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明細書 :酵母と断片化cDNAライブラリーを用いたタンパク質の新しい同定法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成31年4月11日(2019.4.11)
発明の名称または考案の名称 酵母と断片化cDNAライブラリーを用いたタンパク質の新しい同定法
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
C12N  15/81        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N  15/62        (2006.01)
FI C12Q 1/02 ZNA
C12N 15/81 Z
C12N 1/19
C12N 15/62
国際予備審査の請求
全頁数 16
出願番号 特願2018-521014 (P2018-521014)
国際出願番号 PCT/JP2017/020614
国際公開番号 WO2017/209280
国際出願日 平成29年6月2日(2017.6.2)
国際公開日 平成29年12月7日(2017.12.7)
優先権出願番号 2016112107
優先日 平成28年6月3日(2016.6.3)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】岸田 昭世
【氏名】小山 浩史
【氏名】岸田 想子
【氏名】飯島 幹雄
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4B065
Fターム 4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ21
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4B065AA72X
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4B065BA02
4B065CA24
4B065CA27
4B065CA60
要約 本発明は、酵母の核内でのタンパク質の新しい同定方法を提供することを目的とし、具体的には、酵母の核内において、核内移行シグナルとDNA結合タンパク質とおとりタンパク質とを含む融合タンパク質、及び核内移行シグナルと転写活性化タンパク質と断片化した部分cDNAによりコードされるシグナルペプチド、細胞膜若しくは細胞内小器官局在化配列又は細胞膜貫通領域が欠損した獲物タンパク質とを含む融合タンパク質を発現させ、該おとりタンパク質と該獲物タンパク質との結合を、レポーター遺伝子の活性や発光などを指標に検出する、タンパク質の同定方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
第1及び第2のベクターを導入した酵母形質転換体を培養する工程を含む、タンパク質の同定方法であって、
第1のベクターは、核内移行シグナルをコードする遺伝子とDNA結合タンパク質をコードする遺伝子とおとりタンパク質をコードする遺伝子とを含み、
第2のベクターは、核内移行シグナルをコードする遺伝子と転写活性化タンパク質をコードする遺伝子と断片化した部分cDNAとを含み、該断片化した部分cDNAは、シグナルペプチド、細胞膜若しくは細胞内小器官局在化配列又は細胞膜貫通領域が欠損した獲物タンパク質をコードするものであり、且つ、
前記酵母形質転換体の核内において、前記核内移行シグナルとDNA結合タンパク質とおとりタンパク質とを含む融合タンパク質、及び前記核内移行シグナルと転写活性化タンパク質と断片化した部分cDNAによりコードされる獲物タンパク質とを含む融合タンパク質が発現し、該おとりタンパク質と該獲物タンパク質との結合を、レポーター遺伝子の活性を指標に検出する、
前記方法。
【請求項2】
おとりタンパク質がリガンドであり、且つ獲物タンパク質が受容体タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
おとりタンパク質が各種局在シグナル配列を除いた部分cDNAによりコードされるタンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ランダムプライム逆転写によって得られた、長さ100~1800bpを有するcDNA。
【請求項5】
長さが100~1000bpである、請求項4記載のcDNA。
【請求項6】
核内移行シグナルをコードする遺伝子と転写活性化タンパク質をコードする遺伝子と断片化した部分cDNAとを含むベクターであって、該断片化した部分cDNAが請求項4又は5記載のcDNAである、前記ベクター。
【請求項7】
請求項4若しくは5記載のcDNA又は請求項6記載のベクターを含む、請求項1~3のいずれか1項記載のタンパク質の同定方法用試薬キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば酵母と断片化cDNAライブラリーを用いたタンパク質の同定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内外での複数の分子の会合又は結合が、細胞の増殖や分化、接着等を制御する生体シグナルとして働くことが知られている。特に、ホルモン等各種のリガンド分子の生理作用を解明するためには、細胞膜上のレセプター分子の同定が有用である。これらの目的には、免疫沈降等でレセプター分子を含むタンパク質複合体を濃縮し、質量分析を行う方法や培養細胞を用いたパンニング法等が一般化しつつある。しかしながら、未だに受容体の不明な「オーファンリガンド」が多数知られている。その受容体同定は、各種疾患病態と関連する可能性が高く注目されているが、スクリーニング方法の煩雑さ、検出感度の不足等から進んでいない。
【0003】
一方、細胞内(細胞質)の分子の結合同定法として、酵母two-hybrid法が知られている(非特許文献1~3)。酵母two-hybrid法では、遺伝子ベクターを用いて核内移行シグナルを付加した既知遺伝子と核内移行シグナルを付加した全長cDNAキメラ遺伝子(市販品では通常はオリゴdTプライマーで逆転写したもの)を2種類発現させ、分子同士の結合が核内で形成された場合、発現誘導されるレポーター遺伝子の活性や発光等で分子間の結合を検出する。
