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明細書 :植物の生産方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-041582 (P2019-041582A)
公開日 平成31年3月22日(2019.3.22)
発明の名称または考案の名称 植物の生産方法
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
G06Q  50/02        (2012.01)
FI A01G 7/00 603
G06Q 50/02
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2017-164480 (P2017-164480)
出願日 平成29年8月29日(2017.8.29)
発明者または考案者 【氏名】福田 弘和
【氏名】守行 正悟
【氏名】山川 浩延
【氏名】糸賀 和義
出願人 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001195、【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 5L049
Fターム 5L049CC01
要約 【課題】植物工場などにおいて植物の生育(成長速度)にバラツキがある場合でも、収穫される植物の重量を所望の範囲内(規格内)に制御することのできる植物の生産方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの植物からなる植物群の種子を播種し、発芽させて成長させることにより稚苗を得る、緑化工程と、稚苗を育苗室に移植して成育させることにより、定植苗を得る、育苗工程と、定植苗を栽培室に移植して成育させた後に収穫する本栽培工程と、を含む、植物の生産方法。植物群を構成する個々の植物について、育苗工程の複数の時点における重量のデータを収集し、収取された重量のデータから、緑化期間、育苗期間および本栽培期間の合計期間である総栽培期間と、植物群の重量と、の関係式を作成し、関係式に基づいて、植物群について、収穫される植物のうち所定範囲内の重量を有する植物の比率が最適化されるように、総栽培期間が調整される。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも1つの植物からなる植物群の種子を播種し、発芽させて成長させることにより稚苗を得る、緑化工程と、
前記稚苗を育苗室に移植して成育させることにより、定植苗を得る、育苗工程と、
前記定植苗を栽培室に移植して成育させた後に収穫する本栽培工程と、を含む、植物の生産方法であって、
前記植物群を構成する個々の植物について、前記育苗工程の複数の時点における重量のデータを収集し、
収集された前記重量のデータから、前記緑化工程を実施する期間である緑化期間、前記育苗工程を実施する期間である育苗期間、および、前記本栽培工程を実施する期間である本栽培期間の合計期間である、総栽培期間と、前記植物群の重量と、の関係式を作成し、
前記関係式に基づいて、前記植物群について、収穫される植物のうち所定範囲内の重量を有する植物の比率が最適化されるように、前記総栽培期間が調整される、植物の生産方法。
【請求項2】
前記関係式は、下記式(1)を前記重量のデータにフィッティングさせて、下記式(1)中の成長に関する係数K、Wを決定することにより得られる式である、請求項1に記載の植物の生産方法。
JP2019041582A_000012t.gif
〔式(1)において、
tは、前記総栽培期間(日)であり、
は、前記緑化期間(日)であり、
W(t)は、前記総栽培期間t(日)経過時における前記植物群の重量の平均値であり、
maxは、前記植物の想定される最大重量(g)であり、
は、前記植物の前記稚苗の重量(g)であり、
Kは、成長率である。〕
【請求項3】
前記重量のデータは、葉面積の測定値に基づく推定により得られる、請求項1または2に記載の植物の生産方法。
【請求項4】
前記植物群のうち袋売りされる植物の重量の最小値である閾値重量以上の植物の重量当たりの価格と、前記植物群のうち前記閾値重量未満の植物の重量当たりの価格と、の比率に基づいて、前記植物群の生産および販売によって得られる利益率が最大化するように、
前記植物群について、収穫される植物のうち所定範囲内の重量を有する植物の比率が最適化される、請求項1~3のいずれか1項に記載の植物の生産方法。
【請求項5】
前記本栽培期間を調整することにより、前記総栽培期間を調整する、請求項1~4のいずれか1項に記載の植物の生産方法。
【請求項6】
前記本栽培期間を調整することにより、前記総栽培期間を調整し、
下記式(2)に基づいて、前記利益率が最大化するように、前記本栽培期間が調整される、請求項4に記載の植物の生産方法。
JP2019041582A_000013t.gif
〔式(2)において、
Y(t,w,λ)は、植物の1株当たりの利益率(/株)であり、
は、前記閾値重量(g)であり、
は、重量がw以上の株(袋売りの株)の割合(/株)であり、
λは、袋売り商品の重量当たりの価格に対する重量売り商品の重量当たりの価格の割合であり、
