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Specification :(In Japanese)無加湿系プロトン伝導膜,その製法及び燃料電池

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)再公表特許(A1)
Date of issue Feb 28, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)無加湿系プロトン伝導膜,その製法及び燃料電池
IPC (International Patent Classification) H01M   8/1044      (2016.01)
H01M   8/10        (2016.01)
H01M   8/1004      (2016.01)
H01M   8/1025      (2016.01)
H01M   8/1069      (2016.01)
H01B   1/06        (2006.01)
C08L 101/02        (2006.01)
C08K   5/06        (2006.01)
FI (File Index) H01M 8/1044
H01M 8/10 101
H01M 8/1004
H01M 8/1025
H01M 8/1069
H01B 1/06 A
C08L 101/02
C08K 5/06
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Total pages 20
Application Number P2018-513087
International application number PCT/JP2017/012358
International publication number WO2017/183397
Date of international filing Mar 27, 2017
Date of international publication Oct 26, 2017
Application number of the priority 2016085786
Priority date Apr 22, 2016
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Designated state AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】野呂 篤史
【氏名】梶田 貴都
【氏名】森 貴裕
【氏名】松下 裕秀
Applicant (In Japanese)【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
Representative (In Japanese)【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
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Theme code 4J002
5G301
5H126
F-term 4J002BE04X
4J002BJ00W
4J002BP01W
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5H126AA05
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5H126JJ08
Abstract (In Japanese) 本発明の無加湿系プロトン伝導膜は、ポリマーと、プロトン伝導性物質とを備えている。ポリマーは、ガラス転移温度又は融解温度がプロトン伝導膜の使用温度よりも高いガラス状又は結晶性の第1の部位と、非共有結合可能な第2の部位とを含む。プロトン伝導性物質は、ポリマーの第2の部位に非共有結合可能なプロトン放出・結合部位とプロトンに配位可能なプロトン配位部位とを相互作用し合う異なる分子に別々に含むか同一分子内に含む。プロトン伝導性物質のプロトン放出・結合部位が結合した第2の部位とプロトン伝導性物質とを含むプロトン伝導混合相は、プロトン伝導膜の使用温度より低く、プロトン放出・結合部位は、ポリマーの第2の部位よりも過多に存在している。
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
無加湿な状態でプロトン伝導性を示すプロトン伝導膜であって、
ガラス転移温度又は融解温度が前記プロトン伝導膜の使用温度より高いガラス状又は結晶性の第1の部位と他の分子に非共有結合可能な官能基を有する第2の部位とを含むポリマーと、
プロトンを放出可能で前記ポリマーの第2の部位に非共有結合可能な官能基を有するプロトン放出・結合部位とプロトンに配位可能なプロトン配位部位とを相互作用し合う異なる分子に別々に含むか同一分子内に含むプロトン伝導性物質と、
を備え、
前記プロトン伝導性物質の前記プロトン放出・結合部位が結合した前記第2の部位と前記プロトン伝導性物質とを含むプロトン伝導混合相のガラス転移温度は、前記プロトン伝導膜の使用温度より低く、
前記プロトン放出・結合部位は、前記ポリマーの第2の部位よりも過多に存在している、
無加湿系プロトン伝導膜。
【請求項2】
前記第2の部位は前記官能基として塩基性基を有し、前記プロトン放出・結合部位は前記官能基として酸性基を有する、
請求項1に記載の無加湿系プロトン伝導膜。
【請求項3】
前記塩基性基は含窒素複素環であり、前記酸性基はカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基及びスルホニルイミド基の少なくとも1つである、
請求項2に記載の無加湿系プロトン伝導膜。
【請求項4】
前記酸性基はスルホン酸基及びスルホニルイミド基の少なくとも1つである、
請求項3に記載の無加湿系プロトン伝導膜。
【請求項5】
前記プロトン配位部位は、エーテル結合、エステル基、アルコール基、ケトン基及びアミド基の少なくとも1つである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の無加湿系プロトン伝導膜。
【請求項6】
前記プロトン配位部位は、エーテル結合及びアルコール基の少なくとも1つである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の無加湿系プロトン伝導膜。
【請求項7】
前記プロトン伝導性物質は、前記プロトン放出・結合部位を含む物質Xと、前記プロトン配位部位を含み前記物質Xと相互作用し合う非水の物質Yとを混合した物質であり、
前記物質Xは、スルホン酸基を側鎖に有するポリマー及びスルホニルイミド基を有するフッ素化合物の少なくとも一つであり、
前記物質Yは、エーテル結合を有するプロトン性溶媒及びアルコール基を有する重合体の少なくとも一つである、
請求項1~6のいずれか1項に記載の無加湿系プロトン伝導膜。
【請求項8】
前記プロトン伝導性物質は、前記プロトン放出・結合部位と前記プロトン配位部位とを同一分子内に含む単一の純物質であり、エーテル結合を有するジスルホン酸である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の無加湿系プロトン伝導膜。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の無加湿系プロトン伝導膜を製造する方法であって、
(a)前記ポリマーと前記プロトン伝導性物質とを溶媒に溶解又は分散させることにより混合溶液又は分散液を得る工程と、
(b)前記混合溶液中又は前記分散液中の溶媒を蒸発させることにより前記無加湿系プロトン伝導膜を得る工程と、
を含む無加湿系プロトン伝導膜の製法。
【請求項10】
アノードとカソードとの間に請求項1~8のいずれか1項に記載の無加湿系プロトン伝導膜が配置された、燃料電池。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、無加湿系プロトン伝導膜,その製法及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の基本パーツは、プロトン伝導性の固体電解質膜とそれを挟み込む触媒を含有した電極とから構成される。固体電解質膜としては、ナフィオン(登録商標、以下同じ)などのパーフルオロスルホン酸膜が古くから知られている。しかし、パーフルオロスルホン酸膜で高いプロトン伝導率を実現するには、加湿状態とすることが不可欠となる。そのため、燃料電池で発電する際には加湿システムを使用しなければならず、加湿システムの組み込みにより燃料電池装置全体が大きくなったり、手間やメンテナンスコストもかかってしまっていた。こうした状況から、無加湿系での発電が検討されている。近年、無加湿系プロトン伝導膜として、ポリベンゾイミダゾール/リン酸混合系が開発されている(例えば特許文献1、非特許文献1参照)。この系では、イミダゾールユニットやリン酸イオンが一時的なプロトンキャリアとしての役割をしているとされる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第1996/13872号パンフレット
【0004】