【0004】
酵母two-hybrid法において、リガンド分子や受容体等の膜タンパク質をコードする遺伝子をベクターに挿入した場合、5'末端のシグナルペプチドや3'末端付近の細胞膜貫通領域の発現により、キメラ遺伝子を核内で発現させることが困難であり、従来の酵母two-hybrid法はリガンド-受容体の結合の解析には適していない。
【0005】
また、酵母two-hybrid法の改変が多数報告されている。例えば、使用する細胞を酵母以外の生物に変えたり、レポータージーン部分の開発による改良を目指したものが挙げられる。しかしながら、従来において、(膜)タンパク質の部分領域ライブラリーとして核内で発現させて、本来細胞外で起こる相互作用を核内で検出しようとする意図の酵母two-hybrid法の改変は知られていなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Young, K., Biol. Reprod., 1998年, 58(2), pp. 302-11
【非特許文献2】Joung, J.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 2000年, 97(13), pp. 7382-7
【非特許文献3】Fields, S.及びSong, O., Nature, 1989年, 340(6230), pp. 245-246
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、5'末端のシグナルペプチドや3'末端付近の細胞膜貫通領域の発現により、従来の酵母two-hybrid法はリガンド-受容体の結合の解析には適していない。そこで、本発明は、酵母two-hybrid法を改変し、リガンド-受容体を含むタンパク質間の結合の解析に好適な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、従来の酵母two-hybrid法(オリゴdTプライマーによる逆転写での作製)とは異なり、cDNAライブラリー作製時に、ランダムプライマーを用いて任意の個所から逆転写したcDNAや超音波処理等で切断して意図的に断片化したcDNAをベクターに挿入した断片化cDNAライブラリーを用いて、酵母two-hybrid法を行うことで、当該断片化cDNAライブラリーには、膜タンパク質であっても5'末端のシグナルペプチドや3'末端付近の細胞膜貫通領域の欠損したクローンが含まれているので、核内で安定して発現させることが可能となり、細胞外でのリガンドと受容体の細胞外部分との結合を核内で再現し、レポータージーンを利用した結合の検出という過程で従来法では行えなかった結合解析が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)第1及び第2のベクターを導入した酵母形質転換体を培養する工程を含む、タンパク質の同定方法であって、第1のベクターは、核内移行シグナルをコードする遺伝子とDNA結合タンパク質をコードする遺伝子とおとりタンパク質をコードする遺伝子とを含み、第2のベクターは、核内移行シグナルをコードする遺伝子と転写活性化タンパク質をコードする遺伝子と断片化した部分cDNAとを含み、該断片化した部分cDNAは、シグナルペプチド、細胞膜若しくは細胞内小器官局在化配列又は細胞膜貫通領域が欠損した獲物タンパク質をコードするものであり、且つ、前記酵母形質転換体の核内において、前記核内移行シグナルとDNA結合タンパク質とおとりタンパク質とを含む融合タンパク質、及び前記核内移行シグナルと転写活性化タンパク質と断片化した部分cDNAによりコードされる獲物タンパク質とを含む融合タンパク質が発現し、該おとりタンパク質と該獲物タンパク質との結合を、レポーター遺伝子の活性を指標に検出する、前記方法。
(2)おとりタンパク質がリガンドであり、且つ獲物タンパク質が受容体タンパク質である、(1)記載の方法。
(3)おとりタンパク質が各種局在シグナル配列を除いた部分cDNAによりコードされるタンパク質である、(1)記載の方法。
(4)ランダムプライム逆転写によって得られた、長さ100~1800bpを有するcDNA。
(5)長さが100~1000bpである、(4)記載のcDNA。
(6)核内移行シグナルをコードする遺伝子と転写活性化タンパク質をコードする遺伝子と断片化した部分cDNAとを含むベクターであって、該断片化した部分cDNAが(4)又は(5)記載のcDNAである、前記ベクター。
(7)(4)若しくは(5)記載のcDNA又は(6)記載のベクターを含む、(1)~(3)のいずれか1記載のタンパク質の同定方法用試薬キット。
【0010】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2016-112107号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オーファンリガンドの受容体解明や、膜タンパク質が結合する分子を検索同定することで各種疾患に関わるシグナル分子の解明に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るタンパク質の同定方法(以下、「本方法」と称する)は、第1及び第2のベクターを導入した酵母形質転換体を培養する工程を含み、ここで、
第1のベクターは、核内移行シグナルをコードする遺伝子とDNA結合タンパク質をコードする遺伝子とおとり(bait)タンパク質をコードする遺伝子とを含み、
第2のベクターは、核内移行シグナルをコードする遺伝子と転写活性化タンパク質をコードする遺伝子と断片化した部分cDNAとを含み、該断片化した部分cDNAは、シグナルペプチド、細胞膜若しくは細胞内小器官局在化配列又は細胞膜貫通領域が欠損した獲物(prey)タンパク質をコードするものであり、且つ、
該酵母形質転換体の核内において、該核内移行シグナルとDNA結合タンパク質とおとりタンパク質とを含む融合タンパク質、及び該核内移行シグナルと転写活性化タンパク質と断片化した部分cDNAによりコードされる獲物タンパク質とを含む融合タンパク質が発現し、該おとりタンパク質と該獲物タンパク質との結合を、レポーター遺伝子の活性を指標に検出する、
方法である。

