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明細書 :リン酸化SARM1、抗体、SARM1リン酸化阻害剤、神経変性疾患の予防又は治療薬、スクリーニング方法、SARM1改変体及び使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年2月7日(2019.2.7)
発明の名称または考案の名称 リン酸化SARM1、抗体、SARM1リン酸化阻害剤、神経変性疾患の予防又は治療薬、スクリーニング方法、SARM1改変体及び使用
国際特許分類 C07K  14/705       (2006.01)
C07K  16/28        (2006.01)
C12N   9/99        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12Q   1/48        (2006.01)
A61P  25/16        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  25/02        (2006.01)
A61P  21/00        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  38/02        (2006.01)
C12N  15/12        (2006.01)
FI C07K 14/705 ZNA
C07K 16/28
C12N 9/99
A01K 67/027
C12N 5/10
C12Q 1/48 Z
A61P 25/16
A61P 43/00 111
A61P 25/02
A61P 21/00
A61P 25/00
A61P 25/28
A61K 39/395 D
A61K 39/395 N
A61K 45/00
A61K 38/02
C12N 15/12
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 24
出願番号 特願2018-507366 (P2018-507366)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
国際出願番号 PCT/JP2017/011418
国際公開番号 WO2017/164230
国際出願日 平成29年3月22日(2017.3.22)
国際公開日 平成29年9月28日(2017.9.28)
優先権出願番号 2016058130
優先日 平成28年3月23日(2016.3.23)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】村田 等
【氏名】阪口 政清
【氏名】木下 理恵
【氏名】山本 健一
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4B065
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4C085
4H045
Fターム 4B063QA01
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4H045AA10
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4H045FA74
要約 本発明は、SARM1(Sterile alpha and TIR motif-containing protein 1)の54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種のSer残基がリン酸化された、リン酸化SARM1を提供するものである。
特許請求の範囲 【請求項1】
SARM1(Sterile alpha and TIR motif-containing protein 1)の54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種のSer残基がリン酸化された、リン酸化SARM1。
【請求項2】
SARM1がヒト由来である、請求項1に記載のリン酸化SARM1。
【請求項3】
SARM1の54位、548位又は622位のリン酸化Ser残基を特異的に認識し、SARM1の54位、548位及び622位の非リン酸化Ser残基を認識しない、抗リン酸化SARM1抗体。
【請求項4】
サイクリン依存性キナーゼ8(CDK8)、サイクリン依存性キナーゼ19(CDK19)及びJNKからなる群から選ばれる少なくとも1種の阻害剤を有効成分とするSARM1リン酸化阻害剤。
【請求項5】
サイクリン依存性キナーゼ8(CDK8)、サイクリン依存性キナーゼ19(CDK19)及びJNKからなる群から選ばれる少なくとも1種の阻害剤を有効成分とする神経変性疾患の予防又は治療薬。
【請求項6】
抗SARM1抗体、SARM1のデコイペプチド及びアンタゴニストからなる群から選ばれるSARM1阻害剤を有効成分とする、神経変性疾患の予防又は治療薬。
【請求項7】
抗SARM1抗体が、SARM1の54位、548位又は622位のリン酸化を抑制可能な非リン酸化SARM1に対する抗体またはSARM1の54位、548位又は622位のリン酸化Ser残基を特異的に認識し、SARM1の54位、548位及び622位の非リン酸化Ser残基を認識しない抗リン酸化SARM1抗体である、請求項6に記載の神経変性疾患の予防又は治療薬。
【請求項8】
SARM1のデコイペプチドがSARM1のSer54、Ser548又はSer622を含む断片ペプチドまたはその修飾体である、請求項6に記載の神経変性疾患の予防又は治療薬。
【請求項9】
神経変性疾患がパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、ニューロパチー及びアルツハイマー病からなる群から選ばれる請求項5~8のいずれか1項に記載の神経変性疾患の予防又は治療薬。
【請求項10】
SARM1の54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種のSer残基のリン酸化を検出する工程を含む、神経変性疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法。
【請求項11】
SARM1の54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種のSer残基のリン酸化を検出する工程を含む、SARM1阻害剤のスクリーニング方法。
【請求項12】
ヒトSARM1の54番目、548番目及び622番目からなる群から選ばれる少なくとも1種に相当するSerがGlu又はAspで置換されたSARM1改変体。
【請求項13】
神経変性疾患のモデル細胞又はモデル動物の作成のための請求項12に記載のSARM1改変体の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸化SARM1、抗体、SARM1リン酸化阻害剤、神経変性疾患の予防又は治療薬、スクリーニング方法、SARM1改変体及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
SARM1(Sterile alpha and TIR motif-containing protein 1)はミトコンドリア移行シグナルをもつTIRアダプタータンパク質の1つで、724アミノ酸からなっている。SARM1は主に神経系の細胞に発現が強く (非特許文献1)、虚血性の神経細胞死や神経軸索変性の原因分子となることが報告されている (非特許文献2、3)。この神経細胞死はSARM1をノックアウトすることによって著しく抑制できることから、SARM1を標的とした薬剤があれば神経細胞死を抑制し、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など様々な神経変性疾患の治療に応用できると考えられている(特許文献1)。しかしSARM1を標的とした薬剤は現在存在しない。
【0003】
特許文献2~5は、CDK8又はCDK19の阻害剤ががんの治療に有効であることを開示している。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】US20120328629
【特許文献2】WO2015/159937
【特許文献3】特表2016-501845
【特許文献4】特表2016-503408
【特許文献5】特表2015-506376
【0005】