<W>は、重量がw未満の株(重量売りの株)の平均重量(g)であり、
Pは、袋売り商品を消費者が購入する割合である購買率であり、
αは、固定費(/株)であり、
βは、1日当りの1株ごとの前記緑化工程および前記育苗工程における光熱費(/(日・株))であり、
γは、1日当りの1株ごとの本栽培工程における光熱費(/(日・株))であり、
は、前記緑化期間(日)であり、
は、前記育苗期間(日)である。〕
【請求項7】
前記育苗期間を調整することにより、前記総栽培期間を調整する、請求項1~4のいずれか1項に記載の植物の生産方法。
【請求項8】
前記育苗期間を調整することにより、前記総栽培期間を調整し、
下記式(3)に基づいて、前記利益率が最大化するように、前記本栽培期間が調整される、請求項4に記載の植物の生産方法。
JP2019041582A_000014t.gif
〔式(3)において、
Y(t,w,λ)は、植物の1株当たりの利益率(/株)であり、
は、前記閾値重量(g)であり、
は、重量がw以上の株(袋売りの株)の割合(/株)
λは、袋売り商品の重量当たりの価格に対する重量売り商品の重量当たりの価格の割合であり、
<W>は、重量がw未満の株(重量売りの株)の平均重量(g)であり、
Pは、袋売り商品を消費者が購入する割合である購買率であり、
αは、固定費(/株)であり、
βは、1日当りの1株ごとの前記緑化工程および前記育苗工程における光熱費(/(日・株))であり、
γは、1日当りの1株ごとの本栽培工程における光熱費(/(日・株))であり、
は、前記本栽培期間(日)である。〕
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場(例えば、人工光型植物工場、ならびに太陽光利用型植物工場)は、農業の工業化ならびに企業経営を実現する一つの柱に位置付けられ、輸出産業としての期待も大きいため、植物工場の技術開発が産業的に注目を集めている。
【0003】
しかし、植物工場での植物の生産では、植物の生育が不均一であり(成育バラツキがあり)、生産が安定しない(生育バラツキにより収益が安定しない)という問題があった。例えば、野菜の販売形態には、重量売り(規格外のもの)と袋売り(規格内のものを個別に袋売り)がある。植物の生育バラツキが大きいと、規格外のものが増えて、収益性の低い重量売りの比率が増えるため、植物工場の収益性は低下してしまう。
【0004】
収穫量、収穫時期などを予測するシステムまたはソフトウエアは、既にいくつか提案されている(例えば、特許文献1(国際公開第2013/088539号)参照)。しかし、これらにおいては、集団平均または時間平均に基づく第一近似・準静的モデルを用いており、個体別の動的特性を十分に分析していない(個々の植物の重量測定などは行っていない)ため、生産の不安定性(突如、生育が不良になる現象)が十分に分析されていない。したがって、これらの従来のシステムでは、植物工場における生産不安定性などを十分に回避することはできないと考えられる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開第2013/088539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、植物工場などにおいて植物の生育(成長速度)にバラツキがある場合でも、収穫される植物の重量を所望の範囲内(規格内)に制御することのできる植物の生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 少なくとも1つの植物からなる植物群の種子を播種し、発芽させて成長させることにより稚苗を得る、緑化工程と、
前記稚苗を育苗室に移植して成育させることにより、定植苗を得る、育苗工程と、
前記定植苗を栽培室に移植して成育させた後に収穫する本栽培工程と、を含む、植物の生産方法であって、
前記植物群を構成する個々の植物について、前記育苗工程の複数の時点における重量のデータを収集し、
収集された前記重量のデータから、前記緑化工程を実施する期間である緑化期間、前記育苗工程を実施する期間である育苗期間、および、前記本栽培工程を実施する期間である本栽培期間の合計期間である、総栽培期間と、前記植物群の重量と、の関係式を作成し、
前記関係式に基づいて、前記植物群について、収穫される植物のうち所定範囲内の重量を有する植物の比率が最適化されるように、前記総栽培期間が調整される、植物の生産方法。
【0008】
[2] 前記関係式は、下記式(1)を前記重量のデータにフィッティングさせて、下記式(1)中の成長に関する係数K、Wを決定することにより得られる式である、[1]に記載の植物の生産方法。
【0009】
【数1】
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【0010】
〔式(1)において、
tは、前記総栽培期間(日)であり、
は、前記緑化期間(日)であり、
W(t)は、前記総栽培期間t(日)経過時における前記植物群の重量の平均値であり、
maxは、前記植物の想定される最大重量(g)であり、
は、前記植物の前記稚苗の重量(g)であり、
Kは、成長率である。〕
【0011】
[3] 前記重量のデータは、葉面積の測定値に基づく推定により得られる、[1]または[2]に記載の植物の生産方法。
【0012】