【0013】
一般に、従来の酵母two-hybrid法では、DNA結合タンパク質と興味のある分子(おとりタンパク質)との融合タンパク質及び転写活性化タンパク質と全長cDNAから成るcDNAライブラリー(由来の)分子(獲物タンパク質)との融合タンパク質を酵母の核内で発現させ、おとりタンパク質とライブラリー由来分子との結合が生じたときに発現誘導が起こるレポーター遺伝子の活性を指標に、当該おとりタンパク質とライブラリー由来分子との結合を検出する。

【0014】
酵母two-hybrid法は、二分子の結合を指標とする安価な大規模スクリーニングの手法として広く普及した。しかしながら、cDNAライブラリー由来のタンパク質がシグナルペプチド、細胞膜や各種細胞内小器官へ局在させる配列を含む場合、核内で該当分子を発現させられないため、おとりタンパク質との結合を核内で形成させることができず、レポーター遺伝子の発現を検出できない。そのため、酵母two-hybrid法は、一般に細胞内タンパク質同士の結合を検出する手法という位置づけで利用されている。また、従来において市販されているライブラリーは、oligo dTプライマーを用いてmRNAの3'末端側から逆転写合成した(ほぼ完全長の)cDNAを挿入したものである。

【0015】
一方、本方法では、意図的に断片化したcDNAを挿入したcDNAライブラリーを使用するため、従来法において見逃していた膜タンパク質や各種の局在配列を含む分子の部分領域を酵母核内で発現させることで、おとりタンパク質との結合を検出でき、通常細胞外で起こるリガンド-受容体の結合や、細胞内外を問わず膜タンパク質同士の会合を酵母の核内で検出することができる。

【0016】
本方法では、先ず、第1及び第2のベクターを準備する。

【0017】
第1のベクターは、核内移行シグナルをコードする遺伝子とDNA結合タンパク質をコードする遺伝子とおとりタンパク質類をコードする遺伝子とを機能的に連結した融合遺伝子を含む。第1のベクターとしては、酵母で機能するベクターであればよく、例えばpBTM116、pGBKT7、pGBT9等が挙げられる。

