TOP > 国内特許検索 > IgG結合性ペプチド > 明細書

明細書 :IgG結合性ペプチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年3月14日(2019.3.14)
発明の名称または考案の名称 IgG結合性ペプチド
国際特許分類 C07K  14/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C07K 14/00 ZNA
C12N 15/09 Z
国際予備審査の請求
全頁数 20
出願番号 特願2018-505936 (P2018-505936)
国際出願番号 PCT/JP2017/010115
国際公開番号 WO2017/159655
国際出願日 平成29年3月14日(2017.3.14)
国際公開日 平成29年9月21日(2017.9.21)
優先権出願番号 2016049153
優先日 平成28年3月14日(2016.3.14)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】藤井 郁雄
出願人 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100104307、【弁理士】、【氏名又は名称】志村 尚司
審査請求 未請求
テーマコード 4H045
Fターム 4H045AA10
4H045BA19
4H045BA32
4H045EA22
4H045FA33
要約 【課題】免疫グロブリンG(IgG)に対する結合性が強いペプチドを提供する。
【解決手段】本発明に係るペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。但し、同アミノ酸配列中、N末端のアミノ酸から16番目のアミノ酸(X16)がL、M、I又はFであり、N末端のアミノ酸から17番目のアミノ酸(X17)がR、K、Y又はQであり、N末端のアミノ酸から19番目のアミノ酸(X19)は任意のアミノ酸であり、N末端のアミノ酸から20番目のアミノ酸(X20)は任意のアミノ酸であり、N末端のアミノ酸から26番目のアミノ酸(X26)はG又はE若しくは欠失しており、N末端のアミノ酸から29番目のアミノ酸(X29)は任意のアミノ酸であり、N末端のアミノ酸から30番目のアミノ酸(X30)は任意のアミノ酸であり、N末端のアミノ酸から32番目のアミノ酸(X32)は任意のアミノ酸であり、N末端のアミノ酸から33番目のアミノ酸(X33)が任意のアミノ酸である。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチド。
但し、同アミノ酸配列中、
N末端のアミノ酸から16番目のアミノ酸(X16)がL、M、I又はFであり、
N末端のアミノ酸から17番目のアミノ酸(X17)がR、K、Y又はQであり、
N末端のアミノ酸から19番目のアミノ酸(X19)は任意のアミノ酸であり、
N末端のアミノ酸から20番目のアミノ酸(X20)は任意のアミノ酸であり、
N末端のアミノ酸から26番目のアミノ酸(X26)はG又はE若しくは欠失しており、
N末端のアミノ酸から29番目のアミノ酸(X29)は任意のアミノ酸であり、
N末端のアミノ酸から30番目のアミノ酸(X30)は任意のアミノ酸であり、
N末端のアミノ酸から32番目のアミノ酸(X32)は任意のアミノ酸であり、
N末端のアミノ酸から33番目のアミノ酸(X33)が任意のアミノ酸である。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチド。
但し、同アミノ酸配列中、
N末端のアミノ酸から16番目のアミノ酸(X16)がL、M、I又はFであり、
N末端のアミノ酸から17番目のアミノ酸(X17)がR、K、Y又はQであり、
N末端のアミノ酸から19番目のアミノ酸(X19)がV、A、L、M、F又はIであり、
N末端のアミノ酸から20番目のアミノ酸(X20)は任意のアミノ酸であり、
N末端のアミノ酸から26番目のアミノ酸(X26)はG又はE若しくは欠失しており、
N末端のアミノ酸から29番目のアミノ酸(X29)がI、A、L、V、M又はFであり、
N末端のアミノ酸から30番目のアミノ酸(X30)が任意のアミノ酸であり、
N末端のアミノ酸から32番目のアミノ酸(X32)がA、L、F、M又はIであり、
N末端のアミノ酸から33番目のアミノ酸(X33)がN、D、H、A、T又はGである、
請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号1のアミノ酸配列中、
N末端のアミノ酸から16番目のアミノ酸(X16)がL又はMであり、
