了を判定する。
第2のレム睡眠期間判定処理は、被測定者の体動を第2の期間毎に周波数解析したデータの分析で、レム睡眠の確率値を得る決定木を機械学習により複数生成し、生成した複数の決定木で得られたレム睡眠か否かの判定の多数決から、第2の期間が第2のレム睡眠期間であると判定する。
睡眠段階判定処理は、第1のレム睡眠期間と判定した期間と第2のレム睡眠期間と判定した期間とが重なる期間を含み、かつ一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間が存在する場合に、その一定間隔以内に第2のレム睡眠期間と判定した期間を、レム睡眠期間と確定する。
【0010】
また、本発明のプログラムは、上記睡眠段階判定方法の第1のレム睡眠期間判定処理と第2のレム睡眠期間判定処理と睡眠段階判定処理とを実行する手順を、コンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧力センサから得た被測定者の睡眠中の圧力データに基づいて、レム睡眠の期間を正確に判定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態例による睡眠段階判定装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態例による睡眠段階の判定状態の例を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態例の睡眠段階判定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態例による心拍成分の判定処理例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態例による全周波数成分の判定処理例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態例によるレム睡眠の判定処理例を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態例によるレム睡眠の判定処理例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施の形態例によるレム睡眠の判定例を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態例による実際の検出データからレム睡眠を判定した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)について、添付図面を参照して説明する。
[1.睡眠段階判定装置の構成]
図1は、本例の睡眠段階判定装置10の構成を示すブロック図である。図2は、本例の睡眠段階判定装置10を使って睡眠段階の判定を行う状態の例を示す図である。
本例の睡眠段階判定装置10は、被測定者の体動をマットレスセンサ2で圧力データとして取得する。マットレスセンサ2は、例えば図2に示すように、被測定者Aが睡眠を行うベッド1のマットレスの上に敷いて、被測定者Aの睡眠中の上半身の体動を圧力の変化として検出する。被測定者Aの下側になるマットレスの上にマットレスセンサ2を配置するのは一例であり、例えばマットレスの中にマットレスセンサ2を内蔵させてもよい。
図2では、ベッド1の脇に睡眠段階判定装置10を設置し、マットレスセンサ2と睡眠段階判定装置10をケーブルで接続した例を示すが、例えばマットレスセンサ2が取得した圧力データを、無線伝送で別の部屋の睡眠段階判定装置10に伝送するようにしてもよい。

【0014】
睡眠段階判定装置10は、図1に示すように、生体データ取得部11と、生体データ処理部12と、睡眠段階判定部13と、出力部14とを備える。
生体データ取得部11は、マットレスセンサ2が出力する圧力データを取得する。生体データ取得部11が取得した圧力データは、データ処理部12に供給される。生体データ処理部12は、供給される圧力データの解析処理を行う。具体的には、圧力データをサンプリングしてデジタルデータ化し、そのデジタルデータ化された圧力データの高速フーリエ変換処理(以下、「FFT処理」と称する)により、各周波数の成分を取得する。そして、取得したそれぞれの周波数成分の状態から、心拍と呼吸の状態を判別する。すなわち、圧力データをFFT処理で得た周波数成分の内で、心拍及び呼吸に相当する周波数成分から、心拍数と呼吸数を判別する。
さらに、生体データ処理部12は、FFT処理で得た周波数成分を使って、睡眠段階の解析に必要なデータ処理を行う。

【0015】
そして、生体データ処理部12で解析した結果が睡眠段階判定部13に供給される。睡眠段階判定部13は、生体データ処理部12で解析した結果に基づいて、被測定者Aの睡眠状態を判定する。睡眠段階判定部13は、レム睡眠の睡眠状態と、レム睡眠以外の睡眠状態の判定を行う。さらに、睡眠段階判定部13は、レム睡眠以外の睡眠状態として、覚醒とノンレム睡眠(ステージ1~4)の5段階の判定を行う。なお、以下の説明では、レム睡眠の睡眠状態と、レム睡眠以外の睡眠状態との判定を行う処理を中心に説明し、レム睡眠以外の睡眠状態を5段階(覚醒及びノンレム睡眠のステージ1~4)に判定する処理の説明は省略する。なお、ノンレム睡眠の睡眠段階は、睡眠の深さと対応付けて考えられており、ステージ1から4の順に睡眠が深くなることを示す。例えば、ステージ2はステージ1よりも睡眠が深く、「ステージ2以下」と記載した場合には、ステージ2~4を示す。