[4] 前記植物群のうち袋売りされる植物の重量の最小値である閾値重量以上の植物の重量当たりの価格と、前記植物群のうち前記閾値重量未満の植物の重量当たりの価格と、の比率に基づいて、前記植物群の生産および販売によって得られる利益率が最大化するように、
前記植物群について、収穫される植物のうち所定範囲内の重量を有する植物の比率が最適化される、[1]~[3]のいずれかに記載の植物の生産方法。
【0013】
[5] 前記本栽培期間を調整することにより、前記総栽培期間を調整する、[1]~[4]のいずれかに記載の植物の生産方法。
【0014】
[6] 前記本栽培期間を調整することにより、前記総栽培期間を調整し、
下記式(2)に基づいて、前記利益率が最大化するように、前記本栽培期間が調整される、[4]に記載の植物の生産方法。
【0015】
【数2】
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【0016】
〔式(2)において、
Y(t,w,λ)は、植物の1株当たりの利益率(/株)であり、
は、前記閾値重量(g)であり、
は、重量がw以上の株(袋売りの株)の割合(/株)
λは、袋売り商品の重量当たりの価格に対する重量売り商品の重量当たりの価格の割合であり、
<W>は、重量がw未満の株(重量売りの株)の平均重量(g)であり、
Pは、袋売り商品を消費者が購入する割合である購買率であり、
αは、固定費(/株)であり、
βは、1日当りの1株ごとの前記緑化工程および前記育苗工程における光熱費(/(日・株))であり、
γは、1日当りの1株ごとの本栽培工程における光熱費(/(日・株))であり、
は、前記緑化期間(日)であり、
は、前記育苗期間(日)である。〕
【0017】
[7] 前記育苗期間を調整することにより、前記総栽培期間を調整する、[1]~[4]のいずれかに記載の植物の生産方法。
【0018】
[8] 前記育苗期間を調整することにより、前記総栽培期間を調整し、
下記式(3)に基づいて、前記利益率が最大化するように、前記本栽培期間が調整される、[4]に記載の植物の生産方法。
【0019】
【数3】
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【0020】
〔式(3)において、
Y(t,w,λ)は、植物の1株当たりの利益率(/株)であり、
は、前記閾値重量(g)であり、
は、重量がw以上の株(袋売りの株)の割合(/株)
λは、袋売り商品の重量当たりの価格に対する重量売り商品の重量当たりの価格の割合であり、
<W>は、重量がw未満の株(重量売りの株)の平均重量(g)であり、
Pは、袋売り商品を消費者が購入する割合である購買率であり、
αは、固定費(/株)であり、
βは、1日当りの1株ごとの前記緑化工程および前記育苗工程における光熱費(/(日・株))であり、
γは、1日当りの1株ごとの本栽培工程における光熱費(/(日・株))であり、
は、前記本栽培期間(日)である。〕
【発明の効果】
【0021】
本発明の植物の生産方法によれば、植物工場などにおいて植物の生育(成長速度)にバラツキがある場合でも、収穫される植物の重量を所望の範囲内(規格内)に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の植物の生産方法の各工程を示すフロー図である。
【図2】本発明の植物の生産方法に用いられるシステムの一例を示す模式図である。
【図3】本発明の植物の生産方法に用いられるシステムの一例を説明するための模式図である。
【図4】植物の閾値重量wと購買率Pとの関係を示すグラフである。
【図5】実施形態1における本栽培期間の調整を説明するためのグラフである。(a)は、主に育苗期間を説明するためのグラフであり、(b)は、主に本栽培期間を説明するためのグラフである。
【図6】実施形態2における育苗期間の調整を説明するためのグラフである。(a)は、主に育苗期間を説明するためのグラフであり、(b)は、主に本栽培期間を説明するためのグラフである。
【図7】(a)は、葉面積と重量との相関性を示すグラフである。(b)は、画像処理による葉面積の測定を説明するための写真である。
【図8】育苗工程における葉面積の測定を説明するためのグラフである。(a)は、育苗期間240時間までのグラフであり、(b)は、育苗期間336時間までのグラフである。
【図9】実施形態1における閾値重量wおよび総栽培期間tと利益率Yとの関係を示すグラフである。
【図10】従来の植物の生産方法を説明するための模式図である。
【図11】実施形態1の植物の生産方法を説明するための模式図である。
【図12】実施形態2における閾値重量wおよび総栽培期間tと利益率Yとの関係を示すグラフである。
【図13】従来の植物の生産方法を説明するための模式図である。
【図14】実施形態2の植物の生産方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(植物の生産方法)
図1を参照して、本発明の植物の生産方法は、
少なくとも1つの植物からなる植物群の種子を播種し、発芽させて成長させることにより稚苗を得る、緑化工程と、
稚苗を育苗室に移植して成育させることにより、定植苗を得る、育苗工程と、
定植苗を栽培室に移植して成育させた後に収穫する本栽培工程と、を含む。

