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明細書 :シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-047748 (P2019-047748A)
公開日 平成31年3月28日(2019.3.28)
発明の名称または考案の名称 シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質
国際特許分類 C12P   1/00        (2006.01)
C12P   7/02        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12P 1/00 ZNAA
C12P 7/02
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 34
出願番号 特願2017-173446 (P2017-173446)
出願日 平成29年9月8日(2017.9.8)
発明者または考案者 【氏名】渡辺 芳人
【氏名】荘司 長三
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
Fターム 4B064AB01
4B064AC01
4B064CB01
4B064CC30
4B064DA01
4B064DA10
4B064DA16
要約 【課題】シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質を用いた、より簡便且つ効率的なヒドロキシ炭化水素製造技術を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物からなる、細胞内でヒドロキシ炭化水素を製造するために用いられるシトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質、及びこれを用いて細胞内でヒドロキシ炭化水素を製造する方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1):
【化1】
JP2019047748A_000041t.gif
[式中、R1は置換されていてもよい炭化水素基を示す。R2は単結合又はリンカーを示す。R3は単結合又は式(2):
【化2】
JP2019047748A_000042t.gif
(式中、窒素原子は、R2に結合する。)
で表される基を示す。R4及びR5は同一又は異なったアミノ酸側鎖を示す。R6は水素原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシ基、又はカルボキシ誘導体基を示す。但し、R5及びR6は互いに結合してラクトン環を形成していてもよい。nは0又は1以上の整数を示す。]
で表される化合物からなる、細胞内でヒドロキシ炭化水素を製造するために用いられるシトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質。
【請求項2】
前記R6がカルボキシ基である、請求項1に記載のデコイ基質。
【請求項3】
前記アミノ酸側鎖が、置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、及びヘテロアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のデコイ基質。
【請求項4】
前記R1がアルキルアラルキル基であり、前記R2及びR3が単結合であり、且つnが0である、請求項1~3のいずれかに記載のデコイ基質。
【請求項5】
前記R1がアルキル基であり、前記R2が単結合であり、前記R3が前記式(2)で表される基であり、且つnが0である、請求項1~3のいずれかに記載のデコイ基質。
【請求項6】
前記R5及び前記R6がラクトン環を形成していない、請求項1~5のいずれかに記載のデコイ基質。
【請求項7】
前記R5及び前記R6が互いに結合してラクトン環を形成している、請求項1~5のいずれかに記載のデコイ基質。
【請求項8】
前記化合物がクオルモンである、請求項7に記載のデコイ基質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のデコイ基質及び炭化水素系基質を含む細胞を培養する工程を含む、ヒドロキシ炭化水素を製造する方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載のデコイ基質及び炭化水素系基質を細胞に導入する工程、及び得られた細胞を培養する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記デコイ基質が前記細胞内で合成されるデコイ基質である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
一般式(1):
【化3】
JP2019047748A_000043t.gif
[式中、R1は置換されていてもよい炭化水素基を示す。R2は単結合又はリンカーを示す。R3は単結合又は式(2):
【化4】
JP2019047748A_000044t.gif
(式中、窒素原子は、R2に結合する。)
で表される基を示す。R4及びR5は同一又は異なってアミノ酸側鎖を示す。R6は水素原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシ基、又はカルボキシ誘導体基を示す。但し、R5及びR6は互いに結合してラクトン環を形成していてもよい。nは0又は1以上の整数を示す。]
で表され、且つ
R4及びR5の少なくとも1つが親水性アミノ酸側鎖である、或いは
R1-R2-R3-がアルキル基以外の基である
化合物からなる、シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質。
【請求項13】
請求項12に記載のデコイ基質、炭化水素系基質、及びシトクロムP450モノオキシゲナーゼをインビトロで反応させる工程を含む、ヒドロキシ炭化水素を製造する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質、該デコイ基質を用いたヒドロキシ炭化水素製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌由来の酵素であるシトクロムP450は、真核生物由来のシトクロムP450に比べて高い触媒活性を持つことが知られている。細菌由来のシトクロムP450として、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のシトクロムP450camや、バチルス属菌細菌の一種であるBacillus megaterium由来のシトクロムP450BM3等の、シトクロムP450モノオキシゲナーゼが知られている。
【0003】
これらの細菌由来のシトクロムP450は、脂肪酸等の基質を水酸化する高い触媒活性を備えている。また、水に対する親和性が比較的高いため、取得及び取扱が容易である。こうした理由から、シトクロムP450モノオキシゲナーゼは、バイオ触媒として適していると考えられる。
【0004】
ただ、野生型のシトクロムは、工業的に有用な炭化水素系基質を水酸化するのにあたっては必ずしも触媒活性が高いわけでない。このため、種々の変異型シトクロムP450が提案されている(特許文献1~3)。
【0005】
一方、本発明者らは、高い触媒活性を呈しない炭化水素に対してシトクロムP450を誤作動させるように擬似基質(デコイ基質)を取り込ませることで、水酸化反応を高効率に触媒することを既に報告している(特許文献4)。このデコイ基質は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼの基質結合部位に結合可能な末端構造と、アルキル鎖、とを備えており、アルキル鎖に含まれる少なくとも1つの分子がフッ素で置換されていることを特徴としている。ここで、アルキル鎖の水素分子をフッ素で置換したものをデコイ基質として用いるのは、フッ素原子半径が水素に近いため、基質の水素をフッ素で置換したフッ素化物が本来の基質に類似すると同時に、シトクロムP450はC-F結合を水酸化できないため、それ自身は基質とならないからである。
【0006】
しかし、フッ素含有デコイ基質は、製造コストが高い他、その難分解性、環境残留性及び生体蓄積性等といった問題が生じ得る。
【0007】
この問題を解決すべく、本発明者らは、デコイ基質中のアルキル鎖のフッ素化を一切しなくても、シトクロムP450モノオキシゲナーゼの基質結合部位に結合可能な末端構造と、非フッ素化アルキル鎖とを、ペプチド結合を含むリンカーを介して備えることで、デコイ基質として用いて、炭化水素を水酸化できることを報告している(特許文献5)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特表第2000-508163号公報
【特許文献2】特表第2003-517815号公報
【特許文献3】特表第2003-521889号公報
【特許文献4】特開第2012-24009号公報
【特許文献5】特開第2017-071589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フッ素原子を多く含むデコイ基質を用いた従来技術においては、細胞がデコイ基質を取り込まないため、炭化水素系基質の水酸化反応をインビトロで行っており、シトクロムP450モノオキシゲナーゼの酵素活性を持続させ、効率的にヒドロキシ炭化水素を製造するには、NADPHを添加する必要があった。このため、ヒドロキシ炭化水素の製造コスト、製造効率等の点でさらなる改善が必要であると考えられた。
【0010】
そこで、本発明は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質を用いた、より簡便且つ効率的なヒドロキシ炭化水素製造技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、一般式(1)で表される化合物をシトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質が細胞に取り込まれることを見出し、これにより該デコイ基質及び炭化水素系基質を含む細胞を単に培養することにより、簡便且つ効率的にヒドロキシ炭化水素を製造できることを見出した。また、新たな構造の化合物がシトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質として有用であることをも見出した。
【0012】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0013】
項1.
一般式(1):
【0014】
【化1】
JP2019047748A_000002t.gif

【0015】
[式中、R1は置換されていてもよい炭化水素基を示す。R2は単結合又はリンカーを示す。R3は単結合又は式(2):
【0016】
【化2】
JP2019047748A_000003t.gif

