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明細書 :制御性T細胞の活性化剤及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年2月21日(2019.2.21)
発明の名称または考案の名称 制御性T細胞の活性化剤及びその使用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  16/28        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N  15/63        (2006.01)
C12N  15/10        (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N  15/13        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  37/06        (2006.01)
A61P   1/04        (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
FI C12N 15/09 ZNAZ
C07K 16/28
C12N 1/21
C12N 15/63 Z
C12N 15/10 200Z
C12N 15/113 140Z
C12N 1/19
C12N 1/15
C12N 5/10
C12N 15/13
A61P 43/00 107
A61P 37/06
A61P 43/00 105
A61P 1/04
A61P 37/08
A61K 45/00
A61K 39/395 N
C12P 21/08
国際予備審査の請求
全頁数 45
出願番号 特願2018-513201 (P2018-513201)
国際出願番号 PCT/JP2017/015767
国際公開番号 WO2017/183665
国際出願日 平成29年4月19日(2017.4.19)
国際公開日 平成29年10月26日(2017.10.26)
優先権出願番号 2016084170
優先日 平成28年4月20日(2016.4.20)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】渋谷 彰
【氏名】渋谷 和子
【氏名】阿部 史枝
【氏名】広近 玲
【氏名】奥村 元紀
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
Fターム 4B064AG27
4B064CA20
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA08
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA17
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA681
4C084ZB081
4C084ZB131
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4C084ZB222
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4C085AA14
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4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
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4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
4H045GA26
要約 DNAX Accessory Molecule-1(DNAM-1)及びCD155の結合を阻害する物質からなる、制御性T細胞の活性化剤。
特許請求の範囲 【請求項1】
DNAX Accessory Molecule-1(DNAM-1)及びCD155の結合を阻害する物質からなる、制御性T細胞の活性化剤。
【請求項2】
DNAM-1及びCD155の結合を阻害する前記物質が、DNAM-1に対する特異的結合物質、DNAM-1発現阻害剤、CD155に対する特異的結合物質又はCD155発現阻害剤である、請求項1に記載の制御性T細胞の活性化剤。
【請求項3】
移植片対宿主病、臓器移植拒絶、自己免疫疾患、線維化疾患、炎症性腸炎若しくはアレルギーの予防又は治療用である、請求項1又は2に記載の制御性T細胞の活性化剤。
【請求項4】
DNAM-1及びCD155の結合を阻害する前記物質が、DNAM-1対する特異的結合物質であり、
前記DNAM-1はヒトDNAM-1であり、
前記特異的結合物質は抗体又はその断片であり、
前記抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子と反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して100ng以下で前記ヒトDNAM-1分子を飽和することができる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の制御性T細胞の活性化剤。
【請求項5】
DNAM-1及びCD155の結合を阻害する前記物質が、DNAM-1対する特異的結合物質であり、
前記DNAM-1はヒトDNAM-1であり、
前記特異的結合物質は抗体又はその断片であり、
前記抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子を、ヒトCD155とIgG型抗体定常領域との融合タンパク質1000ngで飽和させた後に反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して500ng以下で、前記融合タンパク質と前記ヒトDNAM-1分子との結合を完全に阻害することができる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御性T細胞の活性化剤。
【請求項6】
前記抗体はヒト型抗体である、請求項4又は5に記載の制御性T細胞の活性化剤。
【請求項7】
前記抗体又はその断片は、
相補性決定領域(CDR)1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するか、又は
ヒトDNAM-1と結合させた場合に、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する抗体と競合する、
請求項4~6のいずれか一項に記載の制御性T細胞の活性化剤。
【請求項8】
前記抗体又はその断片は、
CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、
請求項4~7のいずれか一項に記載の制御性T細胞の活性化剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の制御性T細胞の活性化剤と、薬学的に許容できる担体とを含む、制御性T細胞活性化用医薬組成物。
【請求項10】
ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子と反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して50ng以下で前記ヒトDNAM-1分子を飽和することができる、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項11】
ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子を、ヒトCD155とIgG型抗体定常領域との融合タンパク質1000ngで飽和させた後に反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して300ng以下で、前記融合タンパク質と前記ヒトDNAM-1分子との結合を完全に阻害することができる、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項12】
ヒト型抗体又はその断片である、請求項10又は11に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項13】
CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するか、又は
ヒトDNAM-1と結合させた場合に、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する抗体と競合する、
請求項10~12のいずれか一項に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項14】
CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、請求項10~13のいずれか一項に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項15】
CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、請求項10~14のいずれか一項に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項16】
配列番号7のアミノ酸配列又は配列番号7のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、
配列番号8のアミノ酸配列又は配列番号8のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、請求項10~15のいずれか一項に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項17】
配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号8のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、請求項16に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項18】
配列番号9のアミノ酸配列又は配列番号9のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、
配列番号10のアミノ酸配列又は配列番号10のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、請求項10~14のいずれか一項に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項19】
配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号10のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、請求項18に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項20】
請求項10~19のいずれか一項に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片をコードする核酸。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸を含有するベクター。
【請求項22】
請求項21に記載のベクターを含有する形質転換体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、制御性T細胞の活性化剤及びその使用に関する。より具体的には、制御性T細胞の活性化剤、制御性T細胞活性化用医薬組成物、抗ヒトDNAX Accessory Molecule-1(DNAM-1)モノクローナル抗体又はその断片、核酸、ベクター及び形質転換体に関する。本願は、2016年4月20日に、日本に出願された特願2016-084170号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
輸血又は幹細胞移植の後に、移植片対宿主病(graft-versus-host disease、GVHD)が発症する場合がある。移植片対宿主病は、移植細胞中に存在するドナー由来の活性化T細胞がレシピエントの細胞を傷害することにより生じる。また、ドナーの臓器をレシピエントに移植すると拒絶反応が起こる場合がある。例えば、心移植、血管移植、腎臓移植等において、移植された心臓、血管、腎臓は、一時的には生着するものの、次第に剥離等が認められる場合がある。このため、移植片対宿主病や臓器移植拒絶を抑制する技術が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マウスDNAM-1タンパク質に対する中和抗体が、マウスにおける移植心臓、移植血管又は移植腎臓の生着を維持する薬剤として使用可能であることが記載されている。
【0004】
DNAM-1タンパク質は、CD226とも呼ばれる分子量65kDaの免疫グロブリンスーパーファミリーに属する接着分子である。DNAM-1タンパク質の発現は、ヒトやマウスのCD4T細胞、CD8T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞等の様々な免疫細胞に認められる。ヒトDNAM-1のRefSeq IDはNP_001290547であり、マウスDNAM-1のRefSeq IDはNP_001034238である。発明者らは、以前に、DNAM-1タンパク質が、ポリオウイルスレセプターとして知られてきたCD155に結合することを明らかにした。CD155は、イムノグロブリンスーパーファミリーに属するI型膜貫通糖タンパク質である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2013-245162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような背景のもと、本発明は、ヒトの免疫反応を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を含む。
[1]DNAM-1及びCD155の結合を阻害する物質からなる、制御性T細胞の活性化剤。
[2]DNAM-1及びCD155の結合を阻害する前記物質が、DNAM-1に対する特異的結合物質、DNAM-1発現阻害剤、CD155に対する特異的結合物質又はCD155発現阻害剤である、[1]に記載の制御性T細胞の活性化剤。
[3]移植片対宿主病、臓器移植拒絶、自己免疫疾患、線維化疾患、炎症性腸炎若しくはアレルギーの予防又は治療用である、[1]又は[2]に記載の制御性T細胞の活性化剤。
[4]DNAM-1及びCD155の結合を阻害する前記物質が、DNAM-1対する特異的結合物質であり、前記DNAM-1はヒトDNAM-1であり、前記特異的結合物質は抗体又はその断片であり、前記抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子と反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して100ng以下で前記ヒトDNAM-1分子を飽和することができる、[1]~[3]のいずれかに記載の制御性T細胞の活性化剤。
[5]DNAM-1及びCD155の結合を阻害する前記物質が、DNAM-1対する特異的結合物質であり、前記DNAM-1はヒトDNAM-1であり、前記特異的結合物質は抗体又はその断片であり、前記抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子を、ヒトCD155とIgG型抗体定常領域との融合タンパク質1000ngで飽和させた後に反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して500ng以下で、前記融合タンパク質と前記ヒトDNAM-1分子との結合を完全に阻害することができる、[1]~[4]のいずれかに記載の制御性T細胞の活性化剤。
[6]前記抗体はヒト型抗体である、[4]又は[5]に記載の制御性T細胞の活性化剤。
[7]前記抗体又はその断片は、相補性決定領域(CDR)1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するか、又は、ヒトDNAM-1と結合させた場合に、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する抗体と競合する、[4]~[6]のいずれかに記載の制御性T細胞の活性化剤。
[8]前記抗体又はその断片は、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、[4]~[7]のいずれかに記載の制御性T細胞の活性化剤。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の制御性T細胞の活性化剤と、薬学的に許容できる担体とを含む、制御性T細胞活性化用医薬組成物。
[10]ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子と反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して100ng以下で前記ヒトDNAM-1分子を飽和することができる、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[11]ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子を、ヒトCD155とIgG型抗体定常領域との融合タンパク質1000ngで飽和させた後に反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して500ng以下で、前記融合タンパク質と前記ヒトDNAM-1分子との結合を完全に阻害することができる、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[12]ヒト型抗体又はその断片である、[10]又は[11]に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[13]CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するか、又は、ヒトDNAM-1と結合させた場合に、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する抗体と競合する、[10]~[12]のいずれかに記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[14]CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、[10]~[13]のいずれかに記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[15]CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、[10]~[14]のいずれかに記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[16]配列番号7のアミノ酸配列又は配列番号7のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号8のアミノ酸配列又は配列番号8のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、[10]~[15]のいずれか一項に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[17]配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号8のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、[16]に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[18]配列番号9のアミノ酸配列又は配列番号9のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号10のアミノ酸配列又は配列番号10のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、[10]~[14]のいずれかに記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[19]配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号10のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、[18]に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片。
[20][10]~[19]のいずれかに記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片をコードする核酸。
[21][20]に記載の核酸を含有するベクター。
[22][21]に記載のベクターを含有する形質転換体。
【0008】
(1)CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、抗ヒトDNAX Accessory Molecule-1(DNAM-1)モノクローナル抗体又は抗体フラグメント(抗体断片)。
(2)CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、(1)に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又は抗体フラグメント。
(3)配列番号7のアミノ酸配列又は配列番号7のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号8のアミノ酸配列又は配列番号8のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、(1)又は(2)に記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又は抗体フラグメント。
(4)配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号8のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する、(1)~(3)のいずれかに記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又は抗体フラグメント。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸。
(6)(5)に記載の核酸を含有する組換えベクター。
(7)(6)に記載の組換えベクターを含有する形質転換体。
(8)(1)~(4)のいずれかに記載の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又は抗体フラグメントを有効成分として含有する免疫抑制剤。
(9)移植片対宿主病の予防又は治療剤である、(8)に記載の免疫抑制剤。
(10)臓器移植拒絶の予防又は治療剤である、(8)に記載の免疫抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒトの免疫反応を抑制することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体No.1~6の重鎖のアミノ酸配列をアラインメントした結果を示す図である。
【図2】抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体No.1~6の軽鎖のアミノ酸配列をアラインメントした結果を示す図である。
【図3】(a)~(d)は、実験例2の結果を示すグラフである。
【図4】(a)~(l)は、実験例3の結果を示すグラフである。
【図5】(a)~(e)は、実験例4において、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体No.1~6の反応性を検討した結果を示すグラフである。
【図6】(a)~(e)は、実験例5において、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体No.1~6の反応性を検討した結果を示すグラフである。
【図7】(a)~(e)は、実験例6において、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体No.1~6の反応性を検討した結果を示すグラフである。
【図8】(a)~(e)は、実験例7において、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体No.1~6の反応性を検討した結果を示すグラフである。
【図9】実験例8における混合リンパ球反応アッセイの結果を示すグラフである。
【図10】実験例9の実験プロトコルを示す図である。
【図11】実験例9におけるマウスの生存率を示すグラフである。
【図12】(a)及び(b)は、実験例9におけるマウスの肝機能を検討した結果を示すグラフである。
【図13】実験例10の実験プロトコルを示す図である。
【図14】実験例10におけるマウスの生存率を示すグラフである。
【図15】実験例11において、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体を反応させたCD8T細胞の細胞傷害活性を測定した結果を示すグラフである。
【図16】(a)は、実験例12において、モノクローナル抗体No.1を投与してから14日後のマウスの脾臓中のCD4T細胞における制御性T細胞の割合を測定した結果を示すグラフである。(b)は、実験例12において、モノクローナル抗体No.1を投与してから14日後のマウスの末梢血中のCD4T細胞における制御性T細胞の割合を測定した結果を示すグラフである。
【図17】(a)は、実験例13において、脳脊髄炎の発症率を測定した結果を示すグラフである。また、(b)は、実験例13において、臨床スコアの平均値を算出した結果を示すグラフである。
【図18】(a)は、実験例14において、血清中のアルカリフォスファターゼを定量した結果を示すグラフである。(b)は、実験例14において、血清中の総ビリルビンを定量した結果を示すグラフである。
【図19】(a)は、実験例14における対照マウスの肝臓組織の顕微鏡写真である。(b)は、実験例14におけるDNAM-1遺伝子欠損マウスの肝臓組織の顕微鏡写真である。
【図20】(a)は、実験例15においてマッソントリクローム染色した腎臓の切断面の写真である。(b)は、(a)に基づいて腎皮質の面積を測定した結果を示すグラフである。
【図21】(a)は、実験例15において、対照マウスの腎臓の組織切片を抗α-SMA抗体で免疫染色した代表的な結果を示す顕微鏡写真である。(b)は、実験例15において、DNAM-1遺伝子欠損マウスの腎臓の組織切片を抗α-SMA抗体で免疫染色した代表的な結果を示す顕微鏡写真である。(c)は、実験例15において、各群のマウスの腎臓組織におけるα-SMA陽性領域の面積を算出した結果を示すグラフである。
【図22】実験例16において、対照マウス及びDNAM-1遺伝子欠損マウスの体重を測定した結果を示すグラフである。
【図23】(a)は、実験例16において、実験開始から9日目に摘出した、DNAM-1遺伝子欠損マウスの大腸の写真である。(b)は、実験例16において、実験開始から9日目に摘出した、対照マウスの大腸の写真である。(c)は、(a)及び(b)の結果を数値化したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[制御性T細胞の活性化剤]
1実施形態において、本発明は、DNAM-1及びCD155の結合を阻害する物質からなる、制御性T細胞の活性化剤を提供する。