【非特許文献1】J Exp Med, 204(9), 2007
【非特許文献2】Science, 337(6093), 2012
【非特許文献3】J Neurosci, 33(33), 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、SARM1の機能を抑制し、神経変性疾患を予防又は治療することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は細胞内でのSARM1の変化や機能を解析し、SARM1がミトコンドリア呼吸鎖複合体Vに作用することによってATP合成を阻害し、細胞死を誘導することを見出した。またc-Jun N-terminal kinase (JNK)がSARM1の54番目、548番目及び622番目からなる群から選ばれる少なくとも1種のセリン残基をリン酸化することでSARM1を活性化することを見出した。SARM1の54番目、548番目及び622番目からなる群から選ばれる少なくとも1種のセリン残基のリン酸化を検出する方法を開発することで、SARM1の活性状態の確認や阻害剤開発に利用していくことが可能になる。本発明者は、さらにSARM1の中にあるARMドメイン、SAMドメイン、TIRドメインを含む領域を用いることで54番目、548番目及び622番目からなる群から選ばれる少なくとも1種のセリン残基のリン酸化を感度よく検出する方法を開発した。また本検出方法を用いて、SARM1の阻害剤を見出した。
【0008】
本発明は、以下のリン酸化SARM1、抗体、SARM1リン酸化阻害剤、神経変性疾患の予防又は治療薬、スクリーニング方法、SARM1改変体及び使用を提供するものである。
項1. SARM1(Sterile alpha and TIR motif-containing protein 1)の54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種のSer残基がリン酸化された、リン酸化SARM1。
項2. SARM1がヒト由来である、項1に記載のリン酸化SARM1。
項3. SARM1の54位、548位又は622位のリン酸化Ser残基を特異的に認識し、SARM1の54位、548位及び622位の非リン酸化Ser残基を認識しない、抗リン酸化SARM1抗体。
項4. サイクリン依存性キナーゼ8(CDK8)、サイクリン依存性キナーゼ19(CDK19)及びJNKからなる群から選ばれる少なくとも1種の阻害剤を有効成分とするSARM1リン酸化阻害剤。
項5. サイクリン依存性キナーゼ8(CDK8)、サイクリン依存性キナーゼ19(CDK19)及びJNKからなる群から選ばれる少なくとも1種の阻害剤を有効成分とする神経変性疾患の予防又は治療薬。
項6. 抗SARM1抗体、SARM1のデコイペプチド及びアンタゴニストからなる群から選ばれるSARM1阻害剤を有効成分とする、神経変性疾患の予防又は治療薬。
項7. 抗SARM1抗体が、SARM1の54位、548位又は622位のリン酸化を抑制可能な非リン酸化SARM1に対する抗体またはSARM1の54位、548位又は622位のリン酸化Ser残基を特異的に認識し、SARM1の54位、548位及び622位の非リン酸化Ser残基を認識しない抗リン酸化SARM1抗体である、項6に記載の神経変性疾患の予防又は治療薬。
項8. SARM1のデコイペプチドがSARM1のSer54、Ser548又はSer622を含む断片ペプチドまたはその修飾体である、項6に記載の神経変性疾患の予防又は治療薬。
項9. 神経変性疾患がパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、ニューロパチー及びアルツハイマー病からなる群から選ばれる項5~8のいずれか1項に記載の神経変性疾患の予防又は治療薬。
項10. SARM1の54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種のSer残基のリン酸化を検出する工程を含む、神経変性疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法。
項11. SARM1の54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種のSer残基のリン酸化を検出する工程を含む、SARM1阻害剤のスクリーニング方法。
項12. ヒトSARM1の54番目、548番目及び622番目からなる群から選ばれる少なくとも1種に相当するSerがGlu又はAspで置換されたSARM1改変体。
項13. 神経変性疾患のモデル細胞又はモデル動物の作成のための項12に記載のSARM1改変体の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明はSARM1の54番目、548番目及び622番目からなる群から選ばれる少なくとも1種のセリン残基のリン酸化と細胞生存率を測定することによって、SARM1の活性状態の検出及び神経細胞死抑制効果のある物質を探索することが可能な技術である。SARM1は虚血性の神経細胞死や神経軸索変性の原因分子となることが報告されており、SARM1の阻害剤を開発すれば神経細胞死や軸索変性が原因で起こるパーキンソン病やALSなど様々な神経変性疾患の治療に応用できる。これまではSARM1の細胞内での活性状態を測定できる技術が存在しなかったので、SARM1を標的とした薬剤は開発できなかった。本発明によってSARM1のリン酸化を指標にしたSARM1阻害剤のスクリーニングが可能になる。本発明ではSARM1の中に含まれるARMドメイン(28~405aa)、SAMドメイン(406~550aa)、TIRドメイン(551~724aa)、或いは54番目、548番目又は622番目のSer残基を含むその断片をリン酸化解析に用いることによって高感度かつ簡便にSARM1セリン54番目、548番目又は622番目のリン酸化を検出できるようになった。TIRドメインとして、S622、TIRのBB-loop及びDD-loop構造を含むコア領域(D594~E670 aa)を使用してもよい(図10B)。
【0010】
またSARM1をリン酸化するJNK1、JNK2、JNK3およびSARM1のリン酸化を増強するCDK19、CDK8を見出したので、これらリン酸化酵素の阻害剤は有望な神経細胞死抑制剤の候補となる。また神経変性疾患患者由来iPS細胞から分化誘導した神経細胞などを用いてSARM1のセリン54番目、548番目及び622番目からなる群から選ばれる少なくとも1種のセリン残基のリン酸化状態を解析することによって、病気の進行度などの評価に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】SARM1の発現抑制条件下でのストレス誘導性細胞死率の測定
【図2】SARM1のミトコンドリア呼吸阻害による細胞死誘導
【図3】SARM1のセリン548番のリン酸化
【図4】CDK19、CDK8によるSARM1のリン酸化及び活性制御
【図5】リン酸化を指標にしたSARM1阻害剤の開発
【図6】JNKによるSARM1のリン酸化
【図7】SARM1-Ser548リン酸化検出を利用したSARM1リン酸化阻害剤のスクリーニング法
【図8】SARM1-Ser54、Ser548、Ser622のリン酸化
【図9】SARM1のリン酸化による結合タンパク質の変化
【図10】SAMドメイン、TIRドメインを利用したSARM1結合物質のスクリーニング法
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、SARM1はミトコンドリアに局在する724アミノ酸からなるタンパク質であり、ミトコンドリア局在配列、ARM、SAM、TIRの各ドメインを有する(図2A)。

【0013】
ヒトSARM1のアミノ酸配列を配列番号1に示す。ヒトSARM1のpIは6.1であり、分子量は79388である。

【0014】
SARM1には多数のリン酸化可能なThr残基、Ser残基があるが、本発明者はSer54、Ser548及びSer622、好ましくはSer548及びSer622がリン酸化部位であることを見出した。Ser54、Ser548及びSer622からなる群から選ばれる少なくとも1種、好ましくはSer548及び/又はSer622がリン酸化されることでSARM1は活性化され、ミトコンドリア呼吸を阻害し、細胞死を誘導するので、Ser54、Ser548及びSer622からなる群から選ばれる少なくとも1種、好ましくはSer548及び/又はSer622のリン酸化を阻害することで、ミトコンドリア呼吸の阻害が解除され、神経細胞死の誘導を抑制できる。したがって、Ser54、Ser548及びSer622からなる群から選ばれる少なくとも1種、好ましくはSer548及び/又はSer622のリン酸化阻害物質は、神経変性疾患の予防又は治療剤として有用である。