【0017】
(式中、窒素原子は、R2に結合する。)
で表される基を示す。R4及びR5は同一又は異なったアミノ酸側鎖を示す。R6は水素原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシ基、又はカルボキシ誘導体基を示す。但し、R5及びR6は互いに結合してラクトン環を形成していてもよい。nは0又は1以上の整数を示す。]
で表される化合物からなる、細胞内でヒドロキシ炭化水素を製造するために用いられるシトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質。
【0018】
項2.
前記R6がカルボキシ基である、項1に記載のデコイ基質。
【0019】
項3.
前記アミノ酸側鎖が、置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、及びヘテロアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載のデコイ基質。
【0020】
項4.
前記R1がアルキルアラルキル基であり、前記R2及びR3が単結合であり、且つnが0である、項1~3のいずれかに記載のデコイ基質。
【0021】
項5.
前記R1がアルキル基であり、前記R2が単結合であり、前記R3が前記式(2)で表される基であり、且つnが0である、項1~3のいずれかに記載のデコイ基質。
【0022】
項6.
前記R5及び前記R6がラクトン環を形成していない、項1~5のいずれかに記載のデコイ基質。
【0023】
項7.
前記R5及び前記R6が互いに結合してラクトン環を形成している、項1~5のいずれかに記載のデコイ基質。
【0024】
項8.
前記化合物がクオルモンである、項7に記載のデコイ基質。
【0025】
項9.
項1~8のいずれかに記載のデコイ基質及び炭化水素系基質を含む細胞を培養する工程を含む、ヒドロキシ炭化水素を製造する方法。
【0026】
項10.
項1~8のいずれかに記載のデコイ基質及び炭化水素系基質を細胞に導入する工程、及び得られた細胞を培養する工程を含む、項9に記載の方法。
【0027】
項11.
前記デコイ基質が前記細胞内で合成されるデコイ基質である、項9に記載の方法。
【0028】
項12.
一般式(1):
【0029】
【化3】
JP2019047748A_000004t.gif

【0030】
[式中、R1は置換されていてもよい炭化水素基を示す。R2は単結合又はリンカーを示す。R3は単結合又は式(2):
【0031】
【化4】
JP2019047748A_000005t.gif

【0032】
(式中、窒素原子は、R2に結合する。)
で表される基を示す。R4及びR5は同一又は異なってアミノ酸側鎖を示す。R6は水素原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシ基、又はカルボキシ誘導体基を示す。但し、R5及びR6は互いに結合してラクトン環を形成していてもよい。nは0又は1以上の整数を示す。]
で表され、且つ
R4及びR5の少なくとも1つが親水性アミノ酸側鎖である、或いは
R1-R2-R3-がアルキル基以外の基である
化合物からなる、シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質。
【0033】
項13.
項12に記載のデコイ基質、炭化水素系基質、及びシトクロムP450モノオキシゲナーゼをインビトロで反応させる工程を含む、ヒドロキシ炭化水素を製造する方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質を用いた、より簡便且つ効率的なヒドロキシ炭化水素製造技術を提供することができる。また、本発明によれば、新たな構造のシトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】合成例19の1H NMRチャートを示す。
【図2】合成例20の1H NMRチャートを示す。
【図3】合成例21の1H NMRチャートを示す。
【図4】合成例22の1H NMRチャートを示す。
【図5】合成例23の1H NMRチャートを示す。
【図6】合成例24の1H NMRチャートを示す。
【図7】合成例25の1H NMRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。

【0037】
1.化合物
一般式(1):

【0038】
【化5】
JP2019047748A_000006t.gif

【0039】
で表される化合物について説明する。

【0040】
<1-1.R1
R1は置換されていてもよい炭化水素基を示す。

【0041】
R1で示される炭化水素基としては、特に制限されず、例えばアルキル基、アリール基等、さらにはこれらが任意に組み合わされてなる基(例えば、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアラルキル基)等が挙げられる。

【0042】
R1で示されるアルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状、より好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含される。該アルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば1~15、好ましくは5~14、より好ましくは6~13、さらに好ましくは6~12、よりさらに好ましくは6~11、よりさらに好ましくは7~11、よりさらに好ましくは7~10、よりさらに好ましくは7~9である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。

【0043】
R1で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでも有り得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。

【0044】
R1で示されるアラルキル基は、特に制限されないが、例えば直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらに好ましくは2)のアルキル基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が上記アリール基に置換されてなるアラルキル基等が挙げられる。

【0045】
R1で示されるアルキルアリール基は、特に制限されないが、例えば上記アリール基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは2~6、より好ましくは3~6、さらに好ましくは3~5、よりさらに好ましくは4)のアルキル基に置換されてなるアルキルアリール基等が挙げられる。

【0046】
R1で示されるアルキルアラルキル基は、特に制限されないが、例えば上記アラルキル基の芳香環上の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは2~6、より好ましくは3~6、さらに好ましくは3~5、よりさらに好ましくは4)のアルキル基に置換されてなるアルキルアラルキル基等が挙げられる。

【0047】
R1で示される炭化水素基が有していてもよい置換基としては、特に制限されない。該置換の態様としては、炭化水素基が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、炭素原子、セレン原子、テルル原子等へ置換する態様が挙げられる。より具体的には、該置換基としては、例えばオキソ基等が挙げられる。置換基の数は、例えば0~3、好ましくは0~1、より好ましくは0である。

【0048】
R1として、好ましくはアルキル基、アルキルアリール基、アルキルアラルキル基等が挙げられ、より好ましくはアルキル基、アルキルアラルキル基等が挙げられ、さらに好ましくはアルキルアラルキル基が挙げられる。

【0049】
<1-2.R2
R2は単結合又はリンカーを示す。

【0050】
R2で示されるリンカーは、主鎖上にヘテロ原子を含む比較的短い二価の基である限り特に制限されない。主鎖上のヘテロ原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。リンカーの主鎖を構成する原子数は、例えば1~3である。リンカーとしては、例えば-O-、-C(=O)-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-NR-(Rは水素原子又はアルキル基(好ましくは、炭素数1~4のアルキル基)を示す。)等、さらにはこれらが任意に連結してなる二価の基(例えば、-O-C(=O)-、-O-S(=O)-、-O-S(=O)2-、-C(=O)-NR-等)が挙げられる。

【0051】
R2として、好ましくは単結合が挙げられる。

【0052】
<1-3.R3
R3は単結合又は式(2):

【0053】
【化6】
JP2019047748A_000007t.gif

【0054】
(式中、窒素原子は、R2に結合する。)
で表される基を示す。

【0055】
R3として、好ましくは式(2)で表される基が挙げられる。

【0056】
なお、R2及びR3が共に単結合の場合は、R2とR3は一体となって単結合を示す。

【0057】
<1-4.R1-R2-R3->
従来技術(特許文献5)では、R1-R2-R3-はアルキル基であるとされていたが、本発明者は、予想外にもアルキル基以外の基であっても、高い活性を有することを見出した。この観点からは、R1-R2-R3-としては、アルキル基以外の基が好ましい。中でも、R1がアルキルアラルキル基であること(さらにはR2及びR3が単結合であること)、或いはR3が前記式(2)で表される基であること(さらにはR1がアルキル基であり、R2が単結合であること)が好ましい。

【0058】
<1-5.R4、R5
R4及びR5は同一又は異なってアミノ酸側鎖を示す。また、R4が複数存在する場合、R4は各出現において独立してアミノ酸側鎖を示す。

【0059】
R4又はR5で示されるアミノ酸側鎖は、アミノ酸の側鎖として採用することができる一価の基である限り、特に制限されない。なお、ここでいう「アミノ酸」には、天然のアミノ酸の他にも、人工アミノ酸も包含される。アミノ酸側鎖としては、具体的には、例えば置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基等が挙げられる。

【0060】
R4又はR5で示されるアルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状、より好ましくは分枝鎖状)のいずれのものも包含される。該アルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば1~8、好ましくは2~6、より好ましくは3~5である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。

【0061】
R4又はR5で示されるアルケニル基としては、特に制限はなく、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状)の炭素数2~8、好ましくは2~6、より好ましくは3~5のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。

【0062】
R4又はR5で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでも有り得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。

【0063】
R4又はR5で示されるアラルキル基は、特に制限されないが、例えば直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2)のアルキル基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子、より好ましくは末端の水素原子)が上記アリール基に置換されてなるアラルキル基等が挙げられる。

【0064】
R4又はR5で示されるヘテロアリール基は、特に制限されないが、好ましくは環構成原子数が3~20、好ましくは3~12、より好ましくは7~11のヘテロアリール基である。該へテロアリール基としては、具体的には、例えばピロリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピペリジル基、イミダゾリル基、イミダゾイル基、ピラゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピペラジル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、モルホリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、チオフェニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾイミダゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、プリニル基、プテリジル基、ベンゾフラニル基、クマリル基、クロモニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、好ましくはインドリル基が挙げられる。

【0065】
R4又はR5で示されるヘテロアラルキル基は、特に制限されないが、例えば直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2)のアルキル基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子、より好ましくは末端の水素原子)が上記へテロアリール基に置換されてなるヘテロアラルキル基等が挙げられる。