【0012】
実施例において後述するように、発明者らはDNAM-1とCD155との結合を阻害することにより、制御性T細胞を活性化することができることを明らかにした。したがって、DNAM-1及びCD155の結合を阻害する物質は、制御性T細胞の活性化の用途に使用することができる。

【0013】
DNAM-1及びCD155の結合を阻害する物質としては、例えば、DNAM-1に対する特異的結合物質、DNAM-1発現阻害剤、CD155に対する特異的結合物質、CD155発現阻害剤等が挙げられる。

【0014】
DNAM-1に対する特異的結合物質、CD155に対する特異的結合物質としては、DNAM-1及びCD155の結合を阻害できる物質であれば特に限定されず、例えば、抗体、抗体断片、アプタマー等が挙げられる。抗体は、マウス等の動物を免疫することによって作製したものであってもよく、ファージライブラリ等の抗体ライブラリのスクリーニングにより作製したものであってもよい。また、抗体断片としては、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFv等が挙げられる。また、アプタマーとしては、例えば、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。

【0015】
また、DNAM-1に対する特異的結合物質は、可溶化したCD155であってもよい。可溶化したCD155としては、例えば、CD155と抗体定常領域との融合タンパク質等が挙げられる。また、CD155に対する特異的結合物質は、可溶化したDNAM-1であってもよい。可溶化したDNAM-1としては、例えば、DNAM-1と抗体定常領域との融合タンパク質等が挙げられる。

【0016】
DNAM-1発現阻害剤、CD155発現阻害剤としては、DNAM-1又はCD155の発現を低減させ、結果としてDNAM-1及びCD155の結合を阻害できる物質であれば特に限定されず、例えば、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アンチセンス核酸、低分子化合物等が挙げられる。siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム及びアンチセンス核酸は、安定性や活性を向上させるために、種々の化学修飾を含んでいてもよい。例えば、ヌクレアーゼ等の加水分解酵素による分解を防ぐために、リン酸残基を、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換してもよい。また、少なくとも一部をペプチド核酸(PNA)等の核酸類似体により構成してもよい。

【0017】
制御性T細胞とは、Treg、調節性T細胞とも呼ばれるT細胞の一種である。制御性T細胞は免疫応答の抑制的制御を行うことが明らかにされつつある。制御性T細胞としては、例えばCD4CD25T細胞、Foxp3CD25T細胞、CD4Foxp3細胞等が挙げられる。

【0018】
本明細書において、制御性T細胞の活性化とは、制御性T細胞の細胞数の増加、制御性T細胞が発現するTGF-β、IL-10等の抑制性サイトカインの発現量の増加、T細胞による免疫応答の抑制、免疫応答全般の抑制等を意味する。

【0019】
本実施形態の制御性T細胞の活性化剤は、制御性T細胞の活性化により症状を軽減することができる疾患の予防又は治療に用いることができる。このような疾患としては、例えば、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、自己免疫疾患、線維化疾患、炎症性腸炎、アレルギー等が挙げられる。

【0020】
ここで、自己免疫疾患としては、例えばリウマチ、I型糖尿病、自己免疫性脳脊髄炎等が挙げられる。また、繊維化疾患とは、肺、心臓、肝臓、腎臓等の様々な臓器において、組織がI型コラーゲン等に置き換わる疾患であり、例えば肝硬変、糖尿病性腎症、肺線維症等が挙げられる。アレルギーとしては、例えばアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎等が挙げられる。

【0021】
本実施形態の制御性T細胞の活性化剤は、例えば、DNAM-1対する特異的結合物質であってもよく、特異的結合物質は抗体又はその断片であってもよい。ここで、DNAM-1は、制御性T細胞を活性化する対象の種のDNAM-1であればよく、例えばヒトDNAM-1であってもよい。すなわち、本実施形態の制御性T細胞の活性化剤は、抗ヒトDNAM-1抗体又はその断片であってもよい。

【0022】
ここで、抗ヒトDNAM-1抗体又はその断片としては、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子と反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して100ng以下、好ましくは80ng以下、より好ましくは50ng以下、更に好ましくは40ng以下、特に好ましくは30ng以下で、上記のリンパ球の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子を飽和することができる反応性を有するものが好ましい。実施例において後述するように、このような反応性を有する抗ヒトDNAM-1抗体は、制御性T細胞の活性化能が高い。