【0015】
神経変性疾患としては、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症及びアルツハイマー病が挙げられ、特にパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられる。

【0016】
本発明者は、SARM1のリン酸化がサイクリン依存性キナーゼ8(CDK8)及び/又はサイクリン依存性キナーゼ19(CDK19)、さらにJNK(JNK-1、JNK-2、JNK-3、特にJNK-3)により行われることを見出した。CDK8とCDK19の一方又は両方(好ましくは両方)、JNK(JNK-1、JNK-2、JNK-3、特にJNK-3)を阻害することで、SARM1の活性化を抑制することができ、神経細胞死を抑制し、神経変性疾患を予防又は治療することができる。神経細胞は、細胞死後にCDK8とCDK19の一方又は両方(好ましくは両方)、さらにJNK(JNK-1、JNK-2、JNK-3、特にJNK-3)を阻害しても再生しないので、CDK8及び/又はCDK19、さらにJNK(JNK-1、JNK-2、JNK-3、特にJNK-3)の阻害剤は、神経変性疾患の予防もしくは進行を止めるか遅らせるのに有用である。また、軸索変性の場合には、本発明の神経変性疾患の予防又は治療薬で再生可能である。

【0017】
JNKによるSARM1のリン酸化モチーフを以下に示す。
Ser54: REVSPGAG
Ser548: MLHSPLPC
Ser622: LVLSPGAL
また、神経変性疾患は、抗SARM1抗体、SARM1のデコイペプチド及びアンタゴニストからなる群から選ばれるSARM1阻害剤により予防又は治療することができる。SARM1のデコイペプチドとしては、SARM1のSer54、Ser548又はSer622を含む断片ペプチドまたはその修飾体が挙げられる。修飾体は、N末端のアミノ基がアシル化(アセチル化、プロピオニル化など)、アルキル化(メチル化、エチル化など)されたもの、C末端のカルボキシル基がエステル化、アミド化されたものが挙げられる。このようなデコイペプチドは配列番号1のヒトSARM1のアミノ酸配列から当業者であれば容易に設計できる。SARM1のアンタゴニストとしては、SAMドメイン(分子量約17000)、ARMドメイン(分子量約40000)、TIRドメイン(分子量約19000)が挙げられるが、より低分子量のアンタゴニストであってもよい。デコイペプチドはSARM1のアンタゴニストに包含される。

【0018】
神経変性疾患の予防又は治療に有効である抗SARM1抗体は、SARM1の54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種、好ましくは548位及び/又は622位のSer残基のリン酸化を抑制可能な非リン酸化SARM1に対する抗体またはSARM1の54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種のリン酸化Ser残基を特異的に認識し、SARM1の54位、548位及び622位の非リン酸化Ser残基を認識しない抗リン酸化SARM1抗体が挙げられる。このような抗体の作製に使用可能なペプチドとしては、
RGPREVSPGAGTEVQ(Ser(S)残基がリン酸化されたペプチドは、抗リン酸化SARM1抗体の作製に使用でき、Ser(S)残基がリン酸化されていないペプチドは、SARM1のSer54のリン酸化を抑制可能な非リン酸化SARM1に対する抗体の作製に使用できる)、
AREMLHSPLPCTGGK(Ser(S)残基がリン酸化されたペプチドは、抗リン酸化SARM1抗体の作製に使用でき、Ser(S)残基がリン酸化されていないペプチドは、SARM1のSer548のリン酸化を抑制可能な非リン酸化SARM1に対する抗体の作製に使用できる)、
NFVLVLSPGALDKCM(Ser(S)残基がリン酸化されたペプチドは、抗リン酸化SARM1抗体の作製に使用でき、Ser(S)残基がリン酸化されていないペプチドは、SARM1のSer622のリン酸化を抑制可能な非リン酸化SARM1に対する抗体の作製に使用できる)
が挙げられるが、これらに限定されず、Ser54、Ser548又はSer622を含むペプチドが使用可能である。

【0019】
本明細書で、「SARM1のSer54、Ser548及びSer622からなる群から選ばれる少なくとも1種のリン酸化を抑制可能な非リン酸化SARM1に対する抗体」とは、Ser54、Ser548又はSer622を含むエピトープを認識する抗体であってもよく、Ser54、Ser548又はSer622の近傍のエピトープを認識し、抗体結合により Ser54、Ser548及びSer622からなる群から選ばれる少なくとも1種のリン酸化を抑制可能な抗体であってもよい。

【0020】
CDK8及び/又はCDK19の阻害剤は、例えばWO2015/159937、US20120071477、US20120071477、WO2013/116786、特表2015-506376、特表2016-503408に記載のものが挙げられ、現在公知であるか、将来見出されるCDK8及び/又はCDK19の阻害剤は全て神経変性疾患の予防又は治療剤或いはSARM1のリン酸化阻害剤/活性化阻害剤として本発明に包含される。また、SARM1のARMドメイン、SAMドメイン、TIRドメイン或いはSer54、Ser548又はSer622を含むその断片は、SARM1のリン酸化を競合的に阻害できるので、SARM1のリン酸化阻害剤/活性化阻害剤/神経変性疾患の予防又は治療剤として有用である。

【0021】
JNK(JNK-1、JNK-2、JNK-3、特にJNK-3) の阻害剤は多数知られており、現在公知であるか、将来見出されるJNK(JNK-1、JNK-2、JNK-3、特にJNK-3)の阻害剤は全て神経変性疾患の予防又は治療剤或いはSARM1のリン酸化阻害剤/活性化阻害剤として本発明に包含される。