【0066】
R4又はR5で示されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基が有していてもよい置換基としては、特に制限されず、例えばアミノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、水酸基、アルキルチオ基等が挙げられ、好ましくは水酸基、アルキルチオ基等があげられる。置換基の数は、特に制限されないが、例えば0~3、好ましくは0~1である。

【0067】
アミノ酸側鎖として、好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン等の疎水性アミノ酸の側鎖が挙げられる。これらの中でも、より好ましくはロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン等の側鎖が挙げられ、さらに好ましくはロイシン、フェニルアラニン等の側鎖が挙げられる。また、従来技術(特許文献5)では、疎水性アミノ酸の側鎖が好ましいとされていたが、本発明者は、予想外にも親水性アミノ酸側鎖も高い活性を有することを見出した。この観点から、アミノ酸側鎖としては、親水性アミノ酸の側鎖も好ましい。親水性アミノ酸の側鎖としては、好ましくはセリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン等の側鎖が挙げられ、より好ましくはセリン、トレオニン等の側鎖が挙げられ、さらに好ましくはセリンの側鎖が挙げられる。

【0068】
<1-6.R6
R6は水素原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシ基、又はカルボキシ誘導体基を示す。

【0069】
カルボキシル誘導体基としては、例えば、炭素数1~4程度のアルキルエステル、アミド及び無水物が挙げられる。また、カルボキシル誘導体基としては、カルボキシル基に1又は2以上アミノ酸を導入したアミノアシル基が挙げられる。

【0070】
R6として、好ましくはカルボキシ基が挙げられる。

【0071】
<1-7.R5、R6
R5及びR6は互いに結合してラクトン環を形成していてもよい。

【0072】
ラクトン環は、例えば4~6員環、好ましくは5~6員環、より好ましくは5員環である。

【0073】
ラクトン環を形成するとは、一般式(1)中の、下記式:

【0074】
【化7】
JP2019047748A_000008t.gif

【0075】
で表される部分構造が、例えば以下の式:

【0076】
【化8】
JP2019047748A_000009t.gif

【0077】
で表される部分構造となっていることを意味する。

【0078】
<1-8.n>
nは0又は1以上の整数を示す。

【0079】
nは、好ましくは0~2、より好ましくは0~1、さらに好ましくは0である。

【0080】
<1-9.好ましい一般式(1)化合物>
本発明の一態様において、一般式(1)で表される化合物としては、好ましくは一般式(1A):

【0081】
【化9】
JP2019047748A_000010t.gif

【0082】
[式中、R1、R2、R3、R5、及びR6は前記に同じである。]
で表される化合物が挙げられ、より好ましくは一般式(1B):

【0083】
【化10】
JP2019047748A_000011t.gif

【0084】
[式中、R1、R2、R3、及びR5は前記に同じである。]
で表される化合物が挙げられ、より好ましくは一般式(1C):

【0085】
【化11】
JP2019047748A_000012t.gif

【0086】
[式中、R1、R3、及びR5は前記に同じである。]
で表される化合物が挙げられる。

【0087】
また、細菌等が合成するクオルモンと同様の構造であり、後述の本発明の用途において、内在性のクオルモン又はクオルモンのラクトン環が加水分解されたものをデコイ基質として用いることができるという観点から、一般式(1)において、好ましくはR5及びR6は互いに結合して5員環のラクトン環を形成し、R2及びR3が単結合であり、且つn=0であること、或いはR5がセリン側鎖であり、R6はカルボキシ基であり、R2及びR3が単結合であり、且つn=0であることが好ましい。これらの場合において、R1は、好ましくは1又は2つ(好ましくは1つ)のオキソ基で置換されていてもよいアルキル基である。

【0088】
一般式(1)に包含されるクオルモンとしては、例えば以下に列挙するものが挙げられる。

【0089】
【化12】
JP2019047748A_000013t.gif

【0090】
<1-10.異性体、塩、水和物、溶媒和物>
一般式(1)で表される化合物には、立体異性体及び光学異性体が含まれ、これらは特に限定されるものではない。

【0091】
一般式(1)で表される化合物にはその塩の形態も包含される。塩は特に制限されるものではない。該塩としては、酸性塩、塩基性塩のいずれも採用することができる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、塩基性塩の例としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩; 並びにカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニアとの塩; モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、トリ(ヒドロキシアルキル)アミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。

【0092】
一般式(1)で表される化合物には水和物及び溶媒和物の形態も包含される。溶媒和物を形成する溶媒としては、例えば、有機溶媒(例えばエタノール、グリセロール、酢酸等)等が挙げられる。

【0093】
2.製造方法
一般式(1)で表される化合物は、様々な方法で合成することができる。例えば、一般式(1)においてnが0である化合物(一般式(1A)で表される化合物)は、以下の反応式:

【0094】
【化13】
JP2019047748A_000014t.gif

【0095】
[式中、R1、R2、R3、R5、及びR6は前記に同じである。]
に従って又は準じて合成することができる。また、一般式(1)においてnが1以上である化合物についても、これに準じた方法で合成することができる。

【0096】
本反応では、一般式(1a)で表される化合物と一般式(1b)で表される化合物とを反応させることで、一般式(1A)で表される化合物を得ることができる。

【0097】
一般式(1b)で表される化合物の使用量は、収率等の観点から、一般式(1a)で表される化合物1モルに対して、通常、0.3~3モルが好ましく、0.5~2モルがより好ましく、0.8~1.2モルがさらに好ましい。

【0098】
本反応は、縮合剤の存在下で行うことが好ましい。縮合剤としては、特に制限されるものではなく、例えば公知の縮合剤を広く使用することができる。縮合剤としては、具体的には1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等が挙げられ、好ましくはEDCが挙げられる。縮合剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0099】
縮合剤の使用量は、触媒の種類によっても異なるが、一例として、一般式(1a)で表される化合物1モルに対して、0.5~3モルが好ましく、1~2モルがより好ましい。

【0100】
本反応は、塩基触媒の存在下で行うことが好ましい。塩基触媒としては、特に制限されるものではなく、例えば公知の塩基触媒を広く使用することができる。塩基触媒としては、具体的にはジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)等が挙げられ、好ましくはDIPEAが挙げられる。塩基触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0101】
塩基触媒の使用量は、触媒の種類によっても異なるが、一例として、一般式(1a)で表される化合物1モルに対して、0.8~4モルが好ましく、1.2~2モルがより好ましい。

【0102】
本反応は、その他にも、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等の各種添加剤の存在下で行うことが好ましい。

【0103】
本反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、特に制限されないが、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン等が挙げられ、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。溶媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。

【0104】
反応温度は、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、通常、0~50℃(特に10~30℃)で行うことが好ましい。反応時間は特に制限されず、通常、1時間~12時間、特に4時間~8時間とすることができる。

【0105】
反応の進行は、クロマトグラフィーのような通常の方法で追跡することができる。反応終了後、溶媒を留去し、生成物はクロマトグラフィー法、再結晶法等の通常の方法で単離精製することができる。また、生成物の構造は、元素分析、MS(FD-MS)分析、IR分析、1H-NMR、13C-NMR等により同定することができる。

【0106】
なお、上記反応においては、一般式(1a)で表される化合物及び/又は一般式(1b)で表される化合物中に上記反応を阻害する官能基がある場合には、これらに代えて、これらの化合物中の官能基が保護された化合物を用いることもできる。この場合、上記反応終了後に、必要に応じて、脱保護処理が行われる。

【0107】
3.用途
一般式(1)で表される化合物は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質として用いることができる。

【0108】
この観点から、本発明は、一般式(1)で表される化合物からなる、シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質(本明細書において、「本発明のデコイ基質」と示すこともある。)に関する。

【0109】
本発明のデコイ基質は、より具体的には、ヒドロキシ炭化水素を(インビトロで、或いはインビボで)製造するために用いられるデコイ基質であり、好ましくは細胞内でヒドロキシ炭化水素を製造するために用いられるデコイ基質である。

【0110】
この観点から、本発明は、本発明のデコイ基質及び炭化水素系基質を含む細胞を培養する工程を含む、ヒドロキシ炭化水素を製造する方法(本明細書において、「本発明の製造方法1」と示すこともある。)、並びに本発明のデコイ基質、炭化水素系基質、及びシトクロムP450モノオキシゲナーゼをインビトロで反応させる工程を含む、ヒドロキシ炭化水素を製造する方法(本明細書において、「本発明の製造方法2」と示すこともある。)に関する。