N末端のアミノ酸から17番目のアミノ酸(X17)がR又はKであり、
N末端のアミノ酸から19番目のアミノ酸(X19)がV、A、L又はMであり、
N末端のアミノ酸から29番目のアミノ酸(X29)がI、A、L、V又はMであり、
N末端のアミノ酸から32番目のアミノ酸(X32)がA,L又はFであり、
N末端のアミノ酸から33番目のアミノ酸(X33)がN、D、H、A又はTである、
請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸配列中、
N末端のアミノ酸から16番目のアミノ酸(X16)がL又はMであり、
N末端のアミノ酸から17番目のアミノ酸(X17)がR又はKであり、
N末端のアミノ酸から19番目のアミノ酸(X19)がA叉はVであり、
N末端のアミノ酸から20番目のアミノ酸(X20)がG、Q、R又はAであり、
N末端のアミノ酸から26番目のアミノ酸(X26)はGであり、
N末端のアミノ酸から29番目のアミノ酸(X29)がI、A、L又はVであり、
N末端のアミノ酸から30番目のアミノ酸(X30)がA、T、Q、E又はSであり、
N末端のアミノ酸から32番目のアミノ酸(X32)がA、L又はFであり、
N末端のアミノ酸から33番目のアミノ酸(X33)がA又はNである、
請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記アミノ酸配列中、N末端のアミノ酸から12番目のアミノ酸(I12)が任意のアミノ酸である請求項1~4の何れか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記アミノ酸配列中、N末端のアミノ酸から12番目のアミノ酸(I12)がAである請求項1~4の何れか1項に記載のペプチド。
【請求項7】
前記アミノ酸配列中、N末端のアミノ酸から39番目のアミノ酸(L39)がAである請求項1~6の何れか1項に記載のペプチド。
【請求項8】
前記アミノ酸配列中、N末端から5番目のシステインとC末端のシステインがジスルフィド結合した請求項1~7の何れか1項に記載のペプチド。
【請求項9】
前記アミノ酸配列中、N末端から5番目のシステイン及び/又はC末端のシステインが任意のアミノ酸で置換された請求項1~7の何れか1項に記載のペプチド。
【請求項10】
前記アミノ酸配列中、N末端から5番目のシステイン及び/又はC末端のシステインがグルタミンで置換された請求項1~7の何れか1項に記載のペプチド。
【請求項11】
ヒト免疫グロブリンGに対する解離定数(K)が、3000nM以下、好ましくは1000nM以下、望ましくは100nM以下である請求項1~10の何れか1項に記載のペプチド。
【請求項12】
配列番号2~51の何れかのアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項13】
配列番号2~51の何れかのアミノ酸配列を有し、アミノ酸配列のN末端から5番目のシステインと、同アミノ酸配列のC末端のシステインがジスルフィド結合したペプチド。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は免疫グロブリンGに対する結合性を有するペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
血液や血漿などの体液成分から、免疫グロブリンG(IgG)を本体とする自己抗体及び免疫複合体を特異的に吸着体に吸着除去することで、生体免疫機能に関係した自己免疫疾患の進行を防止し、疾患の症状を軽減せしめる方法が知られている。
【0003】
このような目的に使用されうる吸着材として、例えば特許文献1には、ヘリックス-ループ-ヘリックス構造を有するIgG結合性ペプチドをIgG型抗体として担体に結合させたIgG型抗体吸着材が開示されている。また、非特許文献1にも、同じくヘリックス-ループ-ヘリックス構造を有するIgG結合性ペプチドが開示されている。
【0004】
しかしながら、これらのIgG結合性ペプチドのIgGに対する結合性はまだ十分であるとは言えず、更に結合性の高いIgG型抗体が求められている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2015-74626号公報
【0006】

【非特許文献1】K. Kawabata, et ail., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 22(2014), 1845-1849