【0023】
ここで、例えば、対象の抗体が例えば抗体断片等であった場合には、IgG型抗体全長の質量に換算して反応性を計算すればよい。この場合、例えば抗体断片とIgG型抗体全長の分子量に基づいて質量を換算すればよい。

【0024】
また、本実施形態の制御性T細胞の活性化剤として好適な抗ヒトDNAM-1抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子を、ヒトCD155とIgG型抗体定常領域との融合タンパク質1000ngで飽和させた後に、上記のリンパ球と反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して500ng以下、好ましくは400ng以下、より好ましくは300ng以下、更に好ましくは200ng以下、特に好ましくは100ng以下で、上記の融合タンパク質と上記のリンパ球の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子との結合を完全に阻害することができる反応性を有するものであってもよい。

【0025】
すなわち、このような反応性を有する抗ヒトDNAM-1抗体は、DNAM-1とCD155とが予め結合していた場合においても、この結合を解除することができる。実施例において後述するように、このような反応性を有する抗ヒトDNAM-1抗体は、制御性T細胞の活性化能が高い。

【0026】
ここで、完全に阻害するとは、実質的に完全に阻害できることを意味する。例えば、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子を、ヒトCD155とIgG型抗体定常領域との融合タンパク質1000ngで飽和させた後に、上記のリンパ球と反応させた場合に、上記のリンパ球の表面に結合していた融合タンパク質のうち、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上を解離させ、リンパ球の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子と結合することができることを意味する。

【0027】
また、本実施形態の制御性T細胞の活性化剤は、抗ヒトCD155抗体又はその断片であってもよい。

【0028】
本実施形態の制御性T細胞の活性化剤において、抗ヒトDNAM-1抗体若しくはその断片、又は抗ヒトCD155抗体若しくはその断片は、ヒト型抗体若しくはその断片であることが好ましい。

【0029】
制御性T細胞の活性化剤がヒト型抗体又はその断片であれば、ヒトに投与しても免疫原性が低いため、アナフィラキシーショック等の副作用を抑制することができる。ヒト型抗体としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体等が挙げられる。

【0030】
本明細書において、キメラ抗体とは、可変領域が非ヒト動物由来の抗体であり、定常領域の少なくとも一部がヒト由来の抗体である抗体を意味する。また、ヒト化抗体とは、重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)のみが非ヒト動物由来の抗体であり、定常領域及びフレームワーク領域がヒト由来の抗体である抗体を意味する。また、完全ヒト抗体とは、相補性決定領域を含めて全体がヒト由来の抗体を意味する。

【0031】
本実施形態の制御性T細胞の活性化剤において、抗ヒトDNAM-1抗体又はその断片は、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する抗体又はその断片であってもよい。

【0032】
ここで、重鎖可変領域のCDR1又はCDR2における数個とは、4個、3個又は2個を意味する。また、重鎖可変領域のCDR3における数個とは2個を意味する。また、軽鎖可変領域のCDR1又はCDR3における数個とは、4個、3個又は2個を意味する。また、軽鎖可変領域のCDR2における数個とは2個を意味する。

【0033】
CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及びCDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する抗体としては、例えば、実施例において後述するモノクローナル抗体No.1、モノクローナル抗体No.1をヒト型化した抗体等が挙げられる。

【0034】
また、抗ヒトDNAM-1抗体は、モノクローナル抗体No.1に限定されず、モノクローナル抗体No.1と同等以上の反応性を有するものであれば本実施形態の制御性T細胞の活性化剤として使用することができる。したがって、抗ヒトDNAM-1抗体は、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する抗体であってもよい。このような抗体としては、例えば、実施例において後述するモノクローナル抗体No.2~6、モノクローナル抗体No.2~6をヒト型化した抗体等が挙げられる。

【0035】
あるいは、抗ヒトDNAM-1抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1と結合させた場合に、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する抗体と競合する抗体又はその断片であってもよい。すなわち、抗ヒトDNAM-1抗体は、ヒトDNAM-1との結合に関して、実施例において後述するモノクローナル抗体No.1と競合する抗体であってもよい。モノクローナル抗体No.1と競合する抗体は、ヒトDNAM-1との結合に関して、モノクローナル抗体No.1と同等以上の反応性を有する。

【0036】
ここで、対象の抗体が競合するとは、例えば、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子に、実施例において後述するモノクローナル抗体No.1を反応させた後に、対象の抗体を上記のリンパ球と反応させた場合に、モノクローナル抗体No.1とヒトDNAM-1分子との結合を少なくとも1部解離させて、ヒトDNAM-1分子と結合することができることを意味する。

【0037】
ここで、少なくとも1部とは、上記のリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子全体の10%以上であってもよく、30%以上であってもよく、50%以上であってもよく、70%以上であってもよく、90%以上であってもよい。

【0038】
[制御性T細胞活性化用医薬組成物]
1実施形態において、本発明は、上述した制御性T細胞の活性化剤と、薬学的に許容できる担体とを含む、制御性T細胞活性化用医薬組成物を提供する。

【0039】
薬学的に許容される担体としては、一般的に製剤に用いられるものを使用することができ、例えば、賦形剤、安定剤、注射剤用溶剤等が挙げられる。注射剤用溶剤としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウム等の補助薬を含む等張液が挙げられる。

【0040】
本実施形態の医薬組成物は、上述した制御性T細胞の活性化剤、薬学的に許容できる担体以外に添加物を含んでいてもよい。添加物としては、例えば、pH調節剤、粘度改良剤、着色剤、移植片対宿主病や臓器移植拒絶の治療において従来使用されてきた、ステロイド類、免疫抑制剤等が挙げられる。

【0041】
本実施形態の医薬組成物の剤型は限定されず、例えば凍結乾燥剤、粉末製剤、pHが調整された緩衝液による溶液製剤、注射用マイクロカプセル剤等が挙げられる。

【0042】
本実施形態の医薬組成物は、例えば、注射剤又は点滴注入剤として、静脈内投与等により患者に投与される。その投与量、投与経路、処方は、患者の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜決定すればよい。

【0043】
本実施形態の医薬組成物の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、処置を必要とするヒト患者に対し、1回の投与において1kg体重あたり、有効成分(DNAM-1及びCD155の結合を阻害する物質)が例えば1μg~100mg、例えば50μg~50mg含まれる量を、1日あたり1回~数回投与すればよい。

【0044】
[抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片]
1実施形態において、本発明は、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子と反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して100ng以下、好ましくは80ng以下、より好ましくは50ng以下、更に好ましくは40ng以下、特に好ましくは30ng以下で、上記のリンパ球の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子を飽和することができる、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片を提供する。

【0045】
実施例において後述するように、このような反応性を有する抗ヒトDNAM-1抗体は、制御性T細胞の活性化や、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、自己免疫疾患、線維化疾患、炎症性腸炎等の症状の軽減等に有用である。

【0046】
ここで、例えば、対象の抗体が例えば抗体断片等であった場合には、IgG型抗体全長の質量に換算して反応性を計算すればよい。この場合、例えば抗体断片とIgG型抗体全長の分子量に基づいて質量を換算すればよい。また、本実施形態の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、任意の既知の抗体及びその断片を除いたものであってもよい。

【0047】
本実施形態の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1を強制発現させたリンパ球細胞1×10個の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子を、ヒトCD155とIgG型抗体定常領域との融合タンパク質1000ngで飽和させた後に、上記のリンパ球と反応させた場合に、IgG型抗体全長に換算して500ng以下、好ましくは400ng以下、より好ましくは300ng以下、更に好ましくは200ng以下、特に好ましくは100ng以下で、上記の融合タンパク質と上記のリンパ球の細胞表面に存在するヒトDNAM-1分子との結合を完全に阻害することができる反応性を有するものであってもよい。

【0048】
すなわち、このような反応性を有する抗ヒトDNAM-1抗体は、DNAM-1とCD155とが予め結合していた場合においても、この結合を解除することができる。ここで、「完全に阻害する」については上述したものと同様である。

【0049】
本実施形態の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、ヒト型抗体又はその断片であってもよい。ヒト型抗体については上述したものと同様である。

【0050】
本実施形態の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列又は配列番号1~3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列又は配列番号4~6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するものであってもよい。

【0051】
ここで、重鎖可変領域のCDR1又はCDR2における数個とは、4個、3個又は2個を意味する。また、重鎖可変領域のCDR3における数個とは2個を意味する。また、軽鎖可変領域のCDR1又はCDR3における数個とは、4個、3個又は2個を意味する。また、軽鎖可変領域のCDR2における数個とは2個を意味する。

【0052】
本明細書において、抗体断片としては、Fab、F(ab’)、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを適切なリンカーで連結したsingle-chain Fv(scFv)等が挙げられる。scFvのリンカーとしては、例えば、(GGGGS)(配列番号21)等のペプチドが挙げられる。

【0053】
実施例において後述するように、本実施形態の抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1タンパク質に良好に結合し、インビボ及びインビトロにおいてヒトの免疫反応を抑制することができる。このため、免疫抑制剤として利用することができる。

【0054】
あるいは、本実施形態の抗ヒトDNAM-1抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1と結合させた場合に、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有する抗体と競合する抗体又はその断片であってもよい。すなわち、抗ヒトDNAM-1抗体は、ヒトDNAM-1との結合に関して、実施例において後述するモノクローナル抗体No.1と競合する抗体であってもよい。モノクローナル抗体No.1と競合する抗体は、ヒトDNAM-1との結合に関して、モノクローナル抗体No.1と同等以上の反応性を有する。ここで、抗体の競合については上述したものと同様である。