【非特許文献1】J. Electrochem. Soc., Vol.142, No.7, 1995, pp121-123
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリベンゾイミダゾール/リン酸混合系では、発電中にリン酸分子が溶出するため、長時間使用するとプロトン伝導率が低下するという問題があった。そのため、ポリベンゾイミダゾール/リン酸混合系以外の無加湿系プロトン伝導膜の開発が望まれていた。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、新規な無加湿系プロトン伝導膜を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無加湿系プロトン伝導膜は、無加湿な状態でプロトン伝導性を示すプロトン伝導膜であって、
ガラス転移温度又は融解温度が前記プロトン伝導膜の使用温度よりも高いガラス状又は結晶性の第1の部位と非共有結合可能な官能基を有する第2の部位とを含むポリマーと、
プロトンを放出可能で前記ポリマーの第2の部位に非共有結合可能な官能基を有するプロトン放出・結合部位(第3の部位)とプロトンに配位可能なプロトン配位部位(第4の部位)とを相互作用し合う異なる分子に別々に含むか同一分子内に含むプロトン伝導性物質と、
を備え、
前記プロトン伝導性物質の前記プロトン放出・結合部位が結合した前記第2の部位と前記プロトン伝導性物質とを含むプロトン伝導混合相のガラス転移温度は、前記プロトン伝導膜の使用温度より低く、
前記プロトン放出・結合部位は、前記ポリマーの第2の部位よりも過多に存在している、
ものである。
【0008】
本発明の無加湿系プロトン伝導膜では、第1の部位のガラス転移温度又は融解温度はプロトン伝導膜の使用温度より高く、プロトン伝導性物質のプロトン放出・結合部位に結合した第2の部位とプロトン伝導性物質とを含むプロトン伝導混合相のガラス転移温度はプロトン伝導膜の使用温度より低い。そのため、本発明の無加湿系プロトン伝導膜の使用中、第1の部位は固体状態であるのに対して第2の部位とプロトン伝導性物質とを含むプロトン伝導混合相は溶融状態(ゴム状態)であり、全体としては流動せず形状を維持するプロトン伝導性ソフトエラストマー膜となる。また、プロトン放出・結合部位はポリマーの第2の部位よりも過多に存在しているため、プロトン放出・結合部位から遊離プロトンが生じやすく、このことがプロトン伝導に大きく寄与する。更に、本発明の無加湿系プロトン伝導膜は、プロトン伝導性物質のうちプロトン配位部位が一時的なプロトンキャリアとしての役割を担いかつ高い分子運動性を示すため、無加湿状態であっても良好なプロトン伝導性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】無加湿系プロトン伝導膜の概略構成図。
【図2】無加湿系プロトン伝導膜の概略構成図。
【図3】燃料電池10の断面図。
【図4】実施例1のプロトン伝導性ソフトエラストマー膜の模式図。
【図5】実施例4のプロトン伝導性ソフトエラストマー膜の模式図。
【図6】実施例5のプロトン伝導性ソフトエラストマー膜の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の好適な実施形態について説明する。

【0011】
本実施形態の無加湿系プロトン伝導膜は、図1又は図2に例示するように、ポリマーと、プロトン伝導性物質とを備えている。ポリマーは、ガラス転移温度又は融解温度がプロトン伝導膜を使用する温度よりも高いガラス状又は結晶性の第1の部位と、非共有結合可能な官能基を有する第2の部位とを含んでいる。プロトン伝導性物質は、プロトンを放出可能でポリマーの第2の部位に非共有結合可能なプロトン放出・結合部位(第3の部位)と、プロトンに配位可能なプロトン配位部位(第4の部位)とを、相互作用し合う異なる分子に別々に含むか、同一分子内に含むものである。プロトン伝導性物質のプロトン放出・結合部位に結合した第2の部位とプロトン伝導性物質とを含むプロトン伝導混合相のガラス転移温度は、無加湿系プロトン伝導膜の使用温度より低い。プロトン放出・結合部位はポリマーの第2の部位よりも過多に存在している。