【0022】
SARM1の54位、548位又は622位のSerをAsp(D)又はGlu(E)に置換することで、神経細胞死の誘導作用を増強することができ、SARM1の54位、548位又は622位のSerをAlaなどのリン酸化されず、かつ、酸性でないアミノ酸に置換することでSARM1の活性化を阻害し、SARM1による神経細胞死の誘導作用を軽減もしくは消失させることができる。SARM1のAsp54又はGlu54改変体、Asp548又はGlu548改変体、Asp622又はGlu622改変体は、SARM1の神経細胞死誘導作用を増強することができるので、54位、548位及び622位からなる群から選ばれる少なくとも1種のSerをAsp(D)又はGlu(E)に改変したSARM1改変体は、神経変性疾患のモデル動物又はモデル細胞を作成するのに有用である。例えば野生型SARM1遺伝子をAsp54又はGlu54改変体遺伝子、Asp548又はGlu548改変体遺伝子、Asp622又はGlu622改変体遺伝子に置換(ノックイン)した非ヒト哺乳動物/細胞、或いは、Asp54又はGlu54改変体遺伝子、Asp548又はGlu548改変体遺伝子、Asp622又はGlu622改変体遺伝子を導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物/細胞は、神経変性疾患のモデル動物/モデル細胞(細胞はヒトを含む)となり得る。54位、548位、622位の2種以上を改変してもよい。

【0023】
哺乳動物としては、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ブタなどが挙げられる。これら哺乳動物のSARM1の塩基配列及びアミノ酸配列は公知であるか、公知のSARM1の塩基配列から容易に遺伝子を取得し、アミノ酸配列を決定することができる。

【0024】
本発明の抗リン酸化SARM1抗体は、Ser54、Ser548及びSer622からなる群から選ばれる少なくとも1種のリン酸化SARM1又はリン酸化Ser54及び/又はSer548及び/又はSer622を含むその断片をマウスに免疫して得られたハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり、モノクローナル抗体が好ましい。以下において、「Ser54及び/又はSer548及び/又はSer622」を「Ser54/Ser548/Ser622」と略すことがある。

【0025】
Ser54/Ser548/Ser622リン酸化SARM1又はリン酸化Ser54/Ser548/Ser622を含むその断片でマウスなどの哺乳動物に免疫した後、いくつかのハイブリドーマが得られる。その中で必要となる抗体は、Ser54/Ser548/Ser622リン酸化SARM1に反応し、非リン酸化SARM1に反応しない抗体を産生するハイブリドーマである。

【0026】
本発明の抗非リン酸化SARM1抗体は、Ser54/Ser548/Ser622非リン酸化SARM1又は非リン酸化Ser54/Ser548/Ser622を含むその断片をマウスに免疫して得られたハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり、モノクローナル抗体が好ましい。Ser54/Ser548/Ser622非リン酸化SARM1又は非リン酸化Ser54/Ser548/Ser622を含むその断片でマウスなどの哺乳動物に免疫した後、いくつかのハイブリドーマが得られる。その中で必要となる抗体は、Ser54/Ser548/Ser622非リン酸化SARM1に反応し、Ser54/Ser548/Ser622リン酸化SARM1に反応しない抗体を産生するハイブリドーマである。

【0027】
免疫に用いられる哺乳動物には、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ等が挙げられるが、マウスが特に好ましい。本発明の抗体を得るためには、Ser54/Ser548/Ser622リン酸化/非リン酸化SARM1またはリン酸化/非リン酸化Ser54/Ser548/Ser622を含むその断片を免疫原としてハイブリドーマを作製した後、Ser54/Ser548/Ser622リン酸化/非リン酸化SARM1に特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択する必要がある。免疫の惹起は、通常1ng~10mgの量の免疫原を10~14日の日数を開けて1~5回に分けて投与することで行うことができる。十分な免疫後、抗体産生能を有する器官(脾臓やリンパ節)を哺乳動物から無菌的に摘出し、細胞融合時の親株とする。なお、摘出する器官としては、脾臓が最も好ましい。細胞融合のパートナーとしては、ミエローマ細胞が用いられる。ミエローマ細胞には、マウス由来、ラット由来、ヒト由来等があるが、マウス由来が好ましい。細胞融合には、ポリエチレングリコールを用いる方法、細胞電気融合法等が挙げられる。細胞融合しなかった脾臓細胞やミエローマ細胞とハイブリドーマとの選択は、例えばHATサプリメントを添加した血清培地で培養することで行うことができる。

【0028】
Ser54/Ser548/Ser622リン酸化/非リン酸化SARM1に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマの選択は、前述の培養上清を採取し、Ser54/Ser548/Ser622リン酸化/非リン酸化SARM1またはリン酸化/非リン酸化Ser54/Ser548/Ser622を含むその断片と非リン酸化/リン酸化SARM1を固相化したEIAプレートでの直接ELISAが好ましい。直接ELISAの結果、Ser54/Ser548/Ser622リン酸化/非リン酸化SARM1またはリン酸化/非リン酸化Ser54/Ser548/Ser622を含むその断片と強く発色し、非リン酸化/リン酸化SARM1とは発色しないウエルを選択し、そのウエルの細胞をクローニングに供する。その培養上清に対応するハイブリドーマを、Ser54/Ser548/Ser622リン酸化/非リン酸化SARM1に特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマとして選択する。クローニングとは、抗体産生ハイブリドーマを選別し単一化する作業であり、限界希釈法、フィブリンゲル法、セルソーターを用いる方法等があるが限界希釈法が好ましい。これにより、目的とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを獲得することができる。 上記方法により得られたハイブリドーマを培養することで、培養上清中にモノクローナル抗体を得ることができる。

【0029】
神経変性疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法としては、具体的には、健常者及び神経変性疾患患者由来iPS細胞から神経細胞を誘導し、候補薬剤または溶媒対照群を添加し、その後リン酸化SARM1抗体を用いた免疫染色、ウェスタンブロッティング、MTSアッセイでSARM1リン酸化と神経細胞生存率の評価を行うことで実施可能である。或いは、神経変性疾患モデルマウスに候補薬剤または溶媒対照群を投与し、その後脳の凍結切片を作製し、リン酸化SARM1抗体、Tyrosine hydroxylase抗体(パーキンソン病モデルの場合)を用いた組織染色でSARM1リン酸化レベルと神経細胞生存率の評価を行い、神経変性疾患の予防又は治療薬をスクリーニングすることができる。