【0024】
なお、植物の生産効率を高める観点からは、稚苗および定植苗は、苗選別ロボットなどにより選別された苗が移植されることが好ましい。

【0025】
本発明の栽培(生産)対象となる植物としては、特に限定されないが、例えば、食用の植物、薬用の植物、観賞用の植物などが挙げられる。植物は、好ましくは食用の植物である。食用の植物としては、例えば、レタス、小松菜、ホウレンソウ、サンチュ、水菜、春菊、ハーブ類(ルッコラ、バジル、シソ、ツボクサ、ドクダミ等)などの葉物野菜、ナス、キュウリ、トマト、ピーマンなどの実物野菜、イチゴ、ミカン、マンゴー、ブドウ、ナシなどの果物;コメ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、トウモロコシ、モロコシ、アワ、ヒエ、キビ等の穀物が挙げられる。苗の葉面積から重量(生重量)を推定し易い点からは、葉物野菜が好ましい。観賞用の植物としては、例えば、バラ、カーネーション、洋ラン、ガーベラ、トルコキキョウ等の花卉類;ポトス、セローム、アジアンタム等の観葉植物が挙げられる。なお、植物は、遺伝子組換え植物であってもよい。

【0026】
本発明者らは、育苗工程における苗の生育のバラツキが、植物工場の生産を不安定化する要因の1つであることを見出した。育苗工程では、種の個体差や緑化工程および育苗工程における僅かな栽培条件の違いによって、苗の生育のバラツキが生じ易いと考えられる。また、育苗工程では、幼葉から本葉の形成など、生育における質的な変化が伴い、生育のバラツキが大きくなり易い傾向がある。

【0027】
このため、本発明の植物の生産方法においては、まず、植物群を構成する個々の植物について、育苗工程の複数の時点における重量(生重量)のデータ(例えば、重量と重量分布のデータ)を収集する。そして、収集された重量のデータから、本栽培工程での植物(植物群)の成育量(重量)を予測する。

【0028】
なお、植物群とは、少なくとも1つの植物(好ましくは複数の植物)からなる群であれば特に限定されないが、例えば、植物工場内の所定の領域に同日に播種された少なくとも1つの植物からなる群などが挙げられる。

【0029】
具体的には、総栽培期間と、植物群の重量と、の関係式を作成し、該関係式からある総栽培期間の経過後に収穫された植物の重量の予測値を算出することができる。ここで、総栽培期間とは、収集された重量のデータから、緑化工程を実施する期間である緑化期間と、育苗工程を実施する期間である育苗期間と、本栽培工程を実施する期間である本栽培期間と、の合計期間である。

【0030】
関係式は、植物の重量の予測値を算出することが可能であれば特に限定されないが、好ましくは、下記式(1)を重量のデータにフィッティングさせて、下記式(1)中の成長に関する係数K、Wを決定することにより得られる式である。