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、さらに結合性の強いヘリックス-ループ-ヘリックス構造のIgG結合性ペプチドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明に係るペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。ここで配列番号1に示すアミノ酸配列中のアミノ酸Xは下記のとおりである。
【発明の効果】
【0009】
本願発明に係るペプチドは、ヒト免疫グロブリン(IgG)に対して強い結合性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明に係るペプチドのデザインを示す図である。同図(A)は基本構造となるHLHの構造を、同図(B)はデザインされたペプチドの構造を示す。
【図2】図2はIgG結合性ペプチドライブラリーのスクリーニングを示す図であって、(A)は参考となるIgG結合性ペプチド(FK60)の結果を、(B)は第1ラウンド後の結果を、(C)は第2ラウンド後の結果を、(D)は第3ラウンド後の結果を示す。
【図3】図3は蛍光プレートリーダーによるIgG結合性ペプチドの活性を示す図である。
【図4】図4は選択された強いIgG結合性を有するペプチドの改変部位におけるアミノ酸の出現頻度を表す図である。
【図5】図5は得られたIgG結合性ペプチドのCDスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列(FNMQCQAEFYEILHEXXAXXGGGGGXGKXXAXXAKIAALRDAC:但しXは下記に示す。)を有する。当該ペプチドは、非環状ペプチドであるか、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端から5番目のシステイン(C5:アミノ酸コードに付加された数字は各アミノ酸配列におけるN末端からの位置を示す(以下同じ。)とC末端のシステインがジスルフィド結合により環状化した環状ペプチドである。

【0012】
本発明に係るペプチドは、各種動物、特にヒトのIgGに対して強い結合性を示す。本発明において結合性はヒトIgGに対する解離定数(K)で評価される。解離定数の算出方法は当業者に公知であり、例えば実施例に記載の測定方法により求められる。好ましい解離定数(K)は3000nM以下であり、好ましくは1000nM以下、より好ましくは100nM以下、望ましくは50nM以下、さらに望ましくは10nM以下である。

【0013】
本発明に係るペプチドは、論理的にはN末端側及びC末端側のそれぞれ14アミノ酸残基からなる2本のα-ヘリックスが6つ又は7つのグリシン残基で結合したヘリックス-ループ-ヘリックス構造(HLH構造)を有する。このHLH構造を有するペプチドでは、2本のα-ヘリックスは、内側に存在するロイシン側鎖の疎水相互作用等により安定なHLH構造を形成し、さらに、N末端およびC末端にシステインを導入して分子内ジスルフィド架橋することでさらに立体構造の安定性が向上する(Suzuki, N., Fujii, I., Optimization of the loop length for folding of a helix-loop-helix peptide, Tetrahedron Lett. 40, 6013(1999)、Fujii I, Takaoka Y., Suzuki K., Tanaka, T., A Conformationally Purified α-Helical Peptide Library, Tetrahedron Lett. 42, 3323(2001))。本発明においては、このようなHLH構造を有するペプチドが好ましいが、IgG結合性を有する限り必ずしもこのようなHLH構造を有するペプチドでなくとも差し支えない。

【0014】
本発明に係るペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。