【0111】
また、同様の観点から、本発明は、ヒドロキシ炭化水素製造用組成物、ヒドロキシ炭化水素製造用キットに関する。

【0112】
<3-1.原理>
一般式(1)で表される化合物がシトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質として機能するメカニズムは、限定的な解釈を望むものではないが、以下のように考えられる。

【0113】
シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(以下、単に、P450という。)の活性中心には、基質が結合する基質結合部位が存在する。基質が基質結合部位に結合すると、活性中心に存在する水分子が活性中心から押し出される。以下、この状態を活性化スイッチが入る、と呼ぶ。活性中心は、その後、電子や酸素分子等の作用を受けた後に、基質の水酸化を触媒する。したがって、活性化スイッチが入らないと、P450の触媒反応は開始しないと考えられている。なお、野生型のP450の基質としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が知られている。これらの基質は、概して、基質結合部位に結合する末端構造と、アルキル鎖とを持つ。

【0114】
本発明のデコイ基質においては、P450の基質結合部位に結合可能な部位(-C(=O)-NH-CH2(-R5)-R6)と、基質のアルキル鎖に相当する部位(R1-R2-R3-)とを備える。本発明のデコイ基質は、これら2つの部位を備えるために、基質のかわりにP450の基質結合部位に結合できる。一方で、本発明のデコイ基質は、活性中心からは十分な距離を保つため、活性スイッチは入らない。炭化水素系基質が、本発明のデコイ基質と活性中心の間に入り込むと、P450の構造変化により、活性中心近傍に存在する水分子が活性中心から押し出され、活性化スイッチが入る。これにより該炭化水素系基質が水酸化されると考えられる。

【0115】
<3-2.シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)>
P450としては、公知のシトクロムP450モノオキシゲナーゼを包含できる。P450としては、好ましくは細菌由来のP450が挙げられ、より好ましくは緑膿菌由来のP450やバチルス属由来のP450が挙げられる。こうしたP450としては、例えば、シトクロムP450BM3(CYP102A1)、シトクロムP450cam(カンファー5-モノオキシゲナーゼ、CYP101)が挙げられる。

【0116】
P450には、アミノ酸配列が既知のP450とアミノ酸配列の同一性が40%以上のP450も包含される。例えば、シトクロムP450BM3のアミノ酸配列と40%以上の同一性を持つP450(シトクロムP450BM3のファミリー酵素)や、シトクロムP450BM3のアミノ酸配列と55%以上の同一性を持つP450(シトクロムP450BM3のサブファミリー(CYP102A等)の酵素)が好ましく挙げられる。或いは、シトクロムP450camのアミノ酸配列と40%以上の同一性を持つP450(シトクロムP450camのファミリー酵素)や、シトクロムP450camのアミノ酸配列と55%以上の同一性を持つP450(シトクロムP450camのサブファミリー酵素)が好ましく挙げられる。なお、シトクロムP450BM3のファミリー酵素またはサブファミリー酵素は脂肪酸を水酸化可能であるのが好ましく、シトクロムP450camのファミリー酵素またはサブファミリー酵素はカンファー(C10H16O)を水酸化可能であるのが好ましい。

【0117】
ここで、アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(KarlinS, Altschul SF.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873-7(1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。また、塩基配列の『同一性』も上記に準じて定義される。

【0118】
こうしたシトクロムP450BM3のアミノ酸配列は、例えばJ.Biol.chem.264(19),10987-10998(1989)や、NCBIのベータベース(National Center for Biotechnology Information http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/P14779.2)に開示されている。また、シトクロムP450camのアミノ酸もまた、NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/YP_714029)に開示されている。

【0119】
P450は、野生型のほか変異型であってもよい。変異型としては、例えば、細菌由来のP450の変異型が好ましく挙げられる。例えば、シトクロムP450BM3やシトクロムP450camの変異型が挙げられる。これらの変異型の詳細及び取得方法については、例えば、既述の特許文献1~3のほか、C. J. C. Whitehouse, S. G. Bell, L. L. Wong, Chem. Soc. Rev. 2012, 41, 1218-1260(以上、シトクロムP450BM3の変異型全般)、F. Xu, S. G. Bell, J. Lednik, A. Insley, Z. H. Rao, L. L. Wong, Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 4029-4032、H. Joo, Z. L. Lin, F. H. Arnold, Nature 1999, 399, 670-673(以上、シトクロムP450camの変異型)等に開示されている。

【0120】
<3-3.炭化水素系基質>
基質となる炭化水素系基質としては、特に制限されず、例えば芳香族化合物、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケン等が挙げられる。芳香族化合物としては、一置換されてもよいし多置換されていてもよい。置換基としては、炭素数1~4のアルキル、炭素数2~4のアルケニル、水酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルキル置換基又はアルケニル置換基は、ケト基又はアルデヒド基を有していてもよい。芳香族化合物は、単核であってもよい多核であってもよい。好ましくは単核又は2核である。また、芳香族化合物は、2以上の核が縮合していてもよいし、非芳香族環と縮合していてもよい。こうした芳香族化合物としては、単核又は二核の芳香族化合物が挙げられ、より具体的には、置換されていてもよいベンゼン、ナフタレン、インデン等が挙げられる。 アルカンとしては、例えば、炭素数1~15程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンが挙げられる。例えば、メタン、エタン、n-プロパン、n-ブタン、n-ペンタン、んーヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン及びn-ドデカン等並びにこれらの2以上の分岐を有する分岐鎖体が挙げられる。

【0121】
アルケンとしては、上記したアルカンにおいて1又は2以上の不飽和結合を備えるものが挙げられる。例えば、1不飽和を備えるアルケンが挙げられる。

【0122】
シクロアルカン及びシクロアルケンとしては、置換されていてもよい、炭素数4~8個の炭素原子からなるシクロアルカン及びシクロアルケンが挙げられる。例えば、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、シクロヘプテン等が挙げられる。シクロアルカン及びシクロアルケンは、1又は2以上の置換基を有していてもよく、例えば、1~5個以下の置換基を有していてもよい。置換基としては、既述の置換を適用できる。シクロアルカン及びシクロアルケンとしては、無置換又は1~3個程度の置換基を備えるシクロヘキサン、シクロヘキセン等が挙げられる。

【0123】
本明細書において、炭化水素系基質の水酸化とは、炭化水素系基質のC-H結合を酸化反応により酸化し、結果として炭素原子に水酸基を導入することを意味している。

【0124】
<3-4.本発明の製造方法1>
本発明の製造方法1で用いる細胞は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼを含む細胞である限り特に制限されない。シトクロムP450モノオキシゲナーゼは細胞が内在的に有するもののみならず、外来的に導入されたものであってもよい。

【0125】
細胞としては、例えば大腸菌、緑膿菌等のグラム陰性菌;バチルス属菌、ブレビバチルス属菌等のグラム陽性菌(特に、グラム陽性内生胞子形成桿菌)等の原核細胞や、酵母、植物細胞、動物細胞等の真核細胞等を利用することができる。

【0126】
炭化水素系基質は、細胞懸濁液に単に添加することにより、細胞内に導入することができる。

【0127】
本発明のデコイ基質を含む細胞を得る方法は、特に制限されないが、一例として、本発明のデコイ基質を細胞懸濁液に添加することにより細胞内に導入してもよい。この際、細胞内で用いる本発明のデコイ基質の細胞膜透過性が低い場合(例えば、R4及び/又はR5が親水性アミノ酸側鎖である場合等)は、公知の方法に従って有機溶媒等で細胞を処理することにより細胞膜透過性を高めてから本発明のデコイ基質を導入してもよいし、本発明のデコイ基質の前駆体(例えば、細胞内で用いようとする本発明のデコイ基質においてR5が親水性アミノ酸側鎖である場合は、R5及びR6が互いに結合してラクタム環を形成している化合物)を細胞内に導入してから、細胞内で該前駆体から(例えば、ラクタム環の加水分解等により)本発明のデコイ基質を生成させてもよい。後者の場合は、前駆体からの本発明のデコイ基質の生成を促進するために、例えばAHL-ラクトナーゼ等の加水分解酵素等を細胞内で発現させておくことが好ましい。