【0018】
第1のベクターにおいては、上記のDNA結合タンパク質をコードする遺伝子とおとりタンパク質類をコードする遺伝子とを含む融合遺伝子によりコードされる融合タンパク質を酵母の核内に移行すべく、核内移行シグナルをコードする遺伝子が当該融合遺伝子に内包、あるいは予め付加(例えばLarge T 抗原 residues 47 to 54 (PKKKRKVE:配列番号1)、LexAタンパク質の内在性の核局在シグナル配列(KRLKK:配列番号2)等)されていなければならない。

【0019】
また、DNA結合タンパク質としては、例えばGal4タンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)、LexAタンパク質のDBD等が挙げられる。

【0020】
さらに、おとりタンパク質類としては、例えば受容体の不明なオーファンリガンド、各種局在シグナル(細胞膜貫通ドメインや細胞内小器官への局在シグナル配列等)を除いた部分cDNAによりコードされるタンパク質等が挙げられる。

【0021】
このように、第1のベクターでは、例えばN末端からC末端の方向に、順に核内移行シグナル-DBD-おとりタンパク質を含む融合タンパク質を発現させるべく、各遺伝子を機能的に連結した形で含む。

【0022】
第2のベクターは、核内移行シグナルをコードする遺伝子と転写活性化タンパク質をコードする遺伝子と断片化した部分cDNAとを機能的に連結した融合遺伝子を含む。第2のベクターとしては、酵母で機能するベクターであればよく、例えばpACT2、pGADT7、pGAD10等が挙げられる。

【0023】
第2のベクターにおいては、上記の転写活性化タンパク質をコードする遺伝子と断片化した部分cDNAとを含む融合遺伝子によりコードされる融合タンパク質を酵母の核内に移行すべく、当該融合遺伝子に核内移行シグナルが内在又は予め付加(例えば、Large T 抗原residues 47 to 54 (PKKKRKVE:配列番号1)、LexAタンパク質の内在性の核局在シグナル配列(KRLKK:配列番号2)等)されていなくてはならない。

【0024】
また、転写活性化タンパク質としては、第1のベクター中に含まれる融合遺伝子によりコードされるDNA結合タンパク質と共に、酵母中のレポーター遺伝子の制御配列(プロモーター等)上に近接に位置した場合に転写活性能を有し、レポーター遺伝子の転写を活性化するものであり、例えば、Gal4タンパク質のDBDに対応するGal4タンパク質のアクティベータードメイン(AD)等が挙げられる。

【0025】
一方、断片化した部分cDNAは、オリゴdTプライマーを用いて作製した全長遺伝子のcDNAライブラリーと異なり、例えば公知のcDNAライブラリー作製(例えば、cDNA Library Construction Kit(タカラバイオ株式会社)等の市販のキットを用いたcDNAライブラリー作製)において、任意の生物や組織から採取したmRNAとランダムプライマー(例えば、下記の実施例で使用される配列番号3に記載の塩基配列から成るランダムプライマー)を用いて任意の個所から逆転写したcDNAライブラリー、又は超音波処理等で切断して意図的に断片化したcDNAライブラリーである。ランダムプライム逆転写によって得られたcDNAは、例えば長さ100~1800bp(好ましくは、100~1000bp)を有する。超音波処理等を用いた切断による断片化したcDNAライブラリーは、例えば、EcoRIアダプターを末端に付加し、EcoRI断端を持つ大過剰のベクターと結合させることにより作製する。当該部分cDNAは、シグナルペプチド、細胞膜若しくは細胞内小器官局在化配列又は細胞膜貫通領域が欠損した、リガンドや膜タンパク質と結合する獲物タンパク質をコードするものを含む。獲物タンパク質としては、例えば受容体タンパク質等が挙げられる。