【0012】
ポリマーの第1の部位は、ガラス転移温度又は融解温度が無加湿系プロトン伝導膜の使用温度(例えば80℃とか95℃)よりも高いものであり、無加湿系プロトン伝導膜の使用温度ではガラス状又は結晶になっている。第1の部位は、特に限定するものではないが、例えば、オリゴスチレン類、オリゴアクリル酸エステル類、オリゴメタクリル酸エステル類、オリゴオレフィン類、オリゴスルホン類、オリゴアリレート類、オリゴエーテルケトン類、オリゴエーテルイミド類、オリゴフェニレンスルフィド類、オリゴフェニレンエーテル類、オリゴカーボネート類、オリゴベンゾイミダゾール類、オリゴフルオロエチレン類などが挙げられる。このうち、オリゴスチレン類としては、オリゴスチレン、オリゴアセチルスチレン、オリゴアニソイルスチレン、オリゴベンゾイルスチレン、オリゴビフェニルスチレン、オリゴブロモエトキシスチレン、オリゴブロモメトキシスチレン、オリゴブロモスチレン、オリゴブトキシメチルスチレン、オリゴ-tert-ブチルスチレン、オリゴブチリルスチレン、オリゴクロロフルオロスチレン、オリゴクロロメチルスチレン、オリゴクロロスチレン、オリゴシアノスチレン、オリゴジクロロスチレン、オリゴジフルオロスチレン、オリゴジメチルスチレン、オリゴエトキシメチルスチレン、オリゴエトキシスチレン、オリゴフルオロメチルスチレン、オリゴフルオロスチレン、オリゴヨードスチレン、オリゴメトキシカルボニルスチレン、オリゴメトキシメチルスチレン、オリゴメチルスチレン、オリゴメトキシスチレン、オリゴパーフルオロスチレン、オリゴフェノキシスチレン、オリゴフェニルアセチルスチレン、オリゴフェニルスチレン、オリゴプロポキシスチレン、オリゴトルオイルスチレン、オリゴトリメチルスチレンなどが挙げられる。オリゴアクリル酸エステル類としては、例えばオリゴアクリル酸アダマンチル、オリゴアクリル酸-tert-ブチル、オリゴアクリル酸-tert-ブチルフェニル、オリゴアクリル酸シアノヘプチル、オリゴアクリル酸シアノヘキシル、オリゴアクリル酸シアノメチル、オリゴアクリル酸シアノフェニル、オリゴアクリル酸フルオロメチル、オリゴアクリル酸メトキシカルボニルフェニル、オリゴアクリル酸メトキシフェニル、オリゴアクリル酸ナフチル、オリゴアクリル酸ペンタクロロフェニル、オリゴアクリル酸フェニルなどが挙げられる。オリゴメタクリル酸エステル類としては、例えば、オリゴメタクリル酸メチル、オリゴメタクリル酸エチル、オリゴメタクリロニトリル、オリゴメタクリル酸アダマンチル、オリゴメタクリル酸ベンジル、オリゴメタクリル酸-tert-ブチル、オリゴメタクリル酸-tert-ブチルフェニル、オリゴメタクリル酸シクロエチル、オリゴメタクリル酸シアノエチル、オリゴメタクリル酸シアノメチルフェニル、オリゴメタクリル酸シアノフェニル、オリゴメタクリル酸シクロブチル、オリゴメタクリル酸シクロデシル、オリゴメタクリル酸シクロドデシル、オリゴメタクリル酸シクロブチル、オリゴメタクリル酸シクロヘキシル、オリゴメタクリル酸シクロオクチル、オリゴメタクリル酸フルオロアルキル、オリゴメタクリル酸グリシジル、オリゴメタクリル酸イソボルニル、オリゴメタクリル酸イソブチル、オリゴメタクリル酸フェニル、オリゴメタクリル酸トリメチルシリル、オリゴメタクリル酸キシレニルなどが挙げられる。オリゴオレフィン類としては、オリゴエチレン、オリゴプロピレン、オリゴα-オレフィンなどが挙げられる。オリゴスルホン類としてはオリゴフェニルスルホン、オリゴエーテルスルホン、オリゴスルホンなどが挙げられる。オリゴアリレート類としてはオリゴアリレートが挙げられる。オリゴエーテルケトン類としてはオリゴエーテルケトン、オリゴエーテルエーテルケトン、オリゴエーテルケトンケトン、オリゴエーテルエーテルケトンケトンなどが挙げられる。オリゴエーテルイミド類としてはオリゴエーテルイミドが挙げられる。オリゴフェニレンスルフィド類としてはオリゴフェニレンスルフィドが挙げられる。オリゴフェニレンエーテル類としてはオリゴフェニレンエーテルが挙げられる。オリゴカーボネート類としてはオリゴカーボネートが挙げられる。オリゴベンゾイミダゾール類としてはオリゴベンゾイミダゾールが挙げられる。オリゴフルオロエチレン類としてはオリゴテトラフルオロエチレン、オリゴクロロトリフルオロエチレン、オリゴフッ化ビニリデンが挙げられる。なお、接頭辞のオリゴはオリゴマーを意味し、数量体~十数量体のことである。オリゴマー以上の多量体、すなわち通常のポリマーも第1の部位として用いることができる。

【0013】
ポリマーの第2の部位は、非共有結合可能な官能基を有する。非共有結合には、水素結合や配位結合、イオン結合などが含まれる(以下同じ)。第2の部位としては、非共有結合可能な官能基を複数有したものでもよく、非共有結合可能な官能基を有するユニットを重合したものでもよい。この場合、非共有結合可能な官能基としては、塩基性基が好ましく、含窒素複素環基がより好ましい。含窒素複素環基としては、ピリジル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、キノリル基、キノオキサリル基、チアジアゾリル基などが挙げられる。例えば、第2の部位がピリジル基を含む場合、ポリビニルピリジン類(官能基はピリジル基)などが挙げられる。ポリビニルピリジン類としては、例えば、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(3-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)などが挙げられる。

【0014】
ポリマーは、少なくとも第1の部位と第2の部位とを有するものであればよく、例えば、第1の部位と第2の部位とを有するブロック共重合体であってもよいし、第1の部位と第2の部位とを有するランダム共重合体やマルチブロック共重合体であってもよい。以下、説明の便宜上、第1の部位をA鎖、第2の部位をB鎖と称する。ABジブロック共重合体の場合、A鎖の平均重合度は、2~10000であることが好ましい。A鎖の平均重合度が下限値未満の場合にはガラス状又は結晶性ドメインを形成しにくいため好ましくなく、上限値を超える場合には試料の取扱いが難しくなるため好ましくない。A鎖の平均重合度は、10~5000であることがより好ましく、30~2000であることが特に好ましい。B鎖の平均重合度は、2~5000であることが好ましい。B鎖の平均重合度が下限値未満の場合にはポリマーとプロトン伝導性物質とを混合しても均一なプロトン伝導混合相を形成しにくいため好ましくなく、上限値を超える場合にはプロトン伝導混合相の酸性度が低くなるため好ましくない。B鎖の平均重合度は、10~1000であることがより好ましく、50~500であることが特に好ましい。ABジブロック共重合体の場合、A鎖とB鎖の組成比は、99:1~10:90であることが好ましい。この範囲を外れると、全体がガラス化したりソフトエラストマーとはならずに流動したりするおそれがあるため、好ましくない。