【0031】
【数4】
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【0032】
上記式(1)における各記号は、以下のとおりである。
t: 総栽培期間(日)〔播種から(収穫まで)の合計期間〕
: 緑化期間(日)〔播種から育苗室への移植までの期間〕
W(t): 植物重量(g)〔総栽培期間t(日)経過時における植物の重量〕
max: 最大重量(g)〔植物種ごとに通常想定される重量の最大値〕
: 稚苗重量(g)〔育苗室への移植時(t経過時)における植物(稚苗)の重量〕
K: 成長率
なお、植物群が複数の植物からなる場合、W(t)は、ある植物群についての平均値である。

【0033】
重量のデータは、例えば、個々の植物の葉面積が植物の重量(地上部の生重量)に対して相関性を有している場合は、植物の葉面積の測定値に基づく推定により得ることができる。

【0034】
ただし、葉面積は二次元画像の解析によって求められるため、植物が成長して葉の数が増えると、葉の重なりが生じるため、二次元画像から正確な葉面積を求めることができなくなる。このため、植物の成長を、例えば、ロジスティクス曲線(上記式(1))で近似して、成長曲線(植物の重量の予測値を示す曲線)を求める必要がある。

【0035】
植物の成長を求めるためには、式(1)の成長パラメータのWとKの両方が必要である。WとKの両方を決めるためには、図8(a)に示されるような時系列データが必要である。

【0036】
図8(a)の葉面積Li(mm)の時系列データに式(1)をフィッティングさせて、係数KとWを求め、図8(b)に点線で示されるような近似曲線を得ることができる。なお、ここでは、式(1)におけるWmaxは、これまでの実験結果に基づいて定数(180g)とした。

【0037】
なお、近似曲線は、非線形GRG(非線形計画)を用いて求めることができる。非線形GRGについては、例えば、URL[http://www.orsj.or.jp/archive2/or57-04/or57_4_175.pdf#search=%27GRG%E9%9D%9E%E7%B7%9A%E5%BD%A2%27]のp.181などを参照できる。

【0038】
なお、苗の重量(葉面積)の測定は、植物群の全ての株について行う必要はなく、植物群の一部の株について測定を行い、それらの測定値から植物群全体の測定値を推定してもよい。なお、植物工場内の生育バラツキ(分散)は非常に大きいため、例えば、少なくとも生産全体の10%程度の苗について重量(葉面積)の測定を行うことが好ましい。例えば、日産5000株の植物工場の場合、少なくとも500株について測定を実施することが好ましい。

【0039】
そして、本発明の植物の生産方法においては、さらに、該関係式に基づいて、植物群について、収穫される植物のうち所定範囲内の重量を有する植物の比率が最適化されるように、総栽培期間が調整される。

【0040】
「収穫される植物のうち所定範囲内の重量を有する植物の比率が最適化される」とは、例えば、植物群のうち所定の閾値重量w以上の植物の重量当たりの価格と、植物群のうち閾値重量未満の植物の重量当たりの価格と、の比率に基づいて、植物群の生産および販売によって得られる利益率が最大化するようにすることである。すなわち、できるかぎり短い総栽培期間で植物の生産に必要なコストを抑えつつ、収穫される植物群のうち所定の閾値重量w以上の重量を有する植物の比率ができるだけ多くなるようにすることで、当該利益率を最大化することができる。

【0041】
例えば、あらかじめ、植物の生育量(重量)に応じた異なる販売形態(袋売りと重量売り)を考慮した上で、販売形態ごとに収益性(利益率)を求めるダイアグラムを構築し、全ての販売形態の合計の収益率を求める計算式(例えば、上記式(2)および式(3))を作成しておく。なお、上記式(2)および式(3)においては、袋売りされる植物の重量の最小値である閾値重量w(出荷閾値)が計算式の1つのパラメータとなっている。そして、このような計算式を用いて、全ての販売形態の合計の収益率が最大となる総栽培期間t(最適栽培期間)等を求める。

【0042】
このようにして求められた最適栽培期間に従って、植物群の総栽培期間を調整することで、植物群の利益率を最大化することができる。なお、例えば、後述する実施形態1のように、本栽培期間を調整することにより、総栽培期間を調整してもよく、実施形態2のように、育苗期間を調整することにより、総栽培期間を調整してもよい。

【0043】
例えば、植物群が植物工場内の所定の領域に同日に播種された植物であり、植物工場内で複数の植物群が栽培されている場合、それらの植物群ごとに以上のプロセスによる総栽培期間の調整を継続的に実施することで、継続的に植物工場等の収益性を最大化することができる。また、植物工場等における各植物群ごとの収益性(利益率)の変動幅を最小限に抑えることができ、収益性を安定化することができる。

