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明細書 :薬液注入装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年4月11日(2019.4.11)
発明の名称または考案の名称 薬液注入装置
国際特許分類 A61M   5/158       (2006.01)
A61M   5/172       (2006.01)
A61B   5/055       (2006.01)
FI A61M 5/158 500Z
A61M 5/172
A61B 5/055 311
国際予備審査の請求
全頁数 17
出願番号 特願2018-521152 (P2018-521152)
国際出願番号 PCT/JP2017/020856
国際公開番号 WO2017/209311
国際出願日 平成29年6月5日(2017.6.5)
国際公開日 平成29年12月7日(2017.12.7)
優先権出願番号 2016111559
優先日 平成28年6月3日(2016.6.3)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】冨永 悌二
【氏名】齋藤 竜太
【氏名】佐藤 綾耶
【氏名】吉川 彰
【氏名】鎌田 圭
【氏名】大橋 雄二
【氏名】井上 憲司
【氏名】横田 有為
【氏名】芳賀 洋一
【氏名】松永 忠雄
【氏名】鶴岡 典子
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098394、【弁理士】、【氏名又は名称】山川 茂樹
【識別番号】100064621、【弁理士】、【氏名又は名称】山川 政樹
審査請求 未請求
テーマコード 4C066
4C096
Fターム 4C066AA01
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF04
4C066KK04
4C096AA20
4C096AB18
要約 サファイアなどの非磁性材料から構成されて薬液を送液する注入用針(101)と、注入用針(101)に超音波振動を与える超音波振動子(102)とを備える。超音波振動子(102)に固定された非磁性金属からなる固定板(103)を備える。注入用針(101)は、固定板(103)に固定されている。また、超音波振動子(102)は、非磁性金属からなる基台(104)の上に固定されている。超音波振動子(102)は、分極方向が互いに反対向きに積層された複数の圧電体(121),圧電体(122)から構成されている。
特許請求の範囲 【請求項1】
非磁性材料から構成された、薬液を送液するための注入用針と、
前記注入用針に超音波振動を与える超音波振動子と
を備えることを特徴とする薬液注入装置。
【請求項2】
請求項1記載の薬液注入装置において、
前記非磁性材料は、磁場に不感な無機結晶材料であることを特徴とする薬液注入装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の薬液注入装置において、
前記注入用針は、サファイア、石英、YAG、STO、希土類アルミネート、ランガサイトのいずれかから構成されていることを特徴とする薬液注入装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の薬液注入装置において、
前記超音波振動子は、分極方向が互いに反対向きに積層された複数の圧電体から構成されていることを特徴とする薬液注入装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の薬液注入装置において、
前記超音波振動子に固定された非磁性金属からなる固定板を備え、
前記注入用針は前記固定板に固定されている
ことを特徴とする薬液注入装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の薬液注入装置において、
前記超音波振動子は、前記注入用針の長さ方向に直交する変位を主成分とする振動を前記注入用針に与える
ことを特徴とする薬液注入装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、所望とする領域に薬液を注入する薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系疾患に対する薬剤治療では、血液脳関門により薬剤到達が制限されるという大きな問題がある。また、脳内の局所への薬剤の投与では、有効な薬剤の拡散が得られない。脳実質内局所の広範囲に高濃度の薬剤注入を実現することが可能となれば、脳腫瘍をはじめとする中枢神経系疾患への新たな治療法となる。
【0003】
薬剤を脳内の局所に投与する方法として、CED(Convection-enhanced delivery)がある。この技術では、脳内に留置した注入用針から、脳細胞間隙に薬剤を持続して少しずつ注入することにより、脳局所へ高濃度かつ広範囲に薬剤を投与する。CEDでは、血液脳関門をバイパスして薬剤を注入することが可能なため、効率的に薬剤注入を行うことが可能となる。
【0004】
カテーテルを用いた従来のCEDでは、必要量を投与する際、薬液を収容する容器内を陽圧として薬液を持続的に少しずつ、例えば1~5μL/分程度で注入する。この方法では、通常、必要量の薬液投与に2~3日程度要する。
【0005】