【0015】
プロトン伝導性物質は、プロトンを放出可能でポリマーの第2の部位に非共有結合可能な官能基を有するプロトン放出・結合部位(第3の部位)とプロトンに配位可能なプロトン配位部位(第4の部位)とを、相互作用し合う異なる分子に別々に含む(図1参照)か、同一分子内に含む(図2参照)ものである。プロトン放出・結合部位としては、ポリマーの第2の部位の官能基が塩基性基の場合には、官能基として酸性基を有することが好ましい。また、酸性基としてはカルボン酸基やリン酸基、スルホン酸基、スルホニルイミド基が挙げられるが、このうちスルホン酸基やスルホニルイミド基が好ましい。プロトン放出・結合部位はポリマーの第2の部位よりも過多に存在している。そのため、プロトン放出・結合部位から遊離プロトンが生じやすく、このことがプロトン伝導に大きく寄与する。プロトン配位部位としては、孤立電子対を含み弱くプロトンと配位するような官能基が好ましく、例えばエーテル結合やエステル基、アルコール基、ケトン基、アミド基などが挙げられるが、このうちエーテル結合やアルコール基が好ましい。

【0016】
プロトン伝導性物質は、プロトン放出・結合部位を含む物質Xと、プロトン配位部位を含み物質Xと相互作用し合う非水の物質Yとを含む混合物であってもよい(図1参照)。物質Xはポリマーの第2の部位に非共有結合し、物質Yは物質Xと相互作用し合うため、物質X、物質Yは共に膜から溶出することがない。物質Xは、特に限定するものではないが、ポリマーの第2の部位の官能基が塩基性基の場合には、官能基として酸性基を有することが好ましい。また、酸性基としてはカルボン酸基やリン酸基、スルホン酸基、スルホニルイミド基が挙げられるが、このうちスルホン酸基やスルホニルイミド基が好ましい。物質Xとしては、スルホン酸基を側鎖に有するポリマーやスルホニルイミド基を有するフッ素化合物などが特に好ましい。スルホン酸基を側鎖に有するポリマーとしては、スルホン酸基を持つパーフルオロアルキル部位を側鎖に有するパーフルオロカーボンのポリマー(例えばナフィオン)が好ましく、スルホニルイミド基を有するフッ素化合物としてはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが特に好ましい。また、物質Yは、プロトン配位部位を含み物質Xと相互作用し合う非水(つまり水以外)の物質であれば、特に限定するものではないが、エーテル結合を有する溶媒や、アルコール基を有する重合体などが好ましい。エーテル結合を有する溶媒としては、エーテル結合を有するプロトン性溶媒が好ましい。こうしたプロトン性溶媒としては、例えば水酸基末端ポリエチレングリコールやテトラエチレングリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、具体的には、ソルヴェイ社(SOLVAY)のFomblinD2(登録商標)、すなわち水酸基両末端パーフルオロポリエーテルやFluorolinkC10(登録商標)、すなわちカルボン酸末端パーフルオロポリエーテルのように、水素原子がフッ素原子に置換されたプロトン性溶媒であってもよい。アルコール基を有する重合体としては、アルコール基を有するアクリル酸系重合体が好ましい。こうしたアクリル酸系重合体は、1種類のモノマーの重合体でもよいし、2種類以上のモノマーの共重合体でもよい。モノマーとしては、例えば、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)、アクリル酸(4-ヒドロキシブチル)などが挙げられる。2種類以上のモノマーを用いる場合、そのうちの少なくとも1つは重合性官能基を2つ以上有するモノマーであることが好ましい。重合性官能基を2つ以上有するモノマーを用いると、アルコール基を有するアクリル酸系共重合体として分岐を有するものが得られるため、プロトン伝導混合相の中の流動性を低減させ、形状保持性を高めることができる。重合性官能基を2つ以上有するモノマーとしては、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。

【0017】
プロトン伝導性物質は、プロトン放出・結合部位とプロトン配位部位とを同一分子内に含む単一の純物質であってもよい(図2参照)。この物質は、プロトン放出・結合部位がポリマーの第2の部位に非共有結合するため、膜から容易に溶出することがない。このようなプロトン伝導性物質としては、特に限定するものではないが、エーテル結合を有するジスルホン酸などが好ましい。このようなジスルホン酸としては、例えば3,3’-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(プロパン1-スルホン酸)などが挙げられる。

【0018】
プロトン伝導性物質とポリマーを選択するにあたっては、プロトン伝導性物質のプロトン放出・結合部位が結合した第2の部位とプロトン伝導性物質とを含むプロトン伝導混合相のガラス転移温度が、無加湿系プロトン伝導膜の使用温度より低くなるように選択する。これにより、プロトン伝導混合相は、使用時に溶融状態になるため、良好にプロトンを伝導することができる。また、膜全体としてソフトエラストマーの特性を有することになる。無加湿系プロトン伝導膜の使用温度は、ポリマーの第1の部位のガラス転移温度又は融解温度が十分に高ければ、例えば50℃に設定してもよいし、100℃に設定してもよいし、150℃を超える温度に設定してもよい。

【0019】
次に、本実施形態の無加湿系プロトン伝導膜を製造する方法について説明する。プロトン伝導性物質として、プロトン放出・結合部位を含む物質Xと、プロトン配位部位を含み物質Xと相互作用し合う非水の物質Yとを含む混合物を用いる場合、以下のようにして無加湿系プロトン伝導膜を製造する。すなわち、まずポリマーを溶媒に溶解又は分散させることによりポリマー溶液又は分散液を調製する。ここで用いる溶媒は比較的容易に蒸発するものが好ましく、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ピリジン系溶媒、水及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。また、物質Xと物質Yとを溶媒に溶解又は分散させることによりプロトン伝導性物質の溶液又は分散液を調製する。ここで用いる溶媒は比較的容易に蒸発するものが好ましく、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ピリジン系溶媒、水及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。そして、ポリマー溶液又は分散液とプロトン伝導性物質の溶液又は分散液とを混合し、その後溶媒を蒸発させることにより無加湿系プロトン伝導膜を得る。物質Yとして、アルコール基を有するアクリル酸系重合体を用いる場合、プロトン伝導混合相の溶融状態を損なわないために、第1の部位及び第2の部位を有するポリマー、物質X、物質Yを構成するアルコール基を有するアクリル酸系重合体の原料となるモノマーを予め混合した後に、重合過程を経るのが好ましく、共重合体の場合は、重合性官能基を2つ以上有して分岐を形成しうるモノマーの使用量も適宜調整することが好ましい。