このアミノ酸配列中のXはそれぞれ、X16(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から16番目のアミノ酸)がL、M、I又はFであり、X17(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から17番目のアミノ酸)がR、K、Y又はQであり、X19(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から19番目のアミノ酸)、X20(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から20番目のアミノ酸)、X29(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から29番目のアミノ酸)、X30(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から30番目のアミノ酸)、X32(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から32番目のアミノ酸)及びX33(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から33番目のアミノ酸)はそれぞれ任意のアミノ酸である。また、X26(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から26番目のアミノ酸)はG又はEあるいは欠失している。

【0015】
本願発明に係るペプチドは、上記ペプチドの中でも、好ましくはX16がL、M、I又はFであり、X17がR、K、Y又はQであり、X19がV、A、L、M、F又はIであり、X29がI、A、L、V、M又はFであり、X32がA、L、F、M又はIであり、X33はN、D、H、A、T又はGである。さらには、X16がL又はMであり、X17がR又はKであり、X19がV、A、L又はMであり、X29がI、A、L、V又はMであり、X32がA、L又はFであり、X33はN、D、H、A又はTであるペプチドがより好ましい。また、上記ペプチドの中でも、X16がL又はMであり、X17はR又はKであり、X19がA又はVであり、X20がG、Q、R又はAであり、X26がGであり、X29がI、A、L又はVであり、X30がA、T、Q、E又はSであり、X33はA又はNであるペプチドが好ましい。より具体的にはペプチドは配列番号2~51に示すペプチドが好ましく、特に好ましいペプチドは配列番号9(FK6014:FNMQCQAEFYEILHELRAVGGGGGGGGKVAALNAKIAALRDAC)、配列番号21(FK6032:FNMQCQAEFYEILHEMRAVQGGGGGGGKITALNAKIAALRDAC)、配列番号33(FK6053:FNMQCQAEFYEILHELKAVRGGGGGGGKIQALNAKIAALRDAC)、配列番号41(KF6063:FNMQCQAEFYEILHEMRAVAGGGGGGGKLEAFNAKIAALRDAC)、配列番号43(FK6065:FNMQCQAEFYEILHELRAVQGGGGGGGKISALNAKIAALRDAC)の何れかの配列番号に示されるアミノ酸配列を有する。

【0016】
さらに、本発明のペプチドは、配列番号1において、I12(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から12番目のアミノ酸であるイソロイシン)及び/又はL39(配列番号1に示すN末端のアミノ酸から39番目のアミノ酸であるロイシン)が任意のアミノ酸であるペプチドでもあり得る。例えば12番目のアミノ酸及び/又は39番目のアミノ酸がアラニンであるペプチドである。

【0017】
本発明において、上記ペプチドを構成するアミノ酸は、ペプチドが所望のIgG結合性を有する限り、天然アミノ酸であっても、天然アミノ酸の誘導体や非天然アミノ酸であってもよい。好ましくは、上記ペプチドを構成するアミノ酸は天然アミノ酸である。天然アミノ酸の誘導体としては、例えば、ヒドロキシル基が導入されたアミノ酸であるヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン等、アミノ基が導入されたアミノ酸であるジアミノプロピオン酸等が挙げられるがこれらに限定されない。非天然アミノ酸の例としては、主鎖の構造が天然型と異なる、α,α-二置換アミノ酸(α-メチルアラニンなど)、N-アルキル-α-アミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、α-ヒドロキシ酸など;側鎖の構造が天然型と異なるアミノ酸(ノルロイシン、ホモヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するホモアミノ酸(ホモフェニルアラニン、ホモヒスチジンなど)及び側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸など)など;が挙げられるがこれらに限定されない。

【0018】