また、超音波を併用した薬剤注入システムによるCEDがある(特許文献1参照)。このシステムでは、超音波振動子を貫通するよう注入用針(カニューレ)を配置し、この注入用針に超音波振動を与えることで、従来のCEDと比較して薬剤の拡散範囲をより増大させるようにしている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0046230号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来の技術では、注入用針をいわゆるステンレススチールなどの金属材料から構成している。このため、核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging,MRI)による観察を併用することができないという問題がある。例えば、投与した薬液の拡散度合いをMRIにより観察して確認する場合、金属材料から構成された注入用針が存在すると、磁場の乱れを発生させてアーチファクトの原因となる。このため、上述したような測定では、一度、注入用針を抜いて観察を実施することになり、即時的な観察が不可能である。また、このような状態では、例えば、薬液の拡散が不十分な場合、同じ箇所に再度注入用針を挿入することになり、組織へのダメージが増大する原因となる。このような局所の組織ダメージは、よく知られているように、注入時の針を伝った逆流の原因となり、有効な薬剤の拡散が得られなくなる。このため、再度、注入用針を挿入することは、実質的に薬剤が拡散したことの確認を不可能にする。
【0008】
上述した金属材料による磁場の乱れを回避するためには、例えば、注入用針をプラスチックから構成することが考えられるが、この場合、超音波振動の伝搬損失があるため、注入用針先端に、薬剤が拡散する範囲を増大させるのに十分な超音波振動を伝えることが容易ではない。また、十分な超音波振動を伝えるためには、振動子に過大な入力電圧を印加することになり、振動子の発熱による薬液の劣化などが問題となる。このように、従来の技術では、注入用針により投与している薬液の拡散度合いを、MRIにより観察することが容易ではないという問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、注入用針により投与している薬液の拡散度合いが、MRIにより容易に観察できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る薬液注入装置は、非磁性材料から構成された、薬液を送液するための注入用針と、この注入用針に超音波振動を与える超音波振動子とを備える。非磁性材料は、例えば、磁場に不感な無機結晶材料である。
【0011】
上記薬液注入装置において、注入用針は、サファイア、石英、YAG、STO、希土類アルミネート、ランガサイトのいずれかから構成されていればよい。
【0012】
上記薬液注入装置において、超音波振動子は、分極方向が互いに反対向きに積層された複数の圧電体から構成するとよい。
【0013】
上記薬液注入装置において、超音波振動子に固定された非磁性金属からなる固定板を備え、注入用針は固定板に固定されているようにしてもよい。
【0014】
上記薬液注入装置において、超音波振動子は、注入用針の長さ方向に直交する変位を主成分とする振動を注入用針に与えるようにするとよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、注入用針を非磁性材料、例えば、サファイアなどの磁場に不感な無機結晶材料から構成したので、注入用針により投与している薬液の拡散度合いが、MRIにより容易に観察できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における薬液注入装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態における薬液注入装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態における薬液注入装置の超音波振動子102における周波数インピーダンス特性を示す特性図である。
【図4】図4は、注入用針101の振動の状態を説明するための説明図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における薬液注入装置における注入用針101の先端部における音圧測定結果について示す特性図である。
【図6】図6は、従来の薬液注入装置の構成を示す構成図である。
【図7】図7は、薬液注入装置を用いて投与した薬液が拡散した体積の測定結果を示す特性図である。
【図8A】図8Aは、従来の薬液注入装置を用いて投与した薬液が拡散した状態を撮影した写真である。
【図8B】図8Bは、本発明の薬液注入装置を用いて投与した薬液が拡散した状態を撮影した写真である。
【図9】図9は、薬液注入装置における超音波振動子102の共振周波数を変化させたときの薬液が拡散した体積の測定結果を示す特性図である。
【図10A】図10Aは、超音波振動子102の共振周波数を250MHzとした薬液注入装置を用いて投与した薬液が拡散した状態を撮影した写真である。
【図10B】図10Bは、超音波振動子102の共振周波数を300MHzとした薬液注入装置を用いて投与した薬液が拡散した状態を撮影した写真である。
【図10C】図10Cは、超音波振動子102の共振周波数を500MHzとした薬液注入装置を用いて投与した薬液が拡散した状態を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図1,2を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における薬液注入装置の構成を示す構成図である。また、図2は、本発明の実施の形態における薬液注入装置の構成を示す斜視図である。