【0020】
プロトン伝導性物質として、プロトン放出・結合部位とプロトン配位部位とを同一分子内に含む単一の純物質を用いる場合、以下のようにして無加湿系プロトン伝導膜を製造する。すなわち、まずポリマーを溶媒に溶解又は分散させることによりポリマー溶液又は分散液を調製する。ここで用いる溶媒は比較的容易に蒸発するものが好ましく、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ピリジン系溶媒、水及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。また、プロトン放出・結合部位とプロトン配位部位とを同一分子内に含む単一の純物質を溶媒に溶解又は分散させることによりプロトン伝導性物質の溶液又は分散液を調製する。ここで用いる溶媒は比較的容易に蒸発するものが好ましく、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ピリジン系溶媒、水及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。プロトン伝導性物質の溶液又は分散液には、1,3-プロパンジオールやトリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、水酸基両末端ポリエチレングリコールなどのアルコールが含まれていてもよい。そして、ポリマー溶液又は分散液とプロトン伝導性物質の溶液又は分散液とを混合し、その後溶媒を蒸発させることにより無加湿系プロトン伝導膜を得る。

【0021】
次に、本実施形態の無加湿系プロトン伝導膜を利用した燃料電池について、図3を参照しながら説明する。図3は燃料電池10の断面図である。燃料電池10は、上述した無加湿系プロトン伝導膜3の両面に電極4,5が配置された膜電極アセンブリ(Membrane Electrode Assembly,以下MEAという)2と、MEA2を両面から挟み込んだ一対のセパレータ6,7とを備えている。MEA2は、無加湿系プロトン伝導膜3を二つの電極、つまり燃料極であるアノード4と酸素極であるカソード5とで挟みこんだものである。アノード4及びカソード5は、それぞれ触媒層4a,5aとガス拡散層4b,5bとによって構成されている。触媒層4a,5aは、無加湿系プロトン伝導膜3に接触する側に位置し、白金微粒子を担持させた導電性カーボンブラックにより形成されている。一方、ガス拡散層4b,5bは、触媒層4a,5aに積層され、炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロスにより形成されている。なお、触媒層4a,5aに含まれる白金は、水素をプロトンと電子に分けるのを促進したり酸素とプロトンと電子から水を生成する反応を促進する作用を有するものであるが、同様の作用を有するものであれば白金以外のものを用いてもよい。また、ガス拡散層4b,5bは、カーボンクロスのほか、炭素繊維からなるカーボンペーパーまたはカーボンフェルトによって形成してもよく、十分なガス拡散性および導電性を有していればよい。一対のセパレータ6,7は、それぞれガス不透過の導電性部材(例えばカーボンや金属)により形成されている。一方のセパレータ6には、MEA2のアノード4と接触する面に燃料ガスを通過させる燃料ガス通路6gが形成されている。もう一方のセパレータ7には、MEA2のカソード5と接触する面に酸化ガスを通過させる酸化ガス通路7gが形成されている。

【0022】
次に、燃料電池10の発電について説明する。燃料電池10を発電させるには、燃料電池10の外部から、燃料ガスとして水素を燃料ガス通路6gへ供給すると共に、酸化ガスとしてエアを酸化ガス通路7gへ供給する。燃料ガス通路6gを通過する水素は、アノード4のガス拡散層4bで拡散されて触媒層4aに至り、この触媒層4aでプロトンと電子に分かれる。このうちプロトンは無加湿系プロトン伝導膜3を伝導してカソード5に移動し、電子は図示しない外部回路を通ってカソードに移動する。酸化ガス通路7gを通過するエアは、カソード5のガス拡散層5bで拡散されて触媒層5aに至る。そして、カソード5でプロトンと電子とエア中の酸素とが反応して水が生成し、この反応により起電力が生じる。このように、燃料電池10によれば、無加湿系プロトン伝導膜3は無加湿のままプロトン伝導性を示すため、膜を加湿器で加湿する必要がない。