【0128】
また、用いようとする本発明のデコイ基質が細胞内在性の化合物(例えば、クオルモン等)である場合は、該クオルモンを内在的に含む細胞自体を用いるか、該クオルモンを分泌する細胞と共培養させるか、或いはクオルモンの生合成遺伝子とAHL-ラクトナーゼ等の加水分解酵素遺伝子が導入された細胞を用いることにより、本発明のデコイ基質を含む細胞を得ることができる。

【0129】
細胞の培養は、水を主溶媒とする反応液中で行われる。なお、本発明の製造方法1で使用する反応液を「反応液1」と示すこともある。

【0130】
本明細書において、「培養」は、細胞内の反応が維持されている状態である限り特に制限されず、細胞が増殖している状態のみならず、細胞が増殖していない状態も包含される。

【0131】
反応液1の組成は、特に制限されないが、グルコース等の糖、及び各種金属イオンを含むことが好ましい。反応液中の糖濃度は、例えば20~60 mM、好ましくは30~50 mMである。金属イオンとしては、例えばナトリウム、マグネシウム、カルシウム、コバルト、銅、マンガン、亜鉛、モリブデン、鉄等が挙げられる。

【0132】
反応液1中の細胞濃度は、湿重量換算で、例えば5~100 g/L、好ましくは10~50 g/L、より好ましくは20~30 g/Lである。

【0133】
培養温度は、特に制限されないが、例えば15~30℃である。

【0134】
培養時間は、特に制限されないが、例えば1~48時間、好ましくは4~18時間である。

【0135】
培養は、好ましくは好気性撹拌条件下で行われる。

【0136】
培養終了後、細胞内又は培地に含まれるヒドロキシ炭化水素を回収する。回収方法は、特に制限されず、例えば細胞を、必要に応じて破砕した後に、固液分離(例えば遠心分離等)して液体を回収する方法(これにより、培地そのもの、或いは培地と細胞破砕液の混合液が回収される)、有機溶媒を用いて抽出する方法等が挙げられる。また、さらに、クロマトグラフィー等の精製手段を用いて、ヒドロキシ炭化水素を精製してもよい。

【0137】
<3-5.本発明の製造方法2>
本発明の製造方法2は、通常は反応液中で行われる。なお、本発明の製造方法2で使用する反応液を「反応液2」と示すこともある。

【0138】
反応液2としては、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ濃度、炭化水素系基質、及び本発明のデコイ基質を含有する緩衝液を用いることもできるし、本発明の製造方法1で使用する細胞の抽出液を用いることもできる。

【0139】
緩衝液中のシトクロムP450モノオキシゲナーゼ濃度は、特に制限されないが、例えば50~2000 nM、好ましくは200~1000 nMである。

【0140】
緩衝液中の炭化水素系基質濃度は、特に制限されないが、例えば0.1~100 mM、好ましくは2~30 mMである。

【0141】
緩衝液中の本発明のデコイ基質濃度は、特に制限されないが、例えば10~500 nM、好ましくは50~200 nMである。

【0142】
緩衝液には、P450の酵素活性を持続させる目的で、通常はNADPH(NADP)、酸素分子等を適宜存在させる。

【0143】
本発明の製造方法2は、バッチ式で行ってもよいし、連続的に行ってもよい。また、P450は、公知の固定化手段により固定化した状態で用いてもよい。

【0144】
本発明の製造方法2における反応時間は、特に制限されないが、例えば1~60分間である。

【0145】
反応終了後は、必要に応じて、クロマトグラフィー等の精製手段を用いて、ヒドロキシ炭化水素を精製してもよい。

【0146】
<3-6.ヒドロキシ炭化水素製造用組成物、キット>
ヒドロキシ炭化水素製造用組成物は、本発明のデコイ基質を含有する。その他にも、必要に応じて、添加剤、例えば本発明の製造方法1の反応液の成分や、本発明の製造方法2の緩衝液の成分を含有していてもよい。