【0030】
SARM1を発現する細胞として、HAタグ、Hisタグ、FLAGタグなどのタグを付加したSARM1と別のタグが付加されたARMドメイン、SAMドメイン、TIRドメイン、或いは、Ser54、Ser548、Ser622を含むその断片を共発現させた細胞がより好ましい。このような細胞の培養液に候補物質を添加して細胞培養を行い、SARM1のタグに対する抗体結合ビーズを用いてタグ化SARM1の免疫沈降を行い、リン酸化されているかを、本発明の抗体或いはリン酸化セリン・スレオニン検出抗体などの抗体を用いて検出することができる。本発明のスクリーニング方法では、SARM1のリン酸化を抑制する物質を目的物質として選別することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。
【実施例】
【0032】
実施例1
(1) SARM1発現抑制による神経細胞死抑制
SARM1が神経細胞死誘導に関与するか否かを確認するために、siRNAを用いた発現抑制実験を行った。ヒト神経芽腫SH-SY5Y細胞3×105個を12 ウェルプレートにまき、コントロールもしくはSARM1に対する10 μM siRNA(QIAGEN) 4 μlにトランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)8 μlを混合し、最終濃度20 nMでトランスフェクションを行った。48時間後に酸化ストレス試薬でパーキンソン病様症状誘発試薬として用いられる40 μM 6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)、1 mM パラコート、1 μMロテノンを添加し、24時間後にヘキスト溶液(Thermo Fisher Scientific)で染色し、細胞死誘導率を測定した(図1)。コントロール群と比較して、SARM1の発現抑制は有意に細胞死を抑制した。この結果はSARM1の発現や機能を阻害することで、ストレス誘導性の神経細胞死を抑制できる可能性があることを示している。
【実施例】
【0033】
(2) SARM1のミトコンドリア呼吸阻害による細胞死誘導
次にSARM1の細胞死誘導機構について検討を行った。SARM1がミトコンドリア移行シグナルをもつタンパク質であることから、ミトコンドリアの機能に着目して実験を行った。その結果SARM1がミトコンドリア呼吸を阻害し、ATP合成を減少させることを見出した。SARM1は724アミノ酸からなるタンパク質でミトコンドリア移行シグナル、ARMドメイン、2つのSAMドメイン、TIRドメインを有している(図2A)。それぞれのドメインの機能を解析するためにHEK293T細胞3×105個を12 ウェルプレートにまき、全長のSARM1(1~724aa)、ミトコンドリア移行シグナルを除いたΔN(28~724aa)、TIRドメインを除いたΔT(1~550aa)、ARMドメインを含むN末端側を除いたΔA(406~724aa)をコードするpDNA 2 μgをトランスフェクション試薬FuGENE-HD(Promega)4 μlと混合しトランスフェクションを行った。8時間後に細胞をはがし、96ウェルプレートに3×104個ずつ再播種を行った。トランスフェクションから48時間後にCellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay試薬(Promega)(図2B)及びCellTiter-Glo Assay試薬(Promega)(図2C)を用いて細胞生存率とATP量を測定した。コントロールと比較してSARM1は細胞生存率を減少させた。この効果はミトコンドリア移行シグナルを除くと多少緩和され(ΔN)、ΔTで完全になくなり、ΔAでは増強された。この値に相関して細胞のATP量も変化した(図2C)。これらの結果は細胞死誘導及びATP合成の阻害にはTIRドメインが重要であり、ARMドメインを含む領域はSARM1の活性を抑制するために重要であることを示唆する。同様のトランスフェクション条件の下、フラックスアナライザーXFe96(SeahorseBioscience)を用いてミトコンドリア呼吸能(図2D)を、ROS-Glo H2O2 assay(Promega)を用いて活性酸素種の1つであるH2O2の量(図2E)を測定した。ATP量と相関して、全長のSARM1やΔAはミトコンドリア呼吸能、特に予備呼吸能を減少させ、ΔTは増加させた。またH2O2の量は全長のSARM1やΔAの発現によって増加した(図2E)。これらの結果はSARM1がミトコンドリア呼吸鎖複合体に作用してミトコンドリア呼吸を阻害し、ATP合成の減少、活性酸素種発生の誘発によって細胞死を誘導することを示している。
【実施例】
【0034】
(3) SARM1のセリン548番のリン酸化検出
次にSARM1の活性がいかにして制御されているかの解析を行った。その解析の中、SARM1の強制発現でATP合成が阻害される条件において、SARM1がリン酸化されることを見出した。HEK293T細胞(8×105個/6ウェルプレート)にコントロールもしくはSARM1-Flag(pDNA 4 μg + FuGENE-HD 8 μl)のトランスフェクションを行い、24時間後にFlag抗体結合ビーズを用いて免疫沈降を行った。その後、リン酸化セリン・スレオニン(P-Ser/Thr)検出抗体(BD Bioscience)、Flag抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った結果、SARM1のバンドと同様の位置にP-Ser/Thr抗体で検出されるバンドが出現した(図3A)。SARM1のどの部分のセリン、スレオニンがリン酸化されているのかを確認するために、SARM1を3つの領域(ARM : 1~405aa、SAM : 406~550aa、TIR : 551~724aa)に分けて図3Aと同様の手法でリン酸化の検出を行った。図3Bに示すように3つの領域の中でSAMドメインがリン酸化されていた。SAMドメイン(406~550aa)の中にはセリンが12個、スレオニンが9個含まれている。この中のどのアミノ酸がリン酸化されているのかを特定するために、21個全てのアミノ酸を1つずつアラニンに置換して野生型(WT)のSAMドメインとの比較を行った。21個のアミノ酸のうち、セリン548番をアラニンに置換した場合のみP-Ser/Thr抗体で検出されるバンドが消失した(図3C)。これらの結果からセリン548番がSARM1のリン酸化部位であることが判明した。
【実施例】
【0035】
(4) CDK19、CDK8によるSARM1のリン酸化亢進