【0016】
出力部14は、睡眠段階判定部13が判定した睡眠段階を出力する。出力部14は、例えば表示装置により構成され、睡眠段階を表示する。あるいは、出力部14を記録装置として構成して、一晩の睡眠状態を記録するようにしてもよい。

【0017】
[2.睡眠段階判定装置のハードウェア構成例]
図3は、睡眠段階判定装置10をコンピュータ装置で構成した場合のハードウェア構成例を示す。
コンピュータ装置Cは、バスC8に接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)C1、ROM(Read Only Memory)C2、及びRAM(Random Access Memory)C3を備える。さらに、コンピュータ装置Cは、不揮発性ストレージC4、ネットワークインターフェイスC5、入力装置C6、及び表示装置C7を備える。

【0018】
CPU C1は、睡眠段階判定装置10の生体データ処理部12や睡眠段階判定部13が備える各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM C2から読み出して実行する。圧力データを周波数解析するFFT処理についても、該当する処理を実行するプログラムをROM C2から読み出して、CPU C1が実行する。RAM C3には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。

【0019】
不揮発性ストレージC4としては、例えば、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージC4には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、コンピュータ装置Cを睡眠段階判定装置10として機能させるためのプログラムが記録されている。また、睡眠段階判定部13が判定した睡眠段階についてのデータが、不揮発性ストレージC4に記録される。

【0020】
ネットワークインターフェイスC5には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、端子が接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを送受信することが可能である。例えば、コンピュータ装置Cは、マットレスセンサ2が出力する圧力データを、ネットワークインターフェイスC5を介して取得する。入力装置C6は、例えばキーボード等の機器で構成され、この入力装置C6により、睡眠段階判定装置10で睡眠段階を判定する期間の設定や、睡眠段階の表示形態の指示等が行われる。表示装置C7は、睡眠段階判定装置10で判定された睡眠段階を表示する。
なお、睡眠段階判定装置10をコンピュータ装置から構成するのは一例であり、例えばFFT処理などのデータ処理を、専用のハードウェアを用意して行うようにしてもよい。

【0021】
[3.レム睡眠の判定処理]
次に、本例の睡眠段階判定装置10が行うレム睡眠の判定処理について説明する。
本例の睡眠段階判定装置10は、2種類の手法によりレム睡眠の判定処理(第1のレム睡眠期間判定処理及び第2のレム睡眠期間判定処理)を行い、その2種類の手法によるレム睡眠の判定結果を総合的に判断して、最終的にレム睡眠の期間の判定結果を得る。ここでは、2種類の手法を手法1及び手法2と称する。
2種類の手法の詳細は後述するが、手法1は、心拍数変動に着目したレム睡眠判定手法であり、手法2は、全周波数成分を用いた機械学習によるレム睡眠判定手法である。睡眠段階判定装置10は、これらの2つの手法を使ったハイブリッド構造でレム睡眠判定を行うものである。

【0022】
まず、手法1によるレム睡眠の判定処理について説明する。
この手法1では、一定時間の心拍情報から心拍数変動の中周波成分を三角関数回帰モデル(Trigonometric Function Model:TFM)を用いてリアルタイムに推定し、算出した心拍変動から睡眠深度を推定する。ここでは、レム睡眠時に心拍数が揺らぐという生理学的な観点を利用して、レム睡眠を推定する。

【0023】
図4は、手法1によるレム睡眠の判定処理を示すフローチャートである。
まず、生体データ処理部12は、FFT処理で周波数解析したデータから、心拍の値を取得する。生体データ処理部12は、検出された心拍について、一定時間(ここでは5分間)毎の中央値HRを算出する(ステップS111)。
そして、生体データ処理部12は、検出した心拍の中央値HRの5分毎の変動量ΔHRを算出し、その5分毎の変動量ΔHRを閾値TH1と比較する(ステップS112)。
ここでは、推定する時刻から直前5分間の心拍の中央値をΔHRcurr、5分前から10分前までの心拍の中央値をΔHRprevとしたとき、次の[数1]式により、変動量ΔHRを得る。