【0147】
また、ヒドロキシ炭化水素製造用組成物は、キットの形態であってもよい。

【0148】
これらの組成物、キットは、上述の本発明の製造方法1及び2において好適に用いることができる。
【実施例】
【0149】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0150】
合成例1.ノナノイル-L-アラニン(C9-L-Ala)
<アミノ酸のエステル保護>
【実施例】
【0151】
【化14】
JP2019047748A_000015t.gif
【実施例】
【0152】
ナス型フラスコにL-アラニン 1.69 g (19 mmol, 1.0 eq)を量り取り、メタノール 19 mLを加えて溶解させた。溶液を-20°C(ice/NaCl)に冷却し、塩化チオニル 1.45 mL (2.37 g, 20 mmol, 1.05 eq)を滴下した。溶液を0°Cで1時間撹拌した後、室温下で16時間撹拌し、溶媒をエバポレーターにより留去した。得られた白色固体をジエチルエーテルで洗い、真空乾燥して白色固体 2.32 gを得た(収率:88%)。
【実施例】
【0153】
<カルボン酸とアミノ酸の縮合>
【実施例】
【0154】
【化15】
JP2019047748A_000016t.gif
【実施例】
【0155】
ナス型フラスコにノナン酸949 mg (6 mmol), L-アラニンメチルエステル塩酸塩 838 mg (6 mmol), 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)1.44 mg (7.5 mmol), 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(HOBt・H2O)1.15 g (0.75 mmol)を量り取り、アルゴン雰囲気下で脱水ジメチルホルムアミド 30 mLを加えた。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)1.29 g (10 mmol)を加え、室温下で6時間撹拌した。反応溶液に20 mL程度のイオン交換水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを加えて10分間乾燥し、ろ過後、溶媒をエバポレーターにより留去した。ヘキサン:酢酸エチル = 4:1を展開溶媒として用いて、シリカゲルカラムで精製した。対応するフラクションを集めて溶媒を留去し、真空乾燥して白色固体 1.01 gを得た(収率: 69%)。
【実施例】
【0156】
<脱メチル化>
【実施例】
【0157】
【化16】
JP2019047748A_000017t.gif
【実施例】
【0158】
ナス型フラスコにC9-L-Ala-Me 851 mg (3.5 mmol) を量り取り、1 M LiOH水溶液/THF = 4:1を加え、60°Cで3時間撹拌した。溶液を室温まで冷却した後、2 M塩酸を加えてpHを1~2にし、Et2Oで3回抽出した。抽出した有機相を合わせ、硫酸マグネシウムを加えて30分間乾燥し、ろ過後、溶媒をエバポレーターにより留去した。ヘキサン‐酢酸エチルから再結晶し、真空乾燥して白色結晶658 mgを得た(収率:82%)。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.44 (1H, br), 8.06 (1H, d, J = 7.3 Hz), 4.17 (1H, quin), 2.08 (2H, t, J = 7.6 Hz), 1.47 (2H, s), 1.27-1.23 (13H, m), 0.85 (3H, t, J = 6.6 Hz). ESI-MS: m/z 252.16 ([M+Na]+), 481.34 ([2M+Na]+), 503.32 ([2M-H+2Na]+), 710.49 ([3M+Na]+), 732.50 ([3M-H+2Na]+)。
【実施例】
【0159】
合成例2.オクタノイル-L-フェニルアラニン(C8-L-Phe)
【実施例】
【0160】
【化17】
JP2019047748A_000018t.gif
【実施例】
【0161】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.41 (1H, td, J = 9.1, 4.4 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.7, 4.4 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 10.2 Hz), 2.02 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.4 Hz), 1.27-1.08 (8H, m), 0.85 (3H, t, J= 7.1 Hz). ESI-MS: m/z 314.18 ([M+Na]+), 605.37 ([2M+Na]+), 896.56 ([3M+Na]+), 918.54 ([3M-H+2Na]+)。
【実施例】
【0162】
合成例3.ノナノイル-L-フェニルアラニン(C9-L-Phe)
【実施例】
【0163】
【化18】
JP2019047748A_000019t.gif
【実施例】
【0164】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.42 (1H, td, J = 9.0, 4.2 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.7, 4.4 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 10.2 Hz), 2.02 (2H, t, J= 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.3 Hz), 1.29-1.10 (10H, m), 0.86 (3H, t, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 328.19 ([M+Na]+), 350.17 ([M-H+2Na]+), 633.40 ([2M+Na]+), 655.38 ([2M-H+2Na]+), 938.60 ([3M+Na]+), 960.58 ([3M-H+2Na]+) 。
【実施例】
【0165】
合成例4.デカノイル-L-フェニルアラニン(C10-L-Phe)
【実施例】
【0166】
【化19】
JP2019047748A_000020t.gif
【実施例】
【0167】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.41 (1H, td, J = 9.0, 4.1 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.9, 4.6 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.4, 10.0 Hz), 2.02 (2H, t, J= 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.3 Hz), 1.27-1.10 (12H, m), 0.86 (3H, t, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 342.21 ([M+Na]+), 364.19 ([M-H+2Na]+), 661.43 ([2M+Na]+), 683.41 ([2M-H+2Na]+), 980.65 ([3M+Na]+), 1002.63 ([3M-H+2Na]+) 。
【実施例】
【0168】
合成例5.ウンデカノイル-L-フェニルアラニン(C11-L-Phe)
【実施例】
【0169】
【化20】
JP2019047748A_000021t.gif
【実施例】
【0170】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.41 (1H, td, J = 8.9, 4.4 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.9, 4.6 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 10.2 Hz), 2.02 (2H, t, J= 7.1 Hz), 1.41-1.33 (2H, quin, 7.1 Hz), 1.29-1.10 (14H, m), 0.86 (3H, t, J = 6.6 Hz). ESI-MS: m/z 356.23 ([M+Na]+), 378.23 ([M-H+2Na]+), 689.46 ([2M+Na]+), 711.44 ([2M-H+2Na]+), 1022.68 ([3M+Na]+), 1044.68 ([3M-H+2Na]+) 。
【実施例】
【0171】
合成例6.オクタノイル-L-ロイシン(C8-L-Leu)
【実施例】
【0172】
【化21】
JP2019047748A_000022t.gif
【実施例】
【0173】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
【実施例】
【0174】
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.41 (1H, td, J = 9.1, 4.4 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.7, 4.4 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 10.2 Hz), 2.02 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.4 Hz), 1.27-1.08 (8H, m), 0.85 (3H, t, J = 7.1 Hz). ESI-MS: m/z 314.18 ([M+Na]+), 605.37 ([2M+Na]+), 896.56 ([3M+Na]+), 918.54 ([3M-H+2Na]+) 。
【実施例】
【0175】
合成例7.ノナノイル-L-ロイシン(C9-L-Leu)
【実施例】
【0176】
【化22】
JP2019047748A_000023t.gif
【実施例】
【0177】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.45 (1H, s), 8.02 (1H, d, J = 8.3 Hz), 4.20 (1H, td, J = 8.9, 5.0 Hz), 2.15-2.03 (2H, m), 1.67-1.57 (1H, m), 1.55-1.42 (4H, m), 1.29-1.23 (10H, m), 0.89-0.82 (9H, m). ESI-MS: m/z 294.21 ([M+Na]+), 565.44 ([2M+Na]+), 836.66 ([3M+Na]+), 858.64 ([3M-H+2Na]+), 1129.87 ([4M-H+2Na]+), 1151.85 ([4M-2H+3Na]+) 。
【実施例】
【0178】
合成例8.ノナノイル-L-メチオニン(C9-L-Met)
【実施例】
【0179】
【化23】
JP2019047748A_000024t.gif
【実施例】
【0180】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.56 (1H, s), 8.07 (1H, d, J = 7.8 Hz), 4.29 (1H, td, J = 8.7, 4.6 Hz), 2.48-2.40 (2H, m), 2.10 (2H, t, J = 7.1 Hz), 2.03 (3H, s), 1.97-1.89 (1H, m), 1.86-1.78 (1H, m), 1.51-1.44 (2H, m), 1.29-1.24 (10H, m), 0.85 (3H, t, J = 6.6 Hz). ESI-MS: m/z 312.17 ([M+Na]+), 601.36 ([2M+Na]+), 890.53 ([3M-H+2Na]+) 。
【実施例】
【0181】
合成例9.ノナノイル-L-トリプトファン(C9-L-Trp)
【実施例】
【0182】
【化24】
JP2019047748A_000025t.gif
【実施例】
【0183】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
【実施例】
【0184】