SARM1のリン酸化を制御するリン酸化酵素を同定するために質量分析計を用いた実験を行った。HEK293T細胞(8×105個/6ウェルプレート)にコントロールもしくはSAM (406~550aa)-Flag(pDNA 4 μg + FuGENE-HD 8 μl)のトランスフェクションを行い、24時間後にFlag抗体結合ビーズを用いて免疫沈降を行った。銀染色によってSAM-Flagと共沈降したバンドを検出し(図4A)、質量分析計で結合タンパク質の解析を行った。その結果、SAMドメインと結合するタンパク質としてCyclin dependent kinase 19 (CDK19)を同定した。CDK19はCDKファミリータンパク質の1つで、よく機能が似たパラログとしてCDK8が存在することが知られている。SAMドメインとCDK19、CDK8の結合及びリン酸化制御を確認するためにHAタグを付加したCDK19及びCDK8(HA-CDK19、HA-CDK8)発現ベクターを作製した。HEK293T細胞(8×105個/6ウェルプレート)にコントロール、SAM-Flag、HA-CDK19及びHA-CDK8 (pDNA 4 μg + FuGENE-HD 8 μl)のトランスフェクションを行い、24時間後にFlag抗体結合ビーズを用いて免疫沈降を行った。図4Bに示すようにCDK19、CDK8はSAMドメインと結合し、SAMドメインのリン酸化を著しく増強した。これらの結果からCDK19、CDK8がSARM1のセリン548番のリン酸化を亢進させることが判明した。次にCDK19もしくはCDK8をSARM1と共発現させた場合の細胞生存率をMTSアッセイ(CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay試薬)で測定した。CDK19及びCDK8の強制発現によって細胞生存率は低下し、SARM1との共発現によって細胞生存率は更に低下した(図4C)。これらの結果はCDK19、CDK8によるSARM1セリン548番のリン酸化がSARM1の活性化及び細胞死誘導に重要であることを示している。
【実施例】
【0036】
(5) リン酸化を指標にしたSARM1阻害剤の開発
図4の結果から、SARM1のセリン548番のリン酸化を阻害すれば細胞死を抑制できる可能性があることが判明した。そこでSARM1のリン酸化状態を指標にしてSARM1の阻害剤開発が可能か否かの検討を行った。図3で示したようにSARM1のSAMドメイン(406~550aa)は細胞内で強力にリン酸化されることから、細胞内で全長のSARM1のリン酸化を阻害するアンタゴニストとして機能することが考えられる。HEK293T細胞(8×105個/6ウェルプレート)にコントロール、HAタグを付加したSARM1(SARM1-HA)及びSARM1-HAとSAM-Flagを共発現させる条件(pDNA 4 μg + FuGENE-HD 8 μl)でトランスフェクションを行い、24時間後にHA抗体結合ビーズ(SIGMA)を用いてSARM1-HAの免疫沈降を行った。図5Aに示すようにSARM1-HA単独の場合はSARM1のリン酸化が検出されたが、SAM-Flagを共発現させた場合はリン酸化が検出されなかった。更に同様のトランスフェクション条件でCellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay試薬を用いて細胞生存率を測定したところ、SARM1の強制発現によって誘導される細胞死の割合が、SAMドメインの共発現によって減少した(図5B)。次にSARM1のCDK19/CDK8によるリン酸化を阻害するために、CDK19/CDK8阻害剤であるSenexin A (TOCRIS)を用いてリン酸化の検討を行った。HEK293T細胞(8×105個/6ウェルプレート)にコントロールもしくはSAM-Flag(pDNA 4 μg + FuGENE-HD 8 μl)のトランスフェクションを行い、8時間後に0~10 μMのSenexin Aを添加した。トランスフェクションから24時間後にFlag抗体結合ビーズを用いて免疫沈降を行った。Senexin Aは濃度依存的にSAMドメインのリン酸化を抑制した(図5C)。次に酸化ストレス誘導性の細胞死に対するSenexin Aの効果を検証した。神経芽腫SH-SY5Y細胞3×104個を96 ウェルプレートにまき、0~20 μMのSenexin A及び1 mMパラコートを添加した。48時間後にCellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay試薬を用いて細胞生存率を測定した。図5Dに示すように、Senexin Aは濃度依存的に酸化ストレスによって誘導される細胞死を抑制した。これらの結果よりSARM1のリン酸化を阻害する物質を開発すれば、SARM1によって誘導される細胞死を抑制できることが判明した。
【実施例】
【0037】
(6) JNKによるSARM1セリン548番のリン酸化誘導
図4に示したようにCDK19やCDK8の強制発現はSAMドメインのリン酸化を亢進させた。CDK19及びCDK8が直接SAMドメインのリン酸化を誘導するか否かを確かめるためにin vitro kinase assayを行った。しかしSAMドメインとCDK19もしくはCDK8をATP存在下で反応させたところ、SAMドメインのリン酸化は確認できなかった。そこでSARM1を直接リン酸化する別のキナーゼを見出すために、キナーゼ阻害剤を用いた検討を行った。HEK293T細胞(3×105個/12ウェルプレート)にSAM-Flag発現ベクター(pDNA 2μg + FuGENE-HD 4 μl)のトランスフェクションを行い、8時間後に種々のキナーゼ阻害剤(EGFR-I、MEK-I、p38-I、JNK-I、Akt-I)を添加し16時間培養後、細胞を回収しウェスタンブロッティングを行った。キナーゼ阻害剤のスクリーニングにおいてJNK阻害剤(JNK-I : JNK inhibitor VIII (Cayman))がSAMドメインのリン酸化を抑制した(図6A)。次にJNKによるSAMドメインの直接のリン酸化を確認するためにGSTタグを付加したSAMドメインとキナーゼ(p38α、JNK1、JNK2、JNK3)をATP存在下で反応させin vitro kinase assayを行った。図6Bに示すように、JNK(特にJNK3)が直接SAMドメインのセリン548番のリン酸化を誘導することを確認した。
【実施例】
【0038】
SARM1のセリン548番のリン酸化を特異的に検出するために抗体の作製を行った。セリン548番を含むAREMLHSPLPCTGGKのリン酸化ペプチドをマウスに免疫し、ハイブリドーマを得た。ハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体の反応性をELISAで確認し、リン酸化ペプチドに反応し、非リン酸化ペプチドに反応性の低いクローンを選定し(図6C)、抗体の精製を行った。獲得したSARM1セリン548番リン酸化認識抗体は全長のSARM1のリン酸化を特異的に認識した。この抗体を用いてウェスタンブロッティングを行ったところ、強制発現したSARM1のリン酸化が検出され、JNK1~3の共発現によってリン酸化が更に亢進した(図6D)。また内在性SARM1のセリン548番リン酸化も検出可能であった。SH-SY5Y細胞に種々のストレス刺激を加え24時間培養を行い、細胞抽出液を回収した。細胞死が誘導されるストレス刺激(パラコート、6-OHDA、ロテノン処理)によってSARM1のセリン548番リン酸化が亢進した(図6E)。これらの結果より、JNKがSARM1セリン548番の直接のリン酸化を担っており、細胞死が誘導されるようなストレス環境下でJNKが活性化し、SARM1のリン酸化を行い、神経細胞死誘導に寄与していることが考えられた。