【0055】
抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するものであってもよい。このような抗体としては、例えば、実施例において後述するモノクローナル抗体No.1、モノクローナル抗体No.1をヒト型化した抗体等が挙げられる。

【0056】
また、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号8のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するものであってもよい。このような抗体としては、例えば、実施例において後述するモノクローナル抗体No.1、モノクローナル抗体No.1をヒト型化した抗体等が挙げられる。

【0057】
あるいは、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、配列番号9のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号10のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するものであってもよい。このような抗体としては、例えば、実施例において後述するモノクローナル抗体No.2、モノクローナル抗体No.2をヒト型化した抗体等が挙げられる。

【0058】
また、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1に対する反応性を有している限り、配列番号7のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号8のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するものであってもよい。

【0059】
あるいは、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片は、ヒトDNAM-1に対する反応性を有している限り、配列番号9のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号10のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を有するものであってもよい。

【0060】
ここで、重鎖可変領域又は軽可変領域における数個とは、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個又は2個を意味する。このような抗体としては、例えば、実施例において後述するモノクローナル抗体No.3~6、モノクローナル抗体No.3~6をヒト型化した抗体等が挙げられる。

【0061】
[抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片をコードする核酸]
1実施形態において、本発明は、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片をコードする核酸を提供する。

【0062】
このような核酸としては、例えば、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の重鎖可変領域遺伝子、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の軽鎖可変領域遺伝子、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の重鎖可変領域及び定常領域の一部をコードする遺伝子、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の軽鎖可変領域及び定常領域の一部をコードする遺伝子、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の重鎖全長をコードする遺伝子、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の軽鎖全長をコードする遺伝子、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを適切なリンカーで連結したscFvをコードする遺伝子等が挙げられる。

【0063】
上記の重鎖可変領域遺伝子は、配列番号19に記載の塩基配列からなる遺伝子であってもよい。また、上記の軽鎖可変領域遺伝子は、配列番号20に記載の塩基配列からなる遺伝子であってもよい。

【0064】
また、上記の重鎖可変領域遺伝子は、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3に記載のアミノ酸配列からなり、CDR以外のフレームワーク領域が非マウス抗体由来である重鎖可変領域をコードする遺伝子であってもよい。また、上記の軽鎖可変領域遺伝子は、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6に記載のアミノ酸配列からなり、CDR以外のフレームワーク領域が、非マウス抗体由来である軽鎖可変領域をコードする遺伝子であってもよい。ここで、非マウス抗体としては、例えばヒト抗体が挙げられる。

【0065】
本実施形態の核酸は、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の重鎖可変領域遺伝子又はこれに由来する遺伝子と、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の軽鎖可変領域遺伝子又はこれに由来する遺伝子との組み合わせであることが好ましい。

【0066】
ここで、重鎖可変領域遺伝子に由来する遺伝子としては、例えば、CDR1~3が、それぞれ配列番号1~3に記載のアミノ酸配列からなり、CDR以外のフレームワーク領域が非マウス抗体由来である重鎖可変領域をコードする遺伝子が挙げられる。また、同様に、軽鎖可変領域遺伝子に由来する遺伝子としては、例えば、CDR1~3が、それぞれ配列番号4~6に記載のアミノ酸配列からなり、CDR以外のフレームワーク領域が非マウス抗体由来である軽鎖可変領域をコードする遺伝子が挙げられる。

【0067】
[ベクター]
1実施形態において、本発明は、上述した核酸を含有する組換えベクターを提供する。本実施形態の組換えベクターは、発現ベクターであってもよい。本実施形態のベクターが発現ベクターである場合、宿主に導入して発現させることにより、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片を製造することができる。

【0068】
本実施形態の組換えベクターにおいて、上述した核酸の5’末端又は3’末端に、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、GSTタグ等のタグ配列をコードするDNAが付加されていてもよい。上記の発現ベクターとしては、宿主細胞に抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片を発現させる細胞系ベクターと、適当な細胞から抽出されたタンパク質合成能を有する成分からなるタンパク質翻訳系において抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片を発現させる無細胞系ベクターが挙げられる。

【0069】
細胞系ベクターとしては、宿主細胞に適した公知の発現ベクターが用いられる。例えば、大腸菌においてはpBR322誘導体に代表されるColE系プラスミド、p15Aオリジンを持つpACYC系プラスミド、pSC系プラスミド、Bac系等のF因子由来ミニFプラスミドが挙げられる。その他にも、trcやtac等のトリプトファンプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、コールドショックプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター等を有する発現ベクターが挙げられる。また、宿主が大腸菌以外のベクターとしては、例えば、酵母発現用のpAUR系プラスミド、昆虫細胞発現用のpIEx系プラスミド、動物細胞発現用のpBApo-CMV系プラスミド等が挙げられる。

【0070】
無細胞系ベクターとしては、細胞系ベクターにおいて挙げられたT7プロモーターを有する発現ベクターやT3プロモーターを有する発現ベクター;SP6プロモーター又はT7プロモーターを有するpEU系プラスミド等の小麦無細胞タンパク質合成用ベクター等が挙げられる。

【0071】
無細胞系ベクターを用いたタンパク質合成においては、先ず、転写系を用いて、SesA遺伝子を転写して、mRNAを合成する。転写系としては、RNAポリメラーゼにより転写させる従来公知のものが挙げられる。RNAポリメラーゼとしては、例えばT7RNAポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ等が挙げられる。

【0072】
続いて、翻訳系である無細胞タンパク質合成系を用いて、mRNAを翻訳し、タンパク質を合成する。この系にはリボゾーム、翻訳開始因子、翻訳伸長因子、解離因子、アミノアシルtRNA合成酵素等、翻訳に必要な要素が含まれている。このようなタンパク質翻訳系としては、大腸菌抽出液、ウサギ網状赤血球抽出液、小麦胚芽抽出液等が挙げられる。更に、上記翻訳に必要な要素が独立に精製された因子のみからなる再構成型無細胞タンパク質合成系が挙げられる。

【0073】
細胞系ベクター又は無細胞系ベクターを用いて合成されたタンパク質から抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片を精製して用いることができる。精製方法としては、プロテインA、プロテインG等を用いた方法等が挙げられる。発現ベクターが目的タンパク質のN末端又はC末端にヒスチジンタグ等のタグ配列を発現するように設計されている場合には、ニッケルやコバルト等、このタグに親和性を有する物質を用いたアフィニティーカラムによる精製方法が挙げられる。その他、イオン交換クロマトグラフィーやゲルろ過クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて精製することにより、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片の純度を高めることができる。

【0074】
[形質転換体]
1実施形態において、本発明は、上述した組換えベクターを含有する形質転換体を提供する。本実施形態の形質転換体又はその培地等より、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片を製造することができる。

【0075】
本実施形態の形質転換体は、上述した組換えベクターを宿主に導入することにより得ることができる。形質転換体としては、例えば、上述した組換えベクターが導入された、大腸菌、酵母、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞等の培養細胞;上述したベクターが導入された、カイコ等の昆虫生体;上述したベクターが導入された、タバコ等の植物体等が挙げられる。

【0076】
組換えベクターの宿主への導入(形質転換)は従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、カルシウム処理された菌体を用いるコンピテント細胞法や、エレクトロポレーション法等が挙げられる。また、プラスミドベクター以外にも、ファージベクター、ウイルスベクター等を宿主に感染させて形質転換する方法を利用してもよい。

【0077】
[免疫抑制剤]
1実施形態において、本発明は、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片を有効成分として含有する免疫抑制剤を提供する。

【0078】
実施例において後述するように、本実施形態の免疫抑制剤は、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)アッセイにおけるCD8T細胞の増殖を抑制することができる。

【0079】
また、実施例において後述するように、本実施形態の免疫抑制剤は、移植片対宿主病マウスモデルにおいて、移植片対宿主病の予防及び治療のいずれにも効果を示すことが確認されている。

【0080】
したがって、本実施形態の免疫抑制剤は、移植片対宿主病の予防又は治療剤であるということができる。また、本実施形態の免疫抑制剤は、臓器移植拒絶の予防又は治療剤であるということもできる。

【0081】
本実施形態の免疫抑制剤は、薬学的に許容される担体、その他の添加物を含有する医薬組成物であってもよい。薬学的に許容される担体としては、賦形剤、安定剤、注射剤用溶剤等が挙げられる。注射剤用溶剤としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウム等の補助薬を含む等張液が挙げられる。その他の添加物としては、例えば、pH調節剤、粘度改良剤、着色剤、移植片対宿主病や臓器移植拒絶の治療において従来使用されてきた、ステロイド類、免疫抑制剤等が挙げられる。

【0082】
本実施形態の免疫抑制剤又は上記の医薬組成物の剤型は限定されず、例えば凍結乾燥剤、粉末製剤、pHが調整された緩衝液による溶液製剤、注射用マイクロカプセル剤等が挙げられる。

【0083】
本実施形態の免疫抑制剤又は上記の医薬組成物は、注射剤又は点滴注入剤として、静脈内投与等により患者に投与される。その投与量、投与経路、処方は、患者の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜決定すればよい。

【0084】
本実施形態の免疫抑制剤又は上記の医薬組成物の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、処置を必要とするヒト患者に対し、1回の投与において1kg体重あたり、有効成分(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片)が例えば1μg~100mg、例えば50μg~50mg含まれる量を、1日あたり1回~数回投与すればよい。