【0044】
上記のとおり、本発明の植物の生産方法によれば、植物工場などにおいて植物の生育(成長速度)にバラツキがある場合でも、収穫される植物の重量を所望の範囲内(規格内)に制御することができ、生産安定性が向上する。したがって、販売予測が可能となり、販売計画を立てることができる(例えば、播種から3週間経過時に1箇月後の計画が立てられる等)という利点がある。このため、本発明の植物の生産方法は、契約販売等の場合に特に有利である。

【0045】
なお、総栽培期間の調整において、利益率のダイアグラムに将来的な市場(需要状況)の情報等をフィードフォワードしておいてもよい。例えば、1週間後に袋物の価格が低下して、重量売りの価格が上がる等の情報を、あらかじめλ(袋売り商品の重量当たりの価格に対する重量売り商品の重量当たりの価格の割合)などに反映させておいてもよい。また、購買率Pなどの変動のあるパラメータについて、フィードバック制御を行うことで、より高精度に収益性を向上させることが可能となる。

【0046】
(システム)
図2は、本発明の植物の生産方法に用いられるシステムの一例を示す模式図である。

【0047】
図2および図3(a)を参照して、葉面積の測定には、例えば、超小型PCとカメラから構成される30台の撮像装置(PI:Plant Imager)からなる撮像装置群(MPI:Multi Plant Imager)が用いられる。MPIは、全体で500株の植物の撮像が可能である。なお、本栽培工程において葉面積をモニターすると大面積で複雑な撮像装置が必要となってしまうため、育苗工程で葉面積をモニターする場合、撮像装置等の装置構成を簡略化できる利点もある。

【0048】
MPIで得られた画像データは、例えば、無線LANアクセスポイントおよびHUBを介して、解析用のメインPCおよびデータ保管用のファイルサーバ(または、NAS:ネットワークハードディスク)に送信される。なお、画像データの送信は、特に無線送信に限られず、有線送信で実施されてもよい。

【0049】
そして、メインPCにて、MPIによって得られた個々の植物の画像に対して、個体認識および画像処理(葉面積計測)を行うことで、個々の植物の葉面積を測定することができる(図3(b)参照)。次に、メインPCは、葉面積の測定値から、個々の植物の重量(地上部の生重量)の推定値を算出する。

【0050】
図7を参照して、図7(b)に示されるように画像の解析処理により測定された個々の植物の葉面積Liの測定値は、図7(a)に示されるように、植物の重量(地上部の生重量)の測定値に対して相関性(相関係数R=0.87)を有していることが分かる。したがって、図7(a)に示されるような検量線を用いて、葉面積の測定値から、個々の植物の重量の推定値を算出することができる。

【0051】
さらに、メインPCは、上記のようにして得られた個々の植物の重量データ等に基づいて、植物群の成育速度(ある総栽培期間経過時の植物群の重量予測値)を求めるアルゴリズムを構築する。

【0052】
メインPCには、植物群の生産および販売によって得られる利益率を求めるアルゴリズムと、その利益率が最大化するような最適収穫期間等を求める収益最大化アルゴリズム(図3(c))が実装されている。その収益最大化アルゴリズムによって、最適収穫日が算出される。なお、メインPCには、例えば、そのような最適収穫日を工場長などにアラートする機能が実装されていてもよい。

【0053】
収益最大化アルゴリズムは多数のパラメータを持ち、それは植物工場毎に異なる固有の数値となっている。例えば、作物品種、電力コスト、標準栽培期間などである。収益最大化アルゴリズムの構築には、これらの緻密な数値が重要であるが、電力コストなどは天候にも依存しており(例えば、猛暑日の冷房コスト)、一般には複雑である。植物工場運営会社とも連携した緻密な現地調査により、緻密なパラメータ数値の獲得を行うことが望ましい。

【0054】
上記のシステムは、植物を栽培するための光を照射する光源と、光源の点灯を制御する光源制御手段を備えていてもよい。また、システムは、植物を収容する空間内の湿度や温度を管理する空調設備、植物栽培用の培地を供給する培養設備などを備えていてもよい。