【0018】
この薬液注入装置は、非磁性材料から構成された、薬液を送液するための注入用針101と、注入用針101に超音波振動を与える超音波振動子102とを備える。非磁性材料は、例えば、磁場に不感な(非磁性の)無機結晶材料であり、注入用針101は、例えばサファイアから構成されている。サファイアは、酸化アルミニウム(α-Al23)の単結晶体(コランダム)である。この薬液注入装置は、脳や体内の所望の臓器などに所望の薬液を注入するための装置である。従って、注入用針101は、所望の箇所に差し込むことが可能な程度の強い曲げ強度を備え、かつ超音波の伝播損失が少ない材料から構成されていればよい。この材料は、サファイアに限らず、例えば、石英、YAG(イットリウム・ガリウム・ガーネット)、STO(チタン酸ストロンチウム)、希土類アルミネート、ランガサイトなどの非磁性の無機結晶材料でもよい。

【0019】
実施の形態においては、まず、超音波振動子102に固定された非磁性金属からなる固定板103を備える。注入用針101は、固定板103に固定されている。注入用針101は、固定板103よりはみ出す注入用針101の一方の側を、他方の側より長くして固定板103に固定されている。その一方の側が注入先となる。また、他方の側に、薬液注入機構(不図示)を接続する。また、超音波振動子102は、非磁性金属からなる基台104の上に固定されている。非磁性金属は、例えば、真鍮から構成すればよい。

【0020】
ここで、超音波振動子102は、分極方向が互いに反対向きに積層された複数の圧電体121,圧電体122から構成するとよい。この構成によって、より小さな駆動電圧でより強い振動を注入用針101に与えることができる。なお、図示していないが、超音波振動子102には、よく知られた構成による電極配線が設けられており、配線を介して超音波振動子102を駆動するための電圧が印加可能とされている。電極としては、例えば、2層積層した圧電体121,圧電体122の貼り合わせ面に電圧印加電極が設けられ、上下の最表面に接地電極が設けられている。

【0021】
注入用針101は、例えば、長さ150mm程度とされ、外径0.8mm、内径0.5mmとされている。また、圧電体121,圧電体122は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3;PZT)から構成され、また、各々、縦15mm、横15mm、厚さ2mmとされている。また、固定板103は、縦15mm、横15mm、厚さ2mmとされている。また、基台104は、縦15mm、横15mm、厚さ10mmとされている。

【0022】
サファイアから構成した注入用針101は、マイクロ引き下げ法やEFG法などの形状制御結晶成長法により作製すればよい。例えば、坩堝に酸化アルミニウム等の原料を入れ、誘導加熱により融点以上まで温度を上昇させる。次に、坩堝の底面に設けられたチューブ形状に対応した射出孔から、所定の速度により、結晶を引き下げて結晶育成を行う。

【0023】
上述した構成とした実施の形態における薬液注入装置の超音波振動子102における周波数インピーダンス特性を図3に示す。図3に示すように、126kHz付近に広がり振動によると思われる共振があり、これより高い周波数に細かな共振が生じている。この細かな振動は、圧電体の積層方向に振幅を持つ振動である。この振動が注入用針101に伝わることで、注入用針101の長さ方向に直交する(垂直な)変位を主成分とする振動を注入用針101に生じさせる。後述するように、この振動が薬液の拡散に効果的に作用しているものと考えられる。

【0024】
以下、注入用針101の振動状態について、図4を用いて説明する。図4は、注入用針101の振動の状態を説明するための説明図である。なお図4では、紙面上下方向の振動のみを表現しているが、実際はこれ以外の振動も結合した振動となっている。図4において左側が注入用針101の先端側であり、右側が超音波振動子102の側である。

【0025】
図4において、(a)は、ある時刻における注入用針101の変位の様子を示す。(a)において、振動の節(あるいは腹)であった箇所がその後の(b)の時刻では、矢印のように注入用針101の先端側に移動し、時間経過と共に(c),(d)のように変位が大きくなる。この後、(e),(f)に示すように変位が小さくなり、(g)において振動の節(あるいは腹)が矢印のように注入用針101の先端側に移動する。このような変位を繰り返すことで、注入用針101の先端側に進行するような超音波が生じ、この超音波により薬液の拡散が促進される。

【0026】
次に、実施の形態における薬液注入装置における注入用針101の先端部における音圧測定結果について図5に示す。注入用針101の一方の側の先端を水中に浸け、水中に設置したハイドロフォンにより音圧を測定した。音圧は電圧として評価した。図5に示されているように、253kHz付近をはじめ、いくつかの箇所で強い共振を確認できる。以下に示す、薬液拡散効果の実験では、主に253kHzの共振を用いた。

【0027】
以下、薬液拡散効果の実験について説明する。この実験では、上述した実施の形態における薬液注入装置に対する比較として、図6に示す従来の薬液注入装置を用いた。比較として用いた薬液注入装置は、針状のガイド部201と、ガイド部201に超音波振動を与える振動部202とを備える。振動部202は、振動子221とホーン222とから構成されている。ガイド部201は、ホーン222の先端に固定されている。なお、振動子221の側には、把持部204が固定されている。