【0026】
このように、第2のベクターでは、例えばN末端からC末端の方向に、順に核内移行シグナル-Gal4アクティベータードメイン(AD)-断片化cDNAによりコードされる獲物タンパク質を含む融合タンパク質を発現させるべく、各遺伝子を機能的に連結した形で含む。

【0027】
本方法では、次に第1及び第2のベクターを酵母に形質転換し、第1及び第2のベクターを発現する酵母形質転換体を作製する。酵母としては、例えば出芽酵母(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))等が挙げられる。なお、酵母の核内には、第1のベクター中に含まれる融合遺伝子によりコードされるDNA結合タンパク質と第2のベクター中に含まれる融合遺伝子によりコードされる転写活性化タンパク質とにより転写が活性化される制御配列とその下流に位置するレポーター遺伝子が存在する。当該制御配列としては、例えば、Gal4タンパク質についてはUASG(Upstream Activation Sequences for galactose)と称される塩基配列等が挙げられる。また、レポーター遺伝子としては、例えばβ-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子やHIS3等が挙げられる。制御配列とその下流に位置するレポーター遺伝子は、ゲノムDNAに組み込まれているために酵母の核内に存在する。

【0028】
酵母への第1及び第2のベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。

【0029】
次いで、得られた酵母形質転換体を生育可能な条件下で培養する。当該酵母形質転換体の核内において、核内移行シグナルとDNA結合タンパク質とおとりタンパク質とを含む融合タンパク質、及び核内移行シグナルと転写活性化タンパク質と断片化した部分cDNAによりコードされる獲物タンパク質とを含む融合タンパク質が発現し、該おとりタンパク質と該獲物タンパク質とが相互作用することで該DNA結合タンパク質と該転写活性化タンパク質とが近接し、レポーター遺伝子上流に位置する制御配列に結合することで、レポーター遺伝子の転写が促進される。従って、当該レポーター遺伝子の活性を指標に、おとりタンパク質と獲物タンパク質との結合を確認し、おとりタンパク質に対応する獲物タンパク質を同定することができる。

【0030】
酵母形質転換体の培養においては、形質転換体が生育し、且つレポーター遺伝子によりコードされるレポータータンパク質が失活しないように、温度は、例えば25~30℃に設定し、培地のpHは例えばpH5.8付近に設定し、各種アッセイに必要な量の菌体が得られるまでの期間は培養を続ける。

【0031】
レポーター遺伝子の活性が確認された酵母形質転換体において、第2のベクターに含まれる断片化した部分cDNAの配列を決定することで、部分的な獲物タンパク質をコードする遺伝子断片を同定することができる。さらに、同定した部分的な獲物タンパク質をコードする遺伝子断片を、例えば既知のデータベースに登録された遺伝子配列と比較することで、(登録されている場合には)獲物タンパク質をコードする遺伝子や当該遺伝子によりコードされる全長の獲物タンパク質を同定することもできる。

【0032】
本方法によれば、培養細胞でのパンニング法を行った際に比べて、酵母のレポーター遺伝子のシステムを利用することにより、結合の検出感度(最大で1μM程度のKdの結合まで検出できると見込まれる)とS/N比の向上、スクリーニングの迅速化(100万クローン程度の結合判定に通常は14日間程度が必要となる)、回収する遺伝子の安定性、クローニングの迅速化、経済性等が期待される。また、オーファンリガンドの受容体同定は、創薬に直結する可能性があり、本方法をオーファンリガンドの受容体同定に適用することができる。さらに、本方法を幅広く膜タンパク質同士の結合スクリーニングに適用することも可能である。