【0023】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の実施例について説明する。各実施例のプロトン伝導性ソフトエラストマー膜が本発明の無加湿系プロトン伝導膜に相当する。表1に各実施例、各比較例の結果をまとめた。なお、以下の実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0025】
[実施例1]
[1]プロトン伝導性ソフトエラストマー膜の調製
リビングアニオン重合により合成されたポリスチレン-b-ポリ(4-ビニルピリジン)ブロック共重合体(S4VPと称することとする)をポリマーソース社(Polymer Source Inc)より購入した。ポリスチレンの平均重合度は2115、ポリ(4-ビニルピリジン)の平均重合度が143であった。このS4VP51mgを重量比7/3のテトラヒドロフラン(THF)/メタノール(MeOH)混合溶媒2.0gに溶解した。一方で、アルドリッチ社(Aldrich)より購入した10wt%のナフィオン(等価質量=1000)分散水溶液2.30gを10mL容量のテフロンビーカー(テフロンは登録商標)中に入れ、70℃のホットプレート上に48時間載せておくことで水を蒸発させ、これにテトラエチレングリコール(TEG)を240mg加え、さらに重量比6/4のTHF/MeOH混合溶媒2.0gを添加することで、ナフィオンをTEG/THF/MeOH中に溶解させた。S4VP/THF/MeOHの溶液と、ナフィオン/TEG/THF/MeOHの溶液を混合したところ、沈殿は生じず、混合液を60℃のホットプレート上に2日間載せておくことでTHF/MeOHを蒸発させてキャストし、ナフィオン/TEG/S4VPの重量比がおおよそ4.5/4.5/1のプロトン伝導性ソフトエラストマー膜を得た。ナフィオンのスルホン酸基は、S4VPのピリジル基に対して計算上、約7.4倍存在していることになる。
【実施例】
【0026】
このプロトン伝導性ソフトエラストマー膜の模式図を図4に示す。図4中、ポリスチレン部位がポリマーの第1の部位に相当し、ポリ(4-ビニルピリジン)部位がポリマーの第2の部位に相当し、ナフィオンがプロトン放出・結合部位を含む物質Xに相当し、TEGがプロトン配位部位を含む物質Yに相当する。ポリスチレンのTg(ガラス転移温度)は約100℃、ポリ(4-ビニルピリジン)のTgは約150℃、ナフィオンのTgは約130℃、TEGの融点は約-6℃である。ポリ(4-ビニルピリジン)のピリジル基とナフィオン中の一部のスルホン酸基とはイオン結合しており、ナフィオン中の一部のスルホン酸基とTEGのエーテル結合の酸素原子とは静電相互作用により弱く結合しており、さらに一部のスルホン酸基からはプロトンが遊離し、スルホネートイオンとなっている。実施例1では、プロトン伝導混合相(図4の1点鎖線で囲んだ部分)は、ナフィオンとTEGとポリ(4-ビニルピリジン)とを含む混合物であり、ポリスチレンに固定化されている。プロトン伝導混合相のTgは室温以下であり、交流インピーダンス測定の温度(80℃や95℃、下記[2]参照)では溶融状態である。なお、測定温度は、プロトン伝導性ソフトエラストマー膜の使用温度とみなすことができる。
【実施例】
【0027】
[2]交流インピーダンス測定
厚さ0.1mm程度の白金網を電極として用いた。電極間距離を0.50cmとし、プロトン伝導性ソフトエラストマー膜を電極で挟み込んだ。膜の厚みは0.04cm、膜の幅は0.32cmであった。電極で挟み込んだ状態の測定用試料を自然対流式定温恒温乾燥器中に入れて設定温度を60℃とし、6時間程度試料を乾燥させた。その後乾燥器の設定温度(測定温度)を80℃として乾燥器内温度を安定させ、電圧を80mV、周波数を1000000Hzから1Hzで変化させて無加湿条件下で交流インピーダンス測定を行った。測定装置はエフアールエー(FRA)オプション付きのポテンショ/ガルバノスタットVERSASTAT4-400(プリンストン・アプライド・リサーチ(Prinston Applied Research))を用いた。測定試料の抵抗値をCole-ColeプロットのX軸の切片から読み取ったところ、5.0×104Ωであった。プロトン伝導率=電極間距離/(膜の厚み×膜の幅×抵抗値)の関係式よりプロトン伝導率を求めたところ、7.8×10-4S/cmであった。次に、交流インピーダンス測定の測定温度を95℃としたところ、抵抗値は3.1×104S/cmであり、プロトン伝導率は1.3×10-3S/cmであった。温度を80℃から95℃に上げることでプロトン伝導率が大きくなったが、これは温度を上げることにより溶融状態のプロトン伝導混合相の粘度が下がってプロトン伝導性が向上したことによると考えられる。なお、得られたプロトン伝導性ソフトエラストマー膜は、測定中、全体としては流動せず形状を維持していた。
【実施例】
【0028】
【表1】
JP2017183397A1_000003t.gif
【実施例】
【0029】
[比較例1]
10wt%のナフィオン(等価質量=1000)分散水溶液2.52gを10mL容量のテフロンビーカー中に入れ、70℃のホットプレート上に48時間載せておくことで、水を蒸発させた。これにTEGを240mg加え、さらに重量比6/4のTHF/MeOH混合溶媒2.0gを添加することでナフィオンをTEG/THF/MeOH中に溶解させた。この溶液を60℃のホットプレート上に2日間載せてTHF/MeOHを蒸発させてキャストしたところ、ナフィオンとTEGのみからなる、室温において均一な粘土状混合物が得られた。無加湿条件下での交流インピーダンス測定のために上記粘土状混合物を50℃の自然対流式定温恒温乾燥器中に入れたところ流動し、固体状態でのプロトン伝導率を決定することができなかった。比較例1では、プロトン伝導混合相は、ナフィオンとTEGとの混合物であるが、このプロトン伝導混合相を支える固体相がなかっため、50℃では流動してしまったと考えられる。
【実施例】
【0030】
[比較例2]