また、本発明に係るペプチドは、配列番号1の何れかに示すアミノ酸配列のシステインC5とC末端のシステインCがジスルフィド結合して環状化したものが好ましい。環化することでペプチドの立体構造がより安定化する。環化に際しては、好ましくは環状化に利用されるN末端側のシステインと、HLH構造のN末端側のα-ヘリックスのN末端アミノ酸の間に1~3個程度のアミノ酸を有し、HLH構造のC末端側のα-ヘリックスのC末端アミノ酸と環状化に利用されるC末端側のシステインとの間に1~3個程度のアミノ酸が挿入され得る。例えば、配列番号1のアミノ酸配列では、環状化に利用されるN末端のシステインC5とα-ヘリックスのN末端のアラニンA7の間にグルタミンQ6を、環状化に利用されるC末端のシステインC43とα-ヘリックスのC末端のアスパラギン酸D41の間にアラニンA42を有する。また、配列番号1~51に何れかに記載のアミノ酸配列中、N末端から5番目及びC末端の2つのシステインは、相互に結合して環状ペプチドを形成するアミノ酸でそれぞれ置換されていてもよく、置換されたペプチドの相互結合により環化され得る。

【0019】
本発明に係るペプチドは、配列番号1~51の何れかに記載のアミノ酸配列中、N末端から5番目のシステイン及びC末端のシステインのいずれか又は両方が任意のアミノ酸(例えば、荷電を有さないアミノ酸、好ましくはQ)で置換されたペプチドでもあり得る。本発明者らは、配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドと構造が類似し、N末端から5番目及びC末端にシステインを有するペプチドにおいて、5番目のシステインを同じく荷電を有さないグルタミンに置換しても、IgGに対する解離定数に大きな影響がなかったことを確認している。

【0020】
本発明に係るペプチドは、配列番号1~51のアミノ酸配列に1~数個、好ましくは1~3個のアミノ酸が付加又は欠損、置換されたペプチドでもあり得る。アミノ酸配列の全長は38以上、50以下である。

【0021】
上記ペプチドのうち非環状のペプチドは、種々の公知であるペプチド合成方法に従って合成することが出来る。例えばFmoc固相合成法、フラグメント縮合法等の液相合成法が挙げられる。操作が簡便である点から、固相合成法が好ましく用いられる。また、環状のペプチドは、非環状のペプチドを得た後これを環化して得ることができる。例えば、アミノ酸配列中の2つのシステイン間に、公知の手法によってジスルフィド結合を形成することにより環化できる。また、公知の手法によって、分子内でチオエステルやチオエーテル結合を形成することによっても環化できる。さらに、例えば高度希釈法など公知の手法により分子内でカルボキシ基とアミノ基を縮合させることで環化してもよい。

【0022】
非環状ペプチドは、上述の固相合成法及び液相合成法等の化学合成法によらず、遺伝子工学的手法を用いることでも製造できる。例えば、前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸を適切な発現ベクターに組み込み、得られた発現ベクターによって適切な宿主細胞(例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、大腸菌)を形質転換する。そして、上記宿主細胞をペプチドの発現に適する条件下で培養した後、培養物からペプチドを分離すればよい。

【0023】
以下、下記の実施例に基づき本願発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されないのは言うまでもない。
【実施例1】
【0024】
〔ペプチドライブラリーの作製〕
特許文献1に記載されたHLH構造を有する非環状ペプチド(配列番号52に示すアミノ酸配列を有する)に種々の改変を加えて、環状構造を有する環状ペプチドライブラリー(配列番号1に示すアミノ酸配列を有する)を作製した(図1参照)。なお、ここでは配列番号1に示すアミノ酸配列中のX16,X19,X29,X32はPhe、Leu、lle、Met、Valの何れかのアミノ酸となり、X17,X20,X30,X33は天然タンパク質に見いだされる20種類のアミノ酸のいずれか1種となり、X26は、Gly又はGlu若しくは欠失するようにライブラリーを構成した。ペプチドライブラリーを構成する各ペプチドはα-ヘリックス部分のN末側にペプチドを環化するための2つのアミノ酸(C5とQ6)と3つのアミノ酸からなるスペーサ(N2、M3、Q4)を介して結合したフェニルアラニン(F1)と、α-ヘリックス部分のC末側にペプチドを環化するための2つのアミノ酸(A42とC43(X26が欠失している場合は41番目のA及び42番目のCを示す。))を有し、2つのシステインC5、C43はジスルフィド結合している。