【0055】
光源はLEDや蛍光灯などから構成され、植物の生育に必要な波長の光を照射する。光源は固定された波長の光を照射する光源や複数の波長の光を照射する光源であり得る。照射する光の波長を制御可能な光源が好ましく用いられる。植物の成長は照射される光の波長によって影響されることも知られており、光の波長は適宜選択される。

【0056】
なお、植物工場における「夜」に相当する時間は、植物工場内は暗黒となっている。このため、「夜」に相当する時間に鮮明な植物の画像を得るためには、栽培用LED照明(光源)を点灯させる必要があるが、LED証明制御装置によるリレー制御などによって、栽培用LED証明の点灯が植物の生育に干渉しないように制御することが好ましい(図2参照)。

【0057】
なお、植物の栽培培地としては、植物を栽培(本栽培)することのできる培地であれば特に限定されず、例えば、水耕栽培等に用いられる種々公知の培地を使用できる。栽培培地は、例えば、移植された植物を識別する識別情報を記録する記録媒体が設けられた栽培容器に収容される。MPIまたはメインPCは、このような記録媒体の識別情報を読み取ることで、植物の個体認識を行うことができる。

【0058】
複数の栽培容器は、例えば、棚板が所定間隔を隔てて複数段設けられた栽培棚に載置される。上記のシステムは、さらに、複数の棚板間で栽培容器を搬送する搬送装置などを備えていてもよい。

【0059】
以下、本発明の植物の生産方法(特に総栽培期間の調整)の具体例について、実施形態を挙げて説明する。

【0060】
<実施形態1>
本実施形態においては、本栽培期間を調整することにより、総栽培期間が調整される。

【0061】
本実施形態においては、本栽培期間の調整に用いられる利益率Yの式として、例えば、下記式(2)が用いられる。

【0062】
【数5】
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【0063】
上記式(2)における各記号は、以下のとおりである。
Y(t,w,λ): 植物の1株当たりの利益率(/株)
: 閾値重量(g)〔袋詰めされる重さの最小値〕
: 重量がw以上の株(袋売りの株)の割合(/株)
λ: 袋売り商品の重量当たりの価格に対する重量売り商品(カット野菜等)の重量当たりの価格の割合
<W>: 重量がw未満の株(重量売りの株)の平均重量(g)
P: 袋売り商品を消費者が購入する割合である購買率
α: 固定費(播種数一定の場合、光熱費以外はすべて含まれる)(/株)
β: 1日当りの1株ごとの緑化工程および育苗工程(播種から定植まで)における光熱費(/(日・株))
γ: 1日当りの1株ごとの本栽培工程(定植から収穫まで)における光熱費(/(日・株))
は、前記緑化期間(日)〔播種から移植までの期間〕
は、前記育苗期間(日)〔移植から定植までの期間〕

【0064】
ここで、<W>は、例えば、下記式(4)を用いて算出することができる。下記式(4)において、σ(t)は、W(t)の標準偏差である。

【0065】
【数6】
JP2019041582A_000008t.gif

【0066】
また、rは、例えば、下記式(5)を用いて算出することができる。

【0067】
【数7】
JP2019041582A_000009t.gif

【0068】
なお、Pは、例えば、下記式(6)を用いて算出することができる。式(6)において、w’は、消費者が実際の商品(植物)を見て100%購入する最小の重さの基準である。

【0069】
【数8】
JP2019041582A_000010t.gif

【0070】
上記式(6)の植物の閾値重量wと購買率Pとの関係は、図4のグラフで示される。なお、図4では、式(6)のパラメータが、a=0.02、b=-0.5,w’=75(g)である。図4では、閾値重量wをw’(図4では、w’=75g)以上に設定すれば、袋詰め商品の購買率Pが100%になることが示されている。

【0071】
本実施形態においては、図9に示されるような上記式(2)の利益率Yのグラフに基づいて、植物群の最適な総栽培期間(最適栽培期間)を決定することができる。

【0072】
なお、図9は、上記式(1)で、Wmax=178.25(g)、W=0.15(g)、K=0.20と設定し、上記式(2)で、α=0.552、β=0.00082、γ=0.00558、λ=0.30、t1=6(日)、t=14(日)と設定されたときのグラフである。なお、W(t)のc.v.(変動係数)は0.234であった。そして、図9において、閾値重量wが75gのときの総栽培期間tの最適値(最適栽培期間)は、47日であり、そのときの利益率Yは0.259(25.9%)であった。