【0085】
[その他の実施形態]
1実施形態において、本発明は、DNAM-1及びCD155の結合阻害物質の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を備える、制御性T細胞の活性化方法を提供する。DNAM-1及びCD155の結合阻害物質としては、上述したものが挙げられる。

【0086】
1実施形態において、本発明は、制御性T細胞の活性化のための、DNAM-1及びCD155の結合阻害物質を提供する。DNAM-1及びCD155の結合阻害物質としては、上述したものが挙げられる。

【0087】
1実施形態において、本発明は、制御性T細胞の活性化剤を製造するための、DNAM-1及びCD155の結合阻害物質の使用を提供する。DNAM-1及びCD155の結合阻害物質としては、上述したものが挙げられる。

【0088】
1実施形態において、本発明は、DNAM-1及びCD155の結合阻害物質の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を備える、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、自己免疫疾患、線維化疾患、炎症性腸炎若しくはアレルギーの予防又は治療方法を提供する。DNAM-1及びCD155の結合阻害物質としては、上述したものが挙げられる。

【0089】
1実施形態において、本発明は、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、自己免疫疾患、線維化疾患、炎症性腸炎若しくはアレルギーの予防又は治療のための、DNAM-1及びCD155の結合阻害物質を提供する。DNAM-1及びCD155の結合阻害物質としては、上述したものが挙げられる。

【0090】
1実施形態において、本発明は、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、自己免疫疾患、線維化疾患、炎症性腸炎若しくはアレルギーの予防剤又は治療剤を製造するための、DNAM-1及びCD155の結合阻害物質の使用を提供する。DNAM-1及びCD155の結合阻害物質としては、上述したものが挙げられる。

【0091】
1実施形態において、本発明は、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を備える、移植片対宿主病又は臓器移植拒絶の治療又は予防方法を提供する。

【0092】
1実施形態において、本発明は、移植片対宿主病又は臓器移植拒絶の治療又は予防のための、上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片を提供する。