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.55 (1H, s), 10.82 (1H, s), 8.03 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.52 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.32 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.12 (1H, d, J = 2.0 Hz), 7.05 (1H, t, J = 7.3 Hz), 6.97 (1H, t, J = 7.3 Hz), 4.46 (1H, td, J = 8.3, 4.9 Hz), 3.15 (1H, dd, J = 14.6, 4.9 Hz), 2.98 (1H, dd, J = 14.6, 8.8 Hz), 2.05 (2H, t, J= 7.1 Hz), 1.40 (2H, quin, J = 7.2 Hz), 1.32-1.08 (10H, m), 0.85 (3H, t, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 367.21 ([M+Na]+), 711.43 ([2M+Na]+), 1055.64 ([3M+Na]+) 。
【実施例】
【0185】
合成例10.ノナノイル-D-フェニルアラニン(C9-D-Phe)
【実施例】
【0186】
【化25】
JP2019047748A_000026t.gif
【実施例】
【0187】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.65 (1H, s), 8.09 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.42 (1H, td, J = 9.0, 3.9 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.9, 4.6 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 9.8 Hz), 2.02 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.3 Hz), 1.27-1.10 (10H, m), 0.86 (3H, t, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 328.20 ([M+Na]+), 633.41 ([2M+Na]+), 938.61 ([3M+Na]+), 960.59 ([3M-H+2Na]+) 。
【実施例】
【0188】
合成例11.ノナノイル-D-ロイシン(C9-D-Leu)
【実施例】
【0189】
【化26】
JP2019047748A_000027t.gif
【実施例】
【0190】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.44 (1H, s), 8.01 (1H, d, J = 7.8 Hz), 4.21 (1H, td, J = 8.9, 5.0 Hz), 2.13-2.05 (2H, m), 1.65-1.58 (1H, m), 1.52-1.46 (4H, m), 1.28-1.23 (10H, m), 0.89-0.82 (9H, m). ESI-MS: m/z 294.21 ([M+Na]+), 565.44 ([2M+Na]+), 587.41 ([2M-H+2Na]+), 836.65 ([3M+Na]+), 858.64 ([3M-H+2Na]+), 1129.86 ([4M+Na]+), 1151.84 ([4M-H+2Na]+) 。
【実施例】
【0191】
合成例12.(2-(4-イソブチルフェニル)プロパノイル)-L-フェニルアラニン (R-Ibu-L-Phe)
【実施例】
【0192】
【化27】
JP2019047748A_000028t.gif
【実施例】
【0193】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.82 (1H, br s), 7.17-7.08 (7H, m), 6.82 (2H, d, J = 7.3 Hz), 5.76 (1H, d, J = 7.3 Hz), 4.83 (1H, q, J = 6.2 Hz), 3.51 (1H, q, J = 7.0 Hz), 3.08 (1H, dd, J = 13.9, 5.1 Hz), 2.99 (1H, dd, J = 13.9, 6.1 Hz), 2.48 (2H, d, J = 7.3 Hz), 1.91-1.84 (1H, m), 1.46 (3H, d, J = 6.8 Hz), 0.92 (6H, d, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 376.18 ([M+Na]+), 729.38 ([2M+Na]+), 1082.58 ([3M+Na]+), 1104.57 ([3M-H+2Na]+) 。
【実施例】
【0194】
合成例13.(2-(4-イソブチルフェニル)プロパノイル)-L-フェニルアラニン (S-Ibu-L-Phe)
【実施例】
【0195】
【化28】
JP2019047748A_000029t.gif
【実施例】
【0196】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.06 (1H, br s), 7.22-7.20 (3H, m), 7.10-7.07 (4H, m), 6.96-6.94 (2H, m), 5.76 (1H, d, J = 6.8 Hz), 4.74 (1H, q, J = 6.3 Hz), 3.54 (1H, q, J = 7.2 Hz), 3.15 (1H, dd, J = 13.8, 5.2 Hz), 3.00 (1H, dd, J = 14.0, 6.7 Hz), 2.46 (2H, d, J = 7.3 Hz), 1.91-1.80 (1H, m), 1.49 (3H, d, J = 7.3 Hz), 0.90 (6H, d, J = 6.6 Hz). ESI-MS: m/z 376.19 ([M+Na]+), 729.40 ([2M+Na]+), 1082.60 ([3M+Na]+), 1104.58 ([3M-H+2Na]+) 。
【実施例】
【0197】
合成例14.(ベンジルオキシ)カルボニル)グリシル-L-フェニルアラニン (Z-Gly-L-Phe)
【実施例】
【0198】
【化29】
JP2019047748A_000030t.gif
【実施例】
【0199】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
【実施例】
【0200】
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.78 (1H, s), 8.12 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.42-7.20 (11H, m), 5.02 (2H, s), 4.44 (1H, td, J = 8.1, 5.2 Hz), 3.61 (2H, qd, J = 16.7, 6.4 Hz), 3.04 (1H, dd, J = 13.9, 5.1 Hz), 2.89 (1H, dd, J = 13.4, 9.0 Hz). ESI-MS: m/z 379.12 ([M+Na]+), 735.26 ([2M+Na]+) 。
【実施例】
【0201】
合成例15.N-(6-フェニルヘキサノイル)-L-フェニルアラニン (PhC6-L-Phe)
【実施例】
【0202】
【化30】
JP2019047748A_000031t.gif
【実施例】
【0203】
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H NMR (DMSO-d6, 600MHz at 80°C) δ: 12.30 (1H, brs), 7.75 (1H, d, J = 5.4 Hz), 7.28-7.11 (10H, m), 4.48 (1H, td, J = 9.0, 5.4 Hz), 3.06 (1H, dd, J = 14.4, 5.4 Hz), 2.87 (1H, dd, J = 14.1, 9.6 Hz), 2.52 (2H, t, J = 7.8 Hz), 2.05 (2H, t, J = 7.8 Hz), 1.52 (2H, m, J = 7.8 Hz), 1.45 (2H, m, J = 7.8 Hz), 1.21 (2H, m, J = 7.8 Hz). ESI-MS: m/z 362.17 ([M+Na]+), 384.15 ([M-H+2Na]+), 701.36 ([2M+Na]+), 1040.55 ([3M+Na]+) 。
【実施例】
【0204】
参考例1.N-アルキルプロリン
【実施例】
【0205】
【化31】
JP2019047748A_000032t.gif
【実施例】
【0206】
ナス型フラスコにL-プロリンメチルエステル 388 mg (3 mmol) を量り取り、アセトニトリル8 mLに溶解させた。炭酸水素ナトリウム 1.01 g (12 mmol) と1-ブロモヘキサン 743 mg (4.5 mmol) を加えた後、60°Cで48時間撹拌した。溶液を室温まで冷却し、ジエチルエーテルで3回抽出した。抽出した有機相を合わせて食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムを加えて10分間乾燥させた。ろ過後、溶媒をエバポレーターにより留去し、黄色オイル状物質461 mgを得た。(収率:72%)
生成物中にL-プロリンメチルエステルと1-ブロモヘキサンが残っていないことをFAB-MSで確認した。
【実施例】
【0207】
合成例16.(ベンジルオキシ)カルボニル)-L-プロリル-L-フェニルアラニン (Z-L-Pro-L-Phe)
【実施例】
【0208】
【化32】
JP2019047748A_000033t.gif
【実施例】
【0209】
合成例2に従って、ノナン酸に代えて、参考例1と同様にして合成したプロリン誘導体を用いて、合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.70 (1H, s), 8.17 (1H, dd, J = 39.0, 7.8 Hz), 7.38-7.18 (10H, m), 5.10-4.84 (2H, m), 4.50-4.39 (1H, m), 4.22 (1H, d, J = 8.3 Hz), 3.45-3.35 (2H, m), 3.07-2.86 (2H, m), 2.09-1.99 (1H, m), 1.77-1.68 (3H, m). ESI-MS: m/z 419.16 ([M+Na]+), 441.14 ([M-H+2Na]+), 859.30 ([2M-2H+3Na]+)。
【実施例】
【0210】
合成例17.(N-へキシル-L-プロリル)-L-フェニルアラニン(C6-L-Pro-L-Phe)
【実施例】
【0211】
【化33】
JP2019047748A_000034t.gif
【実施例】
【0212】
合成例2に従って、ノナン酸に代えて、参考例1と同様にして合成したプロリン誘導体を用いて、合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.90 (0.7H, br s), 7.76 (1H, d, J = 6.8 Hz), 7.26-7.14 (5H, m), 4.53-4.48 (1H, m), 3.10 (1H, dd, J = 13.7, 4.9 Hz), 3.04-2.95 (2H, m), 2.83 (1H, d, J = 7.8 Hz), 2.45-2.40 (1H, m), 2.32-2.26 (1H, m), 2.21-2.16 (1H, m), 2.00-1.90 (1H, m), 1.68-1.62 (1H, m), 1.53-1.42 (2H, m), 1.35-1.18 (8H, m), 0.84 (3H, t, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 347.2 ([M+H]+). MS calcd for [M+H]+ m/z 347.2, found m/z 347。
【実施例】
【0213】
合成例18.(N-ヘプチル-L-プロリル)-L-フェニルアラニン(C7-L-Pro-L-Phe)
【実施例】
【0214】
【化34】
JP2019047748A_000035t.gif
【実施例】
【0215】