【0024】
【数1】
JP2018149260A_000003t.gif

【0025】
ステップS112では、このようにして得た5分毎の変動量ΔHRと閾値TH1とを比較する。このステップS112の比較では、閾値TH1を0.04とし、ΔHR>0.04の条件を満たすか否かを判断する。
ステップS112で、ΔHR>0.04の条件を満たさない場合には(ステップS112のNO)、生体データ処理部12は、該当する条件を満たすまで待機する。
そして、ΔHR>0.04の条件を満たすと判断したとき(ステップS112のYES)、生体データ処理部12は、レム睡眠期間(手法1によるレム睡眠期間)の開始と判断する(ステップS113)。その後、生体データ処理部12は、変動量ΔHRの減少率が減少したか否かを判断する(ステップS114)。なお、「減少率が減少」するとは、例えば、ΔHRの値が0.07から0.06に変わることをいう。ここで、変動量ΔHRの減少率が減少しないとき(ステップS114のNO)、生体データ処理部12は、変動量ΔHRの減少率が減少するまで待機する。また、変動量ΔHRの減少率が減少したとき(ステップS114のYES)、生体データ処理部12は、レム睡眠期間(手法1によるレム睡眠期間)の終了を判断し(ステップS115)、ステップS112の変動量ΔHRと閾値TH1との比較に戻る。
このように、手法1では、心拍数の変動量に基づいてレム睡眠の期間を判断することができる。

【0026】
次に、手法2によるレム睡眠の判定処理について説明する。
この手法2は、アンサンブル学習による機械学習手法であるランダムフォレスト(Random Forests)を用いて、レム睡眠とレム睡眠以外とを判定する手法である。この手法2では、一定期間(ここでは30秒間)のマットレスセンサ2が取得した圧力データに対してFFT処理を施すことで周波数解析を行って、レム睡眠を判定するものである。

【0027】
図5は、手法2によるレム睡眠の判定処理を示すフローチャートである。
まず、生体データ処理部12は、生体データ取得部11が取得した生体データを一定期間(1エポック区間:30秒間)ごとに分割し、一定期間ごとの生体データに対してFFT処理で周波数解析を行うことで周波数表現された生体データ生成する(ステップS121)。そして、FFT処理された生体データの全周波数成分について正規化を行い、全周波数成分の総和が1になるようにする。なお、ここで正規化を行うのは一例であり、正規化を行わないデータを扱うようにしてもよい。
そして、生体データ処理部12は、その一定期間毎の圧力データを使って、ランダムフォレストの機械学習手法による2値判定を行う(ステップS122)。ランダムフォレストの機械学習による2値判定の詳細については後述する。

【0028】
その後、生体データ処理部12は、ステップS122による2値判定で、レム睡眠の条件を満たすか否かを判断する(ステップS123)。この判断でレム睡眠の条件を満たさない場合には(ステップS123のNO)、ステップS121の処理に戻り、生体データ処理部12は、次の一定期間の処理に移る。
そして、この判断でレム睡眠の条件を満たした場合には(ステップS123のYES)、生体データ処理部12は、該当する一定期間(30秒間)をレム睡眠期間(手法2によるレム睡眠期間)に設定し(ステップS124)、その後ステップS121の処理に戻り、次の一定期間の処理に移る。

【0029】
図6は、ランダムフォレストの機械学習による2値判定状態を説明する図である。
まず、図6の上側に示すように、生体データ処理部12は、30秒間の圧力データD1を取得する。圧力データD1のグラフの縦軸はセンサ値であり、横軸は時間(30秒間)を示す。
この圧力データD1について、生体データ処理部12がFFT処理を施すことで、周波数成分毎の強度値を示したFFTデータD2を得る。FFTデータD2のグラフの縦軸は強度値であり、横軸は周波数(0.016Hz~5.0Hz)を示す。ここでは、FFTデータD2として、5Hz以下の周波数成分のみの300次元ベクトルのデータとする。

【0030】
生体データ処理部12は、この300次元ベクトルのデータから、ランダムフォレストと称される機械学習のアルゴリズムを使って、予測モデルである決定木を複数生成する。すなわち、図6に示すように、複数の決定木T,T,・・・,T(Nは任意の整数)を生成する。それぞれの決定木は、各周波数成分の状態がどのようであるかに基づいて分岐して、各睡眠段階(ここではレム睡眠段階)の判定を得るものである。例えば、図6の左下に示すように、決定木Tのある段階Saでは、周波数成分0.3Hzの正規化値が0.25より小さいか否かを判断し、その判断で、正規化値が0.25より小さいとき未確定と判定し、0.25以上のとき、レム睡眠と判定する。そして、その未確定の場合(0.3Hzの成分の正規化値が0.25より小さいとき)に、次の段階Sbで、周波数成分1.5Hzの正規化値が0.05より大きいか否かを判断し、その判断で、正規化値が0.05より大きいとき、ノンレム睡眠と判定し、正規化値が0.05以下のとき、レム睡眠と判定する。