【0093】
1実施形態において、本発明は、移植片対宿主病又は臓器移植拒絶の治療剤又は予防剤を製造するための上述した抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体又はその断片の使用を提供する。
【実施例】
【0094】
次に実験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【実施例】
【0095】
[実験例1]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の作製)
マウスリンパ球細胞であるBW5147細胞株にヒトDMAM-1遺伝子を導入し、ヒトDMAM-1タンパク質を発現させた。この細胞を抗原としてマウスを免疫し、常法によりハイブリドーマを作製した。得られたハイブリドーマ株の中からヒトDNAM-1タンパク質に対する反応性を指標として抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体No.1~6を産生するクローンをそれぞれ取得した。
【実施例】
【0096】
続いて、常法により樹立したハイブリドーマ株から抗体重鎖遺伝子及び抗体軽鎖遺伝子をクローニングし、抗体重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を同定した。図1は、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体No.1~6の重鎖のアミノ酸配列をアラインメントした結果を示す図である。図1中、下線はCDR1~3を示す。図2は、抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体No.1~6の軽鎖のアミノ酸配列をアラインメントした結果を示す図である。図2中、下線はCDR1~3を示す。また、下記表1に、各モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列と配列表の配列番号との対応を示す。
【実施例】
【0097】
【表1】
JP2017183665A1_000002t.gif
【実施例】
【0098】
[実験例2]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の反応性の検討1)
実験例1で作製したモノクローナル抗体No.1及びNo.2の反応性を検討した。具体的には、マウスリンパ球細胞であるBW5147細胞株(以下、「BW」という場合がある。)、及びヒトDMAM-1タンパク質を発現させたBW5147細胞株(以下、「DNAM-1/BW」という場合がある。)に、モノクローナル抗体No.1及びNo.2を反応させ、フローサイトメトリー解析を行った。対照にはコントロールIgG1抗体を使用した。1×10個の各細胞に対し、30ngの各抗体を反応させた。抗体は氷上で30分間反応させた。
【実施例】
【0099】
図3(a)は、BW細胞にモノクローナル抗体No.1を反応させた結果を示すグラフである。図3(b)は、DNAM-1/BW細胞にモノクローナル抗体No.1を反応させた結果を示すグラフである。図3(c)は、BW細胞にモノクローナル抗体No.2を反応させた結果を示すグラフである。図3(d)は、DNAM-1/BW細胞にモノクローナル抗体No.2を反応させた結果を示すグラフである。
【実施例】
【0100】
その結果、モノクローナル抗体No.1及びNo.2のいずれもBW細胞に発現させたDNAM-1タンパク質を特異的に認識することが確認された。
【実施例】
【0101】
[実験例3]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の反応性の検討2)
実験例1で作製したモノクローナル抗体No.1及びNo.2のヒト末梢血リンパ球表面に存在するDNAM-1タンパク質に対する反応性を検討した。
【実施例】
【0102】
ヒト末梢血リンパ球中に存在するCD3CD4細胞(CD4T細胞)、CD3CD8細胞(CD8T細胞)、CD3CD19細胞(B細胞)、CD3CD56細胞(NK細胞)、CD3CD56細胞(NKT細胞)、CD14細胞(単球)に対するモノクローナル抗体No.1及びNo.2の反応性を検討した。対照にはコントロールIgG1抗体を使用した。1×10個の末梢血リンパ球に対し、モノクローナル抗体No.1及びNo.2をそれぞれ100ng反応させた。抗体は氷上で30分間反応させた。
【実施例】
【0103】
図4(a)は、CD4T細胞に対するモノクローナル抗体No.1の反応性を示す結果である。図4(b)は、CD8T細胞に対するモノクローナル抗体No.1の反応性を示す結果である。図4(c)は、B細胞に対するモノクローナル抗体No.1の反応性を示す結果である。図4(d)は、CD4T細胞に対するモノクローナル抗体No.2の反応性を示す結果である。図4(e)は、CD8T細胞に対するモノクローナル抗体No.2の反応性を示す結果である。図4(f)は、B細胞に対するモノクローナル抗体No.2の反応性を示す結果である。図4(g)は、NK細胞に対するモノクローナル抗体No.1の反応性を示す結果である。図4(h)は、NKT細胞に対するモノクローナル抗体No.1の反応性を示す結果である。図4(i)は、単球に対するモノクローナル抗体No.1の反応性を示す結果である。図4(j)は、NK細胞に対するモノクローナル抗体No.2の反応性を示す結果である。図4(k)は、NKT細胞に対するモノクローナル抗体No.2の反応性を示す結果である。図4(l)は、単球に対するモノクローナル抗体No.2の反応性を示す結果である。
【実施例】
【0104】
その結果、モノクローナル抗体No.1及びNo.2のいずれも、CD4T細胞、CD8T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、単球の細胞表面に存在するDNAM-1タンパク質に対する反応性を有することが確認された。
【実施例】
【0105】
[実験例4]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の反応性の検討3)
実験例1で作製したモノクローナル抗体No.1~No.6を用いた競合アッセイを行った。より具体的には、まず、上述したDNAM-1/BW細胞1×10個に対し、100ngのモノクローナル抗体No.2を反応させた(前処理)。続いて、段階希釈したモノクローナル抗体No.1、3~6をそれぞれ反応させた。抗体は氷上で30分間反応させた。前処理なしのDNAM-1/BW細胞に対する各抗体の反応性も検討した。
【実施例】
【0106】
図5(a)は、モノクローナル抗体No.1の結果を示すグラフである。図5(b)は、モノクローナル抗体No.3の結果を示すグラフである。図5(c)は、モノクローナル抗体No.4の結果を示すグラフである。図5(d)は、モノクローナル抗体No.5の結果を示すグラフである。図5(e)は、モノクローナル抗体No.6の結果を示すグラフである。
【実施例】
【0107】
図5(a)の結果から、モノクローナル抗体No.1は、予めモノクローナル抗体No.2を反応させたDNAM-1/BW細胞とも良好な反応性を示すことが明らかとなった。この結果は、モノクローナル抗体No.1が、モノクローナル抗体No.2よりもDNAM-1タンパク質に対する反応性が高いことを示す。
【実施例】
【0108】
また、図5(b)の結果から、モノクローナル抗体No.3は、予めモノクローナル抗体No.2を反応させたDNAM-1/BW細胞にはあまり反応しないことが明らかとなった。この結果は、モノクローナル抗体No.2が、モノクローナル抗体No.3よりもDNAM-1タンパク質に対する反応性が高いことを示す。
【実施例】
【0109】
また、図5(c)の結果から、モノクローナル抗体No.4は、予めモノクローナル抗体No.2を反応させたDNAM-1/BW細胞にはあまり反応しないことが明らかとなった。この結果は、モノクローナル抗体No.2が、モノクローナル抗体No.4よりもDNAM-1タンパク質に対する反応性が高いことを示す。
【実施例】
【0110】
また、図5(d)の結果から、モノクローナル抗体No.5は、予めモノクローナル抗体No.2を反応させたDNAM-1/BW細胞に対する反応性を有することが示された。後述する実験例5の結果と総合すると、モノクローナル抗体No.5とモノクローナル抗体No.2とはエピトープが競合していない可能性が考えられた。
【実施例】
【0111】
また、図5(e)の結果も図5(d)の結果と同様であり、後述する実験例5の結果と総合すると、モノクローナル抗体No.6とモノクローナル抗体No.2とはエピトープが競合していない可能性が考えられた。
【実施例】
【0112】
[実験例5]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の反応性の検討4)
DNAM-1/BW細胞に予め反応させる抗体を入れ替えて、実験例4と同様の実験を行った。より具体的には、まず、上述したDNAM-1/BW細胞1×10個に対し、飽和量のモノクローナル抗体No.1、3~6をそれぞれ反応させた(前処理)。具体的には、モノクローナル抗体No.1を30ng、No.3を300ng、No.4を300ng、No.5を500ng、No.6を1000ng使用した。
【実施例】
【0113】
なお、上述したDNAM-1/BW細胞1×10個の細胞表面に発現したヒトDNAM-1抗体を飽和することができる抗体の最低量は、モノクローナル抗体No.1では30ngであり、モノクローナル抗体No.2では50ngであり、モノクローナル抗体No.3では100ngであり、モノクローナル抗体No.4では100ngであり、モノクローナル抗体No.5では300ngであり、モノクローナル抗体No.6では300ngであった。続いて、段階希釈したモノクローナル抗体No.2をそれぞれ反応させた。抗体は氷上で30分間反応させた。前処理なしのDNAM-1/BW細胞に対する各抗体の反応性も検討した。
【実施例】
【0114】
図6(a)は、モノクローナル抗体No.1の結果を示すグラフである。図6(b)は、モノクローナル抗体No.3の結果を示すグラフである。図6(c)は、モノクローナル抗体No.4の結果を示すグラフである。図6(d)は、モノクローナル抗体No.5の結果を示すグラフである。図6(e)は、モノクローナル抗体No.6の結果を示すグラフである。
【実施例】
【0115】
図6(a)の結果から、モノクローナル抗体No.2は、予めモノクローナル抗体No.1を反応させたDNAM-1/BW細胞にはあまり反応しないことが明らかとなった。この結果は、上述した実験例4の結果と総合すると、モノクローナル抗体No.1が、モノクローナル抗体No.2よりもDNAM-1タンパク質に対する反応性が高いことを更に支持するものである。
【実施例】
【0116】
また、図6(b)の結果から、モノクローナル抗体No.2は、予めモノクローナル抗体No.3を反応させたDNAM-1/BW細胞とも比較的良好に反応することが明らかとなった。この結果は、上述した実験例4の結果と総合すると、モノクローナル抗体No.2が、モノクローナル抗体No.3よりもDNAM-1タンパク質に対する反応性が高いことを更に支持するものである。
【実施例】
【0117】
また、図6(c)の結果から、モノクローナル抗体No.2は、予めモノクローナル抗体No.4を反応させたDNAM-1/BW細胞とも比較的良好に反応することが明らかとなった。この結果は、上述した実験例4の結果と総合すると、モノクローナル抗体No.2が、モノクローナル抗体No.4よりもDNAM-1タンパク質に対する反応性が高いことを更に支持するものである。
【実施例】
【0118】
また、図6(d)の結果から、モノクローナル抗体No.2は、予めモノクローナル抗体No.5を反応させたDNAM-1/BW細胞に対する反応性を有することが示された。この結果と上述した実験例4の結果を総合すると、モノクローナル抗体No.2とモノクローナル抗体No.5とはエピトープが競合していない可能性が考えられた。
【実施例】
【0119】
また、図6(e)の結果も図6(d)の結果と同様であり、上述した実験例4の結果と総合すると、モノクローナル抗体No.2とモノクローナル抗体No.6とはエピトープが競合していない可能性が考えられた。
【実施例】
【0120】
[実験例6]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の反応性の検討5)
DNAM-1タンパク質はCD155タンパク質と相互作用することが知られている。そこで、実験例1で作製したモノクローナル抗体No.1~No.6が、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を阻害することができるか否かを検討した。
【実施例】
【0121】
まず、可溶化ヒトCD155タンパク質を準備した。具体的には、ヒトCD155タンパク質とヒトIgG抗体定常領域との融合タンパク質(以下、「hCD155-Fc」という場合がある。)を定法により作製した。なお、ヒトCD155タンパク質のRefSeq IDはNP_001129240である。
【実施例】
【0122】
続いて、上述したDNAM-1/BW細胞1×10個にhCD155-Fcタンパク質の飽和量(1000ng)を予め反応させた。続いて、上記のDNAM-1/BW細胞に、段階希釈したモノクローナル抗体No.1~No.6をそれぞれ反応させた。反応は氷上で30分間行った。
【実施例】
【0123】
図7(a)~(e)は、それぞれモノクローナル抗体No.1、3~6の結果を示すグラフである。比較のために、図7(a)~(e)のいずれにもモノクローナル抗体No.2の結果を示す。