ポリマーソース社より購入した、ポリスチレンの平均重合度が2115、ポリ(4-ビニルピリジン)の平均重合度が143のS4VP75mgを重量比7/3のTHF/MeOH混合溶媒2.0gで溶解した。一方で、10wt%のナフィオン(等価質量=1000)分散水溶液1.53gを10mL容量のテフロンビーカー中に入れ、70℃のホットプレート上に48時間載せておくことで水を蒸発させ、これに重量比6/4のTHF/MeOH混合溶媒2.0gを添加することでナフィオンをTHF/MeOH中に溶解させた。S4VP/THF/MeOH溶液と、ナフィオン/THF/MeOH溶液を混合したところ、沈殿は生じず、混合液を60℃のホットプレート上に2日間載せておくことで、THF/MeOHを蒸発させてキャストし、固体膜を得た。交流インピーダンス測定のために、厚みが0.04cm、幅が0.32cmの膜を用意し、電極間距離を0.50cmとして、膜を上下から電極で挟み込んで自然対流式定温恒温乾燥器中に入れた。設定温度を80℃として乾燥器内温度を安定させ、電圧を80mV、周波数を1000000Hzから1Hzで変化させて無加湿条件下で交流インピーダンス測定を行った。抵抗値は極めて大きく、プロトン伝導率は極めて低いことが分かった。比較例2では、プロトン伝導混合相に相当するのはナフィオンとポリ(4-ビニルピリジン)との混合物である。ナフィオンとポリ(4-ビニルピリジン)との混合物のTgは理論上両物質のTg以上、すなわち130℃以上であり、無加湿で80℃という条件では溶融状態ではなく固体状態であるため、ほとんどプロトンを伝導しなかったと考えられる。
【実施例】
【0031】
[実施例2]
実施例2では、実施例1の[1]において、S4VPを101mg使用し、10wt%のナフィオン(等価質量=1000)分散水溶液を2.00g使用し、TEGを199mg使用したこと以外は、実施例1と同様にしてプロトン伝導性ソフトエラストマー膜を作製した(ナフィオン/TEG/S4VPの重量比がおおよそ4/4/2)。ナフィオンのスルホン酸基は、S4VPのピリジル基に対して計算上、約3.3倍存在していることになる。実施例1の[2]において、膜の厚みを0.06cm、膜の幅を0.33cmとした以外は実施例1と同様にして交流インピーダンス測定を行った。80℃での抵抗値は1.2×105Ωであり、プロトン伝導率は2.3×10-4S/cmであった。95℃での抵抗値は8.3×104Ωであり、プロトン伝導率は3.3×10-4S/cmであった。実施例2では、プロトン伝導混合相は、実施例1と同様、ナフィオンとTEGとポリ(4-ビニルピリジン)との混合物であり、ポリスチレンに固定化されている。このプロトン伝導混合相は、Tgが室温以下であり、交流インピーダンス測定の温度(80℃や95℃)では溶融状態である。実施例2で得られたプロトン伝導性ソフトエラストマー膜も、測定中、全体としては流動せず形状を維持していた。
【実施例】
【0032】
[実施例3]
実施例3では、実施例1の[1]において、S4VPを50mg使用し、10wt%のナフィオン(等価質量=1000)分散水溶液を3.03g使用し、TEGを150mg使用したこと以外は、実施例1と同様にしてプロトン伝導性ソフトエラストマー膜を作製した(ナフィオン/TEG/S4VPの重量比がおおよそ6/3/1)。ナフィオンのスルホン酸基は、S4VPのピリジル基に対して計算上、約9.8倍存在していることになる。実施例1の[2]において、膜の厚みを0.04cm、膜の幅を0.21cmとした以外は、実施例1と同様にして交流インピーダンス測定を行った。80℃での抵抗値は8.3×104Ωであり、プロトン伝導率は6.9×10-4S/cmであった。95℃での抵抗値は5.6×104Ωであり、プロトン伝導率は1.0×10-3S/cmであった。この実施例3では、プロトン伝導混合相は、実施例1と同様、ナフィオンとTEGとポリ(4-ビニルピリジン)との混合物であり、ポリスチレンに固定化されている。このプロトン伝導混合相は、Tgが室温以下であり、交流インピーダンス測定の温度(80℃や95℃)では溶融状態である。実施例3で得られたプロトン伝導性ソフトエラストマー膜も、測定中、全体としては流動せず形状を維持していた。
【実施例】
【0033】
[実施例4]
実施例4では、実施例1の[1]において、S4VPの代わりにリビングアニオン重合により合成されたポリスチレン-b-ポリ(2-ビニルピリジン)ブロック共重合体(S2VPと称する)を用いた。ポリスチレンの平均重合度は1250、ポリ(2-ビニルピリジン)の平均重合度が1285であった。またナフィオン/TEGの代わりに3,3’-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(プロパン-1-スルホン酸)(BSAと称する)/1,3-プロパンジオール(PDと称する)を用いた。BSAについてはソリッドステイトアイオニクス(Solid State Ionics),1995年,80巻,201頁-212頁及びコロイドポリマーサイエンス(Colloid Polymer Science),2014年,292巻、1261頁-1268頁 で報告されているスキームと類似の方法で合成した。S2VPを97mg、重量比7/3のTHF/MeOH混合溶媒を1.0g、ナフィオンの代わりにBSAを191mg、TEGの代わりにPDを191mg、重量比6/4のTHF/MeOH混合溶媒2.0gの代わりに重量比7/3のTHF/MeOH混合溶媒0.9gとした以外は、実施例1と同様にしてプロトン伝導性ソフトエラストマー膜を得た(BSA/PD/S2VPの重量比がおおよそ4/4/2)。BSAのスルホン酸基は、S2VPのピリジル基に対して計算上、約2.5倍存在していることになる。このプロトン伝導性ソフトエラストマー膜の模式図を図5に示す。図5中、ポリスチレン部位がポリマーの第1の部位に相当し、ポリ(2-ビニルピリジン)部位がポリマーの第2の部位に相当し、BSAがプロトン放出・結合部位とプロトン配位部位の両方を同一分子に含む単一のプロトン伝導性物質に相当する。PDはあってもなくてもよい。ポリスチレンのTg(ガラス転移温度)は約100℃、ポリ(2-ビニルピリジン)のTgは約100℃、BSAの融点は室温以下、PDの融点は-59℃である。ポリ(2-ビニルピリジン)のピリジル基とBSAのスルホン酸基とはイオン結合している。実施例4では、プロトン伝導混合相であるBSAとPDとポリ(2-ビニルピリジン)とからなる混合物は、ポリスチレンに固定化されている。またPDはBSAと静電相互作用していると考えられる。ポリ(2-ビニルピリジン)を含有したプロトン伝導混合相(図5の1点鎖線で囲んだ部分)のTgは室温以下であり、交流インピーダンス測定の温度(47℃~95℃)では溶融状態である。
【実施例】
【0034】
実施例1の[2]において、膜の厚みを0.03cm、膜の幅を0.28cmとした以外は実施例1と同様にして交流インピーダンス測定を行った。80℃での抵抗値は4.1×104Ωであり、プロトン伝導率は1.5×10-3S/cmであった。95℃での抵抗値は2.1×104Ωであり、プロトン伝導率は2.8×10-3S/cmであった。温度を80℃から95℃に上げることでプロトン伝導率が大きくなったが、これは温度を上げることにより溶融状態のプロトン伝導混合相の粘度が下がってプロトン伝導性が向上したことによると考えられる。一方、65℃での抵抗値は6.1×104Ω、プロトン伝導率は9.8×10-4S/cmであり、更に、47℃での抵抗値は1.4×105Ω、プロトン伝導率は4.3×10-4S/cmであった。温度を下げるにしたがってプロトン伝導率が小さくなったが、これは温度を下げることにより溶融状態のプロトン伝導混合相の粘度が上がってプロトン伝導性が低下したことによると考えられる。実施例4のプロトン伝導性ソフトエラストマー膜も、測定中、全体としては流動せず形状を維持していた。