【0033】
また、本発明は、上記のランダムプライム逆転写によって得られたcDNA自体、第2のベクター自体、当該ランダムプライム逆転写によって得られたcDNA又は第2のベクターを含む本方法用試薬キットに関する。当該試薬キットは、例えば、本方法に使用するバッファーや容器、使用説明書等を更に含むことができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
1.断片化cDNAの合成
断片化cDNAの合成は、cDNA Library Construction Kit(タカラバイオ株式会社)の方法を、一部条件を改変して行った。
【実施例】
【0035】
(1) 1st strand cDNAの合成
制限酵素XhoIの認識配列(5'-CTCGAG-3')の3'側に、dATPとdCTPとdGTPとdTTPの4種類のヌクレオチドをランダムに6個付加したプライマー(配列5'-TAGAACTCGAGNNNNNN-3'(配列番号3);以下、「ランダムプライマー」と称する)(600 μM、1 μl)と、任意の生物や組織から採取したmRNA 5 μgと、dNTP混合液(dATP, 5-methyl dCTP, dGTP, dTTP)(各10 mM) 1.2 μlをマイクロ遠心チューブ内で混合し、RNaseを含まない水で10 μlにした。これを65℃で5分間加熱して、氷上で急冷して変性させた。これに、逆転写酵素(PrimeScript RTase タカラバイオ株式会社)(200 U/μl) 1 μlと、RNase阻害剤(40 U/μl) 1 μlと、反応用緩衝液(250 mM Tris-HCl(pH 8.3), 375 mM KCl, 15 mM MgCl2) 4 μlと、RNaseを含まない水4 μlを加え20 μlにし、42℃で1時間逆転写反応を行なった。1時間経過後、氷上で2分間冷却した。この反応で合成されたcDNAを1st strand cDNAとした。
【実施例】
【0036】
(2) 2nd strand cDNAの合成
1st strand cDNAにdNTP混合液(dATP, dCTP, dGTP, dTTP) 4.5 μlと、RNaseHとDNA ligaseの混合液 2 μl、DNA polymerase I(20 U/μl) 2 μl、反応用緩衝液 30 μl、RNaseを含まない水87.5 μlを加え146 μlにし、16℃で2時間反応させた。2時間経過後、70℃で10分間静置後、室温で5分間以上静置した。この反応で合成された二本鎖cDNAを2nd strand cDNAとした。
【実施例】
【0037】
(3) 2nd strand cDNAの末端の平滑化
2nd strand cDNAに、T4 DNA polymerase(1 U/μl) 4 μlを加え、37℃で10分間反応させ、2nd strand cDNAの末端を平滑化した。これに等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1混合液)を添加し、よく混合後、遠心分離を行い、上層を新しいマイクロ遠心チューブに移した。これに等量のクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1混合液)を添加し、よく混合後、遠心分離を行い、上層を新しいマイクロ遠心チューブに移した。これに1/10量の3 M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.2)と、2.5倍量のエタノールを加え、よく混合後、室温で15,000 rpmで30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿に70%エタノールを200 μl加え、沈殿をリンス後、室温で15,000 rpmで3分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿を乾燥させた後、RNaseを含まない水を12.5 μl加え沈殿を溶解した。これを末端平滑化2nd strand cDNAとした。
【実施例】
【0038】
(4) 末端平滑化2nd strand cDNAへのEcoRIアダプターの付加
末端平滑化2nd strand cDNA溶液12.5 μlに、EcoRI-SmaIアダプター(5'末端を脱リン酸化した5'-AATTCCCGGG-3'の一本鎖DNA(配列番号4)と、5'-CCCGGG-3'の一本鎖DNAをアニーリングさせたもの)(0.4 μg/μl) 3.5 μlと、T4 DNA ligase(350 U/μl) 2 μlと、反応用緩衝液2 μlを加え、全量を20 μlとした。これを、よく混合した後、8℃で一晩以上反応させた。反応後、70℃で30分間静置し、T4 DNA ligaseを失活させた後、室温でさらに5分間静置した。これをアダプター付加2nd strand cDNAとした。
【実施例】
【0039】
(5) アダプター付加2nd strand cDNAの制限酵素XhoIによる切断