【0028】
ガイド部201は、図6(b)の断面図に示すように、ガイド部201の延在方向に断面コの字型の溝が形成されている。この溝に、薬液チューブ203がはめ込まれる。ガイド部201は、タングステンカーバイト(WC)をコバルト(Co)で焼結したWC-Coから構成されている。また、薬液チューブ203は、PTFE(polytetrafluoroethylene)から構成されている。

【0029】
ガイド部201の外径は、0.65mmとされ、溝底部の幅は0.2mmとされ、溝の深さは0.19mmとされている。また、ガイド部201は、長さ40mmとされている。また、薬液チューブ203は、外径0.153mm、内径0.051mmとされ、長さ150mmとされている。また、薬液チューブ203の先端側の約40mmがガイド部201の溝にはめ込まれている。

【0030】
次に、実験における脳標本作製の手順について説明する。実験動物としてラットを用い、麻酔下で以下の手技を行う。

【0031】
1.脳定位固定装置にてラットの頭部を固定する。使用するラットは、F344雄6-8週齢である。
2.頭部の毛を刈り、皮膚をカットし、頭骨のブレグマを確認してブレグマから右へ3mm、前方へ0.5mmの位置にドリルで1.5-2.5mm程度の穴を頭骨に開ける。
3.穴を開けた箇所に注入用針101またはガイド部201をセットして脳表から深さ4.5mmに穿刺する。
4.薬液を局所投与する。0.2μL/minで15分間投与後、流速を0.5μL/minに変えて10分投与してその後、0.8μL/minで15分投与し5分静置し終了とする。最大注入量を20μLとする。
5.断頭して抜脳した後、OCT(Optimal Cutting Temperature)コンパウンドにて包埋、凍結させる。クライオスタットを用いて包埋凍結した脳組織を任意の厚みにてスライスして切片を作製してスライドグラスにのせて封入し、標本とする。必要に応じて染色等を行い封入する。

【0032】
次に作製した標本の観察結果について説明する。図7は、薬液注入装置を用いて投与した薬液が拡散した体積を示している。また、図8Aは、従来の薬液注入装置を用いて投与した薬液が拡散した状態を撮影した写真、図8Bは、本発明の薬液注入装置を用いて投与した薬液が拡散した状態を撮影した写真である。図8A、図8Bにおいて、矢印で薬液の注入方向を示している。

【0033】
図7に示すように、いずれにおいても超音波を印加することで、より広く薬液が拡散していることが分かる。また、従来の薬液注入装置に比較すると、本発明の薬液注入装置を用いた場合には、薬液の拡散容積はわずかに増大する程度であるが、拡散容積のばらつきは小さくなっており、脳内で常に安定した薬剤拡散が得られていることがわかる。

【0034】
図9に、薬液注入装置を用いてラット脳内に色素を投与した際の、超音波振動子102の主な共振周波数による色素の拡散容積を示す。図9に示すように、250kHz帯、300kHz帯、500kHz帯の共振周波数において、色素の拡散容積が異なり、300kHz帯の共振周波数を用いた際が最も色素の拡散容積が大きい。これらのことは、薬液注入装置を用いた薬剤局所投与において、超音波振動子102の最適周波数は、300kHz帯であることを示している。

【0035】
図10Aは、超音波振動子102の共振周波数を250kHz帯とした薬液注入装置を用いた場合の、ラット脳内の薬液が拡散した状態を撮影した写真である。図10Bは、超音波振動子102の共振周波数を300kHz帯とした薬液注入装置を用いた場合の、ラット脳内の薬液が拡散した状態を撮影した写真である。図10Cは、超音波振動子102の共振周波数を500kHz帯とした薬液注入装置を用いた場合の、ラット脳内の薬液が拡散した状態を撮影した写真である。図10A、図10B、図10Cにおいて、矢印で薬液の注入方向を示している。

【0036】
従来の薬液注入装置は、ガイド部がWC-Coから構成されているため、MRIの観察において磁場の乱れを発生させてアーチファクトを発生させていた。また、従来の薬液注入装置は、ガイド部に薬液チューブをはめて用いているため、使い難いという問題がある。これに対し、本発明では、MRIの観察において磁場の乱れを発生させることが無い。また、チューブをはめるなどの複雑な操作の必要が無い。

【0037】
以上に説明したように、本発明によれば、薬液を送液する注入用針をサファイアなどの磁場に不感な無機結晶材料から構成したので、注入用針により投与している薬液の拡散度合いが、MRIにより容易に観察できるようになる。

【0038】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、注入用針は、固定板に形成した貫通穴に挿入して固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
101…注入用針、102…超音波振動子、103…固定板、104…基台、121,122…圧電体。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8A】
7
【図8B】
8
【図9】
9
【図10A】
10
【図10B】
11
【図10C】
12