【実施例】
【0039】
(7) SARM1-Ser548リン酸化検出を利用したSARM1リン酸化阻害剤のスクリーニング法
図6に示したように、ストレス環境下でSARM1はリン酸化され、細胞死を誘導した。このことからSARM1のリン酸化を阻害する物質を見出せば、SARM1によって誘導される神経細胞死を抑制できる可能性がある。そこでSARM1-Ser548リン酸化検出を利用したSARM1リン酸化阻害剤のスクリーニング方法を示した。GST-SAM 1 μgを50 mM Tris-HCl (pH 7.5)、150 mM NaCl、10 mM MgCl2、1.8 mM ATP、1 mM DTTのバッファー中に加え、JNK3 100 ng及びJNK阻害剤やデコイペプチド、抗体などを加え37℃で1時間反応させた。JNK阻害剤はJNK inhibitor VIII (Cayman)、デコイペプチドはセリン548番を含むAREMLHSPLPCTGGKの配列をもつペプチド、マウスコントロールIgG(mIgG)は正常マウスIgG (Wako)、SARM1抗体はセリン548番を含むペプチドをマウスに免疫し、そこから得られたハイブリドーマから精製した抗体(No. 1、2、16、18、30及び33)を使用した。その後3 x SDSサンプルバッファーを加え反応を止め、ウェスタンブロッティングでSARM1のリン酸化レベルを評価した。JNK阻害剤(図7A)、デコイペプチド(図7B)、抗体(図7C)はそれぞれSARM1-Ser548リン酸化を抑制する効果をもっていた。特にJNK阻害剤(JNK-I)やSARM1抗体(No. 1、2、16)は強いリン酸化抑制効果をもっており、これらの物質はSARM1によって誘導される細胞死を抑制した。HEK293T細胞にSARM1 pDNAのトランスフェクションを行い、8時間後にJNK阻害剤や抗体を加え16時間培養を行った。JNK阻害剤及び抗体はリン酸化解析に使用したものと同様のものを使用した。抗体はエレクトロポレーション法(Neon transfection system, Thermo Fisher Scientific)で導入を行った。その後MTSアッセイによって細胞生存率を評価した。JNK阻害剤やSARM1抗体は細胞死抑制効果をもっており(図7D、E)、SARM1のリン酸化検出と細胞生存率評価のアッセイを組み合わせることにより、SARM1の活性化を阻害する物質のスクリーニングが可能であることを示している。
【実施例】
【0040】
(8) JNKによるSARM1セリン54番、セリン548番、セリン622番のリン酸化誘導
JNKはSARM1セリン548番のリン酸化を誘導し、JNKの阻害はSARM1セリン548番のリン酸化を減少させ細胞死誘導を抑制した。SARM1セリン548番のリン酸化がSARM1の活性に与える影響を確認するために、セリン548番をアラニンに置換したSARM1変異体発現ベクター(S548A)を作製し、野生型SARM1との比較をMTSアッセイで行った。その結果、野生型SARM1と比較してS548Aの活性は低下するが、それほど大きな差ではないことがわかった(図7A)。そこでJNKによってSARM1の他のセリン・スレオニンもリン酸化される可能性を考え、SARM1の全配列を調査したところ、SARM1はJNKによってリン酸化される可能性のあるモチーフを3箇所(Ser54:REVSPGAG、Ser548:MLHSPLPC、Ser622:LVLSPGAL)含んでいた。そこでセリン54番、セリン548番、セリン622番を1箇所ずつもしくは複数箇所アラニンに置換した変異体発現ベクターを作製し、野生型SARM1との比較をMTSアッセイで行った。その結果、S622AがSARM1の活性を最も低下させ、次いでS548A、S54Aの順番であり、3箇所全てを変異させるとSARM1の細胞死誘導活性がほとんど消失した(図8A)。セリン54番、セリン622番のリン酸化は図3に示したリン酸化セリン・スレオニン認識抗体を用いた方法では検出できなかったことから、Phos-tag(Wako)を用いた別の方法での検出を試みた。Phos-tagはリン酸基と結合する性質がある物質で、SDS-PAGEゲルに混ぜることによってリン酸化タンパク質の泳動が非リン酸化タンパク質よりも遅くなり、リン酸化タンパク質を検出できる方法である。この方法を用いてSARM1変異体の比較を行った。図8Bの上の写真で示すように、通常のSDS-PAGEゲルを用いた検出ではSARM1のバンドは1本で検出される。しかし図8Bの下の写真で示すように、Phos-tagを含むSDS-PAGEゲルでは泳動が早い黒矢印で示すバンドと泳動が遅い白矢印で示すバンドが現れ、SARM1がリン酸化されていることが確認された(白矢印)。更にセリン548番だけでなくセリン54番、セリン622番をアラニンに置換した変異体においても野生型SARM1と比較するとバンドパターンが変化しており、これらのセリンもリン酸化されていることが示唆された。しかしセリン54番、548番、622番を全てアラニンに置換した変異体においてもリン酸化のバンドが検出されることから、これらのセリン以外にもSARM1にはリン酸化を受けるアミノ酸が存在することが示唆される。セリン54番、548番、622番がJNKによってリン酸化されていることを更に明らかにするために、SARM1をドメインごとに発現させ、JNK1~3との共発現を行い、Phos-tagを用いた検出を行った。図8Cに示すように、セリン54番を含むARMドメイン、セリン548番を含むSAMドメイン、セリン622番を含むTIRドメインそれぞれにおいてJNK(特にJNK3)の共発現によってリン酸化バンドが増加することが確認された。これらの結果より、JNKはSARM1のセリン54番、セリン548番、セリン622番のリン酸化を誘導すると考えられる。
【実施例】
【0041】
(9) SARM1のリン酸化による結合タンパク質の変化