【実施例1】
【0025】
(1)L-Random酵母表層ペプチドライブラリーの構築
overlap extension PCR および2nd PCRにより上記で設計したアミノ酸配列を有するL-Random ペプチドライブラリーをコードした遺伝子断片を作製し、制限酵素NcoIおよびXhoIで処理した。同様に処理した酵母表層提示用ベクターpYD11-BxXNとライゲーションすることによりL-Randomペプチドライブラリーのプラスミドを構築した。大腸菌にエレクトロポレーション法により形質転換して増幅した後、酵母細胞に酢酸リチウム法により形質転換することで9.4×106のライブラリーサイズをもつL-Random酵母表層提示ペプチドライブラリーを得た。
【実施例1】
【0026】
(2)human IgG-Fcに対するスクリーニング
得られたライブラリーに対してセルソーターBD FACSAria(登録商標)II(BDバイオサイエンス社)を用いてhuman IgG-Fcに対する結合性スクリーニングを行った。ペプチドファイブラリーをSG/RCAA培地(で培養することでペプチドの細胞表層への提示を誘導した。PBSで洗浄した後、bio-human IgG-Fc(最終濃度100nM:Bethyl laboratory社)およびmouse anti-FLAG抗体(Sigma社)と反応させた後、SA-PE(Streptavidin-R-phycoerythrin:Invitrogen社)およびanti-mouse-Alexa488(Alexa Flour(商標名)488 goat anti-mouse IgG(H+L):Invitrogen社)を結合させることで蛍光ラベルした。BD FACSAria(商標名)を用いて3回ソートした。
【実施例1】
【0027】
このとき、human IgG-Fcに対する解離定数(KD)が既知である配列番号53で示されるアミノ酸配列(FNMQCQAEFYEILHESAADEGGGGGGGKEAARNAKIAALRDAC)を有するペプチド(FK60)が提示したクローンの蛍光強度よりも高い領域(P5領域)に設定して、スクリーニングを行った。なお、このペプチドFK60は、配列番号52に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを改変することで得られた。
【実施例1】
【0028】
Round1では、1×108細胞をBulk sortモードによりソートし、全体の0.4%に設定したP5エリアに存在する細胞群1.4×105細胞を回収した。Round2ではRound1で回収した細胞を全てBurk sortモードでソートし、P5エリアを全体の9%に設定して9000細胞を回収した。さらに、Round3ではRound2で回収した細胞をsingle-cell sortモードでソートし、P5エリアを全体の13%に設定して96細胞を96 well SDプレート培地に回収した(図2参照)。RoundごとにP5のエリアを狭めて、蛍光強度の高い酵母細胞のみを選別した。これを30℃で2日間培養した。
【実施例1】
【0029】
(3)human IgG-Fc結合性クローンの活性解析
前記(2)のRound3で96well SDプレートに回収した酵母細胞96クローンをSDCAA培地で培養して増幅させた後、SG/RCAA培地で再び提示を誘導して、それぞれのbio-human IgG-Fcに対する結合活性を、蛍光プレートリーダー(Varioskan)を用いて測定した。結合活性を示すR-PEの相対蛍光強度(RFU)と同時に測定したペプチドの提示量を示すAlexa-488の相対蛍光強度(RFU)との関係を図にプロットした(図3参照)。そのうち、R-PEの相対蛍光強度の高い約50のクローン(図に薄い黒丸で示される)を選択して、コロニーPCRによってそれぞれのクローンが保持するペプチドをコードした遺伝子断片を増幅させた。得られた遺伝子断片を鋳型としてシーケンシング反応を行い、遺伝子断片のDNA配列を解析することで提示するクローンが保持するペプチドのアミノ酸配列を決定した(表1)。そして、スクリーニングによって得られたペプチドのアミノ酸の出現頻度をweb logoを用いて調べたところ、図4に示す結果となった。
【実施例1】
【0030】
【表1】
JP2017159655A1_000003t.gif
【実施例1】
【0031】
(4)human IgG-Fc結合性ペプチドの結合性
(解離定数の算出)