【0031】
このようにして、決定木Tに基づいてFFTデータD2を解析することで、レム睡眠か否かの判定qを得る。また、決定木Tとは別の条件の決定木Tに基づいてFFTデータD2を解析することで、レム睡眠か否かの判定qを得る。このようにして、それぞれ異なる条件の決定木T,T,・・・,T毎に、レム睡眠か否かの判定q,q,・・・,qを得る。
そして、生体データ処理部12は、複数の決定木T,T,・・・,T毎に得たレム睡眠か否かの判定q,q,・・・,qの多数決で、現在の30秒間の期間がレム睡眠か否かを判定する。

【0032】
図7は、手法1でレム睡眠と判定した区間と、手法2でレム睡眠と判定した区間とを使って、レム睡眠期間を確定する処理例を示すフローチャートである。このレム睡眠期間を確定する処理は、睡眠段階判定部13が判定する。
まず、睡眠段階判定部13は、手法1でレム睡眠と判定した区間があるか否かを判断する(ステップS131)。この判断で、手法1によりレム睡眠と判定した区間がない場合には(ステップS131のNO)、睡眠段階判定部13は、探索した期間内にレム睡眠の期間がないと判断して、レム睡眠期間を探索する処理を終了する。
そして、手法1によりレム睡眠と判定した区間がある場合には(ステップS131のYES)、睡眠段階判定部13は、手法1によりレム睡眠と判定した区間と、手法2によりレム睡眠と判定した区間とが重なる区間があるか否かを判断する(ステップS132)。

【0033】
さらに、ステップS132の判断で、手法1によりレム睡眠と判定した区間と、手法2によりレム睡眠と判定した区間とが重なる区間がある場合には(ステップS132のYES)、手法1によりレム睡眠と判定した区間を含み、一定期間以内(ここでは2分以内)に手法2でレム睡眠と判定した区間が存在する全ての期間を、レム睡眠期間と確定する(ステップS133)。また、ステップS132の判断で、手法1によりレム睡眠と判定した区間と、手法2によりレム睡眠と判定した区間とが重なっていない場合には(ステップS132のNO)、手法1によりレム睡眠と判定した区間を、レム睡眠期間と確定する(ステップS134)。

【0034】
図8は、図7のフローチャートに示した手法1での判定結果と手法2での判定結果から、レム睡眠の期間を確定する処理状態の例を示す説明図である。
図8Aの例は、ある期間に、手法1による判定でレム睡眠と判定した区間があり、その区間と重なる期間に、手法2による判定でレム睡眠と判定した区間がない場合を示す。この図8Aに示す状態の場合には、睡眠段階判定部13は、手法1でレム睡眠と判定した区間を、レム睡眠区間と確定する。この図8Aの確定処理は、図7のフローチャートのステップS134でレム睡眠と確定する処理に相当する。

【0035】
図8Bの例は、ある期間に、手法1による判定でレム睡眠と判定した区間があり、その区間と重なる期間に、手法2による判定でレム睡眠と判定した区間がある場合を示す。この場合には、睡眠段階判定部13は、手法1による判定でレム睡眠と判定した区間を全てレム睡眠期間と確定すると共に、手法2による判定でレム睡眠と判定した区間についても、レム睡眠期間と確定する。なお、ここでの手法2による判定でレム睡眠と判定した区間は、手法2によって、2分以内にレム睡眠と判定した区間がある期間を、連続したレム睡眠期間とする。この図8Bの確定処理は、図7のフローチャートのステップS133でレム睡眠と確定する処理に相当する。

【0036】
図8Cの例は、ある期間に、手法2による判定でレム睡眠と判定した区間があり、手法1では該当する区間をレム睡眠と判定しない場合を示す。この場合には、睡眠段階判定部13は、該当する区間をレム睡眠とは確定しない。

【0037】
図9は、被測定者の睡眠状態を判定した例を示す。図9の特性BW及び特性HRの横軸は時間を示し、この図9では数時間の睡眠中の特性BW及び特性HRを示す。
図9の上側に示す特性BWは、被測定者の睡眠状態(睡眠段階)を、脳波計により測定した例(つまり本例の睡眠段階判定装置10とは別の装置により測定した例)を示す。この特性BWのグラフの縦軸において、Aと示す位置は覚醒を示し、1,2,3,4の数字で示す位置はノンレム睡眠のステージ1~4を示す。図9に示す特性BWでは、レム睡眠の期間の判定を行っていないが、ノンレム睡眠のステージ1と覚醒との間に、レム睡眠が存在することになる。