SARM1のリン酸化の意義を明らかにするために、SARM1変異体の結合タンパク質の比較を行った。HEK293T細胞(8×105個/6ウェルプレート)にコントロール、野生型SARM1-Flagもしくは変異体SARM1-Flag (pDNA 4 μg + FuGENE-HD 8 μl)のトランスフェクションを行った。24時間後に1% Triton-X100を含む細胞溶解液で細胞抽出液を調製し、Flag抗体結合ビーズ(SIGMA)20 μlを用いて2時間免疫沈降を行い、0.1 M グリシン溶液(pH2.5)で免疫沈降物を回収した。1 Mトリス溶液(pH 9)、SDS溶液を混合した後、SDS-PAGEで展開した。銀染色キット(Wako)によってSARM1-Flagと共沈降したバンドを検出し(図9A)、質量分析計で結合タンパク質の解析を行った。その結果、野生型や点変異を含む全長のSARM1はミトコンドリア呼吸鎖複合体complex VのサブユニットATP5B、ATP5C1、ATP5Oとの結合が確認され、その結合はS548A変異で減少していた。一方、SARM1活性が全くないΔTIRや活性がほとんどなくなるS622A変異体では70 kDa付近にSARM1との結合が増加しているバンドが検出され、このバンドはHeat shock protein 70 (HSP70)であった。この結合は免疫沈降後のウェスタンブロッティングによっても確認された(図9B)。これらの結果からSARM1はcomplex Vとの相互作用によりATP合成を阻害し(図2C)、HSP70がその作用を抑制していることが示唆される。更にセリン622番のリン酸化がHSP70との解離に重要で、セリン548番のリン酸化がcomplex Vとの結合に寄与していることが考えられる。
【実施例】
【0042】
SARM1がcomplex Vに結合しATP合成を阻害することが細胞死誘導につながると想定した場合、complex Vのサブユニットを過剰に導入し、デコイとして機能させることで、SARM1によって誘導される細胞死を抑制することができると推察される。HEK293T細胞(3×105個/12ウェルプレート)にSARM1-Flagとコントロール、ATP5B、ATP5O pDNA(pDNA 4 μg + FuGENE-HD 8 μl)の共発現を行い、24時間後にMTSアッセイによって細胞生存率を解析した。ATP5B、ATP5OのSARM1との共発現はSARM1によって誘導される細胞死を有意に抑制した(図9C)この結果から、SARM1がcomplex Vに結合しATP合成を阻害することが、SARM1による細胞死誘導に重要な作用であることが判明し、結合に重要なSARM1のリン酸化を阻害する物質を見出すことによってSARM1の機能を抑制することが可能であると考えられる。
【実施例】
【0043】
(10) SAMドメイン、TIRドメインを利用したSARM1結合物質のスクリーニング方法
図9の結果からcomplex Vとの結合に重要なセリン548番のリン酸化を抑制する化合物や、HSP70との解離に必要なセリン622番のリン酸化を抑制する化合物はSARM1の活性化を阻害し、神経細胞死を抑制するために効果のある化合物であることが想定される。このことからこれらの物質のスクリーニングのための方法を開発した。
【実施例】
【0044】
SAMドメインをT7プロモーターを有する発現ベクターpET28aにクローンし(pET28a-SAM-Flag(6His-T7-SAM-Flag))、大腸菌BL21(DE3)-RPに形質転換して作製したグリセロールストックをLB-Kan(カナマイシン 30 μg/ml)培地で37℃、10時間振盪培養し、次に、IPTGを、1 mMの最終濃度となるまで加え、25℃で16時間振盪培養してSAMドメインを発現させた。20質量%のショ糖バッファー中で超音波処理を行うことで大腸菌の破砕物を得た。この破砕物を遠心分離し、上清をコバルトカラムに添加後、PBS-T (Phsophate Buffered Saline with Tween 20)+10mMイミダゾールを洗浄液とし、PBS+500mMイミダゾールを溶離液として精製し、さらにPBSに対して透析を行うことでSAMドメインを精製した(図10A)。
【実施例】
【0045】
TIRドメインの部分領域(D594~E670 aa)をtacプロモーターを有する発現ベクターpGEX-6P-1にクローンし(pGEX-6P-1-TIR(GST-TIR))、大腸菌BL21(DE3)-RPに形質転換して作製したグリセロールストックをLB-Amp(アンピシリン 100 μg/ml)培地で37℃、10時間振盪培養し、次に、IPTGを、1 mMの最終濃度となるまで加え、25℃で16時間振盪培養してTIRドメインを発現させた。20質量%のショ糖バッファー中で超音波処理を行うことで大腸菌の破砕物を得た。この破砕物を遠心分離し、上清をSephadex-4Bカラム(GEヘルスケア)に添加後、PBS-T (Phsophate Buffered Saline with Tween 20)を洗浄液とし、50 mM Tris-HCl (pH 8)+10 mM還元型グルタチオンを溶離液として精製し、さらにPBSに対して透析を行うことでTIRドメインを精製した(図10B)。
【実施例】
【0046】
精製したSAMドメインを用いて分子相互作用解析を行うためにBiacoreセンサーチップを作製した。PBSに溶けているSAMドメイン0.4 mg/mlを10 mM酢酸緩衝液(pH 4.5)で4倍希釈(0.1 mg/ml)し、アミンカップリング法でCM5センサーチップに固定化した。アナライトとの相互作用測定方法として、ランニング緩衝液はHBS-EP buffer(GEヘルスケア)を用い、アナライトはランニング緩衝液で20 μg/mlに希釈し使用した。SAMドメインへの分子相互作用を確認するためにSARM1抗体及びSAMドメインを添加し、解析を行った(図10C)。SAMドメインは2量体形成を行うので、SAMドメインを添加することによってSAMドメイン同士の結合が確認された。いくつかのSAMドメインのセリン548番近傍を認識する抗体はSAMドメインの結合よりも強い結合が確認され、これらの抗体はSAMドメインの2量体形成を阻害し、SARM1の機能を阻害することが示唆された。一方、コントロールIgGやSARM1の他の領域を認識する抗体ではSAMドメインとの結合は確認されなかった。これらの結果よりBiacoreによる分子相互作用解析を用いることでSARM1のドメインに結合する化合物を選定できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
現在、神経変性疾患(パーキンソン病、ALSなど)の進行を予防、治療できる薬剤は存在しない。
【0048】
SARM1は神経変性疾患で観察される神経細胞死や神経軸索変性の原因となる分子の1つである。
【0049】
SARM1の機能を阻害できれば、様々な神経変性疾患の予防、治療が可能になるかもしれない。
【0050】
しかしSARM1の細胞内での活性化機構が不明であったので、現在利用できるSARM1の阻害剤は存在しなかった。
【0051】
本発明者はSARM1のセリン54番、セリン548番、セリン622番がJNKによってリン酸化されることがSARM1の活性化に必要であることを見出した。
【0052】
本発明者はSARM1のリン酸化検出と細胞生存率の測定を組み合わせることで、SARM1の活性化を阻害する薬剤のスクリーニング法を開発した。
【0053】
本発明を用いることによって神経変性疾患の予防、治療に有望なSARM1阻害剤の開発が可能になる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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