アミノ酸配列を決定したhuman IgG-Fc結合性ペプチドのうちランダムに5個(FK6014、FK6032、FK6053、FK6063、FK6065)を選択し、アミドレジンを用いて0.023μmolスケールでFmoc固相合成法によりそれぞれを化学合成し、SPR法を用いてhuman IgG-Fcに対する結合活性測定を行った。
【実施例1】
【0032】
100mgのFmoc-PAL-PEG-PS(商標名)アミドレジン(置換率:0.2 mmol/g)をリアクションベッセル量り取り、ペプチド自動合成機PSSM-8(SHIMAZU社)のプロトコルに従ってそれぞれのFmocアミノ酸(10equiv.)を、HCTU(10equiv)、DIEA(20equiv)、30%ピペリジン、5%無水酢酸を調製して、各ペプチドを化学合成した。終了後、レジンをジエチルエーテルで洗浄し乾燥させ、クリベージ溶液(TFA:EMS:Anisole:EDT=93:3:3:1)を2mL添加して、室温で4時間反応させた。クリベージ溶液をろ過したのち、氷冷したジエチルエーテルを過剰量添加することでペプチドを析出させた。氷上で10分間静置し、6500rpm、4℃で10分間遠心分離して上清を捨てた。回収した沈殿物に再び氷冷したジエチルエーテルを加えて激しく撹拌させた後、氷上で10分間静置して6500rpm、4℃で10分間遠心分離して上製を除去することで沈殿物を洗浄した。この洗浄行為を2回繰り返した。沈殿物を減圧下で乾燥させたのち、2 mLの滅菌水に溶解し、0.22μmのフィルターでろ過してペプチド溶液(非環状ペプチド)を得た。ペプチド溶液をRP-HPLCで精製し、MALDI-TOF-MSで質量分析したところ、ほぼ計算値どおりの実測値が得られたことで目的とするペプチドが合成されたことを確認した。
【実施例1】
【0033】
その後、滅菌水で溶解したペプチド溶液を30mM Tris-HCl(pH8.5)に常温で一晩かけて滴下しながら撹拌することで酸化反応させ、分子内ジスルフィド架橋を施した。反応溶液をRP-HPLCを用いて上記と同様の条件で精製した。MALDI-TOF-MSで質量分析したところ、ほぼ計算値どおりの実測値が得られたことで目的とするペプチドが合成されたことを確認した。
【実施例1】
【0034】
得られた環状ペプチドを、Biacore T200(GEヘルスケア社)とThiol coupling kit(GE ヘルスケア社)を用いて5つのペプチドの各濃度における結合活性を測定した。全ての工程において、ランニングバッファーはHBS-EP+を用いた。Serise S CM5 センサーチップに、human IgG-Fcの固定化用としてフローセル2を用いて、流速10μL/min、25℃の条件で行った。予備試験によりhuman IgG-Fcの固定化に最適なpHを決定した後、フローセル2に前記キット中のEDCとNHSを混合した(容量比で1:1)液を調製し、7分間センサーチップに流すことでカルボキシル基を活性化させた。5μg/mL human IgG-Fcを10mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で調製し、活性化させたフローセル2に7分間流すことでhumanIgG-Fcを固定化した。固定化量は2000RUであった。未反応の活性化されたカルボキシル基はエタノールアミンを7分間流すことによって、全て不活性化した。フローセル1をEDCおよびNHSによる活性化とエタノールアミンによるブロッキングを施すことでリファレンスセルとして使用した。各ペプチドをHBS-EP+バッファーで0.3125、0.625、1.25、2.5、5、10、20、40μMに段階希釈し,流速30μL/min.でそれぞれの結合活性を測定した。測定結果は、BIA evaluation 4.1ソフトウェアで、平衡値解析により解離定数(KD)を算出した。その結果を表2に示した。
【実施例1】
【0035】
5つのペプチドはどれも非常に高い結合活性(FK6014:K=9nM、FK6032:K=8nM、FK6053:K=5nM、FK6063:K=12nM、FK6065:K=8nM)を示した。比較対照としたペプチドFK60(K=21μM)や非特許文献1に記載された環状化されたペプチド(K=19μM)に比べて1000倍以上結合活性が向上した。
【実施例1】
【0036】
【表2】
JP2017159655A1_000004t.gif
【実施例1】
【0037】
(CDスペクトルの測定)