【実施例】
【0124】
図7(a)の結果から、モノクローナル抗体No.1は、hCD155-Fcタンパク質を予め反応させたDNAM-1/BW細胞に良好に反応することができ、その反応性は、モノクローナル抗体No.2よりも高いことが明らかとなった。
【実施例】
【0125】
また、図7(b)の結果から、モノクローナル抗体No.3は、hCD155-Fcタンパク質を予め反応させたDNAM-1/BW細胞に良好に反応することができ、その反応性は、モノクローナル抗体No.2と同程度であることが明らかとなった。
【実施例】
【0126】
また、図7(c)の結果から、モノクローナル抗体No.4は、hCD155-Fcタンパク質を予め反応させたDNAM-1/BW細胞に良好に反応することができ、その反応性は、モノクローナル抗体No.2と同程度であることが明らかとなった。
【実施例】
【0127】
また、図7(d)の結果から、モノクローナル抗体No.5は、hCD155-Fcタンパク質を予め反応させたDNAM-1/BW細胞と反応するものの、その反応性は、モノクローナル抗体No.2よりも低いことが明らかとなった。
【実施例】
【0128】
また、図7(e)の結果から、モノクローナル抗体No.6は、hCD155-Fcタンパク質を予め反応させたDNAM-1/BW細胞と反応するものの、その反応性は、モノクローナル抗体No.2よりも低いことが明らかとなった。
【実施例】
【0129】
[実験例7]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の反応性の検討6)
実験例6において、hCD155-Fcタンパク質を予め反応させたDNAM-1/BW細胞に、段階希釈したモノクローナル抗体No.1~No.6をそれぞれ反応させた後、DNAM-1/BW細表面のDNAM-1タンパク質に結合したhCD155-Fcタンパク質を検出した。hCD155-Fcタンパク質の検出は、抗ヒトIgG抗体を用いて行った。反応は氷上で30分間行った。
【実施例】
【0130】
図8(a)~(e)は、それぞれモノクローナル抗体No.1、3~6の結果を示すグラフである。比較のために、図8(a)~(e)のいずれにもモノクローナル抗体No.2の結果を示す。
【実施例】
【0131】
図8(a)の結果から、モノクローナル抗体No.1を反応させた後に残存するhCD155-Fcタンパク質の量は、モノクローナル抗体No.1の濃度依存的に減少することが明らかとなった。
【実施例】
【0132】
また、反応させたモノクローナル抗体の濃度が高い領域では、hCD155-Fcタンパク質が全くなくなることが明らかとなった。この結果は、モノクローナル抗体No.1及びNo.2のいずれも、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を完全に阻害することができることを示す。また、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を完全に阻害するために必要な抗体量は、モノクローナル抗体No.1の方がモノクローナル抗体No.2よりも少なかった。より具体的には、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を完全に阻害するために必要な抗体量は、モノクローナル抗体No.1では100ngであり、モノクローナル抗体No.2では300ngであった。
【実施例】
【0133】
図8(b)の結果から、モノクローナル抗体No.3を反応させた後に残存するhCD155-Fcタンパク質の量は、モノクローナル抗体No.3の濃度依存的に減少することが明らかとなった。
【実施例】
【0134】
また、反応させたモノクローナル抗体の濃度が低い領域では、モノクローナル抗体No.3を反応させた後に残存するhCD155-Fcタンパク質の量は、モノクローナル抗体No.2を反応させた後に残存するhCD155-Fcタンパク質の量よりも少なかった。この結果は、反応させたモノクローナル抗体の濃度が低い領域では、モノクローナル抗体No.3が、モノクローナル抗体No.2よりも、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を阻害する活性が高いことを示す。また、反応させたモノクローナル抗体の濃度が高い領域では、モノクローナル抗体No.2と、モノクローナル抗体No.3との反応性の差が小さかった。DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を完全に阻害するために必要なモノクローナル抗体No.3の量は、300ngであった。
【実施例】
【0135】
図8(c)の結果から、モノクローナル抗体No.4を反応させた後に残存するhCD155-Fcタンパク質の量は、モノクローナル抗体No.4の濃度依存的に減少することが明らかとなった。
【実施例】
【0136】
また、モノクローナル抗体No.4を反応させた後に残存するhCD155-Fcタンパク質の量は、モノクローナル抗体No.2を反応させた後に残存するhCD155-Fcタンパク質の量よりも多かった。この結果は、モノクローナル抗体No.2が、モノクローナル抗体No.4よりも、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を阻害する活性が高いことを示す。DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を完全に阻害するために必要なモノクローナル抗体No.4の量は、1000ngであった。
【実施例】
【0137】
図8(d)の結果から、モノクローナル抗体No.5を反応させても、hCD155-Fcタンパク質の量はあまり減少しないことが明らかとなった。この結果は、モノクローナル抗体No.5は、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を阻害する活性が低いことを示す。モノクローナル抗体No.5を3000ng使用しても、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を完全に阻害することはできなかった。
【実施例】
【0138】
また、図8(e)の結果から、モノクローナル抗体No.6を反応させても、hCD155-Fcタンパク質の量はあまり減少しないことが明らかとなった。この結果は、モノクローナル抗体No.6は、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を阻害する活性が低いことを示す。モノクローナル抗体No.6を3000ng使用しても、DNAM-1タンパク質とCD155タンパク質との相互作用を完全に阻害することはできなかった。
【実施例】
【0139】
[実験例8]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の機能解析1)
実験例1で作製したモノクローナル抗体No.1又はNo.2の存在下で混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)アッセイを行い、T細胞の増殖に対するモノクローナル抗体の影響を検討した。
【実施例】
【0140】
MLRアッセイとは、同種異系刺激細胞とT細胞を混合した場合に観察されるT細胞の増殖を測定するものである。具体的には、まず、ヒト末梢血リンパ球からCD14細胞(5×10個)を分取し、インターロイキン(IL)-4(40ng/ウェル)及びGM-CSF(50ng/ウェル)の存在下で1週間培養し、樹状細胞を誘導した。CD14細胞の培養は24ウェルプレートで行った。一方で、別のドナー由来のヒト末梢血リンパ球からCD8T細胞を分取した。
【実施例】
【0141】
続いて、CD8T細胞を、飽和量以上(1μg/mL)の、F(ab’)型モノクローナル抗体No.1、F(ab’)型モノクローナル抗体No.2、又はF(ab’)型コントロールIgG(対照)と反応させた後、上記の樹状細胞と共培養した。CD8T細胞は5×10個であり、樹状細胞は5×10個であった。
【実施例】
【0142】
共培養の開始から48時間後に上記の抗体を1μg/mLずつ再び添加した。また、共培養の開始から72時間後にブロモデオキシウリジン(BrdU)を添加した。また、共培養の開始から96時間後に抗BrdU抗体で染色することによりCD8T細胞の増殖を測定した。
【実施例】
【0143】
図9は、MLRアッセイの結果を示すグラフである。図9中、「*」は危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、モノクローナル抗体No.1及びNo.2のいずれを添加した場合においても、CD8T細胞の増殖が有意に抑制されたことが明らかとなった。この結果は、モノクローナル抗体No.1及びNo.2が、ヒトT細胞の機能に作用できることを示す。
【実施例】
【0144】
[実験例9]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の機能解析2)
移植片対宿主病マウスモデルを用いて、実験例1で作製したモノクローナル抗体No.1の機能を解析した。
【実施例】
【0145】
本実験例で使用した移植片対宿主病マウスモデルは、免疫不全マウスであるNOGマウス(NOD/Shi-scid,IL-2Rγnullマウス)とヒトCD155トランスジェニックマウスを交配して得られたhCD155Tg/NOGマウスに放射線照射した後、ヒト末梢血リンパ球を移植し、体重の変化又は生存率により移植片対宿主病の症状を測定するモデルである。
【実施例】
【0146】
図10は、本実験の実験プロトコルを示す図である。実験開始の前日に、hCD155Tg/NOGマウス(メス、8週齢)に1.2Gyの放射線照射を行った。続いて、実験開始の日に2.5×10個/匹のヒト末梢血リンパ球を尾静脈注射により移植し、更に300μg/0.2mLのF(ab’)型モノクローナル抗体No.1を腹腔内投与した(n=6)。対照として、抗体の代わりにリン酸緩衝液(PBS)を投与したマウスを使用した(n=6)。続いて、マウスの体重の変化及び生存率を測定し、移植片対宿主病の症状を測定した。実験開始から3、7、11、14、18及び21日目にも上記と同量の抗体を腹腔内投与した。
【実施例】
【0147】
図11は、マウスの生存率を示すグラフである。その結果、モノクローナル抗体No.1を投与したマウスでは有意に生存率が上昇した。この結果は、モノクローナル抗体No.1を投与することにより、移植片対宿主病を予防することができることを示す。
【実施例】
【0148】
また、上記のマウスについて、血液中のグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT)活性及びグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST)活性を測定し、肝機能の低下を検討した。血液中のALT及びASTの活性が上昇することは、肝臓が障害を受けていることを示す。
【実施例】
【0149】
図12(a)は、ALT活性を測定した結果を示すグラフである。また、図12(b)は、AST活性を測定した結果を示すグラフである。その結果、モノクローナル抗体No.1を投与したマウスでは、肝機能の低下が抑制されることが明らかとなった。
【実施例】
【0150】
[実験例10]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の機能解析3)
実験例9と同様の移植片対宿主病マウスモデルを用いて、実験例1で作製したモノクローナル抗体No.1の機能を解析した。実験例9とは実験プロトコルを変更し、モノクローナル抗体No.1による移植片対宿主病の治療効果を検討した。
【実施例】
【0151】
図13は、本実験の実験プロトコルを示す図である。実験開始の前日に、hCD155Tg/NOGマウス(メス、8週齢)に1.2Gyの放射線照射を行った。続いて、実験開始の日に2.5×10個/匹のヒト末梢血リンパ球を尾静脈注射により移植した。続いて、マウスの体重の変化及び生存率を測定し、移植片対宿主病の症状を測定した。実験開始から10、13、17、20日目に300μg/0.2mLのF(ab’)型モノクローナル抗体No.1を腹腔内投与した。モノクローナル抗体No.1の投与はマウスが死亡するまで週2回の割合で継続した。対照として、抗体の代わりにPBSを投与したマウスを使用した。
【実施例】
【0152】
図14は、マウスの生存率を示すグラフである。その結果、モノクローナル抗体No.1を投与したマウスでは有意に生存率が上昇した。この結果は、モノクローナル抗体No.1を投与することにより、移植片対宿主病を治療することができることを示す。
【実施例】
【0153】
[実験例11]
(抗ヒトDNAM-1モノクローナル抗体の機能解析4)
実験例1で作製したモノクローナル抗体No.1とモノクローナル抗体No.2の機能を比較した。より具体的には、まず、ヒト末梢血単核細胞からCD8T細胞を分離し、抗CD3抗体(型式「555336」、BD Bioscience社、0.25μg/mL)、抗CD28抗体(型式「555725」、BD Bioscience社、1μg/mL)及びIL-2(型式「554603」、BD Bioscience社、0.02μg/mL)の存在下で7日間培養し、活性化した。
【実施例】
【0154】
続いて、活性化したCD8T細胞に、コントロールIgG1抗体(対照)、モノクローナル抗体No.1又はモノクローナル抗体No.2を10mg/10細胞の割合で添加し、4℃、30分間インキュベートして結合させた。
【実施例】
【0155】