【実施例】
【0035】
[実施例5]
ABジブロック共重合体として、ポリスチレン-b-ポリ(2-ビニルピリジン)(以下、S2VPという)を、Macromolecules 45, 8013-8020(2012)に記載のブロック共重合体合成法(可逆的付加開裂連鎖移動重合法)を参考にして合成した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、核磁気共鳴分光法により、平均重合度、分子量分布(Mw/Mn)を決定した。ポリスチレンの平均重合度は307、ポリ(2-ビニルピリジン)の平均重合度は390、分子量分布Mw/Mnは1.39であった。
【実施例】
【0036】
S2VP、重量比58/42で混合して調製したビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(HTFSIと称することとする)とテトラエチレングリコール(TEGと称することとする)からなる混合液体(HTFSI/TEGと称することとする)、塩基性アルミナカラムにより精製したアクリル酸(2-ヒドロキシエチル)、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、溶媒の1,4-ジオキサン、そして重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと称することとする)をそれぞれ50.3mg、359mg、108mg、4.1mg、1.18g、0.1mgはかりとり、20mL容量のサンプル瓶内で混合した。このとき、S2VP、HTFSI/TEG、精製したアクリル酸(2-ヒドロキシエチル)との重量比は1/7/2であった。HTFSIのスルホニルイミド基は、S2VPのピリジル基に対して計算上、約2.7倍存在していることになる。この混合物を20分間窒素でバブリングし、80℃のオイルバス中で30分間500rpmで撹拌し、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)及びN,N’-メチレンビスアクリルアミドを共重合した。30分経過した時点でサンプル瓶内では撹拌子が回転しなくなったが、未反応モノマー(アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド)をできるだけ反応させるために80℃のオイルバス中にさらに6時間半サンプル瓶を漬けた。その後、50℃のホットプレート上にサンプル瓶を約2日間置いて溶媒キャストし、さらに1日間真空乾燥を行うことにより、溶媒(1,4-ジオキサン)や未反応モノマーを取り除いてプロトン伝導性ソフトエラストマー膜を得た。なお、以下、アクリル酸(2-ヒドロキシエチル)とN,N’-メチレンビスアクリルアミドとの共重合体を、アルコール基含有アクリル酸系共重合体と称することとする。
【実施例】
【0037】
このプロトン伝導性ソフトエラストマー膜の模式図を図6に示す。図6中、ポリスチレン部位がポリマーの第1の部位に相当し、ポリ(2-ビニルピリジン)部位がポリマーの第2の部位に相当し、HTFSIがプロトン放出・結合部位を含む物質Xに相当し、TEGやアルコール基含有アクリル酸系共重合体がプロトン配位部位を含む物質Yに相当する。ポリスチレンのTg(ガラス転移温度)は約100℃、ポリ(2-ビニルピリジン)のTgは約100℃、アルコール基含有アクリル酸系共重合体のアクリル酸(2-ヒドロキシエチル)由来の重合鎖のTgは約-15℃、TEGの融点は約-6℃である。S2VPのポリ(2-ビニルピリジン)ブロックのピリジル基とHTFSI中の一部のスルホニルイミド基間ではイオン結合しており、HTFSI中の一部のスルホニルイミド基はTEGのエーテル結合の酸素原子や水酸基とは静電相互作用により弱く結合しており、さらに一部のスルホニルイミド基からはプロトンが遊離し、イミダイドイオンとなっている。実施例5では、プロトン伝導混合相は、HTFSI、TEG、S2VPのポリ(2-ビニルピリジン)ブロック及びアルコール基含有アクリル酸系共重合体を含む混合物であり、S2VPのポリスチレンブロックからなるハードドメインにより固定化されている。また、アルコール基含有アクリル酸系共重合体は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド由来の分岐を形成し、プロトン伝導混合相の中の流動性を低減して形状保持性を高めている。プロトン伝導混合相のTgは室温以下であり、交流インピーダンス測定の温度(80℃や95℃)では溶融状態となっている。
【実施例】
【0038】
実施例1の[2]において電極間距離を0.70cm、膜の厚みを0.092cm、膜の幅を0.30cmとした以外は実施例1と同様にして交流インピーダンス測定を行った。80℃での抵抗値は7.0×104Ωであり、プロトン伝導率は3.7×10-4S/cmであった。次に、交流インピーダンス測定の測定温度を95℃としたところ、抵抗値は6.6×104Ωであり、プロトン伝導率は3.9×10-4S/cmであった。温度を上げることでプロトン伝導率が大きくなった。これは温度を上げることにより溶融状態のプロトン伝導混合相の分子運動性が上がってプロトン伝導性が向上したことによると考えられる。なお、得られたプロトン伝導膜では、測定中に溶出物は見られず、また流動せずに膜形状も維持していた。
【実施例】
【0039】
本出願は、2016年4月22日に出願された日本国特許出願第2016-85786号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、プロトン伝導膜を使用する技術分野、例えば燃料電池などに利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 燃料電池、2 MEA、3 無加湿系プロトン伝導膜、4 アノード、4a 触媒層、4b ガス拡散層、5 カソード、5a 触媒層、5b ガス拡散層、6 セパレータ、6g 燃料ガス通路、7 セパレータ、7g 酸化ガス通路。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
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(In Japanese)【図6】
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