各ペプチドのCDスペクトルを測定した。ペプチドを20mM Phosphate buffer(pH7.4)に最終濃度20μMとなるように調製し、円二色性分散計J-720(JASCO社)、温度コントローラー Peltier PTC-423L(TOMY SEIKO)を用いて、20℃の温度における190nmから260nmの波長でのCDスペクトルを0.2nm間隔で測定した。その結果を図5に示す。それぞれのペプチドは208nmおよび222nmに明瞭な負の極大を有しており、安定なα-ヘリックス構造を保持していることがわかった。α-ヘリックスの内側の適切な位置に疎水性アミノ酸が配置されるようデザインしたことにより、α-ヘリックス構造の形成に必要な両親媒性を獲得し、安定な立体構造を形成しているものと推測される。
【実施例2】
【0038】
次に、2本のα-ヘリックスの内側に位置すると考えられる数カ所のアミノ酸をそれぞれアラニンに置換して、IgGに対する結合性を測定した。測定に際しては、実施例1で得られたペプチドのうち、最もIgGに最も高い結合活性を示したFK6053を用いた。結合性は、当該ペプチドのN末端のアミノ酸にチオレドキシンを融合したチオレドキシン融合ペプチドを用い、FK6053を用いた場合との相対比較を行った。下記方法に従いチオレドキシン融合ペプチドを作製し、実施例1に記載の方法に準じて表面プラズモン共鳴法によりHuman IgG-Fcに対する結合活性(解離定数K)を測定した。FK6053のチオレドキシン融合ペプチドのアミノ酸配列を配列番号54に示した。置換したアミノ酸はFK6053におけるN末端から12番目のイソロイシン(I12)、同じく19番目のバリン(V19)、同じく20番目のアルギニン(R20)、同じく29番目のイソロイシン(I29)、同じく30番目のグルタミン(Q30)、同じく32番目のロイシン(L32)、同じく33番目のアスパラギン(N33)、同じく39番目のロイシン(L39)である。置換後のFK6053のペプチドに対応するアミノ酸配列及び比較試験の結果を表3に示した。結果は、FK6053における結合活性と同程度の場合を「+++」とし、結合活性がその1/10~1/100となった場合を「++」として表した。IgGに対して高い結合性を示した場合、アラニンと置換した位置のアミノ酸は、その安定な立体構造からIgGへの結合性に影響を与えることが小さく、当該位置のアミノ酸は任意のアミノ酸に置換し得るものと考えられる。
【表3】
JP2017159655A1_000005t.gif
【実施例2】
【0039】
(結合活性測定用チオレドキシン融合ペプチドの作製)
ペプチドFK6053とその変異体のTrx融合ペプチドを、pETシステムで合成した。ホスト大腸菌には、BL21 CodonPlus (DE3)-RPを、ベクターにはpET32a(+)(Navagen)を使用した。FK6053の遺伝子が導入されたpET32a(+)ベクターを鋳型として、メガプライマー法により変異体のDNAを作製し、PCRを実施した。反応終了後、3%アガロース電気泳動で分離し、目的のバンドを切り出し、Gel Extraction Kit(QIAGEN)で精製した。精製したPCR産物をメガプライマーとし、再びPCRを実施した。反応終了後、先ほどと同様に目的のPCR産物をアガロースゲル電気泳動に供し、目的のバンドを切り出し精製した。精製したDNAは、制限酵素(NcoIとXhoI)で処理し、同様に制限酵素処理したpET32a(+)とライゲーションすることでFK6053変異体のTrx融合ペプチド発現用ベクターを構築した。構築したベクターを用いて形質転換したホスト大腸菌をLB培地/Ampで培養した。その後、培地を18℃に冷却し、10μLの1M IPTGを加え、18℃で一晩振とう培養した。培養終了後、培養液を遠心(4℃、6000g、10分)して沈殿をPBSに懸濁した。大腸菌を超音波破砕して遠心分離した後、その上精をフィルター(0.45μm)でろ過して、精製用サンプルを得た。精製用サンプルを、25mMイミダゾールで平衡化したNi Sepharose High Performance (GE Healthcare)をした充填カラムに吸着させた後、500mMイミダゾールで溶出した。得られた溶出液をPBS中4℃でセルロース膜(Spectra/Par MWCO:6-8000、SpectrumLaboratories Inc.)で透析し、その後遠心フィルター(Amicon Ultra-0.5, 3K device, Millipore)を用いて濃縮し、結合活性用のサンプルとした。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、IgGに対して強い結合性を有するIgG結合性ペプチドを提供する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4