【0038】
ここで、図9の特性BWに重ねて示す区間R1,R2,R3,R4,R5は、本例の睡眠段階判定装置10が手法1と手法2の双方の判定結果から確定したレム睡眠期間である。

【0039】
図9の下側に示す特性HRは、心拍数の変化を示す。この心拍数を示す特性HRは、図2に示すマットレスセンサ2が検出した圧力データに基づいて、睡眠段階判定装置10が取得したものである。この心拍数の変動を示す特性HRの内で、前後の心拍数よりも一時的に高くなるピークの位置ra1,ra2,ra3,ra4,ra5(図9で破線の円で示す部分のほぼ中央部)は、手法1でレム睡眠と判定した区間に相当する。
手法1でレム睡眠と判定した区間ra1,ra2,ra3,ra4,ra5は、特性HRの心拍数がピークとなる位置であり、比較的短時間の区間である。

【0040】
また、図9に示す複数の区間rbは、それぞれが手法2でレム睡眠と判定した区間である。図9では、レム睡眠期間R4及びR5の付近のみ、手法2でレム睡眠と判定した区間rbを示し、その他の区間は図示を省略する。
本例の場合、手法2でレム睡眠と判定する1つの区間rbは30秒間であり、その30秒間の区間rbが2分以内に存在したとき、手法2で判定したレム睡眠が連続していると見なして、1つのレム睡眠期間(例えば期間R4やR5)が確定する。但し、本例の場合には、その30秒間の区間rbが2分以内に存在した期間が、手法1でレム睡眠と判定した区間ra1~ra5と重なっていない箇所については、レム睡眠でないと判定する。

【0041】
このようにして、心拍に基づいてレム睡眠を判定する手法1と、マットレスセンサ2が検出した圧力データの周波数分布の機械学習に基づいてレム睡眠を判定する手法2とを組み合わせて、レム睡眠の期間を判定することで、非常に精度の高いレム睡眠の判定ができるようになる。
具体的には、心拍に基づいてレム睡眠を判定する手法1では、図9の区間ra1~ra5で分かるように、比較的短時間の区間をレム睡眠と判定しており、実際のレム睡眠の長さとは一致していない可能性が高い。
一方、検出データの周波数分布の機械学習からレム睡眠を判定する手法2では、例えば図9の区間R4と区間R5の間の、最終的にレム睡眠と確定しない期間であっても、レム睡眠と判定される区間rbが存在し、レム睡眠と判定する精度がそれ程高くない可能性があった。

【0042】
ここで、本例の場合には、この手法1と手法2を組み合わせて、少なくとも手法1でレム睡眠と判定された区間があり、かつ手法2でレム睡眠と判定される区間rbが一定期間(2分間)以内に存在した場合に、レム期間R1~R5と確定するようにしたことで、非常に精度の高いレム睡眠期間の判定が行えるようになる。
しかも本例の場合には、手法1の判定を行うための心拍データと、手法2の判定を行うための体動の周波数分布のデータのいずれについても、マットレスセンサ2が取得した被測定者の体動に基づいた圧力データであり、脳波を測定する場合と異なり、被測定者に負担をかけずに、的確なレム睡眠の判定ができるようになる。

【0043】
なお、上述した実施の形態例では、手法1の判定を行うための心拍データと、手法2の判定を行うための体動の周波数分布のデータの双方を、同じセンサ(マットレスセンサ2)の出力データから得るようにしたが、例えば心拍データについては、別のセンサから取得するようにして、手法2の判定を行うための体動の周波数分布のデータのみを、マットレスセンサ2から得るようにしてもよい。

【0044】
また、上述した実施の形態例で説明した、手法1の判定を行うための心拍の判断期間(ステップS111での5分間)や、手法2の判定を行うための周波数分布の集計期間(ステップS121での30秒間)の長さは、好適な一例を示したものであり、これらの値に限定されるものではない。さらに、上述した実施の形態例で説明した閾値の値についても、上述した値は一例であり、その他の値を設定してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ベッド、2…マットレスセンサ、10…睡眠段階判定装置、11…生体データ取得部、12…生体データ処理部、13…睡眠段階判定部、14…出力部、A…被測定者、C…コンピュータ装置、C1…CPU、C2…ROM、C3…RAM、C4…不揮発性ストレージ、C5…ネットワークインターフェイス表示部、C6…入力装置、C7…表示装置、C8…バス
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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