【0073】
この最適栽培期間に基づいて、本栽培期間を調整する(本栽培工程の段階で総栽培期間を調整する)ことにより、植物群間で同等の成長を実現することが可能となる(図5(a)および(b)参照)。すなわち、同じ育苗期間で本栽培を開始した(同日に栽培室への移植を行った)場合、(本栽培期間(定植から収穫までの期間)を調整することで、所望の重量を有する植物の収穫が可能となる(図5(b)参照)。

【0074】
図5(a)において、Wは、播種時重量(g)〔t=0の時点における植物(種子)の重量〕である。また、Wは、定植苗重量(g)〔栽培室への移植時(t+t経過時:図5(a)では20日経過時)における植物(定植苗)の重量〕である。ここで、tは、育苗期間(日)〔育苗室への移植から栽培室への移植(定植)までの期間〕である。

【0075】
本実施形態においては、苗成育指標のバラツキに応じて、総栽培期間(本栽培期間)を調整することで、従来の方法(図10参照)に比べて、植物群の利益率の平均値<Y>が安定化され、生産安定化が実現される(図11参照)。なお、図10および図11における横軸は、植物工場の稼働日数を示している。図10および図11は、例えば、100日間定期的に一定量の植物群が播種された場合において、定期的に播種された各植物群がMPI計測終了時から何日後に収穫されたかを示している。このように、定期的に播種し栽培される植物群ごとに、総栽培期間の調整を継続的に実施することで、継続的に各植物群場等の収益性を最大化することができる。また、各植物群ごとの収益性(利益率)の変動幅を最小限に抑えることができ、収益性を安定化することができる。

【0076】
<実施形態2>
実施形態2は、育苗期間を調整することにより、総栽培期間が調整される点で、実施形態1(本栽培期間を調整することにより、総栽培期間が調整される)とは異なる。それ以外の点は、実施形態1と基本的に同様であるため、重複する説明は繰り返さない。

【0077】
本実施形態においては、栽培期間の調整に用いられる利益率Yの式として、例えば、下記式(3)が用いられる。

【0078】
【数9】
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【0079】
本実施形態においては、図12に示されるような上記式(3)の利益率Yのグラフに基づいて、植物群の最適な総栽培期間(最適栽培期間)を決定することができる。

【0080】
なお、図12は、上記式(1)で、Wmax=178.25(g)、W=0.15(g)、K=0.20と設定し、上記式(2)で、α=0.552、β=0.00082、γ=0.00558、λ=0.30、t=20(日)と設定されたときのグラフである。なお、W(t)のc.v.(変動係数)は0.234であった。そして、図12において、閾値重量wが75gのときの総栽培期間tの最適値(最適栽培期間)は、50日であり、そのときの利益率は0.303(30.3%)であった。

【0081】
この最適栽培期間に基づいて、育苗期間を調整する(育苗工程の段階で総栽培期間を調整する)ことにより(図6(a)参照)、(本栽培期間の調整を必要とせずに)同じ本栽培期間で収穫しても、生育の異なる植物群間で同等の成長を実現することが可能となる(図6(b)参照)。なお、植物群A~Cの播種から苗の定植までの日数は、植物群Aで20-4日、植物群Bで20日、植物群Cで20+11日であった。

【0082】
なお、図6(b)において、Wは、収穫時重量(g)〔収穫時(t=40日+調整期間α日経過時]における植物の重量〕である。

【0083】
本実施形態においては、苗成育指標のバラツキに応じて、総栽培期間(育苗期間)を調整することで、従来の方法(図13参照)に比べて、植物群の利益率の平均値<Y>が安定化され、生産安定化が実現される(図14参照)。なお、図13および図14における横軸は、植物工場の稼働日数を示している。図13および図14は、例えば、100日間定期的に一定量の植物群が播種された場合において、定期的に播種された各植物群がMPI計測終了時から何日後に収穫されたかを示している。このように、定期的に播種し栽培される植物群ごとに、総栽培期間の調整を継続的に実施することで、継続的に各植物群場等の収益性を最大化することができる。また、各植物群ごとの収益性(利益率)の変動幅を最小限に抑えることができ、収益性を安定化することができる。

【0084】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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