アダプターを付加した2nd strand cDNA溶液20 μlに、XhoI(10 U/μl) 3 μlと、反応用緩衝液(500 mM Tris-HCl(pH 7.5), 100 mM MgCl2, 10 mM dithiothreitol, 1 M NaCl) 5 μlと、0.1% BSA(ウシ血清アルブミン) 5 μlと、RNaseを含まない水を17 μl加え、全量を50 μlとした。これを、よく混合した後、37℃で3時間反応させた。この反応で、ランダムプライマー内のXhoI認識配列が切断されるが、cDNA内のXhoI認識配列には1st strand cDNA合成時に5-methyl dCTPが使用されている為、XhoIで切断されない。
【実施例】
【0040】
(6) 短鎖DNAの除去
ゲル濾過やシリカベースのビーズを用いて未反応のアダプターや数十残基以下の短鎖DNAの除去を行う。TE緩衝液(10 mM Tris-HCl(pH 8.0), 1 mM EDTA)で平衡化したゲル濾過カラム(目的とするcDNAのサイズによりゲルの種類を選択する)に、XhoIで切断した2nd strand cDNAを添加し、遠心分離(条件はカラムによる)を行った。この遠心操作で、未反応のEcoRI-SmaIアダプターや、XhoIで切断された短いDNA断片を含まない、一定サイズ以上のcDNAを取得した。これに等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1混合液)を添加し、よく混合後、遠心分離を行い、上層を新しいマイクロ遠心チューブに移した。これに等量のクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1混合液)を添加し、よく混合後、遠心分離を行い、上層を新しいマイクロ遠心チューブに移した。これに1/10量の3 M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.2)と、2.5倍量のエタノールを加え、よく混合後、室温で15,000 rpmで30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿に70%エタノールを200 μl加え、沈殿をリンス後、室温で15,000 rpmで3分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿を乾燥させた後、RNaseを含まない水を15 μl加え、沈殿を溶解し、これをEcoRI-XhoI切断処理済みcDNAとした。
【実施例】
【0041】
(7) ベクターへのEcoRI-XhoI切断処理済みcDNAの結合
目的に応じたベクターをEcoRIとXhoIで切断したものと、EcoRI-XhoI切断処理済みcDNAをDNA ligaseを用い結合した。
【実施例】
【0042】
次いで、ベクターとEcoRI-XhoI切断処理済みcDNAを結合したものを、大腸菌にエレクトロポレーション法で導入し、任意の10クローンを選んでPCR法で挿入されている断片化cDNAのサイズを解析したところ100~1000塩基であることを確認した後、大腸菌からcDNAライブラリーを回収した。
【実施例】
【0043】
2.マウス脳由来分子のスクリーニング
上記第1節に準じて、マウスの脳から回収したmRNAを元に作製したcDNAをベクターpACT2に挿入したライブラリーを、pBTM116-HA-KM-hENHOで形質転換した出芽酵母L40に導入し、SD-Leu-Trp-His+3-AT培地に播種した(3-AT = 3-amino-1,2,4-triazole)。ここで、cDNAを挿入したベクターpACT2は、5'末端から3'末端の方向に、順にLarge T 抗原 residues 47 to 54 (PKKKRKVE:配列番号1)をコードする遺伝子とGal4タンパク質のアクティベータードメイン(AD)をコードする遺伝子と作製したcDNAとを有する。また、ベクターpBTM116-HA-KM-hENHOは、5'末端から3'末端の方向に、順にLexAタンパク質の内在性の核局在シグナル配列(KRLKK:配列番号2)とDNA結合ドメイン(DBD)をコードする遺伝子と、おとりタンパク質をコードする遺伝子としてヒトのアドロピン(hENHO)をコードする遺伝子とを有する。さらに、出芽酵母L40は、UASGの下流の制御下にβ-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子(レポーター遺伝子)とHIS3遺伝子を有する。細胞内で二つのプラスミドから発現される分子が結合するとHIS3遺伝子の発現により、His欠乏培地でも酵母細胞は生育可能となる。
【実施例】
【0044】
播種した培地を30℃の培養器に移し、コロニーが視認出来るまで数日間培養した。コロニーを新しいSD-Leu-Trp培地に移し、30℃の培養器で培養した。増殖した酵母の一部を使用し、β-ガラクトシダーゼアッセイを行い、β-ガラクトシダーゼ活性陽性のクローン群を解析したところ、膜タンパク質の部分cDNAを含むものが含まれていた。
【実施例】
【0045】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。