続いて、抗体処理後のCD8T細胞に、標的細胞となるhCD155発現細胞を、CD8T細胞:hCD155発現細胞=1:5の割合で混合して37℃で4時間共培養した。hCD155発現細胞としては、BW5147細胞にhCD155を強制発現させた細胞を使用した。
【実施例】
【0156】
その後、各CD8T細胞の細胞傷害活性を評価した。CD8T細胞の細胞傷害活性は、CD8T細胞におけるCD107aの発現により評価した。なお、CD107aはCD8T細胞の脱顆粒マーカーである。
【実施例】
【0157】
図15は、検討結果を示すグラフである。コントロールIgG1抗体(対照)で処理したCD8T細胞におけるCD107a発現細胞の割合を100%とし、モノクローナル抗体No.1又はモノクローナル抗体No.2で処理したCD8T細胞におけるCD107a発現細胞の割合を示した。
【実施例】
【0158】
図15中、p=0.002は危険率0.2%未満で有意差が存在することを示し、p=0.004は危険率0.4%未満で有意差が存在することを示し、p=0.02は危険率2%未満で有意差が存在することを示す。
【実施例】
【0159】
その結果、CD8T細胞上のDNAM-1と標的細胞上のhCD155の結合を抗DNAM-1抗体で阻害すると、CD8T細胞の細胞傷害活性が阻害されることが明らかとなった。また、その阻害の程度は、モノクローナル抗体No.1の方がモノクローナル抗体No.2よりも有意に高いことが明らかとなった。
【実施例】
【0160】
[実験例12]
(制御性T細胞に関する検討)
実験例9と同様の移植片対宿主病マウスモデルを用いて、実験例1で作製したモノクローナル抗体No.1の機能を解析した。
【実施例】
【0161】
具体的には、まず、実験開始の前日に、免疫不全マウスであるNOGマウス(NOD/Shi-scid,IL-2Rγnullマウス)とヒトCD155トランスジェニックマウスを交配して得られたhCD155Tg/NOGマウス(メス、8週齢)に1.2Gyの放射線照射を行った。続いて、実験開始の日に2.5×10個/匹のヒト末梢血リンパ球を尾静脈注射により移植し、更に300μg/0.2mLのF(ab’)型モノクローナル抗体No.1を腹腔内投与した(n=6)。対照として、抗体の代わりにリン酸緩衝液(PBS)を投与したマウスを使用した(n=6)。実験開始から3、7、11日目にも上記と同量の抗体を腹腔内投与した。
【実施例】
【0162】
続いて、実験開始から14日目にマウスから脾臓及び末梢血を採取してフローサイトメトリーにより解析し、これらに含まれる制御性T細胞の割合を測定した。CD4Foxp3細胞を制御性T細胞として検出した。
【実施例】
【0163】
図16(a)は、モノクローナル抗体No.1を投与してから14日後のマウスの脾臓中のCD4T細胞における制御性T細胞の割合を測定した結果を示すグラフである。また、図16(b)はモノクローナル抗体No.1を投与してから14日後のマウスの末梢血中のCD4T細胞における制御性T細胞の割合を測定した結果を示すグラフである。
【実施例】
【0164】
その結果、モノクローナル抗体No.1を投与することにより、制御性T細胞の割合が顕著に増加したことが明らかとなった。
【実施例】
【0165】
[実験例13]
(自己免疫疾患に関する検討)
実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルを用いて抗DNAM-1抗体の機能を評価した。具体的には、まず、実験開始の前日に、C57BL/6Jマウスに100μg/0.2mLの抗マウスDNAM-1抗体を腹腔内投与した(n=8)。また、対照として、C57BL/6Jマウスに100μg/0.2mLのコントロールIgG抗体を腹腔内投与した(n=9)。
【実施例】
【0166】
続いて、実験開始時に、各群のマウスに50μg/0.2mLのMyelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)タンパク質の第33~55番目のアミノ酸配列に相当するペプチドを背部皮下投与した。また、200ng/0.2mLの百日咳毒素を腹腔内投与した。更に、実験開始から2日目にも各群のマウスに200ng/0.2mLの百日咳毒素を腹腔内投与した。
【実施例】
【0167】
続いて、実験開始から1、3、7、11、13日目に各群のマウスに100μg/0.2mLの抗マウスDNAM-1抗体又は100μg/0.2mLのコントロールIgG抗体をそれぞれ投与した。
【実施例】
【0168】
実験開始後のマウスを観察し、脳脊髄炎の発症率及び臨床スコアを測定した。臨床スコアは次の評価基準にしたがって評価したスコアの平均値とした。
(臨床スコア)
0:正常
1:尾のトーヌス低下
2:尾の完全下垂
3:歩行異常
4:後肢の完全脱力
5:前肢麻痺を含む後肢の完全脱力
6:死亡
【実施例】
【0169】
図17(a)は脳脊髄炎の発症率を測定した結果を示すグラフである。また、図17(b)は臨床スコアの平均値を算出した結果を示すグラフである。図17(a)及び(b)中、横軸は実験開始後の時間(日)を示す。その結果、抗DNAM-1抗体を投与することにより、自己免疫性脳脊髄炎の臨床スコアが改善されることが明らかとなった。
【実施例】
【0170】
[実験例14]
(肝臓の線維化に関する検討)
抗DNAM-1抗体の投与の代わりにDNAM-1遺伝子欠損(以下、「DNAM-1KO」という場合がある。)マウスを用いて肝臓の線維化に関する検討を行った。対照には野生型マウスを使用した。実験にはbile duct ligation(BDL)モデルを使用した。
【実施例】
【0171】
具体的には、まず、実験開始時に各群のマウスを開腹して総胆管を結索し、BDLモデルを作製した。続いて、実験開始から3、7、14、21日目に各群のマウスから眼窩採血を行った。続いて、採取した血液から血清を分離し、臨床化学分析装置(型式「ドライケム」、富士フイルム社)を用いてアルカリフォスファターゼ及び総ビリルビンを定量した。なお、アルカリフォスファターゼ及び総ビリルビンは肝臓及び胆道の障害の指標である。
【実施例】
【0172】
また、実験開始から21日目に各群のマウスを全身灌流して肝臓を摘出した。摘出した肝臓を固定し、パラフィン包埋して組織切片を作製し、シリウスレッド染色を行い顕微鏡観察した。シリウスレッドは、コラーゲン三本鎖らせんに結合する色素である。
【実施例】
【0173】
図18(a)は、血清中のアルカリフォスファターゼを定量した結果を示すグラフである。図18(a)中、「WT」は野生型マウスの結果であることを示し、「DNAM-1 KO」はDNAM-1遺伝子欠損マウスの結果であることを示し、「naive」は胆管結索処置を行っていないマウスの結果であることを示す。また、横軸は実験開始後の時間(日)を示す。その結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスでは、対照の野生型マウスと比較して、血清中のアルカリフォスファターゼ量が有意に少ないことが明らかとなった。
【実施例】
【0174】
また、図18(b)は、血清中の総ビリルビンを定量した結果を示すグラフである。図18(b)中、「WT」は野生型マウスの結果であることを示し、「DNAM-1 KO」はDNAM-1遺伝子欠損マウスの結果であることを示し、「naive」は胆管結索処置を行っていないマウスの結果であることを示す。また、横軸は実験開始後の時間(日)を示す。その結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、血清中の総ビリルビン量が有意に少ないことが明らかとなった。
【実施例】
【0175】
また、図19(a)及び(b)は肝臓組織の顕微鏡写真である。図19(a)は対照の野生型マウス(WT)の写真であり、図19(b)はDNAM-1遺伝子欠損マウス(DNAM-1 KO)の写真である。倍率はいずれも20倍である。その結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、肝臓の線維化が顕著に軽減していることが明らかとなった。
【実施例】
【0176】
以上の結果は、抗DNAM-1抗体を生体に投与することにより、肝臓の線維化を軽減できることを示す。
【実施例】
【0177】
[実験例15]
(腎臓の線維化に関する検討)
抗DNAM-1抗体の投与の代わりにDNAM-1遺伝子欠損マウスを用いて腎臓の線維化に関する検討を行った。対照には野生型マウスを使用した。実験にはUnilateral ureteral obstruction(UUO)モデルを使用した。
【実施例】
【0178】
具体的には、まず、実験開始時に各群のマウスを開腹して右腎尿管を結索し、UUOモデルを作製した。一方、左腎は無処置とした。続いて、実験開始から7日目に各群のマウスを全身灌流して両腎を摘出した。続いて、摘出した腎臓をホルマリン固定し、パラフィン包埋して組織切片を作製した。続いて、組織切片をマッソントリクローム染色し、観察した。また、パラホルムアルデヒド固定した腎臓をOCTコンパウンドで包埋し、組織切片を作製した。続いて、組織切片を免疫染色し、繊維化の指標の一つであるα-smooth muscle actin(α-SMA)陽性領域の面積を算出した。
【実施例】
【0179】
図20(a)はマッソントリクローム染色した腎臓の切断面の写真である。図20(b)は、図20(a)に基づいて腎皮質の面積を測定した結果を示すグラフである。図20(a)及び(b)中、「UUO」は尿管を結索した右腎の結果であることを示し、「CON」は無処置である左腎の結果であることを示し、「WT」は野生型マウスの結果であることを示し、「DNAM-1 KO」はDNAM-1遺伝子欠損マウスの結果であることを示す。また、図20(b)中、「*」は危険率5%未満で有意差があることを示し、「**」は危険率1%未満で有意差があることを示し、「N.S.」は有意差がないことを示す。その結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、尿管の結索による腎組織の破壊が有意に軽減したことが明らかとなった。
【実施例】
【0180】
また、図21(a)及び(b)は腎臓の組織切片を抗α-SMA抗体で免疫染色した結果を示す顕微鏡写真である。図21(a)は対照である野生型マウスにおける、尿管を結索した右腎の組織切片の代表的な結果を示し、図21(b)はDNAM-1遺伝子欠損マウスにおける、尿管を結索した右腎の組織切片の代表的な結果を示す。また、図21(c)は各群のマウスの腎臓組織におけるα-SMA陽性領域の面積を算出した結果を示すグラフである。
【実施例】
【0181】
図21(a)~(c)中、「WT」は野生型マウスの結果であることを示し、「DNAM-1 KO」はDNAM-1遺伝子欠損マウスの結果であることを示す。また、図21(c)中「CON」は無処置である左腎の結果であることを示す。その結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、尿管の結索による腎組織の線維化が顕著に軽減したことが明らかとなった。
【実施例】
【0182】
以上の結果は、抗DNAM-1抗体を生体に投与することにより、腎臓の線維化を軽減できることを示す。
【実施例】
【0183】
[実験例16]
(炎症性腸炎に関する検討)
抗DNAM-1抗体の投与の代わりにDNAM-1遺伝子欠損マウスを用いて炎症性腸炎に関する検討を行った。対照には野生型マウスを使用した。実験にはデキストラン硫酸(DSS)誘導マウス腸炎モデルを使用した。
【実施例】
【0184】
まず、実験開始の3日前からDNAM-1遺伝子欠損マウス(n=5)及び野生型マウス(n=5)を飼育して馴化させた。この間は通常の水を与えた。続いて、実験を開始し、水の代わりに2%DSS水溶液を与えて各群のマウスを飼育し、体重の変化を測定した。実験開始から9日目に各群のマウスをと殺し、大腸を摘出して腸管の長さを測定した。
【実施例】
【0185】
図22は、対照の野生型マウス(WT)及びDNAM-1遺伝子欠損マウス(KO)の体重を測定した結果を示すグラフである。図22中、「*」は危険率5%未満で有意差があることを示す。また、横軸は実験開始後の時間(日)を示す。その結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、炎症性腸炎による体重の減少が有意に軽減したことが明らかとなった。
【実施例】
【0186】
また、図23(a)は、実験開始から9日目に摘出した、DNAM-1遺伝子欠損マウスの大腸の写真である。また、図23(b)は、実験開始から9日目に摘出した、対照の野生型マウスの大腸の写真である。また、図23(c)は図23(a)及び(b)の結果を数値化したグラフである。図23(a)~(c)中、「WT」は野生型マウスの結果であることを示し、「DNAM-1 KO」はDNAM-1遺伝子欠損マウスの結果であることを示し、「naive」は2%DSS水溶液の代わりに水を与えたマウスの結果であることを示す。また、図23(c)中、「N.S.」は有意差がなかったことを示す。その結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、炎症性腸炎による腸管の短縮が有意に軽減したことが明らかとなった。
【実施例】
【0187】
以上の結果は、抗DNAM-1抗体を生体に投与することにより、炎症性腸炎の病態を軽減できることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明によれば、ヒトの免疫反応を抑制することができる技術を提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22