合成例2に従って、ノナン酸に代えて、参考例1と同様にして合成したプロリン誘導体を用いて、合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.91 (1H, br s), 7.76 (1H, d, J = 6.8 Hz), 7.28-7.14 (5H, m), 4.53-4.48 (1H, m), 3.10 (1H, dd, J = 13.7, 4.9 Hz), 3.03-2.95 (2H, m), 2.83 (1H, d, J = 7.8 Hz), 2.45-2.40 (1H, m), 2.32-2.26 (1H, m), 2.22-2.16 (1H, m), 1.97-1.92 (1H, m), 1.68-1.62 (1H, m), 1.53-1.44 (2H, m), 1.36-1.19 (10H, m), 0.85 (3H, t, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 361.26 ([M+H]+), 383.24 ([M+Na]+), 721.50 ([2M+H]+), 743.49 ([2M+Na]+)。
【実施例】
【0216】
合成例19-22.N-アシルホモセリンラクトン(AHL)
【実施例】
【0217】
【化35】
JP2019047748A_000036t.gif
【実施例】
【0218】
(合成例19:n=5、合成例20:n=6、合成例21:n=7、合成例22:n=8)
l-Homoserine latone (1.2 mmol, 165 mg) とTriethylamine (1.2 mmol, 170 _L) を水20 mL に溶かし、そこへアセトニトリル10 mL にEDC-HCl (1.6 mmol, 310 mg) とC7-C10 カルボン酸(1.6mmol, C7 227μL, C8 254μL, C9 278μL, C10 276 mg) を溶かした溶液を加えた。撹拌しながら室温、overnight で反応させ、その後溶媒を留去した。固体をクロロホルムに溶かし、飽和NaHCO3 水溶液、1 M NaHSO4水溶液、飽和NaCl 水溶液で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ溶媒を留去した後にHexane : EtOAc = 2 : 1 の溶液で再結晶を行った。固体を冷やした少量のEtOAc で洗浄し、目的の化合物を得た(収率:C7AHL 45.6%, C8AHL 43.0%, C9AHL 35.5%, C10AHL 33.5%)。6 mg の化合物をd6-DMSO に溶かし、1H NMR によって同定を行った。1H NMRチャートを図1~4に示す。
【実施例】
【0219】
合成例23-25.N-アシルホモセリン(AHS)
【実施例】
【0220】
【化36】
JP2019047748A_000037t.gif
【実施例】
【0221】
(合成例23:n=6、合成例24:n=7、合成例25:n=8)
合成したC8, C9, C10AHL 30 mg に対して水4.5 mL、1 M LiOH 水溶液1.0 mL を加え、攪拌しながら22 時間反応させた。その後、氷冷した反応溶液に対して6 M HCl 水溶液を1 mL 滴下した。1 時間反応溶液を氷冷した後溶液を吸引ろ過し、析出した固体を回収した。固体を冷やした少量のEtOAc で洗浄し、目的の化合物を得た(収率:C8AHS 57.4%, C9AHS 56.2%, C10AHS 57.4%)。6mg の化合物をd6-DMSO に溶かし、1H NMR によって同定を行った。1H NMRチャートを図5~7に示す。
【実施例】
【0222】
実施例1.細胞内でのフェノールの製造(ベンゼンの水酸化反応)
合成例で得られた化合物をデコイ基質として用い、細胞内でフェノールを製造した。具体的には以下の様にして行った。
【実施例】
【0223】
<菌体懸濁液の調製>
野生型P450BM3全長の塩基配列を挿入した強制発現用ベクターpET28a(+)によって形質転換された大腸菌BL21(DE3)株を、15 μg/mLのカナマイシンを含むLB培地に加え、37 ℃、180 rpmで培養した。OD600が0.4-0.6になった時に5-アミノレブリン酸を終濃度0.5 mMとなるように加え、OD600が0.8-0.9となった時にIPTGを終濃度1 mMとなるように加え、培養温度を下げて25 ℃で12時間酵素発現を誘導した。誘導後、7300gで6分間遠心分離を行って集菌し、反応用バッファー(NaCl 86 mM, Na2PO4 93 mM, KH2PO415 mM, MgSO4 7 mM, CaCl2 0.1 mM, H3BO320 μM, CoCl2 1.5 μM, CuSO4 0.5 μM, MnCl2 4.0 μM, ZnSO4 0.5 μM, Na2MoO4 1.0 μM, pH 7.4)で二回洗浄した後、同様のバッファーでOD600が7.0となるように再懸濁した。
【実施例】
【0224】
<ベンゼンの水酸化反応>
菌体懸濁液900 μL (終濃度25 g/L wet cell weight)、2 Mグルコース溶液20 μL (終濃度40 mM)、20 mMデコイ基質DMSO溶液5 μL (終濃度100 μM )、反応用バッファー65 μL、1 MベンゼンDMSO溶液 10 μL (終濃度10 mM ) を6 mLサンプル瓶に加えて25 ℃, 200 rpmで9時間反応を行った。反応後、反応溶液を2 mLエッペンドルフチューブに移し、液体窒素で凍らせて反応を停止し、融解させてから菌体を超音波で破砕した(Vibra Cell sonics VCX-750、AMPL 25%、10min)。破砕液にジクロロメタン800 μL、内部標準として40 mM 4-クロロトルエンDMSO溶液を10 μL加えてボルテックスし、20000gで3分間遠心分離した。その後、有機層を抽出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフは島津社製のFID検出器を有するGC-2014を用い、カラムはRestek社製のRtx-1カラム(内径0.53 mm、膜厚3μm、カラム長60 m)を用いた。分離の条件は、試料注入口温度、検出器温度を250 ℃とし、カラムオーブンの温度プログラムは120 ℃で25分維持、5分かけて250 ℃まで昇温し、そのまま15分間維持するよう設定した。
【実施例】
【0225】
<結果>
フェノール濃度(μM)及びフェノール転化率(%)を表1に示す。
【実施例】
【0226】
【表1】
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【実施例】
【0227】
実施例2.細胞内でのクレゾールの製造(トルエンの水酸化反応)
合成例で得られた化合物をデコイ基質として用い、細胞内でクレゾールを製造した。具体的には以下の様にして行った。
【実施例】
【0228】
<菌体懸濁液の調製>
実施例1と同様の方法で行った。 <トルエンの水酸化反応>
菌体懸濁液900 μL (終濃度25 g/L wet cell weight)、4 Mグルコース溶液10 μL (終濃度40 mM)、20 mMデコイ基質DMSO溶液10 μL (終濃度200 μM )、反応用バッファー65 μL、4 MトルエンDMSO溶液 5 μL (終濃度20 mM ) を6 mLサンプル瓶に加えて25℃, 200 rpmで9時間反応を行った。反応後、反応溶液を2 mLエッペンドルフチューブに移し、液体窒素で凍らせて反応を停止し、融解させてから菌体を超音波で破砕した(Vibra Cell sonics VCX-750、AMPL 25%、10min)。破砕液にジクロロメタン400 μL、内部標準として40 mM 4-クロロトルエンDMSO溶液を10 μL加えてボルテックスし、20000gで3分間遠心分離した。その後、有機層を抽出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフは島津社製のFID検出器を有するGC-2014を用い、カラムはRestek社製のRtx-1カラム(内径0.53 mm、膜厚3 μm、カラム長60 m)を用いた。分離の条件は、試料注入口温度、検出器温度を250 ℃とし、カラムオーブンの温度プログラムは120 ℃で25分維持、5分かけて250 ℃まで昇温し、そのまま15分間維持するよう設定した。
【実施例】
【0229】
<結果>
検出されたクレゾールの大部分がo-クレゾールであった。o-クレゾール濃度(μM)及びo-選択性(%)を表2に示す。
【実施例】
【0230】
【表2】
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【実施例】
【0231】
実施例3.インビトロでのフェノールの製造(ベンゼンの水酸化反応)
合成例で得られた化合物をデコイ基質として用い、インビトロでフェノールを製造した。具体的には以下の様にして行った。
【実施例】
【0232】
シトクロムP450BM3(CYP102A1)の調製
大腸菌BL21(DE3)株に、シトクロムP450BM3(CYP102A1)全長をコードするDNA(アミノ酸配列、配列番号1)(C. J. C. Whitehouse, S. G. Bell, L. L. Wong, Chem. Soc. Rev. 2012, 41, 1218-1260.のFig.2に開示されるCYP102Aサブファミリーのアライメント結果におけるA1である。)をコードするDNAを挿入したpUCベクターを組み込んで、P450BM3遺伝子を発現させた。産生したP450BM3を大腸菌から抽出、精製するため、大腸菌を超音波で破砕し、破砕液を遠心分離して上清を回収し、この上清を陰イオン交換カラム(DE-52)に一旦結合させ、0~250mM KClの濃度勾配を用いて溶出し、P450BM3を示す茶色のピーク画分を回収した。
【実施例】
【0233】
溶出したピーク画分の精製度をSDS-PAGEで確認し、精製度が高い画分を混合し、分画分子量(MWCO)が30,000の限外濾過キットで濃縮した後、緩衝液A(20mM Tris-HCl(pH7.4))で希釈してKCl濃度を5mM 以下にして脱塩した。続いて、陰イオン交換カラム(DEAE650S)を用いてKClを0~1000mMの範囲で濃度勾配をかけてBM3を溶出させ、同様に精製を行った。最後に、ゲル濾過カラム(Sephacryl S-300HR)に緩衝液B(20mM Tris-HCl(pH7.4)、100mM KCl)を流してP450BM3を溶出させ、得られた茶色のピーク画分を回収し、これを野生型のP450BM3試料として、以下の水酸化反応で用いた。
【実施例】
【0234】
<ベンゼンの水酸化反応>
高純度酸素ガスを吹き込み飽和させた緩衝液(20mM Tris-HCl(pH7.4)、100mM KCl)で反応溶液の全体積の90%以上を満たし、500nM(終濃度) 野生型P450BM3、10mM(終濃度)ベンゼン、100μM(終濃度)デコイ基質になるように各成分を加え、最後に5mM NADPHを添加し反応を開始した。なお、デコイ基質を溶解するのにDMSO溶液を用いる必要があるため、結果として、反応液は0.5v/v%のDMSOを含有していた。
【実施例】
【0235】
反応は、密閉したバイアルで行い、25℃以下で反応液を撹拌しながら進行させた。10分間の反応後、1M塩酸0.15mL を加えて反応を停止し、10分間撹拌した。反応液を1M水酸化ナトリウム水溶液0.15mLで中和し、アセトニトリル1.3mLを加えた後、フィルター濾過をしてHPLCで分析した。HPLCは島津社製のLC-10ADVPを用い、カラムはGL Sciences社製の逆相カラムInertsil ODS-3(内径4.6 mm、カラム長250mm、粒子径5μm)を用いた。溶離液には緩衝液B/アセトニトリル=1:1を用いて、流速0.5 mL/minで35分間測定を行った。
【実施例】
【0236】
なお、デコイ基質を添加せず、代わりに0.5v/v%のDMSOのみを添加した系として同様の操作を行った(対照例)。
【実施例】
【0237】
各反応液のHPLCのクロマトグラム上には、対照例には見られない新しいピークが観察された。新ピークの保持時間は、フェノールの保持時間と一致することを確認できたため、本反応液には、反応生成物としてフェノールが生成していることがわかった。各反応液におけるフェノール量及びNADPHの消費量も測定した。
【実施例】
【0238】
<結果>
表3に、添加したデコイ基質に対する1分間あたりのフェノールの生成量(フェノール生成速度)、及びNADPHの消費量のうちフェノールの生成に利用された割合(カップリング率)を示す。
【実施例】
【0239】
【表3】
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図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6